説明

硬化性塗料組成物およびその硬化被膜、並びに耐擦傷性樹脂板およびそれを用いた携帯型情報端末の表示窓保護板

【課題】硬度の高い硬化被膜を形成することができる硬化性塗料組成物およびその硬化被膜、並びに耐擦傷性樹脂板およびそれを用いた携帯型情報端末の表示窓保護板を提供することである。
【解決手段】ハフニウムと、分子内に二重結合を有するカルボン酸と、多官能(メタ)アクリレート化合物とを含有する硬化性塗料組成物である。この硬化性塗料組成物を硬化させてなる硬化被膜である。樹脂基板の表面に、前記硬化性塗料組成物を硬化させた硬化被膜が形成されてなる耐擦傷性樹脂板である。この耐擦傷性樹脂板からなる携帯型情報端末の表示窓保護板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型情報端末の表示窓保護板として好適な硬化性塗料組成物およびその硬化被膜、並びに耐擦傷性樹脂板およびそれを用いた携帯型情報端末の表示窓保護板に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、携帯電話やPHS(Personal Handy-phone System)等の携帯型電話類が、インターネットの普及とともに、単なる音声伝達機能に加えて、文字情報や画像情報を表示する機能を持った携帯型情報端末として広く普及している。また、このような携帯型電話類とは別に、住所録等の機能にインターネット機能や電子メール機能を併せ持つPDA(Personal Digital Assistant)等も幅広く使用されている。
【0003】
これらの携帯型情報端末では、液晶やEL(エレクトロルミネッセンス)等の方式により、文字情報や画像情報を表示するようになっているが、その表示窓には、保護板として透明樹脂製のものが一般に用いられており、中でも透明性の点からメタクリル樹脂板が好ましく用いられている(例えば特許文献1〜3参照)。そして、この保護板には、表面の傷付きを防止するため、硬化性塗料により耐擦傷性(ハードコート性)を有する硬化被膜を設けることが提案されており、この硬化性塗料としては、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、すなわち多官能(メタ)アクリレートを含むものが主に検討されている(同特許文献参照)。
【0004】
しかしながら、従来提案されている携帯型情報端末の表示窓保護板では、硬化被膜の硬度(鉛筆硬度)が十分でないという問題がある。硬度が不十分な硬化被膜では、所望の耐擦傷性が得られない。
【0005】
一方、特許文献4には、ハフニアゾル、(メタ)アクリル酸類等を含むゾル組成物を硬化させてなる硬化体層を有する硬質膜が記載されている。この文献によると、この硬質膜は高い硬度を有していると記載されており、ギ酸やシュウ酸を含む所定のハフニアゾルとアクリル酸とを混合した塗布液をポリカーボネート基板の表面に塗布し、硬化させている。
【0006】
しかしながら、このような硬化被膜であっても、十分な硬度が得られていないのが現状であり、より硬度の高い硬化被膜を形成可能な硬化性塗料組成物の開発が望まれている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−6764号公報
【特許文献2】特開2004−143365号公報
【特許文献3】特開2004−299199号公報
【特許文献4】特開2005−336466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、硬度の高い硬化被膜を形成することができる硬化性塗料組成物およびその硬化被膜、並びに耐擦傷性樹脂板およびそれを用いた携帯型情報端末の表示窓保護板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)ハフニウムと、分子内に二重結合を有するカルボン酸と、多官能(メタ)アクリレート化合物とを含有することを特徴とする硬化性塗料組成物。
(2)前記ハフニウムおよび前記分子内に二重結合を有するカルボン酸を含有するゾル組成物と、前記多官能(メタ)アクリレート化合物とを混合してなる前記(1)記載の硬化性塗料組成物。
(3)前記(1)または(2)記載の硬化性塗料組成物を硬化させてなる硬化被膜。
(4)樹脂基板の表面に、前記(1)または(2)記載の硬化性塗料組成物を硬化させた硬化被膜が形成されてなる耐擦傷性樹脂板。
(5)前記樹脂基板がメタクリル樹脂からなる前記(4)記載の耐擦傷性樹脂板。
(6)鉛筆硬度が6H以上である前記(4)または(5)記載の耐擦傷性樹脂板。
(7)前記(4)〜(6)のいずれかに記載の耐擦傷性樹脂板からなる携帯型情報端末の表示窓保護板。
【0010】
なお、本発明における前記「携帯型情報端末」とは、人が携行できる程度の大きさであって、文字情報や画像情報等を表示するための窓(ディスプレイ)を有するものの総称を意味しており、例えば前記で例示した携帯電話やPHS、PDA等が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化性塗料組成物がハフニウム、分子内に二重結合を有するカルボン酸および多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するので、硬度(鉛筆硬度)の高い硬化被膜を形成することができるという効果がある。
