説明

研磨装置

【課題】鋼板の走行により発生する流れや、浴中ロールの回転により発生する流れによりブレード部の底面がサポートロールの周面から浮くことを防ぐ研磨装置を提供する。
【解決手段】めっき浴槽内2に導いた帯状体Sを方向転換させるシンクロール3と、方向転換された帯状体Sを挟むサポートロール4,5と研磨装置20,30とがめっき浴槽2に設けられている。研磨装置30は、一方が固定されたアーム部32と、アーム部32の他方にヒンジ部34を介して回動可能に連結され、サポートロール5の周面に当接するブレード部31とを有する。ブレード部31は、本体部と錘部100とを有する。本体部には、サポートロール5の周面に当接する底面に対して傾斜した傾斜面が形成されている。傾斜面は、ブレード部31の底面をサポートロール5の周面に押圧させる錘部100を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属めっき浴中のロールに付着したドロス等の付着物を除去する研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、溶融金属を帯状体に連続してめっき加工する方法としては、例えば、図6に示す連続溶融金属めっき装置を用いる方法が挙げられる(特許文献1参照)。特許文献1に開示された連続溶融金属めっき装置1は、溶融金属として溶融亜鉛Zを貯留しためっき浴槽2と、このめっき浴槽2内に設置された浴中ロールとして、シンクロール3、及び一対のサポートロール4,5とを有する。一対のサポートロール4,5は、シンクロール3の上方において、それぞれの軸の高さを相互にずらして配置されている。シンクロール3、及び一対のサポートロール4,5は、めっき浴槽2の上方に架設されたフレーム(図示せず)に固定されている。
【0003】
めっき浴槽2中に斜め下方に導入された帯状体(鋼帯)Sは、シンクロール3によって上方に方向転換され、一対のサポートロール4,5の間に挟み込まれて更に上方に誘導される。つまり、一対のサポートロール4,5が、帯状体Sの表裏面を挟み、その反りを抑制するのである。めっき浴槽2の外部で、かつ一対のサポートロール4,5の上方には、溶融亜鉛Zの付着量を制御するガスワイピングノズル6が設置されている。上方に誘導された帯状体Sは、ガスワイピングノズル6からガスが吹き付けられることによって、めっき浴槽2で付着した溶融亜鉛Zの付着量が制御される。ガスワイピング後の帯状体Sは、必要に応じて合金化炉7と呼ばれる炉で加熱され、めっき層を合金化して、合金化溶融金属めっき鋼板にされる。
【0004】
ここで、一対のサポートロール4,5のうち、少なくともいずれか一方は、帯状体Sの原板形状、板厚の変化による溶融亜鉛Zの付着量分布、及び板振動を最適化するために帯状体Sの表裏面における法線方向(帯状体Sの厚さ方向)へ位置を変化(以下、オフセット移動と呼ぶ)させることができる。
このような構成の連続溶融金属めっき装置を用いて、帯状体Sに溶融亜鉛Zをめっきする工程を連続して長時間行うと、めっき浴の一部が酸化してドロスと呼ばれる不純物が生成され、めっき浴中に懸濁するようになる。このドロスが各浴中ロールの周面に付着すると、各浴中ロールに接触する帯状体Sに転写され、製造された溶融金属めっき鋼板に押し疵という欠陥を生じさせる。
【0005】
そこで、各浴中ロールの周面に付着したドロスを除去する研磨装置が連続溶融金属めっき装置に設けられる。
図7は、特許文献1に開示された研磨装置の構成を示す概略図である。図7(a)及び(b)に示すように、研磨装置116は、ワイパブレード部110と、ワイパブレード部110を支持する支持部材114と、支持部材114をサポートロール4の軸方向へ往復移動(以下、オシレート移動と呼ぶ)させる駆動手段115とを有する。
【0006】
研磨装置116は、サポートロール4の胴長よりも小さい幅のワイパブレード部110の先端部を、サポートロール4の周面に当接させながらオシレート移動させることによって付着物の除去を行う。
