説明

破砕機

【課題】破砕作業の進展に伴う破砕効率の低下を抑制することができる破砕機を提供する。
【解決手段】被破砕物Xを破砕する破砕装置13と、この破砕装置13に向かって被破砕物Xを搬送する送りコンベア12と、この送りコンベア12上の被破砕物Xを押圧ローラ24で押圧し、送りコンベヤ12と協働して被破砕物Xを破砕装置13に供給する押圧ローラ装置14とを備え、押圧ローラ24は、先端部が当該押圧ローラ24の径方向外側に突出した爪部材42を外周面に複数備えており、複数の爪部材42は、それぞれ先端部が押圧ローラ24の軸方向に揺動可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の再利用や減容化を主な目的として、間伐材、廃木材、建設廃材等の種々の被破砕物を破砕する破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
破砕機の一種に、外周面に複数の破砕ビットを設けた破砕ロータを破砕室内で高速回転させ、破砕ビットによる打撃や破砕室内に設けたアンビル(固定刃)との衝突等によって被破砕物を破砕するものがある。この種の破砕機には、送りコンベヤの搬送面に対向して押圧ローラを設け、送りコンベヤに載って搬送される被破砕物を破砕装置手前で押圧ローラによって押さえ込み、押圧ローラと送りコンベヤとで協働して被破砕木材を破砕装置に押し込むものがある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−116413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の押圧ローラは、法線方向に突出した爪部材を外周面に多数有することで被破砕物をグリップする力が高められていて、これら爪部材で被破砕物を確りとグリップすることによって、破砕反力を受け止めつつ送りコンベヤと協働して破砕ロータに被破砕物を押し付けていくことができる。
【0005】
このとき、破砕ロータが描く回転軌跡は円筒状であるため、被破砕物の破砕面は破砕ロータの軌跡面に合わせて円弧面状に形成される。例えば比較的長尺の被破砕物を想定すると、被破砕物が破砕ロータの外周面に到達して先端から徐々に破砕されていく過程で、破砕ロータの軌跡面に一致したまま破砕面の形成が進行していくと、破砕ビットが破砕面の表面を擦るような状態となって著しく破砕効率が低下する。この現象は、特に径の大きな被破砕物ほど破砕面の円弧長が長くなり得るため顕著化し得る。
【0006】
このような場合、オペレータは、供給装置(送りコンベヤ及び押圧ローラ)を逆転駆動させて破砕装置から被破砕物を一旦引き離してから破砕作業を再開することで、被破砕物の破砕ロータに対する当たり方を変化させるといった対応をしている。しかし、この種の破砕機の運転操作は、被破砕物を投入する重機のオペレータが兼務することが多く、破砕機の運転状況に注意を払いながら必要の度に重機の運転を中断して上記の逆転操作を行うことは煩わしい。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、破砕作業の進展に伴う破砕効率の低下を抑制することができる破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、被破砕物を破砕する破砕装置と、この破砕装置に向かって被破砕物を搬送する送りコンベアと、この送りコンベア上の被破砕物を押圧ローラで押圧し、前記送りコンベヤと協働して被破砕物を前記破砕装置に供給する押圧ローラ装置とを備え、前記押圧ローラは、先端部が当該押圧ローラの径方向外側に突出した爪部材を外周面に複数備えており、前記複数の爪部材は、それぞれ先端部が前記押圧ローラの軸方向に揺動可能であることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記押圧ローラは、外周面に設けた複数の凹部を備えており、前記複数の爪部材は、それぞれ前記凹部にピンを介して取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記押圧ローラの回転中心線に直交する面に沿った姿勢を前記爪部材の中立位置とした場合、前記押圧ローラは、前記爪部材を前記中立位置に付勢する付勢手段を更に備えていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