説明

硝酸除去バイオリアクター、硝酸除去バイオフィルム生成方法および硝酸除去方法

【課題】 効率的に硝酸イオン除去可能なバイオリアクターを提供すること。
【解決手段】 硝酸除去バイオリアクター1は、反応容器2とその上部に設けられていて反応容器2中に発酵源Sを投入するための投入部3とを備えて構成される。反応容器2は発酵源Sを嫌気発酵させて有機酸類Aを生成させるものであり、その一部領域には有機酸類Aの透過可能な構造4が設けられる。有機酸透過構造4としてはセラミックス材料を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硝酸除去バイオリアクター、硝酸除去バイオフィルム生成方法および硝酸除去方法に係り、特に、簡易な構成によって優れた硝酸イオン NO3−(以下、単に「NO」、または「硝酸」とする。)除去機能を実現することのできる、硝酸除去バイオリアクター、硝酸除去バイオフィルム生成方法および硝酸除去方法に関するものである。本発明は、家庭用レベルの水槽といった小規模な用途にも、また水族館や養殖施設、汚水処理場や屎尿処理施設といった大規模な水処理施設にも、あるいはまた汚染された池や湖沼といった開放された水圏にも、規模の如何を問わず広く適用可能な技術である。
【背景技術】
【0002】
魚類その他の水棲生物を飼育等する場合には、従来、その規模の大小を問わず飼育水の適切な交換が重要であった。飼育水を換える理由は、水槽内に溜まった高濃度のNOを飼育水ごと除去するためであるが、たとえば家庭等における熱帯魚その他の観賞魚飼育、研究機関における実験用水棲生物の飼育、あるいは養殖業などでも、NO等栄養塩が多く含まれた水(以下、「栄養塩含有水」という。)から栄養塩を除去するために、水交換は従来広く行われてきた。
【0003】
しかし、飼育水を交換する作業は労力およびコストのかかる作業である。そこで、このような目的のため、従来からバイオリアクターを用いた水処理技術が種々提案されている。たとえば、メタノールを閉区画に充填し、ポリエチレン膜からメタノールを染み出させることによりその膜外表面にバイオフィルムを生成する技術(特許文献1)や、有機炭素化合物を排水中に混ぜてバイオフィルムの上から供給する方式や活性汚泥法で除去するという技術(特許文献2)が開示されている。
【0004】
また、硝酸塩を除去するための試みはバイオリアクターに限られず、たとえばサンゴ砂を堆積させて用いる方法、発泡セルロース膜で仕切りを設ける方法、細かい砂を敷き詰める方法、あるいはまた点滴により水中に糖分を添加する方法など、実にさまざまな技術的提案がなされている。
【0005】
【特許文献1】特許公開2000−237791号公報「硝酸性窒素含有水中の窒素除去方法及び脱窒バイオリアクター」
【特許文献2】特許公開平8−1192号公報「生物学的窒素除去装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、養魚場や水族館その他施設における栄養塩含有水処理には巨大なバイオリアクターを用いるが、これには以下のような特徴がある。
・半透膜を使って、処理水と有機炭素投入区画を分ける。
・半透膜の片側に大量の微生物を発生させて張り付かせる(微生物膜、バイオフィルム)。
・有機炭素としては比較的低級のアルコールを使う。
・半透膜は均一な大きさの穴を持つ。
【0007】
しかし、このような構造は施設レベルの水処理工程では有益だが、これをそのまま家庭用水槽等の小さい系に適用することはできない。なぜならば、上述の通り巨大なバイオリアクターは半透膜が均一であり、さらに低級のアルコールを使うため、初期の段階では未発達の微生物膜にうまく吸収されず処理水(処理対象の栄養塩含有水)中にアルコールが流出し、それによって微生物が処理水中を漂った状態で増殖してしまい、水は白濁し、酸素を消費して飼育魚等に害を与えることになるからである。したがって、水量が少なく、別段の水処理技術を併用することのできない系では、反応初期段階のアルコール流出を避けなくてはならず、有機炭素として低級アルコールを用いることはできない。バイオフィルム膜厚の生長とともに、徐々に有機炭素を放出させる技術が求められる。
【0008】
また、上記特許文献1開示技術は、ポリエチレン膜が温度に比例してメタノールの浸潤速度を変えてしまうものであるため、バイオフィルムが十分形成される前に多量のメタノールが水圏(処理水中)に流出してしまい、該水域のBODを上げ、溶存酸素を奪ってしまうという問題がある。
【0009】
一方、特許文献2開示技術は、メタノールが有機炭素化合物の中でも高価なものであるため、多量の水を処理することには適さない技術である。さらに、水域を過度に貧栄養にさせてしまった場合には、装置を水から取り出すしか方法がなく、付着していた微生物が死滅して腐敗して異臭を発生するという問題がある。
【0010】
また、有機炭素化合物を排水中に混ぜてC/N比を整える方式により系を組む技術では、糸状菌が大量に発生してしまい、バルキング(微生物群と処理水の分離が不能となる現象)を系内で起こしてろ過効率が非常に悪くなったり、水質のボラティリティー(変動幅)が高くなってしまうという問題がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、以上のような従来技術の問題点・欠点を解消し、簡易な構成によって、優れた硝酸イオン除去作用、水質浄化作用を実現することのできる硝酸除去バイオリアクター、硝酸除去バイオフィルム生成方法および硝酸除去方法を提供することである。
