説明

砂糖きび収穫機

【課題】切断された砂糖きびの根元をベースカッターで押し上げて、高い位置のチョッピング装置へ確実に案内機構を提供する。
【解決手段】ベースカッター1で切断された砂糖きびの根元をチョッピング装置2の細断刃21a,21bで掴み、引き込み、後方に送りつつ細断し、細断された砂糖きびをコンベアーで後方に向けて斜め上方に搬送する砂糖きび収穫機において、上記チョッピング装置が細断刃21a,21bによるものであり、下側の細断刃21bの回転平面の下端がベースカッター1の後端の高さ以上の高さに配置されており、ベースカッター1の回転円盤15の上面外周に螺旋状のバットリフター11a,11bの下端が固着されてあり、前記バットリフターの下端が回転方向前方、上端が回転方向後方であり、前記バットリフターによる押し上げ高さが、チョッピング装置2の細断刃21a,21bの下側回転軸23よりも上方で、上側回転軸よりも下方であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、砂糖きび収穫機、殊に砂糖きびを刈り取り、チョッピングする装置に関するものであって、収穫作業を極めてスムーズに、能率的に行うことができ、大型品種(太くて長い品種)の砂糖きびの収穫作業においても高い作業能力を発揮することができるものである。
【背景技術】
【0002】
我が国における砂糖きび栽培は、諸外国に比べて極めて集約的で、他の農作物と同様に畝栽培(畝に栽培する栽培法)がなされており、そのほとんどが中型の品種であるが、エタノール生産に適した大型の品種(太くて長い品種)の栽培が盛んになるものと思われる。そしてまた、左右一対のベースカッター1の切断刃16で砂糖きびPを根元で切断するとき、地面上に出ている部分で切断すると、切り株B(残された株)が割れてしまう。切り株Bが割れるとこれが病原菌に侵され、株出し(新株の芽吹き)が悪くなり、発芽後の生育も悪いので、この株割れを回避することが望ましい。このために、畝50の頂部の土中にベースカッター1の切断刃16を入れて、切り込み線51に沿って土中で砂糖きびPの根元を切断する方式が採用されている(図3参照)。
【0003】
ベースカッター1の回転円盤15が少し前傾していて、その外周に切断刃が固定されており、左右のベースカッター1が内側に回転しながら前進する。砂糖きびPはベースカッター1で土中で切断され、ベースカッター1の直ぐ後方にある掻き込みローラー(上下一対の回転ローラーによるもの)に引き込まれ、その後、搬送ローラーで斜め上方に搬送され、搬送ローラーの後端に配置したチョッピング装置(チョッパー)に送り込まれ、当該チョッピング装置で所定長(約25cm前後)に細断される。そして、細断された砂糖きびPaは風選装置に供給され、トラッシュ(枯葉などの異物)が分離され、細断された砂糖きびPaだけが袋などに収容される。
【0004】
〔従来技術1〕
従来の砂糖きび収穫機では、ベースカッター、掻き込みローラー、搬送ローラー、チョッピング装置が前方から順に後方に配列されており、ベースカッターで切断された砂糖きびの根元(ベースカッターで切断されて倒された状態では後端部)が掻き込みローラーで掻き込まれ、掴まれてその後方の搬送ローラーに送り込まれ、その後、搬送ローラーでチョッピング装置(細断装置)まで送られて細断(チョッピング)される(特開2004−337036号公報)。この従来技術1は、砂糖きびPがまっすぐに立っているものであれば収穫作業が比較的スムーズであるが、砂糖きびが倒れ、絡み合っている場合は、砂糖きびPが掻き込みローラーの入り口に詰まってしまい、そのために収穫作業が停止してしまうことがある。そして、大型品種(太くて長いもの)砂糖きびの場合は、掻き込みローラーによる掻き込み量が多く、一本一本の砂糖きびが強くて掻き込み作用に対する抵抗が大きいので、掻き込みローラーが滑って掻き込み能力が低下し、その結果、掻き込みローラーの入り口に多量の砂糖きびが詰まってしまうことが多い。このようにして、砂糖きびが掻き込みローラーの入り口に詰まり、そのために収穫作業が度々中断されるようになると、作業能率が大幅に低下することになる。
【0005】
