石油タンク用消火補助設備及び石油タンク内火災の消火方法
【課題】石油タンク内の可燃性液体の液面に、固形浮遊材を円滑に供給することが可能な、石油タンク用消火補助設備及びで石油タンク内火災の消火方法を提供する。
【解決手段】本発明の石油タンク用消火補助設備は、石油タンク内の可燃性液体の火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記可燃性液体の液面より上方に設置され、該固形浮遊材を収容する上部収納室と、該上部収納室を開口して該固形浮遊材を落下させることにより前記可燃性液体の液面に浮遊展開する開口機構と、が設けられている。
【解決手段】本発明の石油タンク用消火補助設備は、石油タンク内の可燃性液体の火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記可燃性液体の液面より上方に設置され、該固形浮遊材を収容する上部収納室と、該上部収納室を開口して該固形浮遊材を落下させることにより前記可燃性液体の液面に浮遊展開する開口機構と、が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石油タンク用消火補助設備及び石油タンク内火災の消火方法に関する。
【背景技術】
【0002】
灯油や重油などの可燃性液体を貯留する石油タンクの火災の消火方法としては、消火用の泡を燃焼している可燃性液体の液面に展開し、泡による空気の遮断によって消火する方法が挙げられる。そして、このような泡を用いた消火設備として、例えば図18に示すように石油タンク100の上端周縁に泡チャンバー101及びデフレクター102を取付けた消火設備が知られている(例えば特許文献1)。この消火設備では、消火用泡が泡チャンバー101から吐出され、デフレクター102によって石油タンク100の上端から内壁に沿って流下するように案内される。そして、貯留されている石油の液面に泡が展開され、タンク内の火災を鎮圧あるいは消火したり、火災発災前であれば着火の危険を回避したりすることができる。
【0003】
しかし、泡を用いた消火方法であっても、泡に含まれる水分の蒸発、熱曝露、可燃性液体への溶解や汚染等の理由から時間とともに消泡するという問題がある。このため、長時間に渡って可燃性液体の液面を泡で覆うためには、常時、あるいは断続的に泡を供給する必要がある。このため、燃焼面積の大きな石油タンクの消火や着火防止には、大量の泡消火剤が必要となる。
【0004】
一方、泡は水分を多く含んでおり、石油タンク火災の消火作業において、多量の泡を投入することは、タンク貯留物質が比較的重質の成分を多く含む原油などの場合は、ボイルオーバー現象(燃焼の継続により高温の重質油がタンク底に達し、タンク底に溜まっていた水と接触し突沸を起こす現象)やスロップオーバー現象(燃焼の継続によりタンク内の重質油が高温となり、重質油の中に含まれる水分が気体となって膨張し油がタンク外に溢れ出す現象)によって、二次災害を起こす可能性がある。このため、泡の投入量はできるだけ少なくしたいという要請もある。
【0005】
こうした問題を解決するために、水分を含まない固形浮遊材を泡と供に浮上展開させることにより油面全体の露出面積を小さくし、燃焼を抑制するという、石油タンク用消火補助設備が提案されている(非特許文献1)。この石油タンク用消火補助設備では、図19に示すように、泡消火剤110と、直径20mm程度の中空のガラス玉からなる固形浮遊材111とを収容する消火剤及び固形浮遊体の混合貯留槽112が石油タンク113の近傍に設置されており、ジェクター114によって固形浮遊材111を石油タンク113の底部から泡とともに導入し、浮上展開させる。こうして固形浮遊材111を燃焼面に展開させることによって油面全体の露出面積を小さくし、燃焼を抑制することができる。(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60−081897号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】平成20年4月18日平成20年度消防庁消防大学校消防研究センター一般公開資料(於:消防庁消防大学校消防研究センター)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記非特許文献1に記載の石油タンク用消火補助設備では、消火剤貯留槽112内において固形浮遊材111が上部に浮かぶため、ジェクター114によって固形浮遊材111を円滑に輸送することが難しいという問題があると考えられる。また、ジェクター114によってタンク底部より固形浮遊材111をタンク内に投入する場合に、浮き屋根によって、固形浮遊材111の浮上が阻害される恐れがあり、円滑に油面上に展開させることが難しいという問題があった。また、ジェクター114は圧縮空気を用いて固形浮遊材111と、泡消火薬剤110を輸送するため、消火用泡の泡性状に影響を与えるおそれもあった。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、石油タンク内の可燃性液体の液面に、固形浮遊材を円滑に供給することが可能な、石油タンク用消火補助設備で、石油タンク内火災の消火方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1発明の石油タンク用消火補助設備は、
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記可燃性液体の液面より上方に設置され、該固形浮遊材を収容する上部収納室と、該上部収納室を開口して該固形浮遊材を落下させることにより前記可燃性液体の液面に浮遊展開する開口機構と、が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1発明の石油タンク用消火補助設備では、固形浮遊材を収容する上部収納室が可燃性液体の液面より上方に設置されている。そして、開口機構により、上部収納室が開口し、重力による自然落下によって固形浮遊材が可燃性液体の液面に落下する。このため、モータ等の駆動力を借りることなく、単純な機構で確実かつ、短時間の間に多量に可燃性液体の液面に浮上展開させることができる。こうして、可燃性液体の液面に浮上展開させることにより、油面の露出部分の面積を小さくすることができる。また、固形浮遊材が断熱材としての役割を果たし、油の蒸発を抑制することとなる。さらには、泡消火剤を油面に展開する場合において、固形浮遊材が泡消火剤の油汚染を防ぐことができる。また、泡消火剤が固形浮遊材を伝って展開されていくため、火災で発生した気流による泡消火剤の吹き飛び現象が防止される。さらには、非火災時においても、風の影響による泡消火剤の泡展開の阻害や片寄りを防止することができる。そして、これらの効果により、ひいては可燃性液体の燃焼を効果的に抑制することができる。また、着火前であれば、着火の危険を少なくできる。さらには、消火または、着火防止に必要な泡または、泡消火剤の量を削減することができる。
【0012】
開口機構としては、上部収納室内の固形浮遊材を可燃性液体の液面に落下させて浮遊展開可能とする機構であれば、特に限定はない。このような開口機構として、例えば、上部収納室の底や側壁が開放される構造とすること等が挙げられる。開放のための機構としては、電磁石による開閉や、シリンダによる開閉または、空気圧を利用して開放するなどが挙げられる。また、固形浮遊材は球状としたり、多面体としたりすることができる。球状であれば、収納室から固形浮遊材が転がり易く、確実に落下させることができる。また、固形浮遊材を多面体とすれば、可燃性液体状に浮かべた場合、球状の場合に比べて、隙間を少なくすることができ、油面の露出面積を小さくすることができる。特に好ましいのは12面体〜24面体である。こうであれば、収納室から固形浮遊材が転がり易く、確実に落下させることができる。
【0013】
また、上部収納室は前記石油タンクの側壁上端部に径外方向に突出して設けられていることが好ましい。こうであれば、浮き屋根を有する石油タンクに設置する場合においても、上部収納室が浮き屋根と干渉するおそれがない。
【0014】
