硬化多層シートの製造方法及び硬化多層シート
【課題】ポリマー硬化層の表面に硬化層とは異なる物質を偏在させた構造を有する多層構造の硬化多層シートを高い生産性で製造する方法を提供する。
【解決手段】第一硬化性樹脂組成物により形成された第一未硬化層A及び第二硬化性樹脂組成物により形成された第二未硬化層Bが隣接した積層体Xにする工程、並びに硬化工程を有する硬化多層シートの製造方法であって、第一硬化性樹脂組成物は重合性モノマーm1又はその部分重合物及び非相溶性物質fを含有しており、第二硬化性樹脂組成物は重合性モノマーm2及びポリマーp2を含有しており、第一硬化性樹脂組成物における重合性モノマーm1の濃度は第二硬化性樹脂組成物における重合性モノマーm2の濃度よりも高い値であり、積層工程で、第一未硬化層A内で非相溶性物質fを移動させて非相溶性物質fを第二未硬化層Bとは反対側の界面又は当該界面近傍に偏って分布させた後に、硬化工程を施す。
【解決手段】第一硬化性樹脂組成物により形成された第一未硬化層A及び第二硬化性樹脂組成物により形成された第二未硬化層Bが隣接した積層体Xにする工程、並びに硬化工程を有する硬化多層シートの製造方法であって、第一硬化性樹脂組成物は重合性モノマーm1又はその部分重合物及び非相溶性物質fを含有しており、第二硬化性樹脂組成物は重合性モノマーm2及びポリマーp2を含有しており、第一硬化性樹脂組成物における重合性モノマーm1の濃度は第二硬化性樹脂組成物における重合性モノマーm2の濃度よりも高い値であり、積層工程で、第一未硬化層A内で非相溶性物質fを移動させて非相溶性物質fを第二未硬化層Bとは反対側の界面又は当該界面近傍に偏って分布させた後に、硬化工程を施す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非相溶性物質が偏在した構造の層を有する硬化多層シートの製造方法に関する。かかる本発明の製造方法により得られた硬化多層シートは、例えば、光学シート、バリアシート、難燃性シート、電子回路、パワーエレクトロニクス材料、粘着テープ又はシート、医療分野用途などで好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
基材表面に基材と異なる物質を偏在させた複合基材は、光学的、電気的等の新しい機能を付加した基材として期待される。しかしながら、基材となるシートやフィルム等の表面に、例えば微粒子を有する層を形成させることは容易ではない。例えば、基材表面への微粒子層(微粒子を含む層)の形成は、ポリマー成分をバインダーとして有機溶剤に溶かした溶液中に微粒子を分散させて、微粒子を分散させた溶液を得てから、この溶液を基材にコーティングして、さらに有機溶剤を熱乾燥で揮発させることで行なうことができる。しかし、この方法は、基材が有機溶剤などで溶けてしまう場合や、基材の耐熱性が低く熱乾燥で溶融、変形しやすい場合には困難であり、また基材表面が粘着剤層のように粘着性に富む場合には、基材表面に前記微粒子を分散させた溶液をコーティングすることは困難である。さらには、前記溶液を用いる場合には有機溶剤を乾燥しなければならず、また前記溶液の代わりに水分散液を用いたとしても水を乾燥しなければならず、前記微粒子層の形成方法は、環境や省エネルギーの観点からも好ましくない。また前記微粒子層の形成に用いる溶液中のポリマー成分が、基材と異なる材料の場合には、密着性が十分でないと、微粒子層が基材との界面で剥離するおそれがある。
【0003】
また、基材表面への微粒子層の形成は、離型処理したフィルムに微粒子層を形成して、これを母材シートに転写することでも行なうことができるが、基材と微粒子層との親和性、相溶性が低い場合には、基材層と微粒子層との接着性が乏しく、層間で剥がれる等の問題が生じやすい。さらに、基材と微粒子層の双方に接着性がほとんどない場合には、両者を貼り合わせることが困難であり、どちらか一方、あるいは両方に接着剤などを塗布してから貼り合わせる必要が出てくる。
【0004】
上記のようにポリマーシートに対する要求機能は年々高いものとなり、その要求を満たすため、種々のポリマーシートを貼り合せた製品が数多く上市されている。しかし、近年では、例えば、種々のポリマーシートに極薄の表面機能層が要望されるなど、別々のポリマーシートを貼り合せるだけではその要求を満足することができなくなってきている。
【0005】
本発明者らは先に、重合性モノマー及び重合性モノマーを重合して得られるポリマーに対して非相溶な非相溶性物質を含有する非相溶性物質含有重合性組成物層を、前記重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収層の少なくとも一方の面に設ければ、非相溶性物質含有重合性組成物層内で非相溶性物質が移動し、非相溶性物質偏在重合性組成物層が得られ、当該非相溶性物質偏在重合性組成物層を重合することにより、非相溶性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有するポリマー部材が得られることを見出した。また、非相溶性物質として粒子を用いることにより、非相溶性物質偏在ポリマー層のモノマー吸収層との界面に対しての反対面表面において、粒子による凹凸を形成できることを見出した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−6817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記方法では、ポリマー層を形成する成分の他に、モノマー吸収層が別途必要となり製造工程が煩雑となることや、表面に非相溶性物質を偏在させるために積層から硬化までの間にエージングを必要としていた。さらに前記方法では、テープ又はシートを作製する際、モノマー吸収層が高架橋度のポリマーであると硬化後に、テープ又はシートの表面が自然に三次元化(例えば、しわ状、凹凸状、波状等)したり、もしくはテープ又はシート自体がカールしたりするという問題があった。
【0008】
本発明は、重合性モノマーを硬化することにより形成したポリマー硬化層の表面に当該硬化層とは異なる物質を偏在させた構造を有する多層構造の硬化多層シートを高い生産性で製造することができる方法及び当該方法により得られた硬化多層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、下記の製造方法よって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
即ち、本発明は、第一硬化性樹脂組成物(a)により形成された第一未硬化層(A)及び第二硬化性樹脂組成物(b)により形成された第二未硬化層(B)を隣接して積層して積層体(X)にする工程(1)、並びに前記積層体(X)を硬化する工程(2)を有する硬化多層シートの製造方法であって、
第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物、及び当該重合性モノマー(m1)を重合して得られるポリマー(p1)に対して非相溶な非相溶性物質(f)を含有しており、
第二硬化性樹脂組成物(b)は、前記重合性モノマー(m1)と相溶し、かつ非相溶性物質(f)とは非相溶である、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有しており、
かつ、第一硬化性樹脂組成物(a)における、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物に対する重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、第二硬化性樹脂組成物(b)における、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)に対する重合性モノマー(m2)の濃度(c2)よりも高い値であり、
前記積層工程(1)では、第一未硬化層(A)内で非相溶性物質(f)を移動させて、非相溶性物質(f)を第二未硬化層(B)とは反対側の界面又は当該界面近傍に偏って分布させ、その後に、硬化工程(2)を施すことを特徴とする硬化多層シートの製造方法、に関する。
【0011】
前記硬化多層シートの製造方法において、濃度(c1)は(m2)の濃度(c2)よりも、15重量%以上高い値であることが好ましい。
【0012】
前記硬化多層シートの製造方法において、非相溶性物質(f)としては粒子又はポリマーが好適に用いられる。
【0013】
前記硬化多層シートの製造方法において、前記硬化工程(2)を活性エネルギー線照射により行なうことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記製造方法により得られた硬化多層シート、に関する。
【発明の効果】
【0015】
上記の通り、本発明の硬化多層シートの製造方法は、積層工程(1)及び硬化工程(2)を有する。まず、積層工程(1)では、第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)を接する形態で積層して積層体(X)を得る。第一未硬化層(A)は、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物及び非相溶性物質(f)を含有する第一硬化性樹脂組成物(a)から形成されている。一方、第二未硬化層(B)は重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有する第二硬化性樹脂組成物(b)から形成されており、当該重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)は、第一硬化性樹脂組成物(a)に係る重合性モノマー(m1)と相溶し、かつ非相溶性物質(f)とは相溶しないものである。しかも、第一硬化性樹脂組成物(a)における重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、第二硬化性樹脂組成物(b)における重合性モノマー(m2)の濃度(c2)よりも高い濃度になるように制御されている。
【0016】
上記のように第一未硬化層(A)に含有されている重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、第二未硬化層(B)に含有されている重合性モノマー(m2)の濃度(c2)よりも高くなるように制御されていることから、積層体(X)では、第一未硬化層(A)中の重合性モノマー(m1)が第二未硬化層(B)に拡散するとともに、第二未硬化層(B)中のポリマー(p2)が第一未硬化層(A)に拡散する。その結果、積層体(X)において、非相溶性物質(f)が第一未硬化層(A)中で移動して、第二未硬化層(B)と反対側の界面又は該界面近傍に層状に偏って分布した偏在構造が得られる。そして、このように非相溶性物質(f)を偏在させた後に、硬化工程(2)を施すことで、非相溶性物質(f)の偏在構造を維持しつつ、重合性モノマー(m1)及び(m2)を硬化させることにより、重合性モノマー(m1)及び(m2)を硬化させた積層体(Y)、即ち、硬化多層シートを得る。
【0017】
前記のように、濃度(c1)と濃度(c2)に濃度差を設けることで、第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)の積層による簡易な方法によって、第一未硬化層(A)内で非相溶性物質(f)を偏在させることができ、硬化多層シートを簡便に作製することができる。また、本発明の硬化多層シートを形成する、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)は、いずれも重合性モノマーを含有する組成物であり、各組成物の調製が容易であり、特許文献1のように、モノマー吸収層を別途必要とすることなく、簡便に、かつ高い生産性で硬化多層シートを製造することができる。また、本発明の硬化多層シートは前記組成物(a)及び組成物(b)により形成されることから、これら組成物が硬化後、高架橋になる組成物であっても、モノマー吸収層を用いた場合のように、カール等の発生を抑えることができ、また硬化後のシート変形を抑えることができる。
【0018】
また、第一未硬化層(A)中の重合性モノマー(m1)は第二未硬化層(B)に拡散するとともに、第二未硬化層(B)中の重合性モノマー(m2)の重合物及び/又は重合性ポリマーが第一未硬化層(A)に拡散した後に、硬化工程(2)が施されるため、得られる積層体(Y)に係る硬化多層シートは、前記組成物層(A)及び(B)の各層が一体化して得られるため層間において剥離が生じることはない。
【0019】
さらには、本発明の硬化多層シートの製造方法によれば、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)に含まれる揮発性成分(例えば、有機溶剤や有機化合物など)の蒸発除去を必要としないため、環境への負荷を低減でき、環境面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の硬化多層シートの製造方法を示す概略断面図の一例である。
【図2】実施例1の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例2の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例3の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例4の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】比較例1の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例4の硬化多層シートの外観写真である。
【図8】比較例2の硬化多層シートの外観写真である。
【図9】実施例5の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例6の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例7の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】比較例3の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例4の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[硬化多層シートの製造方法]
以下に、本発明の硬化多層シートの製造方法を、図1を参照しながら説明する。本発明の硬化多層シートの製造方法では、まず、積層工程(1)で、第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)を積層して積層体(X)を得る。第一未硬化層(A)は、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物、及び非相溶性物質(f)を含有する。一方、第二未硬化層(B)は重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有する。第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)の積層は、これらの層が隣接して積層されていればよく、第二未硬化層(B)の片面又は両面に第一未硬化層(A)を積層することができる。図1は、第二未硬化層(B)の片面にのみ第一未硬化層(A)が積層する場合が記載されている場合である。また、図1では、第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)における積層の対象でない側に、支持基材(C)が設けられている場合である。
【0022】
第一未硬化層(A)中の重合性モノマー(m1)と、第二未硬化層(B)中の重合性モノマー(m2)及び重合性ポリマーは相溶性を有することから、前記積層工程(1)によって得られる積層体(X)では、第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)の積層面において、相互に他の層内に、重合性モノマー(m1)、(m2)の一部がそれぞれ拡散することができる。しかも、第一未硬化層(A)中の重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、第二未硬化層(B)中の重合性モノマー(m2)の濃度(c2)よりも高いことから、重合性モノマー(m1)の第二未硬化層(B)への拡散が大きくなり、その分、第二未硬化層(B)中のポリマー(p2)の第一未硬化層(A)への拡散が大きくなる。一方、第一未硬化層(A)内では非相溶性物質(f)が移動して、非相溶性物質(f)が第二未硬化層(B)とは反対側の界面又は当該界面近傍に偏って分布して、非相溶性物質偏在部(A11)と非相溶性物質非存在部(A12)とを有する第一拡散層(A1)が形成される。第二未硬化層(B)からは、第二拡散層(B1)が形成される。
【0023】
前記濃度(c1)は濃度(c2)よりも高い値である。濃度(c1)と濃度(c2)の濃度差は、15重量%以上であるのが好ましく、20重量%以上がより好ましく、さらには30重量%以上であるのが好ましい。前記濃度差により第一未硬化層(A)内で非相溶性物質を偏在させることができるが、前記濃度差を15重量%以上にすることで、第一未硬化層(A)内における非相溶性物質をより偏在させることができる。なお、濃度(c2)が濃度(c1)よりも高い場合においては、第一未硬化層(A)内で非相溶性物質を充分に偏在させることができない。
【0024】
前記非相溶性物質偏在部(A11)に係る非相溶性物質(f)の偏在の現象は、前述の通り、第二未硬化層(B)からのポリマー(p2)の拡散によるものと推察される。即ち、重合性モノマー(m1)が第二未硬化層(B)に拡散し、一方、ポリマー(p2)が第一未硬化層(A)へ拡散することによって、第二未硬化層(B)の方向には拡散できない非相溶性物質(f)が、第一未硬化層(A)中に残存するような形で偏在していくものと考えられる。
【0025】
上記の通り、前記積層体(X)において第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)は、相互に各成分の拡散が生じているため、第一拡散層(A1)の非相溶性物質非存在部(A12)と第二拡散層(B1)の界面は確認できないが(これらの複合箇所を図1ではAB1として示している)、図1では、便宜上、拡散前の状態を破線で示している。
【0026】
次いで、積層体(X)に、硬化工程(3)を施して、第一拡散層(A1)及び第二拡散層(B1)中の前記重合性モノマー(m1)及び重合性モノマー(m2)を少なくとも重合して、前記偏在構造が維持されたまま硬化した、非相溶性物質偏在部(A21)を有する第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)が形成された積層体(Y)を得る。第一硬化層(A2)では、非相溶性物質偏在部(A21)と非相溶性物質非存在部(A22)を有する。なお、積層体(Y)でも、第一硬化層(A2)の非相溶性物質非存在部(A22)と第二硬化層(B2)の界面は確認できないが(これらの複合箇所を図1ではAB2として示している)、図1では、上記同様に、便宜上、拡散前の状態を破線で示している。
【0027】
[積層工程(1)]
積層工程(1)では、第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)が接するように積層して、第一未硬化層(A)/第二未硬化層(B)、の構造を少なくとも有する積層体(X)を作製する。
【0028】
(第一硬化性樹脂組成物(a))
第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合可能な重合性モノマー(m1)又はその部分重合物及び非相溶性物質(f)を少なくとも含んでいる。第一硬化性樹脂組成物(a)には適宜に重合開始剤を含有することができる。また、重合性モノマー(m1)を光硬化させる場合には、第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合開始剤として光重合開始剤を含むことができる。なお、部分重合物は、重合性モノマー(m1)の一部分が重合した部分重合組成物である。第一硬化性樹脂組成物(a)が光重合開始剤を含む場合は、取り扱い性、塗工性等の点から、重合性モノマー(m1)の一部分が重合した部分重合組成物を好適に利用することできる。
【0029】
第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物、及び非相溶な非相溶性物質(f)を含有するが、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物に対する重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、50〜100重量%に制御するのが好ましい。濃度(c1)は、70〜100重量%が好ましく、さらには80〜100重量%が好ましい。なお、第一硬化性樹脂組成物(a)が、重合性モノマー(m1)の部分重合物を含有しない場合が、濃度(c1)が100重量%になる。濃度(c1)は、第二硬化性樹脂組成物(b)に係る濃度(c2)よりも高くなるように設定され、好ましくは15重量%以上高くなるように設定される。
【0030】
重合性モノマー(m1)は、ラジカル重合やカチオン重合等の反応機構を問わず、光エネルギーや熱エネルギーを利用して重合可能な化合物であることが重要である。このような重合性モノマー(m1)は、例えば、アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー等のラジカル重合性モノマー;エポキシ系樹脂を形成するエポキシ系モノマー、オキセタン系樹脂を形成するオキセタン系モノマー、ビニルエーテル系樹脂を形成するビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合性モノマー;ウレタン系樹脂を形成するポリイソシアネートとポリオールとの組み合わせ;ポリエステル系樹脂を形成するポリカルボン酸、ポリオールとの組み合わせ等が挙げられる。なお、重合性モノマー(m1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合性モノマー(m1)を重合して得られるポリマー(p1)としては、前記各種ポリマーが例示される。
【0031】
重合性モノマー(m1)としては、重合速度が速く、生産性に優位である点から、アクリル系モノマーが好適に用いられる。従って、前記ポリマー(p1)としては、アクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0032】
また、前記ポリマー(p1)に係るアクリル系ポリマー、エポキシ樹脂、オキセタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂は、それぞれアクリル系感圧性接着剤(粘着剤)のベースポリマー、エポキシ系感圧性接着剤のベースポリマー、オキセタン系感圧性接着剤のベースポリマー、ビニルエーテル系感圧性接着剤のベースポリマー、ウレタン系感圧性接着剤のベースポリマー、ポリエステル系感圧性接着剤のベースポリマー等として機能する。このため、第一硬化性樹脂組成物(a)は、粘着剤組成物として用いることができる。第一硬化性樹脂組成物(a)が粘着剤組成物の場合には、第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)として粘着剤層が形成される。
【0033】
アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルを用いることができ、特にアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを好適に用いることができる。なお、上記の「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。
【0034】
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、公知乃至慣用の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中から適宜選択して用いることができる。
【0035】
直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が2〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数が2〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルや芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどがあげられる。脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルや、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステルなどが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、上記(メタ)アクリル酸エステルはアクリル系ポリマーの主たるモノマー成分(モノマー主成分)として用いられているので、(メタ)アクリル酸エステル(特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)のモノマー割合(重合性モノマー成分中の含有量)は、硬化多層シートの第一硬化層(A2)に粘着が求められる用途で、前記硬化多層シートを用いる場合、例えば、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して70重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上である。つまり、第一硬化性樹脂組成物(a)において、(メタ)アクリル酸エステルは、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物の全量に対して70重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは80重量%以上である。
【0038】
また第一硬化性樹脂組成物(a)には、重合性モノマー(m1)として、極性基含有モノマーや多官能性モノマー等の各種の共重合性モノマーが用いられていてもよい。例えば、共重合性モノマーを用いることにより、例えば、第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)の被着体への接着力を向上させたり、前記第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)の凝集力を高めたりすることができる。共重合性モノマーは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
前記極性基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルアクリレート、ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸含有モノマーなどがあげられる。また、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアクリル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレート、等のモノマーが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。極性基含有モノマーとしては、上記の中でも、カルボキシル基含有モノマーが好適であり、アクリル酸が特に好適である。
【0040】
極性基含有モノマーの使用量としては、得られる硬化多層シートの目的、用途によって適宜調整することができるが、例えば硬化多層シートの第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)に粘着性が求められる用途で、前記硬化多層シートを用いる場合、重合性モノマー又はその部分重合物の全量に対して30重量%以下が好ましく、さらには1〜30重量%が好ましく、さらには2〜20重量%が好ましい。極性基含有モノマーの割合が30重量%を超えると、得られるポリマーの凝集力が高くなりすぎ、例えば、第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)が硬くなりすぎ、密着性が低下するおそれがある。また、極性基含有モノマーの使用量が少なすぎると重合性モノマー全量に対して1重量%未満であると、得られるポリマーの凝集力が低下し、高いせん断力が得られないおそれがある。
【0041】
前記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
多官能性モノマーは得られる硬化多層シートの目的、用途によって適宜調整することができ、得られるポリマー層に凝集力を付与したり、形状維持したりする場合に好適である。硬化多層シートの第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)に粘着性が求められる用途で、前記硬化多層シートを用いる場合、多官能性モノマーの割合は、例えば、アクリル系重合性組成物では、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物の全量に対して2重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜2重量%、さらに好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性モノマーの割合が、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物の全量に対して2重量%を超えると、得られるポリマー(p1)の凝集力が高くなりすぎ、脆くなりすぎる点で不具合を生じる場合がある。また、多官能性モノマーの割合が少なすぎると(重合性モノマー(m1)又はその部分重合物の全量に対して0.01重量%未満であると)、前記多官能性モノマーを用いる目的を達成できない場合がある。
【0043】
また、硬化多層シートの第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)に硬い物性が求められる用途(例えば、フィルム用途やハードコート用途など)で、前記硬化多層シートを用いる場合、上記(メタ)アクリル酸エステルのモノマー割合(モノマー成分中の含有量)は、例えば、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して95重量%以下が好ましく、さらには0.01〜95重量%が好ましく、さらには1〜70重量%が好ましい。
【0044】
また、硬化多層シートの第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)に硬い物性が求められる用途で、前記硬化多層シートを用いる場合、前記極性基含有モノマーの割合は、重合性モノマー又はその部分重合物の全量に対して95重量%以下が好ましく、さらには0.01〜95重量%が好ましく、さらには1〜70重量%が好ましい。極性基含有モノマーの使用量が95重量%を超えると、例えば耐水性などが十分でなくなり、硬化多層シートとして使用環境(湿気、水分など)に対する品質変化が大きくなるおそれがある。また、極性基含有モノマーの割合が少なすぎると(例えば0.01重量%以下)、硬い物性を得る場合には、ガラス転移温度(Tg)の高い(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニルアクリレートなど)や多官能性モノマーの添加量が多くなり、得られた硬化多層シートが脆くなりすぎるおそれがある。
【0045】
また、硬化多層シートの第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)に硬い物性が求められる用途で、前記硬化多層シートを用いる場合、多官能性モノマーの割合は、重合性モノマー又はその部分重合物の全量に対して95重量%以下が好ましく、さらには好ましくは0.01〜95重量%であり、さらに好ましくは1〜70重量%である。多官能性モノマーの使用量が重合性モノマー又はその部分重合物の全量に対して95重量%を超えると、重合時の硬化収縮が大きくなり均一なフィルム状あるいはシート上の硬化多層シートを得られなくなるおそれや、得られた硬化多層シートが脆くなりすぎるおそれがある。また、多官能性モノマーの使用量が少なすぎると(例えば0.01重量%以下であると)、十分な耐溶媒性や耐熱性を有する硬化多層シートを得られなくなるおそれがある。
【0046】
また、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに用いることができる、上記の極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル;などが挙げられる。
【0047】
(非相溶性物質(f))
非相溶性物質(f)としては、重合性モノマー(m1)を重合して得られるポリマー(p1)に対して非相溶(溶解しない)であり、かつ第二硬化性樹脂組成物(b)に用いられる重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)に対しても非相溶な物質である限り特に限定されず、無機物(無機物質)であっても有機物(有機物質)であってもよい。また、非相溶性物質(f)は、固体であってもよいし、流動性を有していてもよい。
【0048】
あるポリマーに対してある物質が非相溶性物質(f)であるか否かの判断は、目視、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、X線回析などにより、本発明によらない一般的な方法(例えば、ある物質を重合性モノマーに溶解させ、重合性モノマーを重合してポリマー化して判断する方法;ポリマーをそのポリマーを溶解する溶媒に溶解し、そこへ物質を添加し、攪拌後溶媒を除去して判断する方法;ポリマーが熱可塑性ポリマーであればポリマーを加熱溶解して、そこへ物質を配合し、冷却後判断する方法など)において、そのポリマー中の物質又はその集合体がどの程度の大きさで分散しているかにより判断することができる。その判断基準は、物質又はその集合体が、球や立方体、不定形状等の球体状に近似できる場合には5nm以上の直径を有すること、また棒状や薄層状、直方体状等の柱体状に近似できる場合には最も長い辺の長さが10nm以上であることである。
【0049】
より具体的なポリマー中に物質又はその集合体を分散させる方法としては、例えば、ポリマーを構成する重合性モノマー:100重量部、光重合開始剤:0.5重量部、物質又はその集合体:50重量部を添加あるいは均一分散させた後、PETフィルム上に10〜500μm程度の厚さにコーティングして、窒素等の不活性ガス中あるいはカバーフィルムで酸素の影響を排除してブラックライトによる紫外線照射で重合させる方法;予めポリマーを溶液重合や紫外線重合など任意の方法で作製しておき、該ポリマーを溶剤に溶解させた溶媒系に、ポリマー100重量部に対して50重量部に相当する量の物質又はその集合体を添加、攪拌などにより均一分散して、PET上に塗布して乾燥による溶剤除去後の厚さを10〜500μm程度とする方法などが挙げられる。
【0050】
物質をポリマー中に分散した際において、そのポリマー中の物質又はその集合体が、球や立方体、不定形状等の球体状に近似でき、該球体状の物質又はその集合体が5nm以上の直径を有する場合にはそのポリマーに対する非相溶性物質であるとみなすことができ、またそのポリマー中の物質又はその集合体が、棒状や薄層状、直方体状等の柱体状に近似でき、該柱体状の物質又はその集合体の最も長い辺の長さが10nm以上であるにはそのポリマーに対する非相溶性物質であるとみなすことができる。
【0051】
非相溶性物質(f)としての無機物としては、例えば、下記で例示する無機粒子(微粒子、微粒子粉末)等が挙げられる。
【0052】
非相溶性物質である粒子は、非相溶性物質として粒子を用いた硬化多層シートにおいて第一硬化層(A2)の非相溶性物質偏在部(A21)において粒子による表面凹凸の形成に寄与することができたり、表面凹凸シート利用面表面での凹凸構造の形成に寄与することができる。粒子としては、例えば、シリカ、シリコーン(シリコーンパウダー)、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、タルク、層状ケイ酸塩、粘土鉱物、金属粉(例えばニッケル粉末、アルミニウム粉末、鉄粉末、マグネシウム粉末、銅粉末など)、チタン酸バリウム、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、ガラス、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン、チタン白、カーボンブラック等の無機粒子;ポリエステルビーズ、ナイロンビーズ、シリコンビーズ、ウレタンビーズ、塩化ビニリデンビーズ、アクリルバルーン等の有機粒子;架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂粒子;無機−有機ハイブリット粒子、熱膨張性微小球などが挙げられる。なお、粒子は、中実体、中空体(バルーン)のいずれであってもよい。また、粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
上記熱膨張性微小球としては、例えば、容易にガス化して熱膨張性を示す物質を殻形成物質からなる殻の内部に内包させたマイクロカプセル等が挙げられる。前記熱膨張性を示す物質としては、例えばイソブタンやプロパン、ペンタンの如く容易にガス化する物質が挙げられる。また、前記殻形成物質としては、例えば塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体やポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンの如き熱溶融性物質、熱膨張で破壊する物質等が挙げられる。熱膨張性物質を殻の内部に内包する方法としては、例えばコアセルベーション法や界面重合法等の方式が挙げられる。なお熱膨張性微小球には、マイクロスフェア(商品名、松本油脂製薬社製)などの市販物もある。
【0054】
粒子の粒径(平均粒子径)としては、特に制限されないが、例えば、レーザー散乱法や動的光散乱法におけるメジアン径で0.5〜500μmが好ましく、さらに好ましくは1〜300μmさらに好ましくは3〜100μmの範囲である。また、粒子は、粒径の異なる粒子を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
粒子の形状は、真球状や楕円球状等の球状、不定形状、針状、棒状、平板状等のいずれの形状であってもよい。一般的には、粒子は、第一硬化層(A2)の非相溶性物質偏在部(A21)表面の粒子による表面凹凸の凹凸構造や表面凹凸シートの利用面表面の凹凸構造の形状が揃いやすい真球状や真球状に近い高球形度のものが好ましい。また、粒子は、その表面に、孔や突起などを有していてもよい。また、粒子は、1種の形状のみを選択して用いてもよいし、形状の異なる粒子を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0056】
なお、粒子の表面には、各種表面処理(例えば、シリコーン系化合物やフッ素系化合物等による低表面張力化処理など)が施されていてもよい。
【0057】
また、非相溶性物質としての有機物としては、例えばアクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、フッ素系樹脂、シリコーン、天然ゴム、合成ゴム[特に、スチレン−イソプレン−スチレンゴム(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンゴム(SIBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム(SBS)又はスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンゴム(SEBS)などスチレン成分を含有する合成ゴム]等のポリマー類やそのオリゴマー類;ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などタッキファイヤー類(粘着付与樹脂類);界面活性剤、酸化防止剤、有機顔料、可塑剤、溶剤(有機溶剤)等の液体などが挙げられる。さらに、水や水溶液(例えば、塩水溶液、酸水溶液など)も非相溶性物質として用いられる。なお、前記有機物は粒子として用いることができる。
【0058】
なお、本発明おいて、非相溶性物質(f)は、硬化多層シート中の第一硬化層(A2)において、第二硬化層(B2)と反対の界面付近に層状形態で偏って分布している。このような非相溶性物質(f)が分布する非相溶性物質偏在部(A21)に係る部分(前記層状分布部分)の厚みは、非相溶性物質の使用量を調整することにより制御することができる。
【0059】
第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合性モノマー(m1)及び非相溶性物質(f)を含有し、その割合は特に制限されないが、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物100重量部に対して、非相溶性物質(f)0.001〜100重量部であるのが好ましく、さらに好ましくは0.01〜70重量部、さらに好ましくは0.1〜50重量部である。非相溶性物質(f)の割合が100重量部を超えるような使用量であると、硬化多層シートの作製が困難となる場合や作製後の硬化多層シートで強度の問題が生じることがある。なお、0.001重量部未満であると、積層工程(1)において積層体(X)を得た後にも、第一拡散層(A1)、さらには第一硬化層(A2)を得難くなる。
【0060】
重合開始剤は、必要に応じて用いることができる。重合開始剤は、硬化工程(2)に応じて、例えば熱重合開始剤や光重合開始剤を選択して用いることができる。重合開始剤を用いると、積層工程(1)により形成された、非相溶性物質偏在部(A11)と非相溶性物質非存在部(A12)とを有する第一拡散層(A1)の偏在構造を維持したまま、第一拡散層(A1)及び第二拡散層(B1)中の重合性モノマー(m1)及び重合性モノマー(m2)を容易に硬化させることができる。
【0061】
光重合開始剤としては、特に制限されず、例えばベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。光重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0062】
具体的には、ケタール系光重合開始剤には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)など]等が含まれる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)など]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)などが使用できる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0063】
光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、第一硬化性樹脂組成物(a)中の重合性モノマー(m1)又はその部分重合物100重量部に対して5重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
【0064】
なお、熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤(例えば有機過酸化物/バナジウム化合物;有機過酸化物/ジメチルアニリン;ナフテン酸金属塩/ブチルアルデヒド、アニリンあるいはアセチルブチロラクトン等の組み合わせなど)などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。なお、レドックス系重合開始剤を熱重合開始剤として用いれば、常温で重合させることが可能である。熱重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、第一硬化性樹脂組成物(a)中の重合性モノマー(m1)又はその部分重合物100重量部に対して5重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
【0065】
第一硬化性樹脂組成物(a)には、必要に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料や染料など)、溶剤(有機溶剤)などが挙げられる。
【0066】
例えば、第一硬化層(A2)の意匠性、光学特性等の観点から、光重合反応等の重合反応を阻害しない程度の顔料(着色顔料)を使用することができる。黒色が望まれる場合には、着色顔料として、カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックの使用量としては、着色度合いや上記光重合反応を阻害しない観点から、例えば、第一硬化性樹脂組成物(a)の重合性モノマー100重量部又はその部分重合物に対して0.15重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.15重量部、さらには好ましくは0.02〜0.1重量部である。
【0067】
第一硬化性樹脂組成物(a)は、上記各成分を均一に混合・分散させることにより調製することができる。この第一硬化性樹脂組成物(a)は、通常、基材上に塗布するなどしてシート状に成形するので、塗布作業に適した適度な粘度を持たせておくのがよい。第一硬化性樹脂組成物(a)の粘度は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤等の各種ポリマーを配合することや、第一硬化性樹脂組成物(a)中の重合性モノマー(m1)を光の照射や加熱などにより一部重合させた部分重合物にすることにより調整することができる。なお、望ましい粘度は、BH粘度計を用いて、ローター:No.5ローター、回転数10rpm、測定温度:30℃の条件で設定された粘度として、5〜50Pa・s、より好ましくは10〜40Pa・sである。粘度が5Pa・s未満であると、基材上に塗布したときに液が流れてしまい、50Pa・sを超えていると、粘度が高すぎて塗布が困難となる。
【0068】
(第二硬化性樹脂組成物(b))
第二硬化性樹脂組成物(b)は、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有する。
【0069】
