説明

石炭灰の改質方法

【課題】未燃炭素などの不純物の含有量が少なく、再資源化が可能な石炭灰を低コストでかつ効率的に回収する石炭灰の改質方法を提供する。
【解決手段】本発明の石炭灰の改質方法は、石炭灰に高圧の水を噴射し、この石炭灰に含まれる未燃炭素を主成分とする不純物を除去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートや建材などに用いられる石炭灰(フライアッシュ)に含まれる不純物を除去し、石炭灰を有効利用するための石炭灰の改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭灰は、主に石炭を燃料とする石炭火力発電所から大量に発生する。この石炭灰には、燃焼しなかった未燃炭素(未燃カーボン)が数%〜十数%程度含まれている。特に近年、公害を防止するためや、窒素酸化物の排出量を抑制するために、石炭の燃焼温度を下げているので、石炭灰に含まれる未燃炭素量は増加傾向にある。
この未燃炭素は、石炭灰を利用する上で、次のような問題を引き起こすことがある。
例えば、排気ガス集塵機で捕集されたフライアッシュと呼ばれる微細な球状の石炭灰を、セメントやコンクリート製品の混和材に使用した場合、石炭灰中に未燃炭素が多量に含まれていると、コンクリート混練時に、減水剤やAE剤(空気連行剤)などの化学混和剤が未燃炭素に吸収されるため、コンクリートの空気量調整が極めて難しくなり、化学混和剤を増量する必要があった。また、コンクリートの打設時に、ブリージング水と共に未燃炭素が浮き上がり、コンクリートの打継部や表面部の美観を著しく損なうという問題がある。
【0003】
一方、石炭灰を人工軽量骨材の原料に使用した場合、その石炭灰に未燃炭素が多く含まれていると、人工軽量骨材の品質が低下するという問題がある。
そのため、未燃炭素量の少ない石炭灰のみがコンクリート製品の混和材として用いられ、未燃炭素量の多い石炭灰はその大部分が産業廃棄物として埋立処分されている。
そこで、このような問題を解決するために、石炭灰に含まれる未燃炭素を除去するために、粉末状の石炭灰を、水と、水よりも密度の小さい非水溶媒(油類)とともに攪拌混合した後、静置して、石炭灰を含む水層と、未燃炭素を多く含む非水溶媒層とに分離する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、石炭灰の水スラリーに、捕集剤(界面活性剤)を添加して未燃炭素を疎水化する疎水化工程と、この石炭灰の水スラリーに起泡剤を添加して気泡を発生させ、その気泡に未燃炭素を付着させて浮上させる浮選工程とを備えた石炭灰の処理方法において、石炭灰の水スラリーに酸を添加した後、捕集剤としてイオン性捕集剤を添加することにより、石炭灰に含まれる未燃炭素を効率よく分離し、製品回収率を高める方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、石炭灰の水スラリーに捕集剤(油類)を添加した後、液中攪拌装置にて、この水スラリーに剪断力を加えて、石炭灰に含まれる未燃炭素を効率よく分離し、製品回収率を高める方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3060665号公報
【特許文献2】特許第3505000号公報
【特許文献3】特許第3613347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の粉体状の石炭灰を、水と油類とともに攪拌混合して、石炭灰を含む水層と、未燃炭素を多く含む非水溶媒層とに分離する方法では、石炭灰を、水と油類とともに攪拌混合した後、静置する必要があるため、未燃炭素の除去に長時間を必要とする上に、石炭灰を含む水層からは石炭灰を回収し、未燃炭素を多く含む非水溶媒層からは未燃炭素を回収しなければならないので、石炭灰に含まれる未燃炭素を効率的に分離することが難しいという問題があった。
また、上記の石炭灰の水スラリーに、酸とイオン性捕集剤を順に添加して未燃炭素を疎水化し、この石炭灰の水スラリーに起泡剤を添加して気泡を発生させ、その気泡に未燃炭素を付着させて浮上させることにより未燃炭素を分離する方法では、石炭灰の水スラリーに添加する酸やイオン性捕集剤が必要となり、未燃炭素の分離に要するコストが上昇するという問題があった。
【0006】