上記本第1発明の石油タンク用消火補助設備は、本第1発明の石油タンク内火災の消火方法を行なう。すなわち、本第1発明の石油タンク内火災の消火方法は、石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、前記固形浮遊材を前記石油タンクの側壁上端部に径外方向に突出して固定された格納室に収容し、該浮き屋根が該可燃性液体に沈んだ場合に、電磁石や、空気圧等を利用して格納室を開放し、前記固形浮遊材を前記可燃性液体の液面に落下させて、浮力によって浮遊展開させることを特徴とする。この石油タンク内火災の消火方法では、上記本第1発明の石油タンク用消火補助設備の説明で述べたように、単純な機構で確実に固形浮遊材を、短時間の間に多量に可燃性液体の液面に浮上展開させることができる。
【0015】
また、本発明の第2発明の石油タンク用消火補助設備は、
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、前記可燃性液体に浮遊する浮き屋根の上に設置され、該浮き屋根が該可燃性液体に沈んだ場合に前記固形浮遊材が浮力によって浮遊展開されるように該固形浮遊材が収容された浮き屋根収納室を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の第2発明の石油タンク用消火補助設備は、石油タンク内の可燃性液体に浮き屋根が浮かんでいるタイプの石油タンク用の消火補助設備であり、固形浮遊材を収容する浮き屋根収納室は浮き屋根の上に設置されている。そして、地震等により浮き屋根が可燃性液体に沈んだ場合に、固形浮遊材が浮力によって浮上し展開される。こうして、浮き屋根が可燃性液体に沈んでタンク火災の危険性がある場合、あるいは火災が起きたとほぼ同時に、自動的に固形浮遊材を可燃性液体の液面に浮遊展開させることができるため、着火前であれば、着火の危険を少なくできる一方、燃焼している場合は燃焼を抑制することができる。こうして、消火に必要な泡消火剤の量を削減することに寄与し、火災発災前や火災初期から消火活動を補助することができる。また、非特許文献1に記載の石油タンク用消火補助設備では、浮き屋根の無い固定屋根の石油タンクのみに有効であったが、本発明によれば、石油タンクの浮き屋根の有無を問わず設置可能である。
【0017】
上記本第2発明の石油タンク用消火補助設備は、本第2発明の石油タンク内火災の消火方法を行なう。すなわち、本第2発明の石油タンク内火災の消火方法は、石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、前記固形浮遊材を前記可燃性液体に浮遊する浮き屋根の上に設置された浮き屋根収納室に収容し、該浮き屋根が該可燃性液体に沈んだ場合に前記固形浮遊材を浮力によって浮遊展開させることを特徴とする。
この石油タンク内火災の消火方法では、上記本第2発明の石油タンク用消火補助設備と同様、火災が起きる前、あるいは火災が起きたとほぼ同時に、自動的に固形浮遊材を可燃性液体の液面に浮遊展開させることができるため、火災初期から消火活動を補助することができる。
【0018】
また、本発明の第3発明の石油タンク用消火補助設備は、
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記石油タンク外から該石油タンク内に消火用の泡を輸送する泡輸送管の途中で、固形浮遊材を該泡輸送管内に供給するスクリューコンベアを備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第3発明の石油タンク用消火補助設備では、固形浮遊材がスクリューコンベアによって泡輸送管内に供給される。このため、泡と供に固形浮遊材を石油タンク内に輸送することができる。このため、固形浮遊材を確実に可燃性液体の液面に浮遊展開させることができる。
【0020】
また、本第3発明の石油タンク用消火補助設備は、本第3発明の石油タンク内火災の消火方法を行なう。すなわち、本第3発明の石油タンク内火災の消火方法は、石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、前記石油タンク外から該石油タンク内に消火用の泡を輸送する泡輸送管の途中で、スクリューコンベアにより固形浮遊材を該泡輸送管内に供給することを特徴とする。この消火方法によれば、固形浮遊材を確実に可燃性液体の液面に浮遊展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1の石油タンク用消火補助設備が設けられた石油タンクの模式断面図である。
【図2】実施形態1の石油タンク用消火補助設備の浮き屋根上の収納室の断面図である。
【図3】実施形態1の石油タンク用消火補助設備の作動途中の状態の石油タンクの模式断面図である。
【図4】実施形態1の石油タンク用消火補助設備が作動終了した状態の石油タンクの模式断面図である。
【図5】実施形態1に係り、浮き屋根周縁部分が火災を起こした場合における泡消火設備の作動状態を示す石油タンクの模式断面図である。
【図6】実施形態1の変形例2に係る収納室の部分断面図である。
【図7】実施形態2の石油タンク用消火補助設備が設けられた石油タンクの模式断面図である。
【図8】実施形態2の石油タンク用消火補助設備の作動途中の状態の石油タンクの模式断面図である。
【図9】実施形態2の変形例1に係る開口機構を示す部分側面図である。
【図10】実施形態2の変形例2に係る開口機構を示す部分側面図である。
【図11】実施形態3の石油タンク用消火補助設備が設けられた石油タンクの模式断面図である。
【図12】図11におけるXII−XII断面である。
【図13】実施形態3の石油タンク用消火補助設備の作動途中の状態の石油タンクの模式断面図である。
【図14】実施形態3の変形例に係る収納容器の断面図である。
【図15】実施形態3の変形例に係る収納容器の作動状態を示す断面図である。
【図16】実施形態4の石油タンク用消火補助設備が設けられた石油タンクの模式断面図である。
【図17】実施形態4石油タンク用消火補助設備の作動途中における固形浮遊材供給装置の模式断面図である。
【図18】従来の石油用泡消火設備の模式図である。
【図19】従来の石油用泡消火設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
<実施形態1>
実施形態1の石油タンク用消火補助設備は、図1に示す石油タンク10に備えられている。この石油タンク10は、円筒容器形状のタンク本体11に、原油、ナフサ、灯油、軽油等の可燃性液体12が貯留されており、可燃性液体12の液面を覆うように浮き屋根13が浮かぶ石油タンクである。浮き屋根13の周縁にはフロート13aが設けられており、さらにフロート13aの周縁には、タンク本体11との隙間をなくすように弾性変形するシール部材13bが取付けられている。また、浮き屋根13周縁上面のやや内側には、泡堰13cが立設されている。
【0024】
浮き屋根13の上側中央には、浮き屋根収納室61が設置されており、その内部には数多くの固形浮遊材60が収容されている。固形浮遊材60は径が約70mmの18面体形状で、発泡ウレタンの表面を無機断熱材で覆われた構造とされており、可燃性液体12に浮くようになっている。また、浮き屋根上の浮き屋根収納室61は、図2に示すように、四角柱容器形状の収納室本体61aと、蓋61bとからなり、蓋61bは蝶板61cによって上方に観音開きに開閉可能とされている。蓋61bは可燃性液体に浮く材質からなり、浮蓋13(図1参照)が可燃性液体に没した場合には、蓋61bが浮力によって開くようになっている。蓋61b及び蝶板61cが浮力開口部である。
【0025】
図1に示すように、石油タンク10から離れた地上には、泡消火剤供給装置21が設置されている。泡消火剤供給装置21には貯水槽21aが設置されており、貯水槽21aから加圧ポンプ21bを経由して水を混合器21cまで供給する水供給管21dが接続されている。混合器21cは原液タンク21eにも接続されており、原液タンク21e内には、泡消火剤原液が貯留されている。混合器21cは泡消火剤原液と水とを、発泡に適切な量で混合する構造とされており、混合器21cで調製された泡消火剤(すなわち泡消火剤原液を淡水又は海水で薄めたもの)は、バルブ22及び配管23を経由して、石油タンク10の上端に設置された泡チャンバー24に接続されており、泡チャンバー24はタンク本体11の内壁を伝って、泡を流下させるためのデフレクター25に連通している。
