説明

硝酸性窒素を含む排水の連続的処理方法及び装置

【課題】 イオン交換膜等の隔膜を用いる電解により硝酸性窒素を含む排水を連続的に処理し、かつ塩素発生用電極にDSEを好適に使用できる排水処理する技術の提供。
さらに、好ましくは余剰の塩素を生成することなく硝酸性窒素を含む排水を連続的に処理する技術の提供。
【解決手段】 その技術は隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた電解槽の陰極室に硝酸性窒素を含む排水を連続的に給送して硝酸性窒素成分をアンモニアに還元し、前記陽極室に塩素化合物を含み、かつ硝酸性窒素成分を含有しない水溶液を給送して塩素ガスを生成させ、前記陽極室で生成した塩素ガスと前記陰極室で生成したアンモニアを含有する排水とを気液接触室に導いて気液反応させて窒素ガスと塩酸にすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高濃度、小規模の排水処理に有効な、硝酸性窒素を含む排水を電解により処理して脱窒する硝酸性窒素を含む排水を連続的に処理する方法及び装置に関する。
より詳しくは、本発明は、特に高濃度、小規模の排水処理に有効な、硝酸性窒素を含む排水を電解により処理して、アンモニア及び塩素を生成し、生成した塩素とアンモニアを含有する排水とを気液反応させて脱窒する硝酸性窒素を含む排水を連続的に処理する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硝酸性窒素成分を含む排水は、凝集沈殿法その他の薬剤添加による処理が難しく、専ら嫌気性細菌による生物処理が行われる。
その生物処理方法は、アンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換する硝化工程と、硝酸態窒素を窒素ガスに変換する脱窒工程の2工程により行われるため、2つの異なる反応槽が必要となると共に、著しく長い処理時間を要するため、処理効率が著しく悪いという問題があった。
さらに、この生物処理方法では、脱窒素細菌を保有するために、大容量の嫌気槽が必要となり、設備建設コスト高騰、装置設置面積の増大を招くという問題もある。
【0003】
また、この脱窒素細菌の活動は、周囲の温度環境、被処理水中に含有される成分等により著しく影響される。
そのため、特に温度が低くなる冬場になると活動が低下し、その結果脱窒素作用が低下し処理効率が不安定となるという問題もある。
このようなことに加えて、近年排水中の窒素の総量が規制されるなど排水処理基準の厳格化などとあいまって有効、かつ、簡易な処理方法の開発機運が高まっている。
特に、高濃度、小規模の排水処理ニーズに対応できる処理方法が求められている。
【0004】
【非特許文献1】広直樹,廣瀬潤,北山直樹,Electrochemistry,71,No.1(2003)
【特許文献1】特許第3530511号 近年、それに対処する方法として電解を利用した硝酸性窒素含有排水の処理方法が提案されている。 その方法は非特許文献1が開示する方法であり、それは電解槽の陰極においてNO3-を還元してNO2-を生成し、ついでそのNO2-を更に還元してアンモニアを生成し、他方陽極においては塩素あるいは活性酸素を生成し、それら生成したアンモニアと塩素あるいは活性酸素とを反応させて、アンモニアを窒素にすることにより排水を脱窒する方法であり、それは特許文献1においても従来技術として開示されている。
【0005】
その提案されている電解を利用した硝酸性窒素含有排水の処理方法においても、陽極側で塩素あるいは活性酸素の生成に加えて硝酸イオンを生成する逆反応も副次的に発生し、窒素除去効率を低下させるという問題が生じている。
この問題を解消するための技術も前記特許文献1で既に提案されており、それはイオン交換膜を隔膜として陰極室と陽極室とに区画した電解槽を用いて、硝酸性窒素を含有する排水を陰極室に供給して電解を行い、アンモニアを生成した後、そのアンモニアを溶存する排水を陽極室に移動させ、アンモニアと陽極室で生成した次亜塩素酸又は酸素とを反応させて窒素を生成させて脱窒する方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この提案されたイオン交換膜を隔膜として用いる電解による脱窒方法では、電解とアンモニアからの窒素の生成反応とが交互に行われており、その硝酸性窒素含有排水の処理は、間欠的で不連続なものとなっている。
