説明

硫酸化糖含有ポリウレタン誘導体およびその製造方法

【課題】熱可塑性でかつ溶剤可溶性であり、フィルムや塗膜への成形性に優れた、硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体及びその簡便かつ安価な製造方法を提供する。
【解決手段】オリゴ糖含有ポリウレタンを硫酸化試薬と反応させることで硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタンが製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖鎖が多様な生命現象(細胞認識や情報伝達、細胞接着、分化・増殖、ガン化、ウイルス感染、血液凝固、免疫反応など)に深く関わっていることが明らかになり、糖鎖を組み込んだ機能性材料や医薬品の開発研究が活発に行われている(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
目的の生理機能を発現する糖鎖含有機能性材料を開発するためには、糖鎖の構造と生理活性の相関を分子や官能基レベルで研究し、糖鎖分子を自由自在に修飾したり高分子に導入する技術が求められる。
なかでも、硫酸化糖は、インフルエンザウイルス、エイズウイルスに対する親和性が知られており、この原理を利用してウイルスを捕捉可能な新しい材料及びその製造方法の開発が要望されている。
このような背景のもと、種々の糖鎖含有高分子が報告されてきた。例えば、硫酸化ガラクトース導入ポリアクリレート型(例えば、特許文献1)、硫酸化糖導入ポリエチレン型(例えば、特許文献2)、硫酸化グルコサミン導入ポリエチレン型(例えば、特許文献3)などが知られている。
【特許文献1】特開平11−315091号公報
【特許文献2】特表2004−526691号公報
【特許文献3】特開2005−15451号公報
【非特許文献1】糖鎖分子の設計と生理機能、2001年、学会出版センター
【非特許文献2】生理活性糖鎖研究法、1999年、学会出版センター
【非特許文献3】糖質エンジニアリングと製品化技術、1993年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
細胞認識、細胞接着などの生物学的機能は、糖細胞表面の糖鎖集合体(クラスター)とこれと相補的な糖鎖集合体との糖鎖−糖鎖相互作用により発現し、その相互作用の強さは糖密度と相関していることが知られている。上記特許文献に開示されている糖鎖高分子において、硫酸化糖鎖は、繰り返し単位あたり1個を線状にしか導入できないため、これらの高分子を用いてフィルム等を形成した場合、糖鎖クラスターにおける糖鎖密度を高めて糖鎖の生物学的機能(細胞認識、細胞接着など)を十分発現するには、高分子鎖中で、糖鎖が導入された繰り返し単位を増やす必要がある。しかし、これにより骨格高分子の本来のフィルム形成能、機械強度などが低下する恐れがある。
また、糖鎖を側鎖に導入する製造工程が保護・脱保護の操作を必要とするため煩雑で製造コストが高くなる問題点がある。
これら従来技術に対し、本発明の目的は、複数の硫酸化糖鎖が導入された繰り返し単位を利用することで糖鎖クラスターの密度が高められると共に、優れたフィルム形成能を有し、生体適合性、血液適合性が期待される硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体、及びその簡便かつ安価な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、1級水酸基を2個有するオリゴ糖、ジイソシアネートおよび必要に応じてジオール化合物の付加重合により、オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体を得、これを硫酸化試薬と反応させることで、硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体を得る事ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は次の(1)〜(3)である。
(1)下記一般式[1]:
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又は有機アミノ基を表し、
sは、硫酸含有基で修飾されたオリゴ糖の二級水酸基の数を表し、1≦s≦rの範囲の整数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表される硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタン。
(2)OLSが、トレハロース、マルトースまたはラクトースの骨格である上記(1)記載の硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタン。
(3)下記一般式[2]:
【0008】
【化2】

【0009】
[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表されるオリゴ糖含有ポリウレタンを硫酸化試薬と反応させることを特徴とする上記(1)記載の硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタンは、熱可塑性でかつ、溶媒可溶性でフィルム形成能に優れる。当該フィルムは、オリゴ糖含有ポリウレタンで構成されるため、生体適合性および血液適合性に優れ、さらに、糖鎖クラスター密度が高められていることに加え、オリゴ糖が硫酸化されているので、特に、特定の細胞、蛋白質およびウイルスとの親和性が期待される。そのため、医療や生活用品の分野での高機能性材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタンは、
【0012】
【化3】