【0012】
つまり本発明が解決しようとする課題は、バイオフィルム形成初期の段階で意図せず処理水中に有機化合物が流出することによって水域のBODを上げて溶存酸素を奪ってしまうような事態の発生を招くことなく、効率的に硝酸イオン除去、水質浄化可能な、硝酸除去バイオリアクター、硝酸除去バイオフィルム生成方法および硝酸除去方法を提供することである。
【0013】
また本発明が解決しようとする課題は、大規模な水処理施設等にも適用可能であるとともに、とりわけ家庭用レベルの水槽といった小規模な用途においても、実用性に優れた、硝酸イオン除去効果、水質浄化効果を得ることのできる、硝酸除去バイオリアクター、硝酸除去バイオフィルム生成方法および硝酸除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者が上記課題について検討した結果、バイオリアクターの構造および用いる発酵源に新規な技術的思想を導入することによって上記課題の解決が可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0015】
(1) 栄養塩含有水中の栄養塩を微生物に代謝させるバイオリアクターであって、該バイオリアクターは反応容器とこれに設けられていて該反応容器中に発酵源を投入するための投入部とを備えてなり、該反応容器はこれに投入される発酵源を嫌気発酵させて有機酸類を生成させるものであってその少なくとも一部には有機酸類の透過可能な有機酸透過構造が設けられており、該反応容器は水中にまた該投入部の投入用端部は水面上に出ているように設置して用い、栄養塩含有水中の硝酸除去可能な、硝酸除去バイオリアクター。
(2) 前記有機酸透過構造は多孔質材料により形成されていることを特徴とする、(1)に記載の硝酸除去バイオリアクター。
(3) 前記有機酸透過構造は孔径が二種類以上の孔から構成されていることを特徴とする、(1)または(2)に記載の硝酸除去バイオリアクター。
(4) 前記有機酸透過構造はレンガ、素焼きタイルまたはその他のセラミックス材料を用いて構成されていることを特徴とする、(1)に記載の硝酸除去バイオリアクター。
(5) 前記有機酸透過構造はレンガ、素焼きタイルもしくはその他のセラミックス材料、およびおが屑もしくはその他の副材料により構成されていることを特徴とする、(1)に記載の硝酸除去バイオリアクター。
【0016】
(6) 前記有機酸透過構造は前記反応容器の少なくとも一側面全体に形成されていることを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の硝酸除去バイオリアクター。
(7) 前記投入部は投入管であることを特徴とする、(1)ないし(6)のいずれかに記載の硝酸除去バイオリアクター。
(8) (1)ないし(7)のいずれかに記載の硝酸除去バイオリアクターにおいて硝酸除去機能を備えたバイオフィルムを生成する方法であって、前記発酵源として有機炭素化合物を用い、前記投入部から前記反応容器内に該発酵源を投入することで該発酵源を嫌気発酵により分解して有機酸類を生成させ、生成した該有機酸類を前記有機酸透過構造を介して該反応容器外に透過させることにより、該有機酸透過構造の外表面に好気環境下で硝酸資化微生物からなるバイオフィルムを生成させる、硝酸除去バイオフィルム生成方法。
(9) 前記有機炭素化合物がスクロースその他の易分解性の糖類であることを特徴とする、(8)に記載の硝酸除去バイオフィルム生成方法。
【0017】
(10) (1)ないし(7)のいずれかに記載の硝酸除去バイオリアクターを用いた栄養塩含有水中の硝酸除去方法であって、前記発酵源として有機炭素化合物を用い、前記投入部から前記反応容器内に該発酵源を投入することで該発酵源を嫌気発酵により分解して有機酸類を生成させ、生成した該有機酸類を前記有機酸透過構造を介して該反応容器外に透過させることにより、該有機酸透過構造の外表面に好気環境下で硝酸資化微生物からなるバイオフィルムを生成させ、該バイオフィルムによって栄養塩含有水中の硝酸を分解除去する、硝酸除去方法。
(11) 前記有機炭素化合物が易分解性の糖類であることを特徴とする、(10)に記載の硝酸除去方法。
(12) 前記易分解性の糖類が、スクロース、マルトースまたはその他の二糖類であることを特徴とする、(11)に記載の硝酸除去方法。
(13) 前記易分解性の糖類が、ガラクトース、フルクトース、グルコース、マンノースまたはその他の単糖類であることを特徴とする、(11)に記載の硝酸除去方法。
【0018】
(14) 前記易分解性の糖類が、アミロース、アミロペクチン、デンプン、アガロース、ポリデキストロース、マンナンまたはその他の多糖類であることを特徴とする、(11)に記載の硝酸除去方法。
(15) 前記投入部中には液体を投入し、該液体の量を調節することによって前記有機酸類の透過量を調節することを特徴とする、(10)ないし(14)のいずれかに記載の硝酸除去方法。
(16) 前記液体として水またはその他の親水性の液体を用いることを特徴とする、(15)に記載の硝酸除去方法。
(17) 前記投入部中に疎水性液体を投入することによって内部の嫌気度を高め、前記有機酸類の透過量を調節することを特徴とする、(15)または(16)に記載の硝酸除去方法。
【0019】
