説明

砂脱水機

【課題】簡単容易に無端ベルトの透孔とバケットの空気抜き管の下方突端部とを正確にして確実に合致させる。
【解決手段】バケットコンベヤ2のバケット1底部9に内外に突出する空気抜き管17を設け、往路Lにおけるバケット1底部9に対向配置した無端ベルト20に空気抜き管17の下方突端部17bが着脱自在な透孔21を設け、無端ベルト20のバケット1底部9との対向面20a背部には、無端ベルト20が摺接して気密閉塞される吸気口23aを設けると共に、負圧発生装置に連繋した吸気室23を配置した砂脱水機であって、無端ベルト20には、その長さ方向において透孔数に対応する本数の支持棒22をその左右端部が無端ベルト20の左右側縁より外方突出する様に等間隔置きに取付け、バケット1底部9の左右には、透孔21と空気抜き管17の下方突端部17bが合致した時に、支持棒22の左右突端部に掛止して往路方向前方へ押圧する垂下棒18を垂設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂脱水機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湿式分級機で砂を含んだ原液から分級された砂は水分を多量に含んでいるため、脱水処理が必要であった。
砂の脱水処理に用いられる装置として、特許文献1にはバケットコンベヤのバケット内部に砂堆積部と分離水貯留部とに上下区画する水切り網と、分離水を流下させると共に、バケット反転時に砂堆積部へ分離水が逆流しない邪魔板を設け、バケット側壁に分離水貯留部内外と連通する逆止弁付き排水管を立設し、バケット底部に分離水貯留部の内外に突出する空気抜き管を設け、バケットと等速で走行する無端ベルトをバケット底部に対向配置し、無端ベルトには空気抜き管の下端口が着脱自在な透孔を設け、無端ベルトの対向面背部に無端ベルトが摺接して気密閉塞される吸気口を設けると共に、負圧発生装置に連繋した吸気室を配置した砂脱水機が開示されている。
【0003】
この砂脱水機は、バケットの砂堆積部内に投入した含水砂を水切り網で自然脱水し、バケットの往路走行中にこれと等速で走行する無端ベルトの透孔に空気抜き管の下方突端部が吸着されると、空気抜き管を通してバケット内部を真空引きし、砂堆積部の含水砂を往路走行中に継続して強制脱水し、その脱水時に生ずる分離水が空気抜き管の上方突端部からオーバフローさせることなく分離水貯留部に貯留できるため、負圧発生装置に分離水混入による吸引抵抗がかからず、脱水効率を向上させられると共に、負圧発生装置の分離水混入による故障を防止している。
【特許文献1】特許第3784016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の砂脱水機にあっては、無端ベルトをバケットの往路走行と等速で自走させねばならないが、その走行中に一旦タイミングがずれると、透孔と空気抜き管が完全に合致せず、脱水効率に影響を及ぼす不具合を招来している。
そこで、本発明では、上記砂脱水機において、簡単容易に無端ベルトの透孔とバケットの空気抜き管の下方突端部が正確にして確実に合致させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明の砂脱水機は、上下に設けた往路と復路とをバケットが天地逆に循環走行するバケットコンベヤにおいて、バケット内部には、砂堆積部と分離水貯留部とに上下区画する水切り網と、分離水を分離水貯留部へ流下させると共に、バケットの往路から復路へ移行する反転時に砂堆積部へ分離水が逆流しない邪魔板を設け、分離水貯留部には、バケット側壁の往路方向前部から外方連通する排水管を立ち上がり形成し、該排水管には流体の外方への流出に対してのみ開弁する逆止弁を設け、バケット底部には、分離水貯留部の内外に突出する空気抜き管を設け、往路におけるバケット底部に自走用の駆動源を有しない無端ベルトを対向配置し、該無端ベルトには空気抜き管の下方突端部が着脱自在な透孔を設け、無端ベルトのバケット底部との対向面背部には、無端ベルトが摺接して気密閉塞される吸気口を設けると共に、負圧発生装置に連繋した吸気室を配置したものにして、無端ベルトには、その長さ方向において透孔数に対応する本数の支持棒をその左右端部が無端ベルトの左右側縁より外方突出する様に等間隔置きに取付け、バケット底部の左右には、透孔と空気抜き管の下方突端部が合致した時に、前記支持棒の左右突端部に掛止して往路方向前方へ押圧する垂下棒を垂設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