【0012】
特に、前記(2)のように、硬化性塗料組成物が、ハフニウムおよび分子内に二重結合を有するカルボン酸を含有するゾル組成物と、多官能(メタ)アクリレート化合物とを混合してなると、より硬度の高い硬化被膜を形成することができる。
【0013】
前記(4)の耐擦傷性樹脂板によれば、硬度の高い硬化被膜が樹脂基板の表面に形成されているので、この耐擦傷性樹脂板を前記(7)のような携帯型情報端末の表示窓保護板として用いることにより、その表示窓を効果的に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の硬化性塗料組成物は、ハフニウムと、分子内に二重結合を有するカルボン酸と、多官能(メタ)アクリレート化合物とを含有する。このような組成からなる硬化性塗料組成物を硬化させてなる硬化被膜は、高い硬度を示すことができる。
【0015】
特に、より高い硬度を有する硬化被膜を形成できる上で、前記ハフニウムおよび前記分子内に二重結合を有するカルボン酸を含有するゾル組成物と、前記多官能(メタ)アクリレート化合物とを混合してなる硬化性塗料組成物が好ましい。
【0016】
前記ゾル組成物の好ましい調製法としては、まず、不活性気体の雰囲気下、ハフニウムをハフニウムハロゲン化物の形態で溶媒に加え、次いで水、分子内に二重結合を有するカルボン酸、無機酸を順次加える。この混合液を恒温条件下で攪拌することで所望のゾル組成物が得られる。このゾル組成物は、前記ハフニウムハロゲン化物を加水分解するときに、前記分子内に二重結合を有するカルボン酸を添加することにより、ハフニウムの一部または全部に前記分子内に二重結合を有するカルボン酸が配位した形態になっていると推察され、これにより該ゾル組成物を含む硬化性塗料組成物は、より高い硬度を有する硬化被膜を形成することができると考えられる。
【0017】
前記不活性気体としては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられ、特に窒素が好ましい。前記ハフニウムハロゲン化物としては、例えば四塩化ハフニウム、四フッ化ハフニウム、四臭化ハフムニウム、四ヨウ化ハフニウム等が挙げられ、特に四塩化ハフニウムが好ましく、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
前記溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、ビニルアルコール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン等のケトン、アミン、アミド等が挙げられ、特に水、アルコールが好ましく、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
前記分子内に二重結合を有するカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸等の炭素数3〜10程度の不飽和脂肪酸等が挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
前記無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられ、特に硝酸、硫酸が好ましく、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
ハフニウムハロゲン化物100重量部に対し、溶媒は10〜1000重量部、好ましくは500〜600重量部であるのがよい。水は、10〜100重量部、好ましくは50〜60重量部であるのがよい。分子内に二重結合を有するカルボン酸は、10〜1000重量部、好ましくは200重量部程度であるのがよい。無機酸は、10〜100重量部、好ましくは30〜40重量部であるのがよい。攪拌温度としては、0〜100℃、好ましくは50℃前後であるのがよい。攪拌時間としては、4時間程度が好ましい。
【0022】
前記ゾル組成物は、硬化性塗料組成物に含有される多官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対するハフニウムの割合が0.1〜10重量部、分子内に二重結合を有するカルボン酸の割合が1〜100重量部となるように、硬化性塗料組成物に添加するのが好ましい。
【0023】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物は、電子線や紫外線等の活性化エネルギー線が照射されることにより硬化する性質を有する硬化性化合物であり、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物を意味する。特に3官能以上、すなわち分子中に少なくとも3個の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物が好ましく用いられる。なお、本明細書において、(メタ)アクロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を意味している。その他、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等というときの「(メタ)」も同様の意味である。
