説明

硬化性樹脂組成物

【課題】 低温での硬化性に優れ、かつ耐酸性、耐溶剤性、耐擦り傷性等に優れる塗膜等の硬化物を得ることが可能な、新規な硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 硬化性樹脂組成物が、アルコキシカルボニルメチルエステル基を含有する不飽和二塩基酸エステルに由来する繰り返し単位を含有してなるビニル系重合体、水酸基および/またはブロックされた水酸基を含有する化合物及びエステル交換触媒を特定範囲の組成比で混合して成ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規にして有用なる硬化性樹脂組成物に関する。さらに詳細には、特定の活性エステル基を有するビニル系重合体と水酸基及び/又はブロックされた水酸基を有する化合物とエステル交換触媒を、必須の成分として含有する硬化性に優れ、耐酸性、耐溶剤性、耐擦り傷性等に優れる硬化物を形成する硬化性樹脂組成物に関するものである。そして、本発明の硬化性樹脂組成物は、自動車のトップコート用塗料をはじめとする各種の塗料、接着剤、インキ等の用途に有効に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のトップコート塗膜や屋外で使用される各種の金属製品の上塗り塗膜として、水酸基アクリル樹脂をメラミン樹脂で硬化せしめて得られる塗膜が広汎に使用されてきた。しかし、かかる塗膜は、屋外で曝露された場合の劣化、とりわけ、酸性雨によって外観が低下する、いわゆる塗膜外観の劣化の問題が生じている。
【0003】
かかる問題点を解消することが可能な一つの技術として、水酸基を含有する樹脂とアルコキシカルボニルメチルエステル基を含有する化合物からなる熱硬化性組成物が提案されており、かかる組成物は、優れた耐酸性を有する硬化塗膜を形成するという(例えば、特許文献1。)。しかしながら、特許文献1記載の熱硬化性組成物は、140℃未満の比較的低い温度での硬化性に劣るという欠点があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−78262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的とする処は、上述した如き従来技術における問題点を解消して、低温での硬化性に優れ、かつ耐酸性、耐溶剤性、耐擦り傷性等に優れる塗膜等の硬化物を形成することが可能な、新規な硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、上述した如き本発明の目的に沿って、鋭意検討を重ねた結果、特定の活性エステル基を有する樹脂と水酸基および/またはブロックされた水酸基を有する化合物とエステル交換触媒を含んでなる組成物は、低温での硬化性に優れ、耐酸性に優れる硬化物を形成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で示されるエステル基を含有する不飽和二塩基酸エステルに由来する繰り返し単位(a−1)を含有してなるビニル系重合体(A)、水酸基および/またはブロックされた水酸基を含有する化合物(B)およびエステル交換触媒(C)を含んで成る硬化性樹脂組成物であって、ビニル系重合体(A)と化合物(B)の合計量の1,000グラムに対してエステル交換触媒(C)を0.003〜0.3モルの範囲で配合して成る硬化性樹脂組成物、を提供するものである。
【0008】
【化1】

【0009】
〔但し、Rは水素原子、フェニル基または炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、Rは1価の有機基を表すものとする〕
【発明の効果】
【0010】
本発明は、特定の活性エステル基と水酸基および/またはブロックされた水酸基の組み合わせに基づく新規な硬化性樹脂組成物を提供するものである。そして、かかる本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性に優れ、耐酸性、耐溶剤性、耐擦り傷性等の性能に優れる硬化物を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明についてより詳細に説明する。はじめに、本発明の硬化性組成物である前記一般式(I)で示されるエステル基を含有する不飽和二塩基酸エステルに由来する繰り返し単位(a−1)を含有してなるビニル系重合体(A)、水酸基および/またはブロックされた水酸基を含有する化合物(B)およびエステル交換触媒(C)を含んで成る硬化性樹脂組成物〔以下、組成物(S)と略称する〕について説明する。
【0012】
まず、組成物(S)に含有されるビニル系重合体(A)について詳しく説明する。
【0013】
一般式(I)で示されるエステル基に含有されるR は水素原子、フェニル基または炭素原子数が1〜12のアルキル基を表すものである。かかるR のなかで炭素原子数が1〜12のアルキル基の代表的なものとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。かかる、Rの中で特に好ましいものは、水素原子またはメチル基である。
【0014】
一般式(I)のエステル基に含有される1価の有機基であるRの代表的なものとしては、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、等の各種のものが挙げられる。かかる1価の有機基のなかで、アルキル基の代表的なものとしては、Rのうちの炭素原子数が1〜12なるアルキル基の代表的なものとして前掲した如き各種の基に加えて、n−トリデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、等が挙げられる。
【0015】
置換アルキル基の代表的なものとしては、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−(n−プロポキシ)エチル基、2−(n−ブトキシ)エチル基、2−(n−ヘキシルオキシ)エチル基、3−メトキシプロピル基、4−メトキシブチル基、4−(n−プロポキシ)ブチル基、6−エトキシヘキシル基、6−(n−ヘキシルオキシ)ヘキシル基の如き、アルコキシ基置換アルキル基;2−フェノキシエチル基、2−(4−メチルフェノキシ)エチル基の如き、アリールオキシ基が置換したアルキル基;2−ベンジルオキシエチル基、2−(2−フェニルエトキシ)エチル基の如き、アラルキルオキシ基が置換したアルキル基;ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基の如き、アリール基が置換したアルキル基、等が挙げられる。
【0016】
シクロアルキル基の代表的なものとしては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、等が挙げられる。アリール基の代表的なものとしては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、等が挙げられる。置換アリール基の代表的なものとしては、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−メチル−1−ナフチル基、等が挙げられる。
【0017】
そしてこれらのなかで、Rとして好ましいものは、炭素原子数が1〜8のアルキル基またはアルコキシ基を含む炭素原子数が3〜8のアルコキシ基置換アルキル基であり、特に好ましいものは、炭素原子数が1〜4なるアルキル基である。
【0018】
上述した一般式(I)で表されるエステル基を含有する不飽和二塩基酸エステルに由来する繰り返し単位(a−1)の代表的なものとしては、イタコン酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、シトラコン酸エステル、メサコン酸エステル等の不飽和二塩基酸エステルに由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0019】
そして、かかる繰り返し単位のうちイタコン酸エステルに由来する繰り返し単位の代表的なものとしては、下記一般式(II−1)で示される一般式(I)のエステル基を2個有する繰り返し単位および一般式(II−2)または(II−3)で示される一般式(I)のエステル基を1個有する繰り返し単位が挙げられる。
【0020】
【化2】

【0021】
〔但し、Rは水素原子、フェニル基または炭素原子数が1〜12のアルキル基を、Rは1価の有機基を、Rは水素原子または1価の有機基を、表すものとする〕
【0022】
