説明

石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置

【課題】石炭焚ボイラの効率を低下させるクリンカの位置が明確になるような画像情報を出力することができる石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置を提供する。
【解決手段】
石炭焚ボイラ内部に配設された配管群を構成する配管に固着したクリンカを検出する探知波発振装置(超音波発振器20)と、配管群の上流側及び下流側内部を流れる蒸気の圧力並びに温度を測定する圧力・温度測定装置(圧力・温度センサ30)と、配管に固着したクリンカ分布を算出して画像化する情報処理部10とを具備し、情報処理部は、配管群ごとの収熱割合を算出するボイラ収熱割合算出手段11と、石炭焚ボイラの構造情報と、配管群ごとの収熱割合とに基づいて、石炭焚ボイラ内の配管に固着したクリンカ分布情報を算出するクリンカ分布作成手段12と、クリンカ分布情報に基づいて各配管に固着したクリンカ分布を画像化する画像化手段13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚ボイラの内部で生成し石炭焚ボイラ内部に配設された配管の表面に固着する固着物(以下、クリンカという。)の位置を特定して画像化する石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、発電施設などに用いられる石炭焚ボイラは、ミルで粉砕した石炭の微粉(微粉炭)と空気とを混合して燃焼装置(バーナ)に供給し、その微粉炭を燃焼装置から噴出させて浮遊燃焼させるようになっている。
【0003】
このような石炭焚ボイラを稼動させると、微粉炭の燃焼によって生成された石炭灰が石炭焚ボイラ内部に配設された蒸気管や給水管などの配管の表面に固着することになる。そして、それらが焼結することにより配管の表面にクリンカが生成する。その結果、配管の熱伝導度が低下し、石炭焚ボイラの効率が低下してしまうという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、従来は、石炭焚ボイラ内部に設置されたセンサなどにより得られたデータに基づいて、最も熱伝導度が低下していると考えられる配管を含む配管群を推定し、その配管群に対してスートブロワ(補助蒸気を使用したスス吹き)を実施することにより、その配管に付着していたクリンカを除去していた。具体的には、配管群の上流側及び下流側における配管に温度センサをそれぞれ設け、その温度センサにより得られた温度を用いてボイラ収熱割合を配管群ごとに算出すると共に、配管群ごとに図9に示すような伝熱面汚れトレンドグラフを作成する。そして、各配管群に対する伝熱面汚れトレンドグラフを比較し、最も大きな伝熱面汚れを示す配管群に含まれるすべての配管に対してスートブロワを実施し、最も熱伝導度が低下していると考えられる配管に付着していたクリンカを除去していた。
【0005】
しかしながら、この方法で用いられるボイラ収熱割合は、各配管群に含まれる配管ごとの実際の温度から算出されるのではなく、各配管群のいくつかの限られた検出ポイントで検出された温度に基づいて算出されているために、得られた各配管群に対する伝熱面汚れトレンドグラフ自体の信頼性が低いという問題があった。すなわち、得られた最も大きな伝熱面汚れを示す配管群が、石炭焚ボイラの効率を低下させるクリンカが付着した配管を含む配管群ではない場合には、その配管群に含まれるすべての配管に対してスートブロワを実施しても、石炭焚ボイラの効率が向上しない場合があるという問題があった。なお、その場合には、他の配管群に含まれるすべての配管に対してさらにスートブロワを実施しなければならず、補助蒸気使用量が多くならざるを得ないという問題があった。
【0006】
ちなみに、上述した伝熱面汚れトレンドグラフから判断して、最も大きな伝熱面汚れを示す配管群に含まれるすべての配管に対してスートブロワを実施すると、その配管群に関する伝熱面汚れトレンドグラフの伝熱面汚れは低下するものの、通風ファンの動翼開度は変化しない場合が多い。これは、火炉内ガスの流れにとって障害となるクリンカが付着している配管群と、伝熱面汚れトレンドグラフから判断される最も大きな伝熱面汚れを示す配管群とが異なっている場合があることを示している。
