説明

石炭の燃焼からの水銀放出の低減

燃料(例えば石炭)の燃焼に際して、水銀の放出を低減する方法および組成物を提供する。石炭の燃焼に際して雰囲気中に放出される水銀および/または硫黄のレベルを低減する成分を含有する種々の吸着剤組成物を提供する。種々の実施態様において、吸着剤組成物を、燃焼前に燃料に直接添加し、燃焼前に燃料に部分的に添加し、および燃焼ゾーン後の燃焼排ガス中に部分的に添加し、または燃焼ゾーン後の燃焼排ガス中に完全に添加する。好ましい実施態様において、吸着剤組成物はハロゲン源および好ましくはカルシウム源を含む。ハロゲンのなかでも、ヨウ素および臭素が好ましい。種々の実施態様において、無機臭化物は、吸着剤組成物の一部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀含有燃料(例えば石炭)の燃焼に際して雰囲気に放出される水銀レベルを低減するための組成物および方法を提供する。特に、本発明は、燃焼の間に種々のハロゲンおよび他の吸着剤組成物を石炭燃焼系中に添加することを提供する。
【背景技術】
【0002】
次の二世紀に必要とされる世界のエネルギー需要の大部分を満たすことができる、かなりの石炭資源が世界中に存在する。高硫黄石炭は豊富にあるが、燃焼に際して過剰の硫黄が雰囲気中に放出されることを防止するための浄化工程を必要とする。米国において、低硫黄石炭は、ワイオミング州およびモンタナ州のパウダーリバーベイスンに、ノースおよびサウスダコタ州の中北部の褐炭鉱床に、およびテキサス州の褐炭鉱床に、低BTU値石炭の形態として存在している。しかしながら、石炭が硫黄を低く含有する場合でさえも、それらは、なお、無視できないレベルの元素水銀および酸化水銀を含有する。
【0003】
残念なことに、水銀は、石炭の燃焼に際して少なくとも部分的に揮発する。結果として、水銀は灰中に留まる傾向がなく、むしろ、燃焼排ガスの成分になる。浄化をしない場合、水銀は石炭燃焼施設から放出され、環境問題を導く傾向がある。現在、水銀の幾らかは、設備によって、例えばウェットスクラバーおよびSCR制御系において捕捉される。しかしながら、大部分の水銀は捕捉されず、したがって、排気筒を通じて放出される。
【0004】
米国において、1990年のクリーンエア法の改正は、水銀の規制および制御をもくろんだ。環境保護庁(EPA)による1997年の会議における水銀の調査研究報告は、さらに、米国中の発電所からの水銀放出の限界を規定した。2000年12月にEPAは水銀を規制することを決定し、および2004年の1月および3月にクリーンエア水銀規則案を発表した。現在、規定された米国の石炭燃焼工場からの水銀低減を要求した規制は、米国環境保護庁から公布されている。
【0005】
石炭燃焼の燃焼排ガスから部分的に水銀を除去する傾向があるウェットスクラバーおよびSCR制御系に加えて、他の制御方法には、活性炭系の使用が含まれる。このような系の使用は、高い処理費用および高い資本費用に結び付く傾向がある。さらに、活性炭系の使用は、排気処理装置(例えばバグハウスおよび電気集塵装置)中に収集される飛灰の炭素汚染を導く。
【0006】
米国における雰囲気中への水銀放出は、約50トン/年である。放出のかなりの画分は、石炭燃焼施設(例えば電気事業施設)からの放出である。水銀は既知の環境公害であり、ヒトおよびヒト以外の動物の両方の健康問題を導く。公衆衛生を守るため、および環境を保護するため、電力業界は、その工場からの水銀放出レベルを低減するための系を開発し、試験し、および実行し続けている。炭素質材料の燃焼において、水銀および他の所望されない化合物が、燃焼相の後に捕捉および保持され、その結果、それらが雰囲気中に放出されない方法が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料(例えば石炭)の燃焼に際して水銀の放出を低減するための方法および組成物を提供する。石炭の燃焼に際して雰囲気中に放出される水銀および/または硫黄のレベルを低減する成分を含有する種々の吸着剤組成物を提供する。種々の実施態様において、吸着剤組成物を、燃焼前に燃料に直接添加するか、部分的に燃焼前に燃料に、および部分的に燃焼ゾーン後の燃焼排ガス中に添加するか、または完全に燃焼ゾーン後の燃焼排ガス中に添加する。好ましい実施態様において、吸着剤組成物はハロゲン源および好ましくはカルシウム源を含んでなる。ハロゲンのなかでも、ヨウ素および臭素が好ましい。種々の実施態様において、無機臭化物は吸着剤組成物の一部を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
種々の実施態様において、臭素またはヨウ素を含有する水銀吸着剤組成物を、燃焼前に、粉末として、または液体として燃料に添加する。あるいは、ハロゲン(例えば臭素およびヨウ素)を含有する吸着剤組成物を、燃焼チェンバー後の温度が約1500°F(約800℃)よりも高い地点にて燃焼排ガス中に注入する。
【0009】
好ましい実施態様において、吸着剤組成物は、他の成分(特にカルシウム源)をさらに含有する。したがって、一実施態様において、本発明は、多元素酸化剤、促進剤、および吸着剤を、炉中の燃焼の前および/または後に石炭に一回および複数回付与することを提供する。種々の実施態様において、吸着剤組成物の成分は、炭素質材料による該成分の燃焼およびその後の焼成に際して、セラミック特性を発現する。種々の実施態様において、吸着剤組成物の使用は、酸化水銀および元素水銀を、多元素浄化材料、例えば酸化カルシウム、臭化カルシウム、他のハロゲン化カルシウム、ならびにケイ素、アルミニウム、鉄、マグネシウム、ナトリウム、およびカリウムの酸化物によって捕捉および安定化することによって水銀放出を低減させる。
【0010】
好ましい実施態様において、石炭燃焼施設からの水銀放出は、石炭中の水銀の90%以上が雰囲気中に放出される前に捕捉される程度に低減される。水銀浄化方法は、燃焼ガス流から硫黄を除去する吸着剤組成物および他の方法と共に使用することができる。したがって、好ましい実施態様において、90%以上の水銀放出の低減と共に、相当の硫黄の低減が達成される。
【0011】
本発明が適用可能なさらなる分野は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。詳細な説明および特定の実施例は、幾つかの本発明の好ましい実施態様を示しているけれども、例示のみの目的を意図しており、本発明の範囲を限定することを意図しないことを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下の好ましい実施態様の説明は、単なる例示に過ぎず、本発明、その用途またはその使用を限定することを意図したものではない。
【0013】
