説明

硫酸バリウムを含有する複合材

本発明の対象は、硫酸バリウムを含有する複合材、その製造方法および該複合材の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、硫酸バリウムを含有する複合材、その製造方法および該複合材の使用である。
【0002】
添加剤とも呼ばれる慣用の充填剤および顔料の適用から、ポリマー系では充填剤もしくは顔料の粒子と、ポリマーマトリックスとの間の相互作用の種類および強度が複合材の特性に影響を与えることが公知である。適切な表面変性によって粒子とポリマーマトリックスとの間の相互作用に影響を与えることができ、ひいてはポリマーマトリックス中の充填剤と顔料とからなる系(以下では複合材とも呼ぶ)の特性を変化させることができる。表面変性の慣用の種類は、アルコキシアルキルシランの使用下での粒子表面の官能化である。表面変性は、粒子とマトリックスとの相容性を高めることに役立つ。さらに官能基の適切な選択によって、マトリックスへの粒子の結合も達成することができる。慣用の充填剤を使用する際の欠点は、該充填剤がその粒径に基づいて、可視光を著しく散乱し、ひいては複合材の透明性が明らかに低減することである。さらに、慣用の充填剤、たとえば炭酸カルシウムの化学的抵抗性が劣ることも、多数の適用にとって欠点である。
【0003】
ポリマー材料の機械的特性を改善するための第二の可能性は、超微粒子の使用である。US−B−6667360は、1〜100nmの粒径を有するナノ粒子を1〜50質量%含有するポリマー複合材を開示している。ナノ粒子として、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属炭化物、金属フッ化物および金属塩化物が提案されているが、この場合、これらの粒子の表面は変性されていない。ポリマーマトリックスとして、エポキシド、ポリカーボネート、シリコーン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、合成プラスチック、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリフェニレン、酸化物、ポリケトンおよびコポリマーならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0004】
US−B−6667360に開示されている複合材は、充填剤を含有していないポリマーと比較して、改善された機械的特性、特に引っ張り特性および耐引掻性を有している。開示されている超微細粒子の1つの欠点は、該粒子がしばしば高いモース硬度を有し、ひいては高い摩耗性を有することである。さらに、記載されている材料の屈折率(たとえば二酸化チタンはn=2.7)は、ポリマー材料の屈折率と比較して極めて高い。このことは、比較的強い光の散乱ひいては複合材の透明性の低減につながる。
【0005】
典型的な顔料および充填剤の範囲内での1つの特別な事例は、硫酸バリウム(BaSO4)である。硫酸バリウムは化学的に不活性であり、かつ典型的なポリマーと反応しない。硫酸バリウムはモース硬度3で比較的柔らかく、ルチル変態の二酸化チタンのモース硬度は6.5である。硫酸バリウムの屈折率は、n=1.64で比較的低い。
【0006】
特許出願DE102005025719A1は、0.5μmより小さい平均粒径を有し、分散剤により被覆されている解凝集された硫酸バリウムを、プラスチックの前駆物質、たとえばポリオール中に混合する方法を開示している。この方法の場合、分散剤と結晶化防止剤とを含有する解凝集された硫酸バリウムを含むプラスチックが製造される。WO2007−039625A1の出願は、少なくとも1の有機成分を含有する、硫酸バリウムもしくは炭酸カルシウムの粒子を透明なポリマー中で使用することを記載している。有機被覆された、解凝集硫酸バリウム粒子を使用する際の一般的な欠点は、有機成分を普遍的に使用することができないことである。特に結晶化防止剤の使用は不利である。というのも、結晶化防止剤はすでに硫酸バリウム粒子を製造(沈殿)する際に使用されるからである。この場合、結晶化防止剤とプラスチック前駆物質もしくはプラスチックとの相容性は、生成物の使用可能性を著しく制限する。これは極端な場合には、それぞれのプラスチックのために新規の生成物を開発し、かつ製造しなくてはならないことを意味している。出願DE102005025719A1およびWO2007−039625A1に記載されている、解凝集された硫酸バリウム粒子のもう1つの欠点は、二次粒子の粒径分布であり、該二次粒子は2μmより小さい、有利には<250nm、特に有利には<200nm、とりわけ有利には<130nm、さらに有利には<100nm、殊に有利には<50nmの平均粒径を有していなくてはならない。このような微細な二次粒子分布は、著しいダスト傾向につながり、これは作業安全性の理由から、特に超微細粒子の場合には回避すべきである。
【0007】
従来技術に記載されている、充填剤により変性された複合材のもう1つの欠点は、多くの適用にとって不十分なその機械的特性である。
【0008】
本発明の課題は、先行技術の欠点を克服することである。
【0009】
本発明の特別な課題は、従来技術からの複合材と比較して明らかに改善された曲げ弾性率、曲げ強さ、引張弾性率、引張強さ、亀裂抵抗、破壊靱性、衝撃強さおよび摩耗率を有する複合材を提供することである。
【0010】
これは、複合材料の特定の適用、たとえば自動車分野、航空機または飛行機の分野において極めて重要である。たとえば滑り軸受け、歯車、またはローラーおよびプランジャー被覆における摩耗率の低減が望ましい。まさにこれらの部材は、長い寿命を有しているべきであり、従って装置の耐用期間の延長につながるべきである。たとえばPA6、PA66またはPETからなる合成繊維では、引き裂き強さを改善することができる。
【0011】
意外にも前記課題は本発明による、主請求項に記載の特徴を有する複合材によって解決された。有利な実施態様は従属請求項において特徴付けられている。
【0012】
意外にも、350nmより小さい微結晶サイズd50(デバイ・シェラー法により測定)を有する、表面変性されていない沈降硫酸バリウムを使用する場合に、ポリマー複合材の機械的および摩擦学的特性が著しく改善された。このことは、表面変性されていない硫酸バリウム粒子が、粒子とマトリックスとの間に結合を形成することができないために、意外であった。
【0013】