ここで、連続溶融金属めっき装置を用いて帯状体Sに溶融亜鉛Zをめっきする工程では、帯状体Sの板形状及び板振動が刻々と変化するため、これらが変化するたびにサポートロール4,5のいずれか一方をオフセット移動させる必要がある。また、研磨装置116に設けられたワイパブレード部110も鋼板表面に押し疵を発生させないために、サポートロール4の周面に対して、常時オシレート移動させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−301251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の研磨装置では、鋼板が高速になるに従い、鋼板の走行により発生する流れや、浴中ロールの回転により発生する流れによりブレード部の底面がサポートロールの周面から浮いてしまうことがあった。その結果、サポートロールの周面に適切に当接せず、十分な研磨力が得られないことがあった。このような現象は、浴面深く位置するサポートロールに設置されたブレード部では起こりにくく、浴面近くに位置するサポートロールに設置されたブレード部に起こり易い。これは、浴面深く位置するサポートロールに設置されたブレード部は、サポートロールの周面に対して下向きに当接しており、ブレード部の底面がサポートロールの周面から浮きにくいからである。
【0009】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、鋼板の走行により発生する流れや、浴中ロールの回転により発生する流れにより、ブレード部の底面がサポートロールの周面から浮くことを防ぐ研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明のうち請求項1に係る研磨装置は、めっき浴槽内のめっき液に浸漬されたロールであって、帯状体を案内するロール、及び帯状体の厚さ方向に進退可能なロールの周面に当接して前記ロールの周面に付着した付着物を除去するブレード部を備えた研磨装置において、
前記ブレード部を、略上下方向に延びるアーム部の下端部に対して、ヒンジ部を介して少なくとも上下方向に回動可能に支持してなり、
前記ブレード部が、前記ロールの周面に当接する底面に対して傾斜した傾斜面を有する本体部と、前記傾斜面に設けられ、前記ブレード部の底面を前記ロールの周面に押圧させる錘部とを有することを特徴としている。
【0011】
また、本発明のうち請求項2に係る研磨装置は、請求項1に係る研磨装置において、前記錘部が、前記傾斜面に対して前記ブレード部の回動方向に50°〜150°をなす付勢面を有し、所定の基準位置から前記本体部の先端部までの突出寸法をA、前記基準位置から前記錘部の先端部までの突出寸法をH、前記本体部の厚み寸法をL、前記錘部の厚み寸法をIとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たすことを特徴としている。
0.3≦H/A≦1.3・・・・・式(1)
1/4≦I/L≦3/4・・・・・式(2)
【発明の効果】
【0012】
本発明のうち請求項1に係る研磨装置によれば、錘部の重みでブレード部自体をロールの周面に押し付けることができる。したがって、鋼板の走行により発生するめっき液の流れや、浴中ロールの回転により発生するめっき液の流れによりブレード部の底面がサポートロールの周面から浮くことを防ぎ、研磨力の低下を防ぐことができる。
本発明のうち請求項2に係る研磨装置によれば、前記錘部が、前記傾斜面に対して前記ブレード部の回動方向に50°〜150°をなす付勢面を有し、かつ上記式(1)及び式(2)を満たすことにより、錘部に形成された付勢面に誘導されためっき液の流れがブレード部の斜面を前記ロールの周面方向に付勢する。したがって、ブレード部の底面をサポートロールの周面により強く押圧させることができるので、ブレード部の底面がサポートロールの周面から浮くことを防ぎ、研磨力の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る研磨装置の第1の実施形態における構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る研磨装置の一実施形態におけるブレード部の構成を示す概略図である。
【図3】本発明に係る研磨装置の一実施形態におけるブレード部の厚み寸法と、錘部の厚み寸法との関係を示す側面図である。
【図4】本発明に係る研磨装置の一実施形態における研磨装置の動作を示す概略図である。
【図5】比較例のブレード部の構成を示す概略図である。
【図6】従来の連続溶融金属めっき装置の構成を示す概略図である。
【図7】従来の研磨装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る研磨装置の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る研磨装置の第1の実施形態における構成を示す概略図である。