重合性モノマー(m2)は、重合性モノマー(m1)と相溶し、かつ非相溶性物質(f)とは相溶しないものが用いられる。重合性モノマー(m2)としては、重合性モノマー(m1)と同様のものを例示できる。また相溶性の観点から、また重合性モノマー(m2)を1種または2種以上用いる場合において、重合性モノマー(m2)の少なくとも1種が、重合性モノマー(m1)で用いられる1種または2種以上のうちの少なくとも1つと共通することが好ましい。また、重合性モノマー(m2)についても、重合性モノマー(m1)と同様に(メタ)アクリル系モノマーであることが好ましく、硬化後には粘着剤組成物層を形成するものが好ましい。
【0070】
また第二硬化性樹脂組成物(b)は、重合性モノマー(m2)に加えて、ポリマー(p2)を含有する。ポリマー(p2)としては、重合性モノマー(m1)と相溶する方がポリマー(p2)の拡散の点から好ましく、かつ非相溶性物質(f)とは相溶しない各種ポリマーが用いられる。ポリマー(p2)は、重合性モノマー(m1)から得られるポリマー(p1)と同じであってもよく、異なっていてもよいが、ポリマー(p2)がポリマー(p1)とは異なるものであることが硬化多層シートとしての機能の点から好ましい。
【0071】
ポリマー(p2)としては、例えば、重合性モノマー(m2)の重合物及び/又は重合性ポリマーを用いることができる。第二硬化性樹脂組成物(b)が、重合性モノマー(m2)に加えて重合性モノマー(m2)の重合物を含有する場合には、第二硬化性樹脂組成物(b)としては、重合性モノマー(m2)の一部分を重合した部分重合組成物を好適に利用することできる。一方、第二硬化性樹脂組成物(b)が、重合性モノマー(m2)に加えて重合性ポリマーを含有する場合には、重合性モノマー(m2)に重合性ポリマーを配合することにより、第二硬化性樹脂組成物(b)が調製される。その他、ポリマー(p2)としては、重合性モノマー(m2)の重合物以外のポリマーを例示できるが、当該ポリマーを用いる場合には、重合性モノマー(m2)に加えて当該ポリマーを配合することによりは、第二硬化性樹脂組成物(b)が調製される。
【0072】
第二硬化性樹脂組成物(b)は、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有するが、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)に対する重合性モノマー(m2)の濃度(c2)は1〜85重量%に制御するのが好ましい。濃度(c2)は15〜80重量%が好ましく、さらには25〜75重量%が好ましい。前記の通り、第一硬化性樹脂組成物(a)に係る濃度(c1)は、第二硬化性樹脂組成物(b)に係る濃度(c2)よりも高くなるように設定され、好ましくは15重量%以上高くなるように設定される。
【0073】
重合性ポリマーとしては、ラジカル重合やカチオン重合等の反応機構を問わず、光エネルギーや熱エネルギーを利用して重合可能なポリマーおよびオリゴマーが用いられる。このような重合性ポリマーとしては、例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を付加反応したウレタンポリマーにヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを付加反応して得られるウレタン(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル系モノマーやビニルモノマーを重合した共重合(メタ)アクリルポリマーに(メタ)アクリロイル基をペンダントさせて得られるポリ(メタ)アクリル(メタ)アクリレート;エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の付加反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート;ジオールとフマル酸やマレイン酸等の不飽和ニ塩基酸との組合せで得られる不飽和ポリエステル;ハイパーブランチポリマー、ビニルエーテル化合物などが挙げられる。中でも、ウレタン(メタ)アクリレートが好適に用いられる。また、重合性ポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系モノマー中で作製したウレタン(メタ)アクリレートを、第二硬化性樹脂組成物(b)としてそのまま使用することもできる。一般的に、市販のウレタン(メタ)アクリレートは粘度が高くハンドリング性が悪いことから、溶剤もしくは重合性モノマー(m2)で希釈し使用する場合が多い。この方法によれば、溶剤もしくは重合性モノマー(m2)で希釈する必要がなく、(メタ)アクリル系モノマー中で作製することから(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性、およびシートの物性を任意に変化させることもできる。具体的な方法としては、(メタ)アクリル系モノマー中でポリオールとポリイソシアネートを付加反応してウレタンポリマーを作製し、水酸基含有アクリルモノマーなどを付加反応して作製する方法が挙げられる。
【0075】
ウレタンポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる。ポリオールの水酸基とポリイソシアネートとの反応には、触媒を用いても良い。例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクトエ酸スズ、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン等の、ウレタン反応において一般的に使用される触媒を用いることができる。
【0076】
ポリオールとしては、1分子中に2個またはそれ以上の水酸基を有するものが望ましい。低分子のポリオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価または4価のアルコールなどが挙げられる。また、高分子のポリオールとしてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、カーボネートポリオール、カプロラクトンポリオールなどがある。これらの中では、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、カーボネートポリオールが好ましい。ポリエ−テルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては上記の2価のアルコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2塩基酸との重縮合物が挙げられる。その他、ポリカプロラクトン等のラクトン系開環重合体ポリオールポリカーボネートジオールなどがある。アクリルポリオールとしては(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーの共重合体の他、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーと他の(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などが挙げられる。エポキシポリオールとしてはアミン変性エポキシ樹脂などがある。これらのポリオール類は単独あるいは併用して使用することができる。
【0077】
ポリイソシアネートとしては芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体などが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンポリイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。これらのポリイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。ウレタン反応性、重合性モノマーとの相溶性等の観点から、ポリイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択することができる。
【0078】
ウレタンポリマーを形成するためのポリオール成分とポリイソシアネート成分の使用量は特に限定されるものではないが、例えば、ポリオール成分の使用量は、ポリイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が0.8〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましい。NCO/OHが0.8未満、あるいは3.0より大きいと、分子量が低下し易く、本発明の目的である機能性多層シートが得られない場合がある。
【0079】
前記ウレタンポリマーに対し、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを添加し、ポリマー末端をアクリルロイル基とすることが好ましい。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを添加することにより、ウレタンポリマーの分子内にアクリロイル基を導入することができ、アクリル系モノマーとの共重合性を付与することができる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、重合性モノマー(m1)で例示した、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が用いられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、さらには0.1〜5重量部であるのが好ましい。
【0080】
なお、第二硬化性樹脂組成物(b)は、第一硬化性樹脂組成物(a)で例示した重合開始剤、添加剤を、第一硬化性樹脂組成物(a)と同様の範囲で用いることができる。但し、使用量の基準は、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)である。
【0081】
≪積層体(X)≫
前記積層体(X)の作製は特に限定されないが、例えば、(I)多層ダイスにより、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)を一括で支持基材上に塗布して、第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)を一括で形成する方法;(II)第一硬化性樹脂組成物(a)又は第二硬化性樹脂組成物(b)を支持基材上に塗布して、第一未硬化層(A)又は第二未硬化層(B)を形成した後、さらにその層に、当該層とは別の層に係る第二硬化性樹脂組成物(b)又は第一硬化性樹脂組成物(a)を塗布して、第二未硬化層(B)又は第一未硬化層(A)を形成する方法;(III)第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)を、それぞれ別の支持基材上に塗布して、第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)を形成した後、それらの層を貼り合わせて積層する方法、等が挙げられる。
【0082】
上記方法(I)はいわゆる共押出法であり、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)を並行して押出しながら第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)とを互いに隣接させて一括で形成することができる。共押出法は、押出成形機及び共押出し用ダイを用いて、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)をそれぞれ供給しつつインフレーション法、Tダイ法等に準じて行うことができる。
【0083】
上記方法(II)及び(III)において、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)の塗布に際しては、例えば、慣用のコーター(例えば、コンマロールコーター、ダイロールコーター、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0084】
なお、上記方法(I)〜(III)等により、第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)を積層した後、直ちに硬化工程(2)を行ってもよいが、必要に応じて積層工程(1)と硬化工程(2)との間に、積層した各層をそのままの状態で放置する放置工程を設けてもよい。その際の放置時間としては特に限定されないものの、10〜500秒が好ましく、60〜300秒がより好ましい。
【0085】
(第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B))
第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)の各層の厚みは特に限定されないが、例えば、20〜2000μmであり、好ましくは30〜1500μm、さらに好ましくは50〜1000μmである。第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)の厚さは同じであっても異なっていてもよい。第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)を積層した積層体(X)の厚みは、特に限定されないが、例えば、20〜3000μmであり、好ましくは30〜2000μmであり、さらに好ましくは50〜1000μmである。
【0086】
(支持基材)
前記積層体(X)の作製に用いられる支持基材は、剥離性を有していてもよいし、あるいは剥離性を有していなくてもよい。なお、得られる硬化多層シートにおいて、第一未硬化層(A)から得られる第一硬化層(A2)の表面および第二未硬化層(B)から得られる第一硬化層(B2)の表面は支持基材で保護されていてもよい。
【0087】
支持基材としては、硬化工程(2)において、例えば、活性エネルギー線を用いる場合には、活性エネルギー線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。また、支持基材の表面は、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0088】
支持基材の厚みは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的に、1〜1000μmであり、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0089】
硬化多層シートを使用する際、支持基材は、剥がされてもよいし、あるいは剥がされることなくそのままの状態を維持し、硬化多層シートの一部を構成していてもよい。なお、本発明において、光重合法を用いる場合、空気中の酸素により反応が阻害されるため、硬化工程(2)では、支持基材としてカバーフィルムを用いて空気中の酸素と遮断することが好ましい。
【0090】
このようなカバーフィルムとしては、酸素を透過し難い薄葉体であれば特に制限されないが、光重合反応を用いる場合は透明なものが好ましく、例えば慣用の剥離紙などを使用することができる。具体的には、カバーフィルムとしては、例えば離型処理剤(剥離処理剤)による離型処理層(剥離処理層)を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。なお、低接着性基材では、両面が離型面と利用することができ、一方、離型処理層を有する基材では、離型処理層表面を離型面(離型処理面)として利用することができる。
【0091】
カバーフィルムとしては、例えば、カバーフィルム用基材の少なくとも一方の面に離型処理層が形成されているカバーフィルム(離型処理層を有する基材)を用いてもよいし、カバーフィルム用基材をそのまま用いてもよい。
【0092】
このようなカバーフィルム用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルム等のプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や、紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。カバーフィルム用基材としては、透明性の高いプラスチック系基材フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム)が用いられたカバーフィルム用基材を好適に用いることができる。
【0093】
離型処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系離型処理剤、フッ素系離型処理剤、長鎖アルキル系離型処理剤などを用いることができる。離型処理剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。なお、離型処理剤により離型処理が施されたカバーフィルムは、例えば、公知の形成方法により、形成される。
【0094】
[硬化工程(2)]
本発明では、前記第一拡散層(A1)及び第二拡散層(B1)中の前記重合性モノマー(m1)及び重合性モノマー(m2)、さらにはポリマー(p2)が重合性ポリマーを含む場合には当該重合性ポリマー、を硬化する工程(3)を施して、第一硬化層(A2)と第二硬化層(B2)との積層体(Y)、即ち、硬化多層シートを得る。硬化工程(2)は、例えば、光照射により行なうことができる。光照射は、前記重合性モノマー(m1)、重合性モノマー(m2)、重合性ポリマー(p2)を重合することできれば、光源、照射エネルギー、照射方法、照射時間等について、特に制限されることはない。
【0095】
光照射に用いる活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。なお、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは、前記重合性モノマー(m1)、(m2)、重合性ポリマー(p2)を重合することができる限り、特に制限されることはない。
【0096】
活性エネルギー線の照射装置としては、特に制限はないが、例えば蛍光ケミカルランプ、ブラックライトランプ、殺菌ランプ、ケミカルランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、EB照射装置などが挙げられる。
【0097】
また、硬化工程(2)を加熱により行なうことができる。加熱する方法としては、例えば公知の加熱方法(例えば、電熱ヒーターを用いた加熱方法、赤外線等の電磁波を用いた加熱方法など)から適宜選択できる。
【0098】
[硬化多層シート]
前記積層体(Y)の第一硬化層(A2)において、非相溶性物質(f)が偏在する界面又は当該界面近傍(非相溶性物質偏在部:A21)の厚みは、前記第一未硬化層(A)(積層前)の厚みに対して、80%以下であることが好ましい。
【0099】
非相溶性物質偏在部(A21)の厚みは、前記第一未硬化層(A)の厚みに対する厚み比率は80%以下が好ましく、さらに好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。80%を超えるような厚みであると、第二硬化層(B2)との密着性に問題が生じる恐れや、第一硬化層(A2)の強度に問題を生じるおそれがある。第一硬化層(A2)における非相溶性物質偏在部(A21)の厚みは、第一硬化性樹脂組成物(a)に含ませる非相溶性物質(f)の量を調整することなどにより制御することができる。
【0100】
第一硬化層(A2)において、非相溶性物質偏在部(A21)では、非相溶性物質(f)と重合性モノマー(m1)、重合性モノマー(m2)、さらにポリマー(p2)が硬化したポリマー成分とが混在している。このため、当該部分では、前記ポリマー成分に基づく特性、非相溶性物質(f)が元来有する特性、非相溶性物質(f)が偏在することに基づく特性を発揮することができる。
【0101】
第一硬化層(A2)のポリマー成分に基づく特性としては、柔軟性、ハードコート性、粘着性、応力緩和性、耐衝撃性などが挙げられる。また、例えばポリマー成分として粘着剤成分を用いた際の粘着性(感圧接着性)などが挙げられる。非相溶性物質(f)が元来有する特性としては、特定の機能(例えば、膨張性、収縮性、吸収性、発散性、導電性等)を有する非相溶性物質を用いた際の該特定の機能が挙げられる。非相溶性物質(f)が偏在することに基づく特性とは、例えば、ポリマー成分として粘着剤成分を用いた際の非相溶性物質(f)の含有量を調整することによる粘着性(感圧接着性)の制御、着色等の意匠性、非相溶性物質として粒子を用いた際の表面凹凸の付与や該表面凹凸に基づく特性(例えば、再剥離性、アンチブロッキング性、アンチグレア特性、意匠性、光散乱性など)などが挙げられる。また、膨張性、収縮性、吸収性、発散性、導電性等の性質を保持したまま、基材の特性、例えば、柔軟性、ハードコート性、粘着性、応力緩和性、耐衝撃性などを有することが挙げられる。
【0102】
硬化多層シートの形態は、特に制限されず、通常シート状やテープ状の形態を有する。なお、第一硬化層(A2)及び/又は第二硬化層(B2)として粘着剤層(感圧性接着剤層)を形成した場合、硬化多層シートを粘着テープ又はシート(「テープ又はシート」を単に「テープ」あるいは「シート」と称する場合がある)として用いることができる。なお、第一硬化層(A2)、第二硬化層(B2)は両方を粘着剤層とすることができ、またいずれか一方を基材層とすることができる。具体的には、硬化多層シートとして、粘着剤層/粘着剤層の両面テープ、基材層/粘着剤層の片面粘着テープ、粘着剤層/基材/粘着剤層の両面テープ等を作製することができる。
【0103】
また、硬化多層シートに公知の粘着剤(感圧性接着剤)(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤など)による粘着剤層(感圧性接着剤層)を設けることでも、硬化多層シートを粘着テープ又はシートとして用いることができる。
【0104】
硬化多層シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0105】
本発明の硬化多層シートは、非相溶性物質の種類やその量、第一硬化層(A2)のポリマーの種類やその厚さ等を調整することにより、様々な特性を発揮するため、広範な分野で用いることができる。本発明の製造方法により得られた硬化多層シートは、非相溶性物質を選択することで各種用途に適用される各種部材として用いることができる。例えば、非相溶性物質として粒子を用いた場合には、表面に当該粒子に起因する凹凸を形成した表面凹凸部材として好適に用いられる。さらに、第一硬化層(A2)を粘着剤層とし、非相溶性物質として熱膨張性微小球を用いた場合には、例えば、電子系部品類および半導体系部品類の加工工程で用いられる加熱剥離型粘着シートとして好適に用いられる。また、例えば、非相溶性物質としてガスバリア性物質を用いた場合には、ガスバリア性部材として好適に用いられる。特に、水蒸気ガスバリア用、酸素ガスバリア用のガスバリア性部材として好適である。また、非相溶性物質が難燃性を有する場合には難燃性部材として好適に用いられる。加えて、非相溶性物質としてフッ素系樹脂やシリカ粒子などの表面保護機能を有する物質を用いた場合には、例えば、車両などの塗膜の表面保護部材として好適に用いられる。また、硬化層を粘着剤層により形成することで粘着テープ又はシートとして用いられる。その他、本発明の硬化多層シートは、導電部材、光拡散部材等に用いられる。従って、本発明の製造方法により得られた硬化多層シートは、例えば、光学シート、バリアシート、難燃性シート、電子回路、パワーエレクトロニクス材料、粘着テープ又はシート、医療分野用途などで好適に用いることができる。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0107】