1−第3のいずれかの発明において、前記爪部材の揺動範囲が90度以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、破砕作業の進展に伴う破砕効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた破砕機本体部の内部の要部を抜き出して表した側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた破砕機本体部の内部の要部を抜き出して表した背面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた押圧ローラの背面図である。
【図6】図5中のVI−VI線による矢視側面図である。
【図7】図5中のVII−VII線による矢視断面図である。
【図8】図7中のVIII−VIII線による矢視断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた爪部材の他の構成例を表す図であり、図8に対応する図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた爪部材のさらに他の構成例を表す図であり、図8に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図、図2はその平面図である。なお、本願明細書において図1中の右左を破砕機の前後とする。
【0016】
図1及び図2に例示した破砕機は、廃棄物の再利用や減容化を主な目的として被破砕物を破砕する機械である。破砕機の破砕対象物すなわち被破砕物には、例えば森林で発生する剪定枝材や間伐材、建築物の解体に伴って発生する廃木材等の木材の他、廃プラスチック材、廃タタミ、竹材等の建設廃材等を含めた木材以外の廃材も含まれ得る。また、木材については、比較的乾燥した硬質のものに限らず、剪定後間もない街路樹の枝葉や沿道の雑草などの水分量の多い軟質のものも含まれ得る。本実施形態では、これらの破砕対象物を総称して被破砕物と記載する。
【0017】
上記破砕機は、機体を自力走行させるための走行体1、被破砕物を受け入れて破砕処理する破砕機本体部2、破砕機本体部2で破砕処理された破砕物を機外に搬出する排出コンベヤ3、及び搭載した各機器の動力源であるエンジン等を有する動力装置(パワーユニット)4等を備えている。
【0018】
走行体1は、トラックフレーム5、トラックフレーム5の前後両端部に設けた駆動輪6及び従動輪7、駆動輪6の軸に出力軸を連結した駆動装置(走行用油圧モータ)8、並びに駆動輪6及び従動輪7に掛け回した履帯(無限軌道履帯)9を有している。トラックフレーム5上には前後に延在する本体フレーム10が設けられており、この本体フレーム10によって、破砕機本体部2や排出コンベヤ3、動力装置4等が支持されている。
【0019】
破砕機本体部2は、被破砕物を破砕する破砕装置13(後述の図3参照)、被破砕物を投入するホッパ11、このホッパ11内に収容配置された送りコンベヤ12、及び送りコンベア12とともに被破砕物を破砕装置13に供給する供給装置を構成する押圧ローラ装置14(後述の図3参照)を備えている。破砕機本体部2の構成については後述する。
【0020】
排出コンベヤ3は、コンベヤフレーム50、このコンベヤフレーム50の前後両端に設けた駆動輪及び従動輪(不図示)、駆動輪と従動輪との間に掛け回したコンベヤベルト(不図示)、コンベヤベルトの搬送面の上方を覆うようにコンベヤフレーム50に取り付けたコンベヤカバー51、駆動輪を回転駆動してコンベヤベルトを循環駆動させる駆動装置(排出コンベヤ用油圧モータ)52等を有している。この排出コンベヤ3は、下流側(前方側)の部分が動力装置4の支持部から前方に延びる支持部材53により、上流側(後方側)の端部が支持部材54を介して本体フレーム10によりそれぞれ吊り下げられていて、左右の履帯9の間の破砕装置13(後述の図3参照)の下方付近から前方にほぼ水平に延在するとともに、動力装置4の下方あたりで二段階に屈曲して上り傾斜に転じ、輸送制限寸法の範囲で極力高い位置まで延在している。但し、このように屈曲したコンベヤを用いずに、本体フレーム10の下部領域において破砕装置13の下方から前方に直線状に延在する第1コンベヤ、及び第1コンベヤの放出端の下方から前方に向かって直線状に上る第2コンベヤで、乗り継ぎ式の排出コンベヤを構成する場合もある。
