説明

研磨溶融粒子

本発明は、酸化物に基づく質量パーセントとして、Al2O3:100%とする残量;ZrO2+HfO2:16乃至24%;MgO:(ZrO2+HfO2)/MgOの質量比が25乃至65となる量;別の種:0乃至2%;の化学組成を有する溶融粒子に関する。前記粒子は、研磨粒子として使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化マグネシウムを含む溶融粒子に関する。本発明はまた、本発明による粒子を含む研磨用具、及び本発明による粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨用具は、一般的に、これを構成するセラミック粒子が形成される方法によって分類される:遊離砥粒(スプレー式で、または懸濁物として、支持体なしに使用される);粒子が布地、紙、またはポリマーフィルムタイプの支持体に付着している研磨布紙;及び環状研削ホイール、スティック等の形態の接着研磨剤。
【0003】
接着研磨剤の場合には、研磨粒子は、有機バインダー、例えば、フェノール樹脂、またはガラス質バインダーと共に、あるいは酸化物からなるバインダー、特にケイ酸塩含有バインダーと共に圧着されている。これらの粒子は、それ自体が優れた機械的研磨特性、特に優れた靱性及び/または硬度を有しており、バインダーとの優れた結合(接触面の強度)をもたらす。
【0004】
現在では、幅広い応用及び性能を網羅できる様々な種類の研磨粒子が存在する。アルミナ粒子の一群においては、応用に応じて以下が特に顕著である:電鋳アルミナ粒子(コランダム)、電鋳アルミナ−ジルコニア粒子、及びゾル−ゲル法によって製造されるアルミナ粒子。
【0005】
原材料を溶解することによって合成される粒子は、「溶融粒子」と呼称され、品質と製造コストとの非常に優れた折衷を提供する。
【0006】
溶融粒子の範疇では、アルミナ及びジルコニアに基づく物質が、US-A-3,181,939より既知である。これらの粒子は、一般的に、10乃至60%のジルコニア、0乃至10%の添加物、残量分のアルミナを含む。実際のところ、市販品のジルコニア含量は、特許US-A-3,891,408に記載のように、およそ25%か、あるいは、ジルコニアが約42%であるアルミナ/ジルコニア共晶混合物の値周辺、一般的には35乃至50%である。
【0007】
EP 1 613 709より既知であるのは、2.2%乃至6.5%の酸化マグネシウム及び残量分のAl2O3を含む粒子である。これらのアルミニウム粒子は、原材料を溶解させることによって製造される。溶融液体は、その後、優れた配向構造の形成を補助するために好ましくは迅速に、例えば、特許US-A-3,993,119に示されるもののような薄い金属板の間にキャスティングするための装置を用いて冷却される。冷却された物質は、最終的には、例えばロールミルによって粉砕され、その後、篩にかけられて、一連の粒径分布として、または精密な基準、例えばFEPA規格に対応する「グリット」で分類される。
【0008】
US4,126,429には、1乃至2%のMgOを含む、アルミナ及びジルコニアに基づく研磨溶融粒子が記載されている。ジルコニア含量は22%乃至28%であり、US4,126,429には、ジルコニア含量が22%未満になるやいなや粒子の性能が低下すると説明されている。ジルコニアの最適なパーセンテージは、25%付近であると考えられている。
【0009】
研磨溶融粒子においては、硬度と衝撃強度と破壊強度とが、その使用される応用のために適切に折衷していなければならない。とりわけ、この折衷は、研磨される物質及び研磨条件に依存する。
【0010】
硬度は、研磨される物質に粒子が侵入する性能に該当し、他方、衝撃及び破壊強度は、粒子の研磨表面のミクロ破壊による再生を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US-A-3,181,939
【特許文献2】US-A-3,891,408
【特許文献3】EP 1 613 709
【特許文献4】US-A-3,993,119
【特許文献5】US4,126,429
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、より競争力があり、且つ、一方では硬度と、他方では衝撃及び破壊強度との新たな折衷をもたらす研磨粒子が依然求められている。本発明の一つの目的は、この重要を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、酸化物に基づく質量パーセントとして、以下:
Al2O3:100%とする残量