なお、以下の各例では支持基材としては、いずれも、片面がシリコーン系離型処理された、厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「MRN38」,三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製)を用いた。
【0108】
(製造例1:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
ブチルアクリレート(以下、BAと略す)100重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製,商品名「イルガキュア651」)0.1重量部、及び連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.17重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた4つ口のフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、部分的に光重合(ポリマー濃度67重量%)させることによって、BAプレポリマーを含む組成物を得た(以下、この組成物をシロップ(s1)という)。シロップ(s1)100重量部に、BAを45重量部加えて、BAプレポリマー濃度46%の組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(b1)という)。シロップ(b1)に対するBA濃度は54重量%である。
【0109】
(製造例2:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
シロップ(s1)100重量部に、BAを120重量部加え、BAプレポリマー濃度30%の組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(b2)という)。シロップ(b2)に対するBA濃度は70重量%である。
【0110】
(製造例3:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
シロップ(s1)100重量部に、BAを14重量部加え、BAポリマー濃度59%の組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(b3)という)。シロップ(b3)に対するBA濃度は41重量%である。
【0111】
(製造例4:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレートを80重量部、BAを20重量部、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG650,三菱化学株式会社製)を68.4重量部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ0.01重量部を投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン株式会社製)を25.5重量部滴下し、65℃で5時間反応させ、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらに2−ヒドロキシエチルアクリレート6.1重量部を投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。さらに、光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製,商品名「イルガキュア651」)を0.3重量部加えて組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(b4)という)。なお、前記ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であり、シロップ(b4)に対するウレタンポリマー濃度は50重量%であり、(メタ)アクリル系モノマーの濃度は50重量%である。
【0112】
(製造例5:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
BA100重量部、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製,商品名「イルガキュア651」)0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた4つ口のフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、部分的に光重合(ポリマー濃度11重量%)させることによって、BAプレポリマーを含む組成物を得た(以下、この組成物をシロップ(b5)という)。シロップ(b5)に対するBA濃度は89重量%である。
【0113】
(製造例6:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
シロップ(b5)100重量部に、平均粒径8μmの架橋ポリメタクリル酸メチルの真球状粒子(商品名「SSX−108」,積水化成品工業株式会社製)を20重量部加えて、均一に混合して組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(a1)という)。シロップ(a1)において、シロップ(b5)に対するBA濃度は89重量%である。
【0114】
(製造例7:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)を50重量部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を40重量部、アクリル酸(AA)を10重量部、ポリオールとして数平均分子量500の1,6−ヘキサンカーボネートジオールと1,5−ペンタンカーボネートジオールの共重合体(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「デュラノールT5650J」)を60.7重量部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI、三井化学ポリウレタン株式会社製)を30.8重量部滴下し、65℃で5時間反応させ、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらにヒドロキシエチルアクリレート(HEA)8.5重量部を投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。さらに、光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.3重量部加えることでシロップ(b6)を得た。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.3、シロップ(b6)に対するモノマー濃度は50重量%であった。
【0115】
(製造例8:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、IBXAを71重量部、BAを19重量部、AAを5重量部、ポリオールとして数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG650、三菱化学株式会社製)を70重量部投入し、撹拌しながら、HXDIを26.1重量部滴下し、65℃で5時間反応させ、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらに4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、日本化成株式会社製)3.9重量部を投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、大阪有機化学工業株式会社製)を3重量部添加し、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(商品名「イルガキュア819」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を0.3重量部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(商品名「TINUVIN 400」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を1.25重量部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(商品名「TINUVIN 123」、チバスペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を1.25重量部加えることでシロップ(b7)を得た。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25、シロップ(b7)に対するモノマー濃度は50重量%であった。
【0116】
(製造例9:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
シロップ(b4)100重量部に、AAを15重量部加えることでシロップ(b8)を得た。シロップ(b8)において、シロップ(b8)に対するモノマー濃度は57重量%であった。
【0117】
(製造例10:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
BAを67重量部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)を14重量部、4HBAを19重量部からなる混合モノマー溶液に、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.09重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア184」)0.09重量部を加えた溶液を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、紫外線に曝露して部分的に光重合(ポリマー濃度10重量%)させることによって、BAとCHAと4HBAとからなる組成物を得た(以下、この組成物をシロップ(s2)という)。シロップ(s2)に対するモノマー濃度は90重量%である。
【0118】
シロップ(s2)100重量部に、熱膨張性微小球(松本油脂製薬株式会社製、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−501D」)を5重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を0.08重量部加えて、均一に混合して組成物を調整した(以下、この組成物をシロップ(a2)という)。シロップ(a2)において、シロップ(a2)に対するモノマー濃度は90重量%である。
【0119】
(製造例11:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を90重量部、AAを10重量部からなる混合モノマー溶液に、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.05重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア184」)0.05重量部を加えた溶液を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、紫外線に曝露して部分的に光重合(ポリマー濃度7重量%)させることによって、2EHAとAAとからなる組成物を得た(以下、この組成物をシロップ(s3)という)。シロップ(s3)に対するモノマー濃度は93重量%である。
【0120】
シロップ(s3)100重量部に、熱膨張性微小球(松本油脂製薬株式会社製、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−501D」)を5重量部、HDDAを0.08重量部加えて、均一に混合して組成物を調整した(以下、この組成物をシロップ(a3)という)。シロップ(a3)において、シロップ(a3)に対するモノマー濃度は93重量%である。
【0121】
(製造例12:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
IBXAを80重量部、BAを20重量部からなる混合モノマー溶液100重量部に、フッ素系樹脂としてフルオロエチレンビニルエーテル共重合体(旭硝子株式会社製、商品名「ルミフロンLF710F」)を25重量部、イソシアネート基含有アクリル系モノマーとして2−アクロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名「カレンズAOI」)を1.57重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.1重量部加えて、均一に混合して組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(a4)という)。シロップ(a4)において、シロップ(a4)に対するモノマー濃度は80重量%である。
【0122】
(製造例13:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、BAを100重量部、ポリオールとして数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG650、三菱化学株式会社製)を71.6重量部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(DBTL)を0.01重量部投入し、撹拌しながら、HXDIを24.6重量部滴下し、65℃で5時間反応させ、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらにHEAを3.8重量部投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。さらに、光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.3重量部加えることでシロップ(s4)を得た。シロップ(s4)に対するモノマー濃度は50重量%である。
【0123】
シロップ(s4)100重量部に、熱膨張性微小球(松本油脂製薬株式会社製、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−501D」)を30重量部加えて、均一に混合して組成物を調整した(以下、この組成物をシロップ(a5)という)。シロップ(a5)において、シロップ(a5)に対するモノマー濃度は50重量%である。
【0124】
(製造例14:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
BA100重量部に、フッ素系樹脂としてフルオロエチレンビニルエーテル共重合体(旭硝子株式会社製、商品名「ルミフロンLF710F」)を100重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.1重量部加えて、均一に混合して組成物を調整した(以下、この組成物をシロップ(a6)という)。シロップ(a6)において、シロップ(a6)に対するモノマー濃度は50重量%である。
【0125】
(実施例1)
支持基材上に、シロップ(a1)を硬化後の厚みが100μmになるように塗布して第一未硬化層(A)を形成した。別の支持基材上に、シロップ(b1)を硬化後の厚みが100μmになるように塗布して第二未硬化層(B)を形成した。前記第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)が接する形態で、気泡が入らないように貼り合せた後、約1分後にブラックライト及びメタルハライドランプを用いて紫外線(照度9mW/cm2,光量1200mJ/cm2)を照射して、前記両未硬化層を硬化させて、両側に支持基材を有する、硬化多層シートを得た。
【0126】
(実施例2〜7、比較例1、3、4)
実施例1において、使用するシロップの種類、形成する未硬化層の厚さを表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様に硬化多層シートを得た。
【0127】
(比較例2)
支持基材上に、シロップ(b4)を硬化後の厚みが100μmになるように塗布して未硬化層を形成した後、その層に別の支持基材を貼り合せた。その後、ブラックライト及びメタルハライドランプを用いて紫外線(照度9mW/cm2,光量1200mJ/cm2)を照射して前記未硬化層を硬化させて、支持基材に挟まれたウレタン−アクリルポリマーシート(以下、これをUAシートという)を形成した。さらに別の支持基材上に、シロップ(a1)を硬化後の厚みが100μmになるように塗布して未硬化層を形成した。次に、支持基材に挟まれたUAシートの一方の支持基材を剥がして、露出したUAシート面にシロップ(a1)から形成された未硬化層を気泡が入らないように貼り合せた後、ブラックライトおよびメタルハライドランプを用いて紫外線(照度9mW/cm2、光量1200mJ/cm2)を照射して硬化させてブラックライト及びメタルハライドランプを用いて紫外線(照度9mW/cm2,光量1200mJ/cm2)を照射して、シロップ(a1)から形成された未硬化層を硬化させて、両側に支持基材を有する、硬化多層シートを得た。
【0128】
(評価)
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて実施例1〜7及び比較例1、3、4で得られた支持基材付き硬化多層シートの断面を観察した。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)として、株式会社日立ハイテクノロジーズ製S−3400Nを使用した。これらの走査型電子顕微鏡写真(SEM像)を、図2〜図6及び図9〜図13に示す。図2は300倍、図3,4,6は350倍、図5,9,13は400倍、図10,12は450倍、図11は200倍である。なお、各図中において、A2:シロップ(a1)〜(a6)に基づく第一硬化層、A21:非相溶性物質偏在部、B2:シロップ(b1)〜(b8)に基づく第二硬化層、である。
【0129】
<各層の厚さの測定>
また、各層の厚さは、下記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0130】
支持基材付き硬化多層シートにおける、硬化した二層(第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2))に係る合計厚さは、1/1000ダイヤルゲージを用いて、支持基材付き硬化多層シートの全体厚さを測定し、その全体厚さから、支持基材の厚さを引くことにより求めた。
【0131】
シロップ(b1)〜(b8)に基づく第二硬化層(B2)の厚さは、各例において、支持基材に形成されたシロップ(b1)〜(b8)により形成された貼り合せ前の未硬化層の厚さであり、各未硬化層が形成された支持基材の全体を、1/1000ダイヤルゲージを用いて測定した値から、支持基材の厚さを引くことにより求めた。シロップ(a)に基づく第一硬化層(A2)の厚さは、前記硬化した二層の合計厚さから、前記第二硬化層(B2)の厚さを引くことにより求めた。
【0132】
また、実施例1〜7では、走査型電子顕微鏡写真から、第一硬化層(A2)における非相溶性物質偏在部(A21)の層表面から厚み方向への高さ(厚さ)を求めた。比較例1、3、4では、第一硬化層(A2)に非拡散性物質が分布する部分の層表面から厚み方向への高さ(厚さ)を求めた。前記非相溶性物質偏在部(A21)等に係る高さ(厚さ)は、走査型電子顕微鏡写真から測定した平均の値(3回)である。
【0133】
(外観評価)
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた支持基材付き硬化多層シートについて、外観を目視観察して、下記の基準で平滑性を評価した。実施例4、比較例2で得られた支持基材付き硬化多層シートの外観写真を図7、図8に示す。図7のように「平滑」な場合を「○」、図8のように厚さ方向に凹凸が生じた場合を「×」とした。
【0134】
【表1】
【0135】
表1及び図から、実施例1〜7のように、隣接する第一及び第二未硬化層(A)、(B)間での重合性モノマーの濃度差が大きい場合、硬化多層シートにおける非相溶性物質偏在部A21の厚さは、積層前の第一未硬化層(A)の厚さより小さくなり、硬化多層シートの表面に粒子が偏在していることが分かる。一方、比較例1、3、4のように、隣接する各層(A)、(B)間での重合性モノマー成分の濃度差が小さいか、濃度差がない場合、硬化多層シートにおける非相溶性物質偏在部A21の厚さは、積層前の第一未硬化層(A)の厚さとほぼ一致し、硬化多層シートの表面に粒子が偏在することなく、第一硬化層(A2)中に分散していることが分かる。
【0136】
また、実施例1〜7及び比較例1では、硬化多層シートの外観は平滑であり、三次元化もカールもしていなかった。一方、比較例2では、硬化多層シートが3次元化し、平滑なシートを得ることができなかった。これは以下の理由によると推察される。すなわち、比較例2では、第一未硬化層(A)と貼り合わされるUAシートがすでに硬化した架橋ポリマーで形成されていることから、粒子を含む第一未硬化層(A)をUAシートに貼り合わせると、第一未硬化層(A)に含まれる重合性モノマーがUAシートに浸透し、UAシートが膨潤する。その後、UAシートが膨潤した状態のままで硬化工程を行うために、得られる硬化多層シートが三次元化したと考えられる。
【符号の説明】
【0137】
A 第一未硬化層
A1 第一拡散層
A2 第一硬化層
A11、A21 非相溶性物質偏在部
A12、A22 非相溶性物質非存在部
B 第二未硬化層
B1 第二拡散層
B2 第二硬化層
C 支持基材
X 積層体:硬化工程(2)の前
Y 積層体:硬化工程(2)の後
f 非相溶性物質
【技術分野】
【0001】
本発明は、非相溶性物質が偏在した構造の層を有する硬化多層シートの製造方法に関する。かかる本発明の製造方法により得られた硬化多層シートは、例えば、光学シート、バリアシート、難燃性シート、電子回路、パワーエレクトロニクス材料、粘着テープ又はシート、医療分野用途などで好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
基材表面に基材と異なる物質を偏在させた複合基材は、光学的、電気的等の新しい機能を付加した基材として期待される。しかしながら、基材となるシートやフィルム等の表面に、例えば微粒子を有する層を形成させることは容易ではない。例えば、基材表面への微粒子層(微粒子を含む層)の形成は、ポリマー成分をバインダーとして有機溶剤に溶かした溶液中に微粒子を分散させて、微粒子を分散させた溶液を得てから、この溶液を基材にコーティングして、さらに有機溶剤を熱乾燥で揮発させることで行なうことができる。しかし、この方法は、基材が有機溶剤などで溶けてしまう場合や、基材の耐熱性が低く熱乾燥で溶融、変形しやすい場合には困難であり、また基材表面が粘着剤層のように粘着性に富む場合には、基材表面に前記微粒子を分散させた溶液をコーティングすることは困難である。さらには、前記溶液を用いる場合には有機溶剤を乾燥しなければならず、また前記溶液の代わりに水分散液を用いたとしても水を乾燥しなければならず、前記微粒子層の形成方法は、環境や省エネルギーの観点からも好ましくない。また前記微粒子層の形成に用いる溶液中のポリマー成分が、基材と異なる材料の場合には、密着性が十分でないと、微粒子層が基材との界面で剥離するおそれがある。