そして、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、シトラコン酸エステル、メサコン酸エステルに由来する繰り返し単位の代表的なものとしては、下記一般式(III−1)で示される一般式(I)のエステル基を2個有する繰り返し単位および一般式(III−2)または(III−3)で示される一般式(I)のエステル基を1個有する繰り返し単位が挙げられる。
【0023】
【化3】

【0024】
〔但し、Rは水素原子、フェニル基または炭素原子数が1〜12のアルキル基を、Rは1価の有機基を、Rは水素原子または1価の有機基を、Rは水素原子またはメチル基を、表すものとする〕
【0025】
上記した一般式(II−1)〜(II−3)および(III−1)〜(III−3)に含有されるR は、水素原子または1価の有機基を表すものである。そして、1価の有機基としてのRの代表的なものは、1価の有機基であるR の代表的なものとして例示した通りである。そして、かかる各種の1価の有機基の中で、Rとして好ましいものは、炭素原子数が1〜8のアルキル基またはアルコキシ基を含む炭素原子数が3〜8のアルコキシ基置換アルキル基であり、特に好ましいものは、炭素原子数が1〜4なるアルキル基である。
【0026】
上述した、各種の不飽和二塩基酸エステルに由来する繰り返し単位(a−1)をビニル系重合体(A)に導入するには、(1)下記一般式(IV−1)〜(IV−3)で示されるイタコン酸エステル類あるいは下記一般式(V−1)〜(V−3)で示されるマレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、シトラコン酸エステル、メサコン酸エステル類の如き一般式(I)で示されるエステル基を含有する不飽和二塩基酸エステル類を共重合させる、(2)予めイタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸またはそれらと1価アルコール類とのハーフエステルを他のビニル系単量体と共重合してカルボキシル基を含有するビニル系重合体を調製した後、当該ビニル系重合体と下記一般式(VI)で示されるα−ハロカルボン酸エステル類を塩基性物質の存在下に反応させる、等の方法を適用できる。これらのうち、(1)なる方法が簡便で好ましい。
【0027】
【化4】

【0028】
〔但し、Rは水素原子、フェニル基または炭素原子数が1〜12のアルキル基を、Rは1価の有機基を、Rは水素原子または1価の有機基を、表すものとする〕
【0029】
そして、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、シトラコン酸エステルまたはメサコン酸エステルに由来する繰り返し単位の代表的なものとしては、下記一般式(III−1)で示される一般式(I)のエステル基を2個有するエステルおよび一般式(III−2)または(III−3)で示される一般式(I)のエステル基を1個有するエステルが挙げられる。
【0030】
【化5】

【0031】
〔但し、Rは水素原子、フェニル基または炭素原子数が1〜12のアルキル基を、Rは1価の有機基を、Rは水素原子または1価の有機基を、Rは水素原子またはメチル基を、表すものとする〕
【0032】
【化6】

【0033】
〔但し、Rは水素原子、フェニル基または炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、Rは1価の有機基を表し、Xはハロゲン原子を表すものとする〕
【0034】
上記した一般式(IV−1)〜(IV−3)、(V−1)〜(V−3)で示される不飽和二塩基酸エステルに含有されるRは、水素原子または1価の有機基を表すものである。そして、かかる1価の有機基としてのRの代表的なものとしては、1価の有機基としてのRの代表的なものとして上掲したとおりである。そして、これらの中でRとして好ましいものは、炭素原子数が1〜8のアルキル基またはアルコキシ基を含む炭素原子数が3〜8のアルコキシ基置換アルキル基であり、特に好ましいものは、炭素原子数が1〜4なるアルキル基である。
【0035】
繰り返し単位(a−1)を導入する際に使用される単量体〔以下、単量体(m−1)と略称する〕のうち、一般式(IV−1)で表されるイタコン酸エステルの代表的なものとしては、ビス(メトキシカルボニルメチル)イタコネート、ビス(エトキシカルボニルメチル)イタコネート、ビス(iso−プロポキシカルボニルメチル)イタコネート、ビス(n−ブトキシカルボニルメチル)イタコネート、ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルメチル)イタコネート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルキル基を有する化合物;ビス(2−メトキシエトキシカルボニルメチル)イタコネート、ビス(2−エトキシエトキシカルボニルメチル)イタコネート、ビス[2−(n−ブトキシ)エトキシカルボニルメチル]イタコネート、ビス(3−メトキシプロポキシカルボニルメチル)イタコネート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物;
【0036】
ビス(1−メトキシカルボニルエチル)イタコネート、ビス(1−エトキシカルボニルエチル)イタコネート、ビス[1−(n−プロポキシカルボニル)エチル]イタコネート、ビス[1−(n−ブトキシカルボニル)エチル]イタコネート、ビス[1−(iso−ブトキシカルボニル)エチル]イタコネート、ビス[1−(n−ヘキシルオキシカルボニル)エチル]イタコネート、等のRとしてメチル基を、Rとしてアルキル基を有する化合物;ビス[1−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]イタコネート、ビス[1−(2−エトキシエトキシカルボニル)エチル]イタコネート、ビス{1−[2−(n−プロポキシ)エトキシカルボニル]エチル}イタコネート、ビス{1−[2−(n−ブトキシ)エトキシカルボニル]エチル}イタコネート、等のRとしてメチル基を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物、等が挙げられる。
【0037】
単量体(m−1)のうち、一般式(IV−2)または(IV−3)表されるイタコン酸エステルの代表的なものとしては、モノメチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノメチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノメチル−モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノエチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ(n−ブチル)−モノ(メトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ(n−ブチル)−モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)イタコネート、等のRとして水素原子を、RおよびRとしてアルキル基を有する化合物;
【0038】
モノ(2−メトキシエチル)−モノ(メトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ(2−メトキシエチル)−モノ(エトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ(2−エトキシエチル)−モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ[2−(n−ヘキシルオキシ)エチル)]−モノ(メトキシカルボニルメチル)イタコネート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルキル基を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物;
【0039】
モノメチル−モノ(2−メトキシエトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノエチル−モノ(2−エトキシエトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ(n−プロピル)−モノ[2−(n−プロポキシ)エトキシカルボニルメチル]イタコネート、モノ(n−ブチル)−モノ[2−(n−ブトキシ)エトキシカルボニルメチル]イタコネート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を、Rとしてアルキル基を有する化合物;
