説明

硬化性オルガノポリシロキサン組成物

【解決手段】(A)水酸基及び/又は加水分解性基が結合した珪素原子を1分子中に少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサン:100質量部、(B)チタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンの錯体化合物:0.1〜30質量部を含有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【効果】シーリング剤、接着剤、コーティング剤等として有用であり、良好な硬化性を有すると共に、硬化収縮が殆どないため、微小部品や寸法成型性が求められる用途に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング剤、接着剤、コーティング剤等として有用な、光硬化性に優れ、室温で硬化可能な硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関し、詳しくは特別な光官能性オルガノポリシロキサンを必要としない、光硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンが有機過酸化物の存在下やヒドロシリル化反応を利用して加熱によって耐熱性、耐寒性、耐候性、電気特性の優れたシリコーンゴムとなることはよく知られている。また、縮合反応を利用して室温で硬化し、シリコーンゴムとなることもよく知られている。一方、光開始剤の存在下に光照射によって硬化するオルガノポリシロキサンも知られている。
【0003】
例えば、特公昭52−40334号公報及び特開昭60−104158号公報(特許文献1,2)には、ビニル基含有ポリシロキサンとメルカプト基含有ポリシロキサンとを含有してなり、光ラジカル付加反応によって硬化物を形成する紫外線硬化型のオルガノポリシロキサン組成物が開示されている。また、特公昭53−36515号公報、特開昭60−215009号公報、特許第2647285号公報(特許文献3〜5)には、アクリル基含有ポリシロキサンと増感剤とを含有してなり、光照射によって硬化物を形成する光硬化型オルガノポリシロキサン組成物が開示されている。
【0004】
しかしながら、ビニル基含有ポリシロキサンとメルカプト基含有ポリシロキサンとを含有している前記組成物においては、メルカプト基の臭気と金属の腐食性に問題があるためにその用途が限定されるという不利がある。
【0005】
また、アクリル基含有ポリシロキサンと増感剤とを含有している前記組成物においては、ゴム状弾性体を得るためにはアクリル基含有ポリシロキサンとして高分子量の線状ポリシロキサンを用いる必要がある。このために、該ポリシロキサンにおいては末端に位置するアクリル基量が相対的に非常に少なくなり、これに関連して、硬化性が低下する。また空気と接している表面部分が酸素による硬化阻害によって殆ど硬化しないという欠点もある。従って、この種の組成物は、比較的アクリル基量の多いポリシロキサンを使用してレジン状の硬化物を得るものしか実用化されておらず、ゴム状弾性体を得るものについては実用化されていないのが現状である。
【0006】
また、メルカプト基含有ポリシロキサン及びアクリル基含有ポリシロキサンは特別な合成経路によって製造する必要があるため、新規化合物となる場合が多く、法規制的な制限やコスト面で不利である。
【0007】
上述した光硬化性オルガノポリシロキサン組成物は紫外線照射によって短時間で硬化するために、作業性に関しては、従来公知の縮合型、加熱硬化型、白金付加反応型のものに比べて有利であるという利点はあるが、このようにして得られたシリコーンゴム弾性体は引っ張り強さに劣り、また保存性に欠けるため、その応用に制限があるという不利を有している。
【0008】
更に、Chemistry Letters Vol.35,No.10(2006),pp1130−1131(非特許文献1)には、ダブルデッカー形の多官能化シルセスキオキサンからなる感光ゾル−ゲル系を用いた有機−無機ハイブリッド薄膜のマイクロパターン化にチタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンの錯体化合物を適用することが述べられている。
【0009】
特開2001−240620号公報(特許文献6)には、この化合物をハイソリッドアクリル樹脂組成物に配合することにより塗膜との接着性を向上させる接着向上剤として有用であることが開示されているが、硬化触媒としての応用を示唆するような記述はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭52−40334号公報
【特許文献2】特開昭60−104158号公報
【特許文献3】特公昭53−36515号公報
【特許文献4】特開昭60−215009号公報
【特許文献5】特許第2647285号公報
【特許文献6】特開2001−240620号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Chemistry Letters Vol.35,No.10(2006),pp1130−1131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、従来の光硬化性オルガノポリシロキサン組成物の上述した種々の欠点が解消され、特別な光官能性オルガノポリシロキサンを原料として用いなくとも、紫外線照射によって硬化が行われると共に、ゴム特性に優れた硬化物が形成される硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討した結果、チタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンの錯体化合物を適用することで、紫外線照射により触媒活性が発現し、良好な硬化性が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
従って、本発明は、下記に示す硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供するものである。
〔1〕
(A)水酸基及び/又は加水分解性基が結合した珪素原子を1分子中に少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)チタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンの錯体化合物:0.1〜30質量部
を含有し、紫外線照射することにより硬化する硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
〔2〕
(B)成分のチタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンとの錯体化合物が、下記一般式(3)で示される錯体化合物である〔1〕に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2、R3は非置換又は置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基、R4は非置換又は置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基である。)
〔3〕
(B)成分のチタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンの錯体化合物が、チタン−(メタ)アクリレート−トリイソプロポキサイドとベンゾイルアセトンの錯体化合物であることを特徴とする〔2〕に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
〔4〕
(A)成分が、分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
〔5〕
更に、(C)1分子中に加水分解性基を2個以上有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を含有することを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
〔6〕
更に、(D)光開始剤を含有することを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、シーリング剤、接着剤、コーティング剤等として有用であり、良好な硬化性を有すると共に、硬化収縮が殆どないため、微小部品や寸法成型性が求められる用途に特に適している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)水酸基及び/又は加水分解性基が結合した珪素原子を1分子中に少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)チタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンの錯体化合物:0.1〜30質量部、
更に必要により
(C)1分子中に加水分解性基を2個以上有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物:及び/又は
(D)光開始剤:
を含有する。
【0017】
[(A)成分]
(A)水酸基及び/又は加水分解性基が結合した珪素原子を1分子中に少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサンは、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の主剤(ベースポリマー)であり、分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有するものである。直鎖状、分岐鎖状、レジン状のいずれのものでも良いが、直鎖状が好ましい。このようなジオルガノポリシロキサンとして、具体的には、下記一般式(1)又は(2)で表される分子鎖末端が水酸基又は加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンが例示される。
【0018】
【化2】

