研ぎ直し道具
【課題】平砥石の研ぎ直し技術の9つの基本を忠実に守って、庖丁の刃先カープ全域で均一な刃先角度に研ぐことができる道具を提供する。庖丁の巾、厚さ、長さなどの拘束を受けず、途中で取り付け直す必要は無く、装着したまま全工程を完了できる。着脱容易で、洗浄乾燥も容易で、保管にも場所を取らない。
【解決手段】少なくとも下面が粘着性や吸着性を持つ可撓性の基台の上面に磨耗の少ない複数のチップを突出させて並べて固定した帯状の研ぎのジグとする。
【解決手段】少なくとも下面が粘着性や吸着性を持つ可撓性の基台の上面に磨耗の少ない複数のチップを突出させて並べて固定した帯状の研ぎのジグとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包丁の研ぎ直しの道具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
庖丁の切れ味は料理の味を左右すると言われる。しかし、包丁は一般家庭においても、一月に一回くらいは研がないと切れなくなるものである。
最近は近隣に研ぎ師がいなくなり、研ぎの依頼も困難になっている。遠方に移送する場合は、刃物であるための困難と危険が伴う。費用は一回1000円以上、期間は2〜3週間かかるのが普通で、頻繁な研ぎの依頼は控えがちとなる。
一方で下手な研ぎにはそぐわない、上質な庖丁の使用も多くなっている。
厨房ではさらに頻繁な研ぎが必用となるが、料理人が必ずしも上手い研ぎ師であるとは限らず、永い間には刃先の曲線が凹に至り、「プロがこんな庖丁にするとは何事だ」と非難されるような状況もあるようである。
【0003】
包丁は平砥石で研ぐのが一番良い。しかし、正しい方法で行わないと切れるようにはならない。研ぎ直しには大事なポイントが9つある。洋包丁で言えば、1は、包丁の外側(右手で柄を持ったときの右側の面)の刃先角度を8〜10度や15度などで一定とすること。2は、包丁の内側(右手で柄を持ったときの左側の面)の刃先角度を5〜8度や15度などで一定とすること。3は、包丁の外側の研ぎ方向を略45度とすること。4は、包丁の内側の研ぎ方向を略90度とすること。5は、指先に力を入れないこと。6は、片面毎に砥石の巾以内で3〜4回などに分けて研ぐこと。7は、研ぎ過ぎないこと。特に内側は軽く研ぐこと。8は刃先の曲線を崩さないこと、9は、刃返りを取ること、である。
【0004】
研ぎ直しを繰り返すと、しのぎの部分が厚くなり、切り込み抵抗が大きくなる。研ぎ直しで研ぎ過ぎないように気をつけるのはこのことに関係する。しのぎ部分が厚くなった場合は、研ぎおろしを行う。刀身面の刃先側の1/3位を削り落とすイメージで、刀身を薄くする作業である。研ぎおろしは、庖丁の刃先側の上下面を砥石にあてて、ひたすら研げばよい。
【0005】
その他にも身離れを良くするための様々な技法など、職人域での技量は奥深いものがあるが、最低限の切れ味の確保という点で、研ぎ直しの9ポイントが基本である。
【0006】
包丁が切れるためには、刃先の鋭さだけでなく、刃先に細かい鋸目が生じることが必用である。前記のポイント3と4は刃先に鋸目を作るために必要である。外側と内側の砥石傷の方向が略45度異なることで、その交点である刃先に峰が切れ刃となった山形の細かいギザギザが生じるのが鋸目である。もし外側と内側の傷の方向が同じであると、刃先には単に深い波が生じるだけであり、切れ味に寄与しない。鋸目は細かい砥粒の砥石ほど細かく鋭くなるので、仕上げ砥を使うとさらに切れ味が良い。
【0007】
刃先に平行に研ぐ道具(シャープナー)では鋸目は生じない。従って平砥石で研いだものに比べて引き切りの切れ味は数段階低下する。適正でないシャープナーを永く使うと、刃先の角度も狂い、丸刃となり、包丁を痛めることにもなる。
【0008】
研ぎ直しの9ポイントの中で一番難しいのは、1と2の刃先角度を一定にして研ぐことである。包丁は研ぐには持ち易い形ではない。研ぐ面は外側と内側の2面あり、方向も45度と90度の2種類あり、片面毎に3〜4回に分ける必用があり、本体は薄くて、刃先にはそりがあり、しのぎは湾曲しており、峰も湾曲して、柄も付いている。持つときに柄の方向を一致させると、外側と内側では刃の方向が逆になる。持ちにくいものを手に持って、砥石に対して安定して往復運動するには、相当の熟練を要する。下手に研ぐと段刃や丸刃になり、刃先の曲線も狂い、高価な包丁も長持ちしない。
【0009】
包丁の研ぎ道具は過去に多くの特許と実用新案が出願されている。その大半はシャープナーである。シャープナーは簡便であるが、刃先の鋭さを重視したもので、切れ味のもう一つの重要な要素である鋸目の効果を損なう道具である。しかしシャープナーは使いやすいことから、商品化の割合も高く、有効な特許も数多い。
【0010】
平砥石の研ぎで刃先角度を一定に保つ道具は、古くは昭和6年の実用新案公報(特許文献1)がある。単に角度を固定するだけの道具では新規性は無い。にもかかわらず、刃先角度を一定に保つ道具の考案はその後も相当数出願されている。特許ではみなし取下げが多く、実用新案では権利消滅が大半である。
【0011】
平砥石の研ぎで刃先角度を一定に保つ道具の先願を精査してみると、実用的な構造のものは少ない。
例えば、確かに角度は一定になるが、外側と内側の刃先角度の違いは認識されていないもの。
例えば、外側と内側の刃先角度の違いや包丁の種類の違いに対応する角度の調整は可能でも、調整の目安が無くて、面倒であり、再現性に欠けるもの。
例えば、部分的な角度の維持は可能でも、全体的には何度もセットし直す必要があるもの
例えば、道具の固定が不安定なもの。
例えば、磨耗を危惧するあまり、その対策で構造を複雑にしているもの。
例えば、大掛かりな装置にしてしまい、収納、コスト、清掃、狭い場所での使い勝手などに支障が生じるもの、などである。
【0012】
平砥石の研ぎで刃先角度を一定に保つ道具で実用商品化されているのは下記の5種類ほどである。
数少ない特許成立例には特許文献2と特許文献3がある。この特許には意匠登録(特許文献4)も付随しており、権利は継続中で、minoSharp(マスター カットラリー 株式会社の登録商標)という商品が販売されている。
特許文献5は公開中である。この商社からは、工業ダイヤモンド包丁研ぎ[トギコロツー]という商品が販売されている。他社の類似商品で、トギスターダイヤというのが販売されている。
審査中の特許文献6に対応する道具では、エルゴ包丁研ぎ器[シャトル]という商品が販売されている。
庖丁の背に差し込むだけの道具は、特許文献7と特許文献8に例が見られる。これに後願で特許文献9が出されたが権利化できず、特許文献10と特許文献11に示す意匠で保護されたスーパートゲールという商品が意匠権8年継続で販売中であり、この種の道具の中では広く普及している。
数多い考案の中で実用化されているものの特長としては、意匠的な構造であることにも気づく。
【0013】
一方、庖丁の刃先角度については意識しているが、刃先のカーブに留意した考案は非常に少ない。特許文献12に刃先のカーブに対応する記述を見たが、複雑な構造であり、自ら取下げている。特許文献13も刃先のカーブに言及しているが、都度取り付けなおす必要がある。
【0014】
庖丁の刃先はカーブしているので、全体に渡って刃先角度を一定にするには、直線状の道具では対応できない。特許文献11の商品は直線形状であるために全体に渡る正確な研ぎは期待できない。また包丁の背に差し込むために、包丁のサイズによって刃先の角度が異なることとなる。一般に包丁の背は刃先に平行ではないので刃元と切っ先では条件が異なり、刃先角度も一定とならない結果となる。また差し込める包丁の厚さに3mmまでという制限がある。簡易の用具としては大変便利で意匠的なものであるが、研ぎの仕上がりは今ひとつと言える。特許文献14の商品も同様であり、庖丁を台に固定してヤスリ状の研ぎ道具で研ぐ商品(特許文献5)、レールでガイドする商品(特許文献6)など、何れも刃先カーブに沿って刃先角度を一定にすることは出来ない。
【0015】
庖丁の刃先のカーブも刃先の角度も、メーカや用途によって千差万別である。庖丁の長さと巾と厚さも、メーカや用途によって千差万別である。両刃のものも片刃のものもある。両刃庖丁の刃先の角度は外側と内側では異なるのが一般であり、研ぎ師の流儀でも差異がある。これらの条件を考えると、先願の大半は、対応が難しかったり、何度も付け替えが必要であったり、装着や調整が面倒であったり、再現性に問題があったり、装着不能であったりする。
【0016】
