説明

破砕装置

【課題】無機多孔質断熱材及び繊維質断熱材の両方を簡便に且つ効率よく処理できる破砕装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る破砕装置は、平行に配置された一対の回転軸10L,10Rに設けられた第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rを備える破砕装置であって、前記第一破砕刃20L及び前記第二破砕刃20Rの各々は、径方向外側に突出するフック部21L,21Rを複数有し、前記第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rは、前記回転軸10L,10R方向視において、前記第一破砕刃20Lの前記フック部21Lと前記第二破砕刃20Rの前記フック部21Rとの間に形成された隙間20Gが、その回転の間に一時的に消失するよう配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕装置に関し、特に、多孔質断熱材及び繊維質断熱材の処理に適した破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
嵩の大きな廃材を処理する場合には、当該廃材を破砕し、さらに圧縮して、その体積を低減する処理(いわゆる減容処理)を行うことが有効である。従来、例えば、ケイ酸カルシウム断熱材等の無機多孔質断熱材からなる廃材を処理する場合には、当該無機多孔質断熱材の破砕に適した形状及び配置の破砕刃を備えた破砕装置が使用されていた。
【0003】
一方、例えば、特許文献1には、コンクリート等の廃材と、木材のように長い繊維を有する廃材と、を破砕処理するために、一対のロータに配置された複数の破砕歯と、複数の補助破砕歯を有する補助破砕体と、を備えた装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−344776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、例えば、ケイ酸カルシウム断熱材等の無機多孔質断熱材と、ロックウール断熱材等の繊維質断熱材と、の両方を含有する廃材を簡便に且つ効率よく処理することは困難であった。
【0006】
すなわち、無機多孔質断熱材の破砕に適した破砕刃を備えた従来の破砕装置は、繊維質断熱材に含まれる繊維を十分に切断することができなかった。また、上記特許文献1に記載の装置は、コンクリートの破砕に適した破砕歯に加えて、木材の破砕に適した補助破砕歯を別途備えたものであるため、装置の構造が複雑となり、且つ装置が大型化してしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、無機多孔質断熱材及び繊維質断熱材の両方を簡便に且つ効率よく処理できる破砕装置を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る破砕装置は、平行に配置された一対の回転軸に設けられた第一破砕刃及び第二破砕刃を備える破砕装置であって、前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃の各々は、径方向外側に突出するフック部を複数有し、前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃は、前記回転軸方向視において、前記第一破砕刃の前記フック部と前記第二破砕刃の前記フック部との間に形成された隙間が、その回転の間に一時的に消失するよう配置されていることを特徴とする。本発明によれば、無機多孔質断熱材及び繊維質断熱材の両方を簡便に且つ効率よく処理できる破砕装置を提供することができる。
【0009】
また、前記フック部は、その回転方向における前方側部分及び後方側部分をそれぞれ構成する前面部及び後面部を有し、前記隙間は、前記第一破砕刃の複数の前記フック部のうち回転方向の前後に隣接して配置される第一前フック部及び第一後フック部と、前記第二破砕刃の複数の前記フック部のうち回転方向の前後に隣接して配置される第二前フック部及び第二後フック部と、の間に形成され、前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃は、その回転の間に、前記回転軸方向視において、前記第一前フック部の前記後面部と前記第二前フック部の前記後面部とが重複し、且つ前記第一後フック部の前記前面部と前記第二後フック部の前記前面部とが重複することにより、前記隙間が一時的に消失するよう配置されていることとしてもよい。
【0010】
また、前記フック部の前記後面部は、前記回転軸方向視において直線状に形成され、前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃は、その回転の間に、前記回転軸方向視において、前記第一前フック部の前記後面部と前記第二前フック部の前記後面部とが平行となる位置で、前記隙間が一時的に消失するよう配置されていることとしてもよい。