【0021】
動力装置4は、本体フレーム10の前部に支持部材55を介して搭載されている。この動力装置4の後方側でかつ機体幅方向一方側(本実施形態では右側)の区画には運転席56が設けられている。運転席56には破砕機を走行操作するための操作レバー57が設けられている。走行操作用の操作装置は、本実施形態のように運転席56に操作レバー57を設ける代わりに、有線又は無線のリモコンを用いる場合もある。また、動力装置4の下部でかつ機体幅方向一方側(本実施形態では右側)には、走行操作以外の機体操作や設定、モニタリング等を行うための操作盤58が設けられている。操作盤58は、本実施形態では地上から作業者が操作し易いように機体の側部に設けられているが、運転席56に設けても構わない。
【0022】
図3は破砕機本体部2の内部の要部を抜き出して表した側面図、図4はこれを後方から見た背面図である。
【0023】
図3及び図4に示したように、上記ホッパ11は、上部及び前方が開口した有底形状の枠体であり、本体フレーム10の後部に水平に設置されている。
【0024】
上記送りコンベヤ12は、機体幅方向に回転軸21が延在するヘッド側の駆動輪16、同じく機体幅方向に回転軸(不図示)が延在するテール側の従動輪(不図示)、及び駆動輪16及び従動輪の間に掛け回した複数列(本実施形態では4列)の搬送ベルト(チェーンベルト)17を備え、機体後端近傍から破砕ロータ15の後面下半側に対向する位置までホッパ11内でほぼ水平に延在している。従動輪はホッパ11の左右の側壁体18(図1参照)における後部に設けた軸受19(図1参照)によって、また駆動輪16は破砕装置13の側壁を構成する破砕機フレーム20に設けた軸受(不図示)によって支持されている。駆動輪16の回転軸21は、軸受よりも機体幅方向外側に設けた駆動装置(不図示)の出力軸にカップリング等を介して連結している。当該駆動装置で駆動輪16を回転駆動することによって駆動輪16及び従動輪の間で搬送ベルト17が循環駆動する。
【0025】
破砕装置13は、送りコンベア12の前方に位置するように本体フレーム10の前後ほぼ中央位置に搭載されている。この破砕装置13は、破砕室27内に収容した上記の破砕ロータ15、及び破砕室27の内周壁部に破砕ロータ15側に突出して設けた反発板であるアンビル29を備えている。破砕ロータ15は外周部に複数の破砕ビット36を備えており、その回転軸は送りコンベヤ12の駆動輪16の軸と実質平行、すなわち機体幅方向に延在している。破砕ロータ15は回転体であるため、その最外周部の回転軌跡面と静止体であるアンビル29との間には所定の間隙が確保されている。
【0026】
ここで、破砕室27とは、破砕ロータ15を収容し被破砕物を破砕処理する空間をいう。具体的には、破砕ロータ15の前面及び下面に対向する円弧面状の壁面が存在し、この円弧面状の壁面と押圧ローラ装置14や送りコンベヤ12で囲まれた破砕ロータ15の周囲の空間が破砕室27を画定する。円弧面状の壁面の一部はスクリーン38になっていて、スクリーン38の目よりも小さくなるまで破砕された破砕物がスクリーン38を通過して破砕室27から排出される構成である。
【0027】
上記押圧ローラ装置14は、破砕ロータ15前面の上方にて機体幅方向に延在する回動軸22、回動軸22を支点に上下方向に揺動可能な支持部材23、支持部材23に回転自在に支持されて送りコンベヤ12の駆動輪16付近の搬送面に対向する押圧ローラ24、及び押圧ローラ24の支持部材23を揺動させる油圧シリンダ(不図示)を備えている。
【0028】
回動軸22は、破砕機フレーム20に設けた軸受(不図示)に回転自在に支持されている。
【0029】
支持部材23は、回動軸22に支持されたアーム部25、及びアーム部25の先端側に連結された押圧ローラ取り付け用のブラケット部26を備えている。アーム部25の下面における押圧ローラ24の前方側の部分は弧状に凹んだ形状をしていて、この弧状の部分に押圧ローラ24の外周面に対向するように湾曲板28が取付けられている。
【0030】
油圧シリンダは図示省略しているが、当該油圧シリンダのロッド側端部が連結されるのが支持部材23の先端側(後端側)上部に設けた左右のブラケット32である。この油圧シリンダはメンテナンス等の際に強制的に押圧ローラ装置14を上方に回動させるものである。
【0031】