【0026】
以上のように構成された実施形態1の石油タンク用泡消火設備では、火災時あるいは火災発生のおそれが生じた場合、その状況によって、以下に示すようにして消火が行なわれる。
【0027】
(ケース1)
例えば、図3に示すように、地震が発生して浮き屋根13が可燃性液体12中に没した状態となった場合には、浮き屋根収納室61の蓋61bが浮力によって開き、浮き屋根収納室61内に可燃性液体12が流入する。これにより固形浮遊材60は可燃性液体12中を浮上し、液面上に達して展開される(図4参照)。これによって、可燃性液体12の最上面の大部分が固形浮遊材60によって占められ、可燃性液体12の燃焼可能な面積が狭められる。
【0028】
また、石油タンク用泡消火設備の操作者は、地震動によるタンク内の可燃性液体12の揺れが収まった後、バルブ22を開け、加圧ポンプ21bを駆動させる。これにより、貯水槽21aの水が混合器21cに送水され、原液タンク21eから供給される泡消火剤原液と混合されて泡消火剤となり、配管23を経由し、石油タンク10の上端の泡チャンバー24で発泡して泡となり、デフレクター25からタンク壁に沿って泡が流下し、固形浮遊材60の上から覆いかぶさるように展開し、固形浮遊材60どうしの隙間がさらに消火用の泡で閉塞されることにより、可燃性液体12の燃焼を未然に防いだり、燃焼の勢いを抑えたりする。
【0029】
さらに、図示しない泡放射装置を積載した消防車を出動させて、石油タンク10内の可燃性液体12の液面に向かって泡を放出してもよい。こうして放出された消火用泡は、デフレクター25から石油タンク10の内壁を伝って流下する泡では届き難い、可燃性液体12の液面の中央部分を覆うことができるため、効果的な消火を行なうことができる。
【0030】
以上のように、実施形態1の石油タンク用消火補助装置では、可燃性液体12の液面が固形浮遊材60によって覆われ、燃焼している面積を狭める役割を果たす。また、固形浮遊材60が断熱材としての役割を果たし、油の蒸発を抑制することとなる。さらには、泡消火剤を油面に展開する場合において、固形浮遊材60が泡消火剤の油汚染を防ぐことができる。また、泡消火剤が固形浮遊材60を伝って展開されていくため、火災で発生した気流による泡消火剤の吹き飛び現象が防止される。さらには、非火災時においても、風の影響による泡消火剤の泡展開の阻害や片寄りを防止することができる。そして、これらの効果により、ひいては、可燃性液体の燃焼を効果的に抑制することができる。また、こうして狭められた燃焼面積の上から泡が覆うため、固形浮遊材60がない場合に比べて、少ない泡の投入量で、タンク内の可燃性液体の液面で起こっている火災を迅速に消火することができる。
【0031】
(ケース2)
また、ケース2として、図5に示すように、何らかの理由で浮き屋根13の泡堰13cと、石油タンク10の内壁との間に可燃性液体12が漏れて火災が発生した場合には、バルブ22を開け、デフレクター25から石油タンク10の内壁を伝って周縁に向かって流下させることにより、泡堰13cと石油タンク10の内壁との間に発生した火災を消し止めることができる。
【0032】
以上のように、実施形態1の石油タンク用泡消火設備では、火災の状況に応じて、適切な方向に消火活動を行なうことができる。
【0033】
また、実施形態1の変形例1として、収納室本体61aを、固形浮遊材60を収容可能な網目の金網としたり、グレーチングとしたりすることもできる。こうであれば、浮き屋根収納室60が可燃性液体12の中に入った場合、蓋61bは自らの浮力以外に固形浮遊材60からの浮力も受けるため、さらに、大きな力で蓋61bを開けることができ、固形浮遊材60を確実に浮遊させることができる。
【0034】
さらに、実施形態1の変形例2として、図6に示すように、蓋64を片開きとすると供に、収納室本体62の対面する側壁の一方を二重壁62aとし、その中にフロート62bを昇降可能に収容し、二重壁62aの下端に孔62cを開け、フロート62bの上昇によってロック機構63の開閉レバー63aを開方向に押し上げる構造としてもよい。こうであっても、地震が発生して浮き屋根が可燃性液体中に没した状態となった場合には、フロート62bの上昇によってロック機構63の開閉レバー63aを押し上げ、ロック機構63が開状態となり、浮き屋根収納室61の蓋61bが浮力によって自動的に開き、固形浮遊材60を可燃性液体12に展開させることができる。
【0035】
<実施形態2>
実施形態2の石油タンク用消火補助設備は、図7に示すように、石油タンク10の上端周縁から径外方向に延在する載置台72が取付けられており、載置台72の上には、内部に固形浮遊材70を収容する四角柱形状の上部収納室71が設置されている。固形浮遊材70の構造は実施形態1と同様である。上部収納室71の石油タンク10径内側の側壁71aは、図示しない蝶板で開閉可能とされており、側壁71aの上には、側壁71aの開閉操作を行なうための空圧式ロック機構73が設けられている。空圧式ロック機構73は、下方に延在するストッパ73aを有しており、内部に備えた図示しない空圧シリンダに接続されたストッパ73aが上下するようにされている。
【0036】
石油タンク用消火補助設備以外については、上記実施形態1と同じであり、同一の構造について同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
以上のように構成された実施形態2の石油タンク用泡消火設備では、火災時あるいは火災発生のおそれが生じた場合、その状況によって、以下に示すようにして消火が行なわれる。
【0038】
例えば、図8に示すように、地震が発生して浮き屋根13が可燃性液体12中に没した状態となった場合には、石油タンク用泡消火設備の操作者は、遠隔操作により空圧式ロック機構73を操作して、ストッパ73a(図7参照)を上昇させてロック解除を行う。これにより、上部収納室71の側壁71aが開き、固形浮遊材70が落下して可燃性液体12の液面に展開される。これによって、可燃性液体12の最上面の大部分が固形浮遊材70によって占められ、可燃性液体12が燃焼可能な面積が狭められる。このため、可燃性液体12が燃焼した場合の火の勢いが弱められ、少ない消火用泡の投入量で、タンク内の可燃性液体の液面で起こっている火災を迅速に消火することができる。
【0039】
その他については、泡消火設備21や図示しない泡放射装置を積載した消防車の出動により、実施形態1の場合と同様の操作を行うことにより、状況に応じた効果的な消火を行なうことができる。
【0040】
また、実施形態2の変形例1として、図9に示すように、開口機構としてアクチエータ74によって、収納室75の開口蓋75aを開口する構造としてもよい。
【0041】
さらには、実施形態2の変形例2として、図10に示すように、開口機構として、熱によって溶融する感熱体76を開閉蓋77に取付けた滑車機構78を介して錘79で牽引する構造としてもよい。こうであれば、火災時に熱によって感熱体76が溶融し、錘79が下がり、開閉蓋77を火災時に自動的に開けることができる。
【0042】
<実施形態3>
実施形態3の石油タンク用消火補助設備は、図11に示すように、浮き屋根13の上側中央に、内部に数多くの固形浮遊材80を収容する四角柱容器形状の浮き屋根収納室81が設置されている。固形浮遊材80の構造は実施形態1と同様である。また、浮き屋根収納室81は、図12に示すように、4枚の板材81a、81b、81c及び81dと、それら板材を挿入可能に隙間を開けて四隅に2本づつ立設された、断面L字形状の板材立設治具82a、83a、82b、83b、82c、83c、82d、83dとから構成されている。4枚の板材81a、81b、81c及び81dは、可燃性液体12に浮遊可能かつ、不燃性または、難燃性を有する材質とされている。
【0043】
石油タンク用消火補助設備以外については、上記実施形態1と同じであり、同一の構造について同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
以上のように構成された実施形態3の石油タンク用泡消火設備では、火災時あるいは火災発生のおそれが生じた場合、その状況によって、以下に示すようにして消火が行なわれる。
【0045】