【0024】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
また、ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたホスファゼン系(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のカルボン酸ハライド基を有する化合物と、分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物;上記各化合物の2量体や3量体等のようなオリゴマー等も用いることができる。これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。
【0026】
前記硬化性塗料組成物は、必要に応じて導電性微粒子を含有してもよい。これにより、帯電防止性能や制電性能を有する硬化被膜を形成することができる。前記導電性微粒子としては、例えば酸化アンチモンのような金属酸化物、インジウム/スズの複合酸化物(ITO)、スズ/アンチモンの複合酸化物(ATO)、アンチモン/亜鉛の複合酸化物、リンでドープされた酸化スズ等の各微粒子が挙げられる。
【0027】
導電性微粒子は、その粒子径が0.001〜0.1μmであるのが好ましい。粒子径があまり小さいものは、工業的な生産が難しく、粒子径があまり大きいものを用いると、硬化被膜の透明性が低下するため好ましくない。
【0028】
導電性微粒子の使用量は、硬化性化合物100重量部に対し、1〜100重量部であるのが好ましい。この使用量があまり少ないと、十分な帯電防止効果が得られず、あまり多いと、硬化被膜の耐擦傷性が低下したり、成膜性が低下したりするため好ましくない。
【0029】
また、硬化性塗料組成物は、粘度や硬化被膜の厚さ等を調整するため、溶剤を含有してもよい。この溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、1−ブタノール、2−ブタノール(sec−ブチルアルコール)、2−メチル−1−プロパノール(イソブチルアルコール)、2−メチル−2−プロパノール(tert−ブチルアルコール)のようなアルコール類、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類、ジアセトンアルコールのようなケトール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
溶剤の使用量は、基板の材質、形状、塗布方法、目的とする硬化被膜の厚さ等に応じて適宜調整されるが、通常は、硬化性化合物および必要により用いられる導電性微粒子の合計量100重量部に対し、20〜10000重量部程度である。
【0031】
さらに、硬化性塗料組成物は、必要に応じて、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。特に、レベリング剤を含有すると、硬化被膜の平滑性や耐擦傷性を高めることができる。
【0032】
前記レベリング剤としては、シリコーンオイルが好ましく、その例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、アルコキシ基含有シリコーンオイル、フェノール基含有シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらシリコーンオイルは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
シリコーンオイルの使用量は、硬化性化合物および必要により用いられる導電性微粒子の合計量100重量部に対し、通常0.01〜20重量部である。この使用量があまり少ないと、目的とする効果が認められ難く、あまり多いと、硬化被膜の強度が低下するため好ましくない。
【0034】
次に、本発明の耐擦傷性樹脂板について説明する。本発明の耐擦傷性樹脂板は、樹脂基板の表面に前記した本発明にかかる硬化性塗料組成物を硬化させた硬化被膜が形成されてなる。
【0035】
前記樹脂基板を構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、4−メチル−ペンテン−1、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ACS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、酢酸ビニル系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロース系樹脂等の一般用樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等のエンジニアリングプラスチック等が挙げられ、メタクリル樹脂、ポリカーボネートが好ましく、特にメタクリル樹脂が好ましい。