希望の刃先角度に自由に調整できるようにした考案も、大半は調整が面倒で、再現性にも問題がある。再現性を意識して刃先目印をつけたアイディアには特許文献13がある。再現性を意識してアタリピンを設けたアイディアには特許文献12がある。特許文献5は台の脚のネジで、特許文献6は固定部のパッドの交換で角度を変えることは可能であるが、外側と内側で刃先角度を変えるには不便であるし、庖丁の種類などの状況が変わると都度調整交換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実公昭06-005144号公報
【特許文献2】特許3968101号公報
【特許文献3】特許4436385号公報
【特許文献4】意匠登録第1246732号
【特許文献5】特開2010-260160号公報
【特許文献6】特開2008-260095号公報
【特許文献7】実開昭 60-157171号公報
【特許文献8】実公昭 63-009416号公報
【特許文献9】特開平09-225842号公報
【特許文献10】意匠登録第1214859号
【特許文献11】意匠登録第1214723号
【特許文献12】特開2004-283920号公報
【特許文献13】特開2009-12160号公報
【特許文献14】意匠登録第1346367号
【特許文献15】特許3640399号公報
【特許文献16】特許4104731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、包丁を平砥石で研ぐ場合に、正しい庖丁の研ぎ方に関する9つの基本を忠実に実現できる、下記A〜Oのような利点を有する研ぎ直しの道具である。
Aは、曲線の刃先のどの位置でも一定の刃先角度となる。
Bは、刃先の曲線を正しく維持できる。
Cは、目的の刃先角度に簡単にセットできる。
Dは、庖丁の外側と内側の角度も個別にセットできる。
Eは、刃渡り全体の研ぎを、取り付けなおすことなく一度の装着で行うことができる。
Fは、外側と内側の研ぎを、取り付けなおすことなく一度の装着で行うことができる。
Gは、荒研ぎ、中研ぎ、仕上げ研ぎ、刃返り除去、切れ味確認、修正研ぎ、の何れのステップも、取り付けなおすことなく一度の装着で継続して行うことができる。
Hは、庖丁の長さの違いにも対応する。
Iは、庖丁の巾の違いにも対応する。
Jは、広い巾の庖丁にも利用できる。
Kは、庖丁の厚みの違いにも対応する。
Lは、簡単に着脱できる。
Mは、庖丁に傷をつけない。
Nは、意匠的である。
Oは、洗浄、乾燥、清掃が容易で、収納にも場所をとらない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、図1のように、少なくとも下面12が粘着性または吸着性またはその両方の特性を持つ可撓性の基台10の上面11に磨耗の少ない複数のチップ13を突出させて並べて固定した帯状の研ぎのジグU01である。粘着性や吸着性は総称して面着性と表現することもできる。本発明のジグU01の下面12は粘着性や吸着性を持つので、図2のように、庖丁U02の表面21と裏面22に貼り付けて強く固着させることができる。複数のチップ13は所定の高さ14になるように作られているので、刃先23からの距離24によって庖丁U02の刃先角度25は一義的に決定される。図3のように、庖丁U02の刃先カーブ23の主要点P02A、P02B、P02C、P02D、などから本発明のジグU01のチップ13までの距離24が一定になるように置くことで、可撓性の帯状のジグU01は複数の測定点P02A、P02B、P02C、P02D、などから一定距離の点を通る滑らかな曲線C01を描いて仮置きすることができる。位置が決定したら、本発明のジグU01の表面を押して庖丁U02の表面21に強く貼り付け固着させる。両刃の庖丁の場合は、庖丁の外側21の装着ができたら、図2のように、もう一つの本発明のジグU01Bを、庖丁U02の内側22にも同様の方法で装着させる。
【0020】
図4のように、予め水を吸わせた平砥石U03の上に、図示しない本発明のジグU01を装着した庖丁U02の外側21を、略45度の方向で載せ、庖丁U02の刃先23と本発明ジグU01の図示しないチップ13の間に指を軽く置いて、刃元から切っ先までを4箇所くらい、23A、23B、23C、23D、などに分けて、一箇所につき10〜30往復くらい、滑らすように研ぐ。全体に刃返りが出ていたら外側21の研ぎは一応終了する。
【0021】
両刃の庖丁の場合は、図5のように、本発明のジグU01Bを装着した庖丁U02の内側22を、略90度の方向で砥石U03に載せ、庖丁U02の刃先23と本発明ジグU01Bの図示しないチップ13の間に指を軽く置いて、刃元から切っ先までを4箇所くらい、23A、23B、23C、23D、などに分けて、刃返りを取る程度に滑らすように軽く研ぐ。全体に刃返りが外側にめくれたら、内側の研ぎは一応終了する。
【0022】
片刃の庖丁の場合は、内側には本発明のジグは装着しない。本発明のジグの付いていない庖丁U02の内側22を、略90度の方向で砥石U03に載せ、庖丁U02の刃先の上に指を軽く置いて、刃元から切っ先までを4箇所くらいに分けて、刃返りを取る程度に滑らすように軽く研ぐ。全体に刃返りが外側にめくれたら、内側の研ぎは一応終了する。
【0023】
砥石U03の木台31の裏に刃23をあてて軽く引き、刃返りを除去する。
刃23を爪に軽くあてて、引っかかるようなら、この工程の研ぎは完了する。研ぎが不完全な場合は、そのままもう一度上記の研ぎ工程を適度に繰り返す。
必用に応じて砥石の荒さを変えて、上記の研ぎ工程を行う。
【0024】
全工程が終了したら、本発明のジグU01を庖丁U02から外し、庖丁U02と本発明のジグU01と砥石U03を水で洗い、布で拭いて、乾燥させる。
本発明のジグU01の固着が使い捨ての両面テープによる場合は、使用済の両面テープを剥がし、新しい両面テープを貼り付けておく。
本発明のジグU01が自己粘着性やマイクロ吸盤の吸着性の場合は、粘着性や吸着性を回復させるために、必要に応じて中性洗剤で洗うと良い。
【0025】
どのような刃先角度でも、本発明のジグを、研ぎ操作のし易い刃先からの位置にセットすることができたらさらに良い。
例えば、厚さ1.6mm程度の庖丁において、刃先角度10度で刃先からの距離を10mmになるように当該ジグの寸法を決めると、刃先角度が15度の場合、本発明のジグの刃先からの距離は6.6mmとなる。人によってはこの寸法では角度を保つのが難しいと感じる場合もある。
こういう場合は、図6のように、本発明のジグの付属品として下敷きU04を用意すると良い。
下敷きU04の下面には粘着性や吸着性を持たせる。下敷きU04は厚さ方向には適当な可撓性を有するが、巾方向の可撓性の必要はなく、本発明のジグよりある程度大きい形状のものが好ましい。
希望の刃先角度で刃先から適正な距離となる厚さの下敷きU04を庖丁U02に貼り付けて固着した後、本発明のジグU01を先に述べた方法で刃先23の形状に合わせてセットする。この場合、本発明のジグU01の取り付け位置は、庖丁U02に直接取り付けた時よりも刃先23からの距離24を大きくすることができる。
この方法で標準の本発明のジグU01を広い範囲の刃先角度25に適合させることができる。
なお、下敷きU04は1枚の必用はなく、複数個を重ねて使用するようにしても良い。
【0026】
庖丁の幅が極端に狭い場合にも、下敷きU04を使用すると本発明のジグU01の固着面積を広くして、固着力を高めることができる。
また、切っ先のとぎった部分が長い形状の庖丁の場合にも、下敷きU04を使用すると、本発明のジグの切っ先に相当する部分も固着面積を広くして、固着力を高めることができる。
【0027】
図7のように、極端に長い庖丁U02の場合は、本発明のジグU01を複数個並べて装着させることで対応できる。
【0028】
図8のように、刃厚の大きい庖丁U02では、厚みによってオフセットされる角度26を希望の刃先角度25から減算補正して、希望の刃先角度に合わせることが出来る。
【0029】
本発明ジグU01の基台10の可撓性は、適当な硬さを持つ方が扱いやすくて好ましい。
また、着脱容易とすることから、過度に強い剥離力ではない方が使いやすいが、研ぎ作業中にめくり上がりによる剥離力が働かないように、基台10は適度な曲げ剛さを有していることが好ましい。
可撓性の程度は、基台10の巾と厚さ、および樹脂の硬さの選択によって調整することができる。
【0030】
本発明ジグU01の基台10の粘着性は、使い捨ての両面粘着テープを使用することで実現できるが、自己粘着性の樹脂を使用するか、マイクロ吸盤の吸着性を持つ樹脂シートなどを利用すると、洗浄乾燥するだけで繰り返し使用できるので好ましい。
自己粘着樹脂またはマイクロ吸盤の吸着シートなどは、滑りの方向には極めて大きな抵抗力を持つので、本発明のジグの固着に大変適している。
この場合、本発明のジグU01の基台10は全体を自己粘着樹脂で作成しても良い。
または、本発明ジグU01の基台10の下面12のみを粘着性または吸着性とし、上面11は汎用の樹脂としても良い。
