説明

石膏ウォールボードフェイシング用種結晶コーティング

種結晶を接着させるために石膏ウォールボードの製造に有用なフェイシング材を表面処理し、湿潤プラスター用のフェイシング材の接着親和性を向上させることによって、追加のデンプンをほとんどまたは全く使用せずに、低減された量の水で、石膏ウォールボードの製造を可能にする。フェイシング材に種結晶を接着させるためのさまざまな手段について記載し、またフェイシング材、及びフェイシング材を含むウォールボードを変形する方法についても記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年6月22日付けで出願された米国仮出願第61/219,102号の権利を主張するものであり、その開示内容は参照として全体がここに含まれる。
【0002】
本発明は、デンプン結合剤をほとんどまたは全く使用せずに製造を可能とする、石膏ウォールボードにおける添加剤として有用な種結晶コーティングに関する。本発明はまた、添加剤で処理されたフェイシング材(facing material)、並びに従来の方法と比べて必要とされる乾燥エネルギー量が著しく低減された石膏ウォールボードの製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、湿潤プラスターに対する接着親和性が改良された石膏ウォールボードのフェイシング材成分の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
石膏ウォールボード業界では、内部の石膏プラスター芯を取り囲む、フェイシング材の2つの外層、典型的に重カリパス紙(heavy caliper paper)の間に効果的な接着結合が確保されるように考案された方法によってウォールボードを製造している。該業界では伝統的に、フェイシング材への接着を促進するために、多量のデンプン結合剤をプラスター芯に添加している。また、大過剰の水をプラスターに加えることによって、2つのフェイシング材層の間のプラスターの乾燥中に過剰の水が湿潤プラスターからフェイシング材へとデンプン結合剤を伴って移動し、プラスターとフェイシング材表面との接着が確立される。しかしながら、そのような方法は、石膏プラスター芯から過剰の水を移動及び蒸発させるために要する乾燥エネルギーの量に起因して多くのエネルギーを消費する。
【0004】
石膏ウォールボード製造業者にとって乾燥コストが実質的に増大しているため、ウォールボードの製造に使用される水の量を低減することへの一般的な産業ニーズがある。また、プラスター対水の比率の低減は、同じく高強度のウォールボードをもたらし得る本発明を用いて達成可能であることが明白である。さらに、紙の強度を強化することによって表面層上に種結晶コーティングを塗布することによって強度を増強することが可能であり、これは、全体的なウォールボード強度に大きな影響を及ぼす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
湿潤プラスター芯にデンプンと高比率の水を使用することに代わる方法を実施することができ、さらにフェイシング材層とプラスター芯との間に強力な接着を達成できることが意外にも見出された。
【0006】
本発明は、フェイシング材層を湿潤プラスターと接触させる前に、ウォールボードのフェイシング材層に種結晶コーティングを含む表面処理を適用することによって、プラスターのフェイシング材層への結合を増強させる、石膏ウォールボードの製造方法に関する。プラスター成分としては、比較的少量の水を使用するが、それでもこの基板への強力な結合を形成することができる。
【0007】
本発明はまた、デンプン結合剤をほとんどまたは全く使用せずに石膏ウォールボードの製造を可能とする製造における添加剤として有用な種結晶コーティング組成物に関する。本発明はまた、種結晶コーティングで処理されたフェイシング材層に関する。
【0008】
さらに、本発明は、内部の石膏プラスター芯と、内部の石膏プラスター芯の表面に接着された少なくとも1つの処理済フェイシング材層とを有し、フェイシング材層が種結晶コーティングで処理された表面を有するウォールボードに関する。内部石膏プラスター芯の表面は、種結晶コーティングで処理されたフェイシング材層の表面に接着されている。
【0009】
ウォールボードに使用するための処理済みフェイシング材は、その上に種結晶の層が接着されたフェイシング材層を含む。フェイシング材は一般的に「紙」として知られ得るが、より詳細には、紙と、ガラス繊維シートと、合成シート材料とからなる群から選択され得る。