添加剤とマトリックスとの間の化学的または物理的結合はさらに、複合材の機械的および摩擦学的な特性の改善にも作用することが知られている。従って本発明によれば、このような結合を形成することができる硫酸バリウム粒子を提供し、かつ使用する特別な実施態様が前提となっている。このために本発明によれば、表面変性された硫酸バリウム粒子が前提となっている。しかし本発明によれば、粒子とマトリックスとの間の結合を適切に調整するために必要な表面変性は、硫酸バリウム粒子を製造した後ではじめて(たとえば水性媒体中での沈殿)付加的な方法工程で実施される。
【0014】
後から行う表面変性の利点は、これにより可能な高い柔軟性である。この方法によって一方では、粒子の形成が、硫酸バリウムの沈殿の際に慣用の方法で行うことができる、つまり粒子の形成は、共沈によって否定的な影響を受けない。他方、硫酸バリウムの粒径および粒子の形態を制御することがより容易である。
【0015】
本発明により使用されるべき硫酸バリウムの沈殿は、先行技術から公知の全ての方法により実施することができる。本発明によれば、ナノスケールの粒子を沈殿するための沈殿反応器中で、特に複数の反応体、たとえば水酸化バリウムまたは硫化バリウムまたは塩化バリウムと、硫酸ナトリウムまたは硫酸の水溶液の超急速混合のための反応セル中で製造された硫酸バリウムが有利に使用される。本発明によれば、有利に硫酸バリウムは沈殿の後に沈殿懸濁液の形で提供される。
【0016】
本発明により使用される硫酸バリウムは洗浄され、濃縮されるので、生じる廃水は有機的に負荷されていない。この硫酸バリウムは、濃縮された硫酸バリウム懸濁液の形で存在する。
【0017】
濃縮された硫酸バリウム懸濁液の乾燥は、噴霧乾燥、凍結乾燥および/または粉砕乾燥によって行うことができる。乾燥方法に依存して、引き続き乾燥した粉末を粉砕することが必要となることがある。この粉砕は自体公知の方法により実施することができる。
【0018】
有利には本発明による複合材を製造するために、噴霧乾燥された硫酸バリウム粉末を使用する。該粉末は、比較的粗い噴霧乾燥凝集体が、ダストの少ない、かつ極めて良好な流動性を有する粉末を形成し、該粉末はさらに意外にも良好な分散性を有するという利点を有する。
【0019】
本発明による複合材は、ポリマーマトリックスと、0.1〜60質量%の、350nm未満の平均微結晶サイズd50(デバイ・シェラー法により測定)を有する沈降硫酸バリウム粒子を含有する。有利には、微結晶サイズd50は200nm未満であり、特に有利には3〜50nmである。この場合、本発明によれば硫酸バリウム粒子は、表面変性されていても、表面変性されていなくてもよい。
【0020】
さらに本発明による複合材は、当業者に公知の成分、たとえば鉱物質充填剤、ガラス繊維、安定化剤、加工助剤((保護系とも呼ばれる)、たとえば分散助剤、離型剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤など)、顔料、難燃剤(たとえば水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなど)、加硫促進剤、加硫遅延剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、硫黄、過酸化物および/または可塑剤を含有していてもよい。
【0021】
本発明による複合材はたとえばさらに鉱物質充填剤および/またはガラス繊維を80質量%まで、有利には10〜80質量%まで、安定化剤および加工助剤(たとえば分散助剤、離型剤、酸化防止剤など)を10質量%まで、有利には0.05〜10質量%まで、顔料を10質量%まで、および難燃剤(たとえば水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなど)を40質量%まで含有していてもよい。
【0022】
本発明による複合材はたとえば硫酸バリウムを0.1〜60質量%、鉱物質充填剤および/またはガラス繊維を0〜80質量%、安定化剤および加工助剤(たとえば分散助剤、離型剤、酸化防止剤など)を0.05〜10質量%、顔料を0〜10質量%、難燃剤(たとえば水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなど)を0〜40質量%含有していてもよい。
【0023】
ポリマーマトリックスは本発明によれば、熱可塑性樹脂、高性能プラスチックまたはエポキシ樹脂からなっていてもよい。熱可塑性材料としてたとえばポリエステル、ポリアミド、PET、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、これらのコポリマーおよびブレンド、ポリカーボネート、PMMA、またはポリ塩化ビニルが適切である。高性能プラスチックとして、PTFE、フッ素・熱可塑性樹脂(たとえばFEB、PFAなど)、PVDF、ポリスルホン(たとえばPES、PSU、PPSUなど)、ポリエーテルイミド、液晶ポリマーおよびポリエーテルケトンが適切である。さらにエポキシ樹脂がポリマーマトリックスとして適切である。
【0024】
本発明によれば、超微細硫酸バリウム粒子は、表面変性を行わずに使用することができる。あるいは特別な実施態様では、硫酸バリウム粒子は、無機および/または有機表面変性を有していてもよい。
【0025】
超微細硫酸バリウムの無機表面変性は、アルミニウム、アンチモン、バリウム、カルシウム、セリウム、塩素、コバルト、鉄、リン、炭素、マンガン、酸素、硫黄、ケイ素、窒素、ストロンチウム、バナジウム、亜鉛、スズおよび/またはジルコニウムの化合物または塩から選択されている少なくとも1の無機化合物からなる。たとえばケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムおよび硫酸アルミニウムがあげられる。
【0026】
超微細BaSO4の無機表面処理は、水性スラリー中で行われる。反応温度はこの場合、有利には50℃を越えるべきではない。懸濁液のpH値は、たとえばNaOHを使用して9より高い範囲のpH値に調整する。次いで強力な撹拌下で、後処理薬品(無機化合物)、有利には水溶性の無機化合物、たとえばアルミニウム、アンチモン、バリウム、カルシウム、セリウム、塩素、コバルト、鉄、リン、炭素、マンガン、酸素、硫黄、ケイ素、窒素、ストロンチウム、バナジウム、亜鉛、スズおよび/またはジルコニウムの化合物または塩を添加する。pH値および後処理薬品の量は、本発明によれば、後処理薬品が完全に水中で溶解して存在しているように選択する。懸濁液を強力に、有利には少なくとも5分間攪拌することによって、後処理薬品は懸濁液中に均質に分散される。次の工程で、懸濁液のpH値を低下させる。この場合、pH値は徐々に、かつ強力な撹拌下で低下させることが有利であることが判明している。特に有利にはpH値を、10〜90分以内に、5〜8の値に低下させる。これに引き続き、本発明によれば、熟成時間、有利には約1時間の熟成時間が続く。この場合、温度は50℃を超えるべきではない。次いで水性懸濁液を洗浄し、かつ乾燥させる。超微細の表面変性されたBaSO4を乾燥させるために、たとえば噴霧乾燥、凍結乾燥および/または粉砕乾燥が考えられる。乾燥方法に依存して、引き続き乾燥した粉末を粉砕することが必要となることがある。この粉砕は自体公知の方法により実施することができる。
