説明

研磨用バフ及び研磨方法

【課題】経験の浅い作業者であっても塗装面を良好に磨くことができ、更にその取り扱いが簡易な研磨用バフを提供すること。
【解決手段】 回転方向における軸方向一端面を研磨面とし、他端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面とした研磨部材と、弾性を有すると共に、軸方向両端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面としたクッション部材と、軸方向両端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面とし、取付パッドとクッション部材の間およびクッション部材と研磨部材との間の少なくとも何れかの部位に配置することのできる、1枚又は2枚以上のプレート部材とを用いて形成されたことを特徴とする研磨用バフ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボディー等、塗装表面を研磨するために使用される研磨用バフに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボデー塗装の艶出し、塗装の剥離作業、パテの成型研磨、ワックス掛け、その他各種コーティングの仕上げ作業等に際しては、研磨用バフを取り付けた電動式又は空気作動式の研磨具(ポリッシャー)が使用されている。
【0003】
この研磨用バフは、研磨機の回転駆動軸に取り付けられたパッド本体に着脱自在に取り付けられるもので、実作業においては、羊毛バフやスポンジバフ等からなる数種類のものを予め用意しておき、作業内容に合わせてこれらの研磨用バフを取替えながら、作業を進めるのが通例である。
【0004】
そして、この研磨用バフは、三次元形状を有するパネルを研磨する際の不都合をなくすために、それ自体が一定の弾力性を有するものとして形成されている。即ち、仮に研磨用バフが何らの弾性をも有しないとすると、突起している部分を研磨する場合には、突起している部分に過大な研磨力が作用し、パネルや塗膜を損傷させてしまうことから、そのような過大な研磨力を分散乃至吸収するために、適宜弾力性を有するものとして形成されている(特許文献1:実用新案登録第3098705号公報参照)。
【0005】
また、上記特許文献1では、バフとバフ取付台との間にバフ中間取付台を介在させることが提案されており、バフ及びバフ中間取付台の位置合わせに際しては、それぞれに形成されている中央の穴を目印として使用することが記載されている。併しながら、このバフ中間取付台はバフとバフ取付台との間の距離を確保する為のものであり、また位置合わせに使用される穴は、手に持ったバフ(又はバフ中間取付台)の穴から下を覗き込み、それを重ねるものに形成された穴を目視しながら位置合わせを行う、云わば目印として使用されているに過ぎない。
【0006】
更に特許文献2(実用新案登録第3107068号公報)では、クッション性を有するウレタン等からなる中間取付パットに対して、一面を研磨面としたバフ部材を取り付けた自動車ボディ用研磨バフが提案されているが、この文献はバフ部材に複数の貫通孔を穿孔して水の飛散を少なくする等の課題を解決するものであり、即ち湿式研磨用のバフの改良に関するものである。
【特許文献1】実用新案登録第3098705号公報
【特許文献2】実用新案登録第3107068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記研磨用バフを使用して塗装面を磨く場合には、先ず当該バフを回転型ポリッシャーに設置し、作業者は、回転型ポリッシャーを保持した状態で、バフ(磨き具)を塗装面に押し当てながら磨く部位を順番に移動させて行く方法が採られる。しかしながら、こうした回転型ポリッシャーを使用する場合には、熟練を有する作業者でなければ塗装面を良好に磨くことはできず、経験が浅い作業者では綺麗に磨くことができないばかりか、磨き面に円形状の磨き痕が残る場合がある。
【0008】
依って本発明は、第一に、経験の浅い作業者であっても塗装面を良好に磨くことができ、更にその取り扱いが簡易な研磨用バフを提供することを課題とする。
【0009】
また、経験の浅い作業者でも塗装面に磨き痕を付けないようにするには、研磨用バフを含む研磨部位に十分な弾性を付与して、回転型ポリッシャーを過度の力で押し付けた場合でも余分な力を分散させることが考えられるが、一方で、そのような弾力性が付与された研磨用バフでは、熟練者が作業を行う場合、意図したとおりの力を加えるのが困難になり却って煩わしいものとなる。
