説明

石炭灰造粒物及びその製造方法

【課題】製造場所の制約を受けずに、造粒時間を短縮可能な石炭灰造粒物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】石炭灰と平均粒子径が5μm以下の微粒子石炭灰を含む粉体が水に混合され、造粒されたこと石炭灰造粒物であって、前記粉体の100重量部に対して前記微粒子石炭灰の含量が3乃至45重量部であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木材料や建築材料などに利用され、石炭灰が造粒された石炭灰造粒物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石炭火力発電所などから大量に排出される石炭灰は、セメントや水などと混合されて造粒され、例えば土木材料や建築材料などに利用されており、その造粒強度を高めるために、造粒助材としてセメントキルンダストを混合することが行なわれている(特許文献1及び2)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−130494号公報
【特許文献2】特開平11−263658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、セメントキルンダストは、セメント工場から排出されるため、造粒助材としてセメントキルンダストを用いる場合に、石炭灰造粒物の製造場所とセメント工場とが近接して存在しない場合には、原材料の輸送コストが増大する問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、製造場所の制約を受けずに、造粒時間を短縮可能な石炭灰造粒物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、造粒助材として平均粒子径が5μm以下の微粒子石炭灰を用いることによって、造粒時間を短縮可能であることを見出した。すなわち、本発明は、石炭灰と平均粒子径が5μm以下の微粒子石炭灰を含む粉体が水に混合され、造粒されたこと石炭灰造粒物であって、前記粉体の100重量部に対して前記微粒子石炭灰の含量が3乃至45重量部であることを特徴とする。また、本発明は、石炭灰に、平均粒子径が5μm以下の微粒子石炭灰を混合し、前記混合された粉末を水に混合して造粒することを特徴とする石炭灰造粒物の製造方法であって、前記混合された粉末の100重量部に対して前記微粒子石炭灰の含量が3乃至45重量部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、造粒助材として平均粒子径が5μm以下の微粒子石炭灰を用いることによって、製造場所の制約を受けずに、造粒時間を短縮可能な石炭灰造粒物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において用いられる石炭灰は、石炭火力発電所において電気集塵機によって捕集された灰をいい、一般にフライアッシュと呼ばれるものをいう。石炭灰の平均粒子径は、例えば10から30μmである。
本発明に係る石炭灰造粒物及びその製造方法において、前記微粒子石炭灰は、平均粒子径が5μm以下であることが好ましく、平均粒子径が3μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径が5μmを超えると、石炭灰の粒子と同等ないしそれ以上の大きさとなり、これらの粒子間の間隙を充填することが困難となるため好ましくない。また、前記微粒子石炭灰の含量は、石炭灰と微粒石炭灰とを含む粉末100重量部に対して、3乃至45重量部であることが好ましく、5乃至35重量部であることがより好ましく、8乃至15重量部であることがさらに好ましい。45重量部よりも多くなると、石炭灰の粒子間の間隙から、微粒子石炭灰がはみ出し、石炭灰造粒物の強度が低下する原因となるので好ましくない。一方、3重量部よりも少ないと、石炭灰の粒子間の間隙を十分充填することができなくなるので好ましくない。なお、平均粒子径は重量基準径で定義した。
【0009】
本発明に係る石炭灰造粒物及びその製造方法に用いられる微粒子石炭灰は、石炭火力発電所等から発生する石炭灰(フライアッシュ)を分級装置によって分級するか、あるいは微粒子石炭灰のみを選択的に捕集・回収するなどによって製造することができる。微粒子石炭灰のみを選択的に捕集・回収する方法としては、例えば石炭火力発電所のボイラ排ガスから石炭灰を分離するための電気集塵機において、電気集塵機の下流側から石炭灰を選択的に捕集する方法が挙げられる。
【0010】
本発明に係る石炭灰造粒物及びその製造方法において、前記粉末には、セメントや硫化剤、石こうや石灰がさらに含まれていることが好ましい。これにより、造粒物の強度が向上するとともに、石炭灰に含まれる重金属の溶出を抑制することができる。本発明において用いられるセメントとしては、ポルトランドセメントや高炉セメントなどが挙げられる。また、硫化剤としては、チオ硫酸ナトリウムや多硫化カルシウムなどが挙げられる。ここで、多硫化カルシウムとは、CaSを主成分とするものであり、一般に石灰硫黄合剤と呼ばれている。石こうとしては二水石膏や半水石膏などが挙げられる。また、石灰としては生石灰や消石灰などが挙げられる。
【0011】
造粒装置は、混合操作も兼ねることのできる装置を用いる方が望ましい。この様な装置としては、転動造粒機、アイリッヒミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、円錐型スクリュー混合機、モルタルミキサー等を挙げることが出来る。この中で、円錐型スクリュー混合機が好適に用いられる。円錐型スクリュー混合機は、円錐端を下方にした円錐型本体と円錐型本体の内壁に沿って上方から下方へ向かって位置するスクリュー攪拌軸からなる。スクリュー攪拌軸は公転と自転の回転可能である。スクリュー攪拌軸の公転速度を好ましくは1から5rpm の回転で、自転速度を好ましくは40から200rpmの回転で操作されるのが有利である。スクリュー攪拌軸は自転することによって、円錐型本体内の内容物を下方から上方へ掻揚げる作用をなし、公転することによって、内容物全体の混合、造粒を促進する。
【0012】
造粒用に使用される水分量は、粉体の粉末度や一次粒子形状などによって異なるが、粉末100重量部に対して通常20〜45重量部が好ましい。造粒された石炭灰を含む造粒物は、通常の湿潤空気中あるいは蒸気中にて養生された後に、土木材料などとして使用される。
【実施例】
【0013】
次に、本発明に係る石炭灰造粒物の実施例について説明する。本実施例において、石炭灰は、石炭火力発電所において電気集塵機によって捕集されたフライアッシュを用い、造粒助材である微粒子石炭灰は、このフライアッシュをサイクロン式分級装置によって分級することによって製造されたものを用いた。また、セメントキルンダストは、セメント原料調合工程からの排出ガスを電気集塵機等で処理し、回収されるダストを用いた。これら石炭灰及び微粒子石炭灰並びにセメントキルンダストについて、真密度および粒度分布の測定を行なった。真密度の測定は、比重びん(ピクノメーター)によって行なった。また、粒度分布の測定は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所株式会社製)によって行なった。これらの結果を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
次に、表2に示す3種類の配合でこれら石炭灰及び微粒子石炭灰をセメント(宇部三菱セメント株式会社製高炉セメントB種)、石こう(シグマアルドリッチジャパン株式会社製二水石膏)、石灰(キシダ化学株式会社製生石灰)及び多硫化カルシウム(キング化学工業株式会社製石灰硫黄合剤)とともに水道水に加えて造粒を行なうことによって、実施態様1乃至3に係る石炭灰造粒物を得た。造粒装置としては、モルタルミキサー(株式会社篠原製作所製、型式:小型ソイルミキサ、容量:5リットル、速度(自転運動):約140rpm、速度(遊星運動):約62rpm、羽根:ビーダ型)を用いた。造粒は、先ず、所定量計量した粉末試料をモルタルミキサー内に入れて2分間混合均質化し、水道水を添加してスパチュラで粉末試料と混合し、その後、モルタルミキサーを稼動させて造粒を開始し、それぞれについて、5分、10分、15分行った。その後、3日間は、室内で密閉させた状態で保管し、その後は、室内で開放させた状態で保管した。
【0016】
【表2】