押圧ローラ24は、中空の筒状のローラ本体41、及び先端部がローラ本体41の外周面から径方向外側に突出した複数の爪部材42を備えている。図4に示すように、ローラ本体41は、その軸方向の寸法が送りコンベヤ12の搬送面の幅と概ね同じ程度、若しくはそれよりも若干大きい程度に設定されており、当該ローラ本体41を回転駆動させる駆動装置(図示せず)をその内部に収容している。この駆動装置によって、送りコンベア12により搬送される被破砕物に転動する方向(図3では反時計回り)に送りコンベヤ12による被破砕物の搬送速度に同調した速度で押圧ローラ24が回転駆動する。
【0032】
図5は図4と同方向から見た押圧ローラ24の背面図、図6は図5中のVI−VI線による矢視側面図、図7は図5中のVII−VII線による矢視断面図、図8は図7中のVIII−VIII線による矢視断面図である。なお、図6は側面のカバー(不図示)を取り外した状態を示している。
【0033】
図5−図8に示したように、ローラ本体41は、外周面に複数の凹部43を備えている。具体的には、凹部43は、ローラ本体41の外周面に開けた矩形の開口44、及び有底状のカップ45からなっていて、カップ45の開口をローラ本体41の開口44に合わせてカップ45の縁部をローラ本体41の内周面に溶接等の適宜の接合手段で接合することで構成されている。本実施形態では、このような凹部43がローラ本体41の外周面に軸方向に一定間隔で複数設けられ、この凹部43の列がローラ本体41の全周に設けられている。また、周方向に隣接する凹部43の列は軸方向に半ピッチずれていて、凹部43が周方向に千鳥状になっている。なお、ローラ本体41の軸方向両端の外周部には、リング状のフランジ46が溶接等の適宜の接合手段によって接合されている。このフランジ46に側面のカバー(不図示)が取り付けられ、カバーを介して回転軸や駆動装置(ともに不図示)が取り付けられる。
【0034】
爪部材42は、押圧ローラ24と被破砕物との間のすべりを抑制する手段であって押圧ローラ24が被破砕物をグリップして確り捉えるためのものである。この爪部材42は、図8に示したようにローラ本体41の周方向から見ると、板状の爪本体47、及び円筒状の基部48からなっていて、基部48に設けた軸穴49にピン50を通し、このピン50をナット等の締結手段51(図7等参照)によって上記カップ45に取り付けることで、カップ45に対して回動可能に取り付けられている。図7及び図8から判る通り、ピン50はローラ本体41の回転中心線Cを通る面S1に直交する線L(線Lはローラ本体41の接線に平行)に沿って延びていて、各爪部材42は、それぞれピン50を支点にして先端部がローラ本体41の軸方向に揺動可能な構成となっている。爪部材42の揺動範囲αは、ローラ本体41の開口44の幅Wで制限されるが、ローラ本体41の回転中心線Cに直交する面S2を中心としてローラ本体41の軸方向両側に45度ずつ(合わせて90度)以下とすることが望ましい。
【0035】
また、爪部材42は、図7に示したように軸方向から見ると、先端側(ローラ本体41の径方向外側)の部分52が三角形状、基端側(回転中心線C側)の部分53が矩形状で、全体として五角形状に形成されている。爪部材42の先端側部分52の頂角54は上記の面S1上若しくはその近傍にあり、先端側部分52と基端側部分53の境界の角55はローラ本体41の外形線(外周面)上の位置若しくはその近傍にある。したがって、爪部材42の先端側部分52がローラ本体41の外周面から当該ローラ本体41の径方向外側に突出しいて、基端側部分53が凹部43内に収容されている。
【0036】
なお、押圧ローラ24の回転中心線Cに直交する面S2に爪本体47を沿わせた姿勢を爪部材42の中立位置とした場合、図8の構成では爪部材42を中立位置に積極的に付勢する手段を特に設けていないが、爪部材42を中立位置に付勢する付勢手段を押圧ローラ24が更に備える構成とすることもできる。これを実現する構成としては、例えば図9に示した他の構成例のように、爪本体47の回動方向の両側において凹部43の内壁面との間にコイルスプリング56を設ける構成が考えられる。勿論、コイルスプリングは、何らかの弾性体で代替できることは言うまでもなく、例えば図10に示したようにラバースプリング57に代えることができる。これら弾性体は、例えば爪部材42と凹部43の壁面の双方に対して両端を固定する構成としても良いが、一旦のみを爪部材42又は凹部43の壁面に固定する構成としても良い。また、積極的に爪部材42を中立位置に付勢しないまでも、爪部材42と凹部43の壁面との衝突を和らげる上では、何らかの緩衝材となり得るもの(スポンジ等)を弾性体の代わりに設置することも考えられる。