【0040】
モノ(メトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ(エトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ(2−メトキシエトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ(2−エトキシエトキシカルボニルメチル)イタコネート、モノ[2−(n−プロポキシ)エトキシカルボニルメチル]イタコネート、モノ[2−(n−ブトキシ)エトキシカルボニルメチル]イタコネート、等のRおよびRとして水素原子を、Rとしてアルキル基またはアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物、等が挙げられる。
【0041】
単量体(m−1)のうち、一般式(V−1)で表されるマレイン酸エステルの代表的なものとしては、ビス(メトキシカルボニルメチル)マレート、ビス(エトキシカルボニルメチル)マレート、ビス(n−ブトキシカルボニルメチル)マレート、ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルメチル)マレート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルキル基を有する化合物;ビス(2−メトキシエトキシカルボニルメチル)マレート、ビス(2−エトキシエトキシカルボニルメチル)マレート、ビス[2−(n−ブトキシ)エトキシカルボニルメチル]マレート、ビス(3−メトキシプロポキシカルボニルメチル)マレート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物;
【0042】
ビス(1−メトキシカルボニルエチル)マレート、ビス(1−エトキシカルボニルエチル)マレート、ビス[1−(n−プロポキシカルボニル)エチル]マレート、ビス[1−(n−ブトキシカルボニル)エチル]マレート、ビス[1−(iso−ブトキシカルボニル)エチル]マレート、等のRとしてメチル基を、Rとしてアルキル基を有する化合物;ビス[1−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]マレート、ビス[1−(2−エトキシエトキシカルボニル)エチル]マレート、ビス{1−[2−(n−プロポキシ)エトキシカルボニル]エチル}マレート、ビス{1−[2−(n−ブトキシ)エトキシカルボニル]エチル}マレート、等のRとしてメチル基を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物、等が挙げられる。
【0043】
単量体(m−1)のうち、一般式(V−2)または(V−3)で表されるマレイン酸エステルの代表的なものとしては、モノメチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)マレート、モノメチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)マレート、モノメチル−モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)マレート、モノエチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)マレート、モノ(n−ブチル)−モノ(メトキシカルボニルメチル)マレート、モノ(n−ブチル)−モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)マレート、等のRとして水素原子を、RおよびRとしてアルキル基を有する化合物;
【0044】
モノ(2−メトキシエチル)−モノ(メトキシカルボニルメチル)マレート、モノ(2−メトキシエチル)−モノ(エトキシカルボニルメチル)マレート、モノ(2−エトキシエチル)−モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)マレート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルキル基を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物;
【0045】
モノメチル−モノ(2−メトキシエトキシカルボニルメチル)マレート、モノエチル−モノ(2−エトキシエトキシカルボニルメチル)マレート、モノ(n−プロピル)−モノ[2−(n−プロポキシ)エトキシカルボニルメチル]マレート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を、Rとしてアルキル基を有する化合物;
【0046】
モノ(メトキシカルボニルメチル)マレート、モノ(エトキシカルボニルメチル)マレート、モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)マレート、モノ(2−メトキシエトキシカルボニルメチル)マレート、モノ(2−エトキシエトキシカルボニルメチル)マレート、モノ[2−(n−プロポキシ)エトキシカルボニルメチル]マレート、モノ[2−(n−ブトキシ)エトキシカルボニルメチル]マレート、等のRおよびRとして水素原子を、Rとしてアルキル基またはアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物、等が挙げられる。
【0047】
単量体(m−1)のうち、一般式(V−1)で表されるフマル酸エステルの代表的なものとしては、ビス(メトキシカルボニルメチル)フマレート、ビス(エトキシカルボニルメチル)フマレート、ビス(n−ブトキシカルボニルメチル)フマレート、ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルメチル)フマレート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルキル基を有する化合物;ビス(2−メトキシエトキシカルボニルメチル)フマレート、ビス(2−エトキシエトキシカルボニルメチル)フマレート、ビス[2−(n−ブトキシ)エトキシカルボニルメチル]フマレート、ビス(3−メトキシプロポキシカルボニルメチル)フマレート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物;
【0048】
ビス(1−メトキシカルボニルエチル)フマレート、ビス(1−エトキシカルボニルエチル)フマレート、ビス[1−(n−プロポキシカルボニル)エチル]フマレート、ビス[1−(n−ブトキシカルボニル)エチル]フマレート、ビス[1−(iso−ブトキシカルボニル)エチル]フマレート、等のRとしてメチル基を、Rとしてアルキル基を有する化合物;ビス[1−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]フマレート、ビス[1−(2−エトキシエトキシカルボニル)エチル]フマレート、ビス{1−[2−(n−プロポキシ)エトキシカルボニル]エチル}フマレート、ビス{1−[2−(n−ブトキシ)エトキシカルボニル]エチル}フマレート、等のRとしてメチル基を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物、等が挙げられる。
【0049】
単量体(m−1)のうち、一般式(V−2)または(V−3)で表されるフマル酸エステルの代表的なものとしては、モノメチル−モノ(メトキシカルボニルメチル)フマレート、モノメチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)フマレート、モノメチル−モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)フマレート、モノエチル−モノ(エトキシカルボニルメチル)フマレート、モノ(n−ブチル)−モノ(メトキシカルボニルメチル)フマレート、モノ(n−ブチル)−モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)フマレート、等のRとして水素原子を、RおよびRとしてアルキル基を有する化合物;
【0050】
モノ(2−メトキシエチル)−モノ(メトキシカルボニルメチル)フマレート、モノ(2−メトキシエチル)−モノ(エトキシカルボニルメチル)フマレート、モノ(2−エトキシエチル)−モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)フマレート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルキル基を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物;