【0010】
フェイシング材は、接着物質を用いて種結晶をフェイシング材の表面に接着する方法で処理される。この処理は、初めに、フェイシング材の表面を濡らすためにフェイシング材の表面に一定量の水を接触させるステップと、続いて種結晶を粉末として、濡れたフェイシング材表面に適用するステップとを含み得る。代替として、種結晶を水などの液体中に溶解または懸濁させ、フェイシング材の表面に適用し、この濡れたフェイシング材表面を乾燥させてもよい。代替として、接着物質が表面処理接着剤を含んでもよい。表面処理接着剤は任意の接着剤、例えば溶媒系、水系、または無溶媒接着剤とすることができ、該接着剤は、種結晶コーティングを形成するために、フェイシング材の表面に種結晶が接着することを可能にする。好ましくは、表面処理接着剤は水とラテックス結合剤とを含み、フェイシング材表面に適用され得、続いて粉末として種結晶を湿ったフェイシング材表面に適用することで種結晶コーティングが形成される。表面処理接着剤は、種結晶と、例えばセルロースエーテルまたはバイオポリマー、あるいはそれらの混合物などのレオロジー改質剤とを含有し得る。
【0011】
本発明の以前は、石膏とフェイシング材成分とを適切に接着させるために、石膏ウォールボードには高レベルのデンプン及び水の使用が必要とされていた。
【0012】
本発明は、水/プラスター比率の低減を可能にし、低比率の水/プラスターの使用の結果、ウォールボードを製造するためのエネルギー所要量の低減をもたらすという利点を有する。従って本発明は、改良された特性を有するウォールボードの製造を可能にする方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
石膏ウォールボードのフェイシング材層を種結晶コーティングで表面処理することによって、ウォールボードのプラスターの内部の芯のフェイシング材に対する接着性を増強することができることが意外にも見出された。この増強された接着性または親和性によって、プラスター芯を低含有量の水及びデンプンで形成することが可能となり、ウォールボードの乾燥に必要なエネルギー量を低減する。ウォールボードのプラスター芯のデンプン含有量を低減または除去する利点の一つに、得られたウォールボードが、高湿度または微生物の成長を促進するその他の好適な環境条件にさらされた場合に、微生物の攻撃を受けにくくなる可能性があることが挙げられる。
【0014】
本発明は、石膏ウォールボードの製造において有用なフェイシング材層の表面処理に関する。該処理において、一定量の種結晶がフェイシング材の表面に接着され、種結晶コーティングで表面処理されたフェイシング材が得られる。種結晶は、石膏ウォールボードの製造において湿潤プラスターと接触すると、続く結晶成長に使用可能である。従って、ウォールボードの石膏芯とフェイシング材層との間の接着力が増大する。
【0015】
本発明において使用される好ましい種結晶は、
カルサイト CaCO
バライト BaSO
グラウバー塩 NaSO
ミョウバン、硫酸アルミニウムカリウム KAl(SOx12H
ドロマイト CaMg(CO
マグネサイト MgCO
硫酸カリウム KSO
硫酸鉄 Fe[SO/FeSO
硫酸アルミニウム Al[SO
及びこれらの異なる結晶水含有誘導体からなる群から選択され得る。
【0016】
本発明において使用されるより好ましい結晶種は、
無水石膏 CaSO [無水物]
半水石膏 CaSOx1/2HO [半水和物]
二水石膏 CaSOx2HO [二水和物]
からなる群から選択され得る。
【0017】
種結晶をフェイシング材へと接着させるためのウォールボードのフェイシング材の表面処理として、接着物質が使用される。この処理は、第一に、フェイシング材の表面を濡らすためにフェイシング材の表面に一定量の水を接触させるステップと、続いて粉末として種結晶を湿潤フェイシング材表面に適用するステップとを含み得る。代替法では、種結晶を水などの液体中に溶解または懸濁させ、これをフェイシング材の表面に適用してよく、その後この湿潤フェイシング材表面を乾燥させてもよい。代替法では、接着物質が表面処理接着剤を含み得る。表面処理接着剤は、種結晶をフェイシング材の表面に接着して種結晶コーティングを形成することができる任意の接着剤、例えば溶媒系、水系、または無溶媒接着剤とすることができる。好ましくは、表面処理接着剤は、水及びラテックス結合剤を含む。該接着剤は、フェイシング材の表面に塗布され、続いて湿潤フェイシング材の表面に粉末として種結晶が適用されると、種結晶コーティングが形成される。表面処理接着剤はまた、種結晶と、セルロースエーテルなどのレオロジー改質剤、バイオポリマー、またはこれらの混合物を含み得る。