【0007】
一方、石炭焚ボイラの炉壁に固着するクリンカを検出するクリンカ検出装置や石炭焚ボイラのバーナスロートの周縁部にクリンカが堆積したことを検出するためのクリンカ付着判別方法などが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−185122号公報
【特許文献2】特開2002−71130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したクリンカ検出装置は、石炭焚ボイラ火炉の上部に超音波発振装置を設け、その超音波発振器で炉壁のクリンカ発生予想個所に向けて超音波を発振し、その反射波を受信してその反射波の状況からクリンカを検出するというものであり、バーナの上部に付着するクリンカしか検出することができないという問題と、どの部分に付着したクリンカが石炭焚ボイラの効率を下げている原因となっているのかを判断することができないという問題とがあった。
【0010】
また、上述したクリンカ付着判別方法は、石炭焚ボイラのバーナの周縁部に火炎検出器を設け、その火炎検出器によって検出された信号に基づいてバーナスロートに付着したクリンカを検出するというものであり、バーナスロートに付着したクリンカしか検出することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑み、石炭焚ボイラの効率を低下させるクリンカの位置が明確になるような画像情報を作成することができる石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、石炭焚ボイラ内部に複数配設された配管群のそれぞれを構成する配管の近傍に設けられ、該配管に向けて超音波又はレーザー光線を発振しその反射波を受信して当該配管に固着したクリンカの位置を検出する複数の探知波発振装置と、前記配管群における上流側及び下流側にそれぞれ設けられ、前記配管群の上流側及び下流側内部を流れる蒸気の圧力並びに温度を測定する複数の圧力・温度測定装置と、前記探知波発振装置及び前記圧力・温度測定装置の出力信号が入力される情報処理部とを具備し、前記情報処理部は、前記圧力・温度測定装置により得られた前記配管群の上流側及び下流側における配管内部を流れる蒸気の圧力及び温度に基づいて、前記配管群ごとの収熱割合を算出する収熱割合算出手段と、前記探知波発振装置により検出されたクリンカの位置情報と、前記石炭焚ボイラの配管群の位置情報を含む石炭焚ボイラの構造情報と、前記収熱割合算出手段により得られた前記配管群ごとの収熱割合とに基づいて、前記石炭焚ボイラ内の配管に固着したクリンカ分布情報を作成するクリンカ分布作成手段と、前記クリンカ分布情報に基づいて、前記石炭焚ボイラ内の配管に固着したクリンカ分布を画像化する画像化手段とを有することを特徴とする石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置にある。
【0013】
かかる第1の態様では、石炭焚ボイラの効率を低下させるクリンカの位置が明確になるような画像情報を作成することができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、前記配管群を構成する配管のそれぞれに設けられて、該配管の表面温度を計測する配管表面温度計測装置をさらに具備し、前記情報処理部が有するクリンカ分布作成手段は、前記探知波発振装置により検出されたクリンカと、前記収熱割合算出手段により得られた前記配管群の収熱割合と、前記石炭焚ボイラの構造情報と、前記表面温度計測装置により計測された前記配管の表面温度とに基づいて、前記石炭焚ボイラ内の配管に固着したクリンカ分布情報を作成することを特徴とする第1の態様に記載の石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置にある。
【0015】