または、本発明ジグU01の基台10を汎用の樹脂で作成し、基台10の下面12に、片面が自己粘着性またはマイクロ吸盤の吸着性を持つ両面テープなどを貼り付けても良い。
自己粘着樹脂の剥がす方向の力は、自己粘着樹脂材料の選択で調節することができる(特許文献15)。
マイクロ吸盤の吸着シートの作成方法は特許文献16にその一例が公開されている。
【0031】
本発明のジグU01に用いる耐磨耗のチップ13は、図9(A)のように、球、山形、板、棒、など、形状は任意である。
図9(B)のように、本発明のジグU01の基台10に取り付け穴14を設け、耐磨耗チップ13を挿入固定することで、耐磨耗チップ13を交換可能とすることができる。
この時、耐磨耗チップ13の上下面を使用できるようにしておくと、上下を入れ替えることで、チップ13の使用期間を倍化させることができる。
この時、耐磨耗チップ13の断面を円形や多角形や矩形とすると、チップ13を回転させることで、チップ13の使用期間をさらに何倍にも延ばすことができる。
この時、基台10の取り付け穴14とチップ13が出っ張り15と溝16で噛みあうようにするとチップ13の装着が安定するので更に好ましい。
【0032】
本発明のジグの位置決めは、汎用の物差しを使用して行うことができるが、図10(A)のように、専用の長さゲージU05を用いると便利である。
本発明のジグU01には、予め複数の長さゲージU05を取り付けるようにすると、位置決め操作が簡便となる。長さゲージU05は透明の板に刃先角度に応じた円弧の目盛り51が入っている。また円弧の中心にはチッブ13に勘合する穴52があいている。後端は取外しが容易なように曲げによるつまみ53が付いている。
この時、本発明ジグU01の上面11の少なくとも一部にも粘着性または吸着性をも持たせておくと、ケージU05の取り付けが安定して好ましい。
または、図10(B)のように、チップ13の頭の高さから位置を規定する、専用の角度ゲージU06を用いる方法もある。
なお、ケージについては、その他様々な形状のものが考案可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、可撓性の帯状のものであるので、色々な刃先形状に合わせて変形して装着させることができるので、刃先カーブのどこでも同一の刃先角度を保つことができる。
本発明は、刃先形状に沿って装着できるので、刃先カーブを狂わせるような研ぎを避けるのが容易である。
本発明は、意識的に刃先形状を修正するように装着することが出来るので、過去のまずい研ぎで狂った刃先形状を直すことも可能である。
本発明は、庖丁の外側と内側のジグが別体となっており、独立して装着できるので、外側と内側の刃先角度を別々に任意に設定することができる。
本発明は、庖丁の任意の位置に装着できるので、刃先角度は希望の値に設定することができる。
本発明は、刃先角度を決めるのは、刃先とジグの距離だけであるので、専用の長さゲージなどを用いて、簡単に設定することができる。
本発明は、0.2mm程度の幅しかない刃先面を砥石に密着させる従来の手研ぎに比べ、刃先とジグのチップの距離は例えば10mm以上とすることができるので、その部分に指をあてて、砥石の上で庖丁を軽く滑らすだけで、熟練していないオペレータでも正しい一定の角度の研ぎを行うことができる。
本発明は、庖丁の外側と内側のジグが同一形状寸法にできるので、製作費用が少なく、誤装着の恐れも無く、流用性も高い。
本発明は、刃先形状に沿って装着できる長尺のものであるので、刃渡り全体の研ぎを、取り付けなおすことなく一度の装着で行うことができる。
本発明は、庖丁の外側と内側のジグが別体となっており、独立して装着できるので、外側と内側の研ぎを、取り付けなおすことなく一度の装着で行うことができる。
本発明は、薄い帯状のものであるので、作業の邪魔になることがなく、荒研ぎ、中研ぎ、仕上げ研ぎ、刃返り除去、切れ味確認、修正研ぎ、の何れのステップも、取り付けなおすことなく一度の装着で継続して行うことができる。
本発明は、複数個を並べて装着することも出来るので、色々な長さの庖丁に対応することができる。
本発明は、庖丁の外側と内側のジグが別体となっており、独立して装着でき、刃先角度を決める装着位置は刃先カーブからの距離で定まるので、色々な幅の庖丁に対応することができる。
本発明は、庖丁の背を跨いで取り付ける道具とは異なり、庖丁の外側と内側のジグが別体となっており、独立して装着できるので、どのような巾広い庖丁にも使用することができる。
本発明は、庖丁の背を挟んでで取り付ける道具とは異なり、庖丁の外側と内側のジグが別体となっており、独立して装着できるので、庖丁の厚みにかかわらず使用することができる。
本発明は、刃先角度を決める装着位置は刃先カーブからの距離で定まるので、距離で補正することが可能で、庖丁の厚さにかかわらず、刃先角度を正確な値に設定することができる。
本発明は、庖丁の面に当たるのは粘着性または吸着性の樹脂のため、仮置きしただけでも適度な摩擦力が働き、調整位置がずれることはない。また、仮置きの位置は簡単に移動調整することができる。
本発明は、刃先カーブの数点の位置で、刃先とジグの距離を所定の長さに調整して仮置きすると、ジグの可撓性で全体に渡り適正な位置に仮置きすることができる。
本発明は、仮置きしたジグを強く庖丁の面に押し付けることで、簡単に貼り付けて固着させることができる。
本発明に使用する粘着性や吸着性の樹脂は、横の移動には極めて大きな抵抗力を持ち、外部が濡れた程度では固着力に変化はなく、装着したジグがスリップすることはない。また、縦の剥離に対しては適度な抵抗力を持たせることが出来るので、押して貼り付け固着し、端から持ち上げて剥離させることで、着脱はきわめて容易である。
本発明は、庖丁にあたるのは柔らかい粘着性や吸着性の樹脂面であるので、庖丁の面に傷をつけることは無い。
本発明は、貼り付ける面の粘着性を自己粘着性とするか、またはマイクロ吸盤の吸着性、またはその両方とすることで、洗浄乾燥させるだけで繰り返し使用することができる。
本発明は、簡単な帯状の形をしているので、水洗いと拭き取りと乾燥は簡単で、収納にも場所は取らない。
本発明は、砥石にあたる部分は耐磨耗のチッブでできているので、永く使用することができる。
本発明は、砥石にあたるチッブを交換可能の構造とすることで、さらに永く使用することができる。
本発明は、帯状の形状、面のカーブ、チップの形状、チップの数、材料の色、ロゴマークの配置、などで、意匠的な道具とすることができる。
本発明は、軽い力で正確に研ぐことができるので、少ない回数で研ぎあがるため、包丁と砥石を長持ちさせ、オペレーションの時間も短く、磨ぎおろしが必要となる頻度を少なくし、従来の研ぎ作業の負担感はむしろ研ぎの楽しみに変化する。
本発明は、平砥石による研ぎ直し技術の9つのポイントを全てクリアする道具であるので、家庭だけでなく、料理を本職とする職人などの使用にも充分に耐えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明のジグの構造を示した斜視図である。
【図2】図2は、本発明のジグを庖丁の外側と内側に取り付けた状態の説明図である。
【図3】図3は、本発明のジグが庖丁の刃先カーブに沿って取り付けられる様子を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明のジグを装着した庖丁の外側を研ぐ場合の説明図である。
【図5】図5は、本発明のジグを装着した庖丁の内側を研ぐ場合の説明図である。
【図6】図6は、下敷きを併用して本発明のジグを庖丁に取り付けた状態の説明図である。
【図7】図7は、長尺の庖丁に本発明のジグを2個並べて取り付けた状態の説明図である。
【図8】図8は、厚手の庖丁に本発明のジグを取り付けた時の角度の補正を説明した図である。
【図9】図9は、本発明ジグのチップ形状の例と、交換可能なチップとその取り付け方法の例を説明した図である。
【図10】図10は、本発明のジグの位置決めに使用すると便利なケージの例を示した説明図である。
【図11】図11は、初期に試作した本発明のジグの説明図である。(実施例1)
【図12】図12は、数多く試作した中から選んだ本発明のジグの好ましい状態の説明図である。(実施例2)
【図13】図13は、量産に対応した本発明のジグの説明図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0035】
実施例1に初期に手作り試作した本発明ジグの例を公開する。実施例2に数多く手作り試作した本発明ジグの中から好ましかった例を公開する。実施例3に量産に対応する本発明のジグの例を公開する。
【実施例1】
【0036】
図11の実施例は、初期に試作した本発明ジグの正面図(A)と断面図(B)である。