つまり、実施例として追って詳述するが、典型的な本発明は、バイオリアクターの反応容器の少なくとも一部外壁を多孔質層で形成した閉区画の中に有機炭素化合物、具体的にはスクロース(ショ糖)等の易分解性の糖類を投入し、嫌気発酵により低分子化させて有機酸とし、これを多孔質層を介して処理水中に浸潤、放出させていく、というものである。このとき、有機酸の透過に適切な孔径および孔径サイズの多様性を備えた多孔質層によって、有機酸が、徐々に形成されていくバイオフィルムの処理能力を超えて処理水中に流出することが防止、抑制される。浸潤した有機酸は多孔質該層外表面で、バイオフィルムを形成している微生物により好気的に分解され、栄養塩が微生物体内に能動輸送されて同化される。これにより栄養塩含有水から栄養塩が除去され、水域内の生物群に資することができる。
【0020】
なお、本発明の硝酸除去バイオリアクター、硝酸除去バイオフィルム生成方法および硝酸除去方法にいう「硝酸」とは、上述の通り硝酸イオンNO3− のことであるが、液体中における解離によってNO3− の形態をとるものは広く含まれる。したがって、硝酸塩の形態をとる場合も、またHNOの形態をとる場合も含まれる。
なおまた、有機化合物とは、一般に、炭素の酸化物や金属の炭酸塩等の小数の簡単な構造のものを除いた炭素化合物の総称であるが、本願発明では特に、このような炭素の酸化物等のいわゆる無機的な化合物を明確に除外するために、「有機炭素化合物」ということとする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の硝酸除去バイオリアクター、硝酸除去バイオフィルム生成方法および硝酸除去方法は上述のように構成されるため、これによれば、簡易な構成によって、硝酸イオンを効率的かつ実用的に除去することができ、水質浄化することができる。つまり本発明によれば、バイオフィルム形成初期の段階で処理水中に有機化合物流出が発生して水域のBODを上げて溶存酸素を奪ってしまうような事態が発生することがなく、効率的に硝酸イオン除去効果および水質浄化効果が得られる。
【0022】
また本発明は、水族館や養殖施設、汚水処理場や屎尿処理施設といった大規模な水処理施設や、汚染された池や湖沼といった水圏にも規模の如何を問わず広く適用可能であるが、とりわけ家庭用レベルの水槽といった小規模な用途においても、硝酸イオンを効率的かつ実用的に除去することができ、水質浄化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。
図1は、本発明の硝酸除去バイオリアクターの基本構成を示す説明図(断面図)である。また、
図1−2は、図1の本発明バイオリアクターの使用方法、そして、
図1−3および図1−4は、図1の本発明バイオリアクターにおける作用を、それぞれ示す説明図(断面図)である。
【0024】
栄養塩含有水中の栄養塩を微生物に代謝させるものである本硝酸除去バイオリアクター1は、これらに図示するように、反応容器2とこれに設けられていて反応容器2中に発酵源Sを投入するための投入部3とを備えてなる。そして、反応容器2はこれに投入される発酵源Sを嫌気発酵させて有機酸類Aを生成させるためのものであって、反応容器2の少なくとも一部には有機酸類Aの透過可能な有機酸透過構造4が設けられていることを、本硝酸除去バイオリアクター1は主たる構成とする。
【0025】
有機酸透過構造4は、反応容器2を形成する外壁の一部に設けられても、また反応容器2中における嫌気発酵に支障のない限りにおいて、全体に設けられてもよい。一部に設ける場合は、反応容器2の全表面積に対して占める割合も、まったく限定されない。
【0026】
本発明で「代謝」は、同化も異化も含む概念である。つまり本硝酸除去バイオリアクター1においては、栄養塩含有水中の栄養塩は微生物により同化される作用のみならず、異化される作用もあり得る。たとえば、バイオフィルムFが厚く形成された場合、その表面から5μm以下の層には、硝酸呼吸によって栄養塩中の硝酸を「異化」する菌が繁殖することになる。また、一定以上の厚みに至って硝酸を使い尽くした場合には、硫酸呼吸で硫酸を異化する菌が現れることもあるからである。
【0027】
有機酸透過構造4はすなわち、各種有機酸類Aの分子を透過させるのに充分なサイズもしくはそれよりも大径のサイズの孔を備えた構造であればよい。つまりかかる構造は多孔質材料による構造であるが、具体的にはたとえば、湿式または乾式焼成レンガ、素焼きタイルまたはその他のセラミックス材料を用いて好適に形成することができる。なお本発明の有機酸透過構造4としては、このようなセラミックス材料に限らず、要するに多孔質の材料であって有機酸類を透過させる構造であれば、広く用いることができる。
【0028】
かかる構成により、図1−2等に示すように本発明の硝酸除去バイオリアクター1は、反応容器2が水中Wに、また投入部3の投入用端部が水面上に出ているように設置して用いる。まず、投入部3から発酵源Sが投入される。発酵源Sの投入方法は特に限定されず、必要量を一度に投入してもよいし、分割して投入してもよい。バイオフィルムF生長状況等に応じて適宜追加投入してもよい。反応容器2中(V)では、投入された発酵源Sが嫌気発酵して有機酸類Aが生成される。有機酸類Aは、有機酸透過構造4を透過して反応容器2内(V)から外へと放出される。そして図1−4に示すように、有機酸透過構造4の外表面5上に形成されていく硝酸資化微生物からなるバイオフィルムFによる好気的分解反応に供される。
【0029】