【0037】
次に上記構成の本実施形態の破砕機の動作を説明する。
【0038】
グラップル等の適宜の作業具を備えた重機(油圧ショベル等)等によってホッパ11内に被破砕物を投入すると、被破砕物が送りコンベヤ12の搬送ベルト17に載って破砕装置13に向かって搬送される。被破砕物が破砕装置13の手前のところに差し掛かると、例えば図3のように押圧ローラ装置14の押圧ローラ24が被破砕物上に乗り上げ、押圧ローラ24の自重によって送りコンベヤ12の搬送面に被破砕物Xが押し付けられる。押圧ローラ24は送りコンベヤ12の搬送速度に同調して自転しており、被破砕物Xは搬送ベルト17と押圧ローラ24に挟持され、送りコンベヤ12と押圧ローラ装置14の協働によって破砕室27へ押し込まれる。破砕室27に送り込まれた被破砕物Xは、押圧ローラ24と搬送ベルト17とで挟持された部分を支点に片持ち梁状に破砕ロータ15に向かって突出する。図3に矢印で示したように、破砕ロータ15は被破砕物Xに対して破砕ビット36が下から衝突する向き(同図中時計回り)に回転するので、破砕反力が主に押圧ローラ24によって受けられる構成である。
【0039】
破砕ロータ15に向かって押し込まれる被破砕物Xは、押圧ローラ24によって上方から押さえられつつ、下方から高速で衝突してくる破砕ロータ15の破砕ビット36によって先端から徐々に粗破砕(1次破砕)されていく。このように1次破砕されて破砕室27内で跳ね上げられた被破片はアンビル29に衝突し、その衝撃力によりさらに細かく破砕(2次破砕)される。2次破砕された破砕片のうち既にスクリーン38を通過する程度に小さいものはスクリーン38を通過して排出され、通過しない比較的大きなものは破砕ロータ15の回転に伴って破砕室27内を周回し、アンビル29や破砕ビット36、スクリーン38等の破砕室27の内壁面等との衝突作用や剪断作用、すり潰し作用等を受けてさらに破砕(3次破砕)される。そして、周回する破砕片のうち3次破砕を経てスクリーン38の目を通過する大きさに細粒化されたものから順次スクリーン38を通過して破砕装置13から排出される。破砕装置13から排出された破砕物は、シュート(不図示)を介して排出コンベヤ3上に落下し、排出コンベヤ3によって機外に搬出される。
【0040】
ここで、上記の押圧ローラ24には爪部材42が外周面に多数設けられているので、押圧ローラ24と被破砕物Xとの間のすべりが起き難くなっている。図3に示したように長尺の被破砕物Xが破砕室27に送り込まれると、傾向として、破砕の進展に伴って同図に示したように被破砕物Xの先端に形成される破砕面Yが破砕ロータ15の最外周部の軌跡面に合わせて円弧面状に形成されていく。この場合、仮に破砕ロータ15の軌跡面に一致したまま被破砕物Xの破砕面Yが拡大し破砕面の円弧長Zが伸びていくと、破砕ビット36が破砕面Yの表面を擦るような状態となって1次破砕が進展しなくなり著しく破砕効率が低下する。
【0041】
それに対し、本実施形態では、押圧ローラ24の爪部材42を押圧ローラ24の軸方向に揺動可能な構成としたことにより、被破砕物Xが破砕されている最中に例えば破砕振動や機体の振動によって被破砕物Xを押さえる爪部材42が左右のいずれかに倒れ、破砕ロータ15に対する破砕面Yの当たり方が変化し得る。破砕ロータ15に対する破砕面Yの当たり方は、劇的に変化しなくても多少なりとも変化することで、破砕面Yと破砕ビット36が面同士で接触していたのが破砕面Yに破砕ビット36の角が当たるようになり、破砕接触力が高まって(破砕抵抗が弱まって)再び被破砕物Xが効率的に破砕され始める。このような作用が破砕作業中に適宜繰り返し働き得ることで、破砕作業の進展に伴う破砕効率の低下の抑制が期待できる。例えばオペレータが破砕機の運転状況に注意を払いながら必要の度に重機の運転を中断して供給装置(送りコンベヤ12及び押圧ローラ装置14)を逆転操作して被破砕物Xの破砕ロータ15に対する当たり方を変化させるといった手動操作を要する場面が減少し得るので、作業効率も大きく向上し得る。
【0042】
