説明

石膏パーティクルボードおよびその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、床材、壁あるいは天井などの内装材に好適な石膏パーティクルボードおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、尿素樹脂やフェノール樹脂、メラミン樹脂などの接着剤を介して木片を板状に成形したパーティクルボードや、セメントをバインダーとして木片を板状に成形した木片セメント板が知られている。また、天然繊維や化学繊維を補強材として1〜10%程度混入した石膏ボードも市販されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述したパーティクルボードは、比重が小さく、強度も高い他、施工性に優れているものの、防火性や寸法安定性に劣る欠点がある。また、木片セメント板や石膏ボードは、防火性に優れているものの、比重が大きく、強度も低い他、施工性が低い欠点がある。
【0004】なお、石膏をバインダーとして木片を板状に成形することも試みられているが、石膏と木片との密着性が低く、他の競合製品に比べて強度および耐水性が低いという問題がある。すなわち、石膏は、半水石膏に結晶水となる水より多くの水を加えて二水石膏に変化させることによって得られるが、通常半水石膏と水との混合液は流動状であり、この混合液に木片を混合した場合、団子状に固まる結果、両者の均一な混合は困難である。特に端部の処理が極めて難しい。
【0005】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、内装材として好適な石膏と木片との複合材である石膏パーティクルボードを提供するとともに、このような石膏パーティクルボードをサイズに関係なく連続的に製造することのできる石膏パーティクルボードの製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の石膏パーティクルボードは、表層に気泡が形成された二水石膏からなる石膏層を有するとともに、芯層に表層に向かって大きな粉砕木片から小さな粉砕木片に順に傾斜する木片層を有することを特徴とするものである。
【0007】また、本発明の石膏パーティクルボードの製造方法は、半水石膏粉末に水および発泡剤が添加された流動状の石膏水液を流して水平に均した後、水を添加して半水石膏粉末を付着させた粉砕木片を分級することにより、表層に半水石膏粉末を堆積させるとともに、芯層に表層に向かって大きな粉砕木片から小さな粉砕木片を順に堆積させてマットを形成し、次いで、このマットを仮押さえした後、その上に半水石膏粉末に水および発泡剤が添加された流動状の石膏水液を流して水平に均し、硬化させることを特徴とするものである。
【0008】
【作用】本発明の石膏パーティクルボードにあっては、表層に気泡が形成されて軽量化された密度の高い石膏層を、芯層に軽く、剛性の大きな木片層をそれぞれ有していることにより、木片セメント板や石膏ボードに比べて比重が小さく、強度も大きい他、パーティクルボードに比べて寸法安定性が高く、防火性にも優れている。また、断熱性や遮音性も良好であるとともに、現場での加工や施工が容易であり、床材や内壁、天井といった内装材に好適である。
【0009】また、本発明の石膏パーティクルボードの製造方法にあっては、発泡剤が添加された石膏水液を流して水平に均した後、水を添加して半水石膏粉末を付着させた粉砕木片を分級し、次いで、仮押さえした後、発泡剤が添加された石膏水液を流して水平に均し、硬化させることにより、内装材として好適な石膏パーティクルボードをサイズに関係なく連続的に、かつ、簡単に製造することができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0011】図1には、本発明の石膏パーティクルボード1が示されている。この石膏パーティクルボード1は、表層に気泡Bを有する二水石膏Gからなる石膏層2が形成されるとともに、芯層に表層に向かって大きな粉砕木片Cから小さな粉砕木片Cに順に傾斜する木片層3が形成されている。