【0010】
そこで本発明は、第二に、任意且つ容易に弾力性を調整することのできる研磨用バフ、および当該研磨用バフに使用することのできるプレート部材を提供することを課題とする。
【0011】
更に、この課題に関連し、弾力性の異なる様々なバフやパットを準備する必要をなくした研磨用バフ、および当該研磨用バフに使用することのできるプレート部材を提供することを第三の課題とする。
【0012】
また研磨用バフはポリッシャーによって高速回転されることから、その回転の中心が何れかの層において遍心していると作動時に振動発生の原因となるため、研磨体取付け時芯合わせを慎重に行わなければならない。その為、複数の部材を積層させて研磨用バフを形成する場合でも、従前のように各層に形成された中央の開口を目視によって一致させる方法を採用するならば、その位置合わせが困難になり、多大な時間を必要としてしまう。
【0013】
そこで本発明は、第四に、複数の部材を積層させて研磨用バフを形成する場合でも、簡易且つ確実に各部材の回転中心を一致させることのできる部材及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、所定の弾力性を有するプレート部材を使用し、これを設置又は取り外すことによって、任意に全体の弾力性を変化させることのできる研磨用バフとするものである。
【0015】
即ち本発明に係る研磨用バフは、研磨具の回転軸に固定される取付パッドに対して着脱自在に取り付けられ、且つ当該研磨具の回転軸と共に回転する研磨用バフであって、当該研磨用バフは、回転方向における軸方向一端面を研磨面とし、他端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面とした研磨部材と、弾性を有すると共に、軸方向両端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面としたクッション部材と、軸方向両端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面とし、取付パッドとクッション部材の間およびクッション部材と研磨部材との間の少なくとも何れかの部位に配置することのできる、1枚又は2枚以上のプレート部材とを用いて形成されたことを特徴とする。
【0016】
上記研磨用バフは、研磨部材とクッション部材との間にプレート部材を着脱自在に介在させるか、或いはクッション部材における研磨部材が取り付けられた面の反対側の面にプレート部材を着脱自在に設置することができように構成されており、当該プレート部材の取り付け又は取り外しにより、当該研磨用バフ全体の曲げ弾性率を変化させるものである。依って、この研磨用バフに使用されるプレート部材としては、当該作用効果を奏し得る程度の曲げ弾性率を有するものが望ましく、具体的には、当該プレート部材を設置することにより、研磨用バフ全体の曲げ弾性率を1.5倍以上、望ましくは5倍以上、更に望ましくは10倍以上、特に望ましくは20倍以上に変化させることのできるものが好適に使用される。かかる研磨用バフ全体の曲げ弾性率は、ISO 178に規定される曲げ弾性率の測定方法に準じた方法によって測定することができ、より具体的には、プレート部材の有無だけが異なる2つの研磨用バフから、それぞれ同じ大きさの試験片(研磨用バフそのものを含む)を作成し、この試験片に対して、中央の圧子の変位に伴う強力を計測し、 変位と強力の直線関係が成立する領域で求めた弾性率として測定することができる。
【0017】
またこのプレート部材は、クッション部材の曲げ弾性率の0.5倍以上、望ましくは5倍以上、更に望ましくは10倍以上、特に望ましくは20倍以上の曲げ弾性率を有するものとして形成されることが望ましい。
【0018】
例えばこのプレート部材は、樹脂製の円形プレート本体と、その上下面に接着された面ファスナーとで構成することができ、かかる構成のプレート部材では、円形プレート本体として、JIS K 7215に準拠して測定される硬度(ショアD)が30〜80、更に望ましくは40〜75、特に望ましくは45〜70程度の樹脂を用いて、厚さ0.5mm〜10mm、更に0.5mm〜5mm、特に0.5mm〜2mm程度に形成することができる。
【0019】
更にこのプレート部材は、専ら研磨用バフ全体の曲げに対する弾性を変化させることを目的として設置されるものであることから、研磨時における作業性を考慮して、0.5mm〜10mm、更に0.5mm〜6mm、特に0.5mm〜4mmの厚さに形成されている事が望ましい。
【0020】
