説明

硫酸硝酸アンモニウムの錠剤化

硫酸硝酸アンモニウムを製造する方法が提示される。本方法によると高度に一様な製品の製造および実質的に一様な寸法を可能にする。その方法は、FASNスラリー溶融物を形成するために硫酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムを反応させるステップを含む。スラリー溶融物は連続的に撹拌され加熱され、スラリー溶融物が押し出され、冷却され、固化されるまで、スラリー溶融物をずり減粘状態で一様な温度で保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、一様な寸法の粒子の肥料を製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は、固体と液体の混合物からの、肥料に使用される固体材料の製造を対象とする。
【背景技術】
【0002】
[0002]配合肥料製品の製造は、個々の肥料成分を混合および/または反応させ、成分/製品を所望の粒度範囲の粒子に形成することにより実施されてきた。粒子はそれほど好ましくない製品を意味する範囲の寸法を含むことがあり、選別されて寸法外れの材料を分け、また、再処理するためにまたはより低価値の製品として販売するために集められる。肥料成分が混合されるが、すべての成分または栄養素を含有する粒子に形成されない場合、混合肥料もまた一般的である。これは、成分含有率が異なり同質でなく、特に窒素の量が混合物の全体にわたって変化し得る粒子をもたらす。このようなむらは、栄養素の展着、徐放性の速度および有効性のむらをもたらす。
【0003】
[0003]栄養素の混合物を含有するペレット剤または粒剤に形成された肥料は、特定用途の肥料の増強のために添加される微量化合物を含むこともできる。さらに、一様な粒子に形成される肥料は、肥料が散布される土壌への栄養素の放出に対してさらなる制御をすることができる。栄養素の放出の速度および組成物の制御は、作物がそれらを吸収する能力を有するまでの栄養素の損失を低減することができる。
【0004】
[0004]溶融材料が、液滴の流れを生じさせる小球ヘッドと呼ばれる装置に通される小球化は小球状ペレット剤を製造する一方法である。液滴は、揮発性物質をほとんどまたはまったく有さず、除去すべき溶媒を含有しない。液滴は、冷却ガス、通常、空気の連続的な流れで冷却され、液滴を固化する。造粒は別の方法であり、溶融材料は噴霧ノズルを経て放出され、回転ドラムで混合され塊になって肥料の粒子を作り出す。
【0005】
[0005]しかしながら、小球化および造粒法にはいずれも欠点がある。造粒で製造された粒子は均一性(寸法および形状)を欠き、また一般に、かなりの部分の規格外材料の再処理を必要とし、再処理機器(選別、粉砕機、コンベヤー)および塵およびサブマイクロメートル粒子の捕捉機器の必要性によって経費が増える。小球化においては、製造された粒子は造粒よりよい寸法および形状均一性を有するが、大気に放出する前にサブマイクロメートル粒子を捕捉するために大量の空気を処理しなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]硫酸硝酸アンモニウムの製造の方法が提供される。本方法は硝酸アンモニウムと過剰の硫酸アンモニウムとを反応させることにより、硫酸硝酸アンモニウムを含むスラリー溶融物を形成する、スラリー溶融物を形成するステップを含む。スラリー溶融物は連続的に混合され、ずり減粘状態においてそれを維持し、かつスラリー溶融物中の固体を懸濁しておく。スラリー溶融物は加熱固定子に通され、ここでスラリー溶融物が加熱固定子を通過するときに、スラリー溶融物は連続的に混合される。スラリー溶融物の一部は加熱固定子の流路を通り、スラリー溶融物は、流路上を移動するグリッドを経て押し出される。スラリー溶融物は移動グリッドからの液滴として押し出され、そこで液滴は冷却された移動ベルトに落下する。半楕円体の固体粒子のための液滴は、好ましくは2から3mm直径の範囲であり、移動ベルトから集められる。
【0007】
[0007]本発明の他の目的、利点および応用は、以下の詳述および図面から当業者にとって明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】[0008]本方法の図解である。
【図2】[0009]修正された回転式小球形成装置の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0010]多くの肥料用の主要成分は窒素供給源を含み、また、通常硫黄の供給源を含む。硫酸硝酸アンモニウムは産業界において一般的であり、硝酸アンモニウムを含む硫酸アンモニウムの複塩の混合物を一般に指し、小量の単一塩を含む。1つの硫酸硝酸アンモニウム製品は融合硫酸硝酸アンモニウム(FASN)として公知の固形製品である。FASNは、硝酸アンモニウム、尿素硝酸アンモニウムおよび硝酸カルシウムアンモニウムなどの固体粒子肥料の製造に対する肥料市場の問題の多くに取り組んでいる。1つの目標は、選別、粉砕、再溶融、増量などのさらなる処理、またはさらなる塊状化を必要としないように、一様な寸法の粒子を製造することである。粒子を一様という場合、粒子は一般に、平らな面および狭い寸法または直径範囲を有する一様な半楕円体形状を有する。