ZrO2+HfO2:16乃至24%
MgO:(ZrO2+HfO2)/MgOの質量比が25乃至65となる量
別の種:0乃至2%
の化学分析値を有する溶融粒子に関する。
【0014】
本明細書の以下により詳細に示されるように、本発明による粒子は、優れた衝撃及び破壊強度と優れた硬度とを同時に有する。
【0015】
本発明による溶融粒子は、以下の特徴の一つもしくは複数を更に有していてよい:
・ZrO2+HfO2の含量が、好ましくは17.0質量%より大、好ましくは18.0質量%より大であり、且つ/または23質量%未満、好ましくは22.5質量%未満である。製造コストが重量なパラメーターである一実施態様では、ZrO2+HfO2の含量は、好ましくは22.0質量%未満、好ましくは20.0質量%未満である。
・(ZrO2+HfO2)/MgO質量比が、好ましくは28より大、好ましくは30より大、更に好ましくは35より大、あるいは40より大であり、且つ/または60未満、55未満、50未満、あるいは47未満である。
・酸化マグネシウムの含量は、好ましくは0.35%より大、好ましくは0.40%より大であり、且つ/または0.95%未満、0.90%未満、0.85%未満、0.80%未満、好ましくは0.70%未満、更に好ましくは0.60%未満である。
・「別の種」の総含量は、好ましくは1%未満、あるいは0.5%未満、あるいは0.4%未満である。好ましくは、この別の種は、不純物のみである。好ましくは、各不純物の含量は、0.1%未満である。特に、好ましくは、Na2O<0.1%、あるいはNa2O<0.05%である。同じく好ましくは、SiO2、CaO、TiO2、Fe2O3、またはCr2O3の含量は、それぞれ0.5%未満、好ましくは0.3%未満である。更に好ましくは、残りの炭素が1500ppm未満、1300ppm未満、あるいは800ppm未満である。
・好ましくは、この粒子のサイズは、150μmより大であり、且つ/または3.35mm未満、あるいは2mm未満である。
【0016】
本発明による溶融粒子は、粒子の混合物の形態であってよく、特に、研磨用具の製造のための原材料としてそのまま使用される粒子の混合物の形態であってよく、あるいは、これらの粒子が、例えば布に付着しているかまたは互いに結合して剛性の塊を形成しているか、特に接着研磨剤を形成しているために、互いに固定されている形態であってよい。
【0017】
こうした粒子の混合物は、特にサンディング応用において、あるいはこの混合物が清浄化または剥離しようとする部材上にスプレーされる応用において、研磨媒体としても作用しうる。
【0018】
然るに、本発明はまた、本発明による粒子を含むか、あるいは前記粒子によって構成される粒子の混合物にも関する。
【0019】
本発明はまた、例えば、研削ホイールの形態で、あるいは、支持体上に付着した形態、例えば、可撓性支持体上に層として付着した形態で、バインダーまたは接着によって接着した粒子を含む研磨用具に関し、この用具は、前記粒子の少なくとも一部、あるいは更には全部が本発明によるものである点で注目すべきである。
【0020】
研磨用具は、特に、ツルーイング研磨ホイール、精密研磨ホイール、尖鋭化(sharpening)研磨ホイール、切断研磨ホイール、クリープフィード研磨ホイール、フェトリングまたは荒仕上げ用研磨ホイール、調整(regulating)研磨ホイール、ポータブル研磨ホイール、鋳造用研磨ホイール、ドリル研磨ホイール、設置(mounted)研磨ホイール、円筒形研磨ホイール、円錐形研磨ホイール、円盤形研磨ホイール、または分割研磨ホイール、あるいはあらゆる別のタイプの研磨ホイールであってよい。
【0021】
本発明は、最終的に、以下の連続工程:
a)原材料を混合する工程;
b)前記混合原材料を、溶融液体が得られるまで溶解する工程;
c)前記溶融液体を、好ましくはこの溶融液体が3分間未満の間に完全に固形化するように、固体が得られるまでクエンチすることによって冷却する工程;
d)前記固体を、粒子の混合物、及び、任意に前記混合物のグリットサイズ等級が得られるように粉砕する工程、
を含み、前記原材料が、前記混合物の粒子が本発明による粒子の化学組成に従う化学組成を有するように選択される、本発明による粒子の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
「溶融粒子」なる表現は、溶融液体の冷却による固形化を含む方法に従って得られる粒子を意味すると解される。
【0023】
「溶融液体」とは、その形状を維持するためには容器中に保持されねばならない液体である。この液体は、少数の固体粒子を含んでいてよいが、その大部分を構成しうるには不十分な量である。