図1に示すように、連続溶融金属めっき装置1は、溶融金属として溶融亜鉛Zを貯留しためっき浴槽2と、このめっき浴槽2内に設置された浴中ロールとして、シンクロール3、及び一対のサポートロール4,5とを有する。シンクロール3はめっき浴槽2中に導入される帯状体Sを案内するロールである。一対のサポートロール4,5は、シンクロール3の上方において、それぞれの軸の高さを相互にずらして配置される。サポートロール4,5は、案内された帯状体Sのパスや形状を矯正する矯正用ロールである。
【0015】
スナウト(図示せず)を介してめっき浴槽2中に斜め下方に導入された帯状体Sは、シンクロール3によって上方に方向転換され、一対のサポートロール4,5の間に挟み込まれて更に上方に誘導される。つまり、一対のサポートロール4,5が、帯状体Sの表裏面を挟み、その反りを抑制するのである。めっき浴槽2の外部で、かつ一対のサポートロール4,5の上方には、溶融亜鉛Zの付着量を制御するガスワイピングノズル(図示せず)が設置されている。上方に誘導された帯状体Sは、ガスワイピングノズルからガスが吹き付けられることによって、めっき浴槽2で付着した溶融亜鉛Zの付着量が制御されて製品となる。ガスワイピング後の帯状体Sは、必要に応じて合金化炉(図示せず)と呼ばれる炉で加熱され、めっき層が合金化される。
【0016】
ここで、前記帯状体としては、鋼やAl等の金属からなる金属帯が挙げられる。
一対のサポートロール4,5の少なくともいずれか一方は、帯状体Sの原板形状、板厚の変化による溶融亜鉛Zの付着量、分布、及び板振動を最適化するためにオフセット移動させることができる。
各浴中ロールには、研磨装置10,20,30が設置されている。研磨装置10は、シンクロール3の周面に対してオシレート移動する研磨装置である。研磨装置20は、サポートロール4の周面に対してオシレート移動する研磨装置である。研磨装置30と、サポートロール5の周面に対してオシレート移動する研磨装置である。
【0017】
研磨装置10は、シンクロール3の周面に当接するブレード部11と、このブレード部11に一方が接続されたアーム部12とを有する。
研磨装置20は、ブレード部21と、アーム部22と、連結片23と、ヒンジ部24とを有する。ブレード部21は、傾斜面21a及び底面21bを有し、該底面21bがサポートロール4の周面に当接する。連結片23は、ブレード部21に接続され、ヒンジ部24を介してアーム部22の一方(下端部)と連結される。すなわち、少なくとも上下方向にブレード部21が回動可能となるようにアーム部22と連結片23とがヒンジ部24によって連結されている。また、連結片23の長さは、当接部4aにおけるブレード部21の付勢力を考慮して設定されることが好ましい。当接部4aよりも下方にヒンジ部24を位置させ、連結片23を長くすることにより、アーム部22の回転モーメントが増大し、ブレード部21の自重のみによらず、ブレード部21をサポートロール4の周面に所定の圧力で付勢させることができる。
【0018】
研磨装置30は、研磨装置20と同様に、ブレード部31と、アーム部32と、連結片33と、ヒンジ部34とを有する。ここで、アーム部32はアーム部22に相当し、連結片33は連結片23に相当し、ヒンジ部34はヒンジ部24に相当するので、研磨装置30の説明は研磨装置20の説明を援用する。なお、ブレード部31の説明は後述する。
シンクロール3、サポートロール4、5、アーム部12の他方、アーム部22の他方(上端部)、及びアーム部32の他方は、連続溶融金属めっき装置1の上方に架設されたフレームにそれぞれ独立して固定されている。これらのうち、アーム部12の他方、アーム部22の他方、及びアーム部32の他方は、それぞれをオシレート移動させる駆動手段(図示せず)に接続される。
【0019】
ブレード部11,21,31の幅は、当接する各浴中ロールの胴長よりも小さい幅寸法を有している。ブレード部11,21,31は、各浴中ロールの軸方向へオシレート移動されることによって各浴中ロールの周面上のドロス等の付着物の除去を行う。
図2は、本発明に係る研磨装置の第1の実施形態におけるブレード部31の構造を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。また、図2(c)〜(f)は、ブレード部31の変形例の構造を示す図である。図2(a)及び図2(b)に示すように、ブレード部31は、本体部31aと錘部100とを有する。錘部100は、ロール5の周面に当接する本体部31aの底面31bに対して角度ψで傾斜した傾斜面31cに設置されている。錘部100は、めっき浴槽2内において、ヒンジ部34でブレード部31を下方に回転せしめる重さを有する部材である。
【0020】