【0003】
また、基材表面への微粒子層の形成は、離型処理したフィルムに微粒子層を形成して、これを母材シートに転写することでも行なうことができるが、基材と微粒子層との親和性、相溶性が低い場合には、基材層と微粒子層との接着性が乏しく、層間で剥がれる等の問題が生じやすい。さらに、基材と微粒子層の双方に接着性がほとんどない場合には、両者を貼り合わせることが困難であり、どちらか一方、あるいは両方に接着剤などを塗布してから貼り合わせる必要が出てくる。
【0004】
上記のようにポリマーシートに対する要求機能は年々高いものとなり、その要求を満たすため、種々のポリマーシートを貼り合せた製品が数多く上市されている。しかし、近年では、例えば、種々のポリマーシートに極薄の表面機能層が要望されるなど、別々のポリマーシートを貼り合せるだけではその要求を満足することができなくなってきている。
【0005】
本発明者らは先に、重合性モノマー及び重合性モノマーを重合して得られるポリマーに対して非相溶な非相溶性物質を含有する非相溶性物質含有重合性組成物層を、前記重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収層の少なくとも一方の面に設ければ、非相溶性物質含有重合性組成物層内で非相溶性物質が移動し、非相溶性物質偏在重合性組成物層が得られ、当該非相溶性物質偏在重合性組成物層を重合することにより、非相溶性物質偏在ポリマー層とモノマー吸収層との積層構造を有するポリマー部材が得られることを見出した。また、非相溶性物質として粒子を用いることにより、非相溶性物質偏在ポリマー層のモノマー吸収層との界面に対しての反対面表面において、粒子による凹凸を形成できることを見出した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−6817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記方法では、ポリマー層を形成する成分の他に、モノマー吸収層が別途必要となり製造工程が煩雑となることや、表面に非相溶性物質を偏在させるために積層から硬化までの間にエージングを必要としていた。さらに前記方法では、テープ又はシートを作製する際、モノマー吸収層が高架橋度のポリマーであると硬化後に、テープ又はシートの表面が自然に三次元化(例えば、しわ状、凹凸状、波状等)したり、もしくはテープ又はシート自体がカールしたりするという問題があった。
【0008】
本発明は、重合性モノマーを硬化することにより形成したポリマー硬化層の表面に当該硬化層とは異なる物質を偏在させた構造を有する多層構造の硬化多層シートを高い生産性で製造することができる方法及び当該方法により得られた硬化多層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、下記の製造方法よって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
即ち、本発明は、第一硬化性樹脂組成物(a)により形成された第一未硬化層(A)及び第二硬化性樹脂組成物(b)により形成された第二未硬化層(B)を隣接して積層して積層体(X)にする工程(1)、並びに前記積層体(X)を硬化する工程(2)を有する硬化多層シートの製造方法であって、
第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物、及び当該重合性モノマー(m1)を重合して得られるポリマー(p1)に対して非相溶な非相溶性物質(f)を含有しており、
第二硬化性樹脂組成物(b)は、前記重合性モノマー(m1)と相溶し、かつ非相溶性物質(f)とは非相溶である、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有しており、
かつ、第一硬化性樹脂組成物(a)における、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物に対する重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、第二硬化性樹脂組成物(b)における、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)に対する重合性モノマー(m2)の濃度(c2)よりも高い値であり、
前記積層工程(1)では、第一未硬化層(A)内で非相溶性物質(f)を移動させて、非相溶性物質(f)を第二未硬化層(B)とは反対側の界面又は当該界面近傍に偏って分布させ、その後に、硬化工程(2)を施すことを特徴とする硬化多層シートの製造方法、に関する。
【0011】
前記硬化多層シートの製造方法において、濃度(c1)は(m2)の濃度(c2)よりも、15重量%以上高い値であることが好ましい。
【0012】
前記硬化多層シートの製造方法において、非相溶性物質(f)としては粒子又はポリマーが好適に用いられる。
【0013】
前記硬化多層シートの製造方法において、前記硬化工程(2)を活性エネルギー線照射により行なうことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記製造方法により得られた硬化多層シート、に関する。
【発明の効果】
【0015】
上記の通り、本発明の硬化多層シートの製造方法は、積層工程(1)及び硬化工程(2)を有する。まず、積層工程(1)では、第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)を接する形態で積層して積層体(X)を得る。第一未硬化層(A)は、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物及び非相溶性物質(f)を含有する第一硬化性樹脂組成物(a)から形成されている。一方、第二未硬化層(B)は重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有する第二硬化性樹脂組成物(b)から形成されており、当該重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)は、第一硬化性樹脂組成物(a)に係る重合性モノマー(m1)と相溶し、かつ非相溶性物質(f)とは相溶しないものである。しかも、第一硬化性樹脂組成物(a)における重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、第二硬化性樹脂組成物(b)における重合性モノマー(m2)の濃度(c2)よりも高い濃度になるように制御されている。
【0016】
上記のように第一未硬化層(A)に含有されている重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、第二未硬化層(B)に含有されている重合性モノマー(m2)の濃度(c2)よりも高くなるように制御されていることから、積層体(X)では、第一未硬化層(A)中の重合性モノマー(m1)が第二未硬化層(B)に拡散するとともに、第二未硬化層(B)中のポリマー(p2)が第一未硬化層(A)に拡散する。その結果、積層体(X)において、非相溶性物質(f)が第一未硬化層(A)中で移動して、第二未硬化層(B)と反対側の界面又は該界面近傍に層状に偏って分布した偏在構造が得られる。そして、このように非相溶性物質(f)を偏在させた後に、硬化工程(2)を施すことで、非相溶性物質(f)の偏在構造を維持しつつ、重合性モノマー(m1)及び(m2)を硬化させることにより、重合性モノマー(m1)及び(m2)を硬化させた積層体(Y)、即ち、硬化多層シートを得る。
【0017】
前記のように、濃度(c1)と濃度(c2)に濃度差を設けることで、第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)の積層による簡易な方法によって、第一未硬化層(A)内で非相溶性物質(f)を偏在させることができ、硬化多層シートを簡便に作製することができる。また、本発明の硬化多層シートを形成する、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)は、いずれも重合性モノマーを含有する組成物であり、各組成物の調製が容易であり、特許文献1のように、モノマー吸収層を別途必要とすることなく、簡便に、かつ高い生産性で硬化多層シートを製造することができる。また、本発明の硬化多層シートは前記組成物(a)及び組成物(b)により形成されることから、これら組成物が硬化後、高架橋になる組成物であっても、モノマー吸収層を用いた場合のように、カール等の発生を抑えることができ、また硬化後のシート変形を抑えることができる。
【0018】
また、第一未硬化層(A)中の重合性モノマー(m1)は第二未硬化層(B)に拡散するとともに、第二未硬化層(B)中の重合性モノマー(m2)の重合物及び/又は重合性ポリマーが第一未硬化層(A)に拡散した後に、硬化工程(2)が施されるため、得られる積層体(Y)に係る硬化多層シートは、前記組成物層(A)及び(B)の各層が一体化して得られるため層間において剥離が生じることはない。
【0019】
さらには、本発明の硬化多層シートの製造方法によれば、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)に含まれる揮発性成分(例えば、有機溶剤や有機化合物など)の蒸発除去を必要としないため、環境への負荷を低減でき、環境面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の硬化多層シートの製造方法を示す概略断面図の一例である。
【図2】実施例1の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例2の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例3の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例4の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】比較例1の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例4の硬化多層シートの外観写真である。
【図8】比較例2の硬化多層シートの外観写真である。
【図9】実施例5の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例6の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例7の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】比較例3の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例4の硬化多層シートの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[硬化多層シートの製造方法]
以下に、本発明の硬化多層シートの製造方法を、図1を参照しながら説明する。本発明の硬化多層シートの製造方法では、まず、積層工程(1)で、第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)を積層して積層体(X)を得る。第一未硬化層(A)は、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物、及び非相溶性物質(f)を含有する。一方、第二未硬化層(B)は重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有する。第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)の積層は、これらの層が隣接して積層されていればよく、第二未硬化層(B)の片面又は両面に第一未硬化層(A)を積層することができる。図1は、第二未硬化層(B)の片面にのみ第一未硬化層(A)が積層する場合が記載されている場合である。また、図1では、第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)における積層の対象でない側に、支持基材(C)が設けられている場合である。
【0022】
第一未硬化層(A)中の重合性モノマー(m1)と、第二未硬化層(B)中の重合性モノマー(m2)及び重合性ポリマーは相溶性を有することから、前記積層工程(1)によって得られる積層体(X)では、第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)の積層面において、相互に他の層内に、重合性モノマー(m1)、(m2)の一部がそれぞれ拡散することができる。しかも、第一未硬化層(A)中の重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、第二未硬化層(B)中の重合性モノマー(m2)の濃度(c2)よりも高いことから、重合性モノマー(m1)の第二未硬化層(B)への拡散が大きくなり、その分、第二未硬化層(B)中のポリマー(p2)の第一未硬化層(A)への拡散が大きくなる。一方、第一未硬化層(A)内では非相溶性物質(f)が移動して、非相溶性物質(f)が第二未硬化層(B)とは反対側の界面又は当該界面近傍に偏って分布して、非相溶性物質偏在部(A11)と非相溶性物質非存在部(A12)とを有する第一拡散層(A1)が形成される。第二未硬化層(B)からは、第二拡散層(B1)が形成される。
【0023】
前記濃度(c1)は濃度(c2)よりも高い値である。濃度(c1)と濃度(c2)の濃度差は、15重量%以上であるのが好ましく、20重量%以上がより好ましく、さらには30重量%以上であるのが好ましい。前記濃度差により第一未硬化層(A)内で非相溶性物質を偏在させることができるが、前記濃度差を15重量%以上にすることで、第一未硬化層(A)内における非相溶性物質をより偏在させることができる。なお、濃度(c2)が濃度(c1)よりも高い場合においては、第一未硬化層(A)内で非相溶性物質を充分に偏在させることができない。
【0024】
前記非相溶性物質偏在部(A11)に係る非相溶性物質(f)の偏在の現象は、前述の通り、第二未硬化層(B)からのポリマー(p2)の拡散によるものと推察される。即ち、重合性モノマー(m1)が第二未硬化層(B)に拡散し、一方、ポリマー(p2)が第一未硬化層(A)へ拡散することによって、第二未硬化層(B)の方向には拡散できない非相溶性物質(f)が、第一未硬化層(A)中に残存するような形で偏在していくものと考えられる。
【0025】
上記の通り、前記積層体(X)において第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)は、相互に各成分の拡散が生じているため、第一拡散層(A1)の非相溶性物質非存在部(A12)と第二拡散層(B1)の界面は確認できないが(これらの複合箇所を図1ではAB1として示している)、図1では、便宜上、拡散前の状態を破線で示している。
【0026】
次いで、積層体(X)に、硬化工程(3)を施して、第一拡散層(A1)及び第二拡散層(B1)中の前記重合性モノマー(m1)及び重合性モノマー(m2)を少なくとも重合して、前記偏在構造が維持されたまま硬化した、非相溶性物質偏在部(A21)を有する第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)が形成された積層体(Y)を得る。第一硬化層(A2)では、非相溶性物質偏在部(A21)と非相溶性物質非存在部(A22)を有する。なお、積層体(Y)でも、第一硬化層(A2)の非相溶性物質非存在部(A22)と第二硬化層(B2)の界面は確認できないが(これらの複合箇所を図1ではAB2として示している)、図1では、上記同様に、便宜上、拡散前の状態を破線で示している。
【0027】
[積層工程(1)]
積層工程(1)では、第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)が接するように積層して、第一未硬化層(A)/第二未硬化層(B)、の構造を少なくとも有する積層体(X)を作製する。
【0028】
(第一硬化性樹脂組成物(a))
第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合可能な重合性モノマー(m1)又はその部分重合物及び非相溶性物質(f)を少なくとも含んでいる。第一硬化性樹脂組成物(a)には適宜に重合開始剤を含有することができる。また、重合性モノマー(m1)を光硬化させる場合には、第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合開始剤として光重合開始剤を含むことができる。なお、部分重合物は、重合性モノマー(m1)の一部分が重合した部分重合組成物である。第一硬化性樹脂組成物(a)が光重合開始剤を含む場合は、取り扱い性、塗工性等の点から、重合性モノマー(m1)の一部分が重合した部分重合組成物を好適に利用することできる。
【0029】
第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物、及び非相溶な非相溶性物質(f)を含有するが、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物に対する重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、50〜100重量%に制御するのが好ましい。濃度(c1)は、70〜100重量%が好ましく、さらには80〜100重量%が好ましい。なお、第一硬化性樹脂組成物(a)が、重合性モノマー(m1)の部分重合物を含有しない場合が、濃度(c1)が100重量%になる。濃度(c1)は、第二硬化性樹脂組成物(b)に係る濃度(c2)よりも高くなるように設定され、好ましくは15重量%以上高くなるように設定される。
【0030】
重合性モノマー(m1)は、ラジカル重合やカチオン重合等の反応機構を問わず、光エネルギーや熱エネルギーを利用して重合可能な化合物であることが重要である。このような重合性モノマー(m1)は、例えば、アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー等のラジカル重合性モノマー;エポキシ系樹脂を形成するエポキシ系モノマー、オキセタン系樹脂を形成するオキセタン系モノマー、ビニルエーテル系樹脂を形成するビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合性モノマー;ウレタン系樹脂を形成するポリイソシアネートとポリオールとの組み合わせ;ポリエステル系樹脂を形成するポリカルボン酸、ポリオールとの組み合わせ等が挙げられる。なお、重合性モノマー(m1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合性モノマー(m1)を重合して得られるポリマー(p1)としては、前記各種ポリマーが例示される。
【0031】
重合性モノマー(m1)としては、重合速度が速く、生産性に優位である点から、アクリル系モノマーが好適に用いられる。従って、前記ポリマー(p1)としては、アクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0032】
また、前記ポリマー(p1)に係るアクリル系ポリマー、エポキシ樹脂、オキセタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂は、それぞれアクリル系感圧性接着剤(粘着剤)のベースポリマー、エポキシ系感圧性接着剤のベースポリマー、オキセタン系感圧性接着剤のベースポリマー、ビニルエーテル系感圧性接着剤のベースポリマー、ウレタン系感圧性接着剤のベースポリマー、ポリエステル系感圧性接着剤のベースポリマー等として機能する。このため、第一硬化性樹脂組成物(a)は、粘着剤組成物として用いることができる。第一硬化性樹脂組成物(a)が粘着剤組成物の場合には、第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)として粘着剤層が形成される。
【0033】
アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルを用いることができ、特にアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを好適に用いることができる。なお、上記の「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。
【0034】
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、公知乃至慣用の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中から適宜選択して用いることができる。
【0035】
直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が2〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数が2〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルや芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどがあげられる。脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルや、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステルなどが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、上記(メタ)アクリル酸エステルはアクリル系ポリマーの主たるモノマー成分(モノマー主成分)として用いられているので、(メタ)アクリル酸エステル(特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)のモノマー割合(重合性モノマー成分中の含有量)は、硬化多層シートの第一硬化層(A2)に粘着が求められる用途で、前記硬化多層シートを用いる場合、例えば、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して70重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上である。つまり、第一硬化性樹脂組成物(a)において、(メタ)アクリル酸エステルは、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物の全量に対して70重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは80重量%以上である。
【0038】