基台の下部は、硬度5度のシリコーンラップをカットして製作した。シリコーンラップの滑面は自己粘着性であり、他面には粘着防止の小さな出っ張りが多数型取られいてる。出っ張りを含めた厚さは約1mmである。
基台は、長さ150mm、巾20mm、外径500mm、内径480mmの円弧状の帯とした。
セラミックカッター刃をダイヤモンドカッターで切断して、正方形板状のチップを7個作成した。チップの厚さは1mmで、巾と長さは5mmとした。
チップは、基台の端から2mmの位置に、先端高さ1.5mm、角度5度程度で、21.5mmのピッチで7個を接着固定した。接着剤は、シリコーンコーンゴム対応のアクリル変性シリコーン樹脂主成分のものを使用した。
シリコーンラップの上面は、同じ接着剤を盛り付けて厚みを増やし、固さを増した。
庖丁の外側を研ぐ時は、各チップの先端が刃先曲線から11mmになるように貼り付けた。庖丁の内側を研ぐ時は、各チップの先端が刃先曲線から14mmになるように貼り付けた。刃先角度は10度と8度を想定したもので、庖丁の貼り付けた部分の厚みによる角度補正も考慮されている。
【0037】
研ぎ直しの結果は、しのぎは刃先カーブに沿って細く入り、研いだ面は光を反射させてルーペで観察すると一様に光っており、平らに仕上がっている。切れ味も良好である。
ただ、基台の材料が接着剤で補強したとはいうものの、ベースが硬度5度のゴムであり、接着剤も軟質ゴム状態で、未だ柔らかすぎる。また、シリコーンラップの耐スリップ力は充分に強力であるが、剥離力は少々弱いと感じた。使用したチップが薄いので、手作りによる精度の問題で、接着剤の変性シリコーン樹脂部分がチップの頂点に近くなっている部分もあり、粘っこい樹脂部分が砥石に直接触れると、めくり上がる現象が起こる。
チップはフォーエバーセラミックカッター刃が材料である。角の磨耗は光を反射させると判別できる位でごく僅かであった。
シリコーンラップの自己粘着性は、中性洗剤で水洗い乾燥すると回復し、再使用に耐えた。
【実施例2】
【0038】
図12の実施例は、数多く試作テストした本発明ジグの中から、好ましかった1例の正面図(A)と断面図(B)である。
基台は、テーブルなどに掛ける軟質塩ビ透明シートをカットして作成した。厚さ1mm、長さ150mm、巾20mm、外径500mm、内径480mmの円弧状の帯とした。
直径12mmのセラミックシャープナーを、ダイヤモンド工具により直径5mmに削り、ダイヤモンドカッターで1.8mmの高さに切断して、円柱状のチップを4個作成した。
基台には、外径から5mmの位置に、ピッチ40mmで、直径5mmの打ち抜きポンチで、丸穴を4個あけた。
チップは、下面が平らになるように、基台の丸穴に押し込んで固定した。
基台の下面には、裏面が通常の粘着材、表面が自己粘着材の巾15mmの剥がせる両面テープを貼り付けた。両面テープの基材はポリエステルフィルムで伸びがないので、基台の可撓性で皺がよらないように、20mmの長さにカットして、平行に並べて貼り付けた。
庖丁の外側を研ぐ時は、各チップの先端が刃先曲線から12mmになるように貼り付けた。庖丁の内側を研ぐ時は、各チップの先端が刃先曲線から15mmになるように貼り付けた。刃先角度は10度と8度を想定したもので、庖丁の貼り付けた部分の厚みによる角度補正も考慮されている。
【0039】
研ぎ直しの結果は、しのぎは刃先カーブに沿って細く入り、研いだ面は光を反射させてルーペで観察すると一様に光っており、平らに仕上がっている。切れ味も良好である。
基台の固さも適度で、使用した両面テープの自己粘着の剥離力も程ほどである。
チップはセラシャープナーCS-10が材料である。砥石としてのセラミックスなので目が少々粗く、実施例1のセラミックカッター刃よりは磨耗が大きいが、使用に耐えないほどではない。その上、チップは円柱状なので、回転と上下反転で、固定のチップより10倍近く長く使うことができる。
使用した剥がせる両面テープは、アクリル系/ウレタン系の粘着材で、自己粘着面は、中性洗剤で水洗い乾燥すると回復し、再使用に耐えた。
【0040】
なお、図10(A)で例示した長さケージをペットシートで作成して試用してみた。なかなか便利である。図10(A)のようなバラよりは図13(C)のように一体化した方が使い易い。
【0041】
小ぶりで切っ先が長い庖丁の内側では、切っ先の貼り付け面積が小さいので、厚さ1mmの下敷きを試用してみた。材料はポリプピレンで、下面には同じ剥がせる両面テープを使用した。この時、刃先からチップまでの距離は22mmとした。固定もしっかりしていて使いやすい。
【0042】
多数の試作をする中で、セラミックボールが手に入らないので、ステンレスボールを使用したものもある。ステンレスボールは磨耗が早く、耐磨耗チップはやはりセラミックス系が好ましいようである。
【0043】
度々の研ぎテストで、庖丁のしのぎが後退した。そこで研ぎおろしを行った。研ぎおろしは刀身面の1/3位を削り落とすイメージで、荒砥石も使って、しのぎがほぼ無くなるまで行った。
再び本発明のジグを取り付けて、仕上げ砥石だけで研ぎ直しを行った。この時、外側の研ぎはほんの5往復程度、内側の研ぎは数回軽く行うだけで、素晴らしい切れ味の庖丁となった。しのぎは刃先カーブに沿って糸のように入っている。この結果は、本職の研ぎ師に依頼して研ぎおろしの行われた同じ型の庖丁と酷似している。心なしか切った野菜の味が良いような気がする。
研ぎ直しは出来るだけ軽く行うのが良い。2度目、3度目と度重ねる時に、以前の研ぎ直しと刃先角度が正確に一致していれば、それだけ軽い研ぎで済み、庖丁も砥石も長持ちして、作業負担も少ないということである。
【実施例3】
【0044】
図13の実施例は、実施例2の結果を踏まえて予定される、量産型の本発明ジグの例である。(A)は正面図、(B)は断面図、(C)は付属品である。
基台は、ウレタン系硬質ゴムで、型で作成する。
基台寸法は、長さ150mm、巾20mm、外径500mm、内径480mmの円弧状の帯である。外径部は薄く、内径部は少し肉厚とし、上面の角は適度の丸みを持たせる。
基台の外径から5mmの位置に、直径5mmの丸穴を10個設ける。丸穴の途中には、チップの溝に噛み合う出っ張りを設ける。
基台の下面はウレタン系の自己粘着の薄い層を設ける。自己粘着シートの上に硬質ゴムを鋳るか接着するなどの方法で作成できる。厚さは0.2mm程度あれば好ましい。特許文献16の方法によれば、エンボス加工した剥離シートの上に軟質ウレタン系の自己粘着樹脂層を形成し、その上に硬質樹脂層を重ねると、自己粘着にマイクロ吸盤の吸着を加味することも可能である。
チップは直径5mm、高さ1.8mmのセラミックスの円柱で、0.9mmの高さの位置に基台の穴の出っ張りと噛み合う溝を設ける。数は10個とし、基台の穴に押し込んで固定する。押し込む時に基台の穴の出っ張りを傷つけないように、円柱チップの上下面の角には小さな角丸めを設ける。セラミックスは無気孔高密度のものが好ましい。
本発明のジグは2個をセットとする。2個は同一の形状寸法のものである。
付属品は下敷き2枚、長さケージは標準用1個、下敷き対応用1個、必要に応じて水切りスポンジやケースをつけると良い。
実施例1と実施例2の実績から、研ぎ直しの道具として良好な結果を得ることは明らかで、意匠的な施しをすることで、適価格の商品としての魅力は充分に発揮できるものである。
【0045】
なお、細かい構成や構造は、ここに記述した例に限るものではない。
例えば、基台の形状は円弧上に限らず、直線状などとしても差し支えない。
基台には適当な芯材を入れても良い。
基台の穴とチップに設ける出っ張りと溝は、図9や図13と逆に、穴に溝、チップに出っ張りを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
平砥石の研ぎ直し技術の9つの基本を忠実に守って、庖丁を研ぎ直す用途に適用できる。
庖丁に限らず、刃先面積の狭い刃物を研ぐ用途にも適用できる。
また、平砥石に限らずヤスリ状の研ぎ道具の場合にも使用できる。
【符号の説明】
【0047】
U01 本発明のジグ
U02 庖丁
U03 平砥石
U04 下敷き
U05 長さゲージ
U06 角度ゲージ
10 基台
11 基台の上面
12 基台の下面
13 チップ
14 チップの高さ
15 出っ張り
16 溝
21 庖丁の外側
22 庖丁の内側
23 庖丁の刃先
24 庖丁の刃先からチップまでの距離
25 庖丁の刃先角度
26 庖丁の厚みによりオフセットされる角度
P02 庖丁の刃先カーブの主要点
31 砥石の木台
51 目盛り
52 穴
53 つまみ
【技術分野】
【0001】
本発明は、包丁の研ぎ直しの道具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
庖丁の切れ味は料理の味を左右すると言われる。しかし、包丁は一般家庭においても、一月に一回くらいは研がないと切れなくなるものである。