また、次亜塩素酸又は酸素を生成させる陽極室には、アンモニアを生成した後の排水が供給されることから、電解時に塩素以外のアンモニアや硝酸態窒素も共存することが回避できない。
【0007】
そのため、塩素を発生させる際の陽極用電極に好適とされているDSE(寸法安定電極)が、共存する硝酸態窒素のために消耗が速くなることが避けられず、特に比較的安価なルテニウム系のDSEは使用することが難しい。
本発明は、これら問題を解消できる、イオン交換膜等のイオン移動を回避できる隔膜を用いて、電解により脱窒する方法を提供することを発明の解決すべき課題とするものである。
【0008】
なお、このDSEは、Dimensionaly Stable Electrodeの略称であり、1965年オランダ人、ヘンリー.B.ベアーが発明した白金族金属酸化物を電極触媒物質として、チタンなどのバルブ金属基体上に被覆した電極であり、それは電気化学的には塩素発生の過電圧が無視できる程度に小さいという特徴があり、かつ驚くほどの長寿命である。
この電極が前記のように呼称されるのは、従来工業電解の電極に使用されてきた、グラファイトや鉛合金電極は不溶性であるとはいうものの、使用と共に磨耗し、変形が起こるのが常であり、寸法安定であるものではなったの対し、DSEは実質的に磨耗、変形が全くないことからであった。
【0009】
以上のとおりであり、本発明は、イオン交換膜等の隔膜を用いる電解により、硝酸性窒素を含む排水を連続的に処理する技術を提供することを課題とするものである。
また、塩素発生用電極にDSEを好適に使用することができる硝酸性窒素を含む排水を連続的に処理する技術を提供することを課題とするものである。
さらに、好ましくは、電解により生成した塩素が過剰とならずに、全てアンモニアの分解反応に利用できる、すなわち当量となるようにすることができる硝酸性窒素を含む排水を連続的に処理する技術を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を達成するために採用した硝酸性窒素を含む排水の連続的処理方法及び処理装置を提供するものであり、前者の処理方法は、隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた電解槽の陰極室に硝酸性窒素を含む排水を連続的に給送して含有する硝酸性窒素成分をアンモニアに還元し、
前記陽極室に塩素化合物を含み、かつ硝酸性窒素成分を含有しない水溶液を給送して塩素ガスを生成させ、
前記陽極室で生成した塩素ガスと前記陰極室で生成したアンモニアを含有する排水とを気液接触室に導いて気液反応させて窒素ガスと塩酸にすることを特徴とするものである。
【0011】
また、そのより好ましい方法は、隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた第1の電解槽の陰極室に硝酸性窒素を含む排水を連続的に給送して含有する硝酸性窒素成分をアンモニアに還元し、
前記陽極室に塩素化合物を含み、かつ硝酸性窒素成分を含有しない水溶液を給送して塩素ガスを生成させると共に、
隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた第2の電解槽の陰極室に、硝酸性窒素を含む、第1の電解槽に給送した排水とは別の排水を給送して含有する硝酸性窒素成分をアンモニアに還元し、
第2の電解槽の陽極室に苛性アルカリまたは炭酸アルカリを給送して酸素ガスを生成させ、
前記第1の電解槽の陽極室で生成した塩素ガスと、前記第1の電解槽及び第2の電解槽の陰極室で生成したアンモニアを含有する排水とを気液接触室に導いて気液反応させて窒素と塩酸にすることを特徴とする。
【0012】
そして、後者の硝酸性窒素を含む排水の連続的処理装置は、隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた電解槽、
陰極室に硝酸性窒素を含む排水を連続的に給送する排水供給管、
前記陽極室に塩素化合物を含み、かつ硝酸性窒素成分を含有しない水溶液を給送する供給管、
前記陰極室で生成したアンモニアを含有する排水を気液接触室に連続的に導く配管、
前記陽極室で生成した塩素ガスを気液接触室に導く配管を具備し、