有機酸透過構造4はすなわち、各種有機酸類Aの分子を透過させるのに充分な程度のサイズか、もしくはそれよりも大径のサイズであって、かつ、反応容器2内部(V)に投入される発酵源Sの分子よりは小さいサイズの孔を備えた構造であればよい。しかしながら本発明に係る有機酸透過構造4としては、従来のように均一な孔径を備えたものではなく、孔径が二種類以上の孔から構成されたものを用いることが大いに望ましい。
【0030】
すなわち、孔径サイズに分布が存在することによって、生成した有機酸類Aの反応容器2外への放出しやすさに差異が生じることになり、有機酸類Aが一気になされることが防止されて、時間をかけての段階的あるいは連続的な放出を実現することができるからである。それにより、生成途上のバイオフィルムFの処理能力を超えた有機炭素化合物が処理水W中に流出してしまうことを防止、抑制することができる。
【0031】
図1他に示す通り、本発明硝酸除去バイオリアクター1の投入部3は、管状の構造すなわち投入管とすることが望ましい。他の構造を排除するものではないが、断面積の小さい管状の構造は反応容器2内部(V)における嫌気発酵に好都合だからである。また、このような構造は、後述する有機酸類の透過量調節にも便利である。なお投入部3には上蓋を設けてもよい。なおまた、投入部3は必ずしも図のように反応容器2の上部に設けられる必要はなく、たとえば側面などに設けられている構成でもよい。要するに、投入用端部が水面より上に出ている構成であれば、本発明の範囲内である。
【0032】
図2および図3は、本発明硝酸除去バイオリアクターの実施例を示す斜視分解(a)・組立(b)図である。図2に示すように本発明バイオリアクター21においては、有機酸透過構造24を、反応容器22の少なくとも一側面全体に形成された構成とすることができる。なお図3においても同様に、有機酸透過構造34が反応容器32の少なくとも一側面全体に形成された構成とすることができるが、別な構成も可能である。たとえば、一側面中の一部の領域のみを有機酸透過構造としたり、複数の側面に亘って任意の一または複数の領域を有機酸透過構造とすることも、あるいは底面の一部または全部に有機酸透過構造を設けることも、本発明の範囲内である。
【0033】
本発明における硝酸除去バイオフィルム生成方法について、さらに説明する(前掲図1〜図1−4参照)。
硝酸除去バイオリアクター1を用い、発酵源Sとして有機炭素化合物を用い、これを投入部3から反応容器2内(V)に投入する。なお反応容器2内(V)には、後述するスクロース等の発酵源Sの他に、別の栄養源、たとえばアミノ酸発酵肥料や酵母製品等も入れることが望ましい。酵母製品では、市販のパン用イースト菌が最適である。たとえば、(株)日清製粉グループ製・スーパーカメリヤドライイースト(登録商標)等である。添加量の大小によっても発酵スピードを変えることができるが、0.2〜0.5gの添加により最適な発酵スピードを出すことができる。また、アミノ酸発酵肥料を用いる場合は、たとえば、(株)ハイポネックスジャパン提供の「ハイポネックス(登録商標)原液6:10:5」を好適に使用することができる。
【0034】
これにより、発酵源Sを嫌気発酵により分解して有機酸類Aを生成させる。生成した有機酸類Aは、嫌気発酵が進行する過程に応じて徐々に有機酸透過構造4を介して反応容器2外に透過させられ、これにより、有機酸透過構造4の外表面5に好気環境下で硝酸資化微生物からなるバイオフィルムFを生成させる、というものである。このようにして形成されたバイオフィルムFにより、処理水W(栄養塩含有水)中の硝酸が資化され、水中からの硝酸除去がなされる。
【0035】
つまり本発明バイオリアクター1は、反応容器2内部(V)の嫌気域と、反応容器2外部の好気域を組み合わせて、微生物を移動させずエネルギー源を内部から外部へと移動させることによって、効率よくバイオフィルムFを生成させることができる。以下本願発明においては、かかるバイオリアクター内外に亘って行われる一連の反応を、「分離二段式発酵」ともいう。
【0036】
なお、バイオフィルムの生長段階の初期においては、有機酸処理能力には限界があり、大量の有機酸を処理することはできない。しかし本発明では、分離二段式発酵により、反応容器2内部(V)の嫌気発酵で有機炭素化合物が嫌気発酵により低分子の有機酸に分解されるという過程が、反応容器2内部(V)全体での嫌気発酵の進行に応じ時間をかけて徐々になされるため、有機酸透過構造4の外表面5におけるバイオフィルムFの生長に合わせるようにして、徐々に低分子化された有機酸を染み出させることが可能である。
【0037】
これにより水中のBODを上げることなく、また有機炭素化合物を無駄にすることなく、安価な材料により効率よくバイオフィルムの生長を促すことができる。また、有機酸は脱窒細菌の最も資化速度の速い有機物であることから、バイオフィルム内のミクロな嫌気域において脱窒速度が向上する。
【0038】
有機酸類Aを生成するための発酵源Sたる有機炭素化合物としては、易分解性の糖類なら何でも好適に用いることができる。たとえばスクロースは安価な上、嫌気発酵によって目的とする有機酸類生成も容易だからである。
ここで、「易分解性」とは、嫌気発酵によって容易に有機酸レベルまでの低分子化が可能な性質をいう。
【0039】