(式中、Rは非置換又は置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基であり、Xは酸素原子又は炭素原子数1〜8の二価炭化水素基であり、Yは加水分解性基であり、bは2又は3であり、mはこのジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を100〜1,000,000mPa・sとする数である。)
【0019】
上記式中、Rの非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、α−,β−ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基、また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等を例示することができる。これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0020】
Xは、酸素原子又は炭素原子数1〜8の二価炭化水素基であり、二価炭化水素基としては、−(CH2p−(pは1〜8を表す)で表される。これらの中でも酸素原子、−CH2CH2−が好ましい。
【0021】
Yは、上記ジオルガノポリシロキサンの分子鎖末端における加水分解性基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基、ビニロキシ基、イソプロペニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基、ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0022】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sが好ましく、より好ましくは300〜500,000mPa・s、特に好ましくは500〜100,000mPa・s、とりわけ1,000〜80,000mPa・sである。上記ジオルガノポリシロキサンの粘度が低すぎると、物理的・機械的強度に優れた硬化物を得ることが困難となる場合があり、高すぎると組成物の粘度が高くなりすぎて使用時における作業性が悪くなる場合がある。ここで、粘度は回転粘度計による数値である。
【0023】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【化3】

(式中、m、R、Yは上記と同様であり、b’は0又は1である。)
【0024】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、1種単独でも構造や分子量の異なる2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0025】
[(B)成分]
(B)成分であるチタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンの錯体化合物は、本発明の組成物に硬化性を付与する必須成分であり、下記一般式(3)で示される。
【化4】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2、R3は非置換又は置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基、R4は非置換又は置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基である。)
【0026】
2〜R4は前記Rと同様な置換基が示され、R2はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基が好ましい。R3はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基が好ましい。R4はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0027】
特に限定されるものではないが、以下の経路によって合成することができる。
【化5】

【0028】
例えば、チタン−メタクリレート−トリイソプロポキサイド(THF(テトラヒドロフラン)溶液)にベンゾイルアセトン(THF溶液)を室温で混合することにより、速やかに錯体が形成され、目的の化合物が得られる。
【0029】
また、具体的には下記の化合物が例示される。なお、iPrはイソプロピル基、Phはフェニル基を示す。
【化6】