そして、上記プレート部材は、クッション部材と研磨部材との間に配置され得るものとして形成され、その大きさは、クッション部材における研磨部材側端面よりも小径に形成されている事が望ましい。より具体的には、当該クッション部材における研磨部材側端面よりも、1mm〜20mm、更に1mm〜10mm、特に2mm〜8mm程度小さい直径で形成されることが望ましい。研磨部材側端面よりも20mmを超えて径を小さく形成すると、クッション部材の表面との間に段差が生じ、その段差の角部に研磨時の力が集中して、結果として研磨対象物に磨き痕を生じさせてしまう虞があるからである。
【0021】
更にプレート部材がクッション部材と研磨部材との間に配置される場合には、研磨部材は、当該プレート部材の側面を覆う大きさに形成されている事が望ましい。作業時においてプレート部材が露出してしまい、研磨対象物に傷を付けてしまうような事態を未然に回避するためである。
【0022】
なお、上記研磨用バフを構成する研磨部材、クッション部材、及びプレート部材のそれぞれに形成される係着面は、それぞれ重なり合う部材同士を相互に着脱自在に係着させるものであればよく、例えば面ファスナーや、再貼着可能な接着剤又は粘着剤など各種のものを使用することができる。この内、面ファスナーを使用する場合には、相互に対向する面同士が係着可能なように対応していれば、何れが雄面(フック面)でも雌面(ループ面)でもよい。かかる面ファスナーの種類としては、例えば、マジックテープ(登録商標)、フリーマジック(登録商標)、マジロック(登録商標)、マジックハード(登録商標)、マルチロック(登録商標)等、種々の種類の面ファスナーを用いることができる。マジックテープ(登録商標)は、多数の微小な鉤状フックを有するフック面と多数の微小なループを有するループ面とを係着する面ファスナーであり、雄面(フック面)と雌面(ループ面)とで組み合わせて使用される。一方、同一面でフック面とループ面とを兼用するフリーマジック(登録商標)や、多数の微小なマッシュルーム形状の突起で係着するマルチロック(登録商標)等であれば、マジックテープ(登録商標)の場合と異なり、フック面(雄面)とループ面(雌面)とを区別する必要はない。
【0023】
上記本発明に係る研磨用バフ部材は、研磨具の回転軸に固定される取付パッドに対して着脱自在に取り付けて使用することができ、依って本発明により、回転式研磨具に対して上記本発明に係る研磨用バフを取り付けて形成される、研磨装置も提供される。この研磨装置を構成する研磨具は、上記の通り回転軸に固定される取付パッドを備えており、当該研磨用バフ部材は、この取付パッドに対して、面ファスナーなどにより着脱自在に取り付けられる。かかる取付パッドとしては、従来、研磨作業時において弾性変形を行わない程度の硬さを有する硬質の取付パッドや、研磨作業時において弾性変形を行う程度の柔軟性を有する軟質の取付パッドが提供されているが、本発明においては、特に軟質の取付パッドが好適に使用される。
【0024】
また本発明では、更に前記課題を解決するために、研磨具の回転軸に固定される取付パッドに取り付けられる研磨用バフに使用されるプレート部材であって、研磨用バフの何れかの部位に対して着脱自在な係着面を備え、研磨用バフに設置された状態において、当該研磨用バフの曲げ弾性率を変化させることを特徴とする、研磨用バフに使用されるプレート部材を提供する。
【0025】
このプレート部材も、前記研磨用バフを構成するプレート部材と同じく、研磨用バフの曲げに対する弾性を変化させるために使用されるものであり、よって、このプレート部材は、それが取り付けられる研磨用バフよりも大きい曲げ弾性率を有するものとして形成されることが望ましい。
【0026】
上記本発明においては、適度な曲げ弾性率を有するプレート部材を使用することから、作業者の経験に応じて、任意に弾性を調整することのできる研磨用バフが提供されており、経験の浅い作業者においては、バフ全体の弾性を高める為(弾性率を減じる為)にプレート部材を取り外し、熟練の作業者においては、意図した力で研磨できるようにパフ全体の弾性を減じる為(弾性率を増加させる為)に、当該プレート部材を設置して使用することができる。
【0027】
依って本発明により、研磨用バフが取り付けられた回転式研磨具により研磨対象物の表面を研磨する研磨方法であって、当該研磨方法は、研磨用バフの弾性率を調整する工程を含み、当該研磨用バフの弾性率の調整は、研磨用バフに対して、着脱自在なプレート部材を取り付け又は取り外すことによって行われることを特徴とする研磨方法が提供される。
【0028】