なお発酵源Sは易分解性の糖類であればよいから、スクロース以外にもマルトース・スクロース等のいわゆる二糖類、ガラクトース・フルクトース・グルコース・マンノース等のいわゆる単糖類、さらに、アミロース・アミロペクチン・デンプン・アガロース・ポリデキストロース・マンナン等のいわゆる多糖類など、要するに硝酸資化微生物の生育に有用な有機酸類を、嫌気発酵によって生成できる有機化合物であれば本発明の有機炭素化合物として好適に用いることができる。ただし糖類でも、セルロース・ヘミセルロース・キチン等の難分解性の糖類は用いることができない。
【0040】
図4は、本発明硝酸除去方法の一例を示す説明図(断面図)である。図示するように本硝酸除去方法では、硝酸除去バイオリアクター1の投入部3から液体Lを投入し、その量を調節する、つまり液面レベルを上下調節することによって、有機酸類の透過量を調節する構成とすることができる。すなわち、液体Lの量を増減することによって液圧を増減調節でき、反応容器2内(V)にて生成される有機酸類Aの、有機酸透過構造4透過量を加減することができる。
【0041】
透過量を多くすることによりバイオフィルムFの生育は促進され、処理水中の硝酸除去機能は高まる。一方、透過量を少なくすることによりバイオフィルムFの生育は抑制され、処理水中の硝酸除去機能は抑えられる。したがって、硝酸除去機能を高めたい場合は液体Lの投下量を多くし、逆に低めたい場合は投下量を少なくすればよい。このように、バイオリアクターの代謝(同化・異化)効果や脱窒素効果を増減できるため、水質が極端に貧栄養になった場合にバイオリアクターによる作用を止めたいときでも、水中からバイオリアクターごと取り出す必要がない。
【0042】
また、処理水中における生態ピラミッドを下段から自在に動かすこともできる。たとえば、処理水の水域中に藻類が多く発生してしまい、これを除去したい場合は、バイオフィルムF上でミジンコ等の藻類を栄養とすることのできる生物を大量発生させ、その後、液量Lの調節によってバイオフィルムFが薄くなるようにする。そうすると、大量発生したミジンコ等は飢餓状態に追い込まれるため、ミジンコ等は当該水域に発生する藻類を捕食することとなり、藻類を一掃することができる。
【0043】
なお、ここで用いる液体は、水、何らかの水溶液、またはその他の親水性の液体のいずれでもよい。しかしながら、単に、水のみの使用によって充分な効果を得ることができる。また、少ない液量加減によって有機酸類透過量調節効果を得るために、バイオリアクター1の投入部3は管状構造であることが望ましい。また液体Lの量調節には、たとえばスポイトを用いる等すれば便利である。
【0044】
本発明硝酸除去方法においては、上述の水等を用いることと併用して、あるいはこれに替えて、投入部中に疎水性液体を投入することによって内部の嫌気度を高め、有機酸類の透過量を調節する方法を用いることもできる。疎水性液体の種類は特に限定されない。たとえば簡便には、機械油を用いてもよい。
【0045】
なお、本発明硝酸除去バイオリアクターを構成する有機酸透過構造としては、上述のように、レンガ、素焼きタイルもしくはその他のセラミックス材料を好適に用いることができるが、これに副材料を混合して多孔質材料としたものでもよい。副材料を用いることによって、孔径サイズの分布に一層の多様性を加え、有機酸透過の調節に幅をもたせることも可能である。副材料としてはたとえば、おが屑や石粉等を用いることができる。なお、本願発明においてセラミックスとは、広く非金属の無機材料全般を指す。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<1 硝酸除去バイオリアクター製作と硝酸除去能試験>
<1−1 硝酸除去バイオリアクター>
前掲図3に示した形態の硝酸除去バイオリアクターを製作した。反応容器にはレンガを用いた。本発明の硝酸除去バイオリアクターの有機酸透過構造は、反応容器の一部に設けられていればよいが、本実施例では容器の全側面がレンガにより構成されており、したがって全側面が有機酸透過構造となる。また投入部は投入管構造とした。本バイオリアクターの詳細な仕様は次の通りである。
使用したレンガ:種類 JIS規格に則った普通煉瓦、厚さ7mm
吸水率13% 外表面にスポンジを巻き付け
内側寸法および容積:27*27*180mm 131cm
投入部の材料:筒部はポリプロピレン、容器との接続部は塩化ビニル
投入部の内径および長さ:内径15mm、長さ17cm以上
全体のサイズおよび重量:41*350mm、約400g
【0047】
<1−2 淡水での硝酸除去能試験>
バイオリアクターに10gの砂糖と0.5gの酵母を一度に入れた。なお上述の通り、酵母は0.2〜0.5gの使用により最適発酵スピードを出すことができる。一方、25℃、60ppm・NOに硝酸塩類で調整した淡水を用意した。淡水は試験用の水槽に同量ずつ取り、試験区三つ、コントロール区一つ、合計4区を設けた。コントロール区の水槽には、砂糖と酵母は入れずバイオリアクターのみとした。各区における硝酸濃度を、27日間に亘り毎日測定した。
なお、試験方法の詳細は次の通りである。
【0048】
材料
砂糖:日新製糖(株)製 白砂糖
酵母:日清食品(株)製 スーパーカメリヤドライイースト(登録商標)
淡水:取水地 弘前市水道(発明者自宅)
取水日(取水時期)2008年7月4日
水質 TDS(総溶解固形物)78 pH8.1 なお、BOD不明
調整 使用した硝酸塩=大塚化学(株)製 大塚ハウス3号(登録商標)
用具
水槽の寸法および容積:300*240*180mm
12960cm=約13リットル