【0051】
モノメチル−モノ(2−メトキシエトキシカルボニルメチル)フマレート、モノエチル−モノ(2−エトキシエトキシカルボニルメチル)フマレート、モノ(n−プロピル)−モノ[2−(n−プロポキシ)エトキシカルボニルメチル]フマレート、等のRとして水素原子を、Rとしてアルコキシ基置換アルキル基を、Rとしてアルキル基を有する化合物;
【0052】
モノ(メトキシカルボニルメチル)フマレート、モノ(エトキシカルボニルメチル)フマレート、モノ(n−ブトキシカルボニルメチル)フマレート、モノ(2−メトキシエトキシカルボニルメチル)フマレート、モノ(2−エトキシエトキシカルボニルメチル)フマレート、モノ[2−(n−プロポキシ)エトキシカルボニルメチル]フマレート、モノ[2−(n−ブトキシ)エトキシカルボニルメチル]フマレート、等のRおよびRとして水素原子を、Rとしてアルキル基またはアルコキシ基置換アルキル基を有する化合物、等が挙げられる。
【0053】
上述の如く繰り返し単位(a−1)を導入することにより、本発明で使用されるビニル系重合体(A)が調製される。そして、ビニル系重合体(A)は、繰り返し単位(a−1)からなるものであってもよいし、必要に応じて、繰り返し単位(a−1)以外のビニル系単量体に由来する繰り返し単位〔以下、繰り返し単位(a−4)と略称する〕を含むものであってもよい。
【0054】
かかる繰り返し単位(a−4)を導入するには、繰り返し単位(a−4)を与えるビニル系単量体を共重合するのが簡便である。そして、かかるビニル系単量体[以下、単量体(m−4)と略称する]の代表的なものとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートの如き、アルキル(メタ)アクリレート類;
【0055】
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートの如き、シクロアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレートもしくは2−フェニルエチル(メタ)アクリレートの如き、アラルキル(メタ)アクリレート類;スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き、芳香族ビニル系単量体類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、安息香酸ビニルの如き、カルボン酸のビニルエステル類;クロトン酸メチル、クロトン酸n−ブチル、クロトン酸2−エチルヘキシルの如き、クロトン酸アルキルエステル類;
【0056】
ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジメチルイタコネート、ジ−n−ブチルイタコネートの如き、不飽和二塩基酸ジアルキルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテルの如き、アルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルビニルエーテルの如き、シクロアルキルビニルエーテル類;
【0057】
(メタ)アクリロニトリル、クロトノニトリルの如き、各種のシアノ基含有ビニル系単量体類;(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メトキシカルボニル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシカルボニル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドンの如き、カルボン酸アミド基を含有する単量体類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ−n−ブチルの如き、カルボキシル基含有単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸の如き、カルボン酸無水基を含有する単量体;
【0058】
2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートもしくは3−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジンもしくはN−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、4−ビニルピリジン、N−〔3−ジメチルアミノプロピル〕(メタ)アクリルアミド、2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテルの如き、3級アミノ基を含有する単量体;
【0059】
グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルビニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートの如きエポキシ基を含有する単量体;2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレートの如き、5員環のシクロカーボネート基含有ビニル系単量体類;5−〔N−(メタ)アクリロイルカルバモイルオキシメチル〕−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−〔N−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エチルカルバモイルオキシメチル〕−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オンの如き6員環のシクロカーボネート基含有ビニル系単量体類;
【0060】
フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンの如き、各種のフルオロオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデンの如き、クロル化オレフィン類;エチレン、プロピレンの如き、α−オレフィン類、等が挙げられる。
【0061】
上述した単量体からビニル系重合体(A)を調整する場合の重合方法に制約はなく、塊状ラジカル重合法、溶液ラジカル重合法、非水分散ラジカル重合法、水性媒体中での懸濁重合法、水性媒体中での乳化重合法等の公知慣用の種々の重合法を適用できる。本発明の組成物を有機溶剤をも含有する組成物として使用する場合には、これらのうち、特に有機溶剤中でのラジカル重合法が、簡便であり好ましい。
【0062】
有機溶剤中でのラジカル重合法を適用するに当たり、重合開始剤としては公知慣用の種々の化合物を使用できる。代表的なものとしては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の如き、アゾ化合物類;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネートの如き、過酸化物類、等が挙げられる。
【0063】
また、有機溶剤中でのラジカル重合法を適用するに当たり、有機溶剤としては公知慣用の各種の化合物を使用することが出来る。かかる溶媒として使用される化合物の代表的なものとしては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタンの如き、脂肪族系または脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンの如き、芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如き、アルコール類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの如き、エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノンの如き、ケトン類;
【0064】
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルの如き、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンの如き、エーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネート、等が挙げられる。そして、かかる化合物はそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0065】