【0024】
「粒子の混合物」なる表現は、粒子の流動性混合物、すなわち、本質的な剛性を持たないものを意味すると解される。小サイズの粒子については、「粉末」なる語が従来使用されている。
【0025】
従来、粒子の「サイズ」は、前記粒子が通過することのできる最少標準網目サイズに該当する。
【0026】
グリットまたはFEPA-F規格に言及される場合は。FEPA-F規格42 GB-1984が参照される。
【0027】
粒子の酸化物含量は、対応する各化学成分についての総含量に関連し、当該産業における標準的な慣例に従って、最も安定な酸化物の形態で表わされる。したがって、含まれるのは、亜酸化物、及び任意に、窒化物、オキシ窒化物、炭化物、オキシ炭化物、炭窒化物、あるいは上述の成分の金属種である。
【0028】
溶融粒子の化学組成が記載されている場合は、「別の種」は、他の部分に明確に言及されていない全ての化合物、特に不純物を示す。
【0029】
「不純物」なる語は、不本意且つ必然的に原材料と共に導入された、またはこれらの成分との反応から生じる、不可避の成分を意味すると解される。不純物は、必要な成分ではなく、許容される成分に過ぎない。例えば、酸化物、窒化物、オキシ窒化物、炭化物、オキシ炭化物、炭窒化物、並びに、ナトリウム及び別のアルカリ金属、鉄、バナジウム、及びクロムの金属種の群の一部を成す化合物は不純物である。ジルコニウム源中に2%未満の含量で天然に存在する酸化ハフニウムは、所望の生成物がジルコニア又はジルコニアと酸化ハフニウムとを含まねばならない場合は、不純物とはみなされない。
【0030】
「ZrO2+HfO2」なる表現は、ジルコニアと酸化はルニウムとの混合物であって、酸化ハフニウムの量がジルコニア源中に天然に存在する酸化ハフニウムに相当する混合物を意味すると解される。
【0031】
「微量」とは、存在する相の5質量%未満の量に相当する。
【0032】
本明細書及び特許請求の範囲においては、特記のない限り、粒子の全組成は、粒子の酸化物に基づいて質量%で表示される。
【0033】
本発明の別の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むにつれて明らかになるであろう。
【0034】
本発明による溶融粒子は、アルミナまたはアルミナ−ジルコニアの溶融粒子の製造のためのあらゆる従来法によって製造してよく、とりわけ、短絡アーク炉を利用し、少なくとも150kWの炉電力について、原材料1トンあたり少なくとも1500kWhのキャスティング前溶融エネルギーで製造して良い。溶融条件は、粒子が1500ppmの最大炭素含有率を有するようなものであって良い。
【0035】
基本粒子は、特に、以下の連続工程を含む方法によって製造して良い。
a)原材料を混合する工程;
b)前記混合原材料を、溶融液体が得られるまで、通常は電気炉中で、溶解する工程;
c)前記溶融液体を、好ましくはこの溶融液体が3分間未満の間に完全に固形化するように、固体が得られるまでクエンチすることによって冷却する工程;
d)前記固体を、溶融粒子、及び、任意に前記粒子のグリットサイズ等級が得られるように粉砕する工程。
【0036】
工程(a)においては、原材料が、製造しようとする溶融粒子の所望の組成の一要素として、既知の方法で選択される。
【0037】
好ましくは、ジルコニア源は、酸化ハフニウムの量が5%未満、好ましくは2%未満であるように決定される。
【0038】
原材料の源は、粒子の不純物の総含量が0.5%未満となり、且つ/または各不純物の含量が0.3%未満となるように決定される。
【0039】
シリカ及び酸化ナトリウムは、溶融粒子中にあると不利であることが特に知られており、不純物として原材料中に導入される、各々の溶融粒子中の含量は、微量に制限されるべきである。実際のところ、シリカの存在により、研磨特性及び粒子の硬度を変更するガラス相の生成がもたらされる。酸化ナトリウムの存在は、たとえ低含量であっても、ベータ−アルミナの生成をもたらす。しかしながら、アルミナのこの結晶形態は、粒子の研磨特性を低減する。好ましくは、Na2O<0.1%、更には、Na2O<0.05%である。
【0040】
したがって、原材料は、好ましくは、SiO2、CaO、TiO2、Fe2O3、またはCr2O3の含量が、それぞれ0.5%未満、好ましくは0.3%未満となるように選択される。
【0041】
工程(b)においては、溶融条件は、好ましくは、粒子が、1500ppm、1300ppm、あるいは800ppmの最大炭素含量を有するようなものである。
【0042】