【0018】
表面処理接着剤は選択的に、レオロジー改質剤、安定剤及び保存剤のような追加の成分を含有することもできる。
【0019】
表面処理接着剤がラテックス接着剤を含む場合、表面処理接着剤のラテックス結合成分は、好ましくは表面処理接着剤の約0.5〜55重量%の範囲内とする。表面処理接着剤のラテックス結合剤成分は、一般に入手可能なラテックスポリマーから選択することができ、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリ(ビニルアセテート)(PVOAc)ラテックス、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル系ポリマー、ビニルアクリル系ポリマーからなる群から選択され得る。好ましくは、ラテックス結合剤成分は、エチレンビニルアセテートコポリマーまたはポリ(ビニルアセテート)(PVOAc)ラテックスである。本発明の一形態では、ラテックス接着剤は再分散性粉末として使用され得る。
【0020】
処理済フェイシング材及び得られるウォールボードのその他の性質に影響を及ぼすために、レオロジー改質剤、塩、促進剤、及び分散剤からなる群から選択されるその他の水溶性種を表面処理接着剤における添加剤として使用することができる。好ましいレオロジー改質剤はセルロースエーテルを含む。本発明において使用されるセルロースエーテルは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、疎水化ヒドロキシプロピルセルロース(HMHPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、疎水化ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、カチオン性疎水化ヒドロキシエチルセルロース(カチオン性HMHEC)、及びアニオン性疎水化ヒドロキシエチルセルロース(アニオン性HMHEC)からなる群から選択され得る。
【0021】
レオロジー改質剤はバイオポリマーを含み得る。好ましいバイオポリマーはキサンタンガム、ウェランガム、またはジウタンガムを含む。
【0022】
本発明の一態様では、表面処理接着剤が、種結晶材料及びレオロジー改質剤を含有する場合、高レベルの種結晶を有する流体混合物がもたらされる。高レベルの種結晶では、種結晶のレベルが表面処理接着剤の約2重量%以上、好ましくは約10重量%である。好ましいレオロジー改質剤は、キサンタン、ウェラン、またはジウタンガムである。
【0023】
実際には、紙加工の分野で典型的に使用されている任意の機械的方法、例えばこれらに限定されないが、ドクターブレードの使用、ロールの使用、パドルアプリケータの使用、サイズプレスの使用、カーテンコーターの使用、ウォーターボックスの使用、またはスプレーアプリケータの使用を含む方法によって、接着物質をフェイシング材の表面に塗布する。接着物質は、ウォールボード製造において使用されるフェイシング材の内面の一方または両方に塗布され、種結晶をフェイシング材に接着させて種結晶コーティングを作製することが可能な表面処理面を有するフェイシング材が製造される。接着物質が水から構成されない場合、紙を処理するために使用される接着物質の量は、(乾燥後(水を含まない)の固体に基づいて)約0.1gm/mを超えるレベルであり、好ましくは約0.1gm/mから20gm/mの範囲、好ましくは約0.5から4gm/m、より好ましくは約1から3gm/m、さらに好ましくは約1.5から2.5gm/mの範囲である。接着物質をこの範囲内でコーティングとして塗布することによって、接着物質は、種結晶のフェイシング材層に対する接着性を促進し、プラスターがデンプンを全く含有しないかまたは標準的技法と比較して少量のデンプンを含有するかのいずれかの場合、ウォールボードのプラスター内部芯に対するフェイシング材の接着性を増大させる。
【0024】
本発明において使用されるフェイシング材は、紙、ガラス繊維、及び合成材料からなる群から選択され得る。紙は、コーティング、ワックス加工されていてもよく、コーティングされていなくてもよい。
【0025】
フェイシング材は、不織または織材料の形態、あるいは布、スクリム、フィルム、シートまたはホイルの形態とすることができる。
【0026】