更に本発明では、上記のように、少なくとも研磨部材とクッション部材とを着脱自在に形成してなる研磨用バフを提供するものであることから、両部材の接合を、その回転中心を一致させて、容易且つ確実に行うことのできる研磨用バフの取り付け方法を提供する。
【0029】
即ち 研磨具の回転軸に固定される取付パッドに対する研磨用バフの取付方法であって、当該研磨用バフは、回転軸の回転方向における軸方向一端面を研磨面とし、他端面を係着対象部材に対して着脱自在な係着面とすると共に、その回転中心に貫通孔が形成されている研磨部材と、弾性を有すると共に、軸方向両端面を係着対象部材に対して着脱自在な係着面とし、その回転中心に貫通孔が形成されているクッション部材と、を含んで構成されており、取付パッドに対する研磨用バフの設置工程は、前記研磨部材とクッション部材との位置合わせ工程を含み、当該位置合わせ工程は、研磨部材とクッション部材のそれぞれに形成された貫通孔に、当該貫通孔と略同径の取付具を通して両部材の中心を一致させることを特徴とする研磨用バフの取付方法である。
【0030】
この方法によれば、研磨部材とクッション部材の回転中心に形成されている貫通孔に、当該貫通孔と同径の筒状又は柱状に形成されている取付具を通すだけで、簡単に両部材の回転中心を一致させることができる。この取付具は、研磨部材とクッション部材とを接合した後に引き抜いても良く、更に接合して形成した研磨用バフを研磨具の取付パッドに取り付けた後に引き抜いても良い。
【0031】
そしてこの取付方法は、更に研磨用バフが、回転軸の軸方向両端面を係着対象部材に対して着脱自在な係着面とし、取付パッドとクッション部材の間およびクッション部材と研磨部材との間の少なくとも何れかの部位に配置可能であって、更にその回転中心に貫通孔が形成されているプレート部材とを含んで構成されている場合でも実施することができ、この場合には、前記位置合わせ工程において、研磨部材とプレート部材とクッション部材のそれぞれに形成された貫通孔に、当該貫通孔と略同径の取付具を通して全ての部材の中心を一致させることができる。
【0032】
依って本発明では、上記取付方法を実施するための取付具として、研磨具の回転軸に固定される取付パッドに対して研磨用バフを取り付ける際に使用する取付具であって、相互に着脱自在として層状に組み合わされた複数の部材からなる研磨用バフの回転中心に形成された貫通孔と略同径の外径を有する、研磨用バフの取付具を提供する。
【0033】
かかる取付具は、特にその材質を問わず形成することができ、金属の他、樹脂などを用いて形成することができる。またその形状は、少なくとも軸方向一端部に向かって、研磨具を構成する各部材の貫通孔と同径の外形を有する形状(円柱状又は円筒状など)か、或いは当該貫通孔と同径に形成された領域から、軸方向一端部に向かって窄んだ形状(円錐台形状など)を有するように形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、任意に弾性係数を変化させることのできる研磨用バフ、及び研磨用バフに使用されるプレート部材が提供されることから、経験の浅い作業者であっても塗装面を良好に磨くことができ、更にその取り扱いが簡易な研磨用バフが提供される。また、このバフは、単にプレート部材を着脱するだけで、その弾性(即ち軟らかさ)を調整できることから、任意且つ容易に弾力性を調整することができ、更に弾力性の異なる様々なバフやパットを準備する必要をなくした研磨用バフ、および当該研磨用バフに使用することのできるプレート部材が提供される。
【0035】
そして、本発明のように、相互に着脱自在として層状に組み合わされた複数の部材からなる研磨用バフであっても、その回転中心に設けられた貫通孔に取付具をさし通す事により、簡易且つ確実に各部材の回転中心を一致させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面に基づいて本発明に係る研磨用バフ1、プレート部材20及び取付具50、並びにその使用方法を具体的に説明する。
【0037】
図1は、本実施の形態に係る研磨用バフ1の分解図であり、図2は、当該研磨用バフ1の軸方向断面図であり、図3はこの研磨用バフ1を研摩具に取り付ける状態を示す略図であり、図4はプレート部材20の有無による研磨作業時における研磨用バフ1の研磨面11を示す略図であり、図5はプレート部材20の有無によるバフの曲げ弾性率の比の求め方を示す略図である。
【0038】