【0030】
(B)成分の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部である。(B)成分が0.1質量部未満では、十分な硬化性が得られず、逆に30質量部より多くすると、この組成物の硬化性が低下し、更に、この硬化物の弾性も低くなるので、0.1〜30質量部の範囲とする必要がある。
【0031】
本発明の組成物には、(C)1分子中に加水分解性基を2個以上有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を配合することが好ましい。(C)成分は、本発明の組成物の硬化性を向上させるために有用な成分であって、1分子中に珪素原子に結合する加水分解可能な基を少なくとも2個有することが必要とされる。このような有機珪素化合物としては、下記式で表されるシラン又はその部分加水分解縮合物を例示することができる。
aSiZ4-a
(式中、Rは前記と同様、Zは独立に加水分解性基であり、aは0〜2の整数である。)
【0032】
上記加水分解性基(Z)としては、上記(A)成分のジオルガノポリシロキサンの分子鎖末端における水酸基以外の加水分解性基(Y)として挙げたものが同様に例示されるが、アルコキシ基、ケトオキシム基、イソプロペノキシ基が好ましく、特にケトオキシム基が好ましい。
【0033】
この(C)成分であるシラン又はその部分加水分解縮合物は、分子中に前記したような加水分解可能な基を少なくとも2個有することが必須である他には特に制限はないが、好適には3個以上有することが好ましく、また、珪素原子には加水分解可能な基以外の基が結合していてもよく、更に、その分子構造はシラン又はシロキサン構造のいずれであってもよい。特に、シロキサン構造のものにあっては直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
【0034】
上記の加水分解可能な基以外の基(R)は、非置換又は置換の炭素原子数1〜12、特に1〜8の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
【0035】
本発明の(C)成分である有機珪素化合物の具体例としては、例えば、エチルシリケート、プロピルシリケート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、プロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、3−クロロプロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリ(ジメチルケトキシム)シラン、メチルトリ(ジエチルケトキシム)シラン、メチルトリ(メチルイソプロピルケトキシム)シラン、トリ(シクロへキサノキシム)シラン等、及びこれらの部分加水分解縮合物が挙げられ、特にメチルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、プロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシム)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリ(ジメチルケトキシム)シラン、メチルトリ(ジエチルケトキシム)シラン、メチルトリ(メチルイソプロピルケトキシム)シラン、トリ(シクロへキサノキシム)シランが好ましい。
これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0036】
(C)成分の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、特に好ましくは1〜15質量部である。(C)成分が0.1質量部未満では、この組成物への配合効果が不十分となることがあり、逆に30質量部より多くすると、この組成物の硬化時における収縮率が大きくなり、この硬化物の弾性も低くなることがある。
【0037】
また、本発明の組成物には、(D)光開始剤を配合することが好ましい。
(D)成分としては、当業界で公知のアセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェノール)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン等が例示される。その配合量は(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0038】
本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の添加剤や充填剤を配合することができる。
【0039】
[硬化促進剤]
本発明においては、従来公知の縮合反応触媒を使用することも有効であり、これらは1種を単独で使用しても2種以上の混合物として使用してもよい。
具体例としては、スズジオクトエート、ジメチルスズジバーサテート、ジブチルジメトキシスズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジベンジルマレート、ジオクチルスズジラウレート、スズキレート等のスズ触媒、グアニジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)等の強塩基化合物及びそれらの基を有するアルコキシシラン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物等が例示される。その配合量は(A)成分100質量部に対して0.001〜20質量部、特に0.01〜10質量部が好ましい。
【0040】
[接着付与剤]
当業界で公知のアミン系シランカップリング剤も好適に使用される。具体例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、エチレンジアミノプロピルトリメトキシシラン、エチレンジアミノプロピルトリエトキシシラン、エチレンジアミノプロピルメチルジメトキシシラン、エチレンジアミノプロピルメチルジエトキシシラン、α−アミノプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
一級アミノ基を有する有機化合物として有機アミンも適用可能であるが、その腐食性、臭気等の点から一級アミノ基を有するポリマー、オリゴマー、一級アミノ基を官能基として有するシランカップリング剤又はその部分加水分解物等であることが好ましい。その配合量は(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0041】
[その他の成分]
本発明の組成物において、上記成分以外に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の添加剤として公知の添加剤を添加してもよい。例えば、充填剤としては、煙霧質シリカ、湿式シリカ、沈降性シリカ、炭酸カルシウム等の補強性充填剤、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、金属水酸化物、カーボンブラック、ガラスビーズ、ガラスバルーン、樹脂ビーズ、樹脂バルーンなどが挙げられる。これらの充填剤は表面処理されていなくても、公知の処理剤で表面処理されていてもよい。また、チキソトロピー向上剤としてのポリエーテル、可塑剤としてイソパラフィン、架橋密度向上剤としてのトリメチルシロキシ単位とSiO2単位とからなる網状ポリシロキサン等も挙げられる。更に、必要に応じて、顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、防かび剤、抗菌剤、ゴキブリ忌避剤、海洋生物忌避剤等の生理活性添加剤、シリコーンと非相溶の有機液体等の表面改質剤を添加してもよい。
【0042】
また必要に応じて、塗布性を向上させるためのトルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の有機溶剤、揮発性シラン、揮発性シロキサン等の希釈剤も同時に混合することができる。
【0043】
[硬化法]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、紫外線照射することにより硬化させることができる。この場合、紫外線波長としては、特に制限されないが、近紫外線が好ましく、10〜400nm、特に200〜380nmであることが好ましく公知の高圧水銀灯を用いることができる。照射量は適宜選定し得るが、通常高圧水銀灯メタルハライドランプで100〜10,000mJ/cm2とすることが好ましい。
なお、硬化は室温で行うことができ、硬化時間は通常数秒〜1週間程度である。
【0044】
[組成物の用途]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、シーリング剤、接着剤、コーティング剤等に好適に用いられ、特に基材を良好に接着することができる。
【実施例】
【0045】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、粘度は回転粘度計により測定した25℃における値を示す。
【0046】
[合成例]
チタン−メタクリレート−トリイソプロポキサイド3.02gをテトラヒドロフラン(THF)2gに溶解させ(淡黄色透明液体)、次いで、ベンゾイルアセトン1.63gをTHF2.5gに溶解させた溶液を室温で混合した。速やかに錯体が形成され、橙黄色透明液体の下記化合物Aが得られた。
【0047】
【化7】