フェイシング材が合成材料である場合、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリウレタン、及びエポキシからなる群から選択され得る。
【0027】
フェイシング材がガラス繊維材料である場合、これらの材料は、(1)ガラス繊維などの鉱物系材料を含み得る。マットは、連続または非連続の糸または繊維を含むことができ、不織または織形態とすることができる。フェイシング材は、例えば切断された糸及び連続した糸から作製される不織マットを含んでよく、満足に使用することが可能であり、織材料よりも低価格である。このようなマットの糸は典型的に、適切な接着剤によって互いに接着され、単一の構造を形成する。不織繊維マットは、例えば約10から約40ミルの範囲の厚さを有することができる。
【0028】
特定の紙、その他の不織材料、及び特定の織物、並びに類似のものなど、フェイシング材が所望の多孔度を有する場合、種結晶コーティングの側を有するフェイシング材を製造する場合に、接着物質及び最終的な種結晶コーティングがフェイシング材の多孔度に及ぼす影響が最小であるのが好ましい。このフェイシング材の多孔度の維持は、ウォールボードの製造において有用である。なぜなら、湿潤プラスターが種結晶コーティングの側を有するフェイシング材の処理済表面に塗布された後、この表面に見られる水は、フェイシング材層を通って容易に蒸発できるからである。フェイシング材の多孔性は、「低」設定のハガティポロシメータ装置を用いる「ガーレイ透気度」と称される標準試験法によって測定することができる。
【0029】
一段階の連続法が望ましい場合、接着物質及び種結晶をフェイシング材の表面に塗布し、次いで種結晶コーティング側を有するフェイシング材に湿潤プラスターを塗布することができる。
【0030】
種結晶で被覆された面を有するフェイシング材は、機械的方法によってウォールボードに加工される。すなわち、湿潤プラスター層の一側または両側を、種結晶で被覆された面を有するフェイシング材の種結晶で被覆された面と接触させて、建築用に有用なウォールボード組成物を作製する。本発明の場合における湿潤プラスターは、好ましくはデンプンを全く含有しないかまたは従来技術と比較して少量のデンプンを含有するかのいずれかである。湿潤プラスターはまた、一般的に、標準的なウォールボードプラスター調製物と比較して低レベルの水を含有し得る。従って、フェイシング材を有する最終ウォールボード組成物のデンプン成分の全てまたは一部を、本発明のフェイシング材の種結晶で被覆された面を有するフェイシング材に置き換えることにより、新規のウォールボード組成物が作成される。
【0031】
ウォールボードの製造プロセスにおいて、二段階プロセスが想定される。すなわち、本発明の種結晶で被覆された面を有するフェイシング材を事前に作製し、次いで湿潤プラスターの層と組み合わせてウォールボードを作製する。代替として、一段階のプロセスも想定される。すなわち、種結晶コーティングをフェイシング材の表面に塗布し、フェイシング材を完全に乾燥させる前に、種結晶で被覆された面を有するフェイシング材に湿潤プラスターを塗布してウォールボードを作製する。
【0032】
本発明はさらに、以下の実施例によって実証される。実施例は本発明を例示する目的で提示されたものであり、特に明記されない限り、部及び割合は重量によるものである。
【0033】
(実施例1)
まず、一般的な工業用石膏ウォールボード紙を含むフェイシング材を200×300mmのサイズに切断した。次いで、水道水中に再分散性粉末が分散した5重量%のラテックス分散を使用して、垂直位置において約1g/mであるエアレススプレーによって紙を被覆した。スプレー後直ぐに、種結晶、二水石膏を濡れた紙表面上に付着させた。
【0034】
周囲条件で24時間乾燥させた後、以下の工程によって、種結晶で表面処理した側を有する紙を使用して試験片を作製した。
・アラバスター型石膏を55重量%の水と手動で混合した。
・調製した紙の一側上に配置された試験リング内にこのスラリを充填し、充填後に第2シートで覆った。
・石膏が硬化し始めるまで、試験片を押し付けた。
・40°Cで24時間乾燥させた後、紙をはがして接着力を測定した。
【0035】
表1に示すように、この方法は、デンプンを含まない試験片と比較して、まずまずの改善をもたらした。
【0036】
(実施例2)
まず、一般的な工業用石膏ウォールボード紙を含むフェイシング材を200×300mmのサイズに切断した。次いで、この紙を手動で水道水に約5分間浸漬し、続いて種結晶、石膏半水和物を濡れた紙表面上にまき散らした。
【0037】