【0027】
シラン化された超微細表面変性BaSO4粒子を製造するために、すでに無機表面変性されたBaSO4粒子からなる水性BaSO4懸濁液を、少なくとも1のシランで付加的に変性する。シランとして、有利にはアルコキシアルキルシランを使用し、特に有利にはオクチルトリエトキシシラン、γ−メタクリルプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランおよび/または加水分解されたシラン、たとえばγ−アミノプロピルシルセスキオキサン(GE社)から選択されるアルコキシアルキルシランを使用する。このために洗浄の前または後で、無機表面変性されたBaSO4粒子からなるBaSO4懸濁液へ、強力な撹拌下に、または分散下に、アルコキシアルキルシランを添加する。本発明によればこの後に、熟成時間が続き、有利には最大40℃の温度で、10〜60分の熟成時間が続く。引き続き、すでに記載したとおりに行う。あるいは、乾燥後にアルコキシアルキルシランを混合することによって無機変性粒子上に施与することもできる。
【0028】
有機表面変性剤として本発明によれば以下の化合物が適切である:ポリエーテル、シラン、ポリシロキサン、ポリカルボン酸、脂肪酸、ポリエチレングリコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリアルコール、有機ホスホン酸、チタン酸塩、ジルコン酸塩、アルキルスルホン酸塩および/またはアリールスルホン酸塩、アルキル硫酸塩および/またはアリール硫酸塩、アルキルリン酸エステルおよび/またはアリールリン酸エステル。
【0029】
有機表面変性硫酸バリウムの製造は、自体公知の方法により実施することができる。本発明によれば、前記硫酸バリウム懸濁液にバリウム成分を添加して、バリウム過剰量が生じる。バリウム成分として、全ての水溶性バリウム化合物、たとえば硫化バリウム、塩化バリウムおよび/または水酸化バリウムを使用することができる。このバリウムイオンは、硫酸バリウム粒子の表面に吸着する。
【0030】
次いで、適切な有機化合物を、強力に撹拌下でおよび/または分散の間に、前記懸濁液に添加する。この有機化合物は、バリウムイオンと共に難溶性化合物を形成するように選択しなければならない。有機化合物を硫酸バリウム懸濁液に添加することにより、有機化合物は過剰量のバリウムイオンと共に、硫酸バリウムの表面に析出する。
【0031】
有機化合物として、アルキルスルホネートおよび/またはアリールスルホネート、アルキルスルフェートおよび/またはアリールスルフェート、アルキルリン酸エステルおよび/またはアリールリン酸エステル、またはこれらの化合物の少なくとも2種類からなる混合物の群から選択される化合物が適切であり、その際、アルキル基またはアリール基は、官能基により置換されていてもよい。有機化合物は、場合により官能基を有する脂肪酸であってもよい。このような化合物の少なくとも2種からなる混合物も使用することができる。
【0032】
たとえば次のものを使用することができる:アルキルスルホン酸塩、ポリビニルスルホン酸ナトリウム、N−アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ヒドロキシアミンスルフェート、トリエタノールアンモニウムラウリルスルフェート、リン酸モノエチルモノベンジルエステル、リチウムペルフロロオクタンスルホネート、12−ブロモ−1−ドデカンスルホン酸、ナトリウム−10−ヒドロキシ−1−デカンスルホネート、ナトリウム−カラゲナン、ナトリウム−10−メルカプト−1−セタンスルホネート、ナトリウム−16−セタン(1)スルフェート、オレイルセチルアルコールスルフェート、オレイン酸スルフェート、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸。
【0033】
有機変性硫酸バリウムは、存在する水性ペーストの形で直接使用するか、または使用の前に乾燥することができる。この乾燥は自体公知の方法により実施することができる。この乾燥のために、特に対流乾燥器、噴霧乾燥器、粉砕乾燥器、凍結乾燥器および/または脈動乾燥器の使用が提供される。しかしながら、他の乾燥器も本発明の場合に同様に使用可能である。乾燥方法に依存して、引き続き乾燥した粉末を粉砕することが必要となることがある。この粉砕は自体公知の方法により実施することができる。有機変性硫酸バリウムは、好ましくはd50=1nm〜100μm、有利にd50=1nm〜1μm、特に有利にd50=5nm〜0.5μmの平均粒径を有し、かつ有機変性の前に有利には一次粒子の大きさに分散して存在する。
【0034】
この一次粒子は、σg<1.5、有利にσg<1.4の幾何標準偏差を有する、d=1〜5000nm、有利にd=1〜1000nm、特に有利にd=5〜500nmの中央値を有する対数的粒度分布を有する。
【0035】
有機変性硫酸バリウムは、有機変性の後にさらに、官能性シラン誘導体または官能性シロキサンで後処理することができる。たとえば次のものを使用することができる:オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン。
【0036】
本発明によれば、有機表面変性された硫酸バリウム粒子は場合により、1もしくは複数の官能基、たとえば1もしくは複数のヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、メタクリレート基および/またはイソシアネート基、チオール基、アルキルチオカルボキシレート基、ジスルフィド基および/またはポリスルフィド基を有する。
【0037】
表面変性剤は化学的に、および/または物理的に粒子表面に結合していてよい。化学結合は共有結合であっても、イオン結合であってもよい。物理的な結合として、双極子−双極子力またはファン・デル・ワールス力による結合が可能である。有利であるのは、共有結合を介した、または物理的な双極子−双極子結合を介した表面変性剤の結合である。