さらに、石炭灰の水スラリーに捕集剤を添加した後、液中攪拌装置にて、この水スラリーに剪断力を加えて、石炭灰に含まれる未燃炭素を分離する方法では、浮選を利用して石炭灰に含まれる未燃炭素を除去するために、灯油などの捕集剤を使用するため、処理後の石炭灰および排水に捕集剤が不純物として残留するという問題があった。また、水スラリーに剪断力を加えるための液中攪拌装置が大掛かりとなり、未燃炭素の分離に要するコストが上昇するという問題があった。
そして、上記の3つの方法に共通の問題としては、捕集剤として、油類、界面活性剤、酸などを用いるため、排水処理に大きなコストがかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、未燃炭素などの不純物の含有量が少なく、再資源化が可能な石炭灰を低コストでかつ効率的に回収する石炭灰の改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、石炭灰に、水よりも密度が低い樹脂粉末を添加し、この石炭灰と樹脂粉末との混合物に高圧の水を噴射し、石炭灰から不純物を除去するとともに、不純物を樹脂粉末に吸着させることにより、不純物の含有量が少ない石炭灰を効率的に回収することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の石炭灰の改質方法は、石炭灰に高圧の水を噴射し、この石炭灰に含まれる未燃炭素を主成分とする不純物を除去することを特徴とする。
【0010】
前記石炭灰に、水よりも密度が低い樹脂粉末を添加し、この石炭灰と樹脂粉末との混合物に高圧の水を噴射し、前記石炭灰から不純物を除去するとともに、前記不純物を前記樹脂粉末に吸着させ、この不純物を吸着した樹脂粉末を浮遊させて分離除去することが好ましい。
前記樹脂粉末の平均粒径は0.5mm以上かつ10mm以下であることが好ましい。
前記樹脂粉末の前記石炭灰に対する添加量は5重量%以上かつ50重量%以下であることが好ましい。
【0011】
前記不純物を吸着し、前記石炭灰から分離された樹脂粉末をセメント製造用燃料として用いることが好ましい。
前記高圧の水の吐出圧力は、25MPa以上かつ250MPa以下であることが好ましい。
前記高圧の水の噴射による不純物の除去処理を2回以上繰り返すことが好ましい。
【0012】
前記不純物の除去処理に用いられた水をろ過処理後、2回以上繰り返し使用することが好ましい。
前記不純物は、未燃炭素、遊離石灰および硫酸塩であることが好ましい。
前記樹脂粉末は、水よりも密度が低く、水に浮くものであれば種類を問わないが、発泡スチロール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、高分子キレート樹脂の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。また、前記樹脂粉末は、廃棄物由来の安価な樹脂を粉砕して得られたものが特に好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の石炭灰の改質方法によれば、石炭灰に高圧の水を噴射し、この石炭灰に含まれる未燃炭素を主成分とする不純物を除去するので、従来、未燃炭素の含有量が多過ぎて、再利用が困難であった石炭灰を、低コストで改質(再資源化)することができる。
このように、本発明の石炭灰の改質方法によれば、低コストで石炭灰を改質することができるので、埋立て処分量が低減されるばかりでなく、セメント製造用の石炭などの資源の節減にもなるため、社会的、経済的なメリットは大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の石炭灰の改質方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
本発明の石炭灰の改質方法は、石炭灰に高圧の水を噴射し、この石炭灰に含まれる未燃炭素を主成分とする不純物を除去する方法である。
【0016】
より詳細には、本発明の石炭灰の改質方法は、石炭灰に、水よりも密度が低い樹脂粉末を添加し、この石炭灰と樹脂粉末との混合物に高圧の水を噴射し、石炭灰の表面に付着している未燃炭素を主成分とする不純物を除去するとともに、この不純物を樹脂粉末に吸着させた後、この不純物を吸着した樹脂粉末を浮遊させて分離除去する方法である。
【0017】
本発明において、石炭灰とは、主に石炭を燃料とする石炭火力発電所から発生するものである。