周囲条件で24時間乾燥させた後、十分に接着しなかった種結晶を紙表面から取り除いた。次いで試験片を作製し、実施例1に記載した方法を用いて試験した。
【0038】
表1に示すように、その他の試験と比較して、種結晶で表面処理された側を有する紙は、石膏芯に対して非常に優れた接着力を示した。
【0039】
(実施例3)
まず、一般的な工業用石膏ウォールボード紙を含むフェイシング材を200×300mmのサイズに切断した。次いで、この紙を手動で硫酸カルシウム二水塩水性懸濁液に約5分間浸漬した。
【0040】
周囲条件で24時間乾燥させた後、十分に接着しなかった種結晶を紙表面から取り除いた。次いで試験片を作製し、実施例1に記載した方法を用いて試験した。
【0041】
表1に示すように、デンプンを含まない試験片と比較して、紙と石膏芯との間の接着力はまずまずであった。
【0042】
(実施例4)
まず、一般的な工業用石膏ウォールボード紙を含むフェイシング材を200×300mmのサイズに切断した。次いで、この紙を、水道水中に再分散性のビニルアセテート−エチレンコポリマーポリマー粉末(Ashland社製)が懸濁した10%のAquapas(登録商標)N2090水性懸濁液でスプレーコートした。乾燥基準で1.75及び5重量%のラテックスで紙を被覆した。
【0043】
周囲条件で24時間乾燥させた後、試験片を作製し、実施例1に記載した方法を用いて試験した。
【0044】
表1に示すように、デンプンを含まない試験片と比較して、フェイシング材と石膏芯との間の接着力は良好であった。
【0045】
【表1】

【0046】
フェイシング材の接着力は、以下のランク付けシステムを用いて評価した。
* = 不良
** = まずまず
*** = 良好
**** = 非常に良好
***** = 最高
【0047】
(実施例5)
まず、一般的な工業用石膏ウォールボード紙を含むフェイシング材を200×200mmのサイズに切断し、0.01gの精度で秤量した。82%の硫酸カルシウム二水塩、17.5%のAquapas(登録商用)N2090再分散性ビニルアセテート−エチレンコポリマーポリマー粉末(Ashland社製)、及び0.5%のSupercol(登録商標)XG80キサンタンガム(Ashland社製)を含む10gの乾燥混合物を90gの水道水に加えた。混合物をマグネットスターラーで20分間撹拌した。その後、エアレススプレーを使用して、1mあたり調製した分散物20.0gで紙を被覆した(垂直位置)。
【0048】
正しい量(1mあたり2.0gの固体)が適用されたかどうかチェックするために紙を0.01g精度で再秤量した。周囲条件で24時間乾燥させた後、種結晶コーティングを有するフェイシング材を使用して石膏ボードを作製した。試験用ボードは、以下の工程に従って作製した。
・30gの泡溶液(0.01%空気連行剤(AEA)、ラウリルポリエーテル硫酸のアンモニウム塩)を使用し、ハンドミキサーで90秒間混合することによって泡を調製する。
・600gの石膏を使用して、泡の水を考慮に入れて55重量%の水を含むスラリを調製する。
・IKA(登録商標)Werke GmbH&Co.KGマグネティックスターラーで15秒間混合する。
・石膏スラリに泡を加える。
・IKA(登録商標)Werke GmbH&Co.KGマグネティックスターラーで15秒間混合し、均一に泡立ったスラリを得る。
・種結晶コーティングの側を有する紙を、種結晶コーティング側を上にして型の中に入れ、石膏スラリを加える(ボードの厚さ:約10mm)。
・種結晶コーティングを有するフェイシング材の第2層で石膏スラリを含む型を覆う。
・石膏芯が固化した後、型を除去する。
・周囲条件での15〜30分間の熟成時間
・キャビネット乾燥機内でボードが一定重量になるまで乾燥させる。
【0049】
[接着試験の試験手順]
カバーと乾燥後の石膏ボードとの間の接着力を試験するために、ボードのフェイシング材に十字切り込みを入れた。その後、フェイシング材を手動で剥がし、石膏芯上に残ったフェイシング材の面積を視覚的に評価した。
【0050】
デンプンを含まない石膏ボードと比較して、実施例5の石膏ボードは著しい向上を示した。
【0051】
(実施例6)
まず、一般的な工業用石膏ウォールボード紙を含むフェイシング材を50×145mmのサイズに切断し、0.01gの精度で秤量した。82重量%の種結晶、17.5重量%のAquapas(登録商標)N2090再分散性ビニルアセテート−エチレンコポリマーポリマー粉末(Ashland社製)、及び0.5重量%のSupercol(登録商標)XG 80キサンタンガム(Ashland社製)を含む10gの乾燥混合物を90gの水道水に加えた。混合物をマグネットスターラーで20分間撹拌した。その後、エアレススプレーを使用して、1mあたり調製した分散物20.0gで紙を被覆した(垂直位置)。