前記気液接触室に導いたアンモニアと塩素とを反応させて窒素ガスと塩酸にすることを特徴とするものである。
【0013】
また、そのより好ましい装置は、隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた第1の電解槽、
前記陰極室に硝酸性窒素を含む排水を連続的に給送する第1排水供給管、
前記陽極室に塩素化合物を含み、かつ硝酸性窒素成分を含有しない水溶液を給送する供給管、
前記陰極室で生成したアンモニアを含有する排水を気液接触室に連続的に導く配管、
前記陽極室で生成した塩素ガスを気液接触室に導く配管
隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた第2の電解槽、
前記第2の電解槽の陰極室に、硝酸性窒素を含む、第1の電解槽に給送した排水とは別の排水を給送する第2排水供給管、
前記第2の電解槽の陽極室に苛性アルカリ又は炭酸アルカリ水溶液を給送する供給管、
前記第2の電解槽の前記陰極室で生成したアンモニアを含有する排水を前記気液接触室に連続的に導く配管とを具備し、前記気液接触室に導いたアンモニアと塩素とを反応させて窒素ガスと塩酸にすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硝酸性窒素を含む排水の連続的処理方法及び処理装置では、硝酸性窒素を含む排水は連続的に陰極室に給送されて、ここにおいて電解されてアンモニアを生成する。
その生成したアンモニアを含有する排水は、気液接触室に連続的に導入され、ここに導入された塩素ガスと連続的に反応して酸化分解されて窒素となり、このようにして本発明では排水は連続的に処理することができる。
また、本発明では、塩素が生成する陽極には腐蝕消耗を起こす硝酸性窒素が存在しないので、その存在を嫌うDSEを陽極として好適に使用することができる。
【0015】
さらに、本発明では、陽極室で酸素ガスを生成する第2の電解槽を付設することにより、電解により生成した塩素が過剰とならずに、全てアンモニアの分解反応に利用できるようにすることができる。
すなわち、本発明では生成した塩素とアンモニアとが当量となるようにすることができ、その結果生成した塩素の全てがアンモニアの分解に無駄なく利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下において、本発明に関し発明を実施するための最良の形態を含む、本発明の実施の形態に関し図1及び2を用いて詳述するが、本発明は、これら実施の形態によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
その図1は、本発明の基本的な形態(以下、第1の形態ということもある)を示すものであり、図2は本発明の最良の形態(以下、第2の形態ということもある)を示すものである。
【0017】
その図1において、電解槽1は、イオン交換膜を隔膜に用いることにより陽極室1Aと陰極室1Bに区画されており、本発明の処理対象の排水である硝酸性窒素を含む排水aは、給液弁5が付設された配管陰極液槽4内に給液される。
ここに給液された排水aは、陰極液循環ポンプ7により陰極室1Bに供給され、その陰極室1Bにおいて電解され、次いで陰極液槽4内に戻されることにより排水aの循環サイクルが形成され、排水aの循環が繰り返される。
【0018】
その間に硝酸性窒素は、電解により下記式(1)の反応によりまず亜硝酸性窒素に還元され、更に下記式(2)に示す反応により還元されてアンモニアを生成する。
NO3-+H2O+2e-→NO2-+2OH- 式(1)
NO2-+5H2O+6e-→NH3+7OH- 式(2)
このアンモニアを形成した排水の一部は、前記循環サイクルの配管から分岐する配管により、送液弁11を経て連続的に取り出され、気液接触室に送給される。
【0019】
他方、陽極室1Aには硝酸性窒素を含有しない塩素イオン含有水が送給されて電解が行われ、下記式(3)に示す反応により塩素ガスが生成され、生成した塩素ガスは気液接触室に送給される。
8Cl→4Cl2+8e- 式(3)
なお、陰極室においてアンモニアガスも一部発生するが、そのアンモニアガスは塩素ガスと共に気液接触室2に供給される。
【0020】
その気液接触室2に供給された塩素、アンモニア含有排水及びアンモニアガスは気液接触し、塩素とアンモニアとが下記式(4)に示す反応により窒素と塩化水素が生成され、排水は脱窒される。