【0038】
本発明によれば、表面変性された硫酸バリウム粒子は、表面変性剤によりポリマーマトリックスへ部分的に、または完全に、化学に、および/または物理に結合する能力を有する。化学結合種として、共有結合およびイオン結合が適切である。物理的な結合種として、双極子−双極子力またはファン・デル・ワールス力による結合が適切である。
【0039】
有利には本発明による複合材を製造するためにまず、硫酸バリウムを有利に5〜80質量%含有するマスターバッチを製造することができる。次いでこのマスターバッチを、粗製ポリマーのみによって希釈するか、または調製物の別の成分と混合し、かつ場合により再度分散させることができる。
【0040】
本発明による複合材を製造するために、硫酸バリウムをまず有機物質、特にポリオール、ポリグリコール、ポリエーテル、ジカルボン酸およびこれらの誘導体、AH塩、カプロラクタム、パラフィン、リン酸エステル、ヒドロキシカルボン酸エステル、セルロース、スチレン、メチルメタクリレート、有機ジアミド、エポキシ樹脂および可塑剤(特にDOP、DIDP、DINP)に混入し、かつ分散させる方法を選択することもできる。硫酸バリウムが添加されたこの有機物質は次いで、複合材を製造するための出発材料として使用することができる。
【0041】
マスターバッチ中での、もしくは有機物質中での硫酸バリウムの分散のために、慣用の分散法を、特に溶融押出機、溶解機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、揺動ミル、超音波または混練機を使用する慣用の分散法を使用することができる。特に有利であるのは、揺動ミルまたはd<1.5mmのビーズ直径を有するビーズミルの使用である。
【0042】
本発明による複合材は意外にも、優れた機械的および摩擦学的特性を有している。充填剤を含有していないポリマーと比較して、本発明による複合材は、明らかに改善された曲げ弾性率、曲げ強さ、引張弾性率、引張強さ、亀裂抵抗、破壊靱性、衝撃強さ、および摩耗率を有する。
【0043】
本発明の対象は、具体的には次の通りである:
少なくとも1の熱可塑性樹脂、少なくとも1の高性能プラスチックおよび/または少なくとも1のエポキシ樹脂および、その微結晶サイズd50が、350nm未満、有利には200nm未満であり、かつ特に有利には3〜50nm未満である硫酸バリウムからなり、かつ該硫酸バリウムは無機または有機表面変性されていても、表面変性されていなくてもよい複合材(以下では硫酸バリウム複合材と呼ぶ)、
熱可塑性樹脂として、少なくとも1のポリエステル、ポリアミド、PET、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、そのコポリマーおよびブレンド、ポリカーボネート、PMMAおよび/またはPVCが使用される硫酸バリウム複合材、
高性能プラスチックとして、少なくとも1のPTFE、フッ素系熱可塑性樹脂(たとえばFEP、PFAなど)、PVDF、ポリスルホン(たとえばPES、PSU、PPSUなど)、ポリエーテルイミド、液晶ポリマーおよび/またはポリエーテルケトンが使用される硫酸バリウム複合材、
エポキシ樹脂が使用される硫酸バリウム複合材、
複合材が、熱可塑性樹脂12〜99.8質量%、硫酸バリウム0.1〜60質量%、鉱物質充填剤および/またはガラス繊維0〜80質量%、酸化防止剤0.05〜10質量%、有機金属失活剤0〜2.0質量%、加工助剤(特に分散助剤、カップリング剤など)0〜2.0質量%、顔料0〜10質量%、および難燃剤(たとえば水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなど)0〜40質量%を含有する硫酸バリウム複合材、
複合材が、高性能プラスチック12〜99.9質量%、硫酸バリウム0.1〜60質量%、鉱物質充填剤および/またはガラス繊維0〜80質量%、加工助剤(特に分散助剤、カップリング剤)0〜50.0質量%、顔料0〜10質量%を含有する硫酸バリウム複合材、
複合材が、エポキシ樹脂20〜99.9質量%、硫酸バリウム0.1〜60質量%、鉱物質充填剤および/またはガラス繊維0〜80質量%、加工助剤0〜10質量%、顔料0〜10質量%、および水酸化アルミニウム0〜40質量%を含有する硫酸バリウム複合材、
複合材中の硫酸バリウムの割合が、0.1〜60質量%、有利には0.5〜30質量%、特に有利には1.0〜20質量%である硫酸バリウム複合材、
超微細硫酸バリウムの無機表面変性が、以下の元素を少なくとも2種類を含有する化合物からなる硫酸バリウム複合材:アルミニウム、アンチモン、バリウム、カルシウム、セリウム、塩素、コバルト、鉄、リン、炭素、マンガン、酸素、硫黄、ケイ素、窒素、ストロンチウム、バナジウム、亜鉛、スズおよび/またはジルコニウムの化合物または塩、
有機表面変性が、1もしくは複数の以下の成分からなる硫酸バリウム複合材:ポリエーテル、シロキサン、ポリシロキサン、ポリカルボン酸、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアルコール、脂肪酸、有利には不飽和脂肪酸、ポリアクリレート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルスルフェート、アリールスルフェート、アルキルリン酸エステル、アリールリン酸エステル、
表面変性が、1もしくは複数の以下の官能基を有する硫酸バリウム複合材:ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、メタクリレート基、および/またはイソシアネート基、チオール基、アルキルチオカルボキシレート基、ジスルフィド基および/またはポリスルフィド基、
表面変性が、共有結合により粒子表面に結合している硫酸バリウム複合材、
表面変性が、イオン結合により粒子表面に結合している硫酸バリウム複合材、
表面変性が、物理的な相互作用により粒子表面に結合している硫酸バリウム複合材、
表面変性が、双極子−双極子もしくはファン・デル・ワールスの相互作用により粒子表面に結合している硫酸バリウム複合材、
表面変性された硫酸バリウム粒子が、ポリマーマトリックスに結合する硫酸バリウム複合材、
硫酸バリウム粒子とポリマーマトリックスとの間に化学結合が存在する硫酸バリウム複合材、
硫酸バリウム粒子とポリマーマトリックスとの間の化学結合は、共有結合および/またはイオン結合である硫酸バリウム複合材、
硫酸バリウム粒子とポリマーマトリックスとの間に物理的な結合が存在する硫酸バリウム複合材、