【0052】
使用した種結晶は、以下の通りである。
炭酸カルシウム(Fluka 21060)
硫酸ナトリウム(Riedel de Haen 13464)
硫酸鉄(II)(Riedel des Haen 12353)
硫酸アルミニウム水和物(Riedel de Haen 11046)
硫酸バリウム(AppliChem A4911, 1000)
硫酸アルミニウムカリウム(AppliChem A4396, 1000)
炭酸マグネシウム(Sigma 63062)
硫酸カリウム(Kraft 06170.3600)
ドロマイト(90μm, Dolomitwerk Jettenberg)
【0053】
正しい量(1mあたり約2.0gの固体)が適用されたかどうかチェックするために紙を0.01g精度で再秤量した。周囲条件で24時間乾燥させた後、種結晶コーティングを有するフェイシング材を使用して石膏ボードを作製した。試験用ボードは、以下の工程に従って作製した。
・200gの石膏を使用して、55重量%の水を含むスラリを調製する。
・ハンドミキサーで15秒間混合する。
・IKAスターラーで15秒間混合し、均一なスラリを得る。
・種結晶コーティングの側を有する紙を、種結晶コーティング側を上にして型の中に入れ、石膏スラリを加える(ボードの厚さ:約10mm)。
・種結晶コーティングを有するフェイシング材の第2層で石膏スラリを含む型を覆う。
・周囲条件での15〜30分間の熟成時間
・キャビネット乾燥機内でボードが一定重量になるまで乾燥させる。
【0054】
(実施例7)
まず、フェイシング材を50×145mmのサイズに切断し、0.01gの精度で秤量した。82重量%の硫酸カルシウム二水和塩、17.5重量%のAquapas(登録商標)N2090再分散性ビニルアセテート−エチレンコポリマーポリマー粉末(Ashland社製)、及び0.5重量%のSupercol(登録商標)XG 80キサンタンガム(Ashland社製)を含む10gの乾燥混合物を90gの水道水に加えた。混合物をマグネットスターラーで20分間撹拌した。その後、エアレススプレーを使用して、1mあたり調製した分散物20.0gでフェイシング材を被覆した(垂直位置)。
【0055】
使用したフェイシング材は、以下の通りである。
ガラス繊維シート
アルミニウムホイル
発泡ゴム
綿、織物、210g/m
シルク、織物、Ponge08
ポリエチレンホイル
【0056】
正しい量(1mあたり約2.0gの固体)が適用されたかどうかチェックするためにフェイシング材を0.01g精度で再秤量した。周囲条件で24時間乾燥させた後、種結晶コーティングを有するフェイシング材を使用して石膏ボードを作製した。試験用ボードは、以下の工程に従って作製した。
・200gの石膏を使用して、55重量%の水を含むスラリを調製する。
・ハンドミキサーで15秒間混合する。
・IKAスターラーで15秒間混合し、均一なスラリを得る。
・種結晶コーティングの側を有する紙を、種結晶コーティング側を上にして型の中に入れ、石膏スラリを加える(ボードの厚さ:約10mm)。
・種結晶コーティングを有するフェイシング材の第2層で石膏スラリを含む型を覆う。
・周囲条件での15〜30分間の熟成時間
・キャビネット乾燥機内でボードが一定重量になるまで乾燥させる。
【0057】
(実施例8)
まず、一般的な工業用石膏ウォールボード紙を含むフェイシング材を50×145mmのサイズに切断し、0.01gの精度で秤量した。紙に、回転塗布法で接着剤を塗布した。スプレー接着剤は例外で、紙に噴霧塗布した。次いで、硫酸カルシウム二水塩を接着剤の上に適用した。
【0058】
使用した接着剤は、以下の通りである。
メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)の10%溶液
溶媒ベースのエアロゾルスプレー接着剤(UHU Alleskleber社製UHU Spruhkleber)
ポリビニルアルコールの10%溶液
【0059】
正しい量(1mあたり約2.0gの固体)が適用されたかどうかチェックするために紙を0.01g精度で再秤量した。周囲条件で24時間乾燥させた後、種結晶コーティングを有するフェイシング材を使用して石膏ボードを作製した。試験用ボードは、以下の工程に従って作製した。