かかる第2の態様では、石炭焚ボイラの効率を低下させるクリンカの位置がより明確になるような画像情報を作成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置によれば、石炭焚ボイラの効率を低下させるクリンカの位置が明確になるような画像情報を出力することができるので、石炭焚ボイラの効率を低下させるクリンカの位置を容易に認識させることができ、結果として効率的なスートブロワを実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態に係る石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置1は、複数の探知波発振装置である超音波発振器20と、複数の圧力・温度測定装置である圧力・温度センサ30と、出力装置50と、それらに接続される情報処理部10とからなり、情報処理部10は、ボイラ収熱割合算出手段11と、クリンカ分布作成手段12と、画像化手段13とを有している。そして、このようにクリンカ分布画像化装置1を構成することにより、後述するように、超音波発振器20及び圧力・温度センサ30から出力された出力信号が情報処理部10に入力されると、情報処理部10はその情報に基づいて石炭焚ボイラ内に配設された配管に固着したクリンカ分布情報を作成すると共にそのクリンカ分布情報を画像化し、出力装置50を用いてその画像を出力することができるようになっている。
【0019】
このクリンカ分布画像化装置1は、図2〜図5に示すように、火力発電所などに設置された石炭焚ボイラなどに取り付けられるものである。なお、図2は本実施形態に係る石炭焚ボイラ100内部の概略正面図であり、図3は石炭焚ボイラ100内部の概略裏面図である。また、図4は図2及び図3に示すA方向から見た際の石炭焚ボイラ100内部の概略側面図であり、図5は図2及び図3に示すB方向から見た際の石炭焚ボイラ100内部の概略側面図である。
【0020】
図2〜図5に示すように、クリンカ分布画像化装置1を取り付ける石炭焚ボイラ100は、内部で微粉炭を燃焼させる火炉110と、火炉110の上部に連結されて火炉110から排出された排ガスを下方側部から排出する排ガス流路120とを有している。この火炉110の側面には、微粉炭を噴射して燃焼させる燃焼装置101が鉛直方向に列状に複数配置されている。また、火炉110の上部には、列状に並置された複数の吊り下げ型過熱器管111が幅方向に3列配置されており、配管群である3つの二次過熱器を構成している。なお、吊り下げ型過熱器管111は、図示しないが、管状部材が垂直方向に折畳まれるように形成されている。一方、排ガス流路120には、過熱器管121で構成された4つの配管群である一次過熱器が配置されると共に、それらの一次過熱器の下方に過熱器管122で構成された配管群である節炭器が配置されている。
【0021】
そして、図示しないが、節炭器と一次過熱器とが連結されると共に一次過熱器と二次過熱器とが連結されており、図示しない給水器から節炭器に供給された水は、節炭器、一次過熱器、二次過熱器を構成する複数の配管の内部を流れる際に加熱され、最終的に蒸気となって図示しないタービンに供給されることになる。なお、一次過熱器から供給された水は、二次過熱器を構成する各吊り下げ型過熱器管111に分流され、各吊り下げ型過熱器管を通った後に再度まとめられてタービンに供給されるようになっている。以下に、図2〜図5を参照して、クリンカ分布画像化装置1を構成する各構成要素について具体的に説明する。
【0022】
まず、超音波発振器20について説明する。図2〜図5に示すように、火炉110内の超音波発振器20は火炉110の上面、正面及び一方の側面に複数配置され、排ガス流路120内の超音波発振器20は排ガス流路120の裏面に複数配置されている。具体的には、火炉110の上面に設けられる超音波発振器20は、二次過熱器を構成する各吊り下げ型過熱器管111の近傍にそれぞれ配置されている。また、火炉110の正面に設けられる超音波発振器20は、各二次過熱器の近傍にそれぞれ配置されている。さらに、火炉110の側面に設けられる超音波発振器20も同様に、二次過熱器を構成する各吊り下げ型過熱器管111の近傍にそれぞれ配置されている。このように超音波発振器20を配置することにより、各二次過熱器を構成する各吊り下げ型過熱器管111に超音波を発振し、その反射波を受信することができるので、各吊り下げ型過熱器管111に固着したクリンカの位置を検出することができる。
【0023】