【0011】
また、前記破砕装置は、前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃により破砕された対象物を圧縮する圧縮部と、前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃により破砕された前記対象物を前記圧縮部に輸送する輸送部と、をさらに備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無機多孔質断熱材及び繊維質断熱材の両方を簡便に且つ効率よく処理できる破砕装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る破砕装置の一例について、その主な構成を平面視で示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る破砕装置の一例について、その主な構成を側面視で示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る破砕装置の一例が備える一対の破砕刃を回転軸方向視で示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る破砕装置の一例が備える破砕刃を回転軸方向視で示す説明図である。
【図5】図4に示すV−V線で切断した破砕刃の断面を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る破砕装置の一例が備える一対の破砕刃が回転する過程を示す説明図である。
【図7】従来の破砕装置が備える一対の破砕刃が回転する過程を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る破砕装置の他の例について、その主な構成を側面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係る破砕装置(以下、「本装置1」という。)ついて説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
【0015】
図1は、本装置1の一例について、その主な構成を平面視で示す説明図である。図2は、本装置1の一例について、その主な構成を側面視で示す説明図である。図3は、本装置1の一例が備える一対の破砕刃20L,20Rを回転軸10L,10R方向視で示す説明図である。
【0016】
図4は、本装置1の一例が備える破砕刃20を回転軸10L,10R方向視で示す説明図である。図5は、図4に示すV−V線で切断した破砕刃20の断面を示す説明図である。
【0017】
図6は、本装置1の一例が備える一対の破砕刃20L,20Rが回転する過程を示す説明図である。図7は、従来の破砕装置2が備える一対の破砕刃200L,200Rが回転する過程を示す説明図である。
【0018】
まず、本装置1の概要について説明する。図1〜図6に示すように、本装置1は、平行に配置された一対の回転軸10L,10Rに設けられた第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rを備える破砕装置である。図3〜図6に示すように、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rの各々は、径方向外側に突出するフック部21L,21Rを複数有している。
【0019】
そして、図3及び図6に示すように、本装置1において、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rは、回転軸10L,10R方向視において、当該第一破砕刃20Lのフック部21Lと当該第二破砕刃20Rのフック部21Rとの間に形成された隙間20Gが、その回転の間に一時的に消失するよう配置されている。
【0020】
したがって、本装置1は、無機多孔質断熱材及び繊維質断熱材の両方を簡便に且つ効率よく処理することができる。すなわち、本装置1は、図2に示すように、処理の対象とする対象物M(例えば、廃材)が、ケイ酸カルシウム断熱材等の無機多孔質断熱材M1(例えば、配管の外周を覆っていた円筒状の断熱材)と、ロックウール断熱材等の繊維質断熱材M2(例えば、建築物の壁面を覆っていた不定形の断熱材)と、の両方を含む場合であっても、上述のように、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rが、当該対象物Mを受け入れる隙間20G(図6参照)が一時的に消失するように回転することによって、当該無機多孔質断熱材M1のみならず、当該繊維質断熱材M2をも効率よく破砕することができる。
【0021】
この点、従来の破砕装置としては、図7に示すように、平行に配置された一対の回転軸100L,100Rに設けられた第一破砕刃200L及び第二破砕刃200Rを備えたものがあったが、当該従来の破砕刃200L,200Rの形状及び配置は、あくまでも、非繊維質である無機多孔質断熱材の噛み込み及び破砕に適したものであった。
【0022】