NH3+3/2Cl2→1/2N2+3HCl 式(4)
なお、式(1)〜式(4)からわかるように、前記電解反応においては、アンモニアより塩素の生成量の方が多くなり、アンモニア分解に関与することができない過剰の塩素が生成することになる。
【0021】
この点に関し、詳述すると以下のとおりである。
すなわち、前記電解反応においては、式(1)〜式(3)の記載から明らかなとおりアンモニア(NH3)1モルが生成すると、塩素が4モル生成することになる。
そして、アンモニアの分解反応における塩素とアンモニアのモル比は、式(1)から明らかなとおり1:3/2であるから、塩素及びアンモニア生成時における電流効率を共に100%とすると、生成した塩素は、5/2モルが前記式(4)に関与することができない余剰のものとなる。
【0022】
この余剰の塩素は極めて有毒な物質であり、大気中に放出した場合には、大気汚染を引き起こすことになるので、その放散を回避するために、例えばアルカリ溶液で吸収する等の設備を別途付設することが必要となる。
本発明では、このような余剰の塩素を生成しない最良の形態も開発されており、それが図2に示す図1とは異なる別な形態である。
その形態について図2を用いて詳細に説明する。
【0023】
その図2において、第1電解槽1及び第2電解槽10は、イオン交換膜を隔膜に用いて共に陽極室と陰極室に区画されている。
本発明の処理対象の排水である硝酸性窒素を含む排水aは、給液弁5が付設された配管により陰極液槽4内に給液される。
ここに給液された排水aは、陰極液循環ポンプ7により第1電解槽の陰極室1Bに供給され、その陰極室1Bにおいて電解され、次いで陰極液槽4内に戻されることにより、排水aの循環サイクルが形成され、排水aの循環が繰り返される。
【0024】
その間に硝酸性窒素は、電解によりまず亜硝酸性窒素に還元され、更に還元されてアンモニアを生成する。
このアンモニアを生成した排水の一部は、前記循環サイクルの配管から分岐する配管により、送液弁9を経て連続的に取り出され、気液接触室2に送給される。
他方、第1電解槽1の陽極室1Aには、硝酸性窒素を含有しない塩素イオン含有水が送給されて電解が行われ塩素ガスが生成し、その生成した塩素ガスも気液接触室2に送給される。
なお、陰極室1Bにおいてアンモニアガスも一部発生するが、そのアンモニアガスは塩素ガスと共に気液接触室2に供給される。
【0025】
そして、硝酸性窒素を含む排水aは、給液弁19が付設された配管により陰極液槽18内にも給液され、その排水aは、陰極液循環ポンプ12により第2電解槽10の陰極室10Bにも供給され、その陰極室10Bにおいて電解され、次いで陰極液槽4内に戻されることにより、排水aの循環サイクルが形成され、第2電解槽においても排水aの循環が繰り返される。
その間に硝酸性窒素は、電解によりまず亜硝酸性窒素に還元され、更に還元されてアンモニアを生成する。
【0026】
このアンモニアを形成した排水は、前記循環サイクルの配管から分岐する配管により、送液弁15を経て連続的又は間欠的に取り出され、第1電解槽におけるアンモニアを形成した排水と同様に気液接触室2に送給される。
他方、第2電解槽10の陽極室10Aには、アルカリ水溶液が送給されて電解が行われ酸素ガスが生成し、生成した酸素ガスは大気中に放出される。
なお、第1電解槽及び第2電解槽から気液接触室に供給された塩素、アンモニア含有排水及びアンモニアガスは気液接触し、塩素とアンモニアとが反応し窒素と塩化水素とが生成され、排水は脱窒される。
【0027】
以上のとおりであり、この第2の形態においては、第2電解槽で塩素が発生することなく、アンモニアが生成しており、その結果第1電解槽で生成するアンモニア量と第2電解槽で生成するアンモニアの合計量と、第1電解槽で発生する塩素量とがアンモニア分解を行う際の当量となるように調節することができる。
そのため、これらの量を調節しながら、電解を行うことにより余剰の塩素を発生することなくアンモニアを分解して排水の脱窒をすることができ、余剰塩素処理のための付帯設備を設置する必要がない。
【0028】
そして、発生した塩素の全量をアンモニアの分解に利用し余剰の塩素が発生しないように電解にするには、基本的には塩素が発生する第1電解槽で使用する電気量と、酸素が発生する第2電解槽で使用する電気量とを3/2:5/2、すなわち3:5となるように制御することにより調節することで行うことができる。
