説明

硬化性樹脂組成物

【課題】 TVOCの発生量の少ない硬化性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】 エチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)及び一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)を含んでなる硬化性樹脂組成物において、前記エチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)及び/又は前記一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)中に炭素と水素との結合解離エネルギーが密度汎関数法に基づいて算出される値で80kcal/mol以下の結合からなる活性水素を有し、前記活性水素の量が前記樹脂(1)と前記単量体(2)との合計1Kg中0.1〜20molであることを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TVOC放散量の少ない硬化性樹脂組成物に関し、さらに被覆材、成形物に利用することができる硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性不飽和樹脂は、硬化が速く、作業時間・施工時間を短くすることが可能である。そして、その硬化物は耐薬品性が良好で、美麗な仕上がりを与えるため、ライニング材、木工用塗料、成型物、シーリング材、接着剤等に用いられている。そして、かかるラジカル硬化性樹脂を空気中で硬化させると、エチレン性不飽和結合を有する重合性不飽和樹脂と重合性不飽和単量体とを反応させ硬化物を与える一方、酸素が反応に関与することにより、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、その他揮発性有機化合物(以下VOCという)が発生する。(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドをはじめとするVOCは、シックハウス等環境問題の原因物質とされ、その放散量指針が厚生労働省により示されている。
ホルムアルデヒドは、建築基準法によりVOCの規制が開始され、その規制に沿って作成された被覆物、成形物が市場に出てきている。
しかし、非特許文献1に記載がある様に、空気中でラジカル重合により硬化させた際は、様々なVOCが放散し、厚生労働省指針に対応できるラジカル重合系樹脂は得られていなかった。
【0004】
この課題に対して、アルデヒドを補足する機能を有するキャッチャー剤等の添加も提案され、アルデヒドには効果のあることが確認されている。(例えば特許文献1及び2参照)。
【0005】
しかしながら、ラジカル重合による硬化では反応に酸素が関与することにより、様々な物質が生成する為、トータルVOC(以下TVOCという)の削減には問題があった。
【0006】
【非特許文献1】Stanford Research Institute; Frank R. Mayo(1968)
【特許文献1】特開2005−15642号公報
【特許文献2】特開2005−146205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、TVOCの発生量の少ない硬化性樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、樹脂組成物中の炭素と水素との結合の解離エネルギーと理論活性水素量に着目し、特定の数値以下の炭素と水素との結合の解離エネルギーを有する理論活性水素の量が特定の数値範囲内にあれば、TVOCの放散量が少なくなるという知見を得るに及んで、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、エチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)及び一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)を含んでなる硬化性樹脂組成物において、前記エチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)及び/又は前記一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)中に炭素と水素との結合解離エネルギーが密度汎関数法に基づいて算出される値で80kcal/mol以下の結合からなる活性水素を有し、前記活性水素の量が前記樹脂(1)と前記単量体(2)との合計1Kg中0.1〜20molであることを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物は、TVOCの発生量が少なく、シックハウス対策を必要とする土木建築用の被覆材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、炭素と水素との結合解離エネルギーが密度汎関数法に基づいて算出される値で80kcal/mol以下の結合からなる活性水素を有するものである。以下炭素と水素との結合をC−H結合という。
かかる密度汎関数法は、分子軌道法と同じく分子の電子状態などの量子化学計算をするための方法であり、電子系のエネルギーなどの物性を電子密度から計算することが可能であるとする理論である。分子軌道法が波動関数を中心に計算するのに対して、密度汎関数法では、全電子密度(ρ)を基本量として計算していくものである。具体的な計算は、Gaussian03(Gaussian,Inc.社製)プログラムを用いて行うことができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、この密度汎関数法に基づいて算出される解離エネルギーが80kcal/mol以下のC−H結合からなる活性水素を含むものである。C−H結合の解離エネルギーは、C−H結合解離前後の系の全エネルギーの差から求めることができる。すなわちC−H結合解離前後の系の安定構造を計算し、そのエネルギーの差を求め、実測値に合うように補正式(0.9819X−5.8685)を適用することにより求められる。
【0011】
次に各種代表的なC−H結合の解離エネルギーが80kcal/mol以下の官能基の構造を示す。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
結合解離エネルギーが80kcal/mol以下のC−H結合からなる活性水素は、エチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)中、一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)中、又はエチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)及び一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)中にあればよい。