先ず、図1〜3を参照しながら、本実施の形態に係る研磨用バフ1の構成と、その使用方法を説明する。この実施の形態に示す研磨用バフ1は、図1に示すように研磨部材10、プレート部材20、クッション部材30をこの順で積層してなり、研磨部材10の表面(研磨時において、研磨対象物Mを研磨する面)には、従前のバフ部材(羊毛バフやスポンジバフなど)の研磨面11と同じ様に形成した研磨面11を形成し、その裏面には、当該研磨部材10が係着するプレート部材20(係着対象部材)に対して着脱自在に係着する面ファスナーfを取り付けて係着面12を形成している。
【0039】
またプレート部材20は、その研磨部材10側の面には、当該研磨部材10の係着面と接合する面ファスナーfを取り付け、その裏側(クッション部材30側の面)には、このプレート部材20が接合乃至係着するクッション部材30の係着面に設けられた面ファスナーfと相互に接合可能な面ファスナーfを設けている。そして、このプレート部材20が接合乃至係着するクッション部材30の、プレート部材20が設置されるのとは反対側の面には、研磨具60の回転軸に設置される取付パッド40の面ファスナーfと相互に接合乃至係着することのできる面ファスナーfを設けている。
【0040】
以上のように構成された各部材は、それぞれが面ファスナーfによって着脱自在に形成されており、且つこの構成においては、プレート部材20を取り外した場合においても、研磨部材10の係着面がクッション部材30の係着面に接合乃至係着し得るように形成されている。従って、このように形成された研磨用バフ1においては、単にプレート部材20を使用するか或いは取り外すかにより、研磨用バフ1における弾性、即ち軟らかさを任意に調整することができ、依って、作業者における熟練度や、研磨を行う対象物の材質に応じて、最適な硬さ(又は軟らかさ)の研磨用バフ1部材とすることができる。また、このプレート部材の設置枚数を調整することにより、最適な硬さの研磨用バフとすることもできる。即ち、2枚以上のプレート部材を任意に組み合わせる態様である。その際に使用される各プレート部材は、相互に異なる曲げ弾性率を有するものとすることもできる。
【0041】
そして、各部材の大きさは、プレート部材20を研磨部材10とクッション部材30との間に介在させた研磨用バフ1を使用する場合でも、磨き痕を生じさせることのないように、以下の2つの要件を備えて形成されている。
(1)プレート部材20の大きさは、クッション部材30におけるプレート部材20側の係着面と同じか、その外縁よりも1mm〜5mm程内側に存在する大きさに形成される。
(2)研磨部材10は、クッション部材30に接合乃至係着しているプレート部材20の側面を覆うことのできる大きさに形成されている。
【0042】
特に、上記(1)の要件を満たすことにより、車体パネル等の研磨対象物Mとの接触面に生じる段差への力の集中による悪影響を解消することができ、また(2)の要件を備えることにより、プレート部材20の周縁で研磨対象物Mに傷を付けてしまう虞をなくす事ができる。
【0043】
上記、本実施の形態で使用されるプレート部材20は、図6(A)及び(B)に示す如く、約1mmの厚さに形成されたプラスチック製の円形プレート21の上下面に、夫々樹脂製の面ファスナーFを接着剤22で接合して形成されたものである。なお、図6(A)は、当該プレート部材20の分解斜視図を、(B)は厚さ方向断面図を示している。このプレート部材の製造に際しては、JIS K 7215に準拠して測定されたショア硬度が42Dのプラスチック材料を用いて円形プレート21を形成している。
【0044】
また研磨用バフ1の有無によるバフ全体の曲げ弾性率の比は、図5に示すように、プレート部材20の有無だけが異なるバフ同士を一定の間隔(望ましくは、約12cm)で保持すると共に、一定の変位を示すまでに加えた力(重力方向の力)を比較することによって算定することができる。即ち、プレート部材20を配置した状態における研磨用バフ1部材をAだけ変位させるのに加えた力をXとし、一方でプレート部材20を配置ていない研磨用バフ1部材を同じくAだけ変位させるのに加えた力をYとすると、「X=aY(a=1.5以上)」の関係式を成り立たせるような柔軟性を有するプレート部材20を使用する事ができる。
【0045】
このようなプレート部材の柔軟性(曲げ弾性)の調整は、プレート部材の心材(プレート本体21)を構成するプラスチック、金属などのプレートの材質や厚さを調整する他、面ファスナーなどの係着用部材を取り付ける(望ましくは貼り付ける)場合の接着剤の硬さ(硬化した接着剤の硬さ)により調整することもできる。接着剤によりプレート部材の柔軟性(曲げ弾性)を調整する場合には、硬化時の硬さを考慮した上で、最適な接着剤が選択される。