そして、排ガス流路120に設けられる超音波発振器20は、一次過熱器及び節炭器を構成する各過熱器管121、122の上側近傍にそれぞれ配置されている。このように超音波発振器20を配置することにより、二次過熱器管の場合と同様にして、各過熱器管121、122に固着したクリンカの位置を検出することができる。
【0024】
ここで、超音波発振器20としては、超音波発振装置の主要部をなし、超音波発振装置として始動指令により所定の目標に向けて超音波を発振し、目標に衝突して反射する反射波を受信する機能を有するものであれば特に限定されず、例えば市販されている一般的な超音波発振装置でもよい。
【0025】
次に、圧力・温度センサ30について説明する。圧力・温度センサ30は、図示しないが、各一次過熱器、各二次過熱器及び節炭器それぞれの上流側及び下流側に設けられており、各一次過熱器、各二次過熱器及び節炭器それぞれの上流側及び下流側の内部を流れる蒸気の圧力並びに温度を測定することができるようになっている。
【0026】
ここで、圧力・温度センサ30としては、各一次過熱器、各二次過熱器及び節炭器それぞれの内部を流れる蒸気の圧力並びに温度を測定することができるものであれば特に限定されず、例えば市販されている温度センサと圧力センサとを組み合わせたものであってもよい。
【0027】
さらに、情報処理部10について説明する。情報処理部10は上述したように各超音波発振器20と各圧力・温度センサ30にそれぞれ接続されると共に、ボイラ収熱割合算出手段11と、クリンカ分布作成手段12と、画像化手段13とを有しており、各超音波発振器20及び各圧力・温度センサ30により得られた情報に基づいて、一次過熱器及び節炭器を構成する各過熱器管121、122や、二次過熱器を構成する各吊り下げ型過熱器管111に固着したクリンカ分布を作成すると共にそのクリンカ分布を画像化することができるようになっている。情報処理部10としては、例えば一般的なパーソナルコンピュータや専用計算機などが挙げられる。
【0028】
ここで、ボイラ収熱割合算出手段11とは、各圧力・温度センサ30により検出された各一次過熱器、各二次過熱器及び節炭器の上流側及び下流側内部を流れる蒸気の圧力及び温度に基づいてボイラ収熱割合を算出する機能を有するものである。ボイラ収熱割合算出手段11としては、例えば各圧力・温度センサ30により得られた蒸気の圧力及び温度に基づいてボイラ収熱割合を算出するように構成したものが挙げられる。
【0029】
クリンカ分布作成手段12とは、各超音波発振器20により検出されたクリンカの位置情報と、石炭焚ボイラの配管群(一次過熱器、二次過熱器及び節炭器)の位置情報や各配管群を構成する配管の形状などの石炭焚ボイラ100の構造に関する石炭焚ボイラ100の構造情報と、ボイラ収熱割合算出手段11により算出されたボイラ収熱割合とに基づいて石炭焚ボイラ内の配管に固着したクリンカ分布情報を作成する機能を有するものである。クリンカ分布作成手段12としては、例えば超音波発振器20により得られたクリンカの位置情報のうち、ボイラ収熱割合算出手段11により算出された複数のボイラ収熱割合の中で、最もボイラ収熱割合が低い配管群を構成する配管に固着したクリンカの位置情報を抽出するように構成したものが挙げられる。
【0030】
画像化手段13とは、クリンカ分布作成手段12により得られたクリンカ分布情報を画像化する機能を有するものである。画像化手段13としては、例えば上述した石炭焚ボイラ100の構造情報とクリンカ分布作成手段12により得られたクリンカ分布情報とに基づいて、石炭焚ボイラ100の効率を低下させるクリンカの位置が明確になるような画像情報(例えば3次元の立体グラフィックデータなど)を作成するように構成したものが挙げられる。
【0031】
さらに、出力装置50について説明する。出力装置50は、情報処理部10により得られた画像情報を画像化して出力する装置であり、例えば一般的なディスプレイ装置やプリンタなどが挙げられる。
【0032】
上述したように構成されたクリンカ分布画像化装置1によれば、石炭焚ボイラ100の効率を低下させるクリンカの位置が明確になるような画像情報を出力することができるので、石炭焚ボイラ100の効率を低下させるクリンカの位置を容易に認識させることができ、結果として効率的なスートブロワを実施することができる。
