説明

砂ろ過装置、方法、及び、これを用いた鋼板の熱間圧延方法

【課題】砂ろ過装置における逆洗時のろ砂の流出を防ぎ、ろ砂の洗浄効果を向上させる。
【解決手段】砂ろ過装置1において、水の流入口14に、網30を設置する。この砂ろ過装置1を用いて、熱間圧延で発生するスケールをろ過して、水から分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂ろ過装置、方法、及び、これを用いた鋼板の熱間圧延方法に係り、特に、熱間圧延でスケールをろ過して水から分離する際に用いるのに好適な、砂ろ過装置、方法、及び、これを用いた鋼板の熱間圧延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水は、主として、冷却用や洗浄用として、様々な工場で循環使用されている。
【0003】
例えば、製鉄業では、水を様々な製造工程で循環使用しており、更に具体的な例を述べれば、図12に示すように、熱間圧延の工程100においては、鋼板21の表面に生成する酸化鉄(以下、スケールという)を取り除くのに、スプレーノズル18などを介して、圧力を加えた水を、鋼板21に直接噴射して使用したり、圧延機のワークロール20を冷却するのに、同じくスプレーノズル19などを介して、水を供給したりするなどしている。
【0004】
ここで、前者のスケールを取り除く方の話であるが、取り除かれたスケールは、水とともに、スルース22を通ってピット23に回収され、沈殿池24を通る。沈殿池24では、スケールを沈殿させ水と分離するが、分離しきれなかったスケールは、水とともに、砂ろ過装置1を通過することで、スケールを水から完全に分離し、水を再使用、すなわち循環使用するようにしている。ちなみに、図中、4、25、26で示したのは、いずれも、ポンプである。
【0005】
このように、循環させて使用する水のことを環水ともいうが、環水(以下、単に水)の方は何度でも再使用される一方で、砂ろ過装置1の方には、分離されたスケールがたまっていく。このため、複数機存在する砂ろ過装置1のうち1台(例えば、砂ろ過装置1、6台中1台)を、砂ろ過装置1にてスケールを水から分離する際に水を流すのとは逆の方向に水を流すようにすることで、定期的にスケールを取り除く作業(以下、逆洗という)が、それぞれの砂ろ過装置1に対して順番に行われる。
【0006】
砂ろ過装置に関する技術としては、例えば、特許文献1のように、微細気泡を発生する微細気泡発生水を注入して、ろ砂の流出を防ぎながら、逆洗を行なう技術がある。
【0007】
ろ過及び逆洗の仕方について、図13乃至図16を用いて説明する。砂ろ過とは、細かい粒子のろ砂16の間に水を通すことにより、水に含まれる不純物を、ろ砂16により、ろ過して除去し、水の方を再び利用するための、いわば洗浄処理ともいえる。ろ過は、通水→1次逆洗→2次逆洗→満水→通水という一連の処理の繰り返しにて行われる。以下、各処理について説明する。
【0008】
図13は、工場から排出される工業用水を処理してスケールを水から分離し再使用する、砂ろ過装置1の本来の運転、すなわち、通水(ろ過)の処理のようすを示す。通水時は、原水弁5、処理水弁7が開いており、その他の弁は閉じている。ろ過送水ポンプ4により、ろ砂16の表面よりも上方にある、流入口14から砂ろ過装置1に流入した水は、ろ砂16を通過する間に不純物が除去される。その後、水は、砂利17を通過し、排水口15を通り、再度工場に向け供給されることで、再使用される。
【0009】
図14は、1次逆洗処理の様子を示す。砂ろ過装置1では、ろ砂16に付着した不純物を洗浄するための、逆洗処理を行うことができる。1次逆洗時は、吸排気弁2、排水弁6、逆洗弁8、空気弁12が開いており、その他の弁は閉じている。逆洗水ポンプ11により排水口15より、砂ろ過装置1内に逆洗水を送水する。逆洗水は、砂利17、ろ砂16を洗浄し、流入口14を通って排水される。あわせて、特許文献1に記載されているように、ブロワ13より空気を送ることにより、洗浄効果を向上している。なお、吸排気弁2を開いておくことにより、逆洗水が大量に送り込まれても、砂ろ過装置1の内部の圧力が極端に上昇してしまうことがないようにしている。