錘部100は、付勢面100aを有している。この付勢面100aは、ブレード部31の傾斜面31cからブレード部31の回動方向に、θ=90°の角度をなしている。なお、ブレード部31の底面31bに対する傾斜面31cのなす角度ψは、15°≦ψ≦75°を満たす範囲であることが好ましい。本実施形態では角度ψ=45°とした。
なお、傾斜面31cに対して付勢面100aがなす角度θは、50°≦θ≦150°を満たす範囲である。θが50°未満であると、付勢面100bで浴の流れを捉えられず、ブレード部31をロール5の周面5aに付勢させる付勢力が充分に与えられない結果、研磨能力が著しく落ちる。また、θが150°を超えると、操業中にブレード部31が浮き上がるため、研磨能力が著しく低下する。
【0021】
また、ブレード部31の傾斜面31c上に設置される錘部100の幅寸法は、ブレード部31の幅寸法と同じであることが好ましい。錘部100の幅寸法が、ブレード部31の幅寸法よりも小さいと、露出したブレード部31の傾斜面31cの表面において、予期しないめっき液の流れが生じてロール5の周面に対するブレード部31の押圧が制御しにくくなることがある。また、錘部100の幅寸法が、ブレード部31の幅寸法よりも大きいと、ブレード部31から幅方向にはみ出した錘部100が、めっき液の流れに抗うように働く。その結果、錘部100がロール5の周面に対するブレード部31の押圧を妨げることになり、その押圧力を制御しにくくなることがある。ここで、「幅寸法」とは、ブレード部31が回動する方向と直交する方向におけるブレード部31及び錘部100の寸法である。
【0022】
本実施形態では、図2(a)に示すように、本体部31a上に設定された基準位置Bを基準とした突出寸法Aと突出寸法Hとの関係が0.3≦H/A≦1.3で規定される。ここで、基準位置Bは、付勢面100bの先端部を通り、本体部31aの底面31bに平行な面と傾斜面31cとが交差したときのブレード部31の回動軸に平行な線分である。また、突出寸法Aは、基準位置Bから本体部31aの先端部までの傾斜面31cの距離をL1としたとき、L1cosψで表される距離である。また、突出寸法Hは、基準位置Bから錘部100の先端部までの底面31bに平行な距離である。H/Aが0.3未満であると、付勢面100bで浴の流れを捉えられず、ブレード部31をロール5の周面5aに付勢させる付勢力が充分に与えられない結果、研磨能力が著しく落ちる。また、H/Aが1.3を超えると、操業中にブレード部31が浮き上がるため、研磨能力が低下する。
【0023】
また、錘部100の形状は、サポートロール5の回転や鋼板Sの走行によって生じるめっき液の流れを、傾斜面31cにぶつかるように変える機能を発揮する形状であればよい。
さらに、錘部100は、ブレード部31と一体に形成されてもよい。例えば、略直方体形状の基材の前側(傾斜面31cを形成する側)を放電加工などで掘削することにより傾斜面31cと付勢面100aとが所定の角度θをなすような形状に形成してもよい。
【0024】
ここで、ブレード部31の設置角度や形状は、サポートロール5がオフセット移動したときに、サポートロール5の周面からブレード部31が脱落しなければ、特に制限はなく、サポートロール5の移動量等に応じて適宜選択される。なお、ブレード部31の設置角度とは、ブレード部31の底面31bと、サポートロール5の当接部5aにおける接線とのなす角度である。
【0025】
また、錘部100の形状は、傾斜面31cに対して所定の角度θをなす付勢面100aを有していれば、その側面形状は目的に応じて適宜設定される。例えば、錘部100の先端部が先鋭形状をなしていなくともよく(図2(c)参照)、錘部100の上面100bが本体部31aの上面31dと面一になっていなくてもよい(図2(d)参照)。また、図2(e)に示すように、錘部100の上面100bは、本体部31aの底面31bと平行となるように形成されなくともよい。なお、図2(d)に示すような錘部100の側面形状の場合の基準位置Bは、錘部100の上面100bの位置にかかわらず、付勢面100aの先端部を通り、本体部31aの底面31bに平行な面と傾斜面31cとが交差したときのブレード部31の回動軸に平行な線分に設定される。また、図2(e)に示すような錘部100の側面形状の場合の基準位置Bは、錘部100の上面100bが本体部31aの底面31bと平行と仮定した場合(図2(e)中、破線で表示)の仮想上面100cと本体部31aの傾斜面31cとが交差したときのブレード部31の回動軸に平行な線分に設定される。
【0026】