したがって、使用する電気量を前記したとおりに調節しながら第1及び第2電解槽で電解を連続的に行い、特に第2電解槽においても第1電解槽と同様に連続的に電解を行い、電解後の生成したアンモニアを含有する排水の一部を連続的に取り出して気液接触室2に送給することにより生成した塩素の全量をアンモニアの分解に利用するようにすることができ、余剰の塩素の発生を回避することができる。
【0029】
前記のとおりではあるが、実際には硝酸性窒素を含む排水a中における硝酸性窒素量は、絶えず一定ではなく時々刻々変化するのが現状であり、さらに電解の電流効率も95%前後で変化し、かつ塩素とアンモニアでは電流効率も異なっており、電気量で塩素量とアンモニア量を対応するするように完璧に調節することは難しいところがある。
そのような変化に完璧に対処しながら、両電解槽とも連続運転するのには、計装設備に要する費用は多大となり、かつ装置運行・管理に優秀な技術者を必要とする等の負担が掛かり必ずしも得策であるとは言いがたい。
【0030】
そこで、これらの点を回避する方法としては、第1電解槽の陰極室側系列のみを連続的に運転し、第2電解槽の陰極側系列は間欠的運転を行う方法もあり、この方法の方が現実的である。
例えば、第2電解槽のみを運転して、まずアンモニアと酸素を生成しアンモニアを含有する排水を気液接触室2に供給・貯留し、その後第1電解槽の運転を開始して、塩素とアンモニアを生成し、生成した塩素とアンモニアを含有する排水を気液接触室2に供給することで塩素が過剰になることを回避することができる。
【0031】
なお、その際には第1電解槽運転開始後も第2電解槽も運転は継続し電解を行うが、気液接触室2へのアンモニアを含有する排水の供給は停止する。
また、その際には、気液接触室2中のアンモニア量又はpHを計測し、アンモニアを含有する排水量が塩素量に比して不足した場合には、第2電解槽より該排水を補給し、それにより塩素量とアンモニア量はバランスをとればよい。
【実施例1】
【0032】
以下において、本発明について2つの実施例を示すが、本発明は、これら実施例によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
実施例1は図1に図示する第1の形態の実施例であり、これについて以下に開示する。
電解槽1の陰極に線径1mm×100メッシュ銅網、陽極に酸化ルテニウムを焼付けした1mmt×目開き1mmH×2mmLチタンラス板、電解隔膜として陽イオン交換膜(旭硝子製セレミオンCMV)を使用した。
【0033】
陰極液槽4に硝酸性窒素をNとして1990mg/l含む排水aを給液弁5を有する配管より0.54l/minの流量で定量的に供給し、同流量で電解槽1の陰極室1Bに定量的に供給した。
その陰極液槽4内の液は陰極液ポンプ7により電解槽1の陰極側に送液して循環しながら電解した。
他方、陽極液槽3には、Clとして初濃度25000mg/lを含む食塩水を100l供給し、それを陽極液ポンプ6により陽極室1Aに循環しながら定電流1キロアンペアで電解した。
なお、陰極液は連続供給であり、陽極液はバッチ供給である。
【0034】
このようにして硝酸性窒素を含む排水aは連続電解され、排出弁11から毎分0.54l/minの流量で連続的に排出され、気液接触室2に給送される。
その排出された電解後の排水の組成は、アンモニア性窒素(Nとして)1870mg/l、亜硝酸性窒素(Nとして)23mg/l、硝酸性窒素(Nとして)90mg/lで、硝酸イオン還元(NH3生成)に対する電流効率は92.8%であった。
他方、電解槽1の陽極から発生する塩素ガスcは、配管を通して気液接触室2に導き、前記排出弁11から排出したアンモニア性窒素を主成分とする排水と接触させた。
【0035】
その気液接触室2において気液接触された排水を0.54l/minの流量で排出弁8を有する配管から排出したところ、その排水bの組成はCl-が14.5g/l、硝酸性窒素(Nとして)120mg/l、アンモニア性窒素(Nとして)3mg/lであった。
この第1の形態においては、前記したとおり余剰の塩素ガスが生成しており、その塩素ガスを含む排ガスdはエアポンプ9により吸引し図示されていない5w%水酸化Na水溶液に吸収させた。