種々の実施態様において、本発明は、水銀含有燃料(例えば石炭)の燃焼から生じる水銀の放出を低減するための組成物および方法を提供する。水銀含有燃料を燃焼させる系および施設は、例えば電気事業施設に使用される石炭燃焼施設の例に特に着目して記載する。このような施設は、通常、石炭が燃焼(burn)または燃焼(combust)される炉中に石炭を供給するための数種類の供給機構を有する。供給機構は、使用に適当な任意のデバイスまたは装置であり得る。限定されない例としては、コンベア系、スクリュー押し出し系などが挙げられる。操作において、水銀含有燃料(例えば石炭)は、炉からの所望の出力を達成するために適当な比率で炉に供給される。通常、炉からの出力は、直接的な熱を与える流れ、あるいは最終的に電気を産出するタービンを回転させるために使用される流れのための水を沸騰させるために使用される。
【0014】
石炭は炉中に供給され、および酸素の存在下に燃焼される。燃焼温度における典型的な炎の温度は、2700°F〜約3000°Fのオーダーである。供給される燃料が燃焼される炉またはボイラーの後、施設は、燃焼ガス(時折、これを便宜上燃焼排ガスという)のための対流経路を与える。熱燃焼ガスおよび熱気は、対流により、炎から離れて対流経路を通って下流方向(すなわち、火球に対して下流)に移動する。施設の対流経路は、各ゾーンにおけるガスおよび燃焼生成物の温度により特徴付けられる多くのゾーンを含有する。通常、燃焼ガスの温度は、火球から下流方向に移動するときに低下する。燃焼ガスは、二酸化炭素ならびに硫黄および水銀を含有する種々の所望されないガスを含有する。また、対流経路は、高温ガスと一緒に一掃される種々の灰で充填される。雰囲気中への放出前に灰を除去するため、粒子除去系を使用する。種々のこのような除去系(例えば電気集塵装置およびバグハウス)は、対流経路に配置することができる。加えて、化学的スクラバーを、対流経路中に配置することができる。さらに、ガスの成分(例えば硫黄および水銀)を監視するための種々の機器を与えることができる。
【0015】
石炭が約2700°F〜3000°Fの温度で燃焼する炉から、飛灰および燃焼ガスは、対流経路の下流のさらに温度が低いゾーンに移動する。火球の直ぐ下流は、2700°F未満の温度のゾーンである。さらに下流は、温度が約1500°Fまで冷却される地点に至る。2つの地点の間は、約1500〜約2700°Fの温度を有するゾーンである。さらに下流は、1500°F未満のゾーンなどに至る。さらに、対流経路に沿って、ガスおよび飛灰は、より低い温度ゾーンを通ってバグハウスまたは電気集塵装置にまで到達する。これらは典型的に約300°Fの温度を有し、次いで、ガスは煙突の上から放出される。
【0016】
種々の実施態様において、本発明の方法は、水銀吸着剤を、
燃焼前に燃料(例えば石炭)に直接付与すること(「燃焼前」添加)、
2700°Fと1500°Fとの間の温度ゾーン中の燃焼後のガス流中に直接付与すること(「燃焼後」添加)、または
燃焼前および燃焼後の添加を組み合わせること
を必要とする。
【0017】
種々の実施態様において、燃焼からの酸化水銀は、バグハウスまたは電気集塵装置に集合し、および石炭燃焼工場の全灰含量の一部となる。灰中の重金属は、規制レベルを下回って浸出しない。
【0018】
種々の実施態様において、石炭燃焼施設からの水銀放出を監視する。工場からの放出前の燃焼排ガス中の水銀レベルに応じて、燃焼前および/または燃焼後に燃料に添加する吸着剤組成物の量を、上昇させ、低下させ、または不変のままにする。概して、できるだけ高レベルの水銀を除去することが望ましい。典型的な実施態様において、石炭中の水銀の総量に基づいて90%以上の水銀除去が達成される。この数値は、燃焼排ガスから除去される水銀を意味し、その結果、水銀は煙突を通じて雰囲気中に放出されない。炉中に生成される灰の全量を低減するために石炭燃焼工程中に添加する吸着剤の量を最小化するため、多くの環境において、系中に過剰の材料を添加することなく所望の水銀の低減が達成されるように、水銀放出の測定を用いて吸着剤組成物の添加率を低減することが望ましい。
【0019】
したがって、一実施態様において、石炭を燃焼させて雰囲気中に放出される水銀の量を低減する方法を提供する。該方法は、ハロゲン化合物を含む第一の吸着剤組成物を石炭上に付与することを含む。次いで、石炭を、石炭燃焼工場の炉中に供給する。その後、吸着剤組成物を含有する石炭を炉中で燃焼させ、灰および燃焼ガスを生成させる。燃焼ガスは、水銀、硫黄および他の成分を含有する。雰囲気中への放出を制限するために燃焼ガス中の水銀の所望の低減を達成するため、燃焼ガス中の水銀レベルを、好ましくはそのレベルを分析的に測定することによって監視する。好ましい実施態様において、燃焼前に石炭上に付与する吸着剤組成物の量を、燃焼ガス中の測定される水銀レベルの値に応じて調整する。
【0020】
別の実施態様において、水銀吸着剤を、燃焼後、約1500°F〜2700°F(約815℃〜1482℃)の温度を有する領域において石炭燃焼系中に添加する。水銀を含有する石炭の燃焼に際して雰囲気中に放出される水銀レベルを低減する方法を提供する。燃焼は、炉および燃焼ガスのための対流経路を含有する石炭燃焼系中で行う。該方法は、炉中で石炭を燃焼させること、および燃焼ガスが1500°F〜2700°Fの温度である地点にて対流経路中にハロゲンを含有する吸着剤を注入することを含む。所望であれば、施設から放出されるガス中の水銀レベルを監視および測定する。監視により測定された値に反映された、施設から放出された水銀レベルに応じて、水銀吸着剤の添加率を増大し、低減し、または不変のままにすることができる。さらなる実施態様において、ハロゲンを含有する水銀吸着剤は、燃焼前に石炭に付与することができ、および燃焼ガスが1500°F〜2700°Fの温度である地点にて対流経路中に注入することができる。
【0021】
ハロゲン化合物を含んでなる吸着剤組成物は、ハロゲンを含有する一以上の有機または無機化合物を含有する。ハロゲンとしては、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。好ましいハロゲンは、臭素およびヨウ素である。上記ハロゲン化合物は、ハロゲン(特に臭素およびヨウ素)源である。臭素についてのハロゲン源としては、臭化物、臭素酸塩および次亜臭素酸塩を含む、種々の臭素無機塩が挙げられる。種々の実施態様において、有機臭素化合物は、それらの費用または利用可能性のため、余り好ましくない。しかしながら、適当に高いレベルの臭素を含有する臭素有機源は、本発明の範囲内であると考えられる。有機臭素化合物の限定されない例としては、臭化メチレン、臭化エチル、ブロモホルム、および四臭化炭素が挙げられる。限定されないヨウ素源としては、次亜ヨウ素酸塩、ヨウ素酸塩、およびヨウ化物が挙げられ、ヨウ化物が好ましい。