なお、ベースカッターで切断された切り株B(図3の切り株B参照)に、切断刃16、取り付けボルト等が衝突して切り株Bを損傷させることがないように、また、これらとの摩擦によってベースカッターに対する回転抵抗が増大することがないように回転円盤を前傾姿勢で回転させている(従来技術1)。
【0006】
〔従来技術2〕
他の形式として次の構成のもの(従来技術2)も公知である。これはベースカッターの直後に上下一対の細断刃によるチョッピング装置が配置されていて、ベースカッターで切断された砂糖きびPの根元を、その直ぐ後方のチョッピング装置の細断刃で掴み、当該細断刃で後方に引き込みながら細断するものであり、細断されたものをその下方のコンベアーの先端部に放出し、当該コンベアーで斜め上方に搬送してその後端の風選装置に供給する(投入する)ようになっているものである(以上のような従来技術2は外国で実施されたものであるが、しかし、これが記載されている公知文献を発見することはできない)。
【0007】
この従来技術2のものは上記従来技術1のものに比して機構が極めて単純で、しかも、刈り倒された砂糖きびPが、その直後にチョッピング装置で掴まれて強力に後方に引き込まれてゆくので、砂糖きびの後方への流れが迅速、確実であり、したがって、ベースカッターで切断された砂糖きびPが、チョッピング装置2の入り口で詰まることはなく、細断(チョッピング)されたものがコンベアーで斜め後方へ搬送されるのでこの搬送は比較的容易である。それゆえ、ベースカッターで切断された後の処理能率が高く、また、従来技術1のものに比して必要な動力が格段に小馬力で足りるなど、多くの利点がある。
しかし、この方式のものは我が国の栽培方法には不向きな点があり、まだ実用化されてはいない。
【0008】
実用化されない最大の理由は次のとおりである。
すなわち、砂糖きびPが畝の土の中で根元をベースカター1で切断されるので、回転円盤や切断刃、切断刃の取り付けボルトなどで土やゴミや小石等の異物Aが後方斜め上方に跳ね飛ばされる(図4参照)。これはベ−スカッターの回転円盤15が前傾姿勢で回転することによるものである。そして、ベースカッターの直ぐ後方にチョッピング装置2があるので、ベースカッターで跳ね飛ばされた小石等の異物Aが当該チョッピング装置2に引き込まれる。これはベースカッターで切断された砂糖きびPの根元(刈り倒されたものの後端)をチョッピング装置で確実に引き込める高さにチョッピング装置が下げられるので、その結果、避けられない現象である。
そして、小石等の異物Aがチョッピング装置2に引き込まれると、細断刃がこれを噛み込み、損傷される。
また、小石等の異物Aがチョッピング装置を通過すると、チョッピング装置と風選装置との間でこれを選別して排除しなければならず、排除されなければ異物Aがそのまま風選装置に運び込まれ、砂糖きびとともに収穫袋に取り込まれてしまうという問題がある。
【0009】
また、次のような問題もある。
ベースカッター1で切断された砂糖きびがチョッピング装置2に引き込まれてその細断刃で細断されるには、ベースカッターで切断されて後方に送り込まれる砂糖きびの根元を細断刃で下側からすくい上げなければならない。もし切断された砂糖きびの根元が細断刃の下側に入ってしまうと、これはチョッピング装置2に引き込まれず、収穫されなくなるからである。これを防ぐには、チョッピング装置2をその下側の細断刃21bの回転軸23の高さhがベースカッター1の回転円盤15の後端の高さとほぼ同じ高さになるまで下げる必要がある。しかし、実際には、チョッピング装置のギアボックス22の下端が畝の頂部に当接するので、そこまで下げることはできない(図4参照)。
【0010】
他方、砂糖きびPを土の中で切断するためにベースカッター1による切断位置が低いときは、これに合わせてチョッピング装置の位置も低くせざるを得ない。このために、ベースカッター1で後方斜め上方に跳ね上げられた小石等の異物Aが、チョッピング装置2の細断刃21a,21bに引き込まれることが避けられない。また、チョッピング装置のギアボックスの下面が畝の頂部に突っ込んでしまい、このため、刈り取り作業が著しく阻害される。
我が国の砂糖きび栽培法に適し、作業性に優れ、耐久性に優れている砂糖きび収穫機を上記従来技術2を基礎にして完成するには、以上の問題が解決されなければならない。
【0011】