【0036】
ここでメタクリル樹脂とは、メタクリル酸エステルを主体とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステル50重量%以上とこれ以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。共重合体である場合には、全単量体に占めるメタクリル酸エステルの割合は、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。
【0037】
メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルが好ましく用いられ、特にメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。また、メタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えばアクリル酸メチルやアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、スチレンやメチルスチレン等の芳香族アルケニル化合物、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のアルケニルシアン化合物等が挙げられる。
【0038】
前記樹脂基板は、携帯型情報端末の表示窓保護板に適用する上で、全光線透過率が90%以上であるのが好ましい。前記全光線透過率は、後述するように、ヘーズメーターにて測定される値である。
【0039】
また、前記樹脂基板は、通常の板(シート)やフィルムのように、表面が平面のものであってもよいし、凸レンズや凹レンズ等のように、表面が曲面になっているものであってもよい。また、表面に細かな凹凸等の微細な構造が設けられていてもよい。
【0040】
前記樹脂基板は、必要に応じて、染料や顔料等により着色されていてもよいし、酸化防止剤や紫外線吸収剤、ゴム粒子等を含有していてもよい。
【0041】
前記樹脂基板の厚さは、好ましくは0.1mm以上であり、また3.0mm以下であるのがよい。樹脂基板の厚さがこの範囲内であると、透明性を維持しつつ、十分な剛性を示すことができる。
【0042】
このような樹脂基板の表面に、前記した本発明にかかる硬化性塗料組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥し、次いで、形成された塗膜を硬化させることにより、樹脂基板の表面に硬度(鉛筆硬度)の高い硬化被膜を形成することができる。
【0043】
硬化性塗料組成物の塗布は、例えばマイクログラビアコート法、ロールコート法、ディッピングコート法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、フローコート法、スプレーコート法等の方法により行うことができる。
【0044】
塗膜の硬化は、活性化エネルギー線を照射することにより、好適に行われる。活性化エネルギー線としては、例えば電子線、紫外線、可視光線等が挙げられ、硬化性化合物の種類に応じて適宜選択される。活性化エネルギー線として紫外線や可視光線を用いる場合には、通常、光重合開始剤が用いられる。
【0045】
前記光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−tert−ブチルパーオキシカルボニルベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−(フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル等が挙げられる。
【0046】
光重合開始剤は、色素増感剤と組合せて用いてもよい。色素増感剤としては、例えばキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン等が挙げられる。光重合開始剤と色素増感剤との組合せとしては、例えばBTTBとキサンテンとの組合せ、BTTBとチオキサンテンとの組合せ、BTTBとクマリンとの組合せ、BTTBとケトクマリンとの組合せ等が挙げられる。
【0047】
上記で例示した光重合開始剤は、市販品を用いることができる。市販の光重合開始剤としては、例えば、それぞれチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から販売されている“IRGACURE 651”、“IRGACURE 184”、“IRGACURE 500”、“IRGACURE 1000”、“IRGACURE 2959”、“DAROCUR 1173”、“IRGACURE 907”、“IRGACURE 369”、“IRGACURE 1700”、“IRGACURE 1800”、“IRGACURE 819”、および“IRGACURE 784”、それぞれ日本化薬(株)から販売されている“KAYACURE ITX”、“KAYACURE DETX−S”、“KAYACURE BP−100”、“KAYACURE BMS”、および“KAYACURE 2−EAQ”等が挙げられる。