硫酸バリウム粒子とポリマーマトリックスとの間の物理的な結合が、双極子−双極子結合(キーソン)、誘導された双極子−双極子結合(デバイ)または分散性結合(ファン・デル・ワールス)である硫酸バリウム複合材、
硫酸バリウム粒子とポリマーマトリックスとの間に物理的な結合および化学結合が存在する硫酸バリウム複合材、
硫酸バリウム複合材の製造方法:
まずマスターバッチを製造し、かつ粗製ポリマーで該マスターバッチを希釈することにより硫酸バリウム複合材が得られ、その際、該マスターバッチは、硫酸バリウムを5〜80質量%、有利には硫酸バリウムを15〜60質量%含有する硫酸バリウム複合材の製造方法、
まずマスターバッチを製造し、かつ該マスターバッチを粗製ポリマーにより分散下で希釈することにより硫酸バリウム複合材が得られる硫酸バリウム複合材の製造方法、
マスターバッチを調製物のその他の成分と、1工程もしくは複数の工程で混合し、かつ有利にはその後に分散を行う硫酸バリウム複合材の製造方法、
硫酸バリウムをまず有機物質、特にポリオール、ポリグリコール、ポリエーテル、ジカルボン酸およびこれらの誘導体、AH塩、カプロラクタム、パラフィン、リン酸エステル、ヒドロキシカルボン酸エステル、セルロース、スチレン、メチルメタクリレート、有機ジアミド、エポキシ樹脂、および可塑剤(特にDOP、DIDP、DINP)中に混合し、かつ分散させ、その際、該硫酸バリウムは無機もしくは有機変性されていても、表面変性されていなくてもよい、硫酸バリウム複合材の製造方法、
硫酸バリウムが添加された有機物質を、複合材の製造のための出発材料として使用する硫酸バリウム複合材の製造方法、
マスターバッチ中もしくは有機物質中での硫酸バリウムの分散は、慣用の分散法、特に溶融押出機、溶解機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、揺動ミル、超音波または混練機を使用して実施する、硫酸バリウム複合材の製造方法、
硫酸バリウムの分散のために有利に揺動ミルまたはビーズミルを使用する、硫酸バリウム複合材の製造方法、
硫酸バリウムの分散のために有利にビーズミルを使用し、その際、該ビーズは、有利には1.5mm未満、特に有利には1.0mm未満、とりわけ有利には0.3mm未満の直径dを有する、硫酸バリウム複合材の製造方法、
改善された機械的特性および改善された摩擦学的特性を有する硫酸バリウム複合材、
硫酸バリウム粒子、有利には表面変性された硫酸バリウム粒子の使用によって強度および靱性が同時に改善される硫酸バリウム複合材、
強度および靱性の改善を、曲げ試験または引張試験において観察することができる硫酸バリウム複合材、
改善された衝撃強さおよび/または改善されたノッチ付衝撃強さを有する硫酸バリウム複合材、
硫酸バリウム粒子、有利には表面変性された硫酸バリウム粒子の使用によって耐摩耗性が改善される硫酸バリウム複合材、
改善された耐引掻性を有する硫酸バリウム複合材、
改善された応力亀裂抵抗を有する硫酸バリウム複合材、
クリープ抵抗性の改善を観察することができる硫酸バリウム複合材、
成形体、半製品、フィルムまたは繊維を製造するための、特に射出成形部材、吹き込み成形部材または繊維を製造するための出発材料としての硫酸バリウム複合材の使用、
有利に改善された引き裂き強さを有する繊維の形の硫酸バリウム複合材の使用、
自動車、航空機または宇宙航空学の分野のための部材のため、特に滑り軸受け、歯車、ローラーまたはプランジャー被覆の形での硫酸バリウム複合材の使用、
たとえば注型法で部材を製造するための、接着剤としての、工業用フロアリングとしての、コンクリート被覆としての、コンクリート補修としての、腐食防止用被覆としての、電気部品またはその他の物品を注型するための、金属管を修復するための、美術における担体材料としての、または木製テラリウムを封止するための硫酸バリウム複合材の使用。
【0044】
本発明を、次の実施例によって詳細に説明するが、しかし、本発明はこれに限定されるものではない:
実施例1:
出発材料として、26nmの微結晶サイズd50を有する沈降硫酸バリウムを使用する。ポリマーマトリックスとして、Leuna−Harze GmbH社の市販のエポキシ樹脂Epilox A 19−03を使用する。硬化剤として、Vantico GmbH & Co KG社のアミン硬化剤HY2954を使用する。
【0045】
まず粉末状の硫酸バリウムを、溶解機による分散下に、液状のエポキシ樹脂へ14体積%の含有率で混合する。この前分散の後で、該混合物を揺動ミルにより2500回転/分の回転数で90分間分散させる。ビーズとして、1mmの二酸化ジルコニウムビーズを使用する。このバッチを、純粋な樹脂と混合して、硬化剤の添加後に、硫酸バリウム2体積%〜10体積%を含有する複合材が得られる。複合材の硬化は、乾燥室中で行う。
【0046】
複合材の機械的な試験のために、定義された寸法の試験体を製造した。
【0047】
破壊靱性KIC(ASTM E399−90)の測定は、Compact Tension(CT)試験体を用いて0.1mm/分の試験速度で行う。CT試験体では、安全カミソリによる制御された衝撃により、シャープな亀裂が生じた。このことにより、臨界応力度を測定するための亀裂の先端において、必要とされる平面ひずみ状態が生じる。
【0048】
機械的特性の決定は、注型板から精密ソーで作成した試験体を用いて、DIN EN ISO178による3点曲げ試験で行った。80×10×4mmの寸法の少なくとも5つの試験体を、2mm/分の試験速度で、室温で試験した。
【0049】
図1は、硫酸バリウム含有率の関数としての複合材の破壊靱性を示している。10体積%の使用濃度で、純粋な樹脂と比較して破壊靱性は66%向上することが明らかである。
【0050】
図2および3には、硫酸バリウムの使用濃度に対する複合材の3点曲げ試験の結果が記載されている。曲げ弾性率は、硫酸バリウムの使用によって、2670MPaから3509MPaに向上される。曲げ強さは純粋な樹脂の場合の129MPaから、硫酸バリウム10体積%の場合に136MPaに向上することができる。分散されていない硫酸バリウムを5体積%含有する比較試験は、純粋な樹脂と比較して、劣った曲げ強さを有している。
【0051】
複合材の比摩耗率を測定するために、4×4×20mm3の寸法を有する試験体をソーで作製した。この試験体は、モデル試験装置「ブロック・アンド・リング」を用いて、摩擦学的に特徴付けられる。0.6MPaの接触圧、0.03m/sの相対速度および22μmの摩耗輪表面の平均粒径を使用した。この試験において、比摩耗率は10体積%の複合材ではわずか0.36mm3/Nmであった。純粋な樹脂は、0.48mm3/Nmで、明らかにより高い比摩耗率を有していた。