【0013】
[式中、R、R、r、s、m、nおよびOLSは上記で定義したとおりである]
で表される硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタンである。
【0014】
一般式[1]および[2]において、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基である。
上記「置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基」の「炭素数1〜16の2価の炭化水素基」としては、
(1)直鎖または分岐鎖の炭素数1〜16の2価の脂肪族炭化水素基[例、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜16のアルキレン基(例、メチレン、エチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ヘキサデカメチレン等)、直鎖または分岐鎖の炭素数2〜16のアルケニレン基(例、ビニレン、プロペニレン等)、炭素数3〜16のシクロアルキレン(例、シクロヘキシレン)等]、および
(2)炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基[例、炭素数6〜14のアリーレン基(例、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン等)等]、ならびに
(3)前記直鎖または分岐鎖の炭素数1〜16の2価の脂肪族炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基および炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基を含み、炭素数の合計が7〜16の範囲内である炭化水素基(例、式
【0015】
【化4】

【0016】
で表される基等)
等が挙げられる。
上記「置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基」の「置換基」としては、例えば、
(1)炭素数1〜6のアルキル基(例、メチル等);
(2)炭素数3〜8のシクロアルキル基(例、シクロヘキシル等);
(3)炭素数6〜14のアリール基(例、フェニル等);
等が挙げられる。これらの置換基は、上記「炭素数1〜16の2価の炭化水素基」の置換可能な位置に、同一または異なって、1〜8個、好ましくは1〜4個置換することができる。
【0017】
の具体例としては、例えば、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、ビフェニル基、ビスフェニルメチレン基、ビスフェニルエチレン基、フェニレン基(例、パラフェニレン基)、キシリレン基、テトラメチルキシリレン基、トリレン基、ジシクロヘキシルメチレン基、