また、本発明の組成物を水性組成物として使用する場合には、上掲した各種の重合方法の中で、好ましいものの一つとして水性媒体中での乳化重合法が挙げられる。かかる乳化重合法を適用するに際しては、公知慣用の乳化剤や分散剤の存在下に公知慣用の重合処方を適用すればよい。
【0066】
こうして調製されるビニル系重合体(A)に導入される一般式(I)で示されるエステル基の数は、一分子平均で2個以上であることが好ましく、さらに3個以上に設定することがより好ましい。
【0067】
また、ビニル系重合体(A)の1,000グラム中に導入される一般式(I)で示されるエステル基の量は、本発明の組成物の硬化性と保存安定性の点から、0.1〜6.3モルなる範囲内が好ましく、さらに0.3〜5.0モルなる範囲内がより好ましい。そして、当該エステル基の量が、かかる範囲内となるようにビニル系重合体(A)に導入される繰り返し単位(a−1)および(a−4)の量が決定されることが好ましい。
【0068】
そして、ビニル系重合体(A)の好ましい重量平均分子量は、本発明組成物の使用形態や用途によって異なるが、本発明組成物の硬化性および本発明組成物から得られる塗料等の取り扱い易さの観点から、2,000〜500,000であり、特に好ましくは、3,000〜200,000である。
【0069】
次に、組成物(S)を構成する水酸基および/またはブロックされた水酸基を含有する化合物(B)について説明する。かかる化合物(B)は、比較的低分子量の化合物に加えて比較的分子量が高いオリゴマーや分子量が高いポリマーをも包含するものである。
【0070】
上述した化合物(B)のなかの、低分子量の化合物の代表的なものとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如き多価アルコール類;前記した如き多価アルコール類をトリメチルクロロシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザンの如きトリオルガノシリル化剤と反応させて得られる一分子中に2個以上のトリオルガノシリルオキシ基を含有する化合物;前記した如き多価アルコール類を、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジヒドロフラン、ジヒドロピランの如き、α,β−不飽和エーテル化合物を反応させて得られる水酸基がアセタールあるいはケタールの形にブロックされた化合物;3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−オキサゾリジンとヘキサメチレンジイソシアネートのモル比2:1付加物、3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−オキサゾリジンとイソホロンジイソシアネートのモル比2:1付加物、2,2−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−オキサゾリジンとトルエンジイソシアネートとのモル比2:1付加物の如き、多官能のオキサゾリジン化合物、等が挙げられる。
【0071】
化合物(B)のなかのオリゴマーや分子量が高い化合物の代表的なものとしては、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリエーテル系重合体、ビニル系重合体等の各種の重合体が挙げられる。そして、ビニル系重合体の具体的なものとしてはアクリル系重合体、ビニルエステル系重合体、オレフィン系重合体、芳香族ビニル系重合体、フルオロオレフィン系重合体等の各種のものが挙げられる。そして、かかる各種のビニル系重合体の中で、好ましいものの一つとしてアクリル系重合体が挙げられる。
【0072】
上掲した各種の樹脂類の中で水酸基を含有するポリエステル系樹脂を調製するには、公知慣用の多価アルコール類と多価カルボン酸もしくはその反応性誘導体を原料に使用して公知慣用の方法で反応させればよい。
【0073】
水酸基を有するポリウレタン系重合体を調製するには、公知慣用のジオール類とジイソシアネート化合物を原料に使用して公知慣用の方法で反応させればよい。ジオール類としては、化合物(B)のなかの低分子量の化合物の代表的なものとして前掲した如き低分子量のジオール化合物、ポリエステルジオール、後述する如きポリエーテルジオール等を使用することもできる。
【0074】
水酸基を含有するポリエーテル系重合体の代表的なものとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、3価以上の多価アルコールとエチレンオキサイドを反応させることにより調製されるポリオキシエチレンポリオール、3価以上の多価アルコールとプロピレンオキサイドを反応させることにより調製されるポリオキシプロピレンポリオール等が挙げられる。
【0075】
ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体あるいはポリエーテル系重合体であってブロックされた水酸基を有する重合体を調製するには、予め調製した水酸基を含有する各重合体に前掲した如きトリオルガノシリル化剤あるいは前掲した如きα,β−不飽和エーテル化合物を反応させて、それぞれトリオルガノシロキシ基でブロックされた水酸基、アセタールあるいはケタールの形でブロックされた水酸基を導入することができる。また、オキサゾリジン基を含有する重合体を調製するには、例えば、水酸基を含有するそれぞれの重合体に過剰のジイソシアネート化合物を反応させてイソシアネート基を含有するプレポリマーに変換し、更に、当該プレポリマーに3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−オキサゾリジンの如き水酸基含有1,3−オキサゾリジン化合物を反応させればよい。
【0076】
上述したポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体あるいはポリエーテル系重合体に導入される水酸基および/またはブロックされた水酸基の数は、1分子当たり2個以上であることが好ましい。
【0077】
化合物(B)としての水酸基および/またはブロックされた水酸基を含有するビニル系重合体を調製するには、(3)水酸基を含有するビニル系単量体および/またはブロックされた水酸基を含有するビニル系単量体を共重合させる方法、(4)予め調製した水酸基を含有するビニル系重合体に水酸基のブロック化剤を反応させる方法、等を適用することができる。これらのなかでは、前者の(3)なる方法が簡便である。
【0078】
水酸基を含有する単量体〔以下、単量体(m−2)と略称する〕の代表的なものとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートの如き、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの如き、水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテルの如き、水酸基含有アリルエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングルコールの如きポリエーテルジオールと(メタ)アクリル酸などで以て代表される不飽和モノカルボン酸とを反応させて得られるポリオキシアルキレングリコールのモノ不飽和カルボン酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレートで以て代表されるエポキシ基含有不飽和単量体と、酢酸で以て代表される飽和1価カルボン酸類との付加反応生成物;(メタ)アクリル酸で以て代表される不飽和カルボン酸類と、「カージュラー E」(オランダ国シェル社製の商品名)で以て代表される、α−オレフィンのエポキサイド以外のモノエポキシ化合物との付加反応生成物がある。
【0079】
さらに、単量体(m−2)として前掲した如き水酸基含有ビニル系単量体類の水酸基を、ε−カプロラクトンの如きラクトン類と反応せしめて得られる水酸基を含有するビニル系単量体も使用することができる。かかる水酸基を含有する単量体の代表的なものとしては、「プラクセル FA−1」〔ダイセル化学工業(株)製の、2−ヒドロキシエチルアクリレート1モルにε−カプロラクトン1モルを付加して得られる単量体〕、「プラクセル FM−1」〔ダイセル化学工業(株)製の、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート1モルにε−カプロラクトンを1モル付加して得られる単量体〕、「プラクセル FM−3」〔ダイセル化学工業(株)製の、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート1モルにε−カプロラクトンを3モル付加して得られる単量体〕、「TONE M−100」〔米国ユニオンカーバイド社製の、2−ヒドロキシエチルアクリレート1モルにε−カプロラクトン2モルを付加して得られる単量体〕等があげられる。
