説明

硬化性組成物、硬化膜及び積層体。

【課題】導電性粒子の配合量が少なくても優れた帯電防止性を発現する硬化膜を与える硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)導電性金属酸化物粒子、(B)下記一般式(1)で示される構造を有する化合物、(C)分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する化合物及びを含有する硬化性組成物。


[Rは炭素数1〜8の2価の炭化水素基、Rは炭素数2〜6のアルキレン基、nは1〜200、合計4個存在するRのうち1〜3個は水素原子、残りが(ポリ)シロキサン構造を有する基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、それを硬化させてなる硬化膜及びそれを含む積層体に関する。さらに詳しくは、帯電防止性に優れた硬化膜を作製するための硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報通信機器の性能確保と安全対策の面から、機器の表面に、放射線硬化性組成物を用いて、耐擦傷性、密着性を有する塗膜(ハードコート)や帯電防止機能を有する塗膜(帯電防止膜)を形成することが行われている。
近年、情報通信機器の発達と汎用化は目覚しいものがあり、ハードコート、帯電防止膜等のさらなる性能向上及び生産性の向上が要請されるに至っている。
【0003】
特に、光学物品、例えば、プラスチックレンズにおいては、静電気による塵埃の付着の防止と、反射による透過率の低下の改善が要求されており、また、表示パネルにおいても、静電気による塵埃の付着の防止と、画面での映り込みの防止が要求されるようになってきている。
これらの要求に対して、生産性が高く、常温で硬化できることに注目し、放射線硬化性の材料が種々提案されている。
【0004】
このような技術としては、例えば、イオン伝導性の成分として、スルホン酸及びリン酸モノマーを含有する組成物(特許文献1)、連鎖状の金属粉を含有する組成物(特許文献2)、酸化錫粒子、多官能アクリレート、及びメチルメタクリレートとポリエーテルアクリレートとの共重合物を主成分とする組成物(特許文献3)、導電性ポリマーで被覆した顔料を含有する導電塗料組成物(特許文献4)、3官能アクリル酸エステル、単官能性エチレン性不飽和基含有化合物、光重合開始剤、及び導電性粉末を含有する光ディスク用材料(特許文献5)、シランカップラーで分散させたアンチモンドープされた酸化錫粒子とテトラアルコキシシランとの加水分解物、光増感剤、及び有機溶媒を含有する導電性塗料(特許文献6)、分子中に重合性不飽和基を含有するアルコキシシランと金属酸化物粒子との反応生成物、3官能性アクリル化合物、及び放射線重合開始剤を含有する液状硬化性樹脂組成物(特許文献7)、一次粒子径が100nm以下の導電性酸化物微粉末、該導電性酸化物微粉末の易分散性低沸点溶剤、該導電性酸化物微粉末の難分散性低沸点溶剤、及びバインダー樹脂を含有する透明導電性膜形成用塗料(特許文献8)等を挙げることができる。
【0005】
【特許文献1】特開昭47−34539号公報
【特許文献2】特開昭55−78070号公報
【特許文献3】特開昭60−60166号公報
【特許文献4】特開平2−194071号公報
【特許文献5】特開平4−172634号公報
【特許文献6】特開平6−264009号公報
【特許文献7】特開2000−143924号公報
【特許文献8】特開2001−131485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、導電性粒子の配合量が少なくても優れた帯電防止性を発現する硬化膜を与える硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、導電性粒子に特定の構造を有する分散剤を配合することにより、導電性粒子が硬化膜界面付近に偏在化し、導電性粒子の配合量が少なくても表面抵抗値が低く抑えられた硬化膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、下記の硬化性組成物、硬化膜及び積層体を提供する。
1.下記成分(A)〜(C):
(A)導電性金属酸化物粒子
(B)下記一般式(1)で示される構造を有する化合物
【化3】

[式(1)中、Rは炭素数1〜8の2価の炭化水素基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基であり、nは1〜200であり、合計4個存在するRのうち1〜3個は水素原子であり、残りが下記一般式(2)
【化4】