【0052】
実施例2:
出発材料として、26nmの微結晶サイズd50を有する、表面変性された硫酸バリウムを使用する。硫酸バリウム表面は、無機材料で後処理され、かつシラン化されている。無機表面変性は、ケイ素とアルミニウムと酸素との化合物からなる。シラン化のために、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE Silicons社のSilquest A−187)を使用した。
【0053】
無機表面変性された硫酸バリウムはたとえば以下の方法により製造することができる:
平均一次粒径d50が26nm(TEM試験による結果)の超微細BaSO4粒子の6.5質量%の水性懸濁液3.7kgを、撹拌下に40℃に加熱した。10%の水酸化ナトリウム溶液で懸濁液のpH値を12に調節する。強力な撹拌下に、ケイ酸ナトリウムの水溶液(SiO2 284g/L)14.7ml、硫酸アルミニウム溶液(Al23 75g/L)51.9ml、およびアルミン酸ナトリウム溶液(Al23 275g/L)9.7mlを、12.0のpH値を維持しながら、同時に懸濁液に添加する。該懸濁液を強力な撹拌下にさらに10分間均質化する。引き続き、pH値を、ゆっくり、有利には60分以内に、5%の硫酸の添加によって7.5のpH値に調整する。同様に温度40℃で10分間の熟成時間がこれに続く。次いで該懸濁液を導電率が100μS/cm未満になるまで洗浄し、かつ引き続き噴霧乾燥する。洗浄された懸濁液を、脱塩水で固体含有率20質量%になるまで調整し、かつ溶解機により15分間分散させる。溶解機による分散下に、懸濁液にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE Silicons社のSilquest A−187)15gを徐々に添加する。該懸濁液を引き続き、溶解機によりさらに20分間分散させ、かつ次いで凍結乾燥器中で乾燥させる。
【0054】
ポリマーマトリックスとして、Leuna−Harze社の市販のエポキシ樹脂Epilox A 19−03を使用する。硬化剤として、Vantico GmbH & Co KG社のアミン硬化剤HY2954を使用する。
【0055】
まず粉末状の硫酸バリウムを、溶解機による分散下に、液状のエポキシ樹脂へ14体積%の含有率で混合する。この前分散の後で、該混合物を揺動ミルにより2500回転/分の回転数で90分間分散させる。ビーズとして、1mmの二酸化ジルコニウムビーズを使用する。このバッチを、純粋な樹脂と混合して、硬化剤の添加後に、硫酸バリウム5体積%を含有する複合材が得られる。複合材の硬化は、乾燥室中で行う。
【0056】
上記の例1と同様に、定義された寸法を有する試験体を製造し、該試験体を曲げ試験において、およびその破壊靱性に関して測定した。
【0057】
複合材の曲げ試験および破壊靱性の結果は、例1からの複合材の結果と比較して第1表に記載されている。
【0058】
表面変性された硫酸バリウム5体積%が充填された樹脂は、純粋な樹脂と比較して、著しく高い曲げ弾性率および明らかに向上された曲げ強度を示す。破壊靱性もまた、表面変性された硫酸バリウムの使用によって明らかに改善することができた。例1からの硫酸バリウム5体積%で充填された樹脂に対して、表面変性された硫酸バリウム5体積%で充填された樹脂の場合、曲げ弾性率および曲げ強さが明らかに向上している。
【0059】
【表1】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】
実施例3:
出発材料として、26nmの微結晶サイズd50を有する沈降硫酸バリウムを使用する。複合材を製造するために、硫酸バリウムをビーズミルによりまずエチレングリコール(EG)中に分散させ、かつ引き続き1μmフィルターを介して濾過した。次いで硫酸バリウム2.5質量%を含有するPET顆粒を製造するための重縮合の際に、30%懸濁液を使用した。
【0064】
該複合材および粗製PETポリマーから、射出成形装置の使用下に、引張試験および曲げ試験のための試験体を製造した。引き続き、該試験体を23℃および相対空気湿度50%で96時間コンディショニングした。
【0065】
第2表および第3表には、引張試験(DIN EN ISO 527による)および曲げ試験(DIN EN ISO178による)の結果がまとめられている。粗製ポリマーと比較して、引張弾性率および極限伸び率が改善されている。曲げ弾性率および曲げ強さも、硫酸バリウムの使用によって改善することができた。さらに、ビカー軟化温度が粗製ポリマーの場合の78℃からナノ複合材の場合の168℃へと明らかに向上したことが顕著である。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
実施例4:
出発材料として、26nmの微結晶サイズd50を有し、かつその表面が脂肪酸(ステアリン酸のEdenor ST1)により有機的に表面変性されている沈降硫酸バリウムを使用する。
【0069】
有機表面変性された硫酸バリウムはたとえば以下の方法により製造することができる:
沈降硫酸バリウム9kgをまずピンミルにより粉砕する。引き続き、ステアリン酸(Diosnaミキサー中のEdenor ST19)10質量%と混合し、その際、ステアリン酸は温度の発生に基づいて、生成物上で溶融した。得られた生成物を引き続き、再度ピンミルで粉砕した。
【0070】
この有機表面変性された硫酸バリウムおよび市販のポリアミド6(Ultramide B2715、BASF)から、まず溶融押出により20質量%のマスターバッチを製造した。第二の押出工程で、このマスターバッチを2.0質量%および7.4質量%の硫酸バリウム濃度に希釈した。射出成形装置を使用して、引張試験(DIN EN ISO 527による)のためのショルダーバーおよび曲げ試験(DIN EN ISO178による)のための小棒を作製した。引き続き、該試験体を23℃および相対空気湿度50%で72時間コンディショニングした。引張試験の結果は、第4表に記載されている。該複合材では、粗製ポリマーと比較して、引張強さと引張弾性率の明らかな上昇および極限伸び率の低下が確認される。曲げ特性(曲げ弾性率および曲げ強さ)もまた、表面変性された硫酸バリウムの使用によって明らかに改善することができた(第5表を参照のこと)。衝撃強さ(DIN EN ISO179)は、純粋なポリアミド6と比較して、表面変性硫酸バリウム2質量%を使用する場合にのみ改善された。