【0080】
ブロックされた水酸基の代表的なものとしては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、シクロヘキシルジメチルシリルオキシ基、ジメチル−tert−ブチルシリルオキシ基の如きトリオルガノシリル基でブロックされた水酸基;水酸基にメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−メトキシプロペン、ジヒドロフラン、ジヒドロピランの如きα,β−不飽和エーテル化合物を付加して得られるアセタールあるいはケタールとしてブロックされた水酸基;2−アミノエチルアルコール構造を有する水酸基が1,3−オキサゾリジン構造としてブロックされた水酸基等が挙げられる。
【0081】
ブロックされた水酸基を含有するビニル系単量体〔以下、単量体(m−3)と略称する〕の代表的なものとしては、2−トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、2−シクロヘキシルジメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチル−tert−ブチルシロキシ)エチル(メタ)アクリレート、4−トリメチルシロキシブチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシエチルビニルエーテル、4−(ジメチル−tert−ブチルシロキシ)ブチルビニルエーテルの如き、トリオルガノシリル基でブロックされた水酸基を含有する単量体;
【0082】
2−(1−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(1−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(1−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(1−イソブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(1−シクロヘキシルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、4−(1−メトキシエトキシ)ブチル(メタ)アクリレート、4−(1−シクロヘキシルオキシエトキシ)ブチル(メタ)アクリレート、2−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシテトラヒドロフラン、2−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシテトラヒドロピランの如き、水酸基含有単量体の水酸基をα,β−不飽和エーテル化合物でブロックした単量体;3−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルオキサゾリジン、2,2−ジメチル−3−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルオキサゾリジン、2−イソブチル−3−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルオキサゾリジンの如き、オキサゾリジン基を含有する単量体、等が挙げられる。
【0083】
かかる化合物(B)としてのビニル系重合体に導入される水酸基および/またはブロックされた水酸基の数は、硬化性の点から1分子平均2個以上であることが好ましく、さらに3個以上であることがより好ましい。そして、本発明の組成物の硬化性と保存安定性の点から、当該ビニル系重合体の1,000グラムに導入される水酸基および/またはブロックされた水酸基の量は、0.1〜8.0モルの範囲内が好ましく、さらに0.4〜6.0モルの範囲内がより好ましい。
【0084】
そして、化合物(B)としてのビニル系重合体の好ましい重量平均分子量は、本発明組成物の使用形態や用途によって異なるが、本発明組成物の硬化性および本発明組成物から得られる塗料等の取り扱い易さの観点から、2,000〜500,000であり、特に好ましくは、3,000〜200,000である。
【0085】
次に、本発明の硬化性組成物(S)を構成する必須成分であるエステル交換触媒(C)について説明する。
【0086】
本発明の硬化性組成物において、一般式(I)で示されるエステル基と水酸基および/またはブロックされた水酸基との間のエステル交換反応により硬化が進行する。かかるエステル交換反応を促進するために、エステル交換触媒(C)が添加される。かかるエステル交換触媒としては、公知慣用のエステル交換触媒のいずれをも使用することができるし、しかもそれらは、単独使用でも2種類以上の併用でもよいことは勿論である。
【0087】
かかるエステル交換反応触媒の代表的なものとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの如きアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムエトキシド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラ−n−ブトキサイド、サマリウム(III)フェノキシド、イッテルビウム(III)ブトキシドの如き、各種金属のアルコキシド類;サマリウム(III)アセテート、イッテルビウム(III)プロピオネートの如き、ランタニド系金属のカルボキシレート類;亜鉛アセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、サマリウム(III)アセチルアセトネートの如き、各種金属の錯体類;
【0088】
ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレートの如き、有機錫化合物類;N,N’−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)の如き強塩基性のアミン化合物;
【0089】
テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシプロピル)アンモニウム塩、シクロヘキシルトリメチルアンモニム塩、テトラキス(ヒドロキシメチル)アンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩の如き、各種4級アンモニウム塩類であって、対アニオンとしてアセテート、プロピオネートの如き各種のカルボキシレートあるいはクロライド、ブロマイド、ハイドロオキサイドなどのアニオンを有する、いわゆる4級アンモニウム塩類;
【0090】
テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩;テトラブチルホスホニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシプロピル)ホスホニウム塩であって、対アニオンとして、例えばアセテート、プロピオネートの如きカルボキシレートあるいはクロライド、ブロマイド、ハイドロオキサイドの如きホスホニウム塩類;
【0091】
メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、オクタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、燐酸、硫酸、塩酸の如き、酸性化合物類;前記した如き酸性化合物とアンモニア、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンの如き含窒素塩基性化合物との塩類等が挙げられる。
【0092】
ビニル系重合体(A)、化合物(B)およびエステル交換触媒(C)から本発明の硬化性組成物(S)を調製する際の、ビニル系重合体(A)と化合物(B)の使用比率は、硬化性の点から、ビニル系重合体(A)に含有される一般式(I)で示されるエステル基と化合物(B)に含有される水酸基とブロックされた水酸基の合計量のモル比が、好ましくは1:10〜10:1なる範囲内、より好ましくは2:10〜10:2なる範囲内、となる様に設定すればよい。そして、エステル交換触媒(C)の配合量は、硬化性組成物(S)の硬化性および保存安定性の点から、ビニル系重合体(A)と化合物(B)の合計量の1,000グラムに対して、エステル交換触媒(C)の量が、好ましくは0.003〜0.3モル、より好ましくは0.006〜0.25モル、最も好ましくは0.015〜0.15モルとなる様な比率で3成分を混合すればよい。