また、図2(f)に示すように、ブレード部31の傾斜面31cと錘部100の付勢面100aとのなす角度θを135°とした。角度θを135°としたことにより、付勢面100aから傾斜面31cへ反射するめっき液の流れが少なくなるので、必要以上の傾斜面31cへの付勢力を低減したい場合には好適である。また、設置する錘100の量が少なくすむので、コストを低減させることができる。
【0027】
図3は、本実施形態において、ブレード部の厚み寸法と、錘部の厚み寸法との関係を示す側面図である。
図3に示すように、本実施形態では、錘部100の付勢面100aと上面100bとがなす角度をθ1とすると、前述の突出寸法Hと錘部100の厚み寸法Iとの関係は、H=I((1/tanθ1)+(1/tanψ))と表すことができ、ブレード部31の厚み寸法Lと錘部100の厚み寸法Iとの比(I/L)は、1/4≦I/L≦3/4を満たす。
【0028】
I/Lが1/4未満であると、操業中にブレード部31が浮き上がり、研磨能力が低下する。また、I/Lが3/4を超えると、付勢面100bで浴の流れを捉えられず、ブレード部31をロール5の周面5aに付勢させる付勢力が充分に与えられない結果、研磨能力が著しく落ちる。
図4(a)〜図4(c)は、本発明に係る研磨装置の第1の実施形態における動作を示す概略図である。図4(a)に示すように、サポートロール5がオフセット移動する前では、サポートロール5の周面に研磨装置30のブレード部31が当接するように、ヒンジ部34によってアーム部32及び連結片33が所定の角度をなして連結されている。そして、ヒンジ部34がサポートロール5の周面における当接部5aよりも下方に位置し、かつブレード部31に設けられた錘部100の自重によって、ブレード部31は、サポートロール5の周面に、より高い押し付け圧で付勢しながらオシレート移動する。
【0029】
ここで、図4(b)に示すように、鋼板Sの走行によって、本来、ブレード部31の傾斜面31cに沿って流れ込むめっき液の流れは、錘部100の付勢面100aにぶつかって傾斜面31cに付勢するように流れる。したがって、ブレード部31の底面31bが離れることなく、ブレード部31は、サポートロール5の周面に、より高い押し付け圧で付勢しながらオシレート移動することができる。
【0030】
その後、図4(c)に示すように、サポートロール5がオフセット移動したときには、ブレード部31がヒンジ部34を軸として回動し、サポートロール5の周面上を乗り上げるようにスライドして、ブレード部31とサポートロール5の周面との当接が維持される。一方、サポートロール4の周面に当接するブレード部21は、オフセット移動したサポートロール4の周面上を平行移動してサポートロール4上のドロス等の付着物を除去する。
【実施例】
【0031】
次に、本発明に係る研磨装置の実施例について説明する。
まず、上述した研磨装置において、角度ψ=30°、ブレード部31の厚み寸法L及び錘部100の厚み寸法Iの比(I/L)を1/2とし、ブレード部31の傾斜面31cと錘部100の付勢面100aとのなす角度θと、突出寸法A及び突出寸法Hの比(H/A)とを、表1に示すように変化させた場合の摩耗量を測定した。測定された摩耗量の結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示すように、ブレード部31の傾斜面31cと錘部100の付勢面100aとのなす角度θが50°≦θ≦150°の範囲では、摩耗量が0.48〜0.75であり、優れた摩耗性を示した。特に、ブレード部31の傾斜面31cと錘部100の付勢面100aとのなす角度θが135°のときは、摩耗量が0.75であり、格別に優れた摩耗性を示した。
【0034】
次に、上述した研磨装置において、角度ψ=30°、突出寸法A及び突出寸法Hの比(H/A)を1とし、ブレード部31の厚み寸法L及び錘部100の厚み寸法Iの比(I/L)を、表2に示すように変化させた場合の摩耗量を以下の条件で測定した。なお、表2には、上記厚み寸法の比(I/L)に相当するブレード部31の傾斜面31cと錘部100の付勢面100aとのなす角度θを付記した。測定された摩耗量の結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示すように、ブレード部31の厚み寸法L及び錘部100の厚み寸法Iの比(I/L)が1/4≦I/L≦3/4の範囲では、摩耗量が0.50〜0.75であり、優れた摩耗性を示した。特に、ブレード部31の厚み寸法L及び錘部100の厚み寸法Iの比(I/L)が5/8のときは、摩耗量が0.75であり、格別に優れた摩耗性を示した。このように、ブレード部31の厚み寸法L及び錘部100の厚み寸法Iの比(I/L)は、1/4≦I/L≦3/4の範囲で優れた摩耗性を示す傾向があることが示された。従って、上述の実施例の条件において、ブレード部31の厚み寸法L及び錘部100の厚み寸法Iの比(I/L)を変化させる場合には、この傾向を考慮すればよい。