【0022】
ハロゲン化合物が無機置換体である場合、それは、好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類元素の臭素またはヨウ素含有塩である。好ましいアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、およびカリウムが挙げられ、一方、好ましいアルカリ土類元素としては、ベリリウム、マグネシウム、およびカルシウムが挙げられる。ハロゲン化合物のなかでも、特に好ましいものは、アルカリ土類金属(例えばカルシウム)の臭化物およびヨウ化物である。
【0023】
ハロゲンを含有する吸着剤組成物は、液体または固体組成物の形態で与える。吸着剤組成物が液体組成物である場合、吸着剤組成物は、好ましくは上記臭素またはヨウ素化合物の水溶液を含んでなる。石炭の燃焼に際して雰囲気中に放出される水銀レベルを低減する本発明の方法は、吸着剤組成物を、液体または固体組成物のいずれかの形態で石炭燃焼工程中に付与することを含む。一実施態様において、吸着剤組成物を、燃焼前に石炭に添加し、一方、別の吸着剤組成物を、1500°F〜2700°Fの温度を有するゾーンにて石炭燃焼施設の対流経路中に注入する。種々の実施態様において、吸着剤の添加を、燃焼前および燃焼後の両方で行うことができる。好ましい実施態様において、ハロゲンを含有する水性吸着剤を、燃焼前に石炭上に噴霧し、および該石炭を、水で湿った状態のまま炉中に投入する。
【0024】
種々の実施態様において、液体水銀吸着剤は、5〜60重量%の臭素またはヨウ素含有可溶性塩を含有する溶液を含んでなる。好ましい臭素およびヨウ素塩の限定されない例としては、臭化カルシウムおよびヨウ化カルシウムが挙げられる。種々の実施態様において、液体吸着剤は、5〜60重量%の臭化カルシウムおよび/またはヨウ化カルシウムを含有する。燃焼前の石炭の添加の効率性のため、種々の実施態様において、できるだけ高レベルの臭素またはヨウ素化合物を有する水銀吸着剤を添加することが好ましい。限定されない実施態様において、液体吸着剤は、50重量%以上のハロゲン化合物、例えば臭化カルシウムまたはヨウ化カルシウムを含有する。
【0025】
種々の実施態様において、ハロゲンを含有する吸着剤組成物は、硝酸塩化合物、亜硝酸塩化合物、または硝酸塩化合物と亜硝酸塩化合物との組合せをさらに含有する。好ましい硝酸塩および亜硝酸塩化合物としては、マグネシウムおよびカルシウム、好ましくはカルシウムのものが挙げられる。したがって、好ましい実施態様において、水銀吸着剤組成物は、臭化カルシウムを含有する。臭化カルシウムを上述した他の成分(例えば硝酸塩および亜硝酸塩)と処方して、粉末吸着剤組成物または液体吸着剤組成物のいずれかを形成することができる。ハロゲンを含有する粉末または液体吸着剤組成物を、燃焼前に石炭上に添加し、約1500°F〜約2700°Fの温度を有するゾーンにて石炭燃焼施設の対流経路中に注入し、またはこの二つの組合せを行う。
【0026】
ハロゲン化合物を含有する水銀吸着剤組成物は、好ましくはカルシウム源をさらに含む。カルシウム源の限定されない例としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、重硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびカルシウム鉱物(例えばアパタイト)などが挙げられる。好ましいカルシウム源としては、ハロゲン化カルシウム、例えば臭化カルシウム、塩化カルシウム、およびヨウ化カルシウムが挙げられる。また、有機カルシウム化合物も使用することができる。限定されない例としては、カルボン酸のカルシウム塩、アルコキシル化カルシウム、および有機カルシウム化合物が挙げられる。上記ハロゲン化合物と同様に、種々の実施態様において、有機カルシウム化合物は、費用および利用可能性のため、余り好ましくない傾向がある。
【0027】
燃焼前または後に系中に添加する水銀吸着剤組成物に加えて、硫黄吸着剤組成物を、水銀吸着剤と共に添加することができる。したがって、好ましい実施態様において、硫黄および水銀を含有する石炭の燃焼に際して燃焼排ガス中の硫黄および水銀の両方の放出を低減する方法を提供する。好ましい実施態様において、該方法は、第一の吸着剤組成物および第二の吸着剤組成物を系中に付与することを含む。第一および第二の吸着剤組成物の一方は、燃焼前に石炭に添加し、および他方は、好ましくは温度が1500°F〜2700°Fの範囲にある、燃焼チェンバーの下流の対流経路のゾーンにおいて石炭燃焼系中に注入する。第一の吸着剤組成物は、好ましくはハロゲン成分を含有し、および燃焼ガス中の水銀を低減するのに有効なレベルで添加する。第二の吸着剤組成物は、少なくともカルシウム成分を含有し、および燃焼ガス中の硫黄を低減するのに有効なレベルで添加する。
【0028】
先の段落の実施態様において、ハロゲンを含有する第一の吸着剤組成物成分は、ハロゲン化合物、例えば上記の好ましい臭素およびヨウ素化合物を含んでなる。第二の吸着剤組成物は、石炭燃焼系からの硫黄の放出を低減するのに適当な形態のカルシウムを含有する。第二の吸着剤組成物は、カルシウム成分を含有し、好ましくは石炭中に存在する硫黄のモル量に基づいて、最低1:1のモル量のカルシウムを含有する。好ましくは、第二の吸着剤組成物と共に系に添加するカルシウムレベルは、石炭中の硫黄のモルに対して約3:1を超えない。より高いレベルでのカルシウムによる処理は、材料を浪費する傾向があり、および炉の障害の危険性があり、これにより燃焼方法を送らせ、および粒子制御系を負担することになる。
【0029】
本質的に、カルシウム含有硫黄吸着剤は、石炭燃焼の燃焼排ガスからの硫黄を除去するのに有効であるが、過剰の灰の生成を導く豊富な量を超えないレベルで添加することが望ましい。カルシウム成分を含有する第二の吸着剤組成物は、上記の任意の無機または有機カルシウム化合物を含有し得る。加えて、種々の工業用生成物、例えばセメントキルンダスト、石灰キルンダスト、ポルトランドセメントなどは、適当なレベルでカルシウムを含有する。種々の実施態様において、カルシウム含有硫黄吸着剤は、カルシウム粉末(例えば上記に列挙されたもの)を、アルミノケイ酸塩粘土(例えばモンモリロナイトまたはカオリン)と共に含有する。カルシウム含有硫黄吸着剤組成物は、好ましくは、燃焼により生成される硫酸カルシウムが炉の粒子制御系によって取り扱われるように、該硫酸カルシウムとの耐火性混合物を形成するのに十分なSiOおよびAlを含有する。好ましい実施態様において、カルシウム含有硫黄吸着剤は、最低2%のシリカおよび最低2%のアルミナを含有する。
【0030】