【0012】この石膏パーティクルボード1は、表層に気泡Bによって軽量化された密度の高い石膏層2が形成されていることにより、伸縮が小さく寸法安定性に優れている他、防火性にも優れている利点がある。すなわち、二水石膏に含まれる結晶水が脱水するまでの間、温度は100℃を越えることがなく、類焼までに一定時間を確保することができる。また、芯層に軽く、剛性の大きな木片層3が形成されていることにより、比重が小さく、強度も高い他、釘の保持力が高く、現場での加工や施工に優れるとともに、断熱性や遮音性にも優れている。この結果、内装材、例えば、床材、壁、天井に好適となる。
【0013】このような石膏パーティクルボード1を製造するには、まず、木材、例えば、ラワンをチッパーで厚さ0.5mm、長さ50mm程度に切削し、次いで、ハンマーミルで破砕する。さらに、一部大きな木片は、パールマンミルで粉砕する。これらの粉砕された木片は、乾燥工程を経ることなくその含水率が100〜130%となるように水を添加して調整する。そして、これらの粉砕木片に半水石膏粉末を付着させる。
【0014】一方、図2に示すように、半水石膏粉末gに水を添加して流動状の石膏水液gW を作り、さらに、発泡剤Aを添加した後、コール板12上に流して水平に均す。次いで、前述した半水石膏粉末gが付着された粉砕木片Cg を流動状の石膏水液gW 上に分級する。すなわち、半水石膏粉末gが付着された粉砕木片Cg と、半水石膏粉末gとの混合物をホッパー11から落下させ、その際、吹き出し装置13から前後方向(図2の左右方向)にエアを噴出させると、水を含み、半水石膏粉末gが付着された大きな粉砕木片Cg はエアの影響を受けることなくそのまま落下し、一方、水を含み、半水石膏粉末gが付着された小さな粉砕木片Cg がその遠方に吹き飛ばされ、さらに遠方に半水石膏粉末gが吹き飛ばされることになる。
【0015】ここで、コール板12を前方(図2の矢符方向)に移動させると、コール板12の移動方向に対して後方では、発泡剤Aが添加された流動状の石膏水液gW の上に半水石膏粉末gが堆積され、その前方に向かうにしたがって半水石膏粉末gが付着された粉砕木片Cg のうち、小さな木片Cg から大きな木片Cg が順に堆積されることになる。そして、吹き出し装置13を越えると、前述とは逆に、大きな木片Cg 、小さな木片Cg 、半水石膏粉末gの順に堆積されることになる。この結果、コール板12上に均された流動状の石膏水液gW の上に、まず、半水石膏粉末gが堆積され、次いで、小さな粉砕木片Cg から芯層に向かうにしたがって大きな粉砕木片Cg が傾斜して堆積された後、大きな粉砕木片Cg から表層に向かうにしたがって小さな粉砕木片Cg が順に堆積され、さらに、表層に再び半水石膏粉末gが堆積されてマット1Aが形成されるものである。
【0016】この後、このマット1Aを仮押さえした後、その上に、発泡剤Aが添加された流動状の石膏水液gW を流して水平に均し、硬化させる。この間、発泡剤Aが発泡して気泡Bを形成させると同時に、半水石膏粉末gが流動状の石膏水液gW の余剰水および粉砕木片Cg に含有された水分を取り込んで流動状の石膏水液gWとともに二水石膏Gに変化し、石膏パーティクルボード1が製造されることになる。
【0017】この結果、防火性、寸法安定性、施工性に優れ、より軽くて強度の高い特性を有する石膏パーティクルボード1を、サイズに関係なく連続的に、かつ、簡単に製造することができる。
【0018】特に、石膏水液gW が表層になることにより、緻密で滑らかな表面が得られる他、コール板12に凹凸模様を形成すると、その凹凸模様を有する鮮明で美しい表面の石膏パーティクルボード1を製造することが可能となる。
【0019】ところで、前述した実施例においては、半水石膏粉末gと、この半水石膏粉末gが付着された粉砕木片Cg との分級を風力を利用して行ったが、重力選別を用いることもできる。例えば、図3に示すように、ホッパー11からの半水石膏粉末gおよび半水石膏粉末gが付着された粉砕木片Cg とを案内板14を介して傾斜板15に落下させ、その反発力の相違を利用してマット1Aを形成することもできる。すなわち、傾斜板15に落下した木片Cg は跳ね上がって遠くに落下する一方、半水石膏粉末gは傾斜板15に沿って滑落し、その下端縁直下に落下する。このため、コール板12上に発泡剤Aが添加された流動状の石膏水液gW を流して水平に均した後、コール板12を移動させることにより、コール板12の移動方向に対して後方に位置する傾斜板15の下端直下位置では、半水石膏粉末gが堆積し、以下コール板12の移動に連れて先に堆積した半水石膏粉末gの上に小さくな木片Cg 、大きな木片Cg の順に堆積する。さらに、他方の傾斜板15を越えると、前述とは逆に、大きな木片Cg 、小さな木片Cg および半水石膏粉末gの順に堆積されることになる。