【0018】
【化5】

【0019】
で表される基等が挙げられ、ビスフェニルメチレン基、フェニルメチレン基およびヘキサメチレン基が好ましい。
【0020】
一般式[1]および[2]において、Rは、炭素数2〜12のオキシアルキレン基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基である。
このようなものとしては、例えば、炭素数2〜12のオキシアルキレンから選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基、または炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基であってよい。
上記「炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基」は、例えば、式−(BO)h-1−B−で表される単位および式−(E)i−で表される単位(式中、Bは、少なくとも1種の炭素数2〜12のアルキレン単位を表し、Eは、少なくとも1種の、置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を表し、hおよびiは、それぞれ1≦h≦100、1≦i≦100の整数である。)から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基である。
上記式−(BO)h-1−B−で表される単位におけるBの「炭素数2〜12のアルキレン基」は直鎖であっても分岐していてもよく、また、当該単位中にBが複数存在する(2≦h≦100である)場合、Bは1種でもよいし、2種以上でもよい。BOの具体的なものとしては、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、ブチレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基などのアルキレンオキシ基を挙げることができ、式−(BO)h-1−B−で表される単位の具体例としては、例えば、式−CH−CH−O−CH−CH−CH−で表される単位等が挙げられる。
上記式−(E)i−で表される単位において、Eで表される「置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位」における2価の炭化水素単位は直鎖であっても分岐していてもよく、また飽和基であっても不飽和基であってもよく、例えば、炭素数2〜12のアルキレン(例、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、ノナメチレン等)、炭素数2〜12のアルケニレン(例、ブタジエニレン、ブテニレン等)等が挙げられる。また、当該「炭素数2〜12の2価の炭化水素単位」が有していてもよい「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子(例、フッ素原子等)、炭素数1〜6のアルキル基(例、メチル等)等が挙げられる。当該単位中にEが複数存在する(2≦i≦100である)場合、Eは1種でも、2種以上でもよい。
このような式−(E)i−で表される単位の具体的なものとしては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、−CH−CF−CF−CF−CF−CH−基、ブタジエニレン基、水添ブタジエニレン基、水添イソプレンの両鎖端の炭素原子から水素原子を1個ずつ除いて誘導される基等の2価の基などが挙げられる。
【0021】
また、Rは、上記式−(BO)h-1−B−(式中、Bおよびhは上記のとおりである)で表される単位および/または式−(E)i−(式中、Eおよびiは上記のとおりである)で表される単位から選ばれる単位に加えて、さらに他の繰り返し単位[例えば、エチレンアジペート基、プロピレンアジペート基、ブチレンアジペート基、ヘキサメチレンアジペート基、ネオペンチルアジペート基などのアルキレンエステル基、ヘキサメチレンカーボネート基などのアルキレンカーボネート基、開環カプロラクトン基、ポリ(ジメチルシロキシ)ジメチルシリル基などの繰り返し単位]を含有していてもよい。
このような単位を含有するRの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール等から両端のOHを除いた2価の基、ポリ(ジメチルシロキシ)ジメチルシリル−n−プロピルビスエトキシ基等が挙げられる。
の具体例としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、エチレンアジペート基、プロピレンアジペート基、ヘキサメチレンカーボネート基、開環カプロラクトン基等の繰り返し単位を有する2価の基、トリメチレン基、テトラメチレン基、−CH−CF−CF−CF−CF−CH−基、水添ブタジエニレン基、水添イソプレンの両鎖端の炭素原子から水素原子を1個ずつ除いて誘導される2価の基、ポリジメチルシロキシジメチルシリル−n−プロピルビスエトキシ基等が好ましい。
【0022】
一般式[1]におけるMは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又は有機アミノ基を表す。
上記Mにおけるアルカリ金属原子としては、例えば、ナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子等が挙げられ、好ましくはナトリウム原子、カリウム原子である。
有機アミノ基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基を1〜3個有するアミノ基〔例、モノC1−6アルキルアミノ基(例、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノプロピルアミノ基、モノブチルアミノ基、モノペンチルアミノ基、モノヘキシルアミノ基)、ジC1−6アルキルアミノ基[例、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基(例、ジn−プロピルアミノ基、ジiso−プロピルアミノ基)、ジブチルアミノ基]、トリC1−6アルキルアミノ基(例、トリメチルアミノ基、トリエチルアミノ基)〕、炭素数6〜14の芳香族アミノ基[例、C6−14アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ基)、C6−14芳香族複素環アミノ基(例、ピリジル基)]等が挙げられ、好ましくはジメチルアミノ基、トリメチルアミノ基、トリエチルアミノ基、ピリジル基、ベンジルアミノ基である。
【0023】
一般式[1] および[2]におけるOLSは、オリゴ糖の骨格を表す。オリゴ糖の骨格とは、オリゴ糖より全ての水酸基部分を除いた残基である。本発明で用いられるオリゴ糖としては一級水酸基を2個有するオリゴ糖であれば特に限定されず、二糖、三糖、四糖のいずれであってもよく、例えば、具体的には、トレハロース、マルトース、ラクトース、セロビオースなどの二糖などが挙げられ、そのなかでも、トレハロース、マルトース、ラクトース等の二糖が価格と反応性の観点から好ましい。一般式[1] および[2]におけるrは、オリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、例えば、OLSが二糖、三糖の場合は、rはそれぞれ6、9となる。
【0024】
一般式[1]において、sは、硫酸含有基で修飾されたオリゴ糖の二級水酸基の数を表し、1≦s≦rの範囲の整数である。ここで、「硫酸含有基」とは、一般式[1]において式(OSO3M)で表される基(式中、Mは上記で定義したとおりである)である。
一般式[1]における、m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲であり、吸水性、ポリマー強度、ポリマー成形性のバランスの観点から好ましくは0.02〜0.80の範囲の数である。なお、一般式[1]における繰り返し単位の配列は規則的であっても不規則的であってもよい。
【0025】
(オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法)
一般式[3]:
【0026】
【化6】