特に、溶融は、短絡アークをを利用し、少なくとも150kWの炉電力について、原材料1トンあたり少なくとも2000kWhのキャスティング前溶融エネルギーで実施して良い。
【0043】
工程(c)においては、冷却は迅速に、且つ、例えば、特許US-A-3,993,119に記載のように薄い金属板間へのキャスティングによって行われて良い。
【0044】
かくして製造される本発明の粒子の結晶分析では、微量の場合以外はスピネル相の存在を明らかにすることはできない。この粒子は、ヘリウム・ピクノメトリーによって測定される3%未満の間隙率を有する。
【0045】
工程(d)においては、粒子のグリットサイズは、企図する応用の関数として選択して良い。好ましくは、本発明による粒子は、6グリットより大であり、且つ/または220グリット未満、80グリット未満、あるいは24グリット未満のグリットを有する。
【0046】
本発明による研磨用具の製造方法は周知である。
【0047】
接着研磨用具は、研磨粒子とバインダーとの混合物の形態で、圧着によって形成して良い。
【0048】
本発明による接着研磨用具においては、バインダーはガラス固化(例えば、酸化物を含むバインダー、本質的にケイ酸塩含有バインダー)または有機のものであってよい。
【0049】
バインダーは、特に、熱硬化性樹脂であってよい。これは、以下の樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール−フルフラル樹脂、アニリン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−アルデヒド樹脂、レゾルシノール−アルデヒド樹脂、尿素−アルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、及びこれらの混合物によってなる群から選択してよい。
【0050】
通常、バインダーは、混合物の2乃至60体積%、好ましくは20乃至40体積%を占める。
【0051】
バインダーは、有機または無機のフィラー、例えば、水和無機フィラー(例えば、アルミニウム三水和物またはベーマイト)、または非水和無機フィラー(例えば、酸化モリブデン)、氷晶石、ハロゲン、ホタル石、硫化鉄、硫化亜鉛、マグネシア、炭化ケイ素、塩化ケイ素、塩化カリウム、二塩化マグネシウム、フルオロホウ酸カリウムもしくはフルオロホウ酸亜鉛、フッ化アルミン酸カリウム、酸化カルシウム、硫酸カリウム、塩化ビニリデン/塩化ビニルコポリマー、塩化ポリビニリデン、塩化ポリビニル、繊維、硫化物、塩化物、硫酸塩、フッ化物、及びこれらの混合物を更に包含して良い。バインダーは、強化繊維、例えばガラスファイバーを更に含んで良い。
【実施例1】
【0052】
以下の非限定的実施例は、本発明の詳説のために与えられる。
【0053】
参照生成物(「Ref」)は、ZF(登録商標)及びZS(登録商標)の名称で市販され、以下の化学分析値を有する溶融アルミナ−ジルコニア粒子である:質量%として、
Al2O3:75.0%、ZrO2+HfO2:24.1%、TiO2:0.1%、SiO2<0.2%、MgO:0.05%、CaO:0.07%、その他<0.8%。結晶及び微小構造分析により、ジルコニアの全てがアルミナと共晶混合物の形態で結合しており、アルミナの残量分はアルファ−アルミナの形態(コランダム)で見出される。
【0054】
試験した別の生成物は、以下の原材料から製造された:
・ 0.3%未満の水酸化ナトリウム含量をもつ非か焼(under-calcined)のBayer(登録商標)アルミナ;
・ 98%より大なるZrO2+HfO2含量を有するジルコニア粉末;及び
・ 石油コークス。
【0055】
酸化マグネシウムは、99%を超えるマグネシウムMgOを有する純粋材料によって準備される。
【0056】
この生成物は、当業者には周知の従来法によって調製され、
まず、所与の組成の粒子を製造できるように、原材料が分析された。
【0057】
これらの原材料に、炉の状態により、原料に基づく質量%として最少で1%(上限3%)の石油コークスが加えられた。
【0058】
その後、原料を、グラファイト電極を備えたエル―型(Heroult type)の単相電気アーク炉で、直径0.8mの炉容器、105V乃至150Vの電圧、1800乃至2500Aの電流、及び2.0乃至2.8kWh/kgの充電の供給特定電力を使用して、溶解させた。
【0059】
その後、溶融液体を、例えば、特許US-A-3,993,119に示されるもののような薄い金属板の間にキャスティングするための装置を用いて迅速に冷却した。その後、溶融粒子を粉砕して、そのグリットサイズによって分類した。