要するに本発明は、無端コンベヤの左右側縁より突出している支持棒の左右突端部に往路上を走行するバケットの垂下棒が掛止すると、空気抜き管の下方突端部が無端ベルトの透孔に合致するので、空気抜き管を通してバケット内部を真空引きできると共に、バケットの走行に伴い垂下棒が支持棒を介して無端ベルトを往路方向前方へ押圧することで無端ベルトをバケットに連動走行させることができ、これによりバケットの往路移動中、常に空気抜き管と透孔は正確にして確実にその合致状態を維持でき、バケット内で水切り分離された砂堆積部の含水砂を往路走行中に継続して強制脱水できる。
この様に、本発明によれば、簡単容易な手段にて、往路走行中のバケットの空気抜き管と無端コンベヤの透孔を常に正確にして確実に合致させることができ、無端ベルトを独自の駆動源を用いて自力走行させると共に、透孔と空気抜き管とを合致させるための制御システムを設ける必要がないので、その製造コストを低減できる等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
図1に示す様に、砂脱水機は、上下に設けた往路Lと復路L1の夫々でバケット1が天地を逆に循環走行するバケットコンベヤ2と、該バケットコンベヤ2に併設した強制脱水装置3とから主に構成されている。
又、砂脱水機は、砂を含んだ原液を分級するスパイラル分級機等の湿式分級機4に連続して設けている。
湿式分級機4で分級された水分を多量に含んだ砂(含水砂W)を搬送しながら脱水し、脱水された砂(脱水砂W1)をバケットコンベヤ2に連続して設けた搬送コンベヤ5へ移送すると共に、脱水砂W1から分離された水(分離水S)を搬送コンベヤ5近傍に設けた図示しない排水路内に排水する。
そして、搬送コンベヤ5にて搬送される脱水砂W1は保管所6へ送り出され、ここで堆積保管される。
【0008】
バケットコンベヤ2は前後一対のスプロケット7間に掛け渡した無端チェーン8を左右に並設し、複数連設して成るバケット1底部9を左右の無端チェーン8間に固定して成る。
無端チェーン8はローラーチェーンから成り、そのローラリンクプレートのピッチをバケット1の前後方向長さに対応させ、スプロケット7は一辺が前記ピッチに対応した正多角形状に形成され、図示しない駆動装置によって一方のスプロケット7を回転駆動させる。
【0009】
バケット1は、上方が開口された方形箱型に形成され、内部は、湿式分級機4から投入される含水砂Wの砂堆積部10と含水砂Wの脱水にて生ずる分離水Sの分離水貯留部11とに上下区画する水切り網12を設けている。
又、水切り網12から降下する分離水Sを分離水貯留部11へ流下させると共に、バケット1の往路Lから復路L1へ移行する反転時に砂堆積部10へ分離水Sが逆流しない邪魔板13とを設けている。
邪魔板13は、バケット1内において往路方向前壁から後方へ至るに従い下方へ傾斜すると共に、先端が往路方向後壁との間に空隙を有して成り、その空隙を分離水貯留部11との連通口14と成している。
【0010】
分離水貯留部11には、バケット1の左右側壁の一方又は両方(図示例では一側壁)において、往路方向前部から外方連通する排水管15を立ち上がり形成している。
排水管15の上端は、好ましくは、図示例の様にバケット1の開口端より上方に突出し、排水管15の上端に開口した排水口には、流体の外方への流出に対してのみ開弁する逆止弁16を設けており、該逆止弁16は閉弁時において排水口を気密的に閉塞する様に成している。
【0011】
そして、バケット1底部9には、分離水貯留部11の内外に突出する空気抜き管17を設けており、該空気抜き管17は底部9において連通口14寄りに設けると共に、その上方突端部17aは分離水貯留部11内に貯留される分離水Sの想定水位より高い位置に設定している。
これにより、バケット1の往路Lから復路L1へ移行する反転時において、バケット1が前傾姿勢から反転することで分離水Sが分離水貯留部11内の往路方向前方へ流動しても、空気抜き管17へ流入しない。
又、バケット1底部9の所定間隔を置いた左右対称位置には、所定長さを有する直線状の垂下棒18を垂設している。
更に、バケット1の往路方向後壁の上端には、山型に屈曲した砂振り分け板19を設け、後続のバケット1との間隙に湿式分級機4から投下される含水砂Wが侵入することなく前後のバケット1内へ滑落する様に成している。