【0027】
[式中、OLSおよびpは上記で定義したとおりである]
で表されるオリゴ糖、および必要に応じて下記一般式[4]:
【0028】
【化7】

【0029】
[式中、Rは上記で定義したとおりである]
で表されるジオールを、下記一般式[5]:
【0030】
【化8】

【0031】
[式中、Rは上記で定義したとおりである]
で表されるジイソシアネートと反応させることによって、下記一般式[2]:
【0032】
【化9】

【0033】
[式中、R、R、m、nおよびrは上記で定義したとおりである]
で表されるオリゴ糖含有ポリウレタンを得ることが出来る。
【0034】
この際、一般式[3]で表されるオリゴ糖を、必要に応じて一般式[4]で表されるジオールとの混合物とし、これを一般式[5]で表されるジイソシアネートと反応させてもよいし(ワンショット法)、あるいは、まず一般式[5]で表されるジイソシアネートを必要に応じて一般式[7]で表されるジオールと共に反応させてプレポリマーとし、ついで一般式[3]で表されるオリゴ糖を反応させてもよいし(プレポリマー法1)、あるいは、まず一般式[3]で表されるオリゴ糖と一般式[5]で表されるジイソシアネートとを反応させてプレポリマーとし、ついで必要に応じて一般式[4]で表されるジオールと反応させてもよい(プレポリマー法2)。
上記反応の際には、一般式[3]で表されるオリゴ糖、一般式[4]で表されるジオールおよび一般式[5]で表されるジイソシアネートは、それぞれ、1種でもよいし、2種以上の混合物でもよい。
【0035】
本発明に用いられる前記一般式[5]のジイソシアネートは、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ヘキサデカメチレンジイソシアネート、ビニレンジイソシアネート、プロペニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニルエタンジイソシアネート、ジフェニルエタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート(例、パラフェニレンジイソシアネート)、ビフェニルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
また一般式[4]で表されるジオールは、一級水酸基を有するジオールであれば特に制限はない。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール等の低分子量のジオール;およびポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、テトラヒドロフラン−エチレンオキシド共重合体、テトラヒドロフラン−プロピレンオキシド共重合体などのポリエーテル系ジオール、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリジエチレンアジペートグリコール、ポリプロピレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール、ポリネオペンチルアジペートグリコール、ポリカプロラクトングリコールなどのポリエステル系ジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコールなどのポリカーボネート系ジオール、ポリブタジエングリコール、水添ポリブタジエングリコール、水添ポリイソプレングリコールなどのポリオレフィン系グリコール、ビス(ヒドロキシエトキシ−n−プロピルジメチルシリル)ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系ジオールなどの高分子量のジオールなどを挙げることができる。
【0037】
上記一般式[2]で表されるポリウレタンを製造する際の溶媒としては、反応物および生成するポリウレタンを溶解し得るものであればよい。具体的には、たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の有機溶媒単独もしくはそれらの混合溶媒が挙げられる。
上記一般式[2]で表されるポリウレタンを製造する際には、例えば、窒素等乾燥不活性ガスを通じながら、一般式[5]のジイソシアネートを含む溶液中に、前記一般式[3]のオリゴ糖、および必要に応じて一般式[4]のジオールを添加する。
上記反応成分の仕込みモル比は、例えば、一般式[5]の化合物:一般式[4]の化合物:一般式[3]の化合物が、3:0.01〜2.99:0.01〜3が好ましく、より好ましくは、3:0.2〜2.5:0.5〜2.8である。
上記反応の反応温度は10〜150℃が好ましく、より好ましくは、20〜120℃で、反応時間は1〜10時間が好ましく、より好ましくは、2〜6時間である。
反応終了後、一般式[2]で表されるオリゴ糖含有ポリウレタンを得ることができる。当該ポリウレタンは、例えば、反応溶液をメタノール、アセトン、水等の単独またはこれらの混合溶媒に投入し、濾過、洗浄、必要に応じて再沈殿精製を繰り返して得られた固体分を室温〜100℃で1〜24時間程度減圧乾燥することにより、精製することができる。
【0038】
(硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法)
次に、一般式[2]で表されるオリゴ糖含有ポリウレタンを硫酸化試薬と反応させて、本発明の一般式[1]で表される硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタンを得ることができる。
硫酸化試薬としては、トリメチルアミン三酸化硫黄錯体、トリエチルアミン三酸化硫黄錯体、ジメチルホルムアミド三酸化硫黄錯体、ピリジン三酸化硫黄錯体、クロロスルホン酸などが用いられる。