例えば、図13に示すように、地震が発生して浮き屋根13が可燃性液体12中に没した状態となった場合には、固形浮遊材80のみならず、板材81a、81b、81c及び81dも浮力によって浮上し、可燃性液体12の液面に横たわった状態となる。このため、板材81a、81b、81c及び81dが、固形浮遊材80と同様、可燃性液体12の燃焼可能な面積を狭める等の作用効果を奏することとなる。このため、可燃性液体12が燃焼した場合の火の勢いが弱められ、少ない泡消火剤の投入量で、タンク内の可燃性液体の液面で起こっている火災を迅速に消火することができる。
【0046】
その他については、泡消火設備21や図示しない泡放射装置を積載した消防車の出動により、実施形態1の場合と同様の操作を行なうことにより、状況に応じた効果的な消火を行なうことができる。
【0047】
実施形態3の変形例として、浮き屋根収納室を次のような構造としてもよい。すなわち、図14及び図15に示すように、四角枠形状の枠体84の各面の中央に開口84aを設ける。そして、可燃性液体12に浮遊可能な材質からなる側壁85の枠体84側に、開口84aの下端に引っ掛けるための係留凸部85aを設ける。このとき、開口84aの上端に開口部分が残るようにする。また、図15に示すように、開口84aの上端及び係留凸部85aの上端の形状は、断面の傾斜面が略同じ方向となるような鋭角となるようにする。
【0048】
この変形例によれば、図15に示すように、浮き屋根収納室が可燃性液体中に沈んだ場合、浮力によって側壁85の係留凸部85aが開口84aから外れて、側壁85が上昇する。そして、断面鋭角とされた開口84aの上端及び係留凸部85aの上端どうしがぶつかり、側壁85と枠体64とが、互いに離れるように案内される。このため、側壁85を確実に可燃性液体の液面に浮遊させることができる。
【0049】
<実施形態4>
実施形態4は、図16に示すように、実施形態1と同じ泡消火剤供給装置21を備えており、泡消火剤供給装置21からの配管22は2系統に分かれており、選択バルブ95aと95bが接続されている。選択バルブ95aには、発泡器96を介して固形浮遊材供給装置91が接続されている。この固形浮遊材供給装置91は、図17に示すように、固形浮遊材90を収納する断面がV字容器形状のホッパー92と、ホッパー92の底に取付けられたスクリューコンベア93と、スクリューコンベア93を駆動するためのモータ94とから構成されている。スクリューコンベア93は、配管97に接続されている。固形浮遊材90の構造は実施形態1と同様である。配管97の他端は、石油タンク10上端に設けられた浮遊材放出口98に接続されている。
【0050】
また、選択バルブ95bは、配管99aを介して石油タンク10上端に設けられた泡チャンバー99bに接続されている。
【0051】
石油タンク用消火補助設備以外については、上記実施形態1と同じであり、同一の構造について同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
以上のように構成された実施形態4の石油タンク用泡消火設備では、タンク内で火災が発生したり、そのおそれが生じた場合、消火設備の操作者は、地震動による揺れが収まった後、石油タンク10の被害状況を把握する。その結果、タンク内の浮き屋根13が沈降していると判断した場合、選択バルブ95aを操作し、固形浮遊材供給装置91と接続状態とする。そして、加圧ポンプ21bを駆動させ、消火剤水溶液を発泡器96に送って発泡させる。さらに、固形浮遊材供給装置91のモータ94を駆動させて、固形浮遊材90をスクリューコンベア93によって配管97内に送る。こうして配管97によって泡と供に供給された固形浮遊材90は、石油タンク10の上端の浮遊材放出口98よりタンク内に放出されて、可燃性液体12に投入される。こうして固形浮遊材90は可燃性液体12の液面に展開され、燃焼可能な面積を減ずるとともに、固形浮遊材90の間の隙間が、さらに泡で閉塞されることにより、可燃性液体12の燃焼を未然に防いだり、燃焼の勢いを抑えたりする。このため、可燃性液体12が燃焼した場合の火の勢いが弱められ、少ない泡の投入量で、タンク内の可燃性液体の液面で起こっている火災を迅速に消火することができる。
【0053】
一方、消火設備の操作者が、タンク内の浮き屋根13は沈降していないが、浮き屋根13の周縁で火災が発生している場合や、そのおそれがある場合には、選択バルブ95bを操作し、配管99aと接続状態とする。そして、加圧ポンプ21bを駆動させることにより、泡チャンバー99bに泡消火剤を送り、発泡させて、浮き屋根13の周縁に泡を供給する。
【0054】
その他、図示しない泡放射装置を積載した消防車の出動により、実施形態1の場合と同様の操作を行うことにより、状況に応じた効果的な消火を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の石油タンクの消火補助設備は、泡消火剤による石油タンク用消火設備の補助設備として利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…石油タンク
13…浮き屋根
12…可燃性液体
60、70、80、90…固形浮遊材
71…上部収納室
61、81…浮き屋根収納室
91…輸送手段(固形浮遊材供給装置)
93…スクリューコンベア
73、74、76、77、78…開口機構(73…空圧式ロック機構、74…アクチュエーター、76…感熱体、78…滑車機構、79…錘)
61b、61c、62a、62b、62c、63、84、84a、85、85a…浮力開口部(61b…蓋、61c…蝶板、62a…二重壁、62b…フロート、62c…孔、63…ロック機構、84…枠体、84a…開口、85…側壁、85a…係留凸部)
【技術分野】
【0001】
本発明は石油タンク用消火補助設備及び石油タンク内火災の消火方法に関する。
【背景技術】
【0002】
灯油や重油などの可燃性液体を貯留する石油タンクの火災の消火方法としては、消火用の泡を燃焼している可燃性液体の液面に展開し、泡による空気の遮断によって消火する方法が挙げられる。そして、このような泡を用いた消火設備として、例えば図18に示すように石油タンク100の上端周縁に泡チャンバー101及びデフレクター102を取付けた消火設備が知られている(例えば特許文献1)。この消火設備では、消火用泡が泡チャンバー101から吐出され、デフレクター102によって石油タンク100の上端から内壁に沿って流下するように案内される。そして、貯留されている石油の液面に泡が展開され、タンク内の火災を鎮圧あるいは消火したり、火災発災前であれば着火の危険を回避したりすることができる。
【0003】
しかし、泡を用いた消火方法であっても、泡に含まれる水分の蒸発、熱曝露、可燃性液体への溶解や汚染等の理由から時間とともに消泡するという問題がある。このため、長時間に渡って可燃性液体の液面を泡で覆うためには、常時、あるいは断続的に泡を供給する必要がある。このため、燃焼面積の大きな石油タンクの消火や着火防止には、大量の泡消火剤が必要となる。
【0004】
一方、泡は水分を多く含んでおり、石油タンク火災の消火作業において、多量の泡を投入することは、タンク貯留物質が比較的重質の成分を多く含む原油などの場合は、ボイルオーバー現象(燃焼の継続により高温の重質油がタンク底に達し、タンク底に溜まっていた水と接触し突沸を起こす現象)やスロップオーバー現象(燃焼の継続によりタンク内の重質油が高温となり、重質油の中に含まれる水分が気体となって膨張し油がタンク外に溢れ出す現象)によって、二次災害を起こす可能性がある。このため、泡の投入量はできるだけ少なくしたいという要請もある。
【0005】