硝酸除去バイオリアクター:上述の通り
【0049】
試験の条件等
水槽に入れた淡水の量:12リットル
試験開始日:取水から1日後(カルキを抜いたあと)
試験期間における淡水の温度:25℃±2℃
硝酸除去バイオリアクターの設置方法:
水槽中に、反応容器部分は水中に全て浸かり、投入管の投入用端部は水面上に出るよう、水槽の左端に壁に当たらないよう設置し、右側には水流を起こさないよう毎分0.5リットルの空気をばっ気し、好気環境を保った。
反応容器中に投入した水:
水の種類:一日置いた弘前市水道水
当初の投入量:水面レベルが水槽中の淡水の水面より上になるようにした。具体的には2cm上。
試験期間中の水量の調節:なし
【0050】
図5は、実施例における淡水での硝酸除去能試験結果を示すグラフである。図示するように三つの試験区全てにおいて、試験開始から3週間強ほどで淡水中の硝酸をほとんど除去することができた。また、試験期間中、微生物による白濁の発生はなかった。なお、試験終了時点でのバイオフィルムの厚さは、平均5mmだった。
【0051】
<1−3 海水での硝酸除去能試験>
淡水に替えて海水を用い、硝酸測定期間を25日とした以外は全て淡水での試験と同様にして、試験を行った。なお、用いた海水の詳細は次の通りである。
海水:人工海水
製造元.(株)マリン・テック http://www.marine−tech.co.jp/
商品名.SEALIFE(登録商標)
調整に使用した硝酸塩 溶液栽培用の高純度硝酸カリウム(KNO
製造元.大塚化学(株)
商品名.大塚ハウス三号(登録商標)
【0052】
図6は、実施例における海水での硝酸除去能試験結果を示すグラフである。図示するように三つの試験区全てにおいて、試験開始から3週間強ほどで海水中の硝酸をほとんど除去することができた。また、試験期間中、微生物による白濁の発生はなかった。なお、試験終了時点でのバイオフィルムの厚さは、平均5mmだった。
【0053】
<1−4 考察>
淡水、海水いずれの試験においても、本発明硝酸除去バイオリアクターの充分な硝酸除去性能を確認することができた。今回の試験は家庭用レベルといえる規模の水槽を用いたものだが、処理規模の大小に関わらず本発明は有用である。たとえば飲食店等の業務用水槽や試験研究用水槽など、魚を大量にストックするための使用にも申し分ない。さらにはより大規模な養魚場・養殖場・水族館等での使用も可能である。
【0054】
本実施例で製作した硝酸除去バイオリアクターは、いわば家庭用レベルの水槽用のものであるが、その製作コストは低廉に抑えることができた。
【0055】
淡水、海水いずれの試験においても、試験開始から22日あたりで一度に硝酸濃度が低くなったのは、バイオリアクター内部で砂糖が嫌気発酵して低分子化し生成した有機酸がこの時期に一度に放出されたか、あるいはバイオリアクター外表面に形成されるバイオフィルムが、嫌気呼吸が充分活発になる厚さまで到達したか、またはその両方の現象が起きたことが考えられる。
【0056】
淡水、海水いずれの試験においても、三つの試験区間において硝酸除去開始までの所要日数に約1日の差が生じたのは、バイオリアクターの構造材料として用いたレンガがそもそも有する構造の不均一性によるものと考えられる。本発明硝酸除去バイオリアクターの有機酸透過構造として用いる多孔質材料の種類や品質を検討することによって、硝酸除去性能の平準化が可能であると考えられる。
【0057】
なお、淡水、海水いずれの試験においても、一度バイオフィルムが外表面に形成された後の硝酸除去バイオリアクターを、水槽・水量等条件を上記実施例と同じくした別の新規・未処理の栄養塩含有水中に設置したところ、設置後2日以内に硝酸をほぼ完全に除去できることが確認された。つまり本発明硝酸除去バイオリアクターは、一度バイオフィルムが外表面に形成された後は、速効性に優れた硝酸除去性能を備えることが示された。したがって、いずれの試験においても硝酸除去性能の発現に要した約3週間という期間は、バイオリアクター内部で発酵が進んで、外表面に微生物膜が充分に形成されるまでの期間であると考えられる。
【0058】
上記2の淡水試験終了後、用いた硝酸除去バイオリアクターを、魚を飼育、あるいは生息させている水槽に設置したところ、魚がバイオリアクターの外表面に形成されたバイオフィルムを、口で頻繁につつく行動が観察された。これは、魚がバイオフィルムすなわち微生物膜を餌として食しているものと認められた。
【0059】
また、同じく淡水試験終了後、用いた硝酸除去バイオリアクターを、魚のいない水草の繁茂している水槽に設置したところ、ミジンコが大量に発生した。これはバイオリアクター外表面のバイオフィルムがミジンコの栄養源になったものと考えられる。以上のことから、本発明の硝酸除去バイオリアクターは硝酸を分解して気体窒素として水中から除去する性能だけではなく、リンやイオウなどの元素を再び高分子化させて魚等を飼育・生息させるための栄養源を生成する機能も有することが示唆された。
【0060】
最後に、本発明の原理を敷衍すれば、要するに本願において提示する栄養塩含有水中の硝酸除去手段とは、硝酸資化微生物の栄養となる有機化合物を嫌気発酵により生成可能な基質を用いて生成すること、生成した有機化合物は嫌気発酵の場から好気発酵の場へと移動させること、そして、好気発酵の場に形成されるバイオフィルムの備える処理能力を超えないよう、有機化合物の内部から外部への移動を制限する内外境界構造を用いること、であるといえる。