【0048】
光重合開始剤を用いる場合、その使用量は、硬化性化合物100重量部に対し、通常0.1重量部以上である。この使用量があまり少ないと、光重合開始剤を使用しない場合と比較して硬化速度が大きくならない傾向にある。なお、光重合開始剤の使用量の上限は、硬化性化合物100重量部に対し、通常10重量部程度である。
【0049】
また、活性化エネルギー線の強度や照射時間は、硬化性化合物の種類やその塗膜の厚さ等に応じて適宜調整される。活性化エネルギー線は、不活性気体の雰囲気中で照射してもよく、この不活性気体としては、例えば窒素やアルゴン等が挙げられる。
【0050】
形成される硬化被膜の厚さは、1〜10μmであるのが好ましく、より好ましくは2〜6μmであるのがよい。この厚さがあまり小さいと、硬度(鉛筆硬度)が不十分となることがあり、あまり大きいと、高温高湿下に曝したときに、クラックを発生し易くなる。硬化被膜の厚さは、樹脂基板の表面に塗布する硬化性塗料組成物の面積あたりの量や硬化性塗料組成物に含まれる固形分の濃度を調整することにより、調節することができる。
【0051】
上記のようにして得られた本発明の耐擦傷性樹脂板は、樹脂基板の表面に、硬度(鉛筆硬度)の高い硬化被膜が形成される。具体的には、鉛筆硬度が6H以上である。前記鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に準拠して測定される値である。したがって、本発明の耐擦傷性樹脂板は、携帯電話等に代表される携帯型情報端末の表示窓保護板として好適に用いることができる。また、デジタルカメラやハンディ型ビデオカメラ等のファインダー部、携帯型ゲーム機の表示窓保護板等、高硬度(高鉛筆硬度)が要求される分野での各種部材としても使用できる。
【0052】
本発明の耐擦傷性樹脂板から、携帯型情報端末の表示窓保護板を作製するには、まず、必要に応じて印刷、穴あけ等の加工を行い、必要な大きさに切断処理をする。ついで、切断処理した耐擦傷性樹脂板を携帯型情報端末の表示窓にセットすれば、硬度(鉛筆硬度)の高い表示窓とすることができる。
【0053】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下の実施例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ないかぎり重量基準である。また、各物性の測定方法は次のとおりである。
【0054】
(膜厚)
得られた耐擦傷性樹脂板の硬化被膜の厚さは、膜厚測定装置〔Filmetrics社製の「F−20」〕を用いて測定した。
【0055】
(全光線透過率)
耐擦傷性樹脂板の全光線透過率は、ヘーズメーター〔(株)村上色彩技術研究所製の「HR−100」〕を用いて測定した。
【0056】
(鉛筆硬度)
得られた耐擦傷性樹脂板の鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に準拠して測定した。
【実施例1】
【0057】
ゾル組成物Aを以下のようにして得た。すなわち、まず、窒素雰囲気下、四塩化ハフニウム5.44gをエタノール31.8gに加えて攪拌し、さらに水3.07gを加え完全に溶解させた。ついで、この溶液にアクリル酸11.25g、60%硝酸1.79gを順次加え、エタノールで全量を60gに調整した。この混合液を約50℃で4時間攪拌し、重量減少分のエタノールを添加して60gとした。室温まで冷却後、不溶物を吸引ろ過して除去し、無色透明なゾル組成物A〔ハフニウム/アクリル酸〕を得た。
【0058】
硬化性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート12.5部およびペンタエリスリトールテトラアクリレート12.5部、光重合開始剤〔チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「IRGACURE 184」3.44部および「IRGACURE 907」0.31部〕、レベリング剤としてビックケミージャパン(株)の“BYK−307”0.01部、並びに溶剤としてイソブチルアルコール37部および1−メトキシ−2−プロパノール37部を混合した。これらの混合液90部に対して、前述のゾル組成物A10部を混合し、硬化性塗料を調製した。ちなみに、硬化性塗料に含有される多官能(メタ)アクリレート化合物(硬化性化合物)100重量部に対するハフニウムの割合は2.0部、分子内に二重結合を有するカルボン酸(アクリル酸)の割合は7.5部である。
【0059】
この塗料を、厚さ3mm、大きさ50mm×50mmのメタクリル樹脂板〔住友化学(株)のスミペックスE〕の片面にバーコート法で塗布した後、室温で1分間乾燥し、さらに60℃で2分間乾燥して、塗膜をメタクリル樹脂板の表面に形成した。
【0060】
次いで、高圧水銀ランプを80W/cm2の照度で20秒照射することにより、前記塗膜を硬化させ、メタクリル樹脂板の表面に厚さ5μmの硬化被膜が形成された耐擦傷性樹脂板(高鉛筆硬度樹脂板)を得た。