こうした問題を解決するために、水分を含まない固形浮遊材を泡と供に浮上展開させることにより油面全体の露出面積を小さくし、燃焼を抑制するという、石油タンク用消火補助設備が提案されている(非特許文献1)。この石油タンク用消火補助設備では、図19に示すように、泡消火剤110と、直径20mm程度の中空のガラス玉からなる固形浮遊材111とを収容する消火剤及び固形浮遊体の混合貯留槽112が石油タンク113の近傍に設置されており、ジェクター114によって固形浮遊材111を石油タンク113の底部から泡とともに導入し、浮上展開させる。こうして固形浮遊材111を燃焼面に展開させることによって油面全体の露出面積を小さくし、燃焼を抑制することができる。(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60−081897号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】平成20年4月18日平成20年度消防庁消防大学校消防研究センター一般公開資料(於:消防庁消防大学校消防研究センター)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記非特許文献1に記載の石油タンク用消火補助設備では、消火剤貯留槽112内において固形浮遊材111が上部に浮かぶため、ジェクター114によって固形浮遊材111を円滑に輸送することが難しいという問題があると考えられる。また、ジェクター114によってタンク底部より固形浮遊材111をタンク内に投入する場合に、浮き屋根によって、固形浮遊材111の浮上が阻害される恐れがあり、円滑に油面上に展開させることが難しいという問題があった。また、ジェクター114は圧縮空気を用いて固形浮遊材111と、泡消火薬剤110を輸送するため、消火用泡の泡性状に影響を与えるおそれもあった。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、石油タンク内の可燃性液体の液面に、固形浮遊材を円滑に供給することが可能な、石油タンク用消火補助設備で、石油タンク内火災の消火方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1発明の石油タンク用消火補助設備は、
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記可燃性液体の液面より上方に設置され、該固形浮遊材を収容する上部収納室と、該上部収納室を開口して該固形浮遊材を落下させることにより前記可燃性液体の液面に浮遊展開する開口機構と、が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1発明の石油タンク用消火補助設備では、固形浮遊材を収容する上部収納室が可燃性液体の液面より上方に設置されている。そして、開口機構により、上部収納室が開口し、重力による自然落下によって固形浮遊材が可燃性液体の液面に落下する。このため、モータ等の駆動力を借りることなく、単純な機構で確実かつ、短時間の間に多量に可燃性液体の液面に浮上展開させることができる。こうして、可燃性液体の液面に浮上展開させることにより、油面の露出部分の面積を小さくすることができる。また、固形浮遊材が断熱材としての役割を果たし、油の蒸発を抑制することとなる。さらには、泡消火剤を油面に展開する場合において、固形浮遊材が泡消火剤の油汚染を防ぐことができる。また、泡消火剤が固形浮遊材を伝って展開されていくため、火災で発生した気流による泡消火剤の吹き飛び現象が防止される。さらには、非火災時においても、風の影響による泡消火剤の泡展開の阻害や片寄りを防止することができる。そして、これらの効果により、ひいては可燃性液体の燃焼を効果的に抑制することができる。また、着火前であれば、着火の危険を少なくできる。さらには、消火または、着火防止に必要な泡または、泡消火剤の量を削減することができる。
【0012】
開口機構としては、上部収納室内の固形浮遊材を可燃性液体の液面に落下させて浮遊展開可能とする機構であれば、特に限定はない。このような開口機構として、例えば、上部収納室の底や側壁が開放される構造とすること等が挙げられる。開放のための機構としては、電磁石による開閉や、シリンダによる開閉または、空気圧を利用して開放するなどが挙げられる。また、固形浮遊材は球状としたり、多面体としたりすることができる。球状であれば、収納室から固形浮遊材が転がり易く、確実に落下させることができる。また、固形浮遊材を多面体とすれば、可燃性液体状に浮かべた場合、球状の場合に比べて、隙間を少なくすることができ、油面の露出面積を小さくすることができる。特に好ましいのは12面体〜24面体である。こうであれば、収納室から固形浮遊材が転がり易く、確実に落下させることができる。
【0013】
また、上部収納室は前記石油タンクの側壁上端部に径外方向に突出して設けられていることが好ましい。こうであれば、浮き屋根を有する石油タンクに設置する場合においても、上部収納室が浮き屋根と干渉するおそれがない。
【0014】
上記本第1発明の石油タンク用消火補助設備は、本第1発明の石油タンク内火災の消火方法を行なう。すなわち、本第1発明の石油タンク内火災の消火方法は、石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、前記固形浮遊材を前記石油タンクの側壁上端部に径外方向に突出して固定された格納室に収容し、該浮き屋根が該可燃性液体に沈んだ場合に、電磁石や、空気圧等を利用して格納室を開放し、前記固形浮遊材を前記可燃性液体の液面に落下させて、浮力によって浮遊展開させることを特徴とする。この石油タンク内火災の消火方法では、上記本第1発明の石油タンク用消火補助設備の説明で述べたように、単純な機構で確実に固形浮遊材を、短時間の間に多量に可燃性液体の液面に浮上展開させることができる。
【0015】
また、本発明の第2発明の石油タンク用消火補助設備は、
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、前記可燃性液体に浮遊する浮き屋根の上に設置され、該浮き屋根が該可燃性液体に沈んだ場合に前記固形浮遊材が浮力によって浮遊展開されるように該固形浮遊材が収容された浮き屋根収納室を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の第2発明の石油タンク用消火補助設備は、石油タンク内の可燃性液体に浮き屋根が浮かんでいるタイプの石油タンク用の消火補助設備であり、固形浮遊材を収容する浮き屋根収納室は浮き屋根の上に設置されている。そして、地震等により浮き屋根が可燃性液体に沈んだ場合に、固形浮遊材が浮力によって浮上し展開される。こうして、浮き屋根が可燃性液体に沈んでタンク火災の危険性がある場合、あるいは火災が起きたとほぼ同時に、自動的に固形浮遊材を可燃性液体の液面に浮遊展開させることができるため、着火前であれば、着火の危険を少なくできる一方、燃焼している場合は燃焼を抑制することができる。こうして、消火に必要な泡消火剤の量を削減することに寄与し、火災発災前や火災初期から消火活動を補助することができる。また、非特許文献1に記載の石油タンク用消火補助設備では、浮き屋根の無い固定屋根の石油タンクのみに有効であったが、本発明によれば、石油タンクの浮き屋根の有無を問わず設置可能である。
【0017】
上記本第2発明の石油タンク用消火補助設備は、本第2発明の石油タンク内火災の消火方法を行なう。すなわち、本第2発明の石油タンク内火災の消火方法は、石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、前記固形浮遊材を前記可燃性液体に浮遊する浮き屋根の上に設置された浮き屋根収納室に収容し、該浮き屋根が該可燃性液体に沈んだ場合に前記固形浮遊材を浮力によって浮遊展開させることを特徴とする。
この石油タンク内火災の消火方法では、上記本第2発明の石油タンク用消火補助設備と同様、火災が起きる前、あるいは火災が起きたとほぼ同時に、自動的に固形浮遊材を可燃性液体の液面に浮遊展開させることができるため、火災初期から消火活動を補助することができる。
【0018】
また、本発明の第3発明の石油タンク用消火補助設備は、
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記石油タンク外から該石油タンク内に消火用の泡を輸送する泡輸送管の途中で、固形浮遊材を該泡輸送管内に供給するスクリューコンベアを備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第3発明の石油タンク用消火補助設備では、固形浮遊材がスクリューコンベアによって泡輸送管内に供給される。このため、泡と供に固形浮遊材を石油タンク内に輸送することができる。このため、固形浮遊材を確実に可燃性液体の液面に浮遊展開させることができる。
【0020】
