説明

破砕機のライナの取り付け構造

【課題】破砕機のドラム内面にボルトで固定されるライナについて、ボルトの破断やそれに伴うライナのドラムからの脱落を防止すること。
【解決手段】ドラム内面11の、ライナ固定用のボルト3が挿通される位置に、ボルトの挿通穴8を有した鋼板7を溶着し、ライナ10の、ドラム内面11への装着面に、その鋼板7が相嵌可能となった凹部6を形成して、その凹部6に鋼板7を相嵌しつつ、ライナ10をドラム内面11にボルト3で固定する。このことにより、ライナ10に作用するドラム内面11に沿う力を鋼板7の周面で受けて、前記ボルト3には作用しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドミルやボールミルなどの破砕機におけるライナの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したロッドミルやボールミルなどの円筒型破砕機は、円筒の回転ドラムを、その軸周りに回転させ、その回転ドラムの中に、被破砕物(例えば、岩石、鉱石類)とともに複数のロッドやボールなどの粉砕媒体を投入することにより、その粉砕媒体をドラムの内面で転動および転落させて被破砕物に衝突させ、また、ドラム内面に配設されたライナに衝突させることにより、その際の剪断、摩擦、圧縮作用によって被破砕物を破砕するものである。
【0003】
上記の内、ライナの一従来例として、下記の特許文献1の図5に示されたような形状のものがある。このライナは、所定の厚みで、所定の曲率で湾曲した板体であり、表面の、湾曲方向に直交する一直線上にライナリフトが形成されている。このライナリフトは断面截頭円錐型の突条を成し、この部分でもって、ドラムの回転中、破砕媒体のロッドやボールをかき上げ、また、被破砕物が直接ここに衝突して破砕されるようになっている。
【0004】
そして、そのライナリフトの配設方向(湾曲方向に直交する方向)に平行な直線上の二箇所に、ライナをドラム内面に固定するためのボルト穴が貫通されている。ボルトはライナとドラムの壁を貫通して、端部がドラム外に突出するようになっており、ドラム外に突出した先端部にナットを螺合させて、ライナをドラムに固定するようになっている。
【特許文献1】特開平11−319611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような形態のライナについて、従来、以下のような問題があった。すなわち、ライナが破砕媒体をかき上げたり、ライナに被破砕物が衝突した際には、それら破砕媒体や被破砕物から力を受けるわけであるが、その力のドラム内面に沿う分力が、ライナをドラムに固定しているボルトに剪断力として作用する。
【0006】
従って、この剪断力を繰り返し受けることによってボルトの寿命が縮まり、そのことによって、ドラムに固定されているライナの取り付けが緩んだり、甚だしい場合は、ボルトが破断されて、ライナがドラムから脱落する、といったおそれもある。
【0007】
この発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、破砕機のドラム内面にボルトで固定されるライナの取り付け構造に改良を加えて、ライナの取り付けの緩み、あるいはドラムからの脱落を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、回転ドラム内面の前記ライナが取り付けられる位置に鋼板を溶着し、ライナのドラム内面への装着面に、その鋼板が相嵌可能となった凹部を形成して、その凹部に鋼板を相嵌しつつ、ライナを回転ドラム内面にボルトで固定することにより、ライナに作用する回転ドラム内面に沿う力を鋼板の周面で受けるようにして、前記ボルトには作用しないようにしたのである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のような構成を採用したので、ライナをドラムに固定しているボルトには剪断力が掛からず、ライナの取り付けが緩んだり、甚だしい場合のように、ボルトが破断されてライナがドラムから脱落する、といったおそれがない。従って、破砕機の、長期的に安定した稼動を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本実施形態のライナ10の単体と、そのライナ10が装着されるドラム20の周壁の一部を併せて描いた斜視図であり、図2は、図1の線A−Aによる断面図、図3は底面図である。また、図2では、ライナ10が装着されるドラム20の周壁断面も併せて描いている。
【0011】
図1に示すように、このライナ10は、所定の厚みで、所定の曲率で湾曲した板体であり、表面の、湾曲方向に沿う中央には、湾曲方向に直交して断面截頭円錐型突条のライナリフト1が形成されている。また、図2の断面図に示されるように、底面は、ドラム内面11と同じ曲率を成している。
【0012】