【0093】
上述のようにして調製される本発明の硬化性組成物にアミノ樹脂および/またはブロックイソシアネートを配合することにより、本発明の組成物の硬化性を一層向上させたり、得られる硬化物の性能を向上させることができる。
【0094】
アミノ樹脂の代表的なものとしては、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、尿素もしくはグリコウリルの如き、各種のアミノ基含有化合物を、ホルムアルデヒドもしくはアセトアルデヒドの如き、各種のアルデヒド化合物と反応せしめて得られるアルキロール化物;かかるアルキロール化物を、メタノール、エタノール、n−ブタノールもしくはi−ブタノールの如き、各種の低級アルコールと反応せしめて得られる、部分ないしは完全エーテル化物などが挙げられる。
【0095】
ブロックイソシアネートの代表的なものとしては、各種のポリイソシアネート化合物に含有されるイソシアネート基を、後掲するような種々のブロック剤で以てブロック化せしめることによって得られるブロックポリイソシアネート化合物や、イソシアネート基を環化二量化せしめることによって得られるウレトジオン構造を含む化合物などがある。
【0096】
この際に用いられるポリイソシアネート化合物の代表的なものとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートの如き、各種の芳香族ジイソシアネート類;メタ−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−メタ−キシリレンジイソシアネートの如き、各種のアラルキルジイソシアネート類;
【0097】
ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3−ビスイソシアナートメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナートシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートの如き、各種の脂肪族ないしは脂環族ジイソシアネート類;
【0098】
上記した各種のポリイソシアネート類を、多価アルコール類と付加反応せしめて得られるイソシアネート基を有するプレポリマー類;上記した各種のポリイソシアネート類を環化三量化せしめて得られるイソシアヌレート環を有するプレポリマー類;上記した各種のポリイソシアネート類と水とを反応せしめて得られるビウレット構造を有するポリイソシアネート類;
【0099】
2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネートの如き、各種のイソシアネート基を有するビニル単量体の単独重合体;前記したイソシアネート基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られるイソシアネート基含有アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などがある。
【0100】
そして、かかるポリイソシアネートのなかで、耐候性の面からは、脂肪族ないしは脂環式ジイソシアネート化合物、それらの各ジイソシアネート化合物から誘導される種々のプレポリマーあるいはイソシアネート基含有ビニル系重合体などの使用が特に望ましい。
【0101】
前記ポリイソシアネートからブロックイソシアネートを調製する際に使用されるブロック剤の代表的なものとしては、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、乳酸エステルの如き、各種のカルビノール基含有化合物類;フェノール、サリチル酸エステル、クレゾールの如き各種のフェノール性水酸基含有化合物類;ε−カプロラクタム、2−ピロリドン、アセトアニリドの如き、各種のアマイド類;アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシムの如きオキシム類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンの如き、各種の活性メチレン化合物類などがある。
【0102】
上述した硬化性組成物(S)とアミノ樹脂および/またはブロックイソシアネートから本発明の硬化性組成物を調製するには、硬化性と耐酸性の点から、硬化性組成物(S)に含有されるビニル系重合体(A)と化合物(B)の合計量の100重量部に対して、アミノ樹脂および/またはブロックイソシアネートの量が、好ましくは3〜66重量部の範囲となるように、より好ましくは5〜50重量部となるように、アミノ樹脂および/またはブロックイソシアネートを添加すればよい。
【0103】
上述のようにして調製される本発明の各硬化性組成物は、そのままで、クリヤー組成物として使用することができるし、さらに、顔料が配合された形で着色組成物として使用することができる。
【0104】
本発明組成物には、必要に応じて、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤または顔料分散剤のような公知慣用の各種の添加剤類などをも配合せしめることができる。
【実施例】
【0105】
次に、本発明を、実施例により、一層、具体的に説明をするが、本発明は、決して、これらの例のみに限定されるものではない。なお、以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて、重量基準であるものとする。
【0106】
参考例1〔ビニル系重合体(A)の調製〕
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応器にキシレン(Xy) 600部、酢酸ブチル(BAc) 195部およびビスメトキシカルボニルメチルイタコネート(BMCMI) 137部を仕込んで、窒素ガス気流下に攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、BMCMI 137部、スチレン(ST) 150部、メチルメタクリレート(MMA) 200部、ブチルメタクリレート(BMA) 200部、ブチルアクリレート(BA) 176部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPEH) 30部およびBAc 200部から成る混合物を4時間で滴下した。その後、同温度で反応を継続し、滴下終了から2時間後にBAc 5部とTBPEH 6部からなる混合物を添加した。その後、同温度で13時間の加熱・攪拌を行った。ついで、不揮発分が50.0%になるようにXy/BAc=60/40(重量比)なる混合溶剤で希釈して、数平均分子量が9,100、重量平均分子量が28,000なるアルコキシカルボニルメチルエステル基を含有するビニル系重合体の溶液を得た。以下、この重合体溶液をビニル系重合体(A−1)と略称する。
【0107】
参考例2〔化合物(B)の調製〕
参考例1と同様の反応器にXy 600部およびBAc 195部を仕込んで、窒素ガス気流下に攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、ST 150部、MMA 200部、BMA 200、BA 190部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA) 260部、TBPEH 30部およびBAc 200部から成る混合物を4時間で滴下した。その後、同温度で反応を継続し、滴下終了から2時間後にBAc 5部とTBPEH 6部からなる混合物を添加した。その後、同温度で13時間の加熱・攪拌を行った。ついで、不揮発分が50.0%になるようにXy/BAc=60/40(重量比)なる混合溶剤で希釈して、数平均分子量が7,800、重量平均分子量が33,000なる水酸基を含有するビニル系重合体の溶液を得た。以下、この重合体溶液を化合物(B−1)と略称する。
【0108】
参考例3〔化合物(B)の調製〕
単量体として、ST 150部、MMA 200部、BMA 200部、BA46部および2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート(TMSEMA) 404部を使用する以外は、参考例2と同様に重合を行った。ついで、不揮発分が50.0%になるようにXy/BAc=60/40重量比)なる混合溶剤で希釈して、数平均分子量が7,700、重量平均分子量が29,000なるトリメチルシリル基でブロックされた水酸基を含有するビニル系重合体の溶液を得た。以下、この重合体溶液を化合物(B−2)と略称する。