【0061】
<2 硝酸除去バイオリアクター容器の設計例>
<2−1 全体形状の設計例>
その1 ボトル型
硝酸除去バイオリアクター全体をPETボトル様等のボトル形状に形成し、大径部分を反応容器、その上の小径部分を投入部とする。投入部には蓋を備え付けてもよい。意匠性、取扱い性、安定性において特徴を出すことができる。
【0062】
その2 水筒型
硝酸除去バイオリアクター容器全体を円筒状に形成し、上端部には、たとえばねじ込み式等の水筒様の蓋を備え付ける。この部分が投入部となる。意匠性、取扱い性、安定性において特徴を出すことができる。
【0063】
<2−2 投入部または反応容器の設計例>
その1 複数投入部
反応容器は単一とし、これに連設される投入部の数を二、三、またはそれ以上とする。投入部のサイズ、形状等の仕様は、同一としても、一部相違としても、全部相違としてもよい。取扱い性、投入する発酵源の調節、意匠性において特徴を出すことができる。
【0064】
その2 複数反応容器
投入部は単一とし、これに連設される反応容器の数を二、三、またはそれ以上とする。反応容器のサイズ、形状等の仕様は、同一としても、一部相違としても、全部相違としてもよい。取扱い性、硝酸除去作用を水槽中で均一化する等の機能制御性、意匠性において特徴を出すことができる。
【0065】
<2−3 設置を考慮した反応容器の設計例>
たとえば、水槽のコーナー部に適合する形状の反応容器とする。設置性、安定性、取扱い性において特徴を出すことができる。
【0066】
<2−4 他機能との複合による設計例>
その1 他の水質浄化機能との複合
たとえば、既存のアンモニア酸化ろ過槽と本硝酸除去バイオリアクターとを複合させた形態である。多機能性、省スペース性において特徴を出すことができる。
【0067】
その2 反応調節・制御機構の付加
たとえばモータを用いて反応容器を回転させる機構、あるいはサーモスタットを付加する等して、反応容器中における反応を調節・制御することとしてもよい。
【0068】
<3 その他>
本発明の硝酸除去バイオリアクターにおいては、反応容器の外壁の少なくとも一部が有機酸透過構造である。すなわち嫌気発酵を行う醗酵槽と有機酸透過構造とが一体となっている構成である。しかし、これとは異なり、反応容器におけるこの二つの機能を分離し、投入部の設けられた嫌気醗酵槽と、およびそこから管構造によって接続された一または複数の有機酸透過構造槽とからなる硝酸除去バイオリアクターを構成することもまた、可能である。
【0069】
また本発明は、水圏全体における硝酸除去を目的として、反応容器自体は水中に設置して用いるよう構成されたものであるが、これとは別に、たとえば水面付近を主とした水圏の硝酸除去を行う等の目的により、反応容器を水面上に適宜の状態で浮かせて用いる構成も、またあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の硝酸除去バイオリアクター、硝酸除去バイオフィルム生成方法および硝酸除去方法によれば、簡易な構成によって、硝酸イオンを効率的かつ実用的に除去できる。本発明は家庭用レベルの水槽といった小規模な用途から、水族館や養殖施設、汚水処理場や屎尿処理施設といった大規模な水処理施設や、汚染された池や湖沼といった開放された水圏にも規模の如何を問わず広く適用可能であり、産業上の利用価値が高い発明である。
【0071】
つまり本発明硝酸除去バイオリアクター等を用いれば、栄養塩含有水中に含まれる栄養塩類を微生物に同化させ、再度生物の飼料へと変換することも可能とし、環境下に生息する生物群に効率よく同化させることができる。
【0072】
また本発明は本来、栄養塩含有水における硝酸除去を課題としてなされたものであるが、植物栄養源の供給効果も得られるものである。つまり、硝酸系の肥料を本発明硝酸除去バイオリアクターの内部に入れ、処理水中に徐々に染み出させればよい。レンガ等の多孔質材料による反応容器壁を透過して外部に出たKNO等は、微生物膜に呼吸基としてNOだけを奪われ、塩基カチオンKのみが処理水中に放出される。これにより、K、Ca、Mgなど植物の成長に必要な元素を、処理水中に、硝酸過多となることなく安全に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の硝酸除去バイオリアクターの基本構成を示す説明図(断面図)である。
【図1−2】図1の本発明バイオリアクターの使用方法を示す説明図(断面図)である。
【図1−3】図1の本発明バイオリアクターにおける作用を示す説明図(断面図)である。
【図1−4】図1の本発明バイオリアクターにおける作用を示す説明図(断面図)である。
【図2】本発明硝酸除去バイオリアクターの一実施例を示す斜視分解図(a)、および組立図(b)である。
【図3】発明硝酸除去バイオリアクターの別の実施例を示す斜視分解図(a)、および組立図(b)である。
【図4】本発明硝酸除去方法の一例を示す説明図(断面図)である。
【図5】実施例における淡水での硝酸除去能試験結果を示すグラフである。
【図6】実施例における海水での硝酸除去能試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
1、21、31…硝酸除去バイオリアクター
2、22、32…反応容器
3、23、33…投入部
4、24、34…有機酸透過構造
5、25、35…有機酸透過構造の外表面
38…容器底面部
A…有機酸類
F…バイオフィルム