以上の問題は、後方斜め上方に跳ね上げられた小石等の異物Aがチョッピング装置2に飛び込むことに起因するのであるから、ベースカッターの切り込み高さに対してチョッピング装置の高さを十分に高くして、その上で、砂糖きびPだけがチョッピング装置に引き込まれるようにすれば、上記の問題が解消されることは明らかである。
したがって、ベースカッターで切断された砂糖きびPの根元を確実に捉えてそれだけを十分な高さまで確実に押し上げられるように、その押し上げ機構を工夫することが技術的な課題となる。
【特許文献1】特開2004−337036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、ベースカッターの直ぐ後方にチョッピング装置があって、ベースカッターで切断された砂糖きびの根元を当該チョッピング装置の細断刃で掴み、これを引き込み、後方に送りつつ細断し、細断された砂糖きびをコンベアーで後方斜め上方に搬送するようになっている砂糖きび収穫機について、
ベースカッターで切断された砂糖きびの根元を押し上げて、高い位置に配置されたチョッピング装置へ確実に案内する案内機構を工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段は、ベースカッターの直後にチョッピング装置があって、ベースカッターで切断された砂糖きびの根元を当該チョッピング装置の細断刃で掴み、これを引き込み、後方に送りつつ細断し、細断された砂糖きびをコンベアーで後方に向けて斜め上方に搬送するようになっている砂糖きび収穫機について、次の(イ)〜(ニ)によるものである。
(イ)上記チョッピング装置が上下一対の細断刃によるものであり、下側の細断刃の回転平面の下端がベースカッターの後端の高さ以上の高さに配置されており、
(ロ)ベースカッターの回転円盤の上面外周に螺旋状のバットリフターの下端が固着されてあり、
(ハ)上記バットリフターの下端が回転方向前方、上端が回転方向後方であり、
(ニ)上記バットリフターによる押し上げ高さが、チョッピング装置の上下一対の細断刃の下側回転軸よりも上方で、上側回転軸よりも下方であること。
【0014】
なお、上記チョッピング装置の「下側の細断刃の回転平面の下端がベースカッターの後端の高さ以上の高さである」ことは、下側の細断刃で小石等の異物がすくい上げられることを回避するためであり、その異物がすくい上げられることを回避する作用は上記高さが高いほど顕著であり、回転平面の下端よりも若干低くても上記作用を奏するから、文字通り「高さ以上の高さ」である必要は必ずしもなく、したがって、これは、ほぼ「高さ以上の高さ」であることを意味するものである。
【0015】
また、上記「バットリフターによる押し上げ高さが、・・・細断刃の下側回転軸よりも上方」は、押し上げられた砂糖きびの後端が下側の細断刃で確実にすくい上げられる位置まで押し上げるためであり、例えば、45度で前傾している回転刃でもすくい上げる機能を奏するから、文字通り「下側回転軸よりも上方」である必要はなく、ほぼ「下側回転軸よりも上方」であることを意味する。
他方、下側回転軸よりも低いほど、砂糖きびを細断刃の下側に逃がす可能性が高くなり、歩留まりが悪くなる。
【0016】
〔作用〕
ベースカッターの左右の切断刃が互いに内側に回転して砂糖きびを畝の頂部を土中で切断する。このとき、その回転円盤上面に設けた螺旋状のバットリフターも内側に回転しているので、砂糖きびがベースカッターで切断された瞬間にその下端がバットリフターに衝突して、これだけが大きく押し上げられる。このとき、土中の小石等の異物がベースカッターで斜め上方に跳ね上げられても、チョッピング装置が高い位置にあるのでその細断刃の下側を通過し、これに引き込まれることはない。他方、砂糖きびの下端はバットリフターによって十分な高さまで確実に押し上げられるので、チョッピング装置へ向けて確実に案内される。
したがって、砂糖きびPだけがチョッピング装置2に引き込まれる。
【0017】
さらに詳細は次のとおりである。
ベースカッターの後端に対するチョッピング装置の位置を高くしたことで、小石等の異物はチョッピング装置の下側を通過し、これがチョッピング装置に取り込まれることはない。