また、本第3発明の石油タンク用消火補助設備は、本第3発明の石油タンク内火災の消火方法を行なう。すなわち、本第3発明の石油タンク内火災の消火方法は、石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、前記石油タンク外から該石油タンク内に消火用の泡を輸送する泡輸送管の途中で、スクリューコンベアにより固形浮遊材を該泡輸送管内に供給することを特徴とする。この消火方法によれば、固形浮遊材を確実に可燃性液体の液面に浮遊展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1の石油タンク用消火補助設備が設けられた石油タンクの模式断面図である。
【図2】実施形態1の石油タンク用消火補助設備の浮き屋根上の収納室の断面図である。
【図3】実施形態1の石油タンク用消火補助設備の作動途中の状態の石油タンクの模式断面図である。
【図4】実施形態1の石油タンク用消火補助設備が作動終了した状態の石油タンクの模式断面図である。
【図5】実施形態1に係り、浮き屋根周縁部分が火災を起こした場合における泡消火設備の作動状態を示す石油タンクの模式断面図である。
【図6】実施形態1の変形例2に係る収納室の部分断面図である。
【図7】実施形態2の石油タンク用消火補助設備が設けられた石油タンクの模式断面図である。
【図8】実施形態2の石油タンク用消火補助設備の作動途中の状態の石油タンクの模式断面図である。
【図9】実施形態2の変形例1に係る開口機構を示す部分側面図である。
【図10】実施形態2の変形例2に係る開口機構を示す部分側面図である。
【図11】実施形態3の石油タンク用消火補助設備が設けられた石油タンクの模式断面図である。
【図12】図11におけるXII−XII断面である。
【図13】実施形態3の石油タンク用消火補助設備の作動途中の状態の石油タンクの模式断面図である。
【図14】実施形態3の変形例に係る収納容器の断面図である。
【図15】実施形態3の変形例に係る収納容器の作動状態を示す断面図である。
【図16】実施形態4の石油タンク用消火補助設備が設けられた石油タンクの模式断面図である。
【図17】実施形態4石油タンク用消火補助設備の作動途中における固形浮遊材供給装置の模式断面図である。
【図18】従来の石油用泡消火設備の模式図である。
【図19】従来の石油用泡消火設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
<実施形態1>
実施形態1の石油タンク用消火補助設備は、図1に示す石油タンク10に備えられている。この石油タンク10は、円筒容器形状のタンク本体11に、原油、ナフサ、灯油、軽油等の可燃性液体12が貯留されており、可燃性液体12の液面を覆うように浮き屋根13が浮かぶ石油タンクである。浮き屋根13の周縁にはフロート13aが設けられており、さらにフロート13aの周縁には、タンク本体11との隙間をなくすように弾性変形するシール部材13bが取付けられている。また、浮き屋根13周縁上面のやや内側には、泡堰13cが立設されている。
【0024】
浮き屋根13の上側中央には、浮き屋根収納室61が設置されており、その内部には数多くの固形浮遊材60が収容されている。固形浮遊材60は径が約70mmの18面体形状で、発泡ウレタンの表面を無機断熱材で覆われた構造とされており、可燃性液体12に浮くようになっている。また、浮き屋根上の浮き屋根収納室61は、図2に示すように、四角柱容器形状の収納室本体61aと、蓋61bとからなり、蓋61bは蝶板61cによって上方に観音開きに開閉可能とされている。蓋61bは可燃性液体に浮く材質からなり、浮蓋13(図1参照)が可燃性液体に没した場合には、蓋61bが浮力によって開くようになっている。蓋61b及び蝶板61cが浮力開口部である。
【0025】
図1に示すように、石油タンク10から離れた地上には、泡消火剤供給装置21が設置されている。泡消火剤供給装置21には貯水槽21aが設置されており、貯水槽21aから加圧ポンプ21bを経由して水を混合器21cまで供給する水供給管21dが接続されている。混合器21cは原液タンク21eにも接続されており、原液タンク21e内には、泡消火剤原液が貯留されている。混合器21cは泡消火剤原液と水とを、発泡に適切な量で混合する構造とされており、混合器21cで調製された泡消火剤(すなわち泡消火剤原液を淡水又は海水で薄めたもの)は、バルブ22及び配管23を経由して、石油タンク10の上端に設置された泡チャンバー24に接続されており、泡チャンバー24はタンク本体11の内壁を伝って、泡を流下させるためのデフレクター25に連通している。
【0026】
以上のように構成された実施形態1の石油タンク用泡消火設備では、火災時あるいは火災発生のおそれが生じた場合、その状況によって、以下に示すようにして消火が行なわれる。
【0027】
(ケース1)
例えば、図3に示すように、地震が発生して浮き屋根13が可燃性液体12中に没した状態となった場合には、浮き屋根収納室61の蓋61bが浮力によって開き、浮き屋根収納室61内に可燃性液体12が流入する。これにより固形浮遊材60は可燃性液体12中を浮上し、液面上に達して展開される(図4参照)。これによって、可燃性液体12の最上面の大部分が固形浮遊材60によって占められ、可燃性液体12の燃焼可能な面積が狭められる。
【0028】
また、石油タンク用泡消火設備の操作者は、地震動によるタンク内の可燃性液体12の揺れが収まった後、バルブ22を開け、加圧ポンプ21bを駆動させる。これにより、貯水槽21aの水が混合器21cに送水され、原液タンク21eから供給される泡消火剤原液と混合されて泡消火剤となり、配管23を経由し、石油タンク10の上端の泡チャンバー24で発泡して泡となり、デフレクター25からタンク壁に沿って泡が流下し、固形浮遊材60の上から覆いかぶさるように展開し、固形浮遊材60どうしの隙間がさらに消火用の泡で閉塞されることにより、可燃性液体12の燃焼を未然に防いだり、燃焼の勢いを抑えたりする。
【0029】
さらに、図示しない泡放射装置を積載した消防車を出動させて、石油タンク10内の可燃性液体12の液面に向かって泡を放出してもよい。こうして放出された消火用泡は、デフレクター25から石油タンク10の内壁を伝って流下する泡では届き難い、可燃性液体12の液面の中央部分を覆うことができるため、効果的な消火を行なうことができる。
【0030】
以上のように、実施形態1の石油タンク用消火補助装置では、可燃性液体12の液面が固形浮遊材60によって覆われ、燃焼している面積を狭める役割を果たす。また、固形浮遊材60が断熱材としての役割を果たし、油の蒸発を抑制することとなる。さらには、泡消火剤を油面に展開する場合において、固形浮遊材60が泡消火剤の油汚染を防ぐことができる。また、泡消火剤が固形浮遊材60を伝って展開されていくため、火災で発生した気流による泡消火剤の吹き飛び現象が防止される。さらには、非火災時においても、風の影響による泡消火剤の泡展開の阻害や片寄りを防止することができる。そして、これらの効果により、ひいては、可燃性液体の燃焼を効果的に抑制することができる。また、こうして狭められた燃焼面積の上から泡が覆うため、固形浮遊材60がない場合に比べて、少ない泡の投入量で、タンク内の可燃性液体の液面で起こっている火災を迅速に消火することができる。
【0031】
(ケース2)
また、ケース2として、図5に示すように、何らかの理由で浮き屋根13の泡堰13cと、石油タンク10の内壁との間に可燃性液体12が漏れて火災が発生した場合には、バルブ22を開け、デフレクター25から石油タンク10の内壁を伝って周縁に向かって流下させることにより、泡堰13cと石油タンク10の内壁との間に発生した火災を消し止めることができる。
【0032】
以上のように、実施形態1の石油タンク用泡消火設備では、火災の状況に応じて、適切な方向に消火活動を行なうことができる。
【0033】
また、実施形態1の変形例1として、収納室本体61aを、固形浮遊材60を収容可能な網目の金網としたり、グレーチングとしたりすることもできる。こうであれば、浮き屋根収納室60が可燃性液体12の中に入った場合、蓋61bは自らの浮力以外に固形浮遊材60からの浮力も受けるため、さらに、大きな力で蓋61bを開けることができ、固形浮遊材60を確実に浮遊させることができる。