【0017】
それぞれについての粒度分布及び材齢7日の単粒子強度を測定した。粒度分布の測定は、JIS A 1204「土の粒度試験方法」に準拠して行った。単粒子強度の測定は、まず、石炭灰造粒物砂を5.00mmの篩に通した。続いて、5.00mmの篩を通過した石炭灰造粒物砂を、4.75mmの篩に通した。4.75mmの篩上に残留した粒子1個について圧縮試験を行い、粒子が破壊するまでの荷重の最大指示値を測定した。同様の操作を20個の粒子について実施した。20個の粒子の圧縮試験より得られた最大指示値の平均値を単粒子強度とした。なお、前記圧縮試験は、SV−301型引張圧縮試験機(株式会社今田製作所製)を用いて行った。加圧速度は1mm/minとした。また、比較態様として、実施態様1及び3の微粒子石炭灰の代わりにセメントキルンダストを用いたもの、ならびに微粒子石炭灰を用いないものについて、同様に5分、10分、15分と造粒を行い、それぞれについて同様に粒度分布の測定を行なった。実施態様1乃至3並びに比較態様1乃至3の粒度分布(2mm篩通過率)を表3に示し、実施態様1乃至3並びに比較態様1乃至3の2mm篩通過率と造粒時間の関係を図1に示し、実施態様1乃至3並びに比較態様1乃至3の2mm篩通過率60%までの造粒所要時間を表4に示す。
【0018】
【表3】

【0019】
【表4】

【0020】
図1及び表4から、造粒助材を用いないものに比して、微粒子石炭灰若しくはセメントキルンダストを用いた場合の方が、造粒所要時間が短縮されていること、並びにセメントキルンダストを用いた場合に比して、微粒子石炭灰を用いた方が、より一層造粒所要時間が短縮されていることが分かる。また、単粒子強度については、造粒助材である微粒子石炭灰の添加率の異同による差異が認められなかった。
【0021】
次に、実施態様1及び3並びに比較態様1について、溶出試験を行なうことによって、重金属等の溶出量の測定を行なった。その結果を表5に示す。なお、重金属の溶出試験は、「土壌の汚染に係る環境基準について」(平成3年度環境庁告示46号)で定める方法に従った。
【0022】
【表5】

【0023】
表5から明らかなように造粒助材の種類によらず、土壌環境基準に適合していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施態様1乃至3並びに比較態様1乃至3の2mm篩通過率と造粒時間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰と平均粒子径が5μm以下の微粒子石炭灰を含む粉体が水に混合され、造粒された石炭灰造粒物であって、
前記粉体の100重量部に対して前記微粒子石炭灰の含量が3乃至45重量部であることを特徴とする石炭灰造粒物。
【請求項2】
前記粉末には、セメントがさらに含まれていることを特徴とする請求項1記載の石炭灰造粒物。
【請求項3】
前記粉末には、硫化剤がさらに含まれていることを特徴とする請求項1又は2記載の石炭灰造粒物。
【請求項4】
石炭灰に、
平均粒子径が5μm以下の微粒子石炭灰を混合し、
前記混合された粉末を水に混合して造粒することを特徴とする石炭灰造粒物の製造方法であって、
前記混合された粉末の100重量部に対して前記微粒子石炭灰の含量が3乃至45重量部であることを特徴とする石炭灰造粒物の製造方法。
【請求項5】
円錐型スクリュー混合機で混合と造粒を行なうことを特徴とする請求項4記載の石炭灰造粒物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−110888(P2008−110888A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294129(P2006−294129)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】