最近は近隣に研ぎ師がいなくなり、研ぎの依頼も困難になっている。遠方に移送する場合は、刃物であるための困難と危険が伴う。費用は一回1000円以上、期間は2〜3週間かかるのが普通で、頻繁な研ぎの依頼は控えがちとなる。
一方で下手な研ぎにはそぐわない、上質な庖丁の使用も多くなっている。
厨房ではさらに頻繁な研ぎが必用となるが、料理人が必ずしも上手い研ぎ師であるとは限らず、永い間には刃先の曲線が凹に至り、「プロがこんな庖丁にするとは何事だ」と非難されるような状況もあるようである。
【0003】
包丁は平砥石で研ぐのが一番良い。しかし、正しい方法で行わないと切れるようにはならない。研ぎ直しには大事なポイントが9つある。洋包丁で言えば、1は、包丁の外側(右手で柄を持ったときの右側の面)の刃先角度を8〜10度や15度などで一定とすること。2は、包丁の内側(右手で柄を持ったときの左側の面)の刃先角度を5〜8度や15度などで一定とすること。3は、包丁の外側の研ぎ方向を略45度とすること。4は、包丁の内側の研ぎ方向を略90度とすること。5は、指先に力を入れないこと。6は、片面毎に砥石の巾以内で3〜4回などに分けて研ぐこと。7は、研ぎ過ぎないこと。特に内側は軽く研ぐこと。8は刃先の曲線を崩さないこと、9は、刃返りを取ること、である。
【0004】
研ぎ直しを繰り返すと、しのぎの部分が厚くなり、切り込み抵抗が大きくなる。研ぎ直しで研ぎ過ぎないように気をつけるのはこのことに関係する。しのぎ部分が厚くなった場合は、研ぎおろしを行う。刀身面の刃先側の1/3位を削り落とすイメージで、刀身を薄くする作業である。研ぎおろしは、庖丁の刃先側の上下面を砥石にあてて、ひたすら研げばよい。
【0005】
その他にも身離れを良くするための様々な技法など、職人域での技量は奥深いものがあるが、最低限の切れ味の確保という点で、研ぎ直しの9ポイントが基本である。
【0006】
包丁が切れるためには、刃先の鋭さだけでなく、刃先に細かい鋸目が生じることが必用である。前記のポイント3と4は刃先に鋸目を作るために必要である。外側と内側の砥石傷の方向が略45度異なることで、その交点である刃先に峰が切れ刃となった山形の細かいギザギザが生じるのが鋸目である。もし外側と内側の傷の方向が同じであると、刃先には単に深い波が生じるだけであり、切れ味に寄与しない。鋸目は細かい砥粒の砥石ほど細かく鋭くなるので、仕上げ砥を使うとさらに切れ味が良い。
【0007】
刃先に平行に研ぐ道具(シャープナー)では鋸目は生じない。従って平砥石で研いだものに比べて引き切りの切れ味は数段階低下する。適正でないシャープナーを永く使うと、刃先の角度も狂い、丸刃となり、包丁を痛めることにもなる。
【0008】
研ぎ直しの9ポイントの中で一番難しいのは、1と2の刃先角度を一定にして研ぐことである。包丁は研ぐには持ち易い形ではない。研ぐ面は外側と内側の2面あり、方向も45度と90度の2種類あり、片面毎に3〜4回に分ける必用があり、本体は薄くて、刃先にはそりがあり、しのぎは湾曲しており、峰も湾曲して、柄も付いている。持つときに柄の方向を一致させると、外側と内側では刃の方向が逆になる。持ちにくいものを手に持って、砥石に対して安定して往復運動するには、相当の熟練を要する。下手に研ぐと段刃や丸刃になり、刃先の曲線も狂い、高価な包丁も長持ちしない。
【0009】
包丁の研ぎ道具は過去に多くの特許と実用新案が出願されている。その大半はシャープナーである。シャープナーは簡便であるが、刃先の鋭さを重視したもので、切れ味のもう一つの重要な要素である鋸目の効果を損なう道具である。しかしシャープナーは使いやすいことから、商品化の割合も高く、有効な特許も数多い。
【0010】
平砥石の研ぎで刃先角度を一定に保つ道具は、古くは昭和6年の実用新案公報(特許文献1)がある。単に角度を固定するだけの道具では新規性は無い。にもかかわらず、刃先角度を一定に保つ道具の考案はその後も相当数出願されている。特許ではみなし取下げが多く、実用新案では権利消滅が大半である。
【0011】
平砥石の研ぎで刃先角度を一定に保つ道具の先願を精査してみると、実用的な構造のものは少ない。
例えば、確かに角度は一定になるが、外側と内側の刃先角度の違いは認識されていないもの。
例えば、外側と内側の刃先角度の違いや包丁の種類の違いに対応する角度の調整は可能でも、調整の目安が無くて、面倒であり、再現性に欠けるもの。
例えば、部分的な角度の維持は可能でも、全体的には何度もセットし直す必要があるもの
例えば、道具の固定が不安定なもの。
例えば、磨耗を危惧するあまり、その対策で構造を複雑にしているもの。
例えば、大掛かりな装置にしてしまい、収納、コスト、清掃、狭い場所での使い勝手などに支障が生じるもの、などである。
【0012】
平砥石の研ぎで刃先角度を一定に保つ道具で実用商品化されているのは下記の5種類ほどである。
数少ない特許成立例には特許文献2と特許文献3がある。この特許には意匠登録(特許文献4)も付随しており、権利は継続中で、minoSharp(マスター カットラリー 株式会社の登録商標)という商品が販売されている。
特許文献5は公開中である。この商社からは、工業ダイヤモンド包丁研ぎ[トギコロツー]という商品が販売されている。他社の類似商品で、トギスターダイヤというのが販売されている。
審査中の特許文献6に対応する道具では、エルゴ包丁研ぎ器[シャトル]という商品が販売されている。
庖丁の背に差し込むだけの道具は、特許文献7と特許文献8に例が見られる。これに後願で特許文献9が出されたが権利化できず、特許文献10と特許文献11に示す意匠で保護されたスーパートゲールという商品が意匠権8年継続で販売中であり、この種の道具の中では広く普及している。
数多い考案の中で実用化されているものの特長としては、意匠的な構造であることにも気づく。
【0013】
一方、庖丁の刃先角度については意識しているが、刃先のカーブに留意した考案は非常に少ない。特許文献12に刃先のカーブに対応する記述を見たが、複雑な構造であり、自ら取下げている。特許文献13も刃先のカーブに言及しているが、都度取り付けなおす必要がある。
【0014】
庖丁の刃先はカーブしているので、全体に渡って刃先角度を一定にするには、直線状の道具では対応できない。特許文献11の商品は直線形状であるために全体に渡る正確な研ぎは期待できない。また包丁の背に差し込むために、包丁のサイズによって刃先の角度が異なることとなる。一般に包丁の背は刃先に平行ではないので刃元と切っ先では条件が異なり、刃先角度も一定とならない結果となる。また差し込める包丁の厚さに3mmまでという制限がある。簡易の用具としては大変便利で意匠的なものであるが、研ぎの仕上がりは今ひとつと言える。特許文献14の商品も同様であり、庖丁を台に固定してヤスリ状の研ぎ道具で研ぐ商品(特許文献5)、レールでガイドする商品(特許文献6)など、何れも刃先カーブに沿って刃先角度を一定にすることは出来ない。
【0015】
庖丁の刃先のカーブも刃先の角度も、メーカや用途によって千差万別である。庖丁の長さと巾と厚さも、メーカや用途によって千差万別である。両刃のものも片刃のものもある。両刃庖丁の刃先の角度は外側と内側では異なるのが一般であり、研ぎ師の流儀でも差異がある。これらの条件を考えると、先願の大半は、対応が難しかったり、何度も付け替えが必要であったり、装着や調整が面倒であったり、再現性に問題があったり、装着不能であったりする。
【0016】
希望の刃先角度に自由に調整できるようにした考案も、大半は調整が面倒で、再現性にも問題がある。再現性を意識して刃先目印をつけたアイディアには特許文献13がある。再現性を意識してアタリピンを設けたアイディアには特許文献12がある。特許文献5は台の脚のネジで、特許文献6は固定部のパッドの交換で角度を変えることは可能であるが、外側と内側で刃先角度を変えるには不便であるし、庖丁の種類などの状況が変わると都度調整交換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実公昭06-005144号公報
【特許文献2】特許3968101号公報
【特許文献3】特許4436385号公報
【特許文献4】意匠登録第1246732号
【特許文献5】特開2010-260160号公報
【特許文献6】特開2008-260095号公報
【特許文献7】実開昭 60-157171号公報
【特許文献8】実公昭 63-009416号公報
【特許文献9】特開平09-225842号公報
【特許文献10】意匠登録第1214859号
【特許文献11】意匠登録第1214723号
【特許文献12】特開2004-283920号公報
【特許文献13】特開2009-12160号公報
【特許文献14】意匠登録第1346367号
【特許文献15】特許3640399号公報