すなわち、図7に示すように、第一破砕刃200L及び第二破砕刃200Rが回転する間に、該第一破砕刃200Lのフック部210Lと当該第二破砕刃200Rのフック部210Rとの間に形成された隙間200Gが消失することはなかった。
【0023】
このため、従来の破砕装置においては、ケイ酸カルシウム断熱材等の多孔質断熱材を破砕することはできたものの、ロックウール断熱材等の繊維質断熱材を十分に破砕することはできなかった。すなわち、隙間200Gに保持された繊維質断熱材に含まれる繊維の多くは、切断されることなく、長いまま排出されることとなっていた。
【0024】
これに対し、本装置1においては、隙間20Gを形成していた一対のフック部21L,21Rが、当該隙間20Gの消失時に、いわばハサミのように機能することによって、当該隙間20Gに保持された繊維質断熱材に含まれる繊維を十分に切断することができる。もちろん、本装置1によれば、多孔質断熱材も十分に破砕することができる。
【0025】
このように、本装置1は、多孔質断熱材の効率的な破砕と、繊維質断熱材に含まれる繊維の効率的な切断と、を同時に達成できる一対の破砕刃20L,20Rを備えたものである。したがって、本装置1は、例えば、繊維の破砕に特化した特殊な補助破砕装置を別途備える必要がなく、その構造はシンプルであり、大型化する必要もない。
【0026】
次に、本装置1の詳細について説明する。本装置1は、平行に配置された第一回転軸10Lと第二回転軸10Rとを備えている。これら第一回転軸10L及び第二回転軸10Rは、回転可能に設けられている。すなわち、第一回転軸10L及び第二回転軸10Rは、本装置1が備えるモータ等の動力装置30に接続されている。
【0027】
具体的に、図1及び図2に示す例では、一方の第二回転軸10Rが動力装置30に接続され、他方の第一回転軸10Lは、不図示のギアを介して当該第二回転軸10Rと接続されている。したがって、動力装置30によって、第一回転軸10Lと第二回転軸10Rとが連動して回転する。
【0028】
本装置1は、第一回転軸10Lに設けられた複数の第一破砕刃20Lと、第二回転軸10Rに設けられた複数の第二破砕刃20Rと、を備えている。すなわち、図1及び図2に示す例において、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rは、第一回転軸10L及び第二回転軸10Rに沿って、4つずつ設けられている。
【0029】
ここで、図4及び図5を参照しながら、1つの破砕刃20について詳しく説明する。なお、以下、同様の複数の部材(例えば、第一破砕刃20Lと第二破砕刃20R)に共通の説明においては、当該部材に付する符号の一部(例えば、L、R)を省略する。
【0030】
破砕刃20は、その外周に、径方向外側に突出する複数のフック部21を有している。具体的に、図4に示す例では、破砕刃20の外周に沿って、8つのフック部21が等間隔で設けられている。
【0031】
フック部21は、図4に示すように、回転軸10(図1〜図3参照)方向視において、その先端が尖った先鋭形状に形成されている。すなわち、フック部21は、例えば、三角形状又は台形状に形成される。また、図4に示す例において、フック部21は、破砕刃20の回転方向(図4に示す矢印Pの指す方向)側に傾斜した先鋭形状となっている。
【0032】
一方、図5に示すように、径方向視(平面視や側面視)において、フック部21は、非先鋭形状となっている。すなわち、図5に示す例において、フック部21の厚み(回転軸10方向の長さ)は径方向において一定となっている。
【0033】
また、図4に示すように、フック部21は、その回転方向における前方側部分及び後方側部分をそれぞれ構成する前面部21a及び後面部21bを有している。前面部21a及び後面部21bは、回転軸10方向視において、フック部21の先鋭形状の回転方向前方側及び後方側の辺をそれぞれなす部分である。図4に示す例において、フック部21は、破砕刃20の回転方向側に傾斜した先鋭形状となっているため、その後面部21bの長さは、前面部21aの長さより大きくなっている。さらに、図4に示す例において、フック部21の後面部21bは、回転軸10方向視において直線状に形成されている。
【0034】
破砕刃20の径方向中央部には、回転軸10が挿通される軸穴22が形成されている。また、破砕刃20は、回転軸10方向に突出するスペーサ部23を有している。すなわち、図4及び図5に示す例において、スペーサ部23は、破砕刃20の中央部分から回転軸10方向に突出して設けられている。より具体的に、このスペーサ部23は、その外径が破砕刃20の外径より小さい円筒形状に形成されている。
【0035】
スペーサ部23は、回転軸10方向に配置される複数の破砕刃20の間隔を規定する。すなわち、スペーサ部23は、回転軸10方向に隣接する2つの破砕刃20の間に挟持されるように配置される(図1及び図2参照)。
【0036】
また、図4及び図5に示す例において、スペーサ部23は、破砕刃20と一体的に設けられている。このように破砕刃20がスペーサ部23を一体的に有することにより、複数の破砕刃20を回転軸10に沿って順次嵌め入れるだけで、当該複数の破砕刃20を当該スペーサ部23により規定される間隔で簡便に配置することができる。