1時間電解後の陽極液中のCl濃度は13000mg/lで塩素ガス生成に対する電流効率は98.1%であった。
また、陽極液から陰極液にイオン交換膜を通じて移動したNa+の輸率は0.98であった。
【実施例2】
【0036】
次ぎに、本発明の最良の形態である実施例について以下に開示する。
電解槽1の陰極に線径1mm×100メッシュ炭素鋼網、陽極に酸化ルテニウムを焼付けした1mmt×目開き1mmH×2mmLチタンラス板、電解隔膜として陽イオン交換膜(旭硝子製セレミオンCMV)を使用した。
また、余剰の塩素を生成させないために設置した第2電解槽10の陰極に線径1mm×100メッシュ銅網、陽極に1mmt×50メッシュ炭素鋼網、電解隔膜として陽イオン交換膜(旭硝子製セレミオンCMV)を使用した。
【0037】
本実施例では、塩素の生成量をアンモニアの生成量と対応し過剰とさせないために、第1電解槽の電解開始前に第2電解槽10の電解をまず開始する。
そのために陰極液槽18に硝酸性窒素をNとして2006mg/l含む排水aを給液弁19を有する配管より100l供給し、供給後該排水を陰極液ポンプ12により電解槽1の陰極側に送液し循環しながら定電流の1KAで3時間電解を行った。
その際には、陽極液槽13には、電解開始前に給液弁11を具備する配管より5w%水酸化ナトリウム水溶液eが100l供給されており、電解開始時にはこれが陽極室に循環されている。
【0038】
3時間電解後の陰極液(排水)組成は、アンモニア性窒素(Nとして)1910mg/l、亜硝酸性窒素(Nとして)10mg/l、硝酸性窒素(Nとして)80mg/lであり、その排水100lを気液接触室2に送液弁15を有する配管により送液した。
硝酸イオン還元(NH3生成)に対する電流効率は97.5%であった。
また、陽極液から陰極液にイオン交換膜を通じて移動したNa+の輸率は0.99であった。
なお、その際に陽極室で生成するのは塩素ではなく酸素であり、これは毒性がないので大気に放出することができ、かつ塩素量の生成増加を招くこともない。
また、前記送液後引き続き電解を継続するために極液槽18には前記硝酸性窒素を含む排水aを給液する。
【0039】
次いで、この状態になった時点において第1電解槽1の電解を開始することになるが、そのために陰極液槽4に硝酸性窒素をNとして2030mg/l含む排水aを給液弁5を有する配管より0.52l/minの流量で定量的に供給し、同流量で電解槽1の陰極室1Bに定量的に供給する。
陰極液槽4内の液は陰極液ポンプ7により電解槽1の陰極側に送液して循環しながら電解した。
【0040】
このようにして硝酸性窒素を含む排水aは連続電解され、排出弁11から毎分0.52lの流量で連続的に排出され、気液接触室2に給送される。
その排出された電解後の排水の組成は、アンモニア性窒素(Nとして)1930mg/l、亜硝酸性窒素(Nとして)18mg/l、硝酸性窒素(Nとして)70mg/lで、硝酸イオン還元(NH3生成)に対する電流効率は92.2%であった。
他方、陽極液槽3には、Clとして初濃度25000mg/lを含む食塩水を100l供給し、それを陽極液ポンプ6により陽極室1Aに循環しながら定電流1キロアンペアで1.5時間電解した。
なお、陰極液は連続供給であり、陽極液はバッチ供給である。
【0041】
その第1電解槽1の陽極からは塩素ガスcが発生し、その塩素ガスは配管を通して気液接触室2に導き、前記排出弁11から排出したアンモニア性窒素を主成分とする排水等と接触させた。
1.5時間電解した後の陽極液中におけるCl濃度は6000mg/lで塩素ガス生成に対する電流効率は95.8%であった。
また、陽極液から陰極液にイオン交換膜を通じて移動したNa+の輸率は0.96であった。
その間に、第1電解槽から気液接触室に導入された塩素の全量は1.901kgであり、アンモニア性窒素含有する電解後の排水の全量は146.8lであった。
【0042】
その気液接触室2では、送液弁15を具備する配管から受入れた第2電解槽の陰極室10Bからの排水と、送液弁9を具備する配管から受け入れた第1電解槽の陰極室からの排水と、第1電解槽の陽極室で発生した塩素ガスとを接触させて、前記式(4)による反応をさせて、アンモニアを分解して窒素を形成して排水を脱窒する。
その脱窒後の排水の組成はCl-が13.8g/l、硝酸性窒素(Nとして)110mg/l、アンモニア性窒素(Nとして)8mg/lであった。