【0046】
また、本実施の形態におけるクッション部材30は、市販されているバフが備えるのと同程度の弾力性を有するものを使用することができる。
【0047】
そして本実施の形態に係る研磨用バフ1は、上記のように複数の部材を積層させて形成されており、実際の使用に際しては、安定した高速回転を行うことができるように、各部材の回転中心を一致させる必要がある。
【0048】
そこでこの実施の形態では、図3に示すように、各部材の回転中心に形成されている放熱のための貫通孔Hに、その貫通孔Hと同じ外形を有する筒状の取付具50を刺し通した上で各部材同士を接合乃至係着することにより、簡易に各部材の回転中心を一致させている。このように各部材の回転中心が一致している研磨用バフ1は、更に取付具50を、研磨具60の回転軸と同軸に配置しながら、当該バフを取付パッド40に係着することにより、高速回転してもブレることのない研磨装置70となる。
【0049】
また、この研磨用バフ1が取り付けられる取付パッド40としては、望ましくは適宜弾性を有するものが使用され、例えば硬質ゴムを用いて形成されたパッドや、可塑性樹脂を用いて形成されたパッドなどを使用することができる。
【0050】
次に、図4を参照しながら、本実施の形態に係る研磨用バフ1の作用効果及び使用方法を具体的に説明する。
【0051】
図4(A)は、プレート部材20を介在させることにより一定の硬さに形成した研磨用バフ1により研磨対象面を研磨している状態を示し、図4(B)は、プレート部材20を取り外して、十分な弾力性を有するものとして形成した研磨用バフ1により研磨対象面を研磨している状態を示している。この図4(A)に示すように、プレート部材20を設置した研磨用バフ1においては、研磨対象面の凹凸に追従することなく、突起している部分だけを効果的に研磨し、最終的に平滑な面を形成することができる。一方で、図4(B)に示すように、十分な弾力性を有する柔らかい研磨用バフ1として形成した場合には、研磨対象面の凹凸に追従して研磨することから、全体を均等に研磨することができる。
【0052】
また、研磨対象面が自動車パネルであって、研磨作業がその磨き上げの為に行われる場合には、塗装面全体を満遍なく、均等な力で研磨することが望ましく、そのように研磨することにより、塗装面に磨き痕を生じさせることなく、きれいに仕上げることができる。即ち、経験の少ない作業者がこのような凹凸のある塗装面(研磨対象面M)を研磨しようとしても、曲面と平面とにおける力加減の調整具合を熟知していないことから、常に同じ力を加えてポリッシャー(研磨具60)を押し付けてしまう。併しながら、プレート部材20を取り除いたバフは、クッション部材30における弾力性で凸部に作用する余分な力を効果的に吸収し、分散させることから、磨き痕を生じさせることなく、研磨作業を行うことができる。一方で、曲面と平面とにおける力加減の調整具合を熟知している作業者では、プレート部材20を介在させることにより、思い通りの力を加えて、研磨作業を効率的に行うことができる。
【0053】
依って、本発明に係る研磨用バフは、その作業目的や、作業者の熟練度、或いは研磨対象となる材質の硬さに応じて、任意且つ簡易に、パフ自体の硬さを調整することのできる研磨用バフが実現している。しかも、この研磨用バフの使用に際しては、平板円形に形成されているプレート部材さえ準備すればよいことから、数多くのバフを準備する必要をなくし、作業スペースの有効利用を図ることができると共に、研磨作業用工具一式の準備費用を低減させるという費用的な効果も伴っている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態に係る研磨用バフの分解図
【図2】研磨用バフの軸方向断面図
【図3】研磨用バフを研摩具に取り付ける状態を示す略図
【図4】プレート部材の有無による研磨作業時における研磨用バフの研磨面を示す略図
【図5】プレート部材の有無によるバフの曲げ弾性率の比の求め方を示す略図
【図6】プレート部材を示しており、(A)は分解斜視図、(B)は厚さ方向断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 研磨用バフ
10 研磨部材
11 研磨面
12 係着面
20 プレート部材
21 プレート本体
30 クッション部材
40 取付パッド
50 取付具
60 研磨具
70 研磨装置
H 貫通孔
M 研磨対象物