また第一硬化性樹脂組成物(a)には、重合性モノマー(m1)として、極性基含有モノマーや多官能性モノマー等の各種の共重合性モノマーが用いられていてもよい。例えば、共重合性モノマーを用いることにより、例えば、第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)の被着体への接着力を向上させたり、前記第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)の凝集力を高めたりすることができる。共重合性モノマーは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
前記極性基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルアクリレート、ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸含有モノマーなどがあげられる。また、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアクリル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレート、等のモノマーが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。極性基含有モノマーとしては、上記の中でも、カルボキシル基含有モノマーが好適であり、アクリル酸が特に好適である。
【0040】
極性基含有モノマーの使用量としては、得られる硬化多層シートの目的、用途によって適宜調整することができるが、例えば硬化多層シートの第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)に粘着性が求められる用途で、前記硬化多層シートを用いる場合、重合性モノマー又はその部分重合物の全量に対して30重量%以下が好ましく、さらには1〜30重量%が好ましく、さらには2〜20重量%が好ましい。極性基含有モノマーの割合が30重量%を超えると、得られるポリマーの凝集力が高くなりすぎ、例えば、第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)が硬くなりすぎ、密着性が低下するおそれがある。また、極性基含有モノマーの使用量が少なすぎると重合性モノマー全量に対して1重量%未満であると、得られるポリマーの凝集力が低下し、高いせん断力が得られないおそれがある。
【0041】
前記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
多官能性モノマーは得られる硬化多層シートの目的、用途によって適宜調整することができ、得られるポリマー層に凝集力を付与したり、形状維持したりする場合に好適である。硬化多層シートの第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)に粘着性が求められる用途で、前記硬化多層シートを用いる場合、多官能性モノマーの割合は、例えば、アクリル系重合性組成物では、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物の全量に対して2重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜2重量%、さらに好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性モノマーの割合が、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物の全量に対して2重量%を超えると、得られるポリマー(p1)の凝集力が高くなりすぎ、脆くなりすぎる点で不具合を生じる場合がある。また、多官能性モノマーの割合が少なすぎると(重合性モノマー(m1)又はその部分重合物の全量に対して0.01重量%未満であると)、前記多官能性モノマーを用いる目的を達成できない場合がある。
【0043】
また、硬化多層シートの第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)に硬い物性が求められる用途(例えば、フィルム用途やハードコート用途など)で、前記硬化多層シートを用いる場合、上記(メタ)アクリル酸エステルのモノマー割合(モノマー成分中の含有量)は、例えば、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して95重量%以下が好ましく、さらには0.01〜95重量%が好ましく、さらには1〜70重量%が好ましい。
【0044】
また、硬化多層シートの第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)に硬い物性が求められる用途で、前記硬化多層シートを用いる場合、前記極性基含有モノマーの割合は、重合性モノマー又はその部分重合物の全量に対して95重量%以下が好ましく、さらには0.01〜95重量%が好ましく、さらには1〜70重量%が好ましい。極性基含有モノマーの使用量が95重量%を超えると、例えば耐水性などが十分でなくなり、硬化多層シートとして使用環境(湿気、水分など)に対する品質変化が大きくなるおそれがある。また、極性基含有モノマーの割合が少なすぎると(例えば0.01重量%以下)、硬い物性を得る場合には、ガラス転移温度(Tg)の高い(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニルアクリレートなど)や多官能性モノマーの添加量が多くなり、得られた硬化多層シートが脆くなりすぎるおそれがある。
【0045】
また、硬化多層シートの第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2)に硬い物性が求められる用途で、前記硬化多層シートを用いる場合、多官能性モノマーの割合は、重合性モノマー又はその部分重合物の全量に対して95重量%以下が好ましく、さらには好ましくは0.01〜95重量%であり、さらに好ましくは1〜70重量%である。多官能性モノマーの使用量が重合性モノマー又はその部分重合物の全量に対して95重量%を超えると、重合時の硬化収縮が大きくなり均一なフィルム状あるいはシート上の硬化多層シートを得られなくなるおそれや、得られた硬化多層シートが脆くなりすぎるおそれがある。また、多官能性モノマーの使用量が少なすぎると(例えば0.01重量%以下であると)、十分な耐溶媒性や耐熱性を有する硬化多層シートを得られなくなるおそれがある。
【0046】
また、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに用いることができる、上記の極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル;などが挙げられる。
【0047】
(非相溶性物質(f))
非相溶性物質(f)としては、重合性モノマー(m1)を重合して得られるポリマー(p1)に対して非相溶(溶解しない)であり、かつ第二硬化性樹脂組成物(b)に用いられる重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)に対しても非相溶な物質である限り特に限定されず、無機物(無機物質)であっても有機物(有機物質)であってもよい。また、非相溶性物質(f)は、固体であってもよいし、流動性を有していてもよい。
【0048】
あるポリマーに対してある物質が非相溶性物質(f)であるか否かの判断は、目視、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、X線回析などにより、本発明によらない一般的な方法(例えば、ある物質を重合性モノマーに溶解させ、重合性モノマーを重合してポリマー化して判断する方法;ポリマーをそのポリマーを溶解する溶媒に溶解し、そこへ物質を添加し、攪拌後溶媒を除去して判断する方法;ポリマーが熱可塑性ポリマーであればポリマーを加熱溶解して、そこへ物質を配合し、冷却後判断する方法など)において、そのポリマー中の物質又はその集合体がどの程度の大きさで分散しているかにより判断することができる。その判断基準は、物質又はその集合体が、球や立方体、不定形状等の球体状に近似できる場合には5nm以上の直径を有すること、また棒状や薄層状、直方体状等の柱体状に近似できる場合には最も長い辺の長さが10nm以上であることである。
【0049】
より具体的なポリマー中に物質又はその集合体を分散させる方法としては、例えば、ポリマーを構成する重合性モノマー:100重量部、光重合開始剤:0.5重量部、物質又はその集合体:50重量部を添加あるいは均一分散させた後、PETフィルム上に10〜500μm程度の厚さにコーティングして、窒素等の不活性ガス中あるいはカバーフィルムで酸素の影響を排除してブラックライトによる紫外線照射で重合させる方法;予めポリマーを溶液重合や紫外線重合など任意の方法で作製しておき、該ポリマーを溶剤に溶解させた溶媒系に、ポリマー100重量部に対して50重量部に相当する量の物質又はその集合体を添加、攪拌などにより均一分散して、PET上に塗布して乾燥による溶剤除去後の厚さを10〜500μm程度とする方法などが挙げられる。
【0050】
物質をポリマー中に分散した際において、そのポリマー中の物質又はその集合体が、球や立方体、不定形状等の球体状に近似でき、該球体状の物質又はその集合体が5nm以上の直径を有する場合にはそのポリマーに対する非相溶性物質であるとみなすことができ、またそのポリマー中の物質又はその集合体が、棒状や薄層状、直方体状等の柱体状に近似でき、該柱体状の物質又はその集合体の最も長い辺の長さが10nm以上であるにはそのポリマーに対する非相溶性物質であるとみなすことができる。
【0051】
非相溶性物質(f)としての無機物としては、例えば、下記で例示する無機粒子(微粒子、微粒子粉末)等が挙げられる。
【0052】
非相溶性物質である粒子は、非相溶性物質として粒子を用いた硬化多層シートにおいて第一硬化層(A2)の非相溶性物質偏在部(A21)において粒子による表面凹凸の形成に寄与することができたり、表面凹凸シート利用面表面での凹凸構造の形成に寄与することができる。粒子としては、例えば、シリカ、シリコーン(シリコーンパウダー)、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、タルク、層状ケイ酸塩、粘土鉱物、金属粉(例えばニッケル粉末、アルミニウム粉末、鉄粉末、マグネシウム粉末、銅粉末など)、チタン酸バリウム、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、ガラス、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン、チタン白、カーボンブラック等の無機粒子;ポリエステルビーズ、ナイロンビーズ、シリコンビーズ、ウレタンビーズ、塩化ビニリデンビーズ、アクリルバルーン等の有機粒子;架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂粒子;無機−有機ハイブリット粒子、熱膨張性微小球などが挙げられる。なお、粒子は、中実体、中空体(バルーン)のいずれであってもよい。また、粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
上記熱膨張性微小球としては、例えば、容易にガス化して熱膨張性を示す物質を殻形成物質からなる殻の内部に内包させたマイクロカプセル等が挙げられる。前記熱膨張性を示す物質としては、例えばイソブタンやプロパン、ペンタンの如く容易にガス化する物質が挙げられる。また、前記殻形成物質としては、例えば塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体やポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンの如き熱溶融性物質、熱膨張で破壊する物質等が挙げられる。熱膨張性物質を殻の内部に内包する方法としては、例えばコアセルベーション法や界面重合法等の方式が挙げられる。なお熱膨張性微小球には、マイクロスフェア(商品名、松本油脂製薬社製)などの市販物もある。
【0054】
粒子の粒径(平均粒子径)としては、特に制限されないが、例えば、レーザー散乱法や動的光散乱法におけるメジアン径で0.5〜500μmが好ましく、さらに好ましくは1〜300μmさらに好ましくは3〜100μmの範囲である。また、粒子は、粒径の異なる粒子を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
粒子の形状は、真球状や楕円球状等の球状、不定形状、針状、棒状、平板状等のいずれの形状であってもよい。一般的には、粒子は、第一硬化層(A2)の非相溶性物質偏在部(A21)表面の粒子による表面凹凸の凹凸構造や表面凹凸シートの利用面表面の凹凸構造の形状が揃いやすい真球状や真球状に近い高球形度のものが好ましい。また、粒子は、その表面に、孔や突起などを有していてもよい。また、粒子は、1種の形状のみを選択して用いてもよいし、形状の異なる粒子を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0056】
なお、粒子の表面には、各種表面処理(例えば、シリコーン系化合物やフッ素系化合物等による低表面張力化処理など)が施されていてもよい。
【0057】
また、非相溶性物質としての有機物としては、例えばアクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、フッ素系樹脂、シリコーン、天然ゴム、合成ゴム[特に、スチレン−イソプレン−スチレンゴム(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンゴム(SIBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム(SBS)又はスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンゴム(SEBS)などスチレン成分を含有する合成ゴム]等のポリマー類やそのオリゴマー類;ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などタッキファイヤー類(粘着付与樹脂類);界面活性剤、酸化防止剤、有機顔料、可塑剤、溶剤(有機溶剤)等の液体などが挙げられる。さらに、水や水溶液(例えば、塩水溶液、酸水溶液など)も非相溶性物質として用いられる。なお、前記有機物は粒子として用いることができる。
【0058】
なお、本発明おいて、非相溶性物質(f)は、硬化多層シート中の第一硬化層(A2)において、第二硬化層(B2)と反対の界面付近に層状形態で偏って分布している。このような非相溶性物質(f)が分布する非相溶性物質偏在部(A21)に係る部分(前記層状分布部分)の厚みは、非相溶性物質の使用量を調整することにより制御することができる。
【0059】
第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合性モノマー(m1)及び非相溶性物質(f)を含有し、その割合は特に制限されないが、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物100重量部に対して、非相溶性物質(f)0.001〜100重量部であるのが好ましく、さらに好ましくは0.01〜70重量部、さらに好ましくは0.1〜50重量部である。非相溶性物質(f)の割合が100重量部を超えるような使用量であると、硬化多層シートの作製が困難となる場合や作製後の硬化多層シートで強度の問題が生じることがある。なお、0.001重量部未満であると、積層工程(1)において積層体(X)を得た後にも、第一拡散層(A1)、さらには第一硬化層(A2)を得難くなる。
【0060】
重合開始剤は、必要に応じて用いることができる。重合開始剤は、硬化工程(2)に応じて、例えば熱重合開始剤や光重合開始剤を選択して用いることができる。重合開始剤を用いると、積層工程(1)により形成された、非相溶性物質偏在部(A11)と非相溶性物質非存在部(A12)とを有する第一拡散層(A1)の偏在構造を維持したまま、第一拡散層(A1)及び第二拡散層(B1)中の重合性モノマー(m1)及び重合性モノマー(m2)を容易に硬化させることができる。
【0061】
光重合開始剤としては、特に制限されず、例えばベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。光重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0062】
具体的には、ケタール系光重合開始剤には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)など]等が含まれる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)など]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)などが使用できる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0063】
光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、第一硬化性樹脂組成物(a)中の重合性モノマー(m1)又はその部分重合物100重量部に対して5重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
【0064】
なお、熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤(例えば有機過酸化物/バナジウム化合物;有機過酸化物/ジメチルアニリン;ナフテン酸金属塩/ブチルアルデヒド、アニリンあるいはアセチルブチロラクトン等の組み合わせなど)などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。なお、レドックス系重合開始剤を熱重合開始剤として用いれば、常温で重合させることが可能である。熱重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、第一硬化性樹脂組成物(a)中の重合性モノマー(m1)又はその部分重合物100重量部に対して5重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
【0065】
第一硬化性樹脂組成物(a)には、必要に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料や染料など)、溶剤(有機溶剤)などが挙げられる。
【0066】
例えば、第一硬化層(A2)の意匠性、光学特性等の観点から、光重合反応等の重合反応を阻害しない程度の顔料(着色顔料)を使用することができる。黒色が望まれる場合には、着色顔料として、カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックの使用量としては、着色度合いや上記光重合反応を阻害しない観点から、例えば、第一硬化性樹脂組成物(a)の重合性モノマー100重量部又はその部分重合物に対して0.15重量部以下が好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.15重量部、さらには好ましくは0.02〜0.1重量部である。
【0067】
第一硬化性樹脂組成物(a)は、上記各成分を均一に混合・分散させることにより調製することができる。この第一硬化性樹脂組成物(a)は、通常、基材上に塗布するなどしてシート状に成形するので、塗布作業に適した適度な粘度を持たせておくのがよい。第一硬化性樹脂組成物(a)の粘度は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤等の各種ポリマーを配合することや、第一硬化性樹脂組成物(a)中の重合性モノマー(m1)を光の照射や加熱などにより一部重合させた部分重合物にすることにより調整することができる。なお、望ましい粘度は、BH粘度計を用いて、ローター:No.5ローター、回転数10rpm、測定温度:30℃の条件で設定された粘度として、5〜50Pa・s、より好ましくは10〜40Pa・sである。粘度が5Pa・s未満であると、基材上に塗布したときに液が流れてしまい、50Pa・sを超えていると、粘度が高すぎて塗布が困難となる。
【0068】
(第二硬化性樹脂組成物(b))
第二硬化性樹脂組成物(b)は、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有する。
【0069】
重合性モノマー(m2)は、重合性モノマー(m1)と相溶し、かつ非相溶性物質(f)とは相溶しないものが用いられる。重合性モノマー(m2)としては、重合性モノマー(m1)と同様のものを例示できる。また相溶性の観点から、また重合性モノマー(m2)を1種または2種以上用いる場合において、重合性モノマー(m2)の少なくとも1種が、重合性モノマー(m1)で用いられる1種または2種以上のうちの少なくとも1つと共通することが好ましい。また、重合性モノマー(m2)についても、重合性モノマー(m1)と同様に(メタ)アクリル系モノマーであることが好ましく、硬化後には粘着剤組成物層を形成するものが好ましい。
【0070】
また第二硬化性樹脂組成物(b)は、重合性モノマー(m2)に加えて、ポリマー(p2)を含有する。ポリマー(p2)としては、重合性モノマー(m1)と相溶する方がポリマー(p2)の拡散の点から好ましく、かつ非相溶性物質(f)とは相溶しない各種ポリマーが用いられる。ポリマー(p2)は、重合性モノマー(m1)から得られるポリマー(p1)と同じであってもよく、異なっていてもよいが、ポリマー(p2)がポリマー(p1)とは異なるものであることが硬化多層シートとしての機能の点から好ましい。
【0071】
ポリマー(p2)としては、例えば、重合性モノマー(m2)の重合物及び/又は重合性ポリマーを用いることができる。第二硬化性樹脂組成物(b)が、重合性モノマー(m2)に加えて重合性モノマー(m2)の重合物を含有する場合には、第二硬化性樹脂組成物(b)としては、重合性モノマー(m2)の一部分を重合した部分重合組成物を好適に利用することできる。一方、第二硬化性樹脂組成物(b)が、重合性モノマー(m2)に加えて重合性ポリマーを含有する場合には、重合性モノマー(m2)に重合性ポリマーを配合することにより、第二硬化性樹脂組成物(b)が調製される。その他、ポリマー(p2)としては、重合性モノマー(m2)の重合物以外のポリマーを例示できるが、当該ポリマーを用いる場合には、重合性モノマー(m2)に加えて当該ポリマーを配合することによりは、第二硬化性樹脂組成物(b)が調製される。
【0072】
第二硬化性樹脂組成物(b)は、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有するが、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)に対する重合性モノマー(m2)の濃度(c2)は1〜85重量%に制御するのが好ましい。濃度(c2)は15〜80重量%が好ましく、さらには25〜75重量%が好ましい。前記の通り、第一硬化性樹脂組成物(a)に係る濃度(c1)は、第二硬化性樹脂組成物(b)に係る濃度(c2)よりも高くなるように設定され、好ましくは15重量%以上高くなるように設定される。
【0073】