また、本発明において、石炭灰に含まれる不純物は、石炭を燃焼させた際、燃焼しなかった未燃炭素を主成分とし、遊離石灰(フリーライム)、硫酸塩などである。
【0018】
本発明において、未燃炭素などの不純物を吸着させるための樹脂粉末としては、水よりも密度が低いものが用いられ、例えば、発泡スチロール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、高分子キレート樹脂の群から選択される1種または2種以上の樹脂粉末である。
【0019】
この樹脂粉末の平均粒径は、0.5mm以上かつ10mm以下であることが好ましく、1mm以上かつ5mm以下であることがより好ましい。
樹脂粉末の平均粒径を0.5mm以上かつ10mm以下とした理由は、樹脂粉末の平均粒径が0.5mm未満では、嵩密度が著しく低くなって、すなわち、樹脂粉末の嵩が大きくなり過ぎて取り扱いが困難となる、一方、樹脂粉末の平均粒径が10mmを超えると、比表面積が小さくなり過ぎて、未燃炭素などの不純物を完全に吸着しきれないからである。
【0020】
また、樹脂粉末の石炭灰に対する添加量は5重量%以上かつ50重量%以下であることが好ましく、5重量%以上かつ25重量%以下であることがより好ましい。
樹脂粉末の石炭灰に対する添加量を5重量%以上かつ50重量%以下とした理由は、樹脂粉末の石炭灰に対する添加量が5重量%未満では、石炭灰に対する樹脂粉末の添加量が不十分であり、不純物を完全に吸着しきれないからであり、一方、樹脂粉末の石炭灰に対する添加量が50重量%を超えると、樹脂粉末の添加量が過剰となり、不純物を吸着した後、石炭灰と分離するための処理コストが上昇するからである。また、石炭灰に含まれる遊離石灰、硫酸塩などの水溶性の不純物は、洗浄水に移行することで石炭灰から除去される。
【0021】
高圧の水は、ウォータージェットと呼ばれ、超高圧ポンプにより加圧加速された水であり、その猛烈な衝突力を利用してコンクリート構造物のはつり、鋼構造物の塗膜や錆びの除去、あるいは、切断などに利用されているものである。高圧の水を発生する装置は比較的安価で、かつ、ランニングコストも安価である。
【0022】
不純物を含む石炭灰に噴射する高圧の水の吐出圧力は、25MPa以上かつ250MPa以下であることが好ましく、50MPa以上かつ200MPa以下であることがより好ましい。
高圧の水の吐出圧力が25MPa未満では、石炭灰の表面に存在する未燃炭素、遊離石灰、硫酸塩などの不純物を十分に除去することが出来ない。一方、高圧の水の吐出圧力が250MPaを超えると、水の石炭灰に対する衝突エネルギーが大きいため、石炭灰の表面に存在する不純物の除去効率が高くなるものの、従来技術よりも高コストになる。なお、高圧の水の吐出圧力とそれを発生させる超高圧ポンプの価格は比例するため、処理対象となる石炭灰の性状に合せて適切な処理コストとなるように、高圧の水の吐出圧力、および、それを発生させる装置を選択することが好ましい。
【0023】
さらに、高圧の水の吐出量は、処理対象となる石炭灰の量に応じて適宜調整されるが、通常、石炭灰の3〜10倍程度に調整される。このように高圧の水の吐出量を石炭灰の3〜10倍程度に調整することにより、石炭灰の表面に存在する未燃炭素、遊離石灰、硫酸塩などの不純物の除去率はおよそ90%に達する。
【0024】
また、本発明では、上述の高圧の水の噴射による石炭灰の表面に存在する不純物の除去処理を2回以上繰り返すことが好ましい。このように高圧の水の噴射による処理を2回以上繰り返すことにより、1回の処理よりも、石炭灰の表面に存在する不純物の除去率をより高めることができる。
【0025】
さらに、本発明では、上述の高圧の水の噴射による石炭灰の表面に存在する不純物の除去処理に用いられた水をろ過処理後、2回以上繰り返し使用することが好ましい。このように高圧の水の噴射による石炭灰の表面に存在する不純物の除去処理に用いられた水を2回以上繰り返し使用することにより、処理コストの上昇を抑えることができる。
【0026】
また、石炭灰の表面に存在する不純物を樹脂粉末に吸着させた後、この不純物を吸着した樹脂粉末を浮遊させて、石炭灰から分離すれば、この不純物を吸着した樹脂粉末をセメント製造用燃料として用いることもできる。このように不純物を吸着した樹脂粉末をセメント製造用燃料として利用すれば、セメント製造用の石炭などの資源を節減することができる。
【0027】
なお、石炭灰にホウ素や六価クロムなどの有害成分が含まれている場合は、前述の有害成分を吸着するキレート樹脂を全量または一部置換することで効率的かつ安全に除去することができる。
