説明

破損燃料棒特定システム

【課題】 本発明は、破損燃料棒を短時間で特定できる破損燃料棒特定システムを提供する。
【解決手段】 破損燃料棒特定システム200は、データ処理用計算機14を備えている。データ処理計算機14には、Ge半導体検出器11からの検出結果に基づく多重波高分析器13のオフガス核種分析結果により得られた燃料棒破損判定情報31と、オフガス流量計12より得られたオフガス流量履歴情報32と、制御棒制御装置15より得られた制御棒操作履歴情報33とが入力される。データ処理計算機14は、これらの記憶された情報に基づいて、破損燃料棒2f近傍に配置されている複数の燃料棒2からなる制御対象燃料棒グループ41、42を特定する。そして、データ処理計算機14は、特定された複数の制御対象燃料棒グループ41、42情報に基づいて、破損燃料棒2fを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉内の燃料棒が破損した場合に、当該破損した燃料棒を特定する破損燃料棒特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフガス核種分析装置を用いて破損燃料棒を特定するには、制御棒を操作してオフガス核種分析を行ない、オフガスに含まれる対象核種強度を調べて、その結果を照合することにより、現在燃焼している燃料集合体に破損燃料棒が含まれるかどうかを、人間が評価、判定することを繰り返して、破損燃料棒の特定を行なっていた。
【0003】
また、連続測定が可能なオフガス核種分析装置を有する設備で破損燃料を特定するには、計画した制御棒の操作手順に従って、制御棒を制御棒制御装置により操作し、その間、同時にオフガス核種分析を連続で実行させておき、その結果を照合して、制御棒操作と対象核種強度の変化の関係から、破損燃料の特定を行なっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、破損燃料棒の特定に手間がかかり、長い時間を要するため、破損燃料棒を特定する時間の短縮化が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、破損燃料棒を短時間で特定できる破損燃料棒特定システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多数の燃料棒を含む原子炉に連結されたオフガス配管に近接して設けられ、オフガス中のγ線検出を行うGe半導体検出器と、Ge半導体検出器からの検出結果に基づいて核種分析を行う多重波高分析器と、原子炉内の制御棒を制御する制御棒制御装置と、オフガス配管に設けられたオフガス流量計と、該制御棒制御装置、該オフガス流量計及び該多重波高分析器により得られる情報が入力されるデータ処理用計算機とを備え、データ処理計算機は、多重波高分析器のオフガス核種分析結果より得られ、何れかの燃料棒が破損していることを示す燃料棒破損判定情報と、オフガス流量計より得られるオフガス流量履歴情報と、制御棒制御装置より得られる操作した制御棒の制御棒操作履歴情報とに基づいて、オフガス流量変化に対応する制御棒を定めて、当該制御棒近傍の燃料棒を破損燃料棒として特定する破損燃料棒特定手段を有することを特徴とする破損燃料棒特定システムである。
【0007】
本発明は、データ処理計算機は、制御棒を操作した際に反応した複数の燃料棒の情報を記憶する制御対象燃料棒情報記憶手段を、更に有する破損燃料棒特定システムである。
【0008】
本発明は、データ処理計算機は、制御棒を操作した際に活性化した複数の燃料棒からなる制御対象燃料棒グループに関する情報を記憶する制御対象燃料棒情報記憶手段を、更に有する破損燃料棒特定システムである。
【0009】
本発明は、データ処理計算機は、制御棒を操作した際に活性化した複数の燃料棒からなる制御対象燃料棒グループに破損燃料棒が含まれていた場合には、当該制御対象燃料棒グループを視覚的に表示する表示手段を、更に有する破損燃料棒特定システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、制御棒を操作することにより、人手によらず破損燃料棒を評価、判定して確実に特定できる。このため、破損燃料棒を短時間で容易かつ確実に特定するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の実施形態
以下、本発明に係る破損燃料棒特定システムの実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至4は本発明の第1の実施形態を示す図である。