【0037】
なお、スペーサ部23は、破砕刃20とは別体とすることもできる。この場合、スペーサ部23は、破砕刃20と分離可能な別の部材であるため、当該破砕刃20とスペーサ部23とを回転軸10に沿って交互に嵌め入れることによって、複数の当該破砕刃20を当該スペーサ部23により規定される間隔で配置することとなる。
【0038】
また、図4及び図5に示す例において、破砕刃20は、基部24を有している。基部24は、破砕刃20のうち、複数のフック部21とスペーサ部23との間の部分である。すなわち、破砕刃20は、その中央部分において回転軸10方向に突出するスペーサ部23と、当該スペーサ部23から径方向外側に張り出す基部24と、当該基部24から当該径方向外側に突出する複数のフック部21と、を有している。
【0039】
具体的に、図4に示す例において、基部24は、回転軸10方向視において、その外周が複数のフック部21の内接円(図4において二点鎖線で示す仮想的な円)であって、その内周がスペーサ部23の外周である、リング状部分となっている。
【0040】
そして、図4に示す例においては、フック部21の高さE1よりも、基部24の高さE2の方が大きくなっている。すなわち、破砕刃20の外半径(複数のフック部21の外接円(不図示)の半径)D1から基部24の外半径(複数のフック部21の内接円の半径)D2を減じた長さ(フック部21の高さE1)よりも、当該基部24の当該外半径D2からスペーサ部23の外半径D3を減じた長さ(基部24の高さE2)の方が大きくなっている。
【0041】
次に、図1〜図3を参照しながら、一対の破砕刃20L,20Rの配置及び動作について詳しく説明する。
【0042】
図1及び図2に示すように、複数の第一破砕刃20Lと複数の第二破砕刃20Rとは、回転軸10L,10R方向において、互いに噛み合うように配置されている。すなわち、複数の第一破砕刃20Lと複数の第二破砕刃20Rとは、回転軸10L,10R方向において、一部のフック部21L,21Rが重複するように、交互に配置されている。
【0043】
また、図1及び図2に示すように、複数の第一破砕刃20Lと複数の第二破砕刃20Rとは、径方向において、一方のフック部21L,21Rが他方のスペーサ部23と重複するように配置されている。
【0044】
すなわち、図1に示すように、本装置1の最も前方に配置された第一破砕刃20L(図1において最も左側の第一破砕刃20L)のフック部21Lと、最も前方に配置された第二破砕刃20R(図1において最も左側の第二破砕刃20R)のスペーサ部23Rと、は径方向において重複するように配置されている。
【0045】
同様に、本装置1の前方から2番目に配置された第二破砕刃20R(図1の左から2番目の第二破砕刃20R)のフック部21Rと、最も前方に配置された第一破砕刃20Lのスペーサ部23Lと、は径方向において重複するように配置されている。
【0046】
このように、複数の第一破砕刃20Lと複数の第二破砕刃20Rとは、回転軸10L,10R方向及び径方向において、互いに近接して配置されている。
【0047】
また、図3に示す例において、回転軸10L,10Rにおいて隣接する一対の第一破砕刃20Lと第二破砕刃20Rとは、その形状が同一であり、且つ、回転中心CL,CRを通る仮想線Kの中点を通り当該仮想線Kに垂直な仮想線(不図示)に対して対称に配置されている。
【0048】
一方、第一回転軸10Lに沿って配置される複数の第一破砕刃20Lは、当該第一回転軸10L方向視において、所定の角度(例えば、11度)ずつずれるように配置され、第二回転軸10Rに沿って配置される複数の第二破砕刃20Rもまた、当該第二回転軸10R方向視において、当該所定の角度ずつずれるように配置されている。
【0049】
したがって、本装置1においては、回転軸10L,10R方向視において線対称に配置された一対の第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rが、当該回転軸10L,10Rに沿って、所定の角度ずつずれるように配置されている。
【0050】
すなわち、図1及び図2に示す例においては、本装置1の前方側(図1及び図2における左側)から、まず線対称に配置された第一の対の第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rが配置され、次いで所定の角度だけずれて線対称に配置された第二の対の第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rが配置され、さらに所定の角度だけずれて線対称に配置された第三の対の第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rが配置され、最後にさらに所定の角度だけずれて線対称に配置された第四の対の第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rが配置されている。