【0048】
[実施例1]
両末端が水酸基で封鎖された粘度700mPa・sのジメチルポリシロキサン100質量部、化合物A(THF溶液)4質量部を均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0049】
[実施例2]
実施例1にメチルトリメトキシシラン3質量部を追加し、均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0050】
[実施例3]
実施例1に2,2−ジエトキシアセトフェノン0.3質量部を追加し、均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0051】
[比較例1]
実施例1から化合物Aを除いた組成物を調製した。
【0052】
[比較例2]
実施例1の化合物Aを除き、代わりに、ベンゾイルアセトン1.6質量部を追加し、均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0053】
[比較例3]
実施例1の化合物Aを除き、代わりに、チタン−メタクリレート−トリイソプロポキサイド3.02gを追加し、均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0054】
[評価方法]
円筒型ガラスシャーレ(サイズ、内径約30mm、深さ約20mm)に、組成物を充填し、紫外線照射直後の硬化状態を確認した。
紫外線照射条件:高圧水銀灯(80W/cm)1灯、距離10cm、搬送速度1m/min×3回、1,500mJ/cm2
全体を100とし、硬化している部分の体積を表示した。
【0055】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水酸基及び/又は加水分解性基が結合した珪素原子を1分子中に少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)チタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンの錯体化合物:0.1〜30質量部
を含有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(B)成分のチタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンとの錯体化合物が、下記一般式(3)で示される錯体化合物である請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2、R3は非置換又は置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基、R4は非置換又は置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基である。)
【請求項3】
(B)成分のチタン−(メタ)アクリレート−トリアルコキサイドとβ−ジケトンの錯体化合物が、チタン−(メタ)アクリレート−トリイソプロポキサイドとベンゾイルアセトンの錯体化合物であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(A)成分が、分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
更に、(C)1分子中に加水分解性基を2個以上有するシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
更に、(D)光開始剤を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

【公開番号】特開2013−82815(P2013−82815A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223842(P2011−223842)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】