上記反応は、通常、溶媒中で行う。溶媒としては、通常、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジメチルスルフォキシド(DMSO)などが用いられ、反応温度は、通常0℃〜80℃、反応時間は、通常5分〜24時間である。必要に応じ、得られた化合物をイオン交換樹脂(Na+タイプなど)で処理することにより、Mをアルカリ金属原子(例、ナトリウム原子など)などに変換することができる。
【0039】
本発明の上記一般式[1]で表される硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタンは、優れた生理機能(例、ウイルス、タンパク質等に対する捕捉機能等)を有し、種々の生理機能材料として用いることができる。当該生理機能材料は、例えば、血液と接触する用途、フィルター(例、血液分離フィルター、ウイルス分離フィルター、タンパク質分離フィルター等)等の用途に用いられる。
【実施例】
【0040】
次に本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
重合に使用するモノマー化合物等を次のように略称する。
OLS=オリゴ糖骨格
TRE=トレハロース
LAC=ラクトース
MAL=マルトース
MDI=ジフェニルメタンジイソシアネート
PPG4=ポリプロピレングリコール(分子量400)
PPG7=ポリプロピレングリコール(分子量700)
Py=ピリジル基
【0041】
(合成例1)
MDI−PPG7−TRE(モル比3/2.5/0.5)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)にジフェニルメタンジイソシアネート(4.39g)とジメチルアセトアミド(65ml)を入れ、撹拌しながら、室温においてポリプロピレングリコール(平均分子量700、10.23g)を加え、1時間反応させた。次にこの反応液にトレハロース(1.00g)を加え、この温度で4時間反応させた。反応溶液をメタノール/水(体積比1/3)混合溶媒に投入し、生成物を析出させ、濾過し、メタノール/水溶媒で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率86%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20; CH
3.20−3.80; −O−CH−CH−O−、
−CH−、−CH−
3.86 ; −CH
4.30−5.00; −O−CH−O−、−OH
7.16、7.43; −C
8.65、9.60; −NH−CO−
【0042】
(合成例2)
MDI−PPG7−LAC(モル比3/2.5/0.5)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
ジフェニルメタンジイソシアネート(4.39g)、ジメチルアセトアミド(65ml)、ポリプロピレングリコール(平均分子量700、10.23g)、ラクトース(1.00g)を用いて合成例1と同様にして、生成物を得た(収率90%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20; CH
3.20−3.80; −O−CH−CH−O−、
−CH−、−CH−
3.86 ; −CH
4.30−5.00; −O−CH−O−、−OH
7.16、7.43; −C
8.65、9.60; −NH−CO−
【0043】
(合成例3)
MDI−PPG7−MAL(モル比3/2.5/0.5)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
ジフェニルメタンジイソシアネート(4.39g)、ジメチルアセトアミド(65ml)、ポリプロピレングリコール(平均分子量700、10.23g)、マルトース(1.00g)を用いて合成例1と同様にして、生成物を得た(収率93%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20; CH
3.20−3.80; −O−CH−CH−O−、
−CH−、−CH−
3.86 ; −CH
4.30−5.00; −O−CH−O−、−OH
7.16、7.43; −C
8.65、9.60; −NH−CO−
【0044】
(合成例4)
MDI−PPG4−TRE(モル比2/1/1)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)にジフェニルメタンジイソシアネート(5.85g) とジメチルアセトアミド(65ml)を入れ、攪拌しながら、室温においてポリプロピレングリコール(重量平均分子量400、4.68g)を加え、1時間反応させた。次にこの反応液にトレハロース (4.00g)を加え、この温度で4時間反応させた。反応溶液をメタノール/水(体積比1/3)混合溶媒に投入し、生成物を析出させ、濾過し、メタノール/水溶媒で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率81%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20; CH
3.20−3.80; −O−CH−CH−O−、
−CH−、−CH−
3.86 ; −CH
4.30−5.00; −O−CH−O−、−OH
7.16、7.43; −C
8.65、9.60; −NH−CO−
【0045】
(実施例1)
MDI−PPG7−TRE(モル比3/2.5/0.5)−(SOPy)ポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に合成例1のポリウレタン(l.00g)とジメチルホルムアミド(50m1)を入れ溶解させた。撹拌しながら、室温においてピリジン三酸化硫黄錯体(0.06g)を加え室温で24時間反応させた。反応溶液を濃縮後、水を投入し、生成物を析出させ、濾過し、水で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率94%)。