【0012】
強制脱水装置3は、自走用の駆動源を装備しない無端ベルト20を往路Lにおけるバケット1底部9に対向配置している。
無端ベルト20は、往路L上において連続する所定数のバケット1に対応した長さを有し、前後に設けたローラーに掛け渡されている。
又、無端ベルト20には、バケット1底部9より突出した空気抜き管17の下方突端部17bが密着・離脱自在な透孔21を設けている。
【0013】
透孔21は空気抜き管17の下方突端部17bの相互間隔に対応して無端ベルト20全周に渡って開設され、又下方突端部17bは、透孔21への密着時において透孔21に気密的に連通する様に、透孔21より大径な漏斗状の開口部を有している。
更に、無端ベルト20には、その長さ方向において透孔21の個数に対応する本数の支持棒22をその左右端部22aが無端ベルト20の左右側縁より外方突出する様に等間隔(無端ベルト20の長さ方向における透孔21の間隔に相当)置きに取付け、透孔21と空気抜き管17の下方突端部17bが合致した時に、バケット1に設けた垂下棒18が支持棒22の左右突端部22aに掛止して該左右端部22aを往路方向前方へ押圧する様に設定している(図4、6参照)。
支持棒22は、図4に示す様に、無端ベルト20のバケット1底部9との対向面20a上において、下方突端部17bの透孔21への密着に支障のない箇所に固着するか、或いは無端ベルト20の幅方向に挿通して無端ベルト20内部で固着しても良い。
【0014】
そして、無端ベルト20の対向面20a背部には、無端ベルト20が摺接して気密的に閉塞される吸気口23aを設けると共に、真空を得るためのブロアーや真空ポンプ等から成る負圧発生装置24に連繋した吸気室23を配置している。
吸気室23は、上方開口した吸気口23aを無端ベルト20の対向面20aの面積に対応させた箱体から成り、吸気室23の前後壁の夫々には、前記対向面20aが吸気口23aを被覆する様に案内支持するテンションローラー25を設けている。
吸気室23の内底部は、その中央に設けた排出口26に向かって下方傾斜する様に形成し、該排出口26に配管27を介して負圧発生装置24を連結している。
【0015】
配管27中には、負圧発生装置24にて吸気される空気中に含まれる水分を分離するサイクロン28を介装している。
このサイクロン28は、その円筒部から流入した空気中の水分ミスト等を旋回運動による遠心作用により内壁に沿って下降させ、下部に設けた排水口より排水する様に成すと共に、渦流となって上昇する水分と分離された空気を上部に設けた出口から負圧発生装置24へ流動させる様に成している。
【0016】
次に本発明に係る砂脱水機の作用について説明する。
バケットコンベヤ2の作動により往路Lと復路L1を循環走行するバケット1は、往路L始端(上流)で湿式分級機4から砂堆積部10内に含水砂Wが投入される。
この含水砂Wは、バケット1の砂堆積部10内に堆積し、水切り網12によって自然脱水され、この脱水された分離水Sは、邪魔板13上を流下し、連通口14から分離水貯留部11内に排水される。
【0017】
次いで、往路L上を前進するバケット1が、無端ベルト20の対向面20aに達し、無端ベルト20の左右側縁より突出している支持棒22の左右突端部22aにバケット1の垂下棒18が掛止すると、空気抜き管17の下方突端部17bが合致し、該下方突端部17bが透孔21に気密的に吸着される。
バケット1は継続して往路L上を前進するため、垂下棒18が支持棒22を介して無端ベルト20を往路方向前方へ押圧することとなるので、無端ベルト20はバケット1に連動して走行でき、これによりバケット1の往路L移動中、常に空気抜き管17と透孔21は正確にして確実にその合致状態が維持される。
【0018】
吸気室23は、その吸気口23a上を摺接走行する無端ベルト20により気密的に閉塞されると共に、内部が負圧発生装置24の吸気により真空化しているため、空気抜き管17からバケット1内の空気が吸引され、砂堆積部10内の含水砂Wがバケット1の往路L走行中に継続して強制的に脱水され、この脱水された分離水Sは上記と同様に分離水貯留部11内に空気抜き管17の上方突端部17aからオーバフローさせることなく貯留される。
この様に負圧発生装置24によって吸い出される空気中に分離水Sが混在しないため、負圧発生装置24に分離水S混入による吸引抵抗(負荷)がかかることが無く、よって含水砂Wの強制脱水による効率を飛躍的に向上させられると共に、負圧発生装置24の故障が未然に阻止される。