【0028】
次に、不純物を含む石炭灰に、高圧の水を噴射する方法を説明する。
まず、不純物を含む石炭灰と、上記の樹脂粉末とを、密閉可能な円筒型の容器に入れる。
次いで、円筒型の容器に、中心部に孔を設けた蓋を被せ、この蓋をボルトなどで円筒型の容器に固定する。
次いで、蓋の孔に、高圧の水を噴射するノズル先端を隙間なく挿入する。
次いで、ノズル先端から円筒型の容器内に、吐出圧力25MPa以上かつ250MPa以下、不純物を含む石炭灰1kgに対して吐出量5リットル/分以上かつ15リットル/分以下の高圧の水を、3分以上かつ1分以下噴射する。
【0029】
不純物を含む石炭灰を入れる容器としては、特に限定されないが、容器と同一の材質からなる蓋により密閉可能であり、その内部に25MPa以上かつ250MPa以下の高圧の水を噴射しても、変形したり、破損したりしない材質および厚みを有するものが用いられる。
このような容器の材質としては、鋳鉄、炭素鋼などの一般的な鉄鋼製品が挙げられる。
また、このような材質からなる容器の厚みは、10mm以上であることが好ましい。
さらに、容器の形状は、円筒型に限定されないが、石炭灰を入れた容器内に高圧の水を噴射した際、高圧の水による乱流が生じ易い内部形状を有するものが好ましい。石炭灰を入れた容器内に高圧の水を噴射した際、高圧の水による乱流が生じれば、石炭灰の表面に存在する不純物をより効率的に除去することができる。
【0030】
上述のように高圧の水を噴射することにより、石炭灰の表面に付着している未燃炭素を主成分とする不純物を除去するとともに、この不純物を樹脂粉末に吸着させることができる。
そして、高圧の水の噴射を終了した後、密閉容器内に噴射した水を全て排出せずに、所定量の水を密閉容器内に残しておけば、水よりも比重の低い樹脂粉末は、不純物を吸着したまま水面に浮遊する。
そこで、水面を浮遊している樹脂粉末を分離除去した後、濾過などにより、石炭灰を分離、回収する。
【0031】
本発明の石炭灰の改質方法によれば、石炭灰に、水よりも密度が低い樹脂粉末を添加し、この石炭灰と樹脂粉末との混合物に高圧の水を噴射し、石炭灰の表面に付着している未燃炭素を主成分とする不純物を除去するとともに、この不純物を樹脂粉末に吸着させた後、この不純物を吸着した樹脂粉末を浮遊させて分離除去するので、従来技術よりも低コスト、かつ、非常に高い効率にて、石炭灰に含まれる未燃炭素、遊離石灰、硫酸塩などの不純物を除去することができる。したがって、これまでに廃棄物として大半が埋立処分されていた石炭灰を再資源化することができるとともに、廃棄物として大半が埋立処分されていた石炭灰をセメント原料として多量に使用することが可能となり、埋立処分量を低減することができ、石炭などの天然資源の使用量を節減することができるため、社会的、経済的なメリットは大きい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
「使用材料」
石炭灰として、日本国内の石炭火力発電所の集塵機から回収されたもの(フライアッシュ)を用いた。
樹脂粉末として、廃発泡スチロール粉(平均粒径10mm未満に破砕されたもの)を用いた。
また、水は上水道水を用いた。
「使用装置」
高圧の水を廃棄物に噴射する装置として、ウォータージェット(コンクリート構造物などのはつり用、最高吐出圧力252MPa、定格吐出量1リットル/分)を用いた。
【0034】
「未燃炭素の除去処理」
「実施例1」
石炭灰を、105℃にて24時間乾燥した。
20℃の恒温室内にて、内径150mm、内部高さ300mm、厚み約10mmの鋳鉄製円筒型容器に、石炭灰200gと廃発泡スチロール粉10gを加え、中心部に直径40mmの孔を設けた外径180mm、厚み5mmの鋼鉄製の蓋を被せ、この蓋を直径5mmの鋼鉄製ボルト4本で鋳鉄製円筒型容器に固定した。
次いで、鋼鉄製の蓋の孔に、ウォータージェットのノズル先端を隙間なく挿入した。
次いで、水道水を吐出圧力250MPa、吐出量1リットル/分のウォータージェットとして、鋳鉄製円筒型容器内に3分間噴射した。
ウォータージェットの噴射終了後、1分間静置し、鋳鉄製円筒型容器を傾けて、未燃炭素を吸着した廃発泡スチロール粉およびその他の不純物の懸濁した上澄み液を分離除去し、改質石炭灰Aを得た。
【0035】
「実施例2」