【0034】
さらに、実施形態1の変形例2として、図6に示すように、蓋64を片開きとすると供に、収納室本体62の対面する側壁の一方を二重壁62aとし、その中にフロート62bを昇降可能に収容し、二重壁62aの下端に孔62cを開け、フロート62bの上昇によってロック機構63の開閉レバー63aを開方向に押し上げる構造としてもよい。こうであっても、地震が発生して浮き屋根が可燃性液体中に没した状態となった場合には、フロート62bの上昇によってロック機構63の開閉レバー63aを押し上げ、ロック機構63が開状態となり、浮き屋根収納室61の蓋61bが浮力によって自動的に開き、固形浮遊材60を可燃性液体12に展開させることができる。
【0035】
<実施形態2>
実施形態2の石油タンク用消火補助設備は、図7に示すように、石油タンク10の上端周縁から径外方向に延在する載置台72が取付けられており、載置台72の上には、内部に固形浮遊材70を収容する四角柱形状の上部収納室71が設置されている。固形浮遊材70の構造は実施形態1と同様である。上部収納室71の石油タンク10径内側の側壁71aは、図示しない蝶板で開閉可能とされており、側壁71aの上には、側壁71aの開閉操作を行なうための空圧式ロック機構73が設けられている。空圧式ロック機構73は、下方に延在するストッパ73aを有しており、内部に備えた図示しない空圧シリンダに接続されたストッパ73aが上下するようにされている。
【0036】
石油タンク用消火補助設備以外については、上記実施形態1と同じであり、同一の構造について同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
以上のように構成された実施形態2の石油タンク用泡消火設備では、火災時あるいは火災発生のおそれが生じた場合、その状況によって、以下に示すようにして消火が行なわれる。
【0038】
例えば、図8に示すように、地震が発生して浮き屋根13が可燃性液体12中に没した状態となった場合には、石油タンク用泡消火設備の操作者は、遠隔操作により空圧式ロック機構73を操作して、ストッパ73a(図7参照)を上昇させてロック解除を行う。これにより、上部収納室71の側壁71aが開き、固形浮遊材70が落下して可燃性液体12の液面に展開される。これによって、可燃性液体12の最上面の大部分が固形浮遊材70によって占められ、可燃性液体12が燃焼可能な面積が狭められる。このため、可燃性液体12が燃焼した場合の火の勢いが弱められ、少ない消火用泡の投入量で、タンク内の可燃性液体の液面で起こっている火災を迅速に消火することができる。
【0039】
その他については、泡消火設備21や図示しない泡放射装置を積載した消防車の出動により、実施形態1の場合と同様の操作を行うことにより、状況に応じた効果的な消火を行なうことができる。
【0040】
また、実施形態2の変形例1として、図9に示すように、開口機構としてアクチエータ74によって、収納室75の開口蓋75aを開口する構造としてもよい。
【0041】
さらには、実施形態2の変形例2として、図10に示すように、開口機構として、熱によって溶融する感熱体76を開閉蓋77に取付けた滑車機構78を介して錘79で牽引する構造としてもよい。こうであれば、火災時に熱によって感熱体76が溶融し、錘79が下がり、開閉蓋77を火災時に自動的に開けることができる。
【0042】
<実施形態3>
実施形態3の石油タンク用消火補助設備は、図11に示すように、浮き屋根13の上側中央に、内部に数多くの固形浮遊材80を収容する四角柱容器形状の浮き屋根収納室81が設置されている。固形浮遊材80の構造は実施形態1と同様である。また、浮き屋根収納室81は、図12に示すように、4枚の板材81a、81b、81c及び81dと、それら板材を挿入可能に隙間を開けて四隅に2本づつ立設された、断面L字形状の板材立設治具82a、83a、82b、83b、82c、83c、82d、83dとから構成されている。4枚の板材81a、81b、81c及び81dは、可燃性液体12に浮遊可能かつ、不燃性または、難燃性を有する材質とされている。
【0043】
石油タンク用消火補助設備以外については、上記実施形態1と同じであり、同一の構造について同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
以上のように構成された実施形態3の石油タンク用泡消火設備では、火災時あるいは火災発生のおそれが生じた場合、その状況によって、以下に示すようにして消火が行なわれる。
【0045】
例えば、図13に示すように、地震が発生して浮き屋根13が可燃性液体12中に没した状態となった場合には、固形浮遊材80のみならず、板材81a、81b、81c及び81dも浮力によって浮上し、可燃性液体12の液面に横たわった状態となる。このため、板材81a、81b、81c及び81dが、固形浮遊材80と同様、可燃性液体12の燃焼可能な面積を狭める等の作用効果を奏することとなる。このため、可燃性液体12が燃焼した場合の火の勢いが弱められ、少ない泡消火剤の投入量で、タンク内の可燃性液体の液面で起こっている火災を迅速に消火することができる。
【0046】
その他については、泡消火設備21や図示しない泡放射装置を積載した消防車の出動により、実施形態1の場合と同様の操作を行なうことにより、状況に応じた効果的な消火を行なうことができる。
【0047】
実施形態3の変形例として、浮き屋根収納室を次のような構造としてもよい。すなわち、図14及び図15に示すように、四角枠形状の枠体84の各面の中央に開口84aを設ける。そして、可燃性液体12に浮遊可能な材質からなる側壁85の枠体84側に、開口84aの下端に引っ掛けるための係留凸部85aを設ける。このとき、開口84aの上端に開口部分が残るようにする。また、図15に示すように、開口84aの上端及び係留凸部85aの上端の形状は、断面の傾斜面が略同じ方向となるような鋭角となるようにする。
【0048】
この変形例によれば、図15に示すように、浮き屋根収納室が可燃性液体中に沈んだ場合、浮力によって側壁85の係留凸部85aが開口84aから外れて、側壁85が上昇する。そして、断面鋭角とされた開口84aの上端及び係留凸部85aの上端どうしがぶつかり、側壁85と枠体64とが、互いに離れるように案内される。このため、側壁85を確実に可燃性液体の液面に浮遊させることができる。
【0049】
<実施形態4>
実施形態4は、図16に示すように、実施形態1と同じ泡消火剤供給装置21を備えており、泡消火剤供給装置21からの配管22は2系統に分かれており、選択バルブ95aと95bが接続されている。選択バルブ95aには、発泡器96を介して固形浮遊材供給装置91が接続されている。この固形浮遊材供給装置91は、図17に示すように、固形浮遊材90を収納する断面がV字容器形状のホッパー92と、ホッパー92の底に取付けられたスクリューコンベア93と、スクリューコンベア93を駆動するためのモータ94とから構成されている。スクリューコンベア93は、配管97に接続されている。固形浮遊材90の構造は実施形態1と同様である。配管97の他端は、石油タンク10上端に設けられた浮遊材放出口98に接続されている。
【0050】
また、選択バルブ95bは、配管99aを介して石油タンク10上端に設けられた泡チャンバー99bに接続されている。
【0051】
石油タンク用消火補助設備以外については、上記実施形態1と同じであり、同一の構造について同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
以上のように構成された実施形態4の石油タンク用泡消火設備では、タンク内で火災が発生したり、そのおそれが生じた場合、消火設備の操作者は、地震動による揺れが収まった後、石油タンク10の被害状況を把握する。その結果、タンク内の浮き屋根13が沈降していると判断した場合、選択バルブ95aを操作し、固形浮遊材供給装置91と接続状態とする。そして、加圧ポンプ21bを駆動させ、消火剤水溶液を発泡器96に送って発泡させる。さらに、固形浮遊材供給装置91のモータ94を駆動させて、固形浮遊材90をスクリューコンベア93によって配管97内に送る。こうして配管97によって泡と供に供給された固形浮遊材90は、石油タンク10の上端の浮遊材放出口98よりタンク内に放出されて、可燃性液体12に投入される。こうして固形浮遊材90は可燃性液体12の液面に展開され、燃焼可能な面積を減ずるとともに、固形浮遊材90の間の隙間が、さらに泡で閉塞されることにより、可燃性液体12の燃焼を未然に防いだり、燃焼の勢いを抑えたりする。このため、可燃性液体12が燃焼した場合の火の勢いが弱められ、少ない泡の投入量で、タンク内の可燃性液体の液面で起こっている火災を迅速に消火することができる。