チョッピング装置はその下側の細断刃の回転面の下端がベースカッターの後端よりも高い位置に設置されるが、その設置高さはベースカッターの回転円盤の前傾角度および直径、チョッピング装置の細断刃の回転面の直径に関係するので一様ではなく、個々の具体的な寸法関係によって決められるものである。
他方、チョッピング装置の上下一対の細断刃は、砂糖きびを後方に送る方向に同調して回転しており、また、バットリフターで砂糖きびの下端が跳ね上げられる高さは、チョッピング装置の細断刃の下側回転軸の中心位置よりもほぼ上方で、上側回転軸よりも下方であるから、跳ね上げられた砂糖きびの根元は、上側の細断刃の上方に進入してこれによって押し上げられ、また、上側の細断刃で押し下げられて、上下の細断刃で挟み込まれることになる。そして、上下の細断刃の刃先が砂糖きびに食い込んでこれを強引に後方に引き込む。
【0018】
以上のように、砂糖きびPがベースカッターで切断されたとき、同時に、当該砂糖きびの根元が、ベースカッターの回転円盤に固定されたバットリフターによって押し上げられ、押し上げられた高さでその後端部がチョッピング装置によって掴まれて引き込まれることになり、ベースカッターの回転円盤等で斜め上方に跳ね上げられた小石等の異物は砂糖きびとともにチョピング装置の細断刃の下側を通過するので、これがチョッピング装置に引き込まれて細断された砂糖きびに混入することはない。
また、チョッピング装置の下端はベースカッターの切り込み高さよりも相当高い位置にあるので、チョッピング装置の先端下面が畝の頂部に突っ込むことはない。
【発明の効果】
【0019】
ベースカッターで切断された砂糖きびが、ベースカッターの回転円盤上に設けた螺旋状のバットリフターで押し上げ上げられ、押し上げられた位置でその直ぐ後方のチョッピング装置の切断刃で掴まれ、後方に引き込まれつつ切断されるのであるから、滑りがなく迅速にかつ確実に引き込まれる。したがって、作業能率が高い。
【0020】
また、ベースカッターの切り込み高さに対してチョッピング装置が高い位置に配置されていることによって、小石等の異物が砂糖きびと一緒にチョッピング装置に引き込まれることはなく、その細断刃がこれを噛み込むことはない。それゆえ、細断刃が小石等を噛み込んで損傷されることはなく、また、細断され、風選された砂糖きびに小石等が混入してしまうことはない。
【0021】
また、従来技術1のように、掻き込みローラーによる掻き込み装置がなく、また、長い砂糖きびを後方のチョッピング装置まで搬送する搬送ローラーがないので、それだけ作業機全体の機構構造が従来技術1のものに比して単純で、全長が短かく、しかも軽量になる。したがって、製造コストが大幅に低減される。また、従来技術1のものに比して作業能率が高く、しかも使用するエンジンが小型でよい。
【0022】
さらに、砂糖きびは、ベースカッターで切断されてすぐにチョッピング装置の細断刃で掴まれ、チョッピング装置によって強力に引き込まれるので、抵抗が大きい大型品種(太くて長い品種)の収穫作業に十分に対応することができ、また、中型品種の刈り取り作業には余裕をもって対応できる。
したがって、この発明の砂糖きび収穫機は、砂糖きびの種類の如何にかかわらず、これを能率的に収穫することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次いで図面を参照して実施例を説明する。
この実施例の砂糖きび収穫機は、その先端に引き起こし装置があり、その後方にベースカッターがあり、ベースカッターの直ぐ後方にチョッピング装置があり、その後方にチェンコンベアーがあり、さらにその後方に風選装置がある。
砂糖きび収穫機の先頭に引き起こし装置があり、その後方にベースカッター1がある点は従来技術1と違いがない(引き起こし装置は図面では省略している。必要なら上記従来技術1の上記特許文献を参照されたい)。
ベースカッター1の直後にチョッピング装置2があり、チョッピング装置2の後方にチェンコンベアーがある点が従来技術1のものと根元的に相違する。また、そのチョッピング装置2の直前のベースカッター1の回転円盤上に螺旋状のバットリフターがあることがこの発明の特徴である。
【0024】
ベースカッター1の基本構造は従来技術1のものと違いはなく、ギアボックス10で駆動され、縦軸で下端の回転円盤15が駆動される。ギアボックス10がオイルモーターm1で駆動され、左右の回転円盤15,15が前傾した姿勢で互いに同調して内側に回転する。