【0033】
(実施形態2)
実施形態1では、上述したようにしてクリンカ分布画像化装置1を構成したが、図6に示すように、複数の配管表面温度測定装置40をさらに具備すると共に、クリンカ分布作成手段12に代えて異なる機能を有するクリンカ分布作成手段12Aを有するようにクリンカ分布画像化装置1Aを構成してもよい。ここで、図6は、本発明の実施形態2に係る石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置を示す概略図である。このようにクリンカ分布画像化装置1Aを構成することにより、詳細は後述するが、石炭焚ボイラ100の効率を低下させるクリンカの位置がより明確になるような画像情報を出力することができる。なお、配管表面温度測定装置40及びクリンカ分布作成手段12A以外のクリンカ分布画像化装置1Aを構成する構成要素は、実施形態1と同様であるので、同符号を付して説明を省略する。
【0034】
まず、配管表面温度測定装置40について説明する。図7に示すように、配管表面温度測定装置40は、各二次過熱器を構成する各吊り下げ型過熱器管111や、一次過熱器や節炭器を構成する各過熱器管121、122に取り付けられており、表面にクリンカが固着した各配管の表面温度を測定して、各配管の表面温度を情報処理部10に送信することができるようになっている。具体的には、例えば図8に示すように、配管表面温度測定装置40は、二次過熱器を構成する吊り下げ型過熱器管111の外側部分に取り付けられる。ここで、図7は本実施形態に係る石炭焚ボイラの概略正面図であり、図8は図7に示す部分Xの拡大概略図である。なお、一次過熱器管及び節炭器を構成する過熱器管121、122に取り付けられる配管表面温度測定装置40も同様に、各配管の外側部分に取り付けることができる。
【0035】
このように配管表面温度測定装置40を吊り下げ型過熱器管111に取り付けると、クリンカは配管表面温度測定装置40をも覆うように吊り下げ型過熱器管111の表面に固着することになる。その結果、配管表面温度測定装置40により、表面にクリンカが固着することによって熱伝導度が低下した吊り下げ型過熱器管111の表面温度を測定することができる。なお、表面にクリンカが固着している吊り下げ型過熱器管111の表面温度は、クリンカにより熱伝導度が低下しているので、クリンカが固着していない吊り下げ型過熱器管111の表面温度と比較して、低い温度として測定されることになる。
【0036】
次に、クリンカ分布作成手段12Aについて説明する。クリンカ分布作成手段12Aとは、各超音波発振器20により検出されたクリンカ情報と、石炭焚ボイラ100の構造情報と、ボイラ収熱割合算出手段11により算出されたボイラ収熱割合と、配管表面温度測定装置40により測定された各配管の表面温度とに基づいて石炭焚ボイラ内の配管に固着したクリンカ分布情報を作成する機能を有するものである。クリンカ分布作成手段12Aとしては、例えば超音波発振器20により得られたクリンカの位置情報のうち、ボイラ収熱割合算出手段11により算出された複数のボイラ収熱割合の中で、最もボイラ収熱割合が低い配管群を構成する配管で、かつ所定の温度よりも低い表面温度を有する配管に固着したクリンカの位置情報を抽出するように構成したものが挙げられる。
【0037】
このクリンカ分布作成手段12Aは、上述したクリンカ情報、石炭焚ボイラ100の構造情報及びボイラ収熱割合だけでなく、各配管の表面温度をも考慮してクリンカ分布情報を作成することができるので、実施形態1のクリンカ分布作成手段12と比較して、より正確なクリンカ分布情報を作成することができる。
【0038】
以上より、本実施形態に係るクリンカ分布画像化装置1Aによれば、実施形態1に係るクリンカ分布画像化装置1と比較して、石炭焚ボイラ100の効率を低下させるクリンカの位置がより明確になるような画像情報を出力することができる。
【0039】
(他の実施形態)