【0051】
また、図3に示す例において、回転中心CL,CR間の距離TCは、第一破砕刃20Lの回転中心CLとそのフック部21Lの後面部21Lbとの距離(回転中心CLからフック部21Lの後面部21Lbに下ろした垂線の長さ)TLと、第二破砕刃20Rの回転中心CRとそのフック部21Rの後面部21Rbとの距離TR(回転中心CRからフック部21Rの後面部21Rbに下ろした垂線の長さ)と、の合計よりも短くなっている。
【0052】
そして、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rは、これらの間に対象物M(図2参照)を噛み込むように回転する。すなわち、図3に示す例において、一方の第一破砕刃20Lは時計回り(矢印PLの指す方向)に回転し、他方の第二破砕刃20Rは逆に反時計回り(矢印PRの指す方向)に回転する。
【0053】
このため、図2に示すように、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rの上方から投入された対象物Mは、当該第一破砕刃20Lと第二破砕刃20Rとの間に巻き込まれ、破砕される。すなわち、例えば、上述のとおり、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rは、図1に示すように、径方向において、その一方のフック部21L,21Rが他方のスペーサ部23L,23Rと重複するように配置されているため、対象物Mは、当該径方向に対向する当該第一破砕刃20Lのフック部21Lと当該第二破砕刃20Rのスペーサ部23Rとの間に巻き込まれ、破砕される。
【0054】
そして、破砕された対象物Mは、第一破砕刃20Lと第二破砕刃20Rとの間から排出される。図2に示す例において、排出された破砕後の対象物Mは、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rの下方に設けられた部屋である収容部40に落下し、収容される。
【0055】
次に、図3及び図6を参照しながら、本装置1における対象物Mの破砕について、より詳細に説明する。
【0056】
まず、図3及び図6Aに示すように、第一破砕刃20Lと第二破砕刃20Rとの間には、回転軸10L,10R方向視において上方に開口した隙間20Gが形成される。すなわち、図6Aに示す例において、隙間20Gは、第一破砕刃20Lの複数のフック部21Lのうち回転方向(図6Aの矢印PLが指す方向)の前後に隣接して配置される第一前フック部21L1及び第一後フック部21L2と、第二破砕刃20Rの複数のフック部21Rのうち回転方向(図6Aの矢印PRが指す方向)の前後に隣接して配置される第二前フック部21R1及び第二後フック部21R2と、の間に形成されている。
【0057】
より具体的に、この隙間20Gは、第一破砕刃20Lの第一前フック部21L1の後面部21L1b及び第一後フック部21L2の前面部21L2aと、第二破砕刃20Rの第二前フック部21R1の後面部21R1b及び第二後フック部21R2の前面部21L2aと、の間に形成されている。
【0058】
次に、図6Bに示すように、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rが、図6Aに示す位置からそれぞれ20度回転すると、隙間20Gは小さくなり、図6Cに示すように、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rがさらに回転して、図6Aに示す位置からそれぞれ30度回転すると、隙間20Gはさらに小さくなる。
【0059】
そして、図6Dに示すように、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rがさらに回転して、図6Aに示す位置から40度回転すると、隙間20Gは消失する。すなわち、図6Dに示す例では、第一前フック部21L1の後面部21L1bと第二前フック部21R1の後面部21R1bとが重複し、且つ第一後フック部21L2の前面部21L2aと第二後フック部21R2の前面部21R2aとが重複することにより、隙間20Gが一時的に消失する。
【0060】
より具体的に、この隙間20Gの消失時に、第一前フック部21L1の後面部21L1bの全体と第二前フック部21R1の後面部21R1bの全体とが重複し、且つ第一後フック部21L2の前面部21L2aの全体と第二後フック部21R2の前面部21R2aの全体とが重複している。
【0061】
また、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rは、図6Dに示す位置から僅かに回転すると、図3及び図6Aに示すように配置されることとなる。すなわち、図3及び図6Aもまた、隙間20Gの消失時における第一破砕刃20Lと第二破砕刃20Rとの位置関係を示している。
【0062】