実施例1で得られた改質石炭灰Aを鋳鉄製円筒型容器に戻し、再度、発泡スチロール粉10gを加え、水道水を吐出圧力250MPa、吐出量1リットル/分のウォータージェットとして、鋳鉄製円筒型容器内に3分間噴射した後、実施例1と同様の手順により固液分離を行い、改質石炭灰Bを得た。
【0036】
「実施例3」
実施例1と同様の手順により、水道水を吐出圧力125MPa、吐出量1リットル/分のウォータージェットとして、鋳鉄製円筒型容器内に3分間噴射した後、固液分離を行い、改質石炭灰Cを得た。
【0037】
「実施例4」
実施例3で得られた改質石炭灰Cを鋳鉄製円筒型容器に入れ、発泡スチロール粉10gを加え、水道水を吐出圧力125MPa、吐出量1リットル/分のウォータージェットとして、鋳鉄製円筒型容器内に3分間噴射する処理を2回繰り返した後、実施例1と同様の手順により固液分離を行い、改質石炭灰Dを得た。
【0038】
「実施例5」
実施例1と同様の手順により、水道水を吐出圧力50MPa、吐出量1リットル/分のウォータージェットとして、鋳鉄製円筒型容器内に3分間噴射した後、固液分離を行い、改質石炭灰Eを得た。
【0039】
「実施例6」
実施例5で得られた改質石炭灰Eを鋳鉄製円筒型容器に入れ、発泡スチロール粉10gを加え、水道水を吐出圧力50MPa、吐出量1リットル/分のウォータージェットとして、鋳鉄製円筒型容器内に3分間噴射する処理を2回繰り返した後、実施例1と同様の手順により固液分離を行い、改質石炭灰Fを得た。
【0040】
「実施例7」
実施例1と同様の手順により、水道水を吐出圧力25MPa、吐出量1リットル/分のウォータージェットとして、鋳鉄製円筒型容器内に3分間噴射した後、固液分離を行い、改質石炭灰Gを得た。
【0041】
「実施例8」
実施例7で得られた改質石炭灰Gを鋳鉄製円筒型容器に入れ、発泡スチロール粉10gを加え、水道水を吐出圧力25MPa、吐出量1リットル/分のウォータージェットとして、鋳鉄製円筒型容器内に3分間噴射する処理を2回繰り返した後、実施例1と同様の手順により固液分離を行い、改質石炭灰Hを得た。
【0042】
「比較例1」
20℃恒温室内にて、実施例1と同じ鋳鉄製円筒型容器に、石炭灰200gと廃発泡スチロール粉10gを加え、水道水3リットルを加えて、小型ハンドミキサーにより、石炭灰と廃発泡スチロール粉の混合物を3分間高速攪拌した後、実施例1と同様の手順により固液分離を行い、改質石炭灰Iを得た。
【0043】
「比較例2」
比較例1で得られた改質石炭灰Iを鋳鉄製円筒型容器に戻し、再度、発泡スチロール粉10gを加え、水道水3リットルを加えて、小型ハンドミキサーにより、石炭灰と廃発泡スチロール粉の混合物を3分間高速撹拌後した後、実施例1と同様の手順により固液分離を行い、改質石炭灰Jを得た。
【0044】
「比較例3」
比較として、105℃にて24時間乾燥したのみで、未洗浄の石炭灰について、後述する石炭灰の強熱減量、および、石炭灰のメチレンブルー吸着量を測定した。
【0045】
「未燃炭素の測定方法」
実施例1〜8で得られた改質石炭灰A〜H、および、比較例1、2で得られた改質石炭灰I、Jについて、石炭灰の強熱減量、および、石炭灰のメチレンブルー吸着量を測定し、未燃炭素量を測定した。
JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」で定める測定方法に準拠して、縮分した石炭灰を105℃にて24時間乾燥した後、1000±50℃にて1時間加熱して、石炭灰の強熱減量を測定した。
また、セメント協会法の「メチレンブルー吸着量試験」で定める測定方法に準拠して、石炭灰のメチレンブルー吸着量を測定した。
石炭灰中の未燃炭素量は、石炭灰の強熱減量、および、石炭灰のメチレンブルー吸着量の多寡で判断した。
「改質石炭灰の回収率」
また、実施例1〜8で得られた改質石炭灰A〜H、および、比較例1、2で得られた改質石炭灰I、Jについて、それぞれの改質石炭灰をステンレス製バットに入れ、105℃にて24時間乾燥した後、重量を測定し、回収率を算出した。
以上の結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1の結果から、実施例1、3、5、7では、水の吐出圧力25MPa〜250MPa、吐出量1リットル/分のウォータージェットとして、3分間噴射した場合、石炭灰の強熱減量、および、石炭灰のメチレンブルー吸着量は大幅に低減された。したがって、石炭灰中の未燃炭素量が低減されたことが分かった。