【0012】
図1乃至4に示す本実施形態の破損燃料棒特定システム200は、原子炉1内に配置されている多数の燃料棒2の何れかが破損した場合に、当該破損した燃料棒2を迅速に特定するものである。
【0013】
図1に示すように、破損燃料棒特定システム200は、原子炉100に連結されたオフガス配管16に近接して設けられ、オフガス中のγ線を検出するGe半導体検出器11と、Ge半導体検出器11の検出結果に基づいて核種分析を行う多重波高分析器13と、原子炉100内の制御棒1を制御する制御棒制御装置15と、オフガス配管16に設けられたオフガス流量計12と、制御棒制御装置15、オフガス流量計12及び多重波高分析器13から入力される情報を処理するデータ処理計算機14とを備えている。
【0014】
図3に示すように、データ処理計算機14には、多重波高分析器13からのオフガス核種分析結果より、何れかの燃料棒2が破損していることを示す燃料棒破損判定情報31と、オフガス流量計12より得られるオフガス流量の履歴を示したオフガス流量履歴情報32と、制御棒制御装置15により得られる操作した制御棒1の履歴を示した制御棒操作履歴情報33が入力され記憶される。また、データ処理計算機14は、これらの燃料棒破損判定情報31、オフガス流量履歴情報32及び制御棒操作履歴情報33に基づいて、後述のようにオフガス流量変化に対応する制御棒1を定めて、当該制御棒1近傍の燃料棒2を破損燃料棒2として特定する破損燃料棒特定手段21を有している。
【0015】
次に、このような構成からなる本実施形態の作用について述べる。
【0016】
図1乃至図4において、原子炉100内において、燃料棒2の反応により高熱エネルギーが生じ、この高熱エネルギーは制御棒制御装置15により駆動操作される制御棒1により制御される。
【0017】
この間、原子炉100からオフガスが排出される。そしてオフガス配管16内のオフガスがGe半導体検出器11により検出される。この場合、Ge半導体検出器11によりオフガス中のγ線が検出される。その後、Ge半導体検出器11で検出されたオフガス中のγ線の検出結果が多重波高分析器13に送られ、多重波高分析器13においてGe半導体検出器11からの検出結果に基づいて対象核種分析が行われ、この多重波高分析器13において対象核種強度が求められる。次に、多重波高分析器13からの核種分析結果はデータ処理用計算機14に送られる。ここで、燃料棒2のうち例えば燃料棒2fが破損していると仮定すると、この破損燃料棒2f近傍の制御棒1が操作された場合には、Ge半導体検出器11からの検出結果に基づいて多重波高分析器13により対象核種強度の特徴的変化が観測される。このとき、データ処理用計算機14において、燃料棒破損判定情報31と、オフガス流量履歴情報32と、制御棒操作履歴情報33とに基づいて操作された制御棒1を特定する。このことにより、当該制御棒1近傍に破損燃料棒2fが存在することが判明する。
【0018】
次に、図1乃至図4により、データ処理用計算機14において、破損燃料棒2f近傍に配置された制御棒1を特定する方法について述べる。
【0019】
まず、図1乃至図4において、多重波高分析器13から送られた燃料棒破損判定情報31と、オフガス流量計12より得られたオフガス流量履歴情報32と、制御棒制御装置15より得られた制御棒制御装置33とがデータ処理計算機14に入力される。この際、制御棒制御装置15により制御棒1が操作されることで原子炉100内に発生するエネルギーが変化し、それに伴い、オフガス配管16を流れるオフガス流量も変化する。そのため、データ処理計算機14では、多重波高分析器13から送られた燃料棒破損判定情報31と、オフガス流量計12より得られるオフガス流量履歴情報32と、制御棒制御装置15より得られる制御棒操作履歴情報33とを照合することにより、どの制御棒1によってオフガス流量の変化が起こされたのかが特定される。
【0020】
具体的には、データ処理計算機14は、燃料棒破損判定情報31に基づいて、対象核種分析の特徴的な変化を求め、この対象核種分析の特徴的な変化が観測された時点に対応するオフガス流量が変化した時点をオフガス流量履歴情報32に基づいて特定する。次に、制御棒制御装置33に基づいて、対象核種分析で特徴的な変化が観測された際に操作された制御棒1、つまり、破損燃料棒2f近傍で操作された制御棒1を特定する。
【0021】
次に、図4により、特定された破損燃料棒2近傍に配置された複数の制御棒1より、破損燃料棒2fを特定する方法について述べる。
【0022】