【0109】
参考例4〔比較実験用のビニル系重合体の調製例〕
参考例1と同様の反応器に、Xy 600部とBAc 195部を仕込んで、窒素ガス気流下に攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、メトキシカルボニルメチルメタクリレート 158部、ST 150部、MMA 200部、BMA102部、BA 260部、2−HEMA 130部、TBPEH 24部およびBAc 200部から成る混合物を4時間で滴下した。その後、同温度で反応を継続し、滴下終了から2時間後にBAc 5部とTBPEH 7部からなる混合物を添加した。その後、同温度で13時間の加熱・攪拌を行った。ついで、不揮発分が50.0%になるようにXy/BAc=60/40(重量比)なる混合溶剤で希釈して、数平均分子量が7,200、重量平均分子量が36,000なるアルコキシカルボニルメチルエステル基と水酸基を含有するビニル系重合体の溶液を得た。以下、この重合体溶液をビニル系重合体(RP−1)と略称する。
【0110】
参考例5〔比較実験用のビニル系重合体の調製例〕
参考例1と同様の反応器に、Xy 700部とn−ブタノール 95部を仕込んで、窒素ガス気流下に攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、ST 150部、MMA 200部、BMA 288部、BA 212部、2−HEMA 130部、アクリル酸 20部、TBPEH 32部およびn−ブタノール 200部から成る混合物を4時間で滴下した。その後、同温度で反応を継続し、滴下終了から2時間後にn−ブタノール 5部とTBPEH 8部からなる混合物を添加した。その後、同温度で13時間の加熱・攪拌を行った。ついで、不揮発分が50.0%になるようにXy/n−ブタノール=70/30(重量比)なる混合溶剤で希釈して、数平均分子量が8,200、重量平均分子量が33,000なる水酸基を含有するビニル系重合体の溶液を得た。以下、この重合体溶液をビニル系重合体(RP−2)と略称する。
【0111】
実施例1〜4
参考例1〜3で調製したビニル系重合体(A)、化合物(B)およびエステル交換触媒(C)を使用して、第1表に示した配合比率に従って本発明の硬化性樹脂組成物を調製した。各組成物を日本ルートサービス(株)製の電着中塗り水研ぎ板(ポリエステル・メラミン系塗料が塗装された塗装鋼板を水研ぎして得られた塗板)上に、アプリケータを使用して塗布した後、120℃に保持した熱風乾燥機中で20分間焼き付けて膜厚が約40μmなる硬化塗膜を得た。各塗膜について塗膜性能評価を行った結果を同表に示した。
【0112】
比較例1〜2
それぞれ参考例4および5で調製した比較実験用のビニル系重合体(RP−1)および(RP−2)を使用し、第1表に示した配合比率に従って比較対照用の硬化性樹脂組成物を調製した。実施例1〜4で調製した本発明の組成物に代えて、比較対照用の硬化性組成物を使用する以外は、実施例1〜4と同様にして硬化塗膜を作成し、性能評価を行った。評価結果を第1表に示した。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
第1表(1)及び(2)の脚注「DBTDA」・・・エステル交換触媒としてのジブチル錫ジアセテートの略記。
「L−117−60」・・・大日本インキ化学工業(株)製のn−ブチルエーテル化メラミン樹脂「スーパーベッカミンL−117−60」の略記。不揮発分60%。
「B7−887−60」・・・大日本インキ化学工業(株)製のヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート樹脂のブロック化物「バーノックB7−887−60」の略記。不揮発分60%。
【0116】
「耐溶剤性」・・・キシレンを浸み込ませたフェルトで以て、塗膜上を、往復10回ラビングしたのちの塗膜の状態を、目視および指触により判定した。評価基準は下記の通りである。
○:軟化および光沢低下が認められない
△:若干の軟化または光沢低下が認められる
×:著しい軟化または光沢低下が認められる
【0117】
「耐酸性」・・・10%硫酸水溶液の0.1mlを塗膜に載せ、60℃に保温した熱風乾燥機中に30分間放置したのちの塗膜を水洗、乾燥し表面状態を目視により評価した。評価基準は下記の通りである。
○:エッチング跡なし
△:若干エッチング跡あり
×:エッチング著しい
【0118】
「耐擦り傷性」・・・濃度5%のクレンザー水分散液を浸み込ませたフェルトで以て、塗膜上を、600gの荷重下に、往復30回に亘るラビングを行ったのちの塗膜の60度光沢保持率(%)で以て表示した。この値が大きいほど、耐擦り傷性に優れることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の硬化性樹脂組成物は、その用途に応じて、有機溶剤溶液型、有機溶剤分散型、無溶剤液状型、無溶剤固形型、粉状型(粉体)、水溶液型、水分散型などのいずれの形態としてでも用いることができ、自動車のトップコート用塗料をはじめとする各種の塗料、接着剤、インキ等の用途に有効に利用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるエステル基を含有する不飽和二塩基酸エステルに由来する繰り返し単位(a−1)を含有してなるビニル系重合体(A)、水酸基および/またはブロックされた水酸基を含有する化合物(B)およびエステル交換触媒(C)を含んで成る硬化性樹脂組成物であって、ビニル系重合体(A)と化合物(B)の合計量の1,000グラムに対してエステル交換触媒(C)を0.003〜0.3モルの範囲で配合して成ることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【化1】

〔但し、Rは水素原子、フェニル基または炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、Rは1価の有機基を表すものとする〕
【請求項2】
前記ビニル系重合体(A)の1,000グラム中に導入される下記一般式(I)で示されるエステル基の量が0.1〜6.3モルなる範囲内であり、化合物(B)の1,000グラムに導入される水酸基および/またはブロックされた水酸基の量が0.1〜8.0モルの範囲内である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】

〔但し、Rは水素原子、フェニル基または炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、Rは1価の有機基を表すものとする〕
【請求項3】
前記ビニル系重合体(A)と化合物(B)の使用比率がビニル系重合体(A)に含有される下記一般式(I)で示されるエステル基と化合物(B)に含有される水酸基とブロックされた水酸基の合計量のモル比で1:10〜10:1なる範囲内である請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【化3】

〔但し、Rは水素原子、フェニル基または炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、Rは1価の有機基を表すものとする〕
【請求項4】
前記ビニル系重合体(A)および化合物(B)が、アクリル系重合体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エステル交換触媒(C)が、錫系化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
アミノ樹脂および/またはブロックイソシアネートをも含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−100108(P2007−100108A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11307(P2007−11307)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【分割の表示】特願2001−312560(P2001−312560)の分割
【原出願日】平成13年10月10日(2001.10.10)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】