また、実施例2、4、6、8では、ウォータージェットの噴射処理を2回繰り返した場合、石炭灰の強熱減量、および、石炭灰のメチレンブルー吸着量は、実施例1、3、5、7よりもさらに低減され、石炭灰中の未燃炭素量はさらに低減されたことが分かった。
また、実施例1〜8において分離回収された廃発泡スチロール粉を目視観察したところ、これらの廃発泡スチロール粉は、ウォータージェットの噴射によって粒径1mm程度に粉砕されており、その色はウォータージェットの噴射処理前の白色から全体的に黒色に変色していることが観察された。
【0048】
比較例1、2では、水道水と石炭灰の混合物を単純に3分間、高速攪拌しても、石炭灰の強熱減量、および、石炭灰のメチレンブルー吸着量はほとんど低減されなかった。したがって、石炭灰中の未燃炭素量が低減されなかったことが分かった。
また、比較例1、2において分離回収された廃発泡スチロール粉を目視観察したところ、これらの廃発泡スチロール粉は、その粒径が10mm程度のままであり、その色は高速攪拌処理前の白色から、部分的に黒色に変色していることが観察された。
なお、比較例3より、未洗浄の石炭灰の強熱減量は7.2%、石炭灰のメチレンブルー吸着量は1.9mg/gとかなり高く、未燃炭素量が高いと断定される。
以上の結果から、石炭灰と廃発泡スチロール粉の混合物に、吐出圧力25MPa〜250MPa、吐出量1リットル/分のウォータージェットを、3分間噴射することにより、石炭灰に付着している未燃炭素を除去し、石炭灰を未燃炭素量の少ないものに改質できることが分かった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰に高圧の水を噴射し、この石炭灰に含まれる未燃炭素を主成分とする不純物を除去することを特徴とする石炭灰の改質方法。
【請求項2】
前記石炭灰に、水よりも密度が低い樹脂粉末を添加し、この石炭灰と樹脂粉末との混合物に高圧の水を噴射し、前記石炭灰から不純物を除去するとともに、前記不純物を前記樹脂粉末に吸着させ、この不純物を吸着した樹脂粉末を浮遊させて分離除去することを特徴とする請求項1に記載の石炭灰の改質方法。
【請求項3】
前記樹脂粉末の平均粒径は0.5mm以上かつ10mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の石炭灰の改質方法。
【請求項4】
前記樹脂粉末の前記石炭灰に対する添加量は5重量%以上かつ50重量%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の石炭灰の改質方法。
【請求項5】
前記不純物を吸着し、前記石炭灰から分離された樹脂粉末をセメント製造用燃料として用いることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の石炭灰の改質方法。
【請求項6】
前記高圧の水の吐出圧力は、25MPa以上かつ250MPa以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の石炭灰の改質方法。
【請求項7】
前記高圧の水の噴射による不純物の除去処理を2回以上繰り返すことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の石炭灰の改質方法。
【請求項8】
前記不純物の除去処理に用いられた水をろ過処理後、2回以上繰り返し使用することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の石炭灰の改質方法。
【請求項9】
前記不純物は、未燃炭素、遊離石灰および硫酸塩であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の石炭灰の改質方法。
【請求項10】
前記樹脂粉末は、発泡スチロール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、高分子キレート樹脂の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の石炭灰の改質方法。



【公開番号】特開2008−149234(P2008−149234A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338367(P2006−338367)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】