【特許文献16】特許4104731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、包丁を平砥石で研ぐ場合に、正しい庖丁の研ぎ方に関する9つの基本を忠実に実現できる、下記A〜Oのような利点を有する研ぎ直しの道具である。
Aは、曲線の刃先のどの位置でも一定の刃先角度となる。
Bは、刃先の曲線を正しく維持できる。
Cは、目的の刃先角度に簡単にセットできる。
Dは、庖丁の外側と内側の角度も個別にセットできる。
Eは、刃渡り全体の研ぎを、取り付けなおすことなく一度の装着で行うことができる。
Fは、外側と内側の研ぎを、取り付けなおすことなく一度の装着で行うことができる。
Gは、荒研ぎ、中研ぎ、仕上げ研ぎ、刃返り除去、切れ味確認、修正研ぎ、の何れのステップも、取り付けなおすことなく一度の装着で継続して行うことができる。
Hは、庖丁の長さの違いにも対応する。
Iは、庖丁の巾の違いにも対応する。
Jは、広い巾の庖丁にも利用できる。
Kは、庖丁の厚みの違いにも対応する。
Lは、簡単に着脱できる。
Mは、庖丁に傷をつけない。
Nは、意匠的である。
Oは、洗浄、乾燥、清掃が容易で、収納にも場所をとらない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、図1のように、少なくとも下面12が粘着性または吸着性またはその両方の特性を持つ可撓性の基台10の上面11に磨耗の少ない複数のチップ13を突出させて並べて固定した帯状の研ぎのジグU01である。粘着性や吸着性は総称して面着性と表現することもできる。本発明のジグU01の下面12は粘着性や吸着性を持つので、図2のように、庖丁U02の表面21と裏面22に貼り付けて強く固着させることができる。複数のチップ13は所定の高さ14になるように作られているので、刃先23からの距離24によって庖丁U02の刃先角度25は一義的に決定される。図3のように、庖丁U02の刃先カーブ23の主要点P02A、P02B、P02C、P02D、などから本発明のジグU01のチップ13までの距離24が一定になるように置くことで、可撓性の帯状のジグU01は複数の測定点P02A、P02B、P02C、P02D、などから一定距離の点を通る滑らかな曲線C01を描いて仮置きすることができる。位置が決定したら、本発明のジグU01の表面を押して庖丁U02の表面21に強く貼り付け固着させる。両刃の庖丁の場合は、庖丁の外側21の装着ができたら、図2のように、もう一つの本発明のジグU01Bを、庖丁U02の内側22にも同様の方法で装着させる。
【0020】
図4のように、予め水を吸わせた平砥石U03の上に、図示しない本発明のジグU01を装着した庖丁U02の外側21を、略45度の方向で載せ、庖丁U02の刃先23と本発明ジグU01の図示しないチップ13の間に指を軽く置いて、刃元から切っ先までを4箇所くらい、23A、23B、23C、23D、などに分けて、一箇所につき10〜30往復くらい、滑らすように研ぐ。全体に刃返りが出ていたら外側21の研ぎは一応終了する。
【0021】
両刃の庖丁の場合は、図5のように、本発明のジグU01Bを装着した庖丁U02の内側22を、略90度の方向で砥石U03に載せ、庖丁U02の刃先23と本発明ジグU01Bの図示しないチップ13の間に指を軽く置いて、刃元から切っ先までを4箇所くらい、23A、23B、23C、23D、などに分けて、刃返りを取る程度に滑らすように軽く研ぐ。全体に刃返りが外側にめくれたら、内側の研ぎは一応終了する。
【0022】
片刃の庖丁の場合は、内側には本発明のジグは装着しない。本発明のジグの付いていない庖丁U02の内側22を、略90度の方向で砥石U03に載せ、庖丁U02の刃先の上に指を軽く置いて、刃元から切っ先までを4箇所くらいに分けて、刃返りを取る程度に滑らすように軽く研ぐ。全体に刃返りが外側にめくれたら、内側の研ぎは一応終了する。
【0023】
砥石U03の木台31の裏に刃23をあてて軽く引き、刃返りを除去する。
刃23を爪に軽くあてて、引っかかるようなら、この工程の研ぎは完了する。研ぎが不完全な場合は、そのままもう一度上記の研ぎ工程を適度に繰り返す。
必用に応じて砥石の荒さを変えて、上記の研ぎ工程を行う。
【0024】
全工程が終了したら、本発明のジグU01を庖丁U02から外し、庖丁U02と本発明のジグU01と砥石U03を水で洗い、布で拭いて、乾燥させる。
本発明のジグU01の固着が使い捨ての両面テープによる場合は、使用済の両面テープを剥がし、新しい両面テープを貼り付けておく。
本発明のジグU01が自己粘着性やマイクロ吸盤の吸着性の場合は、粘着性や吸着性を回復させるために、必要に応じて中性洗剤で洗うと良い。
【0025】
どのような刃先角度でも、本発明のジグを、研ぎ操作のし易い刃先からの位置にセットすることができたらさらに良い。
例えば、厚さ1.6mm程度の庖丁において、刃先角度10度で刃先からの距離を10mmになるように当該ジグの寸法を決めると、刃先角度が15度の場合、本発明のジグの刃先からの距離は6.6mmとなる。人によってはこの寸法では角度を保つのが難しいと感じる場合もある。
こういう場合は、図6のように、本発明のジグの付属品として下敷きU04を用意すると良い。
下敷きU04の下面には粘着性や吸着性を持たせる。下敷きU04は厚さ方向には適当な可撓性を有するが、巾方向の可撓性の必要はなく、本発明のジグよりある程度大きい形状のものが好ましい。
希望の刃先角度で刃先から適正な距離となる厚さの下敷きU04を庖丁U02に貼り付けて固着した後、本発明のジグU01を先に述べた方法で刃先23の形状に合わせてセットする。この場合、本発明のジグU01の取り付け位置は、庖丁U02に直接取り付けた時よりも刃先23からの距離24を大きくすることができる。
この方法で標準の本発明のジグU01を広い範囲の刃先角度25に適合させることができる。
なお、下敷きU04は1枚の必用はなく、複数個を重ねて使用するようにしても良い。
【0026】
庖丁の幅が極端に狭い場合にも、下敷きU04を使用すると本発明のジグU01の固着面積を広くして、固着力を高めることができる。
また、切っ先のとぎった部分が長い形状の庖丁の場合にも、下敷きU04を使用すると、本発明のジグの切っ先に相当する部分も固着面積を広くして、固着力を高めることができる。
【0027】
図7のように、極端に長い庖丁U02の場合は、本発明のジグU01を複数個並べて装着させることで対応できる。
【0028】
図8のように、刃厚の大きい庖丁U02では、厚みによってオフセットされる角度26を希望の刃先角度25から減算補正して、希望の刃先角度に合わせることが出来る。
【0029】
本発明ジグU01の基台10の可撓性は、適当な硬さを持つ方が扱いやすくて好ましい。
また、着脱容易とすることから、過度に強い剥離力ではない方が使いやすいが、研ぎ作業中にめくり上がりによる剥離力が働かないように、基台10は適度な曲げ剛さを有していることが好ましい。
可撓性の程度は、基台10の巾と厚さ、および樹脂の硬さの選択によって調整することができる。
【0030】
本発明ジグU01の基台10の粘着性は、使い捨ての両面粘着テープを使用することで実現できるが、自己粘着性の樹脂を使用するか、マイクロ吸盤の吸着性を持つ樹脂シートなどを利用すると、洗浄乾燥するだけで繰り返し使用できるので好ましい。
自己粘着樹脂またはマイクロ吸盤の吸着シートなどは、滑りの方向には極めて大きな抵抗力を持つので、本発明のジグの固着に大変適している。
この場合、本発明のジグU01の基台10は全体を自己粘着樹脂で作成しても良い。
または、本発明ジグU01の基台10の下面12のみを粘着性または吸着性とし、上面11は汎用の樹脂としても良い。
または、本発明ジグU01の基台10を汎用の樹脂で作成し、基台10の下面12に、片面が自己粘着性またはマイクロ吸盤の吸着性を持つ両面テープなどを貼り付けても良い。
自己粘着樹脂の剥がす方向の力は、自己粘着樹脂材料の選択で調節することができる(特許文献15)。
マイクロ吸盤の吸着シートの作成方法は特許文献16にその一例が公開されている。
【0031】
本発明のジグU01に用いる耐磨耗のチップ13は、図9(A)のように、球、山形、板、棒、など、形状は任意である。
図9(B)のように、本発明のジグU01の基台10に取り付け穴14を設け、耐磨耗チップ13を挿入固定することで、耐磨耗チップ13を交換可能とすることができる。
この時、耐磨耗チップ13の上下面を使用できるようにしておくと、上下を入れ替えることで、チップ13の使用期間を倍化させることができる。
この時、耐磨耗チップ13の断面を円形や多角形や矩形とすると、チップ13を回転させることで、チップ13の使用期間をさらに何倍にも延ばすことができる。