【0010】
図15は、2次逆洗処理の様子を示す。2次逆洗時は、排水弁6、逆洗弁8が開いており、その他の弁は閉じている。逆洗水ポンプ11により、排水口15から砂ろ過装置1内に逆洗水を送水する。逆洗水は砂利17、ろ砂16を洗浄し、流入口14を通って排水される。ブロワ13より空気を送るのは停止する。
【0011】
図16は、満水処理の様子を示す。逆洗終了後の砂ろ過装置1は、再び通水を行う前に満水の状態にしておく必要がある。満水時は、満水弁3、逆洗弁8は開いており、その他の弁は閉じている。
【0012】
【特許文献1】特開2001−149712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、発明者が検討したところによれば、以下のような問題があることがわかった。
【0014】
熱間圧延では、図12に示したように、鋼板21とワークロール20の間に油を含んだ潤滑剤を供給して圧延しているが、ろ砂16に油分が付着し、ろ砂16が粗大化してしまうと、体積が大きくなり、見かけ上、比重が軽くなるため、図17に示すように、逆洗処理中に流入口14より、ろ砂16が、砂ろ過装置1の外に流出し、排水に混入してしまう。これにより、(1)砂ろ過装置1内のろ砂16が少なくなるために、所望の水質が得られなくなる、(2)流出したろ砂16を回収・廃棄しなければならない、(3)砂ろ過装置1内のろ砂16および砂利17を新規に補充しなければならなくなる、といった問題がある。
【0015】
これを解決するために、例えば、(1)ろ砂16に油分が多く付着している場合には、薬品タンク9から薬品注入ポンプ10により逆洗水に薬品を注入し、ろ砂16に付着した油分を分離する方法、更に、(2)1次に逆洗時に薬品を用いた場合に、再使用しようとする水への薬品の混入を避けるべく、2次逆洗時に、砂ろ過装置1内の薬品を完全に洗浄するため、洗浄時間を通常より長くする、といった方法がとられているが、ろ砂16の流出には効果が無く、また、薬品が、再使用しようとする水に混入し、鋼板の所望の品質や表面性状が得られないという問題があった。
【0016】
本発明は、従来技術のかかる問題を解決するためになされたものであり、砂ろ過装置における逆洗時のろ砂の流出を防ぎ、ろ砂の洗浄効果を向上させるための砂ろ過装置、方法、及び、これを用いた鋼板の熱間圧延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる目的を達成するための本発明は、以下の通りである。すなわち、
(1)砂ろ過装置において、水の流入口に、網を設置したことを特徴とする砂ろ過装置。
(2)前記(1)の網を着脱可能としたことを特徴とする請求項1に記載の砂ろ過装置。
(3)砂ろ過装置を用いたろ過方法において、水の流入口に、網を設置することを特徴とする砂ろ過方法。
(4)(3)の方法を用いて、スケールをろ過して水から分離することを特徴とする鋼板の熱間圧延方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、砂ろ過装置における逆洗時のろ砂の流出を防ぎ、ろ砂の洗浄効果を向上させることができるようになった。そして、安定した水質を得ることができ、鋼板の所望の品質や表面性状を確保しつつ、砂ろ過装置の維持費の低減も図ることができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の一例を、適宜図を参照しつつ説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の砂ろ過装置1の一つの実施の形態を示したものである。符号は、先述の図13乃至図16のものと共通である。ろ砂16の表面よりも上方にある流入口14に、網30を設置している。
【0021】
図2は、本発明の作用を示したものである。図17と比較してみてもわかるとおり、逆洗時に、網30により、ろ砂16がせき止められ、流入口14から排水される水と一緒にろ砂16が流出してしまうのを防止することができる。
【0022】