(式(2)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、pは1〜150である。)で示される構造を有する基である。]
(C)分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する化合物
を含有する硬化性組成物。
2.さらに、(D)放射線照射により活性種を発生する化合物を含有する上記1に記載の硬化性組成物。
3.さらに、(E)有機溶剤を含有する上記1又は2に記載の硬化性組成物。
4.前記成分(A)導電性酸化物粒子が、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、スズ含有酸化インジウム(ITO)、リン含有酸化スズ(PTO)、フッ素含有酸化スズ、アルミニウム含有酸化亜鉛及びガリウム含有酸化亜鉛からなる群から選択される1種以上からなる上記1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
5.前記成分(A)導電性酸化物粒子が、アンチモン含有酸化スズ(ATO)からなる上記4に記載の硬化性組成物。
6.前記成分(A)導電性酸化物粒子のメジアン径が、35〜90nmの範囲内である上記1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
7.前記成分(A)導電性酸化物粒子の配合量が、有機溶剤を除く組成物全量を100重量%としたときに、1〜40重量%の範囲内である上記1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
8.前記成分(B)の化合物が、前記一般式(1)において、4個のRの全てが水素原子である化合物(1a)と、2個のイソシアネートを有する化合物と1個の水酸基を有するポリジメチルシロキサン化合物との反応生成物(2a)とを反応させて得られる上記1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
9.前記成分(C)が、3個以上の重合性不飽和基を有する化合物である上記1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物。
10.前記成分(C)の有する重合性不飽和基が、(メタ)アクリロイル基である上記1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
11.上記1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜。
12.上記11の硬化膜からなるハードコート。
13.基材及び上記11の硬化膜を含む積層体。
14.帯電防止用である上記13に記載の積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性粒子の配合量が少なくても優れた帯電防止性を有する硬化膜を与える硬化性組成物を提供できる。従って、硬化膜の透明性を損なうことなく、帯電防止性を有する硬化膜を提供できる。
本発明によれば、帯電防止性を有するハードコートを提供できる。
本発明によれば、帯電防止性に優れた硬化膜及びそれを含む積層体、特に帯電防止用積層体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
I.硬化性組成物
本発明の硬化性組成物(以下、本発明の組成物という)は、下記成分(A)〜(F)を含み得る。これらのうち、成分(A)〜(C)は必須成分であり、成分(D)〜(F)は、必要に応じて添加される任意成分である。
(A)導電性金属酸化物粒子
(B)前記一般式(1)で示される構造を有する化合物
(C)分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する化合物
(D)放射線により活性種を発生する化合物
(E)有機溶剤
(F)添加剤
上記各成分について説明する。
【0011】
(A)導電性金属酸化物粒子
導電性金属酸化物粒子は、本発明の組成物を硬化させてなる硬化膜に導電性(帯電防止性)を付与するための成分である。
導電性金属酸化物粒子を構成する金属酸化物としては、例えば、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、スズ含有酸化インジウム(ITO)、リン含有酸化スズ(PTO)、フッ素含有酸化スズ、アルミニウム含有酸化亜鉛及びガリウム含有酸化亜鉛等が挙げられ、アンチモン含有酸化スズ(ATO)が好ましい。導電性金属酸化物粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
導電性金属酸化物粒子のメジアン径は、20〜90nmの範囲内であることが好ましく、 35〜70nmの範囲内であることがより好ましい。粒子のメジアン径が20nm未満であると、導電性が不足するおそれがあり、90nmを超えると、組成物中で沈降が発生したり、塗膜の透明性が低下したり、濁度(Haze値)が上昇するおそれがある。
ここで、メジアン径とは、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径を意味し、動的光散乱式粒径分布測定装置によって測定することができる。
【0013】
導電性金属酸化物粒子は、粉体状であることが好ましい。本発明で用いることができる導電性金属酸化物粒子粉体の市販品の例としては、アンチモン含有酸化スズ(ATO)であれば、例えば、SN−100P(石原産業(株)製、ATO粒子、一次粒径:10〜30nm)、SN−102P(石原産業(株)製、ATO粒子、一次粒径:10〜30nm)等が挙げられる。
スズ含有酸化インジウム(ITO)の市販品の例としては、例えば、三菱マテリアル(株)製の製品等が挙げられる。
リン含有酸化スズ(PTO)の市販品の例としては、例えば、触媒化成工業(株)製 商品名:ELCOM TL−30S(PTO)や、三菱マテリアル(株)製 商品名:EP SP2等が挙げられる。
【0014】
本発明の組成物中における成分(A)の配合量は、有機溶剤を除く固形分全量を100重量%として、通常1〜40重量%、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%の範囲内である。成分(A)の配合量が1重量%未満では、導電性が発現しないおそれがあり、40重量%を超えると、濁度(ヘーズ)が高くなるおそれがある。
【0015】
(B)一般式(1)で示される構造を有する化合物
成分(B)は、前記成分(A)の導電性金属酸化物粒子の組成物中での均一分散を助ける成分であり、同時に、組成物を塗布する際に、成分(A)の導電性金属酸化物粒子を塗膜の界面付近に偏在化を促進させる成分であると考えられる。成分(B)の化合物を配合することにより、組成物を硬化させた際に硬化膜の界面付近に成分(A)の導電性金属酸化物粒子が偏在化するため、成分(A)の配合量が従来に比べて少なくても、優れた帯電防止性を発現させることができる。
【0016】
成分(B)の化合物は、下記一般式(1)で示される構造を有する。
【化5】