【0010】
[0011]硫酸硝酸アンモニウムは、他の硝酸アンモニウム化合物より、爆発に対する安定性および安全性の性質を改善した点で望ましい肥料である。硫酸硝酸アンモニウム(ASN)は公知の化合物であるが、本明細書において示された方法は米国特許第6,689,181号明細書に見られる、Honeywellの特許の製剤の製造のためのものである。以下において、ASN、または、融合硫酸硝酸アンモニウム(FASN)の使用はこの製剤を指す。さらに、硝酸アンモニウム硫酸塩には湿気に対する優れた耐性があり、作物への栄養素の送達を遅くし雨による損失を限定する。
【0011】
[0012]本発明は、FASNのための、その利用者によって必要とされる粒度範囲の、実質的に一様な寸法の粒子を製造することである。FASNは、硫酸硝酸アンモニウム(ASN)複塩および小量の未反応硝酸アンモニウム(AN)を含む未反応硫酸アンモニウム(AS)の一様な混合物を含む。所望の製品は、主に、比が2:1の硝酸アンモニウムと硫酸アンモニウム(すなわち(AN)AS)を有する複塩である製品である。小量の3:1の比の複塩、すなわち(AN)ASが、形成される。本方法は、3:1の複塩より2:1複塩の製造を容易にする過剰の硫酸アンモニウムを使用する。FASN組成物のための所望の範囲はドライ基準で表1に示される。
【0012】
【表1】

【0013】
[0013]伝統的方法を使用するFASNの形成には、機器性能、適合性、運転中の性能、製品品質、排出物および資本および運転経費に関して相当な不確定性を含んでいる。FASNの出発材料は溶融したスラリー溶融物であり、ずり減粘性を有する。反応器内で形成される溶融物は、60から70重量%の間の量の、溶融した硫酸硝酸アンモニウムおよび30から40重量%の間の量の細かく粉砕され溶解しない硫酸アンモニウムを含む。スラリー溶融物は、移動または剪断状態下におかれ、粘性が増加するのを阻止し固体の分離を阻止しなければならない。溶融物の粘性増加もしくは濃密化、および/または、固体の分離はラインおよび機器の閉塞をもたらし得る。これによってFASN粒子の寸法の不均一性をもたらし得る。
【0014】
[0014]FASNの製造の1つの方法は小球化であるが、粒子が十分に冷却され固化されるように、スラリー溶融を、通常、地上45.72から76.2m(150から250フィート)の間に上げなければならない。冷却中の数個の粒子の合体およびサブマイクロメートルの寸法の粒子の製造を含む、粒子の寸法に対する制御には、FASNの一部の選別、再サイクリング、および再溶融を必要とする。
【0015】
[0015]回転ドラム装置で通常実施されるFASNの造粒と同様に、サブマイクロメートルの粒子寸法ならびに広範囲の粒子寸法の製造がある。既存の固体肥料製造施設の改造において、両方の方法とも、既存機器の交換または修正を必要とし、しかも規格を満たさない固体をかなり再循環することになろう。
【0016】
[0016]本発明は、あるとしても多少の修正で既存の下流資産の使用を提供し、および、高度に一様な寸法および形状の製品を製造する低強度の固体粒子形成を提供する。本方法は、冷却面上での液体溶融物の固化によって実質的に一様な半楕円体の粒子を形成するために小球化を使用する。いくつかの小球化機器の製造販売業者があるが、一様なFASN製品を製造するためには本方法を修正する必要がある。本方法は、図1に示されたように、反応器10内の硫酸硝酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムのスラリー溶融物を形成するステップを含む。スラリー溶融物は加熱固定子20に通され、そこでスラリー溶融物は連続的に揺動され、冷却された移動ベルト30上へ液滴として押し出され、1から3mmの範囲の半楕円体の固体粒子を形成する。好ましくは、液滴は2から3mmの範囲の粒子を形成し、より好ましくは220から280の寸法ガイドナンバー(SGN)を満たすのに必要な2.5mmの公称直径を有する。好ましい、さらに狭い粒度範囲は高度に一様な製品である。スラリー溶融物は、図2に示されたように、固定子20の流路22に通され、流路22上を滑る移動グリッド24を経て押し出される。流路22は、スラリー溶融物が輸送される、より大きい筒状通路26の一部である。スラリー溶融物は粘性の増加を阻止するために連続的に揺動される。
【0017】