好ましい実施態様において、カルシウムおよび臭素を含有する水銀吸着剤組成物を、石炭に付与する。種々の実施態様において、吸着剤組成物は臭化カルシウムを含有する。あるいは、吸着剤組成物は、臭化カルシウム以外の臭素化合物および臭化カルシウム以外のカルシウム化合物を含有する。カルシウム源の限定されない例としては、臭化カルシウム、亜硝酸カルシウム、ポルトランドセメント、酸化カルシウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。次いで、カルシウムおよび臭素吸着剤組成物を含有する石炭を燃焼させ、灰および燃焼ガスを生成させる。望ましくは、燃焼ガス中の水銀レベルを、測定および監視する。次いで、吸着剤組成物によって石炭に添加する臭素のレベルを、燃焼ガス中の測定される水銀レベルに応じて、上昇させるか、または低下させるか調整するか、あるいは不変のままにする。種々の実施態様において、燃焼ガス中の硫黄レベルを測定し、および測定される硫黄レベルに基づいて石炭上に添加するカルシウムレベルを調整する方法をさらに提供する。好ましい実施態様において、石炭燃焼施設からの環境中への水銀放出は、90%以上低減される。本出願において使用される90%以上の水銀の低減は、燃焼される石炭中の少なくとも90%の水銀が捕捉されて、雰囲気中へのその放出が防止されることを意味する。好ましくは、十分な量の臭素を燃焼前に石炭上に添加して、環境中への水銀放出を90%以上低減させる。
【0031】
一局面において、本発明は、水銀含有燃料を燃焼させる施設から雰囲気中に放出される水銀レベルを低減することを含む。商業的に価値ある実施態様は、環境を保護し、および政府規制および条約義務を満たすために、石炭燃焼施設からの水銀放出を低減するための本発明の使用である。以下の議論の多くは、燃料として石炭を参照しているが、石炭燃焼の説明は、例示の目的のみであり、および本発明は、必ずしもこれらによって制限されないことを理解すべきである。
【0032】
種々の実施態様において、本発明の方法は、燃料の燃焼に際して施設から雰囲気中に放出される水銀レベルの所望の低減化をもたらすのに十分な処理レベルで水銀吸着剤を燃料または石炭燃焼系中に添加することを含む。適当な水銀吸着剤は上記の通りである。好ましい実施態様において、臭素および/またはヨウ素源を含有する水銀吸着剤は、好ましくは上述した無機臭化物またはヨウ化物塩の形態である。
【0033】
一実施態様において、水銀吸着剤組成物を、燃焼前に石炭上に添加する。石炭は、粒状石炭であり、および必要に応じて従来の手順にしたがって粉砕または粉末化される。吸着剤組成物を、液体としてまたは固体として石炭上に添加する。通常、固体吸着剤組成物は、粉末形態である。吸着剤を液体(通常、水中の一以上の臭素またはヨウ素塩の溶液)として添加する場合、一実施態様において、石炭は、バーナー中に供給されるときに湿ったままである。吸着剤組成物を、石炭燃焼施設にて、コンベア、スクリュー押し出し、または他の供給装置上にある間の石炭上に噴霧または混合することによって、石炭上に連続的に添加することができる。加えてまたはあるいは、吸着剤組成物を、石炭燃焼施設にてまたは石炭産地にて、石炭に別々に混合することができる。好ましい実施態様において、吸着剤組成物を、石炭がバーナー中に供給されるときに、液体または粉末として石炭に添加する。例えば、好ましい商業的実施態様において、吸着剤を、石炭を粉砕する粉砕器中に石炭を注入前に付与する。所望であれば、吸着剤組成物の添加率を、所望の水銀放出レベルを達成するために変化させることができる。一実施態様において、燃焼排ガス中の水銀レベルを監視し、および所望の水銀レベルを維持するために必要とされるように、吸着剤添加レベルを上昇させるか、または低下させるように調整する。
【0034】
水銀レベルを、工業的標準検出および決定方法を使用して、従来の分析機器を用いて監視することができる。一実施態様において、監視は、手動または自動のいずれかで定期的に行う。限定されない例において、水銀放出を、政府規制の順守を確実にするために1時間ごとに監視する。例えば、オンタリオヒドロ(Ontario Hydro)方法を使用する。この既知の方法において、ガスを所定の時間(例えば1時間)収集する。収集したガスから水銀を析出させ、およびそのレベルを適当な方法(例えば原子吸光)を使用して定量する。また、監視は、技術的および商業的な実行可能性に応じて、1時間に一度よりも多いまたは少ない頻度で行うことができる。市販の水銀連続監視装置を設置して、水銀を適当な頻度(例えば3〜7分ごとに一度)で測定し、数値化することができる。種々の実施態様において、水銀監視装置の出力を使用して、水銀吸着剤の添加率を制御する。監視結果に応じて、水銀吸着剤の添加率を、添加レベルを増大させ、低下させ、または不変のままにすることにより調整する。例えば、監視が、水銀レベルが所望よりも高いことを示す場合、吸着剤添加率を水銀レベルが所望のレベルに戻るまで増大させる。水銀レベルが所望のレベルである場合、吸着剤添加率を不変のままにすることができる。あるいは、吸着剤添加率を、監視が高水銀レベルを回避するためにそれを増大すべきであることを示すまで、低下させることができる。このように、水銀放出の低減が達成され、および吸着剤の過剰使用(灰の増大を伴う)が回避される。
【0035】
水銀を、対流経路中、適当な場所にて監視する。種々の実施態様において、雰囲気中に放出される水銀を、粒子制御系のきれいな側で監視および測定する。また、水銀を、粒子制御系の上流の対流経路中の地点にて監視することができる。実験は、水銀吸着剤を添加しない場合、石炭中の水銀の20〜30%程度が灰中に捕捉され、雰囲気中に放出されないことを示す。本発明による水銀吸着剤の添加は、水銀捕捉量を90%まで、またはそれより多く上昇させる(したがって、水銀放出量を低減する)。
【0036】
あるいはまたは加えて、水銀吸着剤組成物を、水銀レベルを低減させるために石炭燃焼施設の対流経路中に挿入または注入する。好ましくは、吸着剤組成物を、火球(石炭の燃焼により生じる)の下流の対流経路のゾーン中に添加する。このゾーンは、約1500°F超かつ2700〜3000°Fの火球の温度未満の温度を有する。種々の実施態様において、吸着剤の温度は、約1700°Fを超える。該ゾーンは、好ましくは約2700°F未満の温度を有する。種々の実施態様において、注入ゾーンは、2600°F未満、約2500°F未満、または約2400°F未満の温度を有する。限定されない例において、注入温度は1700°F〜2300°F、1700°F〜2200°F、または約1500°F〜約2200°Fである。燃焼前添加と同様に、吸着剤は液体または固体(粉末)の形態であり得、および有効レベルの臭素またはヨウ素化合物を含有する。種々の実施態様において、対流経路中への吸着剤の添加率は、上記の燃焼前の吸着剤の添加と同様に、水銀監視の結果に応じて変化する。