重合性ポリマーとしては、ラジカル重合やカチオン重合等の反応機構を問わず、光エネルギーや熱エネルギーを利用して重合可能なポリマーおよびオリゴマーが用いられる。このような重合性ポリマーとしては、例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を付加反応したウレタンポリマーにヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを付加反応して得られるウレタン(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル系モノマーやビニルモノマーを重合した共重合(メタ)アクリルポリマーに(メタ)アクリロイル基をペンダントさせて得られるポリ(メタ)アクリル(メタ)アクリレート;エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の付加反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート;ジオールとフマル酸やマレイン酸等の不飽和ニ塩基酸との組合せで得られる不飽和ポリエステル;ハイパーブランチポリマー、ビニルエーテル化合物などが挙げられる。中でも、ウレタン(メタ)アクリレートが好適に用いられる。また、重合性ポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系モノマー中で作製したウレタン(メタ)アクリレートを、第二硬化性樹脂組成物(b)としてそのまま使用することもできる。一般的に、市販のウレタン(メタ)アクリレートは粘度が高くハンドリング性が悪いことから、溶剤もしくは重合性モノマー(m2)で希釈し使用する場合が多い。この方法によれば、溶剤もしくは重合性モノマー(m2)で希釈する必要がなく、(メタ)アクリル系モノマー中で作製することから(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性、およびシートの物性を任意に変化させることもできる。具体的な方法としては、(メタ)アクリル系モノマー中でポリオールとポリイソシアネートを付加反応してウレタンポリマーを作製し、水酸基含有アクリルモノマーなどを付加反応して作製する方法が挙げられる。
【0075】
ウレタンポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる。ポリオールの水酸基とポリイソシアネートとの反応には、触媒を用いても良い。例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクトエ酸スズ、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン等の、ウレタン反応において一般的に使用される触媒を用いることができる。
【0076】
ポリオールとしては、1分子中に2個またはそれ以上の水酸基を有するものが望ましい。低分子のポリオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価または4価のアルコールなどが挙げられる。また、高分子のポリオールとしてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、カーボネートポリオール、カプロラクトンポリオールなどがある。これらの中では、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、カーボネートポリオールが好ましい。ポリエ−テルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては上記の2価のアルコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2塩基酸との重縮合物が挙げられる。その他、ポリカプロラクトン等のラクトン系開環重合体ポリオールポリカーボネートジオールなどがある。アクリルポリオールとしては(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーの共重合体の他、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーと他の(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などが挙げられる。エポキシポリオールとしてはアミン変性エポキシ樹脂などがある。これらのポリオール類は単独あるいは併用して使用することができる。
【0077】
ポリイソシアネートとしては芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体などが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンポリイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。これらのポリイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。ウレタン反応性、重合性モノマーとの相溶性等の観点から、ポリイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択することができる。
【0078】
ウレタンポリマーを形成するためのポリオール成分とポリイソシアネート成分の使用量は特に限定されるものではないが、例えば、ポリオール成分の使用量は、ポリイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が0.8〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましい。NCO/OHが0.8未満、あるいは3.0より大きいと、分子量が低下し易く、本発明の目的である機能性多層シートが得られない場合がある。
【0079】
前記ウレタンポリマーに対し、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを添加し、ポリマー末端をアクリルロイル基とすることが好ましい。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを添加することにより、ウレタンポリマーの分子内にアクリロイル基を導入することができ、アクリル系モノマーとの共重合性を付与することができる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、重合性モノマー(m1)で例示した、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が用いられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、さらには0.1〜5重量部であるのが好ましい。
【0080】
なお、第二硬化性樹脂組成物(b)は、第一硬化性樹脂組成物(a)で例示した重合開始剤、添加剤を、第一硬化性樹脂組成物(a)と同様の範囲で用いることができる。但し、使用量の基準は、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)である。
【0081】
≪積層体(X)≫
前記積層体(X)の作製は特に限定されないが、例えば、(I)多層ダイスにより、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)を一括で支持基材上に塗布して、第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)を一括で形成する方法;(II)第一硬化性樹脂組成物(a)又は第二硬化性樹脂組成物(b)を支持基材上に塗布して、第一未硬化層(A)又は第二未硬化層(B)を形成した後、さらにその層に、当該層とは別の層に係る第二硬化性樹脂組成物(b)又は第一硬化性樹脂組成物(a)を塗布して、第二未硬化層(B)又は第一未硬化層(A)を形成する方法;(III)第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)を、それぞれ別の支持基材上に塗布して、第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)を形成した後、それらの層を貼り合わせて積層する方法、等が挙げられる。
【0082】
上記方法(I)はいわゆる共押出法であり、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)を並行して押出しながら第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)とを互いに隣接させて一括で形成することができる。共押出法は、押出成形機及び共押出し用ダイを用いて、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)をそれぞれ供給しつつインフレーション法、Tダイ法等に準じて行うことができる。
【0083】
上記方法(II)及び(III)において、第一硬化性樹脂組成物(a)及び第二硬化性樹脂組成物(b)の塗布に際しては、例えば、慣用のコーター(例えば、コンマロールコーター、ダイロールコーター、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0084】
なお、上記方法(I)〜(III)等により、第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)を積層した後、直ちに硬化工程(2)を行ってもよいが、必要に応じて積層工程(1)と硬化工程(2)との間に、積層した各層をそのままの状態で放置する放置工程を設けてもよい。その際の放置時間としては特に限定されないものの、10〜500秒が好ましく、60〜300秒がより好ましい。
【0085】
(第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B))
第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)の各層の厚みは特に限定されないが、例えば、20〜2000μmであり、好ましくは30〜1500μm、さらに好ましくは50〜1000μmである。第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)の厚さは同じであっても異なっていてもよい。第一未硬化層(A)及び第二未硬化層(B)を積層した積層体(X)の厚みは、特に限定されないが、例えば、20〜3000μmであり、好ましくは30〜2000μmであり、さらに好ましくは50〜1000μmである。
【0086】
(支持基材)
前記積層体(X)の作製に用いられる支持基材は、剥離性を有していてもよいし、あるいは剥離性を有していなくてもよい。なお、得られる硬化多層シートにおいて、第一未硬化層(A)から得られる第一硬化層(A2)の表面および第二未硬化層(B)から得られる第一硬化層(B2)の表面は支持基材で保護されていてもよい。
【0087】
支持基材としては、硬化工程(2)において、例えば、活性エネルギー線を用いる場合には、活性エネルギー線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。また、支持基材の表面は、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0088】
支持基材の厚みは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的に、1〜1000μmであり、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0089】
硬化多層シートを使用する際、支持基材は、剥がされてもよいし、あるいは剥がされることなくそのままの状態を維持し、硬化多層シートの一部を構成していてもよい。なお、本発明において、光重合法を用いる場合、空気中の酸素により反応が阻害されるため、硬化工程(2)では、支持基材としてカバーフィルムを用いて空気中の酸素と遮断することが好ましい。
【0090】
このようなカバーフィルムとしては、酸素を透過し難い薄葉体であれば特に制限されないが、光重合反応を用いる場合は透明なものが好ましく、例えば慣用の剥離紙などを使用することができる。具体的には、カバーフィルムとしては、例えば離型処理剤(剥離処理剤)による離型処理層(剥離処理層)を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。なお、低接着性基材では、両面が離型面と利用することができ、一方、離型処理層を有する基材では、離型処理層表面を離型面(離型処理面)として利用することができる。
【0091】
カバーフィルムとしては、例えば、カバーフィルム用基材の少なくとも一方の面に離型処理層が形成されているカバーフィルム(離型処理層を有する基材)を用いてもよいし、カバーフィルム用基材をそのまま用いてもよい。
【0092】
このようなカバーフィルム用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルム等のプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や、紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。カバーフィルム用基材としては、透明性の高いプラスチック系基材フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム)が用いられたカバーフィルム用基材を好適に用いることができる。
【0093】
離型処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系離型処理剤、フッ素系離型処理剤、長鎖アルキル系離型処理剤などを用いることができる。離型処理剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。なお、離型処理剤により離型処理が施されたカバーフィルムは、例えば、公知の形成方法により、形成される。
【0094】
[硬化工程(2)]
本発明では、前記第一拡散層(A1)及び第二拡散層(B1)中の前記重合性モノマー(m1)及び重合性モノマー(m2)、さらにはポリマー(p2)が重合性ポリマーを含む場合には当該重合性ポリマー、を硬化する工程(3)を施して、第一硬化層(A2)と第二硬化層(B2)との積層体(Y)、即ち、硬化多層シートを得る。硬化工程(2)は、例えば、光照射により行なうことができる。光照射は、前記重合性モノマー(m1)、重合性モノマー(m2)、重合性ポリマー(p2)を重合することできれば、光源、照射エネルギー、照射方法、照射時間等について、特に制限されることはない。
【0095】
光照射に用いる活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。なお、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは、前記重合性モノマー(m1)、(m2)、重合性ポリマー(p2)を重合することができる限り、特に制限されることはない。
【0096】
活性エネルギー線の照射装置としては、特に制限はないが、例えば蛍光ケミカルランプ、ブラックライトランプ、殺菌ランプ、ケミカルランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、EB照射装置などが挙げられる。
【0097】
また、硬化工程(2)を加熱により行なうことができる。加熱する方法としては、例えば公知の加熱方法(例えば、電熱ヒーターを用いた加熱方法、赤外線等の電磁波を用いた加熱方法など)から適宜選択できる。
【0098】
[硬化多層シート]
前記積層体(Y)の第一硬化層(A2)において、非相溶性物質(f)が偏在する界面又は当該界面近傍(非相溶性物質偏在部:A21)の厚みは、前記第一未硬化層(A)(積層前)の厚みに対して、80%以下であることが好ましい。
【0099】
非相溶性物質偏在部(A21)の厚みは、前記第一未硬化層(A)の厚みに対する厚み比率は80%以下が好ましく、さらに好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。80%を超えるような厚みであると、第二硬化層(B2)との密着性に問題が生じる恐れや、第一硬化層(A2)の強度に問題を生じるおそれがある。第一硬化層(A2)における非相溶性物質偏在部(A21)の厚みは、第一硬化性樹脂組成物(a)に含ませる非相溶性物質(f)の量を調整することなどにより制御することができる。
【0100】
第一硬化層(A2)において、非相溶性物質偏在部(A21)では、非相溶性物質(f)と重合性モノマー(m1)、重合性モノマー(m2)、さらにポリマー(p2)が硬化したポリマー成分とが混在している。このため、当該部分では、前記ポリマー成分に基づく特性、非相溶性物質(f)が元来有する特性、非相溶性物質(f)が偏在することに基づく特性を発揮することができる。
【0101】
第一硬化層(A2)のポリマー成分に基づく特性としては、柔軟性、ハードコート性、粘着性、応力緩和性、耐衝撃性などが挙げられる。また、例えばポリマー成分として粘着剤成分を用いた際の粘着性(感圧接着性)などが挙げられる。非相溶性物質(f)が元来有する特性としては、特定の機能(例えば、膨張性、収縮性、吸収性、発散性、導電性等)を有する非相溶性物質を用いた際の該特定の機能が挙げられる。非相溶性物質(f)が偏在することに基づく特性とは、例えば、ポリマー成分として粘着剤成分を用いた際の非相溶性物質(f)の含有量を調整することによる粘着性(感圧接着性)の制御、着色等の意匠性、非相溶性物質として粒子を用いた際の表面凹凸の付与や該表面凹凸に基づく特性(例えば、再剥離性、アンチブロッキング性、アンチグレア特性、意匠性、光散乱性など)などが挙げられる。また、膨張性、収縮性、吸収性、発散性、導電性等の性質を保持したまま、基材の特性、例えば、柔軟性、ハードコート性、粘着性、応力緩和性、耐衝撃性などを有することが挙げられる。
【0102】
硬化多層シートの形態は、特に制限されず、通常シート状やテープ状の形態を有する。なお、第一硬化層(A2)及び/又は第二硬化層(B2)として粘着剤層(感圧性接着剤層)を形成した場合、硬化多層シートを粘着テープ又はシート(「テープ又はシート」を単に「テープ」あるいは「シート」と称する場合がある)として用いることができる。なお、第一硬化層(A2)、第二硬化層(B2)は両方を粘着剤層とすることができ、またいずれか一方を基材層とすることができる。具体的には、硬化多層シートとして、粘着剤層/粘着剤層の両面テープ、基材層/粘着剤層の片面粘着テープ、粘着剤層/基材/粘着剤層の両面テープ等を作製することができる。
【0103】
また、硬化多層シートに公知の粘着剤(感圧性接着剤)(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤など)による粘着剤層(感圧性接着剤層)を設けることでも、硬化多層シートを粘着テープ又はシートとして用いることができる。
【0104】
硬化多層シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0105】
本発明の硬化多層シートは、非相溶性物質の種類やその量、第一硬化層(A2)のポリマーの種類やその厚さ等を調整することにより、様々な特性を発揮するため、広範な分野で用いることができる。本発明の製造方法により得られた硬化多層シートは、非相溶性物質を選択することで各種用途に適用される各種部材として用いることができる。例えば、非相溶性物質として粒子を用いた場合には、表面に当該粒子に起因する凹凸を形成した表面凹凸部材として好適に用いられる。さらに、第一硬化層(A2)を粘着剤層とし、非相溶性物質として熱膨張性微小球を用いた場合には、例えば、電子系部品類および半導体系部品類の加工工程で用いられる加熱剥離型粘着シートとして好適に用いられる。また、例えば、非相溶性物質としてガスバリア性物質を用いた場合には、ガスバリア性部材として好適に用いられる。特に、水蒸気ガスバリア用、酸素ガスバリア用のガスバリア性部材として好適である。また、非相溶性物質が難燃性を有する場合には難燃性部材として好適に用いられる。加えて、非相溶性物質としてフッ素系樹脂やシリカ粒子などの表面保護機能を有する物質を用いた場合には、例えば、車両などの塗膜の表面保護部材として好適に用いられる。また、硬化層を粘着剤層により形成することで粘着テープ又はシートとして用いられる。その他、本発明の硬化多層シートは、導電部材、光拡散部材等に用いられる。従って、本発明の製造方法により得られた硬化多層シートは、例えば、光学シート、バリアシート、難燃性シート、電子回路、パワーエレクトロニクス材料、粘着テープ又はシート、医療分野用途などで好適に用いることができる。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0107】
なお、以下の各例では支持基材としては、いずれも、片面がシリコーン系離型処理された、厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「MRN38」,三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製)を用いた。
【0108】
(製造例1:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
ブチルアクリレート(以下、BAと略す)100重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製,商品名「イルガキュア651」)0.1重量部、及び連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.17重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた4つ口のフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、部分的に光重合(ポリマー濃度67重量%)させることによって、BAプレポリマーを含む組成物を得た(以下、この組成物をシロップ(s1)という)。シロップ(s1)100重量部に、BAを45重量部加えて、BAプレポリマー濃度46%の組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(b1)という)。シロップ(b1)に対するBA濃度は54重量%である。
【0109】
(製造例2:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
シロップ(s1)100重量部に、BAを120重量部加え、BAプレポリマー濃度30%の組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(b2)という)。シロップ(b2)に対するBA濃度は70重量%である。
【0110】
(製造例3:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
シロップ(s1)100重量部に、BAを14重量部加え、BAポリマー濃度59%の組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(b3)という)。シロップ(b3)に対するBA濃度は41重量%である。
【0111】
(製造例4:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