[0017]加熱固定子20は、加熱固定子20内の、中空で部分的に閉じられた筒状通路26で構成され、ここで筒状通路26は、固定子20の長さに及ぶ。熱媒体は加熱水、水蒸気、伝熱流体または他の適合するプロセス流体などの何らかの適切な流体であってよい。スラリー溶融物は、低い、0.8MPa未満の、ただし加熱固定子20にスラリー溶融物を通すのに十分な制御圧力で入る。流量は、固体の懸濁を維持し、かつスラリー溶融物の自由移動を保つのに十分な水準に保たれる。スラリー溶融物の一部は固定子20から出、反応器10に戻される。スラリー溶融物は、筒状通路26から固定子20の底部に位置した流路22へ通る。穴を空けた筒状ドラム40は、加熱固定子20のまわりを回転する。スラリー溶融物が押し出される場合、ドラム40の穴42は流路22の底部を越えて通過する。押し出されたスラリー溶融物は、冷却された移動ベルト30上への液滴として落ち、冷却されたスラリー溶融物は固化し、所望の直径の錠剤としても公知の製品粒子を形成する。穴は隣接する液滴が、冷却ベルト30上の他の液滴と凝集するのを阻止するように十分な間隔で配置されており、穴42は、最大の粒子寸法において300マイクロメートル以下の固体粒子の自由通過を可能にするのに十分に大きい寸法である。
【0018】
[0018]固定子20および回転式ドラム40集合体は水平に向けられ、冷却ベルト30の移動方向に対して上方かつ垂直であり、固定子20およびドラム40は移動ベルト30の幅にまたがる。固定子20および回転式ドラム40集合体は、そのようなベルト冷却機に代表的な方式でベルト30の冷却部の入口端部に位置する。
【0019】
[0019]筒状通路26の内部には、連続的にスラリー溶融物を撹拌し、通路26に沿って一様に一貫した状態においてスラリー溶融物を維持するように、揺動機構が備えられる。この揺動は、溶融物が通路26に沿って、また流路22から外に流れるときに、溶融物が濃密化するのを阻止し、固体が沈降するのを阻止するためである。一実施形態において、揺動機構は軸方向に配列した、回転、多重刀、壁拭きパドルの機構44を含む。パドル機構44は、およそ200rpmから600rpmの間、好ましくは200rpmから400rpmの間、またはおよそ300rpmの低速度で回転する。
【0020】
[0020]スラリー溶融物は、60から80重量%の間の量、好ましくは60から70重量%の間の量の液体硫酸硝酸アンモニウムを含む。スラリー溶融物は、40から20重量%の間の量、好ましくは30から20重量%の間の量の固体硫酸アンモニウムも含む。固体硫酸アンモニウムは細かく粉砕され、スラリー溶融物が反応器10を出るとき、固体粒子は最大寸法でも300マイクロメートル未満であることが好ましい。固体粒子は部分的に反応し、スラリー溶融物に部分的に溶ける。スラリー溶融物は反応器10内で揺動され、溶融物中に固体の懸濁を作り出し維持する。
【0021】
[0021]本方法は、撹拌された反応器10および加熱固定子20を含む全工程にわたり重要な温度制御を伴い、180℃から200℃の間の温度でスラリー溶融物を維持する。好ましくは、本方法は、反応器10および加熱固定子20を185℃から190℃の間の温度に加熱するように制御される。本方法は、スラリー溶融物が固化し始め得る178℃未満に温度が下がるのを阻止するように、かつ、硝酸アンモニウムが分解し始める210℃を、温度が上回るのを阻止するように制御される。
【0022】
[0022]工程は、機構内のどの圧力も1.14MPa(150psig)未満、好ましくは機構内のどの圧力も0.8MPa(100psig)未満に維持するようにさらに制御される。これは、大気圧でまたは大気圧近くで反応器を運転するステップ、および配管および加熱固定子内の圧力を典型的には0.8MPa未満の、好ましくは0.2MPa未満の、低い運転圧力に保つステップを含む。より低い粘性を維持するために、スラリー溶融物を加熱、撹拌または揺動状態に維持することは、より低い圧力での運転に貢献する。
【0023】
[0023]一実施形態おいて、揺動は多重刃の壁拭きパドル機構によって提供されるが、本発明は他の揺動機構を包含するように意図される。一例はスラリー溶融物を混合し、加熱固定子20内の筒状通路26に通して移動させる木工錐型機構である。
【0024】
[0024]移動グリッド穴42に通して液滴を一様に維持するために、移動ドラム40の穴42に固化物質の蓄積または凝集固体がないように保たれるのが好ましい。これには、穴42または穴42の近くのドラム40に付着し得る残留スラリー溶融材料の除去を含む。一実施形態において、工程は、スラリー溶融物が移動ドラム40から移動ベルト30へ落下した後、熱水または水蒸気などの高温流体を移動グリッド穴42に通すステップをさらに含む。装置は加熱固定子20を通る追加の流路50を含むことができる。追加の流路50は、移動ドラム40の全長と少なくとも同じ長さに延在する。実際的に考えると、追加の流路50は、固定子20の全長に延在する。