そのプロトンNMRとIRスペクトルにより目的物であることを確認した。また、プロトンNMRのピリジル基の積分値からオリゴ糖1個あたり硫酸基2個が導入されていることが分かった。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20; CH
2.50−2.60; −OCO−CH−CH−COO
3.20−3.80; −O−CH−CH−O−、
−CH−、−CH−
3.86 ; −CH
4.30−5.00; −O−CH−O−、−OH
6.50 ; −NH−CO−
7.16、7.43; −C
8.10−9.00; −CNH(ピリジル基)
8.65、9.60; −NH−CO−
IR(KBr):1040、1120cm−1(SO
【0046】
(実施例2)
MDI−PPG7−LAC(モル比3/2.5/0.5)−(SOPy)ポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に合成例2のポリウレタン(1.00g)とジメチルホルムアミド(50ml)とジメチルスルホキシド(5ml)を入れ溶解させた。撹拌しながら、室温においてピリジン三酸化硫黄錯体(0.06g)を加え室温で24時間反応させた。反応溶液を濃縮後、水を投入し、生成物を析出させ、濾過し、水で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率98%)。
そのプロトンNMRとIRスペクトルにより目的物であることを確認した。
【0047】
(実施例3)
MDI−PPG7−MAL(モル比3/2.5/0.5)−(SOPy)ポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に合成例3のポリウレタン(1.00g)とジメチルホルムアミド(50ml)とジメチルスルホキシド(5ml)を入れ溶解させた。撹絆しながら、室温においてピリジン三酸化硫黄錯体(0.06g)を加え室温で24時間反応させた。反応溶液を濃縮後、水を投入し、生成物を析出させ、濾過し、水で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率98%)。
そのプロトンNMRとIRスペクトルにより目的物であることを確認した。
【0048】
(実施例4)
MDI−PPG4−TRE(モル比2/1/1)−(SOPy)ポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に合成例4のポリウレタン(1.00g)とジメチルホルムアミド(15ml)を入れ溶解させた。攪拌しながら、室温においてピリジン三酸化硫黄錯体(0.15g)を加え40℃で6時間反応させた。反応溶液を濃縮後、メタノールを投入し、生成物を析出させ、濾過し、メタノールで洗浄後、真空乾燥して生成物を得た。
そのプロトンNMRとIRスペクトルにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20; CH
2.50−2.60; −OCO−CH−CH−COO−
3.20−3.80; −O−CH−CH−O−、
−CH−、−CH−
3.86 ; −CH
4.30−5.00; −O−CH−O−、−OH
6.50 ; −NH−CO−
7.16、7.43; −C
8.10−9.00; −CNH(ピリジル基)
8.65、9.60; −NH−CO−
IR(KBr):1040、1120cm−1(SO
【0049】
<各サンプルの評価>
評価方法
(1)溶剤可溶性:実施例で得られた各種ポリウレタン(0.1g)がジメチルアセトアミド(1ml)に溶解するか否かを調べた。
(2)軟化点:実施例で製造したポリウレタンの軟化点は、融点測定装置を用いて室温から加熱し(5℃/分)、サンプルが溶解した温度をもって測定した。
(3)溶剤可溶性:実施例で得られた各種ポリウレタン(0.1g)がジメチルアセトアミド(1ml)に溶解するか否かを調べた。
結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
以上の結果から、硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタンが、熱可塑性と溶剤可溶性を有していることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]:
【化1】

[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又は有機アミノ基を表し、
sは、硫酸含有基で修飾されたオリゴ糖の二級水酸基の数を表し、1≦s≦rの範囲の整数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表される硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタン。
【請求項2】
OLSが、トレハロース、マルトースまたはラクトースの骨格である請求項1記載の硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタン。
【請求項3】
下記一般式[2]:
【化2】

[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表されるオリゴ糖含有ポリウレタンを硫酸化試薬と反応させることを特徴とする請求項1記載の硫酸化オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法。

【公開番号】特開2007−332226(P2007−332226A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163955(P2006−163955)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】