【0071】
【表4】

【0072】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス中の充填剤および顔料からなる複合材において、硫酸バリウム、少なくとも1の熱可塑性樹脂、高性能プラスチックおよび/またはエポキシ樹脂を含有し、その際、硫酸バリウムの微結晶サイズd50は、350nm未満、有利には200nm未満、および特に有利には3〜50nm未満であり、かつ硫酸バリウムは無機または有機表面変性されていてもよいし、表面変性されていなくてもよいことを特徴とする、ポリマーマトリックス中の充填剤および顔料からなる複合材。
【請求項2】
熱可塑性樹脂として、少なくとも1のポリエステル、ポリアミド、PET、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、そのコポリマーおよび/またはブレンド、ポリカーボネート、PMMAおよび/またはポリ塩化ビニルを、または熱可塑性樹脂として、これらの熱可塑性樹脂の少なくとも2種類の混合物を選択することを特徴とする、請求項1記載の複合材。
【請求項3】
高性能プラスチックとして、少なくとも1のPTFE、フッ素系熱可塑性樹脂(たとえばFEP、PFAなど)、PVDF、ポリスルホン(たとえばPES、PSU、PPSUなど)、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、および/またはポリエーテルケトンを、または高性能プラスチックとして、これらの高性能プラスチックの少なくとも2種類の混合物を選択することを特等とする、請求項1または2記載の複合材。
【請求項4】
複合材が、熱可塑性樹脂を12〜99.8質量%、硫酸バリウムを0.1〜60質量%、鉱物質充填剤および/またはガラス繊維を0〜80質量%、酸化防止剤を0.05〜10質量%、有機金属失活剤を0〜2.0質量%、加工助剤(特に分散剤、カップリング剤など)を0〜2.0質量%、顔料を0〜10質量%、および難燃剤(たとえば水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなど)を0〜40質量%含有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項5】
複合材が、高性能プラスチックを12〜99.9質量%、硫酸バリウムを0.1〜60質量%、鉱物質充填剤および/またはガラス繊維を0〜80質量%、加工助剤(特に分散剤、カップリング剤)を0〜5.0質量%、顔料を0〜10質量%含有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項6】
複合材が、エポキシ樹脂20〜99.9質量%、硫酸バリウム0.1〜60質量%、鉱物質充填剤および/またはガラス繊維0〜80質量%、加工助剤0〜10質量%、顔料0〜10質量%、および水酸化アルミニウム0〜40質量%を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項7】
複合材中の硫酸バリウムの割合が、0.1〜60質量%、有利には0.5〜30質量%、特に有利には1.0〜20質量%であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項8】
硫酸バリウムが、少なくとも1の無機化合物により表面変性されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項9】
BaSO4に対する無機化合物の質量割合が、0.1〜50.0質量%、有利には1.0〜10.0質量%であることを特徴とする、請求項8記載の複合材。
【請求項10】
無機化合物が、水溶性のアルミニウム、アンチモン、バリウム、カルシウム、セリウム、塩素、コバルト、鉄、リン、炭素、マンガン、酸素、硫黄、ケイ素、窒素、ストロンチウム、バナジウム、亜鉛、スズおよび/またはジルコニウムの化合物または塩から選択されていることを特徴とする、請求項8または9記載の複合材。
【請求項11】
BaSO4粒子が無機化合物からなる表面変性に加えて、少なくとも1のシランまたは複数のシランによって変性されていることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項12】
シランが、アルコキシアルキルシランであることを特徴とする、請求項11記載の複合材。
【請求項13】
アルコキシアルキルシランが、オクチルトリエトキシシラン、γ−メタクリルプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランおよび/または加水分解されたシラン、たとえばγ−アミノプロピルシルセスキオキサン(GE社)から選択されていることを特徴とする、請求項12記載の複合材。
【請求項14】
BaSO4粒子が、0.1μm以下、有利には0.05〜0.005μmの一次粒子の粒径d50を有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項15】
硫酸バリウムが、少なくとも1の有機化合物により表面変性されていることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項16】
有機化合物が、スルホン酸アルキルおよび/またはスルホン酸アリール、硫酸アルキルおよび/または硫酸アリール、アルキルリン酸エステルおよび/またはアリールリン酸エステル(その際、前記アルキル基またはアリール基は官能基により置換されていてもよい)および/または官能基を有していてもよい脂肪酸、または前記化合物の少なくとも2種からなる混合物の群から選択されている、請求項15記載の複合材。
【請求項17】
有機化合物が、次のものから選択されている、請求項15または16記載の複合材:アルキルスルホン酸塩、ポリビニルスルホン酸ナトリウム、N−アルキル−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアンモニウム、リン酸モノエチルモノベンジルエステルエステル、リチウムペルフルオロオクタンスルホネート、12−ブロモ−1−ドデカンスルホン酸、ナトリウム−10−ヒドロキシ−1−デカンスルホネート、ナトリウム−カラゲナン、ナトリウム−10−メルカプト−1−セタンスルホネート、ナトリウム−16−セタン(1)スルフェート、オレイルセチルアルコールスルフェート、オレイン酸スルフェート、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸またはこれらの化合物の少なくとも2種類からなる混合物。