【0037】
(比較例)
また、他の比較例として、錘部100をブレード部31のいずれの面にも設けない比較例1(図5(a)参照)、錘部100をブレード部31の側面31eに設けた比較例2(図5(b)及び図5(c)参照)についても摩耗量を測定した。比較例1及び比較例2において測定された摩耗量の結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
表3に示すように、錘部100をブレード部31に設けない比較例1、及び錘部100をブレード部31の側面31eに設けた比較例2では、摩耗量が0.22〜0.35であり、摩耗量が少なく、研磨が不十分であった。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、ブレード部31の傾斜面31cに対して所定の角度θをなし、めっき液の流れによって、ブレード部31自身をロール5の周面5aに付勢する付勢面100bを有する錘部100をブレード部31に設けた。したがって、ブレード部31の底面31bがロール5の周面5aから浮くことを防ぎ、研磨力の低下を防ぐことができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。例えば、錘部100は、サポートロール5の回転や鋼板Sの走行によって生じるめっき液の流れを、傾斜面31cにぶつかるように変える機能を有する。したがって、その機能を発揮するために、ブレード部31自体の傾斜角度によっては、平面視で錘部100がブレード部31の先端から突出する形状(1<H/A≦1.3)とされてもよい。
【0042】
また、傾斜面31c及び付勢面100aの形状は、めっき液の流れが傾斜面31cにぶつかるような構造であればよく、平坦面でも曲面でもよい。
また、上記実施形態では、めっき浴槽2の浴面に近いサポートロール5に対して設置される研磨装置30について説明したが、めっき浴槽2の浴面から深く離れたサポートロール4に対して設置される研磨装置20に適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 連続溶融金属めっき装置
2 めっき浴槽
3 シンクロール
4 サポートロール
4a 当接部
5 サポートロール
20 研磨装置
30 研磨装置
31 ブレード部
32 アーム部
33 連結片
34 ヒンジ部
100 錘部
S 帯状体
Z 溶融亜鉛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき浴槽内のめっき液に浸漬されたロールであって、帯状体を案内するロール、及び帯状体の厚さ方向に進退可能なロールの周面に当接して前記ロールの周面に付着した付着物を除去するブレード部を備えた研磨装置において、
前記ブレード部を、略上下方向に延びるアーム部の下端部に対して、ヒンジ部を介して少なくとも上下方向に回動可能に支持してなり、
前記ブレード部が、前記ロールの周面に当接する底面に対して傾斜した傾斜面を有する本体部と、前記傾斜面に設けられ、前記ブレード部の底面を前記ロールの周面に押圧させる錘部とを有することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記錘部が、前記傾斜面に対して前記ブレード部の回動方向に50°〜150°をなす付勢面を有し、所定の基準位置から前記本体部の先端部までの突出寸法をA、前記基準位置から前記錘部の先端部までの突出寸法をH、前記本体部の厚み寸法をL、前記錘部の厚み寸法をIとしたとき、下記式(1)及び式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
0.3≦H/A≦1.3・・・・・式(1)
1/4≦I/L≦3/4・・・・・式(2)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−222597(P2010−222597A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68094(P2009−68094)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】