解離エネルギーが80kcal/mol以下のC−H結合を有する、エチレン性不飽和基を有する樹脂(1)と一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)との合計1Kg中に活性水素の量が0.1〜20molあれば、本発明の硬化性樹脂組成物からのTVOCの発生量が少ないという効果が発現される。このうち、特に活性水素の量が、1.5〜20molであることが好ましい。
【0017】
硬化性樹脂組成物中の解離エネルギーが80kcal/mol以下のC−H結合の活性水素の量を計算する方法としては、後記実施例で得られる不飽和ポリエステル(UPE3)を用いた例を示す。このUPE3は、上記のとおり、原料を縮合脱水するとUPE3は1000部(kg)生成する。原料のうち、式1で表される構造を含むメチルテトラヒドロ無水フタル酸は、1モル中に理論活性水素は2モルあり、分子量は166である。よって、樹脂1Kg中の理論活性水素=2×(64/166)/(1000/1000)=0.77モルとなる。
【0018】
硬化性樹脂組成物中に、密度汎関数法に基づいて算出される解離エネルギーが80kcal/mol以下のC−H結合の活性水素を有する官能基を導入するには、例えばエステル化反応を利用することができる。
【0019】
前記エステル化反応としては、例えば1)多価アルコールとして、活性水素を有するアリルエーテル基を含有する化合物を使用する方法、2)多価アルコールとして、多価アルコールと活性水素を有する乾性油等の脂肪油とのエステル交換反応で得られるアルコリシス化合物を使用する方法、3)カルボン酸として、環状不飽和脂肪族多塩基酸およびその誘導体を含有する化合物を使用する方法、4)多価アルコールとして、活性水素を有するジシクロペンタジエニル基を含有する化合物を使用する方法が挙げられる。
【0020】
1)の方法で使用する活性水素を有するアリルエーテル基含有化合物は、上記の(式2)で表される構造を含む公知のものがいずれも使用できる。例えばエチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロ−ルプロパンモノアリルエーテル、トリメチロ−ルプロパンジアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多価アルコール類のアリルエーテル化合物、アリルグリシジルエーテルなどの如きオキシラン環を有するアリルエーテル化合物等が挙げられる。
【0021】
2)の方法で使用する活性水素を有する乾性油としては、ヨウ素価130以上の油脂が好ましく、例えばアマニ油、大豆油、綿実油、落花生油、やし油等が挙げられる。また、エステル交換反応で得られるアルコリシス化合物に用いる多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール等の4価アルコールが挙げられる。
【0022】
3)の方法で使用する活性水素を有する環状脂肪族不飽和多塩基酸およびその誘導体を含有する化合物としては、上記の式1で表される構造を含む、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、α−テルヒネン・無水マレイン酸付加物、トランス−ピペリレン・無水マレイン酸付加物等が挙げられる。
【0023】
4)の方法で使用する活性水素を有するジシクロペンタジエニル基を含有する化合物としては、ヒドロキシ化ジシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0024】
解離エネルギーが80kcal/mol以下のC−H結合の活性水素を有する官能基を導入するには、前記エステル化反応のほかには、後で述べる、ウレタン化反応が挙げられる。
このウレタン化反応を利用した導入方法は、樹脂硬化物に低温柔軟性等を付与したい際は、有効な方法である。
【0025】
本発明に使用するエチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、物性調整の容易さ、耐黄変性の点でポリエステル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
かかるポリエステル(メタ)アクリレートは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する飽和若しくは不飽和ポリエステルであり、飽和若しくは不飽和ポリエステルの末端の官能基に、この官能基と反応する官能基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させたものである。かかるポリエステル(メタ)アクリレートの数分子量としては、好ましくは500〜5000である。
前記化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸またはメタクリル酸の如き各種の不飽和一塩基酸、およびそのグリシジルエステル類等が挙げられる。これらのうち、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0027】
前記飽和ポリエステルは、飽和二塩基酸と多価アルコールとの縮合反応により得られるものであり、また、前記不飽和ポリエステルは、α,β−不飽和二塩基酸を含む二塩基酸類と多価アルコールとの縮合反応により得られるものである。
【0028】
ここでいう飽和二塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸等を挙げることができ、また不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。また、多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4'−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等を挙げることができる。
【0029】
前記エポキシ(メタ)アクリレートは、好ましくは1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するもので、エポキシ樹脂と(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸とをエステル化触媒の存在下で反応して得られるものである。
【0030】
ここでいうエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールタイプまたはノボラックタイプのエポキシ樹脂が挙げられる。これらを単独で用いても、またはこれらを混合して用いてもよい。エポキシ樹脂の平均エポキシ当量は、150〜450の範囲のものが好ましい。
【0031】