【請求項18】
硫酸バリウムが、d50=1nm〜100μm、有利にd50=1nm〜1μm、特に有利にd50=5nm〜0.5μmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項15から17までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項19】
硫酸バリウムの一次粒子が、d=1〜5000nm、有利にd=1〜1000nm、特に有利にd=5nm〜500nmの中央値を有する対数的粒度分布およびσg<1.5、有利にσg<1.4の幾何標準偏差を有する対数的粒度分布を有することを特徴とする、請求項15から18までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項20】
硫酸バリウムは官能性シラン誘導体および/または官能性シロキサンで後処理されており、その際、前記官能性シラン誘導体および/または官能性シロキサンは有利に、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたは前記化合物の少なくとも2種からなる混合物から選択されていることを特徴とする、請求項15から19までのいずれか1項記載の複合材。
【請求項21】
請求項1から20までのいずれか1項記載の複合材の製造方法において、硫酸バリウムおよび1部の粗製ポリマーからマスターバッチを製造し、かつ該マスターバッチを粗製ポリマーにより分散下で希釈することにより複合材を得ることを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項記載の複合材の製造方法。
【請求項22】
硫酸バリウムと1部の粗製ポリマーからマスターバッチを製造し、かつ該マスターバッチを粗製ポリマーで希釈することにより複合材が得られ、その際、該マスターバッチは、硫酸バリウムを5〜80質量%、有利には硫酸バリウムを15〜60質量%含有することを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項23】
マスターバッチを調製物のその他の成分と、1工程もしくは複数の工程で混合し、かつ有利にはその後に分散を行うことを特徴とする、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
硫酸バリウムをまず、有機物質中に、特にアミン、ポリオール、スチレン、ホルムアルデヒド、およびその成形材料、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂またはシリコーン樹脂中に混入し、かつ分散させることを特徴とする、請求項21から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
硫酸バリウムが添加された有機物質を、複合材の製造のための出発材料として使用することを特徴とする、請求項24記載の方法。
【請求項26】
マスターバッチ中での、もしくは有機物質中での硫酸バリウムの分散を、慣用の分散法を使用して、特に溶融押出機、溶解機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、揺動ミル、超音波または混練機を使用して実施することを特徴とする、請求項21から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
硫酸バリウムの分散を、有利には揺動ミルまたはビーズミル中で実施することを特徴とする、請求項21から26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
硫酸バリウムの分散を、ビーズミル中で実施し、その際、1.5mm未満、特に有利には1.0mm未満、とりわけ有利には0.3mm未満の直径dを有するビーズを使用することを特徴とする、請求項21から27までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
成形体、半製品、フィルムまたは繊維を製造するため、特に射出成形部材、吹き込み成形品または繊維を製造するための出発材料としての、請求項1から20までのいずれか1項記載の複合材の使用。
【請求項30】
自動車、航空機または宇宙航空学の分野のための部材のため、特に滑り軸受け、歯車、ローラーまたはプランジャー被覆の形での請求項1から20までのいずれか1項記載の複合材の使用。
【請求項31】
注型法で部材を製造するための、接着剤としての、工業用フロアリングとしての、コンクリート被覆としての、コンクリート補修としての、腐食防止用被覆としての、電気部品またはその他の物品を注型するための、金属管を修復するための、美術における担体材料としての、または木製テラリウムを封止するための、請求項1から20までのいずれか1項記載の複合材の使用。

【公表番号】特表2010−501708(P2010−501708A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526073(P2009−526073)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058892
【国際公開番号】WO2008/023074
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(501082864)ザッハトレーベン ヒェミー ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (16)
【氏名又は名称原語表記】Sachtleben Chemie GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Rudolf−Sachtleben−Strasse 4, 47198 Duisburg, Germany
【出願人】(509055161)インスティテュート フュア フェアブントヴェルクシュトッフェ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】Institut fuer Verbundwerkstoffe GmbH
【住所又は居所原語表記】Erwin−Schroedinger−Strasse, Geb. 58, D−67663 Kaiserslautern, Germany
【Fターム(参考)】