尚、上記強制脱水時において、分離水貯留部11内に通ずる排水管15は、その内部空間が排水口に設けた逆止弁16で閉弁されていることにより、排水管15を通して外気がバケット1内へ導入することなく気密保持され、砂堆積部10内の含水砂Wを支障なく強制脱水できる。
【0019】
上記強制脱水は、バケット1が往路L終端側に達し、無端ベルト20の透孔21から空気抜き管17の下方突端部17bが離脱するまで行われる。
そして、バケット1が往路L終端に達し、往路Lから復路L1へ移行する反転時に、バケット1が前傾姿勢から反転姿勢になるが、邪魔板13が堰の役割をするため、常に脱水砂W1と分離水Sは砂堆積部10と分離水貯留部11の夫々に分離保持されると共に、バケット1における砂堆積部10と分離水貯留部11の各往路方向前部がバケット1の最下部となって夫々に脱水砂W1と分離水Sが集中して流動するので、分離水貯留部11内の分離水Sは、砂堆積部10内の脱水砂W1に混ざること無く排水管15内へ流動し、逆止弁16を開弁することにより排水路内に投下され、同時に砂堆積部10内の脱水砂W1は、バケット1の上方開口部から搬送コンベヤ5上に投下されて保管所6へ移送される。
従って、砂堆積部10と分離水貯留部11の夫々に保持された脱水砂W1と分離水Sとを残留させずにバケット1の上方開口部と排水管15とから別々に排出できる。
この後、バケット1は復路L1上を反転状態のまま走行し、往路Lへ復帰して、上記手順が繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】砂脱水機の使用状態を示す簡略図である。
【図2】砂脱水機の側面図である。
【図3】バケットの内部構造を示す断面図である。
【図4】脱水状況を示す砂脱水機の要部拡大断面図である。
【図5】分離水と脱水砂の排出状況を示す砂脱水機の要部拡大断面図である。
【図6】図4における無端コンベヤの平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 バケット
2 バケットコンベヤ
9 底部
10 砂堆積部
11 分離水貯留部
12 水切り網
13 邪魔板
15 排水管
16 逆止弁
17 空気抜き管
17b 下方突端部
18 垂下棒
20 無端ベルト
20a 対向面
21 透孔
22 支持棒
22a 左右端部
23 吸気室
23a 吸気口
24 負圧発生装置
L 往路
L1 復路
S 分離水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に設けた往路と復路とをバケットが天地逆に循環走行するバケットコンベヤにおいて、バケット内部には、砂堆積部と分離水貯留部とに上下区画する水切り網と、分離水を分離水貯留部へ流下させると共に、バケットの往路から復路へ移行する反転時に砂堆積部へ分離水が逆流しない邪魔板を設け、分離水貯留部には、バケット側壁の往路方向前部から外方連通する排水管を立ち上がり形成し、該排水管には流体の外方への流出に対してのみ開弁する逆止弁を設け、バケット底部には、分離水貯留部の内外に突出する空気抜き管を設け、往路におけるバケット底部に自走用の駆動源を有しない無端ベルトを対向配置し、該無端ベルトには空気抜き管の下方突端部が着脱自在な透孔を設け、無端ベルトのバケット底部との対向面背部には、無端ベルトが摺接して気密閉塞される吸気口を設けると共に、負圧発生装置に連繋した吸気室を配置して成る砂脱水機であって、無端ベルトには、その長さ方向において透孔数に対応する本数の支持棒をその左右端部が無端ベルトの左右側縁より外方突出する様に等間隔置きに取付け、バケット底部の左右には、透孔と空気抜き管の下方突端部が合致した時に、前記支持棒の左右突端部に掛止して往路方向前方へ押圧する垂下棒を垂設したことを特徴とする砂脱水機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−34609(P2009−34609A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201502(P2007−201502)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000139805)株式会社伊藤製作所 (11)
【Fターム(参考)】