【0037】
好ましい実施態様において、吸着剤組成物を、上記のように、燃焼前に石炭に、および/または1500°F〜2700°Fゾーンにおいて対流経路に、多かれ少なかれ連続的に添加する。種々の実施態様において、自動フィードバック・ループは、水銀監視装置と吸着剤供給装置との間に与えられる。これは、方法を制御するための、放出された水銀の常時監視および吸着剤添加率の調整を可能にする。
【0038】
水銀吸着剤と共に、硫黄吸着剤を、好ましくは環境中への硫黄の放出を制御するために添加する。種々の実施態様において、硫黄吸着剤を、水銀吸着剤を添加するのと同じ場所で石炭燃焼系中に添加する。また、硫黄吸着剤を、技術的実行可能性に応じて、他の場所にて添加することもできる。種々の実施態様において、水銀および硫黄吸着剤の成分を、石炭に添加するか、または対流経路に注入する単独の吸着剤に組み合わせる。該吸着剤を、別々にまたは組み合わせて、液体または固体の形態で添加する。固体組成物は、通常、粉末の形態である。
【0039】
硫黄吸着剤は、好ましくはカルシウムを、燃焼される石炭中に存在する硫黄レベルとモルベースで少なくとも等しいレベルで含有する。大まかに、カルシウムレベルは、モルベースで硫黄レベルの約3倍以下にすべきである。1:1のCa:Sレベルは、効率的な硫黄除去のために好ましく、および3:1より上の比は、燃焼方法からの過剰の灰の生成を回避するために好ましい。また、好ましい範囲外の処理レベルも、本発明の一部である。適当な硫黄吸着剤は、例えば、共同出願人の仮出願60/583,420(2004年6月28日に出願)〔これらの開示は、参照により本明細書中に組み込まれる〕に記載されている。
【0040】
好ましい硫黄吸着剤としては、カルシウム塩(例えば酸化カルシウム、水酸化カルシウム、および炭酸カルシウム)を含有する塩基性粉末が挙げられる。カルシウムを含有する他の塩基性粉末としては、ポルトランドセメント、セメントキルンダスト、および石灰キルンダストが挙げられる。種々の実施態様において、硫黄吸着剤は、アルミノケイ酸塩粘土、モンモリロナイト、および/またはカオリンも含有する。好ましくは、硫黄吸着剤は、適当なレベルのシリカおよびアルミナを含有し(好ましい実施態様において、各々少なくとも約2重量%)、硫黄含有石炭の燃焼により形成される硫酸カルシウムと共に耐火性材料を形成する。シリカおよびアルミナを、別々にまたは他の材料(例えばポルトランドセメント)の成分として添加することができる。種々の実施態様において、硫黄吸着剤は、適当なレベルのマグネシウムも、例えば白雲石によって、またはポルトランドセメントの成分として与えられるMgOとして含有する。限定されない例において、硫黄吸着剤は、60〜71%のCaO、12〜15%のSiO、4〜18%のAl、1〜4%のFe、0.5〜1.5%のMgO、および0.1〜0.5%のNaOを含有する。
【0041】
水銀および硫黄吸着剤を、一緒にまたは別々に添加することができる。便宜上、水銀および硫黄吸着剤の成分を、石炭上に添加する前に、または対流経路中に注入する前に、組み合わせることができる。好ましい実施態様において、水銀吸着剤は、ハロゲン源に加えてカルシウムを含有する。種々の実施態様において、水銀吸着剤組成物は、硫黄を低減する成分もさらに含む。本発明は、水銀の放出および、好ましくは硫黄の放出も低減するために、種々の吸着剤組成物を石炭燃焼系中に添加することを提供する。
【0042】
種々の実施態様において、硫黄および水銀吸着剤を別々に添加する。例えば、水銀吸着剤を燃焼前に石炭に添加し、および硫黄吸着剤を燃焼後に添加する。あるいは、水銀吸着剤を燃焼後に添加し、一方、硫黄吸着剤を燃焼前に添加する。添加様式を問わず、好ましい実施態様において、種々の吸着剤の添加率を、必要に応じて監視により決定される放出された硫黄および水銀の値に基づいて、調整する。
【0043】
水銀および硫黄吸着剤を、所望の放出低減量を達成するのに必要とされるレベルで添加する。好ましい水銀低減は、燃焼される石炭中の総水銀に基づいて、70%以上、好ましくは80%以上、およびより好ましくは90%以上である。重量ベースで、水銀吸着剤を、通常、石炭の重量に基づいて約0.01〜10%のレベルで添加する。好ましい範囲としては、0.05〜5重量%および0.1〜1重量%が挙げられる。処理レベルは、吸着剤中のハロゲン含量および所望される達成すべき水銀放出レベルに応じて変化する。0.3%のレベルは、多くの実施態様に適当である。種々の実施態様において、初期処理レベルを、所望の放出レベルを達成するために、上記で議論したように監視に基づいて、必要に応じて上昇させるか、または低下させるか調整する。吸着剤を、バッチ式でまたは連続的に添加することができる。吸着剤の連続の添加を伴う実施態様において、処理レベルは、燃焼される石炭の供給率に基づく。例えば石炭生産地または分離混合施設にて、吸着剤をバッチ式で添加する場合、処理レベルは、処理される石炭の重量に基づく。好ましい実施態様において、添加率または処理レベルを、水銀放出レベルの測定に基づいて調整する。
【0044】
同様に、硫黄吸着剤を、放出される硫黄を許容可能なまたは所望のレベルに低減するのに十分なレベルまたは比率で添加する。種々の実施態様において、約1〜9重量%の硫黄吸着剤を添加する。レベルまたは比率を、所望の場合、監視により決定される放出された硫黄のレベルに基づいて、調整することができる。
【0045】
好ましい実施態様において、水銀および硫黄を、工業的標準方法、例えば米国材料試験協会(ASTM)により公表されるもの、または国際標準化機構(ISO)により公表される国際規格を使用して監視する。分析機器を含む装置は、好ましくは水銀および硫黄吸着剤の添加地点の下流の対流経路中に配置される。好ましい実施態様において、水銀監視装置を、粒子制御系のきれいな側上に配置する。種々の実施態様において、測定される水銀または硫黄のレベルを使用して、石炭燃焼系中への吸着剤組成物の添加率を調整するために作動または制御されるポンプ、ソレノイド、噴霧器、および他のデバイスにフィードバックシグナルを与える。あるいはまたは加えて、吸着剤添加率を、観察された水銀および/または硫黄のレベルに基づいて、人間オペレータによって調整することができる。
【0046】
さらなる例として、本発明の一実施態様は、臭化カルシウムおよび水を含有する液体水銀吸着剤を、燃焼前に生石炭または破砕された石炭に直接添加することを含む。臭化カルシウムを含有する液体水銀吸着剤の添加は、臭化カルシウムが吸着剤の約50重量%であると仮定して計算した場合、湿ベースで0.1〜5%、好ましくは0.025〜2.5%の範囲である。典型的な実施態様において、50%の臭化カルシウムを含有する液体吸着剤を、約1%燃焼前に石炭上に添加する。