上記ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂としては、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られる実質的に1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られるメチルグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、あるいはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリン若しくはメチルエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂などが挙げられる。また、上記ノボラックタイプのエポキシ樹脂としては、例えばノボラック型フェノール樹脂又はノボラック型クレゾール樹脂と、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂などがある。
【0032】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に用いられる(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノ(2−エチルヘキシル)あるいはソルビン酸などが挙げられる。これらの(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸は、単独でも、2種以上混合しても用いられる。上記エポキシ樹脂と(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸との反応は、好ましくは60〜140℃、特に好ましくは80〜120℃の温度において、エステル化触媒を用いて行われる。
【0033】
上記のエステル化触媒としては、たとえばトリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン若しくはジアザビシクロオクタンなどの如き三級アミン、トリフェニルホスフィンあるいはジエチルアミン塩酸塩などの如き公知の触媒が挙げられる。
【0034】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール、ポリイソシアネートおよび1分子中に1個以上の水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物との反応により得られるものであり、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものである。
【0035】
かかるウレタン(メタ)アクリレートに用いられるポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカ−ボネ−トポリオール、ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。これらのポリオールの数平均分子量は200〜3000であるものが好ましく、400〜2000のものが特に好ましい。
【0036】
ウレタン(メタ)アクリレートに用いるポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体または異性体の混合物(以下TDIと略す)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができ、それらの単独または2種以上で使用することができる。上記ポリイソシアネートのうち、ジイソシアネート、特にTDIが好ましく用いられる。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレートに用いられる1分子に1個以上の水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0038】
また、ウレタン(メタ)アクリレートの原料として、例えばエチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロ−ルプロパンモノアリルエーテル、トリメチロ−ルプロパンジアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多価アルコール類のアリルエーテル化合物、アリルグリシジルエーテルなどの如きオキシラン環を有するアリルエーテル化合物等の水酸基を有しかつ上記の(式2)で表される構造を含む化合物を用いることにより、樹脂中にC−H結合解離エネルギーが80kcal/mol以下の理論活性水素を導入することができる。
【0039】
ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法としては、1)先ずポリイソシアネートとポリオールとを好ましくは当量比でNCO/OH=1.3〜2になるように反応させ、末端イソシアネート化合物を生成させ、次いでそれに水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物をイソシアネート基に対して水酸基がほぼ等量になるように反応させる方法、2)ポリイソシアネートと水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを当量比でNCO/OH=2以上となるように反応させ、片末端にイソシアネート基を有する化合物を生成させ、次いでポリオールを加えてイソシアネート基と反応させる方法等が挙げられる。
【0040】
ここでいうポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイド、ビスフェノールA及びビスフェノールFに上記アルキレンオキサイドを付加させたもの等を挙げることができる。
【0041】
またポリエステルポリオールは、二塩基酸と多価アルコールとを縮合重合して得られるもの、又はポリカプロラクトンなどの環状エステル化合物の開環重合して得られるものである。ここで使用する二塩基酸としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等を挙げることができる。
多価アルコールとしては、前記飽和ポリエステルの原料として挙げたものを用いることができる。
【0042】