【0053】
一方、消火設備の操作者が、タンク内の浮き屋根13は沈降していないが、浮き屋根13の周縁で火災が発生している場合や、そのおそれがある場合には、選択バルブ95bを操作し、配管99aと接続状態とする。そして、加圧ポンプ21bを駆動させることにより、泡チャンバー99bに泡消火剤を送り、発泡させて、浮き屋根13の周縁に泡を供給する。
【0054】
その他、図示しない泡放射装置を積載した消防車の出動により、実施形態1の場合と同様の操作を行うことにより、状況に応じた効果的な消火を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の石油タンクの消火補助設備は、泡消火剤による石油タンク用消火設備の補助設備として利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…石油タンク
13…浮き屋根
12…可燃性液体
60、70、80、90…固形浮遊材
71…上部収納室
61、81…浮き屋根収納室
91…輸送手段(固形浮遊材供給装置)
93…スクリューコンベア
73、74、76、77、78…開口機構(73…空圧式ロック機構、74…アクチュエーター、76…感熱体、78…滑車機構、79…錘)
61b、61c、62a、62b、62c、63、84、84a、85、85a…浮力開口部(61b…蓋、61c…蝶板、62a…二重壁、62b…フロート、62c…孔、63…ロック機構、84…枠体、84a…開口、85…側壁、85a…係留凸部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記可燃性液体の液面より上方に設置され、該固形浮遊材を収容する上部収納室と、該上部収納室を開口して該固形浮遊材を落下させることにより前記可燃性液体の液面に浮遊展開する開口機構と、が設けられていることを特徴とする石油タンク用消火補助設備。
【請求項2】
前記上部収納室は前記石油タンクの側壁上端の径外方向に突出して設けられていることを特徴とする請求項1記載の石油タンク用消火補助設備。
【請求項3】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記可燃性液体に浮遊する浮き屋根の上に設置され、該浮き屋根が該可燃性液体に沈んだ場合に前記固形浮遊材が浮力によって浮遊展開されるように該固形浮遊材が収容された浮き屋根収納室を有することを特徴とする石油タンク用消火補助設備。
【請求項4】
前記浮き屋根収納室には、該浮き屋根収納室が前記可燃性液体中に没した場合、浮力によって開口する浮力開口部が設けられていることを特徴とする請求項3記載の石油タンク用消火補助設備。
【請求項5】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記石油タンク外から該石油タンク内に消火用の泡を輸送する泡輸送管の途中で、固形浮遊材を該泡輸送管内に供給するスクリューコンベアを備えていることを特徴とする石油タンク用消火補助設備。
【請求項6】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、
前記可燃性液体の液面より上方に設置され、該固形浮遊材を収容する上部収納室を開口し、該固形浮遊材を落下させて前記可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮遊展開すること特徴とする石油タンク内火災の消火方法。
【請求項7】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、
前記固形浮遊材を前記可燃性液体に浮遊する浮き屋根の上に設置された浮き屋根収納室に収容し、該浮き屋根が該可燃性液体に沈んだ場合に前記固形浮遊材を浮力によって浮遊展開させることを特徴とする石油タンク内火災の消火方法。
【請求項8】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、
前記石油タンク外から該石油タンク内に消火用の泡を輸送する泡輸送管の途中で、スクリューコンベアにより固形浮遊材を該泡輸送管内に供給することを特徴とする石油タンク内火災の消火方法。
【請求項1】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記可燃性液体の液面より上方に設置され、該固形浮遊材を収容する上部収納室と、該上部収納室を開口して該固形浮遊材を落下させることにより前記可燃性液体の液面に浮遊展開する開口機構と、が設けられていることを特徴とする石油タンク用消火補助設備。
【請求項2】
前記上部収納室は前記石油タンクの側壁上端の径外方向に突出して設けられていることを特徴とする請求項1記載の石油タンク用消火補助設備。
【請求項3】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記可燃性液体に浮遊する浮き屋根の上に設置され、該浮き屋根が該可燃性液体に沈んだ場合に前記固形浮遊材が浮力によって浮遊展開されるように該固形浮遊材が収容された浮き屋根収納室を有することを特徴とする石油タンク用消火補助設備。
【請求項4】
前記浮き屋根収納室には、該浮き屋根収納室が前記可燃性液体中に没した場合、浮力によって開口する浮力開口部が設けられていることを特徴とする請求項3記載の石油タンク用消火補助設備。
【請求項5】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助するための石油タンク用消火補助設備であって、
前記石油タンク外から該石油タンク内に消火用の泡を輸送する泡輸送管の途中で、固形浮遊材を該泡輸送管内に供給するスクリューコンベアを備えていることを特徴とする石油タンク用消火補助設備。
【請求項6】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、
前記可燃性液体の液面より上方に設置され、該固形浮遊材を収容する上部収納室を開口し、該固形浮遊材を落下させて前記可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮遊展開すること特徴とする石油タンク内火災の消火方法。
【請求項7】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、
前記固形浮遊材を前記可燃性液体に浮遊する浮き屋根の上に設置された浮き屋根収納室に収容し、該浮き屋根が該可燃性液体に沈んだ場合に前記固形浮遊材を浮力によって浮遊展開させることを特徴とする石油タンク内火災の消火方法。
【請求項8】
石油タンク内の可燃性液体の液面に固形浮遊材を浮かべて火災の消火を補助する石油タンク内火災の消火方法であって、
前記石油タンク外から該石油タンク内に消火用の泡を輸送する泡輸送管の途中で、スクリューコンベアにより固形浮遊材を該泡輸送管内に供給することを特徴とする石油タンク内火災の消火方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−240137(P2010−240137A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91865(P2009−91865)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000192338)深田工業株式会社 (11)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000192338)深田工業株式会社 (11)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
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