【0017】
式(1)中、Rは炭素数1〜8の2価の炭化水素基であり、好ましくはエチレン基、プロピレン基であり、エチレン基であることが特に好ましい。
は炭素数2〜6のアルキレン基であり、エチレン基、プロピレン基であることが特に好ましい。尚、ORは、1種の基のみから構成されていてもよいし、2種以上の基の組み合わせで構成されていてもよい。
nは1〜200であり、好ましくは1〜100であり、特に好ましくは1〜40である。
合計4個存在するRのうち1〜3個は水素原子であり、残りは下記一般式(2)で示される構造を有する基である。
【化6】

【0018】
式(2)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル基、エチル基であり、メチル基であることが特に好ましい。
pは1〜150であり、好ましくは1〜100であり、特に好ましくは1〜30である。
【0019】
一般式(2)で示される構造を有する基としては、例えば、下記一般式(2a)、(2b)で示される構造を有する基が挙げられる。
【化7】

【化8】

【0020】
式(2a)、(2b)中、Rは既述の(2)と同じである。
は炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましい。好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、炭素数1〜6であることが特に好ましい。
は酸素原子、窒素原子、イオウ原子を含んでいてもよい炭素数1〜40の2価の有機基であり、1〜20であることが特に好ましい。
は炭素数2〜20の2価の有機基であり、2〜12であることが特に好ましい。
pは1〜150であり、好ましくは1〜100であり、特に好ましくは1〜30である。
【0021】
成分(B)の化合物は、前記一般式(1)において、4個のRの全てが水素原子である化合物(1a)と、2個のイソシアネート基を有する化合物と1個の水酸基を有するポリジメチルシロキサン化合物との反応生成物(2c)とを反応させて、または、化合物(1a)と、1個の水酸基を有するポリジメチルシロキサン化合物(2d)とを脱水縮合反応させて製造することができる。
【化9】