【0020】この場合においても、発泡剤Aが添加された流動状の石膏水液gW の上に、表層に半水石膏粉末gが堆積され、芯層に表層に向かうにしたがって大きな粉砕木片Cg から小さな粉砕木片Cg が順に堆積されてマット1Aが形成されることになる。以下、前述したように、マット1Aを仮押さえした後、その上に、再び発泡剤Aが添加された流動状の石膏水液gW を流して水平に均し、硬化させることで石膏パーティクルボード1を製造することができる。
【0021】この他、篩分による分級を利用してもよく、また、これらを併用することもできる。
【0022】
【発明の効果】以上のように、本発明の石膏パーティクルボードにおいては、表層に気泡が形成されて軽量化された密度の高い石膏層を、芯層に軽くて剛性の大きな木片層をそれぞれ有していることにより、木片セメント板や石膏ボードに比べて比重が小さく、強度も大きい他、パーティクルボードに比べて寸法安定性が高く、防火性にも優れている。また、断熱性や遮音性も良好であるとともに、現場での加工や施工が容易となる。
【0023】また、本発明の石膏パーティクルボードの製造方法にあっては、発泡剤が添加された石膏水液を流して水平に均した後、水を添加して半水石膏粉末を付着させた粉砕木片を分級し、次いで、仮押さえした後、発泡剤が添加された石膏水液を流して水平に均し、硬化させることにより、内装材として好適な石膏パーティクルボードをサイズに関係なく連続的に、かつ、簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の石膏パーティクルボードの断面図である。
【図2】本発明の石膏パーティクルボードを製造する際の分級工程を示す説明図である。
【図3】本発明の石膏パーティクルボードを製造する際の他の分級工程を示す説明図である。
【符号の説明】
1 石膏パーティクルボード
1A マット
2 石膏層
3 木片層
11 ホッパー
12 コール板
13 吹き出し装置
14 案内板
15 傾斜板
G 石膏(二水石膏)
g 半水石膏粉末
C 粉砕木片
g 半水石膏粉末が付着された粉砕木片
W 石膏水液
A 発泡剤
B 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表層に気泡が形成された二水石膏からなる石膏層を有するとともに、芯層に表層に向かって大きな粉砕木片から小さな粉砕木片に順に傾斜する木片層を有することを特徴とする石膏パーティクルボード。
【請求項2】 半水石膏粉末に水および発泡剤が添加された流動状の石膏水液を流して水平に均した後、水を添加して半水石膏粉末を付着させた粉砕木片を分級することにより、表層に半水石膏粉末を堆積させるとともに、芯層に表層に向かって大きな粉砕木片から小さな粉砕木片を順に堆積させてマットを形成し、次いで、このマットを仮押さえした後、その上に半水石膏粉末に水および発泡剤が添加された流動状の石膏水液を流して水平に均し、硬化させることを特徴とする石膏パーティクルボードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3358909号(P3358909)
【登録日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【発行日】平成14年12月24日(2002.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−51152
【出願日】平成7年3月10日(1995.3.10)
【公開番号】特開平8−244161
【公開日】平成8年9月24日(1996.9.24)
【審査請求日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000199245)チヨダウーテ株式会社 (23)
【参考文献】
【文献】実開 昭53−51015(JP,U)
【文献】実公 昭35−30185(JP,Y1)