【0047】
別の実施態様において、本発明は、臭化カルシウム溶液を燃料ならびに2200°F〜1500°Fの範囲の温度を特徴とする炉のゾーンの両方に直接添加することを含む。この実施態様において、液体水銀吸着剤を、燃焼前および燃焼後の両方に添加する。臭化カルシウムの好ましい処理レベルは、燃焼前の添加と燃焼後の添加との間に、任意の割合で分けることができる。
【0048】
別の実施態様において、本発明は、2200°F〜1500°Fの範囲の温度を特徴とする炉のゾーン中のガス流のみへの、例えば上記で議論したような臭化カルシウム溶液の添加を提供する。
【0049】
本発明は、上記のように、種々の好ましい実施態様に関して記載されている。本発明のさらなる限定されない開示は、以下の実施例で与えられる。それらは、液体のみ、および液体/固体吸着剤系を、燃料の水銀浄化のために付与する場合の本発明の有効性を示す。
【実施例】
【0050】
実施例において、種々のBTU値、硫黄、および水銀含量の石炭を、ノースダコタ大学のエネルギー環境研究センター(EERC)にてCTF炉中で燃焼させる。水銀および硫黄の低減%を、燃焼前の石炭中の元素の総量に基づいて報告する。
【0051】
〔実施例1〕
本実施例は、パウダーリバーベイスン亜瀝青炭に付与する場合の臭化カルシウム/水溶液の水銀収着能を示す。燃焼される石炭は、含水量2.408%、灰含量4.83%、硫黄含量0.29%、発熱量8,999BTUおよび水銀含量0.122μg/gを有する。吸着剤を含まない燃焼は、排気ガス中13.9μg/mの水銀レベルの結果になる。燃料を、その70%が200メッシュを通過するまで粉砕し、および石炭の重量に基づいて、6%の吸着剤粉末および0.5%の吸着剤液体と混合する。該粉末は、40〜45重量%のポルトランドセメント、40〜45重量%の酸化カルシウム、および残りのカルシウムまたはナトリウムモンモリロナイトを含有する。該液体は、水中の臭化カルシウムの50重量%溶液である。
【0052】
吸着剤を、燃料と3分間直接混合し、次いで、燃焼のために保存する。処理した石炭を炉に供給する。燃焼は、バグハウス出口にて90%の水銀(総量)の除去およびバグハウス出口で測定される80%の硫黄除去の結果になる。
【0053】
〔実施例2〕
本実施例は、種々の水銀含量の3つの瀝青炭へ付与した粉末および液体吸着剤の使用を示す。全ての石炭を、実施例#1のように、吸着剤を同じ添加レベルで用いて調製する。
【0054】
【表1】

【0055】
〔実施例3〕
本実施例は、燃焼後の水銀吸着剤の添加を示す。ピッツバーグシーム−ベイリー石炭を、その70%が200メッシュを通過するまで粉砕する。吸着剤を、燃焼前の燃料に添加しない。水中50%の臭化カルシウムを含有する液体吸着剤を、2200°F〜1500°Fのゾーン中の炉のガス流中にダクト注入する。液体吸着剤を、石炭の約1.5重量%の比率で注入する。
【0056】
【表2】

【0057】
〔実施例4〕
本実施例は、燃焼後の液体および粉末吸着剤の添加を示す。吸着剤を、燃焼前の燃料に直接添加しない。両燃料は瀝青質であり、およびフリーマンクラウンIIIおよびピッツバーグシーム−ベイリー石炭として知られている。両方の場合とも、石炭を、燃焼前にその70%が200メッシュ以下になるまで粉砕した。粉末および液体吸着剤は、実施例1で使用したものである。液体および粉末の添加率(燃焼される石炭の重量に基づく百分率)、ならびに水銀および硫黄低減レベルを表に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
〔実施例5〕
ピッツバーグシーム−ベイリー石炭を、実施例1のように調製する。実施例1の粉末吸着剤を、燃焼前の石炭に9.5重量%で添加する。実施例1の液体吸着剤(水中50%臭化カルシウム)を、燃焼後、1500°F〜2200°Fゾーン中に、石炭の燃焼率に基づいて0.77%の比率で注入する。硫黄低減は56.89%であり、水銀低減は93.67%である。
【0060】
〔実施例6〕
ケンタッキーブレンド石炭を、実施例1のように調製する。実施例1の粉末吸着剤を、燃焼前に石炭に6重量%で添加する。実施例1の液体吸着剤(水中50%臭化カルシウム)を、燃焼後、1500°F〜2200°Fゾーン中に、石炭の燃焼率に基づいて2.63%の比率で注入する。硫黄低減は54.91%であり、水銀低減は93.0%である。
【0061】
種々の好ましい実施態様に関して本発明を上記で説明してきたが、本発明は、開示された実施態様に限定されることを意図しないことを理解すべきである。むしろ、当業者が該開示を読むことで生じる変形および改変もまた、添付した請求項によってのみ限定および定義される本発明の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を燃焼させて雰囲気中に放出される水銀の量を低減する方法であって、
ハロゲン化合物を含んでなる吸着剤組成物を石炭上に付与すること、
石炭を石炭炉に供給すること、
吸着剤を含有する石炭を石炭炉中で燃焼させ、灰および燃焼ガスを生成させること、
燃焼ガス中の水銀レベルを測定すること、および
水銀レベルの値に基づいて石炭に付与する吸着剤組成物の量を調整すること
を含む、方法。
【請求項2】
吸着剤組成物は臭素化合物またはヨウ素化合物を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
吸着剤組成物は臭化物を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
吸着剤組成物は臭化カルシウムを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
臭素化合物を含有する溶液を石炭上に付与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ヨウ素化合物を含有する溶液を石炭上に付与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
固体組成物を石炭上に付与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
吸着剤組成物は臭化カルシウムおよび硝酸カルシウムを含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
吸着剤組成物は臭化カルシウムおよび亜硝酸カルシウムを含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
吸着剤組成物は硝酸塩化合物をさらに含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