ろ砂16は、補足しようとする対象に合わせてその大きさが決まるが、スケールを補足するためには一般に平均粒径2mmのものを用いる。網30の目開きは、無数のろ砂16のうち最小のものの粒径よりも小さいことが望ましいが、あまりに小さくすると、排水時の抵抗になって排水がスムーズにいかなくなるため、油分とスケールの付着により見かけ上の比重が軽くなったろ砂16を通さない程度の大きさ、平均粒径2mmのろ砂16であれば目開きは3.35mmとすることができる。
【0023】
なお、発明者らの調査によれば、網30の目開きを、ろ砂16の平均粒径よりも1.5mm大きくするのを限度として、85%のろ砂16は流出しないで済むことがわかっている。
【0024】
なお、平均粒径は、2mmのものであれば、JIS Z 8801:2000に規定する公称目開きW=4mmのものを通過し、W=1mmのものを通過しなかったものについて、ろ砂16の顕微鏡写真を画像処理し、視野内に全体が写っているろ砂について、その画像上の面積を一つ一つ求め、同面積の円の直径を、ろ砂の数で除して平均したもので規定した値にて評価している。
【0025】
また、スケールの粒は、概して、ろ砂16よりも小さいため、網30があっても、十分に流入口14から排水される水と一緒に排出される。
【0026】
中には大きな粒のスケールがあったりして、砂ろ過装置1から排出されなくなったりするが、そのような大きな粒のスケールの割合は極めて小さいため、砂ろ過装置1内に残存したとしても、実際上問題はない。
【0027】
次に、本発明の砂ろ過装置を用いた逆洗の動作について、以下、順を追って説明する。
【0028】
図3は、通水(ろ過)の処理の様子を示す。通水時は、原水弁5、処理水弁7が開いており、その他の弁は閉じている。ろ過送水ポンプ4により流入口14から砂ろ過装置1に流入した水は、ろ砂16を通過する間に不純物が除去される。その後、水は、砂利17を通過し、排水口15を通り、再度工場に向け供給されることで、再使用される。
【0029】
図4は、1次逆洗処理の様子を示す。砂ろ過装置1では、ろ砂16に付着した不純物を洗浄するための、逆洗処理を行うことができる。1次逆洗時は、吸排気弁2、排水弁6、逆洗弁8、空気弁12が開いており、その他の弁は閉じている。逆洗水ポンプ11により排水口15から砂ろ過装置1内に逆洗水を送水する。逆洗水は、砂利17、ろ砂16を洗浄し、流入口14を通って排水される。あわせて、ブロワ13より空気を送ることにより、洗浄効果を向上している。
【0030】
また、ろ砂16に油分が多く付着している場合には、薬品タンク9から薬品注入ポンプ10により逆洗水に薬品を注入して、ろ砂16に付着した油分を分離するようにしてもよい。
【0031】
網30の目開きは、ろ砂16の平均粒径より小さいことが望ましいのは先にも述べたが、これにより、ろ砂16の流入口14からの流出を防止することができるとともに、ろ砂16を砂ろ過装置1内にとどめておくことで、水とろ砂16との接触回数が増え、これにより、ろ砂16に付着した不純物の分離を促進することができる。
【0032】
図5は、2次逆洗処理の様子を示す。2次逆洗時は、排水弁6、逆洗弁8が開いており、その他の弁は閉じている。逆洗ポンプ11により排水口15から砂ろ過装置1内に逆洗水を送水する。逆洗水は、砂利17、ろ砂16を洗浄し、流入口14を通って排水される。ブロワ13より空気を送るのは停止する。また、1次逆洗時に薬品を使用する場合には、再使用しようとする水への薬品の混入を避けるべく、2次逆洗時に砂ろ過装置1内の薬品を完全に洗浄するため、洗浄時間を通常より長くするのが好ましい。
【0033】
図6は、ろ砂16の流出防止を目的として、網30を設置した、本発明を適用した場合の、2次逆洗時の砂ろ過装置1内の様子を示す。1次逆洗時と同様に、ろ砂16は、網30により、流入口14からの流出を防止できるとともに、ろ砂16を砂ろ過装置1内にとどめておくことで、水とろ砂16との接触により、不純物の分離を促進することができる。
【0034】
図7は、満水処理の様子を示す。逆洗終了後の砂ろ過装置1は、再び通水を行う前に満水の状態にしておく必要がある。満水時は、満水弁3、逆洗弁8は開いており、その他の弁は閉じている。
【0035】