ここで、図3及び図6に示す例において、フック部21L,21Rの後面部21Lb,21Rbは、回転軸10L,10R方向視において直線状に形成されている。そして、図3及び図6Aに示すように、本装置1においては、第一破砕刃20Lの第一前フック部21L1の後面部21L1bと、第二破砕刃20Rの第二前フック部21R1の後面部21R1bと、が平行となる位置で、隙間20Gが消失するようになっている。
【0063】
すなわち、第一前フック部21L1の後面部21L1bと第二前フック部21R1の後面部21R1bとが平行となる位置で、当該第一前フック部21L1の後面部21L1bと当該第二前フック部21R1の後面部21R1bとが重複し、且つ第一後フック部21L2の前面部21L2aと第二後フック部21R2の前面部21R2aとが重複することにより、隙間20Gが一時的に消失している。
【0064】
また、図3に示す例では、第一破砕刃20Lのフック部21Lの後面部21Lbと、第二破砕刃20Rのフック部21Rの後面部21Rbと、が平行となるとき、当該第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rの回転中心CL,CR間を通る仮想線Kと、当該後面部21Lb,21Rbと、は直交している。
【0065】
このように、図3及び図6に係る例においては、隙間20Gを形成する一対のフック部21L,21Rの後面部21Lb,21Rbを直線状に形成し、且つ当該後面部21Lb,21Rbが互いに平行となる位置で当該隙間20Gが消失するように第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rが配置されている。
【0066】
したがって、隙間20Gの消失時に第一破砕刃20Lと第二破砕刃20Rとが重複する部分の面積を最小限に抑えることができている。
【0067】
このため、例えば、本装置1によって、ケイ酸カルシウム断熱材等の多孔質断熱材と、ロックウール断熱材等の繊維質断熱材と、を含む廃材を処理する場合には、隙間20Gの消失時に、第一破砕刃20Lと第二破砕刃20Rとが重複する部分に侵入する当該多孔質断熱材の量を効果的に低減することができ、又は当該重複する部分への当該多孔質断熱材の侵入自体を効果的に回避することができる。
【0068】
すなわち、第一破砕刃20Lと第二破砕刃20Rとの重複部分に多孔質断熱材が詰まると、本装置1の動作に不具合が生じる可能性があるが、上述のように、隙間20Gの消失時における当該重複部分の面積を最小限に抑えることにより、当該不具合の発生を効果的に回避することができる。
【0069】
次に、本装置1の他の例について説明する。図8は、本装置1の他の例について、主な構成を側面視で示す説明図である。
【0070】
この本装置1は、図8に示すように、上述した一対の回転軸10L,10Rと第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rとを含む破砕部50に加えて、当該第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rにより破砕された対象物Mを圧縮する圧縮部60と、当該第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rにより破砕された当該対象物Mを当該圧縮部60に輸送する輸送部70と、をさらに備える破砕装置である。
【0071】
すなわち、この例に係る本装置1は、対象物Mを圧縮する圧縮部60を備えた減容装置であって、当該対象物Mを予め破砕する破砕部50と、破砕後の当該対象物Mを当該圧縮部60に輸送する輸送部70と、を備えた減容装置であるともいえる。
【0072】
輸送部70は、破砕部50と圧縮部60とを接続するように設けられている。すなわち、輸送部70は、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rの下方から、圧縮部60の上方まで設けられている。
【0073】
より具体的に、図8に示す例において、輸送部70は、その一方端部分が第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rの下方に設けられ、他方端部分が圧縮部60の上方に設けられたスクリューコンベア71を有している。
【0074】
そして、輸送部70は、第一破砕刃20L及び第二破砕刃20Rから排出された破砕後の対象物Mを圧縮部60まで輸送する。すなわち、輸送部70は、収容部40に落下してくる破砕後の対象物Mを回収して圧縮部60の上方まで輸送するとともに、当該圧縮部60に投下する。
【0075】
圧縮部60は、輸送部70によって輸送されてきた破砕後の対象物Mを圧縮する。図8に示す例において、圧縮部60は、一対の回転軸61L,61Rに設けられた一対の圧縮ローラ62L,62Rを有している。
【0076】
この一対の圧縮ローラ62L,62Rは、一対の破砕刃20L,20Rと同様に、対象物Mを巻き込むように回転する。すなわち、一対の圧縮ローラ62L,62Rは、それぞれ図8に示す矢印QL,QRの指す方向に回転する。
【0077】