吸着剤組成物は亜硝酸塩化合物をさらに含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
吸着剤組成物は水を含んでなり、および石炭は炉に入るときに水で湿っている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
臭化カルシウムを含む水溶液を石炭上に噴霧することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
溶液は5重量%〜60重量%の臭化カルシウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
溶液は20重量%〜60重量%の臭化カルシウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
溶液は50重量%より多くの臭化カルシウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
溶液は、硝酸塩化合物、亜硝酸塩化合物および硝酸塩化合物と亜硝酸塩化合物との組合せからなる群から選択される化合物をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
溶液は、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、または硝酸カルシウムおよび亜硝酸カルシウムの両方を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
硫黄吸着剤を添加して燃焼ガス中の硫黄量を低減することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
水銀レベルを常時監視することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
水銀レベルを定期的にサンプリングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
系外に放出される水銀レベルを低減させた石炭燃焼系であって、
臭素および/またはヨウ素を含んでなる吸着剤組成物、
燃焼チェンバー、燃焼ガスを燃焼チェンバーから対流パスの外側の出口に導くための対流パス、および対流パスに配置された粒子収集デバイスを含む石炭炉、
石炭を燃焼用の炉に供給するための装置、
対流パス中に配置された、対流パス中の水銀レベルを測定するための装置、
石炭を炉中に供給する前に吸着剤組成物を石炭上に供給するために配置された吸着剤供給装置、および
水銀測定装置からの出力シグナルを受け取るために配置され、および出力シグナルの値に基づいて吸着剤の供給を調整するための吸着剤供給装置に操作的に接続された制御装置
を含む、系。
【請求項23】
吸着剤組成物は臭化物化合物を含んでなる、請求項22に記載の系。
【請求項24】
吸着剤組成物は臭化カルシウムを含んでなる、請求項22に記載の系。
【請求項25】
吸着剤組成物は水および可溶性臭素化合物を含んでなる、請求項22に記載の系。
【請求項26】
吸着剤組成物は硝酸塩化合物をさらに含んでなる、請求項22に記載の系。
【請求項27】
硝酸塩化合物は硝酸カルシウムを含んでなる、請求項26に記載の系。
【請求項28】
吸着剤組成物は亜硝酸塩化合物をさらに含んでなる、請求項22に記載の系。
【請求項29】
亜硝酸塩化合物は亜硝酸カルシウムを含む、請求項28に記載の系。
【請求項30】
炉および燃焼ガスのための対流経路を含む石炭燃焼系における石炭の燃焼の間に放出される硫黄および水銀の量を低減する方法であって、
第一の吸着剤組成物および第二の吸着剤組成物を系中に付与することを含み、
ここで第一および第二の吸着剤組成物の一方を燃焼前に石炭に添加し、および他方を燃焼チェンバーの下流の対流経路のゾーンにおいて石炭燃焼系に注入し、および
第一の吸着剤組成物は臭素を含んでなり、およびこれを燃焼ガス中の水銀を低減するのに有効なレベルで添加し、および第二の吸着剤組成物はカルシウムを含んでなり、およびこれを燃焼ガス中の硫黄を低減するのに有効なレベルで添加する、方法。
【請求項31】
燃焼ガス中の水銀レベルを監視すること、および添加する第一の吸着剤組成物の量を水銀レベルの値に基づいて調整することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
燃焼ガス中の硫黄レベルを監視すること、および石炭上に添加する第二の吸着剤組成物の量を硫黄レベルに基づいて調整することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
環境中への水銀放出は、石炭に臭素を添加しない場合に生じる放出に比べて90%以上低減される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
環境中への水銀放出を臭素を添加せずに石炭を燃焼させる場合に生じる放出に比べて90%以上低減させるのに十分な量の臭素を、石炭上に添加することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
第一の吸着剤組成物は臭化カルシウムを含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
第一の吸着剤組成物は、臭化カルシウム以外の臭素化合物および臭化カルシウム以外のカルシウム化合物を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
第二の吸着剤組成物は、臭化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、ポルトランドセメント、酸化カルシウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される成分を含有する少なくとも一つのカルシウムを含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
環境中に放出される所望されない元素のレベルを低減させて石炭を燃焼させる方法であって、
カルシウムおよび臭素を含んでなる吸着剤組成物を石炭上に添加すること、
石炭を燃焼させて灰および燃焼ガスを生成させること、
燃焼ガス中の水銀レベルを測定すること、および
水銀レベルに基づいて石炭に添加する臭素レベルを調整すること
を含む、方法。
【請求項39】
燃焼ガス中の硫黄レベルを測定すること、および硫黄レベルに基づいて石炭に添加するカルシウムレベルを調整することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