図4において、上述した破損燃料棒2f近傍に配置された制御棒1を特定する作業が繰り返し行われることにより、破損燃料棒2f近傍に配置されている制御棒1が複数個特定され、当該特定された複数個の制御棒1の配置位置より破損した燃料棒2fが特定される。
【0023】
図4において、例えば、制御棒1のうち特定の制御棒1aが操作された場合のことを考える。この場合、燃料棒2のうち制御対象燃料棒グループ41に含まれる燃料棒2a乃至2fが活性化したことが特定される。同様に、制御棒1bが操作されることにより、制御対象燃料棒グループ42に含まれる燃料棒2f乃至2kが活性化したことが特定される。そして、制御対象燃料棒グループ41に含まれる燃料棒2a乃至2fと制御対象燃料棒グループ42に含まれる燃料棒2f乃至2kとが照合されることにより、燃料棒2fが破損燃料棒であると特定される。
【0024】
第2の実施形態
次に図5により本発明の第2の実施形態について説明する。図5に示す第2の実施形態は、データ処理計算機14が、破損燃料棒2fを特定するための制御棒1の操作回数が最小となるよう、制御棒1の操作手順を計算する制御棒最適操作手順計算手段22を、更に有するものであり、他は図1乃至図4に示す第1の実施形態と略同一である。
【0025】
図5に示す第2の実施形態において、図1乃至図4に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0026】
図1乃至図4に示される第1の実施形態で述べたように、破損燃料棒2fを特定するには、破損燃料棒2f近傍に配置されている制御棒1を複数個特定する必要がある。
【0027】
図5に示す第2の実施形態において、まず、データ処理用計算機14の制御棒最適操作手順計算手段22により、破損燃料棒2fを特定するための制御棒1の操作回数が最小となる制御棒1の操作手順が特定される。次に、図1乃至図4に示す第1の実施形態と同一手法により、破損燃料棒2fを特定することができる。そのため、図5において、効率的に破損燃料棒2fを特定することができる。
【0028】
次に、データ処理用計算機14の制御棒最適操作手順計算手段22により計算される破損燃料棒2fを特定するために必要な、制御棒1の操作回数が最小となる制御棒1の操作手順について説明する。
【0029】
例えば、図4において、特定の制御棒1aが操作され、制御対象燃料棒グループ41に含まれる燃料棒2a乃至2fが活性化したことが特定される場合を考える。次に制御棒1cが操作され、制御対象燃料棒グループ43に含まれる燃料棒2が活性化した場合、破損燃料棒としての候補は燃料棒2a及び2fとなり、破損燃料棒2fを特定するためには更に他の制御棒1、例えば制御棒1bの操作が必要になる。この場合、制御棒1cの代わりに、制御棒1bが操作されたならば、破損燃料棒2fが直ちに特定されることになる。このように、制御棒最適操作手順計算手段22では破損燃料棒2fを特定するために必要な制御棒1の操作回数が最小となるような制御棒1の操作手順が求められる。
【0030】
第3の実施形態
次に図6により本発明の第3の実施形態について説明する。図6に示す第3の実施形態はデータ処理計算機14が、制御棒1を操作した際に活性化する制御対象燃料棒グループ41,42の情報を記憶する制御対象燃料棒情報記憶手段23を有しており、他は図1乃至図4に示す第1の実施形態と略同一である。
【0031】
図6に示す第3の実施形態において、図1乃至図4に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
例えば、制御棒1aが操作されることにより、制御対象燃料棒グループ41に含まれる燃料棒2a乃至2fが反応したという情報がデータ処理用計算機14の制御対象燃料棒情報記憶手段23に記憶される。次に、制御棒1bを操作されることにより、制御対象燃料棒グループ42に含まれる燃料棒2f乃至2kが反応したという情報がデータ処理用計算機14に記憶される。このように、特定の制御棒1a及び1bを操作した場合における制御対象燃料棒グループ41及び42に含まれる燃料棒2a乃至2fおよび2f乃至2kを予め特定しておくことにより、破損燃料棒2fを特定するための操作手順をより効率的に定めることができる。
【0033】
第4の実施形態
次に図7により本発明の第4の実施形態について説明する。図7に示す第4の実施形態は、データ処理計算機14が、操作した制御棒1により反応した制御対象燃料棒グループ41、42の中に破損燃料棒2が含まれていた場合には、当該制御対象燃料棒グループ41、42を視覚的に表示する表示手段24を有するものであり、他は図1乃至図4に示す第1の実施形態と略同一である。