以上は従来技術1のベースカッターと同じであるが、この実施例では直径が25cmの回転円盤15の外周に3つの切断刃16が等間隔に固着されている。
回転円盤15の外周に固着された切断刃16の周速度は2〜2.5m/秒である。
そしてまた、上記縦軸は角度θで前傾しており、回転円盤15も同角度で前傾している。この実施例の前傾角度θは15〜20度である。
【0025】
そして、上記ベースカッター1の回転円盤15の上面に螺旋状のバットリフター11a,11bがある。この螺旋状のバッドリフターは、直径が42cm、ピッチが50cmの緩やかな螺旋状部材であり、その下端が回転円盤15の外周部に溶接されており、上端の高さが円板上面から25cmである。このようなバットリフター11a,11bが2つ一対で設けられており、これによって回転円盤15の全周をカバーしている。
この実施例のバットリフター11a,11bは、線径25mmの鋼材を曲げ加工し、焼き入れして耐摩耗性を高めたものである。
【0026】
チョッピング装置2は、軸間の距離L1が上下一対の細断刃21a,21bによるものであり、その回転軸23,23の軸間距離L1は25cmである。そしてこれらの細断刃21a,21bの回転軸がギアボックス22で連動しており、ギアボックス22はオイルモーターm2で駆動され、上記細断刃21a,21bが互いに内方に同速度で回転している。このチョッピング装置2の下側の細断刃21bの回転軸23のベースカッター1による切り込み線51に対する高さHは30cmである。
【0027】
細断刃21a,21bは等間隔でそれぞれ3つの回転刃24を有しており、細断刃21a,21bの回転刃24の回転半径は22cmである。
各細断刃21a,21bが備える刃数は2つでもよく、4つでもその所期の機能を奏することができる。しかし、所定の速度で砂糖きびPを引き込みつつ所定長さ(例えば約25cm)で細断することが必要条件であるから、このことからすれば、刃数が少ないほど回転半径が小さくなり、また1回転での細断回数が少なく、多いほど回転半径が大きくなり、また1回転での切断回数が多い。
3枚刃であれば、砂糖きびに対する刃による掴み力と送り力が間断なく作用させることができ、2つの回転刃が砂糖きびに同時に作用するときの両刃による作用力の相互干渉力(前後方向は速度成分の相違いによる干渉力)が比較的小さいので、細断刃21a,21bによる引き込み作用が非常に滑めらかであり、かつ強力であるので、このチョッピング装置による処理能力が著しく高められる。
なお、4枚刃の場合は、2枚の回転刃が砂糖きびに同時に作用するときの両刃による作用力の相互干渉力が大きく、このために砂糖きびに無理な力がかかり、また、チョッピング装置の回転力に対する大きな抵抗になる。
【0028】
そして、ベースカッター1の回転円盤15の回転中心とチョッピング装置2の細断刃21bの回転軸23との軸間距離Lは40cmであるので、標準走行速度でこの軸間距離だけ自走する間にベースカッター1は4回転することになる。そして、その間に、切断された砂糖きびの根元が螺旋状のバットリフター11a,11bのいずれかでそのリフト量(25cm)だけ押し上げられ、その状態でチョッピング装置2の上下の細断刃21a,21bで掴まれて引き込まれ、所定の長さ(例えば23〜27cmの範囲)に回転刃24で切断される。
【0029】
なお、バットリフターは螺旋状の線材であるから、土、小石等の異物Aを跳ね上げることはなく、砂糖きびPの根元だけを押し上げる。また、チョッピング装置に引き込まれたとき、回転刃24がその砂糖きびPに食い込むので、砂糖きびPに対して滑ることはなくこれを強引に引き込む。
【0030】
この実施例では、自走速度が標準速度(0.5m/秒)のとき、ベースカッター1の回転速度は300rpmであり、このときの切断刃16の回転周速度は7.8m/秒、バットリフター11a,11bのリフト速度(縦方向に押し上げる速度)は2.5m/秒である。そして、作業中の自走速度、ベースカッターの回転速度、チョッピング装置の回転速度は、エンジン回転速度で調整されるので、収穫作業中の自走速度と、ベースカッターの回転円盤15の回転速度と、チョッピング装置の細断刃21a,21bの回転速度との関係は変わらない。