環境中への水銀放出は、石炭に臭素を添加しない場合に生じる放出に比べて90%以上低減される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
環境中への水銀放出を臭素を添加せずに石炭を燃焼させる場合に生じる放出に比べて90%以上低減させるのに十分量の臭素を、石炭上に添加することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
吸着剤組成物は臭化カルシウムを含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
吸着剤組成物は、臭化カルシウム以外の臭素化合物および臭化カルシウム以外のカルシウム化合物を含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
吸着剤組成物は、臭化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、ポルトランドセメント、酸化カルシウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される成分を含有する少なくとも一つのカルシウムを含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
吸着剤組成物は、ポルトランドセメントと、酸化カルシウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムの少なくとも一つと、アルミノケイ酸塩粘土と、少なくとも一つの臭素化合物とを含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも一つの臭素化合物は臭化物化合物を含んでなる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも一つの臭素化合物は臭化カルシウムを含んでなる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
吸着剤組成物は、亜硝酸塩化合物、硝酸塩化合物、または硝酸塩化合物と亜硝酸塩化合物との組合せをさらに含んでなる、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
吸着剤組成物は、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、または硝酸カルシウムと亜硝酸カルシウムとの組合せを含んでなる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
臭素化合物を含んでなる液体組成物を石炭上に付与することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項51】
液体組成物は、亜硝酸塩化合物、硝酸塩化合物、または亜硝酸塩化合物と硝酸塩化合物との組合せをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
液体組成物は、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、または硝酸カルシウムと亜硝酸カルシウムとの組合せを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
液体組成物は臭化カルシウムを含んでなる、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
カルシウムを含んでなる粉末吸着剤を石炭上に付与することをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
粉末吸着剤は、ポルトランドセメントと、酸化カルシウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムの少なくとも一つと、アルミノケイ酸塩粘土とを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
炉および燃焼ガスのための対流経路を含む石炭燃焼系における水銀含有石炭の燃焼に際して雰囲気中に放出される水銀レベルを低減する方法であって、
炉中で石炭を燃焼させること、および
ハロゲンを含んでなる吸着剤を、燃焼ガスが1500°F〜2200°Fの温度である地点にて対流経路中に注入すること
を含む、方法。
【請求項57】
吸着剤は臭素化合物を含んでなる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
吸着剤はカルシウムをさらに含んでなる、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
吸着剤は臭化カルシウムを含んでなる、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
石炭の重量に基づいて0.01〜10重量%のレベルの臭化カルシウムを添加することを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
レベルは0.05〜5重量%である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
レベルは0.1〜1重量%である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
吸着剤は臭化カルシウムの水溶液を含んでなる、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
吸着剤は5〜50重量%の臭化カルシウムを含んでなる、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
硫黄吸着剤を燃焼前または燃焼後のいずれかで添加することをさらに含み、ここで硫黄吸着剤はカルシウムを含んでなる塩基性粉末を含んでなる、請求項56に記載の方法。

【公表番号】特表2008−537587(P2008−537587A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501854(P2008−501854)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/013831
【国際公開番号】WO2006/101499
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507002343)ノックス・ツー・インターナショナル・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】NOX II INTERNATIONAL, LTD.
【Fターム(参考)】