冷却管、温度計及び攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレートを80重量部、BAを20重量部、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG650,三菱化学株式会社製)を68.4重量部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ0.01重量部を投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン株式会社製)を25.5重量部滴下し、65℃で5時間反応させ、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらに2−ヒドロキシエチルアクリレート6.1重量部を投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。さらに、光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製,商品名「イルガキュア651」)を0.3重量部加えて組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(b4)という)。なお、前記ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であり、シロップ(b4)に対するウレタンポリマー濃度は50重量%であり、(メタ)アクリル系モノマーの濃度は50重量%である。
【0112】
(製造例5:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
BA100重量部、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製,商品名「イルガキュア651」)0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた4つ口のフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、部分的に光重合(ポリマー濃度11重量%)させることによって、BAプレポリマーを含む組成物を得た(以下、この組成物をシロップ(b5)という)。シロップ(b5)に対するBA濃度は89重量%である。
【0113】
(製造例6:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
シロップ(b5)100重量部に、平均粒径8μmの架橋ポリメタクリル酸メチルの真球状粒子(商品名「SSX−108」,積水化成品工業株式会社製)を20重量部加えて、均一に混合して組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(a1)という)。シロップ(a1)において、シロップ(b5)に対するBA濃度は89重量%である。
【0114】
(製造例7:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)を50重量部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を40重量部、アクリル酸(AA)を10重量部、ポリオールとして数平均分子量500の1,6−ヘキサンカーボネートジオールと1,5−ペンタンカーボネートジオールの共重合体(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「デュラノールT5650J」)を60.7重量部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI、三井化学ポリウレタン株式会社製)を30.8重量部滴下し、65℃で5時間反応させ、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらにヒドロキシエチルアクリレート(HEA)8.5重量部を投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。さらに、光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.3重量部加えることでシロップ(b6)を得た。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.3、シロップ(b6)に対するモノマー濃度は50重量%であった。
【0115】
(製造例8:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、IBXAを71重量部、BAを19重量部、AAを5重量部、ポリオールとして数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG650、三菱化学株式会社製)を70重量部投入し、撹拌しながら、HXDIを26.1重量部滴下し、65℃で5時間反応させ、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらに4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、日本化成株式会社製)3.9重量部を投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、大阪有機化学工業株式会社製)を3重量部添加し、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(商品名「イルガキュア819」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を0.3重量部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(商品名「TINUVIN 400」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を1.25重量部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(商品名「TINUVIN 123」、チバスペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を1.25重量部加えることでシロップ(b7)を得た。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25、シロップ(b7)に対するモノマー濃度は50重量%であった。
【0116】
(製造例9:第二硬化性樹脂組成物(b)の調製)
シロップ(b4)100重量部に、AAを15重量部加えることでシロップ(b8)を得た。シロップ(b8)において、シロップ(b8)に対するモノマー濃度は57重量%であった。
【0117】
(製造例10:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
BAを67重量部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)を14重量部、4HBAを19重量部からなる混合モノマー溶液に、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.09重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア184」)0.09重量部を加えた溶液を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、紫外線に曝露して部分的に光重合(ポリマー濃度10重量%)させることによって、BAとCHAと4HBAとからなる組成物を得た(以下、この組成物をシロップ(s2)という)。シロップ(s2)に対するモノマー濃度は90重量%である。
【0118】
シロップ(s2)100重量部に、熱膨張性微小球(松本油脂製薬株式会社製、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−501D」)を5重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を0.08重量部加えて、均一に混合して組成物を調整した(以下、この組成物をシロップ(a2)という)。シロップ(a2)において、シロップ(a2)に対するモノマー濃度は90重量%である。
【0119】
(製造例11:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を90重量部、AAを10重量部からなる混合モノマー溶液に、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.05重量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア184」)0.05重量部を加えた溶液を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、紫外線に曝露して部分的に光重合(ポリマー濃度7重量%)させることによって、2EHAとAAとからなる組成物を得た(以下、この組成物をシロップ(s3)という)。シロップ(s3)に対するモノマー濃度は93重量%である。
【0120】
シロップ(s3)100重量部に、熱膨張性微小球(松本油脂製薬株式会社製、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−501D」)を5重量部、HDDAを0.08重量部加えて、均一に混合して組成物を調整した(以下、この組成物をシロップ(a3)という)。シロップ(a3)において、シロップ(a3)に対するモノマー濃度は93重量%である。
【0121】
(製造例12:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
IBXAを80重量部、BAを20重量部からなる混合モノマー溶液100重量部に、フッ素系樹脂としてフルオロエチレンビニルエーテル共重合体(旭硝子株式会社製、商品名「ルミフロンLF710F」)を25重量部、イソシアネート基含有アクリル系モノマーとして2−アクロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名「カレンズAOI」)を1.57重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.1重量部加えて、均一に混合して組成物を調製した(以下、この組成物をシロップ(a4)という)。シロップ(a4)において、シロップ(a4)に対するモノマー濃度は80重量%である。
【0122】
(製造例13:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、BAを100重量部、ポリオールとして数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG650、三菱化学株式会社製)を71.6重量部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(DBTL)を0.01重量部投入し、撹拌しながら、HXDIを24.6重量部滴下し、65℃で5時間反応させ、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらにHEAを3.8重量部投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。さらに、光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.3重量部加えることでシロップ(s4)を得た。シロップ(s4)に対するモノマー濃度は50重量%である。
【0123】
シロップ(s4)100重量部に、熱膨張性微小球(松本油脂製薬株式会社製、商品名「マツモトマイクロスフェアーF−501D」)を30重量部加えて、均一に混合して組成物を調整した(以下、この組成物をシロップ(a5)という)。シロップ(a5)において、シロップ(a5)に対するモノマー濃度は50重量%である。
【0124】
(製造例14:第一硬化性樹脂組成物(a)の調製)
BA100重量部に、フッ素系樹脂としてフルオロエチレンビニルエーテル共重合体(旭硝子株式会社製、商品名「ルミフロンLF710F」)を100重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」)を0.1重量部加えて、均一に混合して組成物を調整した(以下、この組成物をシロップ(a6)という)。シロップ(a6)において、シロップ(a6)に対するモノマー濃度は50重量%である。
【0125】
(実施例1)
支持基材上に、シロップ(a1)を硬化後の厚みが100μmになるように塗布して第一未硬化層(A)を形成した。別の支持基材上に、シロップ(b1)を硬化後の厚みが100μmになるように塗布して第二未硬化層(B)を形成した。前記第一未硬化層(A)と第二未硬化層(B)が接する形態で、気泡が入らないように貼り合せた後、約1分後にブラックライト及びメタルハライドランプを用いて紫外線(照度9mW/cm2,光量1200mJ/cm2)を照射して、前記両未硬化層を硬化させて、両側に支持基材を有する、硬化多層シートを得た。
【0126】
(実施例2〜7、比較例1、3、4)
実施例1において、使用するシロップの種類、形成する未硬化層の厚さを表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様に硬化多層シートを得た。
【0127】
(比較例2)
支持基材上に、シロップ(b4)を硬化後の厚みが100μmになるように塗布して未硬化層を形成した後、その層に別の支持基材を貼り合せた。その後、ブラックライト及びメタルハライドランプを用いて紫外線(照度9mW/cm2,光量1200mJ/cm2)を照射して前記未硬化層を硬化させて、支持基材に挟まれたウレタン−アクリルポリマーシート(以下、これをUAシートという)を形成した。さらに別の支持基材上に、シロップ(a1)を硬化後の厚みが100μmになるように塗布して未硬化層を形成した。次に、支持基材に挟まれたUAシートの一方の支持基材を剥がして、露出したUAシート面にシロップ(a1)から形成された未硬化層を気泡が入らないように貼り合せた後、ブラックライトおよびメタルハライドランプを用いて紫外線(照度9mW/cm2、光量1200mJ/cm2)を照射して硬化させてブラックライト及びメタルハライドランプを用いて紫外線(照度9mW/cm2,光量1200mJ/cm2)を照射して、シロップ(a1)から形成された未硬化層を硬化させて、両側に支持基材を有する、硬化多層シートを得た。
【0128】
(評価)
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて実施例1〜7及び比較例1、3、4で得られた支持基材付き硬化多層シートの断面を観察した。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)として、株式会社日立ハイテクノロジーズ製S−3400Nを使用した。これらの走査型電子顕微鏡写真(SEM像)を、図2〜図6及び図9〜図13に示す。図2は300倍、図3,4,6は350倍、図5,9,13は400倍、図10,12は450倍、図11は200倍である。なお、各図中において、A2:シロップ(a1)〜(a6)に基づく第一硬化層、A21:非相溶性物質偏在部、B2:シロップ(b1)〜(b8)に基づく第二硬化層、である。
【0129】
<各層の厚さの測定>
また、各層の厚さは、下記方法により求めた。結果を表1に示す。
【0130】
支持基材付き硬化多層シートにおける、硬化した二層(第一硬化層(A2)及び第二硬化層(B2))に係る合計厚さは、1/1000ダイヤルゲージを用いて、支持基材付き硬化多層シートの全体厚さを測定し、その全体厚さから、支持基材の厚さを引くことにより求めた。
【0131】
シロップ(b1)〜(b8)に基づく第二硬化層(B2)の厚さは、各例において、支持基材に形成されたシロップ(b1)〜(b8)により形成された貼り合せ前の未硬化層の厚さであり、各未硬化層が形成された支持基材の全体を、1/1000ダイヤルゲージを用いて測定した値から、支持基材の厚さを引くことにより求めた。シロップ(a)に基づく第一硬化層(A2)の厚さは、前記硬化した二層の合計厚さから、前記第二硬化層(B2)の厚さを引くことにより求めた。
【0132】
また、実施例1〜7では、走査型電子顕微鏡写真から、第一硬化層(A2)における非相溶性物質偏在部(A21)の層表面から厚み方向への高さ(厚さ)を求めた。比較例1、3、4では、第一硬化層(A2)に非拡散性物質が分布する部分の層表面から厚み方向への高さ(厚さ)を求めた。前記非相溶性物質偏在部(A21)等に係る高さ(厚さ)は、走査型電子顕微鏡写真から測定した平均の値(3回)である。
【0133】
(外観評価)
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた支持基材付き硬化多層シートについて、外観を目視観察して、下記の基準で平滑性を評価した。実施例4、比較例2で得られた支持基材付き硬化多層シートの外観写真を図7、図8に示す。図7のように「平滑」な場合を「○」、図8のように厚さ方向に凹凸が生じた場合を「×」とした。
【0134】
【表1】
【0135】
表1及び図から、実施例1〜7のように、隣接する第一及び第二未硬化層(A)、(B)間での重合性モノマーの濃度差が大きい場合、硬化多層シートにおける非相溶性物質偏在部A21の厚さは、積層前の第一未硬化層(A)の厚さより小さくなり、硬化多層シートの表面に粒子が偏在していることが分かる。一方、比較例1、3、4のように、隣接する各層(A)、(B)間での重合性モノマー成分の濃度差が小さいか、濃度差がない場合、硬化多層シートにおける非相溶性物質偏在部A21の厚さは、積層前の第一未硬化層(A)の厚さとほぼ一致し、硬化多層シートの表面に粒子が偏在することなく、第一硬化層(A2)中に分散していることが分かる。
【0136】
また、実施例1〜7及び比較例1では、硬化多層シートの外観は平滑であり、三次元化もカールもしていなかった。一方、比較例2では、硬化多層シートが3次元化し、平滑なシートを得ることができなかった。これは以下の理由によると推察される。すなわち、比較例2では、第一未硬化層(A)と貼り合わされるUAシートがすでに硬化した架橋ポリマーで形成されていることから、粒子を含む第一未硬化層(A)をUAシートに貼り合わせると、第一未硬化層(A)に含まれる重合性モノマーがUAシートに浸透し、UAシートが膨潤する。その後、UAシートが膨潤した状態のままで硬化工程を行うために、得られる硬化多層シートが三次元化したと考えられる。
【符号の説明】
【0137】
A 第一未硬化層
A1 第一拡散層
A2 第一硬化層
A11、A21 非相溶性物質偏在部
A12、A22 非相溶性物質非存在部
B 第二未硬化層
B1 第二拡散層
B2 第二硬化層
C 支持基材
X 積層体:硬化工程(2)の前
Y 積層体:硬化工程(2)の後
f 非相溶性物質
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一硬化性樹脂組成物(a)により形成された第一未硬化層(A)及び第二硬化性樹脂組成物(b)により形成された第二未硬化層(B)を隣接して積層して積層体(X)にする工程(1)、並びに前記積層体(X)を硬化する工程(2)を有する硬化多層シートの製造方法であって、
第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物、及び当該重合性モノマー(m1)を重合して得られるポリマー(p1)に対して非相溶な非相溶性物質(f)を含有しており、
第二硬化性樹脂組成物(b)は、前記重合性モノマー(m1)と相溶し、かつ非相溶性物質(f)とは非相溶である、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有しており、かつ、
第一硬化性樹脂組成物(a)における、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物に対する重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、第二硬化性樹脂組成物(b)における、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)に対する重合性モノマー(m2)の濃度(c2)よりも高い値であり、
前記積層工程(1)では、第一未硬化層(A)内で非相溶性物質(f)を移動させて、非相溶性物質(f)を第二未硬化層(B)とは反対側の界面又は当該界面近傍に偏って分布させ、その後に、硬化工程(2)を施す硬化多層シートの製造方法。
【請求項2】
濃度(c1)は濃度(c2)よりも、15重量%以上高い値である請求項1に記載の硬化多層シートの製造方法。
【請求項3】
非相溶性物質(f)が粒子又はポリマーである請求項1又は2に記載の硬化多層シートの製造方法。
【請求項4】
前記硬化工程(2)を、活性エネルギー線照射により行なう請求項1〜3のいずれかに記載の硬化多層シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られた硬化多層シート。
【請求項1】
第一硬化性樹脂組成物(a)により形成された第一未硬化層(A)及び第二硬化性樹脂組成物(b)により形成された第二未硬化層(B)を隣接して積層して積層体(X)にする工程(1)、並びに前記積層体(X)を硬化する工程(2)を有する硬化多層シートの製造方法であって、
第一硬化性樹脂組成物(a)は、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物、及び当該重合性モノマー(m1)を重合して得られるポリマー(p1)に対して非相溶な非相溶性物質(f)を含有しており、
第二硬化性樹脂組成物(b)は、前記重合性モノマー(m1)と相溶し、かつ非相溶性物質(f)とは非相溶である、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)を含有しており、かつ、
第一硬化性樹脂組成物(a)における、重合性モノマー(m1)又はその部分重合物に対する重合性モノマー(m1)の濃度(c1)は、第二硬化性樹脂組成物(b)における、重合性モノマー(m2)及びポリマー(p2)に対する重合性モノマー(m2)の濃度(c2)よりも高い値であり、
前記積層工程(1)では、第一未硬化層(A)内で非相溶性物質(f)を移動させて、非相溶性物質(f)を第二未硬化層(B)とは反対側の界面又は当該界面近傍に偏って分布させ、その後に、硬化工程(2)を施す硬化多層シートの製造方法。
【請求項2】
濃度(c1)は濃度(c2)よりも、15重量%以上高い値である請求項1に記載の硬化多層シートの製造方法。
【請求項3】
非相溶性物質(f)が粒子又はポリマーである請求項1又は2に記載の硬化多層シートの製造方法。
【請求項4】
前記硬化工程(2)を、活性エネルギー線照射により行なう請求項1〜3のいずれかに記載の硬化多層シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られた硬化多層シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−235631(P2011−235631A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72649(P2011−72649)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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