L…液体(透過量調節用)
S…発酵源
V、2V、3V…反応容器内部
W…処理水(栄養塩含有水)












【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養塩含有水中の栄養塩を微生物に代謝させるバイオリアクターであって、該バイオリアクターは反応容器とこれに設けられていて該反応容器中に発酵源を投入するための投入部とを備えてなり、該反応容器はこれに投入される発酵源を嫌気発酵させて有機酸類を生成させるものであってその少なくとも一部には有機酸類の透過可能な有機酸透過構造が設けられており、該反応容器は水中にまた該投入部の投入用端部は水面上に出ているように設置して用い、栄養塩含有水中の硝酸除去可能な、硝酸除去バイオリアクター。
【請求項2】
前記有機酸透過構造は多孔質材料により形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の硝酸除去バイオリアクター。
【請求項3】
前記有機酸透過構造は孔径が二種類以上の孔から構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の硝酸除去バイオリアクター。
【請求項4】
前記有機酸透過構造はレンガ、素焼きタイルまたはその他のセラミックス材料を用いて構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の硝酸除去バイオリアクター。
【請求項5】
前記有機酸透過構造はレンガ、素焼きタイルもしくはその他のセラミックス材料、およびおが屑もしくはその他の副材料により構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の硝酸除去バイオリアクター。
【請求項6】
前記有機酸透過構造は前記反応容器の少なくとも一側面全体に形成されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の硝酸除去バイオリアクター。
【請求項7】
前記投入部は投入管であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の硝酸除去バイオリアクター。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の硝酸除去バイオリアクターにおいて硝酸除去機能を備えたバイオフィルムを生成する方法であって、前記発酵源として有機炭素化合物を用い、前記投入部から前記反応容器内に該発酵源を投入することで該発酵源を嫌気発酵により分解して有機酸類を生成させ、生成した該有機酸類を前記有機酸透過構造を介して該反応容器外に透過させることにより、該有機酸透過構造の外表面に好気環境下で硝酸資化微生物からなるバイオフィルムを生成させる、硝酸除去バイオフィルム生成方法。
【請求項9】
前記有機炭素化合物がスクロースその他の易分解性の糖類であることを特徴とする、請求項8に記載の硝酸除去バイオフィルム生成方法。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれかに記載の硝酸除去バイオリアクターを用いた栄養塩含有水中の硝酸除去方法であって、前記発酵源として有機炭素化合物を用い、前記投入部から前記反応容器内に該発酵源を投入することで該発酵源を嫌気発酵により分解して有機酸類を生成させ、生成した該有機酸類を前記有機酸透過構造を介して該反応容器外に透過させることにより、該有機酸透過構造の外表面に好気環境下で硝酸資化微生物からなるバイオフィルムを生成させ、該バイオフィルムによって栄養塩含有水中の硝酸を分解除去する、硝酸除去方法。
【請求項11】
前記有機炭素化合物が易分解性の糖類であることを特徴とする、請求項10に記載の硝酸除去方法。
【請求項12】
前記易分解性の糖類が、スクロース、マルトースまたはその他の二糖類であることを特徴とする、請求項11に記載の硝酸除去方法。
【請求項13】
前記易分解性の糖類が、ガラクトース、フルクトース、グルコース、マンノースまたはその他の単糖類であることを特徴とする、請求項11に記載の硝酸除去方法。
【請求項14】
前記易分解性の糖類が、アミロース、アミロペクチン、デンプン、アガロース、ポリデキストロース、マンナンまたはその他の多糖類であることを特徴とする、請求項11に記載の硝酸除去方法。
【請求項15】
前記投入部中には液体を投入し、該液体の量を調節することによって前記有機酸類の透過量を調節することを特徴とする、請求項10ないし14のいずれかに記載の硝酸除去方法。
【請求項16】
前記液体として水またはその他の親水性の液体を用いることを特徴とする、請求項15に記載の硝酸除去方法。
【請求項17】
前記投入部中に疎水性液体を投入することによって内部の嫌気度を高め、前記有機酸類の透過量を調節することを特徴とする、請求項15または16に記載の硝酸除去方法。


【図1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−137157(P2010−137157A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315100(P2008−315100)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(508363591)
【Fターム(参考)】