f 面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨具の回転軸に固定される取付パッドに対して着脱自在に取り付けられ、且つ当該研磨具の回転軸と共に回転する研磨用バフであって、当該研磨用バフは、
回転方向における軸方向一端面を研磨面とし、他端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面とした研磨部材と、
弾性を有すると共に、軸方向両端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面としたクッション部材と、
軸方向両端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面とし、取付パッドとクッション部材の間およびクッション部材と研磨部材との間の少なくとも何れかの部位に配置することのできる、1枚又は2枚以上のプレート部材とを用いて形成されたことを特徴とする研磨用バフ。
【請求項2】
前記プレート部材は、0.5mm〜10mmの厚さを有し、且つそれを配置することにより研磨用バフ全体の曲げ弾性率を1.5倍以上にする弾性率で形成されている、請求項1に記載の研磨用バフ。
【請求項3】
前記プレート部材は、クッション部材と研磨部材との間に配置され得るように形成され、平板円形であって、クッション部材における研磨部材側端面よりも小径に形成されている請求項1又は2に記載の研磨用バフ。
【請求項4】
前記プレート部材は、クッション部材と研磨部材との間に配置され得るように形成され、
前記研磨部材は、プレート部材の側面を覆う大きさに形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の研磨用バフ。
【請求項5】
研磨具の回転軸に固定される取付パッドに取り付けられる研磨用バフに使用されるプレート部材であって、
研磨用バフの何れかの部位に対して着脱自在な係着面を備え、研磨用バフに設置された状態において、当該研磨用バフの曲げ弾性率を変化させることを特徴とする、研磨用バフに使用されるプレート部材。
【請求項6】
前記プレート部材は、それが取り付けられる研磨用バフよりも大きい曲げ弾性率を有する請求項5に記載のプレート部材。
【請求項7】
研磨具の回転軸に固定される取付パッドに対する研磨用バフの取付方法であって、
当該研磨用バフは、回転軸の回転方向における軸方向一端面を研磨面とし、他端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面として、その回転中心に貫通孔が形成されている研磨部材と、
弾性を有すると共に、軸方向両端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面として、その回転中心に貫通孔が形成されているクッション部材と、を含んで構成されており、
取付パッドに対する研磨用バフの設置工程は、前記研磨部材とクッション部材との位置合わせ工程を含み、
当該位置合わせ工程は、研磨部材とクッション部材のそれぞれに形成された貫通孔に、当該貫通孔と略同径の取付具を通して両部材の中心を一致させることを特徴とする研磨用バフの取付方法。
【請求項8】
前記研磨用バフは、更に回転軸の軸方向両端面を係着対象部材に対して着脱自在に係着する係着面とし、取付パッドとクッション部材の間およびクッション部材と研磨部材との間の少なくとも何れかの部位に配置可能であって、更にその回転中心に貫通孔が形成されているプレート部材とを含んで構成されており、
前記位置合わせ工程は、研磨部材とプレート部材とクッション部材のそれぞれに形成された貫通孔に、当該貫通孔と略同径の取付具を通して全ての部材の中心を一致させる、請求項7に記載の研磨用バフの取付方法。
【請求項9】
研磨具の回転軸に固定される取付パッドに対して研磨用バフを取り付ける際に使用する取付具であって、
当該取付具は、相互に着脱自在として層状に組み合わされた複数の部材からなる研磨用バフの回転中心に形成された貫通孔と略同径の外径を有することを特徴とする、研磨用バフの取付具。
【請求項10】
研磨用バフが取り付けられた回転式研磨具により研磨対象物の表面を研磨する研磨方法であって、
当該研磨方法は、研磨用バフの弾性率を調整する工程を含み、
当該研磨用バフの弾性率の調整は、研磨用バフに対して、着脱自在なプレート部材を取り付け又は取り外すことによって行われることを特徴とする研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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