【0022】
上記(2a)の基を導入する反応条件としては、例えば、2個のイソシアネート基を有する化合物中に反応温度15〜40℃の間で1個の水酸基を有するポリジメチルシロキサン化合物を滴下し、その後、40〜70℃で0.5時間〜3時間攪拌し、反応生成物(2c)を得る。次いで、4個のRの全てが水素原子である化合物(1a)中に得られた反応生成物(2c)を反応温度15〜40℃の間で滴下し、その後、40〜70℃で0.5時間〜3時間攪拌し、成分(B)の化合物を得ることができる。このとき、いずれの反応下においても、含水量の少ない、及び、水酸基を有しない溶剤を使用してもよく、特にMIBK、脱水MEK等が好ましい。また、(2b)の基を導入する反応条件としては、(1a)と(2d)を、硫酸、五酸化二リン酸等の脱水剤の存在下で、40〜140℃、0.5〜4時間攪拌し成分(B)の化合物を得ることができる。このときも、含水量の少ない、及び、水酸基を有しない溶剤を使用してもよい。
【0023】
成分(B)の化合物の原料となる、一般式(1a)で示される構造を有する化合物の市販品の例としては、例えば、アデカプルロニックTR−701((株)ADEKA製)、TR−702((株)ADEKA製)、TR−704((株)ADEKA製)、アデカカーポール MD−100((株)ADEKA製)等が挙げられる。
一般式(2c)で示される構造を有する化合物の市販品の例としては、例えば、サイラプレーンFM−0411、サイラプレーンFM−0421、サイラプレーンFM−0425(チッソ(株)製、α−[3−(2’−ヒドロキシエトキシ)プロピル]ポリジメチルシロキサン)、X−22−170BX(信越シリコーン(株)製)、X−22−170DX等が挙げられる。
【0024】
一般式(1)で示される構造を有する化合物の分子量は、500〜50000の範囲内であることが好ましく、500〜10000の範囲内であることがより好ましい。分子量が500未満であると、粒子の偏在性が低下するおそれがあり、50000を超えると、粒子の分散性が低下するおそれがある。
【0025】
本発明の組成物中における成分(B)の配合量は、有機溶剤を除く固形分全量を100重量%として、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜8重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲内である。成分(B)の配合量が0.1重量%未満では、粒子の分散性が悪化するおそれがあり、10重量%を超えると、硬化膜の硬度が低下するおそれがある。
【0026】
ここで、使用する分散媒としては、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、t-ブタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。分散媒の量は、分散媒を除く組成物100重量部に対し、40〜10,000重量部とするのが好ましい。有機溶剤の配合量が40重量部未満では、粒子の分散性が低下する場合があり、100,000重量部を超えると、固形分濃度が低下しすぎて取り扱いが困難となるおそれがある。
【0027】
(C)分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する化合物
分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する化合物は、前記成分(A)及び(B)のマトリックスとして、本発明の組成物を硬化させるために必要な成分である。そして、得られる硬化物及びそれを用いた積層体の硬度や耐擦傷性を高める機能を有する。
【0028】
成分(C)は、分子内に少なくとも2個の重合性不飽和基を含有する化合物であれば特に制限されるものではない。重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0029】
(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート等を例示することができる。これらの多官能性モノマーの市販品としては、例えば、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)、荒川化学工業(株)製 商品名:ビームセット102、502H、505A−6、510、550B、551B、575、575CB、EM−90、EM92、サンノプコ(株)製 商品名:フォトマー6008、6210、新中村化学工業(株)製 商品名:NKオリゴU−2PPA、U−4HA、U−6HA、H−15HA、UA−32PA、U−324A、U−4H、U−6H、東亜合成(株)製 商品名:アロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960、共栄社化学(株)製 商品名:AH−600、AT606、UA−306H、日本化薬(株)製 商品名:カヤラッドUX−2201、UX−2301、UX−3204、UX−3301、UX−4101、UX−6101、UX−7101、日本合成化学工業(株)製 商品名:紫光UV−1700B、UV−3000B、UV−6100B、UV−6300B、UV−7000、UV−2010B、根上工業(株)製 商品名:アートレジンUN−1255、UN−5200、HDP−4T、HMP−2、UN−901T、UN−3320HA、UN−3320HB、UN−3320HC、UN−3320HS、H−61、HDP−M20、ダイセルユーシービー(株)製 商品名:Ebecryl 6700、204、205、220、254、1259、1290K、1748、2002、2220、4833、4842、4866、5129、6602、8301等を挙げることができる。
【0030】