・200gの石膏を使用して、55重量%の水を含むスラリを調製する。
・ハンドミキサーで15秒間混合する。
・IKAスターラーで15秒間混合し、均一なスラリを得る。
・種結晶コーティングの側を有する紙を、種結晶コーティング側を上にして型の中に入れ、石膏スラリを加える(ボードの厚さ:約10mm)。
・種結晶コーティングを有するフェイシング材の第2層で石膏スラリを含む型を覆う。
・周囲条件での15〜30分間の熟成時間
・キャビネット乾燥機内でボードが一定重量になるまで乾燥させる。
【0060】
[実施例6〜8の接着力試験の試験手順]
乾燥した石膏ボード上のカバーの接着力を試験するために、ボードのフェイシング材を自動化強度制御けん引装置、テクスチャ解析装置TA.XTplusに接続した。フェイシング材を引張るのに必要な力を測定した。テクスチャ解析装置を垂直位置に配置した。ねじ留めを器具のアームに固定した。ゼロ点調整のためにねじ留めをTAテーブルの近くに移動させた。芯及びカバーシート(5×14.5cm)を有するリングがその上に配置されたTAテーブル上に、昇降テーブルを直接セットした。
上側カバーをねじ留めに固定した。テクスチャ解析装置TA.XTplusソフトは、以下の変更を伴う「Verklebung von Tabakblattern」を使用した。測定距離は10cmから20cm、測定速度は10mm/分であった。接着力は、最初の90秒間の間、ニュートン[N]値で最大力として測定した。
【0061】
デンプンを含まない石膏ボードと比較して、実施例6〜8の石膏ボードは顕著な改善を示した。顕著な改善とは、デンプン無しの参照例と比較して100%を超える接着性の増加である。
【0062】
実際に考えられる特定の実施形態または修正の多様な点から本発明について記載、開示、例示、及び示したが、本発明の範囲はそれによって限定されると意図されたものでも見なされるものでもなく、ここでの教示によって示唆され得るその他の修正または実施形態もまた添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものであり、権利を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材であって、
フェイシング材を含み、前記フェイシング材の表面が、前記フェイシング材の前記表面に接着した一定量の種結晶で処理されており、前記種結晶がCaCO、CaSO、BaSO、NaSO、KAl(SO、CaMg(CO、MgCO、KSO、Fe[SO/FeSO、Al[SO、及びこれらの水和物形態からなる群から選択される、処理済フェイシング材。
【請求項2】
前記種結晶がCaSO及びその水和物形態を含む、請求項1に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材。
【請求項3】
前記CaSOが無水物形態である、請求項2に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材。
【請求項4】
前記CaSOが半水和物形態である、請求項2に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材。
【請求項5】
前記CaSOが二水和物形態である、請求項2に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材。
【請求項6】
前記フェイシング材が、紙、ガラス繊維シート、及び合成シート材料からなる群から選択される、請求項1に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材。
【請求項7】
前記合成シート材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリウレタン、及びエポキシからなる群から選択され得る、請求項6に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材。
【請求項8】
a)フェイシング材を得るステップと、
b)一定量の種結晶を得るステップと、
c)前記種結晶を前記フェイシング材の少なくとも1つの表面に接着して種結晶コーティングを有するフェイシング材の表面を得るステップとを含み、
前記種結晶が、CaCO、CaSO、BaSO、NaSO、KAl(SO、CaMg(CO、MgCO、KSO、Fe[SO/FeSO、Al[SO、及びこれらの水和物形態からなる群から選択される、石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項9】