図8は、通水(ろ過)の処理の様子を示す。水が流入口14を通る際に網30の網目を洗浄することになり、網30の目詰まりによる、ろ過および逆洗効果の低減を防止できる。
【0036】
(第2の実施の形態)
図9及び図10は、網30の着脱が可能な砂ろ過装置1を示す。このようにすれば、網30を外した状態にして洗浄を行うことができるようになる。よって、砂ろ過装置1の使用に影響を与えることなく、網30の洗浄が可能になる。また、網30の目詰まりによる、ろ過および逆洗効果の低減を防止できる。
【0037】
これにより、ろ砂16の長寿命化及び砂ろ過装置1の維持費の低減が図れる。なお、着脱は手動で行ってもよいし、油圧、空気圧などの流体圧を用いたシリンダや、電動機ほかのアクチュエータを遠隔で操作するように自動で行ってもよい。
【0038】
以上の説明の通り、本発明によれば、上記したいずれの実施形態、あるいは、別の実施の形態によっても、砂ろ過装置において、ろ砂で補足したスケールを、ろ砂の流出を防止しつつ、逆流水により水の流入口から排出することができる。
【実施例】
【0039】
本実施例は、次に述べる本発明例、比較例とも、ろ砂として、平均粒径2mmのものを用い、網として、JIS Z 8801:2000に規定する公称目開きW=3.35mmを用いた場合のものである。
【0040】
図11は、本発明を適用した場合(本発明例)とそうでない場合(比較例)の、ろ砂16の流出量を比較したものである。本発明の適用により、ろ砂16の流出量が大幅に低減されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施の形態について説明するための管路図
【図2】同じく作用について説明するための管路図
【図3】同じく通水(ろ過)処理の様子を示す管路図
【図4】同じく1次逆洗処理の様子を示す管路図
【図5】同じく2次逆洗処理の様子を示す管路図
【図6】同じく2次逆洗処理時の砂ろ過装置内の様子を示す断面図
【図7】同じく満水処理の様子を示す管路図
【図8】同じく通水(ろ過)処理の様子を示す断面図
【図9】本発明の第2の実施の形態について説明するための要部断面図
【図10】同じく1次逆洗処理の様子を示す断面図
【図11】本発明の効果について説明するための線図
【図12】背景技術について説明するための管路図
【図13】同じく通水(ろ過)処理の様子を示す管路図
【図14】同じく1次逆洗処理の様子を示す管路図
【図15】同じく2次逆洗処理の様子を示す管路図
【図16】同じく満水処理の様子を示す管路図
【図17】従来技術の問題について説明するための断面図
【符号の説明】
【0042】
1…砂ろ過装置
2…吸排気弁
3…満水弁
4…ろ過送水ポンプ
5…原水弁
6…排水弁
7…処理水弁
8…逆洗弁
9…薬品タンク
10…薬品注入ポンプ
11…逆洗水ポンプ
12…空気弁
13…ブロワ
14…流入口
15…排水口
16…ろ砂
17…砂利
18、19…スプレーノズル
20…圧延機のワークロール
21…鋼板
22…スルース
23…ピット
24…沈殿池
30…網
100…熱間圧延の工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂ろ過装置において、
水の流入口に、網を設置したことを特徴とする砂ろ過装置。
【請求項2】
前記網を着脱可能としたことを特徴とする請求項1に記載の砂ろ過装置。
【請求項3】
砂ろ過装置を用いたろ過方法において、
水の流入口に、網を設置することを特徴とする砂ろ過方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法を用いて、スケールをろ過して水から分離することを特徴とする鋼板の熱間圧延方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−73666(P2008−73666A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259124(P2006−259124)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】