このため、一対の圧縮ローラ62L,62Rの上方から投入された対象物Mは、当該一対の圧縮ローラ62L,62Rの間に巻き込まれ、圧縮される。そして、圧縮された対象物Mは、一対の圧縮ローラ62L,62Rの間から排出される。
【0078】
図8に示す例において、排出された圧縮後の対象物Mは、一対の圧縮ローラ62L,62Rの下方に設けられた部屋である回収部63に落下し、収容される。なお、圧縮後の対象物Mは、例えば、袋詰めされ、搬出される。
【0079】
このように、破砕部50に加えて圧縮部60を備えた本装置1においては、一連の減容処理を効率よく行うために、当該圧縮部60による圧縮に先立って、当該破砕部50により対象物Mを予め十分に破砕しておく必要がある。
【0080】
この点、本装置1は、上述のとおり、一対の破砕刃20L,20R間に形成された隙間20Gに破砕前の対象物Mを受け入れ、次いで、当該隙間20Gが一時的に消失するように当該一対の破砕刃20L,20Rが一回転することによって、当該対象物Mに含まれる繊維を十分に切断することができる。
【0081】
したがって、本装置1によれば、対象物Mが、ケイ酸カルシウム等の多孔質断熱材に加えて、ロックウール断熱材等の繊維質断熱材を含む場合であっても、破砕部50による当該対象物Mの破砕及び切断と、破砕後の当該対象物Mの圧縮と、を含む一連の減容処理を簡便に且つ効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
1 破砕装置、10 回転軸、10L 第一回転軸、10R 第二回転軸、20 破砕刃、20G 隙間、20L 第一破砕刃、20R 第二破砕刃、21,21L,21R フック部、21L1 第一前フック部、21L2 第一後フック部、21R1 第二前フック部、21R2 第二後フック部、21a,21La,21L2a,21Ra,21R2a 前面部、21b,21Lb,21L1b,21Rb,21R1b 後面部、22 軸穴、23,23L,23R スペーサ部、24 基部、30 動力装置、40 収容部、50 破砕部、60 圧縮部、61L,61R 回転軸、62L,62R 圧縮ローラ、63 回収部、70 輸送部、71 スクリューコンベア、100L,100R 回転軸、200L 第一破砕刃、200R 第二破砕刃、210L,210R フック部、200G 隙間、M 対象物、M1 無機多孔質断熱材、M2 繊維質断熱材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された一対の回転軸に設けられた第一破砕刃及び第二破砕刃を備える破砕装置であって、
前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃の各々は、径方向外側に突出するフック部を複数有し、
前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃は、前記回転軸方向視において、前記第一破砕刃の前記フック部と前記第二破砕刃の前記フック部との間に形成された隙間が、その回転の間に一時的に消失するよう配置されている
ことを特徴とする破砕装置。
【請求項2】
前記フック部は、その回転方向における前方側部分及び後方側部分をそれぞれ構成する前面部及び後面部を有し、
前記隙間は、前記第一破砕刃の複数の前記フック部のうち回転方向の前後に隣接して配置される第一前フック部及び第一後フック部と、前記第二破砕刃の複数の前記フック部のうち回転方向の前後に隣接して配置される第二前フック部及び第二後フック部と、の間に形成され、
前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃は、その回転の間に、前記回転軸方向視において、前記第一前フック部の前記後面部と前記第二前フック部の前記後面部とが重複し、且つ前記第一後フック部の前記前面部と前記第二後フック部の前記前面部とが重複することにより、前記隙間が一時的に消失するよう配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の破砕装置。
【請求項3】
前記フック部の前記後面部は、前記回転軸方向視において直線状に形成され、
前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃は、その回転の間に、前記回転軸方向視において、前記第一前フック部の前記後面部と前記第二前フック部の前記後面部とが平行となる位置で、前記隙間が一時的に消失するよう配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の破砕装置。
【請求項4】
前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃により破砕された対象物を圧縮する圧縮部と、
前記第一破砕刃及び前記第二破砕刃により破砕された前記対象物を前記圧縮部に輸送する輸送部と、
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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