本発明に使用する一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、ポリカプロラクトンアクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、ポリカプロラクトンメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノメタクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノールエチレンオキサイド(EO)変性アクリレート、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、フェノキシプロピルアクリレート、フェノールプロピレンオキサイド(PO)変性アクリレート、ノニルフェノキシプロピルアクリレート、ノニルフェノールPO変性アクリレート、アクリロイルオキシエチルフタレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノールEO変性メタクリレート、ノニルフェニルカルビトールメタクリレート、ノニルフェノールEO変性メタクリレート、フェノキシプロピルメタクリレート、フェノールPO変性メタクリレート、ノニルフェノキシプロピルメタクリレート、ノニルフェノールPO変性メタクリレート、メタクリロイルオキシエチルフタレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート[分子中に式(4)で表される構造を有する活性水素を有する]、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、分子量が180以上で揮発しにくい性質を有するフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、水素結合を有し揮発しにくい性質を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが、塗膜中に微量に未反応で残っても、TVOCと成り難い点で好ましい。
また、スチレン、酢酸ビニル、ビニルトルエン、α−メチルトルエン等の不飽和基を有する反応性単量体も、発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0043】
また、一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)に、発明の効果を損なわない範囲で、一分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する単量体を併用することが好ましい。この単量体を併用することにより、硬化物表面の耐摩耗性、耐さっ傷性、耐煽動性、耐薬品性等を向上させることができる。この一分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン−グリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上の併用で用いられる。
また、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテトラブロムフタレート、トリアリルフタレート等も、発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0044】
また本発明の硬化性樹脂組成物は、塗膜の乾燥を補助する成分として、石油ワックスを含むことが好ましい。石油ワックスは、該樹脂組成物が積層あるいは塗装された時に積層面又は塗装表面に被膜を形成し、酸素による硬化阻害を抑制するものである。
石油ワックスとしては、例えばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられる。これらのうち、特にパラフィンワックスが好ましい。また石油ワックスの融点としては、110°F〜160°Fのものが好ましく、特に全季節(5〜35℃)での使用を想定すると、特に、115°F〜155°Fが好ましい。さらに、同一樹脂組成物で、全季節(5〜35℃)での表面乾燥性からは、10°F以上の融点のものを2種類以上、配合することが好ましい。
【0045】
前記石油ワックスのほか、合成ワックスすなわちポリエチレンワックス、酸化パラフィン、アルコール型ワックス等も使用でき、液状の炭化水素、たとえば鉱物油、流動パラフィン等も併用できる。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化速度を調整するため、ラジカル硬化剤、光ラジカル開始剤、硬化促進剤、重合禁止剤を使用することができる。
【0047】
ラジカル硬化剤としては、例えば有機過酸化物が挙げられ、具体的にはジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等公知公用のものが挙げられる。
ラジカル硬化剤の使用量は、硬化性樹脂組成物の合計量100重量部に対して、0.1〜6重量部であることが好ましい。
【0048】
光ラジカル開始剤、すなわち光増感剤としては、例えばベンゾインアルキルエーテルのようなベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系等が挙げられる。
【0049】
硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等金属石鹸類、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4-(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4-(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられる。これらのうち、アミン類、金属石鹸類が好ましい。硬化促進剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。この硬化促進剤は、予め樹脂組成物に添加しておいても良いし、使用時に添加しても良い。硬化促進剤の使用量は、0.1〜5重量部である。
【0050】
重合禁止剤としては、例えばトリハイドロベンゼン、トルハイドロキノン、14−ナフトキノン、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を挙げることができる。好ましくは樹脂組成物に、10〜1000ppm添加しうるものである。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記以外に、各種の添加剤、例えば充填剤、紫外線吸収剤、顔料、増粘剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、補強材等を使用することができる。
【0052】
充填剤としては、例えば水硬性ケイ酸塩材料、炭酸カルシウム粉、クレー、アルミナ粉、硅石粉、タルク、硫酸バリウム、シリカパウダー、ガラス粉、ガラスビーズ、マイカ、水酸化アルミニウム、セルロース系、硅砂、川砂、寒水石、大理石屑、砕石等が挙げられる。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低臭気で、かつ全季節(5〜35℃)で表面乾燥性及び上塗り適合性に優れるため、FRP成形品、パテ、塗料、注型品、床材、壁面コーティング材、道路マーキング材、舗装材、ライニング材等に用いることができる。
特に自然環境で使用し、硬化時に臭いを問題とされるような土木建築材料に有用である。
【実施例】
【0054】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明する。また、文中に「部」「%」とあるのは、重量部、重量%を示すものである。