【0060】
得られた粒子は、蛍光X線によって化学的に特性を明示した。全化学分析データを表1に示す。炭素以外の不純物の含量は、0.3%乃至1%の範囲である。残量はアルミナ含量に相当する。
【0061】
粒子の機械特性を示すために、以下の試験を行った。
【0062】
試験A:衝撃及び破壊強度の測定
試験Aの目的は、鋼フライス切削ジャー(steel milling jar)中で加圧された後に、所与のグリットサイズ分布部分の、存続している粒子の画分を決定することであった。この試験により、粒子の破壊強度及び脆性の動的評価が可能になる。
【0063】
試験の前に、粒子の混合物を、まず本工業分野では標準的であるROTAP(登録商標)の振動ふるいで篩にかけて710/850μm画分を単離し、F24番粒子(グリット24)と表した。
【0064】
その後、単離したグリットサイズ分布画分に、磁気分離を用いて脱鉄操作を施し、粉砕による汚染の兆候を示す金属鉄を抽出した。
【0065】
粉末の化学分析のために前記粉末の粉砕に通常使用されるSodemi回転ミルを、この試験のために用いた。このミルを、8つのスプリング及び試験しようとする粒子を入れた中空円筒形ジャーの上に懸架し、パレット及び自由にスライドする環を作動させた。スチール製の円筒形切削ジャー(Z160 C 12等級)は以下の寸法を有していた:高さ50mm;内径139mm。パレットは、Z200C12等級のスチール製であり、且つ1546グラムの重量の中密の円筒(直径75mm;高さ45mm)であった。円筒環(内径/外径が95/120mm;高さ45mm)は同じくZ200C12等級のスチールであり、1464グラムの重量であった。
【0066】
かくして、試料に行われた試験Aは、以下の工程を含んでいた:
1. ジャーを圧縮空気で清浄化した。
2. 試験しようとする生成物のグリットサイズ分布画分の試料25グラムを、切削ジャーの壁面とパレットとの間に導入した。Sodemiミルを作動させ、その予定通りの速度(1400rpm)で4秒間に亘って回転させた。その後、切削生成物を切削ジャーからブラシ(No.50)を使用して取り出し、グリットサイズ分布について分析した。この生成物は、下記の篩Tiを用い、ROTAP(登録商標)スクリーナーの直径70mmの一連の篩で3分間に亘ってふるった。
【表1】

【0067】
「T1+T2」は、篩T1及びT2の、超過サイズ(篩を通過しない画分)の質量による合計を意味する。パーセンテージで表示される、衝撃及び破壊強度(試験A)は、試験試料のT1+T2の値を参照試料のT1+T2の値で除算したものに相当する。したがって、衝撃及び破壊強度は、試験Aで得られた値が高いほど良好となる。
【0068】
試験B:硬度の測定
710乃至850μmのサイズを有する溶融粒子を選択し、熱硬化性エポキシ樹脂で被覆した。これに次ぐ研削及び研磨によって、ビッカース硬度を測定することのできる研磨粒子が得られた。
【0069】
ビッカース硬度は、ビッカースダイヤモンドを取り付けたZwick 3212微小硬度計を用いて、押し込みによって測定される。硬度測定試験は、研磨粒子中に、136°の頂角を有する正四角錐の形状の圧子を、50グラムの荷重Fの下で15秒間押しつける工程、及び荷重を取り除いた後に粒子中に残る圧痕の平均対角線d(2本の対角線の圧痕の平均)を測定する工程を含む。ビッカース硬度は、F/S比に正比例するが、ここでSとは懸かる圧痕の正四角錐としての表面積である。ビッカース硬度は、研磨粒子上に無作為に押しつけられた10の圧痕についての10の測定値の平均に相当する。
【0070】
パーセンテージで表されるビッカース硬度(試験B)は、0.189×F/d2に相当し、ここで(d=d1+d2)/2であり、d1及びd2は、試験試料について形成される圧痕の2つの対角線を、参照試料の0.189×F/d2の値で除算したものに相当する。したがって、この硬さは、試験Bで得られる値が高いほど良好である。
【0071】
本発明による粒子は、好ましくは、試験Aにおいて95%より大であり、試験Bにおいて85%より大である結果を有する。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例2、6、15及び17は、25乃至65の(ZrO2+HfO2)/MgO質量比が、試験Aにおいて優れた結果を得るためには必要であることを示す。しかしながら、実施例1は、この条件が、ジルコニアの量が少な過ぎる場合には、試験Aにおいて優れた結果を得るために不十分であることを示す。
【0074】
実施例5、11、13、及び16は、試験Aにおける最大限の成績が望ましい場合にとりわけ好ましい。