したがって、自走速度の高低に関わらず、ベースカッターで切断された砂糖きびは確実にチョッピング装置2に引き込まれ、約25cmの長さに細断される。
【0031】
この発明の搬送コンベアーとしては、種々のコンベアーを採用することもできるが、約25cmに細断された砂糖きびPaの団塊をスムーズに搬送できるものでなければならないので、この実施例ではチェンコンベアーを採用している。このチェンコンベアーは板厚2.3〜3.0mmの鋼板30と、この鋼板30上を滑るチェン31によるものであり、チェン31に羽根32が固着されていて、この羽根32がチェン31とともに鋼板30の上面を滑って、多量の細断された砂糖きびPaを上方に押し上げて搬送する。これは、細断された砂糖きびPaを搬送するのであるから、長い砂糖きびPを搬送ローラーで搬送する場合に比して、その搬送は簡便であり搬送能力は高い。
【0032】
なお、このコンベアーは、チョッピング装置で細断された砂糖きびPaを受け止め、後方の風選装置まで搬送するものであるから、その長さ、傾斜角度は、後方の風選装置(図示略)の位置(高さ方向、前後方向)に応じて適宜選択されるものである。また、上記傾斜角度の大きさは細断された砂糖きびPaに対する搬送性能に影響するので、この点も考慮されなければならない。
【0033】
チョッピング装置の細断刃が3枚刃であって、その作動がなめらかでかつ処理能力が高く、また、バットリフターで多量の砂糖きびをスムーズにかつ確実にチョッピング装置に案内してこれに把持させるので、自走速度を速くすることができ、従来技術1によるものに比して砂糖きび収穫機の自走速度を速めても収穫作業がスムーズに続行される。
したがって、従来技術1によるものに比して収穫作業が極めて能率的になされる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】は、この発明の実施例の要部を示す斜視図
【図2】は、この発明の実施例の要部の側面図
【図3】は、背景技術を説明するための模式図
【図4】は、従来技術2の側面図
【符号の説明】
【0035】
1:ベースカッター
2:チョッピング装置
3:チェンコンベア
10,22:ギアボックス
11a,11b:バットリフター
15:回転円盤
16:切断刃
21a,21b:細断刃
23:回転軸
24:回転刃
30:鋼板
31:チェン
32:羽根
50:畝
51:切り込み線
A:小石等の異物
m1,m2:オイルモーター
P:砂糖きび
Pa:細断された砂糖きび

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースカッターの直後にチョッピング装置があって、ベースカッターで切断された砂糖きびの根元部を当該チョッピング装置の細断刃で掴み、引き込み、後方に送りつつ細断し、細断された砂糖きびをコンベアーで後方に向けて斜め上方に搬送するようになっている砂糖きび収穫機であって、
上記チョッピング装置が上下一対の細断刃によるものであり、下側の細断刃の回転平面の下端がベースカッターの後端の高さ以上の高さに配置されており、
ベースカッターの回転円盤の上面外周に螺旋状のバットリフターの下端が固着されてあり、
上記バットリフターの下端が回転方向前方、上端が回転方向後方であり、
上記バットリフターによる押し上げ高さが、チョッピング装置の上下一対の細断刃の下側回転軸よりも上方で、上側回転軸よりも下方であることを特徴とする砂糖きび収穫機。
【請求項2】
上記コンベアーが、金属板と、金属板上を滑る左右の循環チェンと、当該左右のチェン間の羽根とによるチェンコンベアーである請求項1の砂糖きび収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−50177(P2009−50177A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217913(P2007−217913)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000239725)文明農機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】