実施形態1及び2では、探知波発振装置として超音波発振器20を用いたが、これに代えてレーザー発振器を用いてもよい。レーザー発振器としては、レーザー発振装置の主要部をなし、レーザー発振装置として始動指令により所定の目標に向けて超音波を発振し、目標に衝突して反射する反射波を受信する機能を有し、受信された反射波を信号に変換して情報処理部に送信することができるものであれば特に限定されず、例えば市販されている一般的なレーザー発振装置でもよい。探知波発信装置としてレーザー発振器を用いることにより、超音波発振器20を用いた場合と比較して、クリンカの位置をより正確に検出することができる。
【0040】
また、実施形態1及び2では、上述したように超音波発振器20を火炉110及び排ガス流路120に配置したが、超音波発振器20の配置場所はこれに限定されず、各配管に付着したクリンカの位置を検出することができるように、一次過熱器管、二次過熱器管及び節炭器の近傍に配置されていればよい。
【0041】
さらに、実施形態2では、配管表面温度測定装置40を吊り下げ型過熱器管111などの外側部分に取り付けたが、配管表面温度測定装置40の取り付け場所はこれに限定されず、各配管の表面温度を測定することができるのであれば何れの場所に配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態1に係るクリンカ分布画像化装置を示す概略図である。
【図2】実施形態1に係る石炭焚ボイラ内部の概略正面図である。
【図3】実施形態1に係る石炭焚ボイラ内部の概略裏面図である。
【図4】図2及び図3に示すA方向から見た際の石炭焚ボイラ内部の概略側面図である。
【図5】図2及び図3に示すB方向から見た際の石炭焚ボイラ内部の概略側面図である
【図6】実施形態2に係るクリンカ分布画像化装置を示す概略図である。
【図7】実施形態2に係る石炭焚ボイラ内部の概略正面図である。
【図8】図7に示す部分Xの拡大概略図である。
【図9】従来の伝熱面汚れトレンドグラフである。
【符号の説明】
【0043】
1、1A クリンカ分布画像化装置
10 情報処理部
11 ボイラ収熱割合算出手段
12、12A クリンカ分布作成手段
13 画像化手段
20 超音波発振器
30 圧力・温度センサ
40 配管表面温度測定装置
50 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭焚ボイラ内部に複数配設された配管群のそれぞれを構成する配管の近傍に設けられ、該配管に向けて超音波又はレーザー光線を発振しその反射波を受信して当該配管に固着したクリンカの位置を検出する複数の探知波発振装置と、
前記配管群における上流側及び下流側の管路にそれぞれ設けられ、前記配管群の上流側及び下流側内部を流れる蒸気の圧力並びに温度を測定する複数の圧力・温度測定装置と、
前記探知波発振装置及び前記圧力・温度測定装置の出力信号が入力される情報処理部とを具備し、
前記情報処理部は、
前記圧力・温度測定装置により得られた前記配管群における上流側及び下流側の管路内部を流れる蒸気の圧力及び温度に基づいて、前記配管群ごとの収熱割合を算出する収熱割合算出手段と、
前記探知波発振装置により検出されたクリンカの位置情報と、前記石炭焚ボイラの配管群の位置情報を含む石炭焚ボイラの構造情報と、前記収熱割合算出手段により得られた前記配管群ごとの収熱割合とに基づいて、前記石炭焚ボイラ内の配管に固着したクリンカ分布情報を作成するクリンカ分布作成手段と、
前記クリンカ分布情報に基づいて、前記石炭焚ボイラ内の配管に固着したクリンカ分布を画像化する画像化手段と
を有することを特徴とする石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置。
【請求項2】
前記配管群を構成する配管のそれぞれに設けられて、該配管の表面温度を計測する配管表面温度計測装置をさらに具備し、
前記情報処理部が有するクリンカ分布作成手段は、前記探知波発振装置により検出されたクリンカと、前記収熱割合算出手段により得られた前記配管群の収熱割合と、前記石炭焚ボイラの構造情報と、前記表面温度計測装置により計測された前記配管の表面温度とに基づいて、前記石炭焚ボイラ内の配管に固着したクリンカ分布情報を作成することを特徴とする請求項1に記載の石炭焚ボイラ内配管のクリンカ分布画像化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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