その反応後の気体には事実上毒性のある気体は残存しないので、気液接触室から空放した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の1実施の形態を示す図。
【図2】本発明の最良な実施の形態を示す図。
【符号の説明】
【0044】
a 排水
1 電解槽
1A 陽極室
1B 陰極室
2 気液接触室
3 陽極液槽
4 陰極液槽
5 給液弁
6 陽極液ポンプ
7 陰極液循環ポンプ
11 排出弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた電解槽の陰極室に硝酸性窒素を含む排水を連続的に給送して含有する硝酸性窒素成分をアンモニアに還元し、
前記陽極室に塩素化合物を含み、かつ硝酸性窒素成分を含有しない水溶液を給送して塩素ガスを生成させ、
前記陽極室で生成した塩素ガスと前記陰極室で生成したアンモニアを含有する排水とを気液接触室に導いて気液反応させて窒素ガスと塩酸にすることを特徴とする硝酸性窒素を含む排水の連続的処理方法。
【請求項2】
隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた第1の電解槽の陰極室に硝酸性窒素を含む排水を連続的に給送して含有する硝酸性窒素成分をアンモニアに還元し、
前記陽極室に塩素化合物を含み、かつ硝酸性窒素成分を含有しない水溶液を給送して塩素ガスを生成させると共に、
隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた第2の電解槽の陰極室に、硝酸性窒素を含む、第1の電解槽に給送した排水とは別の排水を給送して含有する硝酸性窒素成分をアンモニアに還元し、
第2の電解槽の陽極室に苛性アルカリまたは炭酸アルカリを給送して酸素ガスを生成させ、
前記第1の電解槽の陽極室で生成した塩素ガスと、前記第1の電解槽及び第2の電解槽の陰極室で生成したアンモニアを含有する排水とを気液接触室に導いて気液反応させて窒素と塩酸にすることを特徴とする硝酸性窒素を含む排水の連続的処理方法。
【請求項3】
電解槽の隔膜として陽イオン交換膜を使用することを特徴とする前記請求項1又は2に記載の硝酸性窒素を含む排水の連続的処理方法。
【請求項4】
隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた電解槽、
陰極室に硝酸性窒素を含む排水を連続的に給送する排水供給管、
前記陽極室に塩素化合物を含み、かつ硝酸性窒素成分を含有しない水溶液を給送する供給管、
前記陰極室で生成したアンモニアを含有する排水を気液接触室に連続的に導く配管、
前記陽極室で生成した塩素ガスを気液接触室に導く配管を具備し、
前記気液接触室に導いたアンモニアと塩素とを反応させて窒素ガスと塩酸にすることを特徴とする硝酸性窒素を含む排水の連続的処理装置。
【請求項5】
隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた第1の電解槽、
前記陰極室に硝酸性窒素を含む排水を連続的に給送する第1排水供給管、
前記陽極室に塩素化合物を含み、かつ硝酸性窒素成分を含有しない水溶液を給送する供給管、
前記陰極室で生成したアンモニアを含有する排水を気液接触室に連続的に導く配管、
前記陽極室で生成した塩素ガスを気液接触室に導く配管、
隔膜で隔てられた陰極室と陽極室とを備えた第2の電解槽、
前記第2の電解槽の陰極室に、硝酸性窒素を含む、第1の電解槽に給送した排水とは別の排水を給送する第2排水供給管、
前記第2の電解槽の陽極室に苛性アルカリ又は炭酸アルカリ水溶液を給送する供給管、
前記第2の電解槽の前記陰極室で生成したアンモニアを含有する排水を前記気液接触室に連続的に導く配管とを具備し、前記気液接触室に導いたアンモニアと塩素とを反応させて窒素ガスと塩酸にすることを特徴とする硝酸性窒素を含む排水の連続的処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−272060(P2006−272060A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91585(P2005−91585)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】