【0034】
図7に示す第4の実施形態において、図1乃至図4に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0035】
制御対象燃料棒グループ41、42を視覚的に表示する表示手段24としては、多色を用いて表示する方法、異なるパターンを用いて表示する方法、表示パターンの密度を多段階にわけて表示する方法等がある。
【0036】
多色を用いて表示する方法を用いた場合には、色の重複する燃料棒2が破損燃料棒2fであると特定される。また、異なるパターンを用いて表示する方法を用いた場合には、様々のパターンが重複して表示されている燃料棒2が破損燃料棒2fであると特定される。さらに、示パターンの密度を多段階にわけて表示する方法を用いた場合には、表示密度の濃い燃料棒2が破損燃料棒2fであると特定される。
【0037】
図4及び図7に示す第4の実施形態では、破損燃料棒2fが視覚的に表示されるため、破損燃料棒2fを特定する作業を容易に行うことができる。
【0038】
なお、上記では、各第1乃至第4の実施形態を別個に説明したが、これら第1乃至第4の実施形態を任意組合せ、あるいは、全て組合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による破損燃料棒特定システムの第1の実施形態を示す構成図。
【図2】原子炉内の制御棒及び燃料棒を示す構成図。
【図3】破損燃料棒特定システムのデータ処理用計算機の構成図。
【図4】破損燃料棒の特定方法を示す説明図。
【図5】本発明による破損燃料棒特定システムの第2の実施形態を示すデータ処理用計算機の構成図。
【図6】本発明による破損燃料棒特定システムの第3の実施形態を示すデータ処理用計算機の構成図。
【図7】本発明による破損燃料棒特定システムの第4の実施形態を示すデータ処理用計算機の構成図。
【符号の説明】
【0040】
1 制御棒
1a乃至1c 制御棒
2 燃料棒
2a乃至2e、2g乃至2k 燃料棒
2f 破損燃料棒
11 Ge半導体検出器
12 オフガス流量計
13 多重波高分析器
14 データ処理用計算機
15 制御棒制御装置
16 オフガス配管
21 破損燃料棒特定手段
22 制御棒最適操作手順計算手段
23 制御対象燃料棒情報記憶手段
24 表示手段
31 燃料棒破損判定情報
32 オフガス流量履歴情報
33 制御棒操作履歴情報
41、42、43 制御対象燃料棒グループ
100 原子炉
200 破損燃料棒特定システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の燃料棒を含む原子炉に連結されたオフガス配管に近接して設けられ、オフガス中のγ線検出を行うGe半導体検出器と、
Ge半導体検出器からの検出結果に基づいて核種分析を行う多重波高分析器と、
原子炉内の制御棒を制御する制御棒制御装置と、
オフガス配管に設けられたオフガス流量計と、
該制御棒制御装置、該オフガス流量計及び該多重波高分析器により得られる情報が入力されるデータ処理用計算機とを備え、
データ処理計算機は、
多重波高分析器のオフガス核種分析結果より得られ、何れかの燃料棒が破損していることを示す燃料棒破損判定情報と、
オフガス流量計より得られるオフガス流量履歴情報と、
制御棒制御装置より得られる操作した制御棒の制御棒操作履歴情報とに基づいて、
オフガス流量変化に対応する制御棒を定めて、当該制御棒近傍の燃料棒を破損燃料棒として特定する破損燃料棒特定手段を有することを特徴とする破損燃料棒特定システム。
【請求項2】
データ処理計算機は、破損燃料棒を特定するための制御棒操作回数が最小となるよう計算する制御棒最適操作手順計算手段を、更に有することを特徴とする請求項1記載の破損燃料棒特定システム。
【請求項3】
データ処理計算機は、制御棒を操作した際に活性化した複数の燃料棒からなる制御対象燃料棒グループに関する情報を記憶する制御対象燃料棒情報記憶手段を、更に有することを特徴とする請求項1記載の破損燃料棒特定システム。
【請求項4】
データ処理計算機は、制御棒を操作した際に活性化した複数の燃料棒からなる制御対象燃料棒グループに破損燃料棒が含まれていた場合には、当該制御対象燃料棒グループを視覚的に表示する表示手段を、更に有することを特徴とする請求項3記載の破損燃料棒特定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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