この時、基台10の取り付け穴14とチップ13が出っ張り15と溝16で噛みあうようにするとチップ13の装着が安定するので更に好ましい。
【0032】
本発明のジグの位置決めは、汎用の物差しを使用して行うことができるが、図10(A)のように、専用の長さゲージU05を用いると便利である。
本発明のジグU01には、予め複数の長さゲージU05を取り付けるようにすると、位置決め操作が簡便となる。長さゲージU05は透明の板に刃先角度に応じた円弧の目盛り51が入っている。また円弧の中心にはチッブ13に勘合する穴52があいている。後端は取外しが容易なように曲げによるつまみ53が付いている。
この時、本発明ジグU01の上面11の少なくとも一部にも粘着性または吸着性をも持たせておくと、ケージU05の取り付けが安定して好ましい。
または、図10(B)のように、チップ13の頭の高さから位置を規定する、専用の角度ゲージU06を用いる方法もある。
なお、ケージについては、その他様々な形状のものが考案可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、可撓性の帯状のものであるので、色々な刃先形状に合わせて変形して装着させることができるので、刃先カーブのどこでも同一の刃先角度を保つことができる。
本発明は、刃先形状に沿って装着できるので、刃先カーブを狂わせるような研ぎを避けるのが容易である。
本発明は、意識的に刃先形状を修正するように装着することが出来るので、過去のまずい研ぎで狂った刃先形状を直すことも可能である。
本発明は、庖丁の外側と内側のジグが別体となっており、独立して装着できるので、外側と内側の刃先角度を別々に任意に設定することができる。
本発明は、庖丁の任意の位置に装着できるので、刃先角度は希望の値に設定することができる。
本発明は、刃先角度を決めるのは、刃先とジグの距離だけであるので、専用の長さゲージなどを用いて、簡単に設定することができる。
本発明は、0.2mm程度の幅しかない刃先面を砥石に密着させる従来の手研ぎに比べ、刃先とジグのチップの距離は例えば10mm以上とすることができるので、その部分に指をあてて、砥石の上で庖丁を軽く滑らすだけで、熟練していないオペレータでも正しい一定の角度の研ぎを行うことができる。
本発明は、庖丁の外側と内側のジグが同一形状寸法にできるので、製作費用が少なく、誤装着の恐れも無く、流用性も高い。
本発明は、刃先形状に沿って装着できる長尺のものであるので、刃渡り全体の研ぎを、取り付けなおすことなく一度の装着で行うことができる。
本発明は、庖丁の外側と内側のジグが別体となっており、独立して装着できるので、外側と内側の研ぎを、取り付けなおすことなく一度の装着で行うことができる。
本発明は、薄い帯状のものであるので、作業の邪魔になることがなく、荒研ぎ、中研ぎ、仕上げ研ぎ、刃返り除去、切れ味確認、修正研ぎ、の何れのステップも、取り付けなおすことなく一度の装着で継続して行うことができる。
本発明は、複数個を並べて装着することも出来るので、色々な長さの庖丁に対応することができる。
本発明は、庖丁の外側と内側のジグが別体となっており、独立して装着でき、刃先角度を決める装着位置は刃先カーブからの距離で定まるので、色々な幅の庖丁に対応することができる。
本発明は、庖丁の背を跨いで取り付ける道具とは異なり、庖丁の外側と内側のジグが別体となっており、独立して装着できるので、どのような巾広い庖丁にも使用することができる。
本発明は、庖丁の背を挟んでで取り付ける道具とは異なり、庖丁の外側と内側のジグが別体となっており、独立して装着できるので、庖丁の厚みにかかわらず使用することができる。
本発明は、刃先角度を決める装着位置は刃先カーブからの距離で定まるので、距離で補正することが可能で、庖丁の厚さにかかわらず、刃先角度を正確な値に設定することができる。
本発明は、庖丁の面に当たるのは粘着性または吸着性の樹脂のため、仮置きしただけでも適度な摩擦力が働き、調整位置がずれることはない。また、仮置きの位置は簡単に移動調整することができる。
本発明は、刃先カーブの数点の位置で、刃先とジグの距離を所定の長さに調整して仮置きすると、ジグの可撓性で全体に渡り適正な位置に仮置きすることができる。
本発明は、仮置きしたジグを強く庖丁の面に押し付けることで、簡単に貼り付けて固着させることができる。
本発明に使用する粘着性や吸着性の樹脂は、横の移動には極めて大きな抵抗力を持ち、外部が濡れた程度では固着力に変化はなく、装着したジグがスリップすることはない。また、縦の剥離に対しては適度な抵抗力を持たせることが出来るので、押して貼り付け固着し、端から持ち上げて剥離させることで、着脱はきわめて容易である。
本発明は、庖丁にあたるのは柔らかい粘着性や吸着性の樹脂面であるので、庖丁の面に傷をつけることは無い。
本発明は、貼り付ける面の粘着性を自己粘着性とするか、またはマイクロ吸盤の吸着性、またはその両方とすることで、洗浄乾燥させるだけで繰り返し使用することができる。
本発明は、簡単な帯状の形をしているので、水洗いと拭き取りと乾燥は簡単で、収納にも場所は取らない。
本発明は、砥石にあたる部分は耐磨耗のチッブでできているので、永く使用することができる。
本発明は、砥石にあたるチッブを交換可能の構造とすることで、さらに永く使用することができる。
本発明は、帯状の形状、面のカーブ、チップの形状、チップの数、材料の色、ロゴマークの配置、などで、意匠的な道具とすることができる。
本発明は、軽い力で正確に研ぐことができるので、少ない回数で研ぎあがるため、包丁と砥石を長持ちさせ、オペレーションの時間も短く、磨ぎおろしが必要となる頻度を少なくし、従来の研ぎ作業の負担感はむしろ研ぎの楽しみに変化する。
本発明は、平砥石による研ぎ直し技術の9つのポイントを全てクリアする道具であるので、家庭だけでなく、料理を本職とする職人などの使用にも充分に耐えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明のジグの構造を示した斜視図である。
【図2】図2は、本発明のジグを庖丁の外側と内側に取り付けた状態の説明図である。
【図3】図3は、本発明のジグが庖丁の刃先カーブに沿って取り付けられる様子を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明のジグを装着した庖丁の外側を研ぐ場合の説明図である。
【図5】図5は、本発明のジグを装着した庖丁の内側を研ぐ場合の説明図である。
【図6】図6は、下敷きを併用して本発明のジグを庖丁に取り付けた状態の説明図である。
【図7】図7は、長尺の庖丁に本発明のジグを2個並べて取り付けた状態の説明図である。
【図8】図8は、厚手の庖丁に本発明のジグを取り付けた時の角度の補正を説明した図である。
【図9】図9は、本発明ジグのチップ形状の例と、交換可能なチップとその取り付け方法の例を説明した図である。
【図10】図10は、本発明のジグの位置決めに使用すると便利なケージの例を示した説明図である。
【図11】図11は、初期に試作した本発明のジグの説明図である。(実施例1)
【図12】図12は、数多く試作した中から選んだ本発明のジグの好ましい状態の説明図である。(実施例2)
【図13】図13は、量産に対応した本発明のジグの説明図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0035】
実施例1に初期に手作り試作した本発明ジグの例を公開する。実施例2に数多く手作り試作した本発明ジグの中から好ましかった例を公開する。実施例3に量産に対応する本発明のジグの例を公開する。
【実施例1】
【0036】
図11の実施例は、初期に試作した本発明ジグの正面図(A)と断面図(B)である。
基台の下部は、硬度5度のシリコーンラップをカットして製作した。シリコーンラップの滑面は自己粘着性であり、他面には粘着防止の小さな出っ張りが多数型取られいてる。出っ張りを含めた厚さは約1mmである。
基台は、長さ150mm、巾20mm、外径500mm、内径480mmの円弧状の帯とした。
セラミックカッター刃をダイヤモンドカッターで切断して、正方形板状のチップを7個作成した。チップの厚さは1mmで、巾と長さは5mmとした。
チップは、基台の端から2mmの位置に、先端高さ1.5mm、角度5度程度で、21.5mmのピッチで7個を接着固定した。接着剤は、シリコーンコーンゴム対応のアクリル変性シリコーン樹脂主成分のものを使用した。
シリコーンラップの上面は、同じ接着剤を盛り付けて厚みを増やし、固さを増した。
庖丁の外側を研ぐ時は、各チップの先端が刃先曲線から11mmになるように貼り付けた。庖丁の内側を研ぐ時は、各チップの先端が刃先曲線から14mmになるように貼り付けた。刃先角度は10度と8度を想定したもので、庖丁の貼り付けた部分の厚みによる角度補正も考慮されている。
【0037】