【実施例2】
【0061】
光重合開始剤を、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「IRGACURE 184」5.94部にした以外は、実施例1と同様の操作を行い、タクリル樹脂板の表面に厚さ5μmの硬化被膜が形成された耐擦傷性樹脂板を得た。
【0062】
[比較例1]
ゾル組成物Aを添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、メタクリル樹脂板の表面に厚さ5μmの硬化被膜が形成された耐擦傷性樹脂板を得た。
【0063】
[比較例2]
ゾル組成物Bを以下のようにして得た。すなわち、まず、窒素雰囲気下、四塩化ハフニウム5.44gをエタノール31.9gに加えて攪拌し、さらに水3.07gを加えて完全に溶解させた。ついで、この溶液にギ酸7.40g、60%硝酸1.79g、およびエタノール55.3gを順次加えて50℃で4時間攪拌した。その後、室温まで冷却してゾル組成物B(ハフニアゾル)を得た。
【0064】
硬化性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート12.5部およびペンタエリスリトールテトラアクリレート12.5部、光重合開始剤〔チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)のIRGACURE 184〕1.25部、レベリング剤としてビックケミージャパン(株)の“BYK−307”0.01部、並びに溶剤としてイソブチルアルコール37部および1−メトキシ−2−プロパノール37部を混合した。これらの混合液80部に対して前述のゾル組成物B20部を混合し、硬化性塗料を調製した。ちなみに、硬化性塗料に含有される多官能(メタ)アクリレート化合物(硬化性化合物)100重量部に対するハフニウムの割合は、0.5部である。
【0065】
この塗料を、プラズマ処理を行った厚さ3mm、大きさ50mm×50mmのメタクリル樹脂板〔住友化学(株)のスミペックスE〕の片面にバーコート法で塗布した後、室温で1分間乾燥し、さらに60℃で2分間乾燥して、塗膜をメタクリル樹脂板の表面に形成した。
【0066】
次いで、高圧水銀ランプを80W/cm2の照度で60秒照射することにより前記塗膜を硬化させ、メタクリル樹脂板の表面に厚さ3μmの硬化被膜が形成された耐擦傷性樹脂板を得た。
【0067】
なお、メタクリル樹脂板へのプラズマ処理において、プラズマ照射装置は、プラズマトリートFG1001(日本プラズマトリート(株))を使用し、ドライエアー供給量は、2m3/hであり、照射幅は約20mmであった。プラズマ照射時の電圧は218〜222V、電流は5.6〜5.7Vであった。
【0068】
上記で得られた各耐擦傷性樹脂板について、鉛筆硬度を前記した測定方法に従って測定した。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1から明らかなように、ゾル組成物Aが添加されていない、すなわちハフニウムおよび分子内に二重結合を有するカルボン酸(アクリル酸)を含有していない比較例1の耐擦傷性樹脂板は、鉛筆硬度が4Hであり、硬度の高い硬化被膜を形成することはできなかった。また、分子内に二重結合を有するカルボン酸(アクリル酸)を含有していない比較例2の耐擦傷性樹脂板は、鉛筆硬度が5Hであった。
【0071】
これに対し、実施例1,2の耐擦傷性樹脂板は、比較例1,2の耐擦傷性樹脂板よりも鉛筆硬度が高く、耐擦傷性の高い硬化被膜が形成されているのがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハフニウムと、分子内に二重結合を有するカルボン酸と、多官能(メタ)アクリレート化合物とを含有することを特徴とする硬化性塗料組成物。
【請求項2】
前記ハフニウムおよび前記分子内に二重結合を有するカルボン酸を含有するゾル組成物と、前記多官能(メタ)アクリレート化合物とを混合してなる請求項1記載の硬化性塗料組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の硬化性塗料組成物を硬化させてなる硬化被膜。
【請求項4】
樹脂基板の表面に、請求項1または2記載の硬化性塗料組成物を硬化させた硬化被膜が形成されてなる耐擦傷性樹脂板。
【請求項5】
前記樹脂基板がメタクリル樹脂からなる請求項4記載の耐擦傷性樹脂板。
【請求項6】
鉛筆硬度が6H以上である請求項4または5記載の耐擦傷性樹脂板。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の耐擦傷性樹脂板からなる携帯型情報端末の表示窓保護板。

【公開番号】特開2009−191188(P2009−191188A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34179(P2008−34179)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】