【0055】
(参考例1)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた5リットルの4つ口フラスコに、ジエチレングリコール472部、フマル酸448部加熱脱水縮合させた後、グリシジルメタクリレート161部を付加し、樹脂1kg中の理論活性水素0モルの不飽和ポリエステル樹脂を得た。以後この不飽和ポリエステル樹脂をUPE1という。
【0056】
(参考例2)
窒素ガス導入管、還流コンデンサ、攪拌機を備えた2Lのガラス製フラスコに、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル973g(3.80モル)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸614g(3.70モル)を仕込み窒素気流下、加熱を開始する。内温160℃にて、常法にて4時間エステル化反応を行い、樹脂1kg中の理論活性水素19.00モルの不飽和エステル樹脂を得た。以後この不飽和ポリエステル樹脂をUPE2という。
【0057】
(参考例3)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた5リットルの4つ口フラスコに、ジエチレングリコール367部、メチルテトラヒドロ無水フタル酸64部、フマル酸512部加熱脱水縮合させた後、グリシジルメタクリレート128部を付加し、樹脂1kg中の理論活性水素0.77モルの不飽和ポリエステル樹脂を得た。以後この不飽和ポリエステル樹脂をUPE3という。
【0058】
(参考例4)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた5リットルの4つ口フラスコに、ジエチレングリコール292部、メチルテトラヒドロ無水フタル酸172部、フマル酸357部加熱脱水縮合させた後、グリシジルメタクリレート225部を付加し、樹脂1kg中の理論活性水素2.07モルの不飽和ポリエステル樹脂を得た。以後この不飽和ポリエステル樹脂をUPE4という。
【0059】
(参考例5)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた5リットルの4つ口フラスコに、ジエチレングリコール232部、メチルテトラヒドロ無水フタル酸242部、フマル酸254部、トリメチロールプロパン48部、エチレングリコールモノアリルエーテル222部を公知の条件で加熱脱水縮合させて、樹脂1kg中の理論活性水素4.07モルの不飽和ポリエステル樹脂を得た。以後この不飽和ポリエステル樹脂をUPE5という。
【0060】
(参考例6)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた5リットルの4つ口フラスコに、トリエチレングリコール385部、ジエチレングリコール133部、メチルテトラヒドロ無水フタル酸317部、フマル酸255部加熱脱水縮合させ、樹脂1kg中の理論活性水素3.8モルの不飽和ポリエステル樹脂を得た。以後この不飽和ポリエステル樹脂をUPE6という。
【0061】
(参考例7)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(数平均分子量984.2)2461部、トリレンジイソシアネート739.5部、イソホロンジイソシアネート166.8部を仕込み、窒素雰囲気中80℃まで昇温し、3時間反応させ、NCO等量697になったところで、50℃まで冷却した後、窒素/空気(流量比1/1)混合気流下でトルハイドロキノン0.337部、ヒドロキシエチルメタクリレート657.7部を加え、90℃まで再度昇温させる。3時間反応させ、残存NCO量0.0343%、樹脂1kg中の理論活性水素0モルのウレタンメタクリレート樹脂を得た。以後このウレタンメタクリレート樹脂をVUという。
【0062】
[VOC測定方法]
後記の実施例1〜7及び比較例1で得られた硬化性樹脂組成物100部に、25℃条件下、8%オクチル酸コバルトを1部、55%メチルエチルケトンパーオキサイド1.5部を表面積256cmのアルミニウム製板2枚に1kg/m塗布し、1日養生した。
1日後に表−1に示す小型チャンバー内に設置し、JIS A 1901「建築材料の揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定方法・小型チャンバー法」に準じて、7日後のTVOC放散量を測定した。
【0063】
【表1】

【0064】
(実施例1〜7及び比較例1)
上記参考例で得られた樹脂を、フェノキシエチルメタクリレート(PHOEMA)の任意量で希釈し、硬化性樹脂組成物を得た(表−2)。
【0065】
【表2】

*;C−H結合の解離エネルギーが80Kcal/mol以下の結合からなる活性水素の量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)及び一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)を含んでなる硬化性樹脂組成物において、前記エチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)及び/又は前記一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体中に炭素と水素との結合解離エネルギーが密度汎関数法に基づいて算出される値で80kcal/mol以下の結合からなる活性水素を有し、前記活性水素の量が前記樹脂(1)と前記単量体(2)との合計1Kg中0.1〜20molであることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)のエチレン性不飽和基が、(メタ)アクリロイル基である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和基を含有する樹脂(1)が、ポリエステル(メタ)アクリレートである請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)のエチレン性不飽和基が、(メタ)アクリロイル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記一分子中にエチレン性不飽和基を1個有する単量体(2)が、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記活性水素の量が、前記樹脂(1)と前記単量体(2)との合計1Kg中1.5〜20molである請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−106169(P2008−106169A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291150(P2006−291150)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】