【0075】
実施例5、8、11、12、及び14は、試験Bにおける最大限の成績が望ましい場合にとりわけ好ましい。実施例11、12、及び14の成績は、とりわけ顕著である。
【0076】
実施例11は、標的とする目的のために、衝撃強度と硬度との間の最も優れたバランスを示す。実施例12もまた、非常に優れたバランスをもたらす。
【0077】
実施例5もまた、低いジルコニア含量で、すなわち製造コストを低減しつつ、非常に優れた性能を示すことから、非常に有利である。同様の理由で、参照実施例と実質的に同等の性能を示す実施例3は、有利な代替例を構成する。
【0078】
X線回折及びマイクロプローブによる分析から、本発明の粒子について、マグネシウムの大部分がアルミナ−ジルコニア共晶混合物相中に見られ、残量分のアルミナがアルファ−アルミナの形態(コランダム)で見られ;スピネル相(アルミナと酸化マグネシウムとの固溶液)が見られる実施例2及び17とは異なり、スピネル相は見られないかまたは痕跡の形態に過ぎないことが明かである。
【0079】
以上により明確である通り、本発明の粒子によれば、低いジルコニア含量で、すなわち、より低い製造コストをもってしても、従来技術による粒子と同等またはより優れた特性を得ることが可能になる。
【0080】
むろん、本発明は、例示のための実施例として記載される実施態様に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融粒子であって、酸化物に基づく質量パーセントとして、以下:
Al2O3:100%とする残量
ZrO2+HfO2:16乃至24%
MgO:(ZrO2+HfO2)/MgOの質量比が25乃至65となる量
別の種:0乃至2%
の化学分析値を有する溶融粒子。
【請求項2】
(ZrO2+HfO2)/MgOの質量比が、55未満である、請求項1に記載の溶融粒子。
【請求項3】
(ZrO2+HfO2)/MgOの質量比が、50未満である、請求項2に記載の溶融粒子。
【請求項4】
(ZrO2+HfO2)/MgOの質量比が、28より大である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の溶融粒子。
【請求項5】
(ZrO2+HfO2)/MgOの質量比が、30より大である、請求項4に記載の溶融粒子。
【請求項6】
(ZrO2+HfO2)が、酸化物に基づく質量パーセントとして、22.5%未満である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の溶融粒子。
【請求項7】
(ZrO2+HfO2)が、酸化物に基づく質量パーセントとして、20.0%未満である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の溶融粒子。
【請求項8】
(ZrO2+HfO2)が、酸化物に基づく質量パーセントとして、17.0%より大である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の溶融粒子。
【請求項9】
正方晶形に安定化されたジルコニアが、ジルコニアの30乃至70%を占める、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の溶融粒子。
【請求項10】
150μmより大であり、且つ3.35mm未満であるサイズを有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の溶融粒子。
【請求項11】
バインダーによって結合し、支持体上に結合または付着した粒子を含む研磨用具であって、前記粒子の少なくとも一部が請求項1乃至10のいずれか一項に記載のものである、研磨用具。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の粒子の、研磨媒体としての使用。

【公表番号】特表2012−505086(P2012−505086A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530622(P2011−530622)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054444
【国際公開番号】WO2010/041223
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(506426269)サン−ゴベン・セントル・ドゥ・レシェルシェ・エ・デチュード・ユーロペアン (42)
【Fターム(参考)】