また、仮に爪部材42の揺動範囲αが90度より大きいと、送りコンベヤ12の送り方向から見て(図4の図示方向から見て)、爪部材42とローラ本体41の外周面とがなす角度(同図及び図8中の角度β)が45度未満になり得る。図8に示した状態(角度β=90°)では、爪部材24にかかる押圧ローラ24の重量が全て被破砕物Xに作用するので、被破砕物Xに爪部材24が噛み込む力、すなわち爪部材24が被破砕物Xをグリップする力が最大になる。一方、図8中に二点差線で例示したように爪部材24が左右いずれかに倒れると、押圧ローラ24の自重により押圧力がかかったときに、爪部材24にかかる押し付け反力Fの分力f1,f2が発生する。分力f1は爪部材24の伸び方向に作用する力であって被破砕物Xをグリップする力である。分力f2は爪部材24に直交する方向に作用する力であって爪部材24を倒そうとする力である。角度βが45度未満になると、分力f2が分力f1よりも大きくなり、爪部材24を倒そうとする力が爪部材24をグリップする力に勝ってしまうため、グリップ力の確保という爪部材42の本来の効果が弱まる恐れがある。それに対し、本実施形態では、爪部材42の揺動範囲αを90度以下に制限することで、角度βが常に45度以上(45°≦β≦135°)になるので、押圧ローラ24の押圧力を被破砕物Xのグリップ力として有効に作用させることができ、上記の破砕面Yの当たりの変化を積極的に誘起しつつ、グリップ力を確りと確保することができる。
【0043】
また、本質的効果を得る上では必ずしも必要な構成ではないが、図9や図10の構成例に示したように、爪部材42を中立位置に付勢する付勢手段を更に備えることで、被破砕物Xに対して垂直に爪部材42を噛み込ませ易くなる。被破砕物Xに対して垂直に爪部材42が噛み込めば、グリップ力が確りと働くことに加え、その後に爪部材42が揺動し得る幅が最も大きく確保できるとともに、左右いずれの方向にも平等に揺動し易くなり、本質的効果が効果的に得易くなる。また、前述した通り、付勢手段又は付勢手段に代えて設置する緩衝材には、爪部材42と凹部43の壁面との衝突を和らげる効果も期待でき、爪部材42やローラ本体41の損傷抑制の効果が期待できる。
【0044】
なお、以上においては、本発明を自力走行可能な破砕機に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、牽引により走行可能な移動式破砕機、若しくはクレーン等により吊り上げて運搬可能な可搬式破砕機、さらにはプラント等において固定機械として配置される定置式破砕機にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
12 送りコンベア
13 破砕装置
14 押圧ローラ装置
24 押圧ローラ
42 爪部材
43 凹部
50 ピン
56 コイルスプリング(付勢手段)
57 ラバースプリング(付勢手段)
C 回転中心線
S2 回転中心線に直交する面
X 被破砕物
α 揺動範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被破砕物を破砕する破砕装置と、
この破砕装置に向かって被破砕物を搬送する送りコンベアと、
この送りコンベア上の被破砕物を押圧ローラで押圧し、前記送りコンベヤと協働して被破砕物を前記破砕装置に供給する押圧ローラ装置とを備え、
前記押圧ローラは、先端部が当該押圧ローラの径方向外側に突出した爪部材を外周面に複数備えており、
前記複数の爪部材は、それぞれ先端部が前記押圧ローラの軸方向に揺動可能であることを特徴とする破砕機。
【請求項2】
前記押圧ローラは、外周面に設けた複数の凹部を備えており、
前記複数の爪部材は、それぞれ前記凹部にピンを介して取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項3】
前記押圧ローラの回転中心線に直交する面に沿った姿勢を前記爪部材の中立位置とした場合、前記押圧ローラは、前記爪部材を前記中立位置に付勢する付勢手段を更に備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の破砕機。
【請求項4】
前記爪部材の揺動範囲が90度以下であることを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載の破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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