i)一定量の接着物質を得るステップと、
ii)前記接着物質を前記フェイシング材の少なくとも1つの表面に塗布するステップと、
iii)続いて前記種結晶を前記フェイシング材の前記少なくとも1つの表面に塗布して前記種結晶コーティングを有する前記フェイシング材の表面を得るステップと、
によって前記種結晶を接着するステップを達成する、請求項8に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項10】
前記接着物質が水である、請求項9に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項11】
前記接着物質が接着剤である、請求項9に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項12】
前記接着剤が、溶媒系、水系、または無溶媒接着剤からなる群から選択される、請求項11に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項13】
前記接着剤が、ラテックス接着剤を含む、請求項12に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項14】
前記ラテックス接着剤が、再分散性粉末の形態である、請求項13に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項15】
ドクターブレード、ロール、パドルアプリケータ、サイズプレス、カーテンコーター、ウォーターボックス、及びスプレーアプリケータからなる群から選択される塗布手段によって、前記接着物質を前記フェイシング材の前記少なくとも1面に塗布する、請求項8に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項16】
i)水を吸収することができるフェイシング材を得るステップと、
ii)一定量の水を前記接着物質として前記フェイシング材の前記少なくとも1つの表面に塗布するステップと、
iii)続いて前記種結晶を前記フェイシング材の前記少なくとも1つの表面に塗布して前記種結晶コーティングを有する前記フェイシング材の表面を得るステップと、
によって前記種結晶を接着するステップを達成する、請求項8に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項17】
石膏ウォールボードに使用するための前記フェイシング材として紙を使用するステップをさらに含み、前記種結晶を接着するステップを、紙製造プロセスの間に前記種結晶を前記紙の濡れた表面に適用して、紙製造プロセスの間に前記種結晶コーティングを有する前記フェイシング材の前記表面を得ることによって達成する、請求項8に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項18】
i)水を吸収することができるフェイシング材を得るステップと、
ii)一定量の水と一定量の種結晶とを含むスラリまたは溶液を作製するステップと、
iii)水と種結晶とを含む前記スラリを前記フェイシング材の前記少なくとも1つの表面に塗布して前記種結晶コーティングを有する前記フェイシング材の表面を得るステップと、
によって前記種結晶を接着するステップを達成する、請求項8に記載の石膏ウォールボードに使用するための処理済フェイシング材の製造方法。
【請求項19】
内部の石膏プラスター芯と、
処理済フェイシング材と、を含むウォールボードであって、
前記処理済フェイシング材が、前記フェイシング材の表面が前記フェイシング材の前記表面に接着した一定量の種結晶で処理されているフェイシング材を含み、
前記種結晶が、CaCO、CaSO、BaSO、NaSO、KAl(SO、CaMg(CO、MgCO、KSO、Fe[SO/FeSO、Al[SO、及びこれらの水和物形態からなる群から選択される、ウォールボード。

【公表番号】特表2012−530854(P2012−530854A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516364(P2012−516364)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/039296
【国際公開番号】WO2010/151499
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】