研ぎ直しの結果は、しのぎは刃先カーブに沿って細く入り、研いだ面は光を反射させてルーペで観察すると一様に光っており、平らに仕上がっている。切れ味も良好である。
ただ、基台の材料が接着剤で補強したとはいうものの、ベースが硬度5度のゴムであり、接着剤も軟質ゴム状態で、未だ柔らかすぎる。また、シリコーンラップの耐スリップ力は充分に強力であるが、剥離力は少々弱いと感じた。使用したチップが薄いので、手作りによる精度の問題で、接着剤の変性シリコーン樹脂部分がチップの頂点に近くなっている部分もあり、粘っこい樹脂部分が砥石に直接触れると、めくり上がる現象が起こる。
チップはフォーエバーセラミックカッター刃が材料である。角の磨耗は光を反射させると判別できる位でごく僅かであった。
シリコーンラップの自己粘着性は、中性洗剤で水洗い乾燥すると回復し、再使用に耐えた。
【実施例2】
【0038】
図12の実施例は、数多く試作テストした本発明ジグの中から、好ましかった1例の正面図(A)と断面図(B)である。
基台は、テーブルなどに掛ける軟質塩ビ透明シートをカットして作成した。厚さ1mm、長さ150mm、巾20mm、外径500mm、内径480mmの円弧状の帯とした。
直径12mmのセラミックシャープナーを、ダイヤモンド工具により直径5mmに削り、ダイヤモンドカッターで1.8mmの高さに切断して、円柱状のチップを4個作成した。
基台には、外径から5mmの位置に、ピッチ40mmで、直径5mmの打ち抜きポンチで、丸穴を4個あけた。
チップは、下面が平らになるように、基台の丸穴に押し込んで固定した。
基台の下面には、裏面が通常の粘着材、表面が自己粘着材の巾15mmの剥がせる両面テープを貼り付けた。両面テープの基材はポリエステルフィルムで伸びがないので、基台の可撓性で皺がよらないように、20mmの長さにカットして、平行に並べて貼り付けた。
庖丁の外側を研ぐ時は、各チップの先端が刃先曲線から12mmになるように貼り付けた。庖丁の内側を研ぐ時は、各チップの先端が刃先曲線から15mmになるように貼り付けた。刃先角度は10度と8度を想定したもので、庖丁の貼り付けた部分の厚みによる角度補正も考慮されている。
【0039】
研ぎ直しの結果は、しのぎは刃先カーブに沿って細く入り、研いだ面は光を反射させてルーペで観察すると一様に光っており、平らに仕上がっている。切れ味も良好である。
基台の固さも適度で、使用した両面テープの自己粘着の剥離力も程ほどである。
チップはセラシャープナーCS-10が材料である。砥石としてのセラミックスなので目が少々粗く、実施例1のセラミックカッター刃よりは磨耗が大きいが、使用に耐えないほどではない。その上、チップは円柱状なので、回転と上下反転で、固定のチップより10倍近く長く使うことができる。
使用した剥がせる両面テープは、アクリル系/ウレタン系の粘着材で、自己粘着面は、中性洗剤で水洗い乾燥すると回復し、再使用に耐えた。
【0040】
なお、図10(A)で例示した長さケージをペットシートで作成して試用してみた。なかなか便利である。図10(A)のようなバラよりは図13(C)のように一体化した方が使い易い。
【0041】
小ぶりで切っ先が長い庖丁の内側では、切っ先の貼り付け面積が小さいので、厚さ1mmの下敷きを試用してみた。材料はポリプピレンで、下面には同じ剥がせる両面テープを使用した。この時、刃先からチップまでの距離は22mmとした。固定もしっかりしていて使いやすい。
【0042】
多数の試作をする中で、セラミックボールが手に入らないので、ステンレスボールを使用したものもある。ステンレスボールは磨耗が早く、耐磨耗チップはやはりセラミックス系が好ましいようである。
【0043】
度々の研ぎテストで、庖丁のしのぎが後退した。そこで研ぎおろしを行った。研ぎおろしは刀身面の1/3位を削り落とすイメージで、荒砥石も使って、しのぎがほぼ無くなるまで行った。
再び本発明のジグを取り付けて、仕上げ砥石だけで研ぎ直しを行った。この時、外側の研ぎはほんの5往復程度、内側の研ぎは数回軽く行うだけで、素晴らしい切れ味の庖丁となった。しのぎは刃先カーブに沿って糸のように入っている。この結果は、本職の研ぎ師に依頼して研ぎおろしの行われた同じ型の庖丁と酷似している。心なしか切った野菜の味が良いような気がする。
研ぎ直しは出来るだけ軽く行うのが良い。2度目、3度目と度重ねる時に、以前の研ぎ直しと刃先角度が正確に一致していれば、それだけ軽い研ぎで済み、庖丁も砥石も長持ちして、作業負担も少ないということである。
【実施例3】
【0044】
図13の実施例は、実施例2の結果を踏まえて予定される、量産型の本発明ジグの例である。(A)は正面図、(B)は断面図、(C)は付属品である。
基台は、ウレタン系硬質ゴムで、型で作成する。
基台寸法は、長さ150mm、巾20mm、外径500mm、内径480mmの円弧状の帯である。外径部は薄く、内径部は少し肉厚とし、上面の角は適度の丸みを持たせる。
基台の外径から5mmの位置に、直径5mmの丸穴を10個設ける。丸穴の途中には、チップの溝に噛み合う出っ張りを設ける。
基台の下面はウレタン系の自己粘着の薄い層を設ける。自己粘着シートの上に硬質ゴムを鋳るか接着するなどの方法で作成できる。厚さは0.2mm程度あれば好ましい。特許文献16の方法によれば、エンボス加工した剥離シートの上に軟質ウレタン系の自己粘着樹脂層を形成し、その上に硬質樹脂層を重ねると、自己粘着にマイクロ吸盤の吸着を加味することも可能である。
チップは直径5mm、高さ1.8mmのセラミックスの円柱で、0.9mmの高さの位置に基台の穴の出っ張りと噛み合う溝を設ける。数は10個とし、基台の穴に押し込んで固定する。押し込む時に基台の穴の出っ張りを傷つけないように、円柱チップの上下面の角には小さな角丸めを設ける。セラミックスは無気孔高密度のものが好ましい。
本発明のジグは2個をセットとする。2個は同一の形状寸法のものである。
付属品は下敷き2枚、長さケージは標準用1個、下敷き対応用1個、必要に応じて水切りスポンジやケースをつけると良い。
実施例1と実施例2の実績から、研ぎ直しの道具として良好な結果を得ることは明らかで、意匠的な施しをすることで、適価格の商品としての魅力は充分に発揮できるものである。
【0045】
なお、細かい構成や構造は、ここに記述した例に限るものではない。
例えば、基台の形状は円弧上に限らず、直線状などとしても差し支えない。
基台には適当な芯材を入れても良い。
基台の穴とチップに設ける出っ張りと溝は、図9や図13と逆に、穴に溝、チップに出っ張りを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
平砥石の研ぎ直し技術の9つの基本を忠実に守って、庖丁を研ぎ直す用途に適用できる。
庖丁に限らず、刃先面積の狭い刃物を研ぐ用途にも適用できる。
また、平砥石に限らずヤスリ状の研ぎ道具の場合にも使用できる。
【符号の説明】
【0047】
U01 本発明のジグ
U02 庖丁
U03 平砥石
U04 下敷き
U05 長さゲージ
U06 角度ゲージ
10 基台
11 基台の上面
12 基台の下面
13 チップ
14 チップの高さ
15 出っ張り
16 溝
21 庖丁の外側
22 庖丁の内側
23 庖丁の刃先
24 庖丁の刃先からチップまでの距離
25 庖丁の刃先角度
26 庖丁の厚みによりオフセットされる角度
P02 庖丁の刃先カーブの主要点
31 砥石の木台
51 目盛り
52 穴
53 つまみ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃物の研ぎ直しのジグにおいて、少なくとも下面が粘着性や吸着性を持つ可撓性の基台の上面に磨耗の少ない複数のチップを突出させて並べて固定した帯状の道具で、刃先の曲線から等距離に貼付できることを特徴とする。
【請求項1】
刃物の研ぎ直しのジグにおいて、少なくとも下面が粘着性や吸着性を持つ可撓性の基台の上面に磨耗の少ない複数のチップを突出させて並べて固定した帯状の道具で、刃先の曲線から等距離に貼付できることを特徴とする。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−43269(P2013−43269A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184855(P2011−184855)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(711003495)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(711003495)
【Fターム(参考)】
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