【0025】
[0025]固定子20および移動ドラム40を取り囲む捕集機構は、グリッド穴42から吹き出したどの残留物質をも回収するために備えることができる。捕集機構は周囲の加熱囲い板60へ組み込み、残留物質が移動ベルト30へ落下することを阻止するように設計することができる。機構は、穴42の端部のまわりの材料を機械的に掻くための掻き取り機52を含むことができる。バネ仕掛けの掻き取り装置52は、回転ドラム40の全長にまたがる。掻き取り機52の位置決めはドラム付近の異なる場所であってもよい。1つの場所は残留物質吹出し後であり、代替の場所は、ドラムの穴42が固定子20の流路22と一列に並ぶ直前のポイントである。回転ドラム40上の摩耗を最小限に抑えるために、ドラムより柔らかい材料で掻き取り機52が製造されることが、好ましい。
【0026】
[0026]機構は、また加熱囲い板60の内部の環境から残留物質を集めて除去するための第2の移動ベルト機構54を含むことができる。代替の機構は、液体として材料を集めて、再使用のために反応器10に戻すための加熱水溜に材料を導くために、傾斜した加熱樋を含むことができる。
【0027】
[0027]本発明は現在好ましい実施形態と考えられるもので記載されたが、本発明は開示された実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内に包含される様々な変形および等価な構成を包含することを意図することは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内で硫酸硝酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムを含むスラリー溶融物を形成するステップと、
スラリー溶融物を加熱固定子へ通すステップと、
固定子内のスラリー溶融物を連続的に揺動するステップと、
スラリー溶融物の一部を流路に通すステップと、
流路をまたがり滑り、液滴を形成する寸法の穴を含む移動グリッドを経て、スラリー溶融物の一部を押し出すステップと、
広がる液滴を冷却して、1から3mmの直径範囲の一様な固体粒子を形成するステップと
を含む、硫酸硝酸アンモニウムを製造する方法。
【請求項2】
液滴が2から3mmの直径範囲の一様な固体粒子に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スラリー溶融物を加熱固定子内の回転多重刀パドルで揺動するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
スラリー溶融物が、60から80重量%の間の液体硫酸硝酸アンモニウムおよび40から20重量%の間の固体硫酸アンモニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
固体硫酸アンモニウムが、最大寸法において300マイクロメートル未満の固体粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
スラリー溶融物の形成が、
反応器内で硫酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムを混合して、混合物を形成するステップと、
硫酸アンモニウムを溶融するのに十分な温度に混合物を加熱するステップと、
混合物を揺動するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
混合物が、ずり減粘状態下で液体を維持するために揺動される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
スラリー溶融物の一部を固定子から反応器へ通すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
反応器が、180℃から200℃の間の温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
反応器が、1.14MPa(150psig)の圧力で運転される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−521959(P2012−521959A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503587(P2012−503587)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029136
【国際公開番号】WO2010/117751
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】