そして、図1、図2に示すように、ライナリフト1の截頭直円錐の軸に沿って、ライナ10をドラム内面11に固定するためのボルトの挿通穴2が貫通されており、その挿通穴2と、それに対応するドラム周壁の挿通穴12にボルト3を挿通させて、ドラム外に突出した先端部にナット4を螺合させて、ライナ10をドラム20に固定するようになっている。
【0013】
本実施形態のライナ10の特徴的形状は、その底面の部分にある。すなわち、図2、図3に示すように、ライナ底面5の、ドラム内面11に固定するためのボルト3が挿通される位置には、断面矩形の凹部6が形成されている。この凹部6の面中心がボルト3の挿通位置に対応している。
【0014】
他方、本実施形態では上記ライナ10の形状のみならず、図1および図2に示したように、ドラム10側にも、それに対応して、ドラム内面11のライナ10が装着される位置に、ライナ10の前記凹部6に相嵌可能となった寸法形状の矩形の鋼板7が溶着されている。鋼板7の面形状は、ライナ10の前記凹部6の面形状の外形寸法より僅かに小さいものであり、また、その厚みも、ライナ10の凹部6の深さより僅かに小さな寸法となっている。そして、この鋼板7の面中央には、ボルトの挿通穴8が形成されている。以上が、本実施形態のライナ10の形状と、それに対応したドラム内面の構成である。次に、本実施形態のライナ10のドラムへの取り付け形態について説明する。
【0015】
ライナ10をドラム内面11に取り付ける際は、ライナ底面5の矩形の凹部6を、ドラム内面11に溶着された矩形の鋼板7に相嵌させつつ、ライナ10を装着する。そうすると、ライナ底面5の凹部6と鋼板7の間の隙間は僅かであるので、いわば、その鋼板7が位置決め部材のような形となってライナ10が仮置きされる。
【0016】
次に、そのような状態のライナ10のボルトの挿通穴2にボルト3を挿通し、鋼板7のボルトの挿通穴8を貫通して、その端部をドラム外に突出させる。そして、ボルト3が突出した部分にナット4を螺合させてボルト3を締結する。こうしてライナ10のドラム20への取り付けが完了する。
【0017】
このような構成により、ライナ10に作用するドラム内面11に沿う力は鋼板7の周面が受けるのであって、鋼板7とボルト3との間では、鋼板7のボルトの挿通穴8がばか穴であるので、鋼板7とボルト3との接触はなく、ボルト3には回転ドラム内面11に沿う力は作用しない。
【0018】
以上説明したように、本実施形態は上記のように構成したので、ライナ10をドラム20に固定しているボルト3には、ドラム内面11に沿う力、すなわち剪断力は殆ど作用せず、ボルト3が緩んだり、ボルト3が破断したりするおそれがない。
【0019】
なお、本実施形態では、ボルト3への剪断作用をなくすための上記鋼板7の面形状を矩形としたが、面形状はこれに限られない。三角形や五角形、六角形などの多角形でもよい。また、円であってもよい。
【0020】
また、鋼板7が相嵌されるライナの凹部6とボルトの挿通穴2の位置関係を、ボルト3が凹部6の内部に位置するような関係にしたが、凹部6とボルトの挿通穴2の位置が離れていてもよい。
【0021】
要するに、鋼板7とライナの凹部6との相嵌状態により、ドラム内面11に沿う力を鋼板7の周面で受けて、ボルト3には掛からないようにすればよいのである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、ライナを備えたロッドミルやボールミルなど、一般の破砕機に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のライナ単体と、そのライナが装着されるドラム内面の一部を併せて描いた斜視図である。
【図2】図1の線A−Aによる断面をドラムの周壁とともに示したものである。
【図3】図1の底面図を示したものである。
【符号の説明】
【0024】
1 ライナリフト
2 (ライナの)ボルトの挿通穴
3 ボルト
4 ナット
5 ライナ底面
6 凹部
7 鋼板
8 (鋼板の)ボルトの挿通穴
10 ライナ
11 ドラム内面
20 ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕機の回転ドラム内面にボルトで固定されるライナの取り付け構造であって、
回転ドラム内面の前記ライナが取り付けられる位置に鋼板を溶着し、ライナの回転ドラム内面への装着面に、その鋼板が相嵌可能となった凹部を形成して、その凹部に鋼板を相嵌しつつ、ライナを回転ドラム内面にボルトで固定することにより、ライナに作用する回転ドラム内面に沿う力を鋼板の周面で受けるようにして、前記ボルトには作用しないようにしたことを特徴とする破砕機のライナの取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−136938(P2008−136938A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325649(P2006−325649)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(506400742)株式会社伊藤興業 (3)
【Fターム(参考)】