尚、本発明の組成物には、これらのうち、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物がさらに好ましい。そのような化合物としては、上記に例示されたトリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物等の中から選択することができ、これらのうちジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが特に好ましい。上記の化合物は、各々1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明の組成物中における成分(C)の配合量は特に制限されないが、有機溶剤を除く固形分全量を100重量%として、45〜98重量%で配合することが好ましい。成分(C)の配合量が45重量%未満であると、得られた塗膜、及びそれを用いた積層体の硬度や耐擦傷性が低下するおそれがあり、98重量%を超えると、得られた塗膜の帯電防止能が低下するおそれがある。この様な理由から、成分(C)の配合量は、より好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは55〜85重量%である。
【0032】
(D)放射線照射により活性種を発生する化合物
本発明の組成物は、それ自体で放射線照射によりラジカル重合し硬化し得るが、活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物を配合することによって、より効率的に硬化させることができるため、好適に用いられる。
【0033】
活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物(以下「光重合開始剤」ということがある)としては、活性種として、ラジカル種を発生する光ラジカル発生剤等が挙げられる。
尚、活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型な観点から、紫外線を使用することが好ましい。
【0034】
光ラジカル発生剤の例としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、ベンジル、又はBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン、その他の色素増感剤との組み合わせ等を挙げることができる。
【0035】
これらの光重合開始剤のうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー等が好ましく、さらに好ましくは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー等を挙げることができる。
【0036】
本発明の組成物中における成分(D)の配合量は特に制限されないが、有機溶剤を除く固形分全量を100重量%として、通常0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは0.5〜8重量%の範囲内である。成分(D)の配合量が0.1重量%未満では、添加効果が得られないおそれがあり、15重量%を超えると、過剰量の成分により得られた塗膜、及びそれを用いた積層体の硬度や耐擦傷性が低下するおそれがある。
【0037】
(E)有機溶剤
本発明の組成物には、さらに有機溶剤を添加することが好ましい。有機溶剤を添加することにより、薄膜の硬化膜を均一に形成することができる。このような有機溶剤としては、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族類等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。これらの内、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましく、より好ましくはメチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、t-ブタノール、メタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルの一種単独又は二種以上の組み合わせである。
【0038】
前記成分(A)の導電性金属酸化物粒子が溶剤分散液である場合には、その分散媒を有機溶剤としてそのまま使用してもよいし、別の有機溶剤をさらに添加してもよい。
【0039】
本発明の組成物中における成分(E)有機溶剤の配合量については特に制限されるものではないが、有機溶剤を除く組成物100重量部に対し、25〜100,000重量部とするのが好ましい。有機溶剤の配合量が25重量部未満では、組成物の保存安定性が低下する場合があり、100,000重量部を超えると、固形分濃度が低下しすぎて取り扱いが困難となるおそれがある。
尚、本発明の組成物中の有機溶剤の配合量には、成分(A)である導電性金属酸化物粒子の分散液中の分散媒の量が含まれる。
【0040】
(F)添加剤
本発明の組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、上記成分(A)以外の無機粒子、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、熱により活性種を発生する化合物、スリップ剤等の添加剤をさらに含有させることも好ましい。
【0041】
本発明の組成物は、前記成分(A)、(B)、及び、(E)有機溶剤を混合し、ペイントシェーカー、SCミル、ピコミル等の手段を用いて1〜24時間撹拌して、所定のメジアン径の分散ゾルを形成した後、成分(C)、及び必要に応じて前記成分(D)、(E)有機溶剤、(F)添加剤をそれぞれ添加して、室温又は加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサ、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて、調製することができる。
【0042】
本発明の組成物の硬化条件については特に制限されるものではないが、例えば活性エネルギー線を用いた場合、露光量を0.01〜10J/cm2の範囲内の値とするのが好ましい。露光量が0.01J/cm2未満となると、硬化不良が生じる場合があるためであり、一方、露光量が10J/cm2を超えると、硬化時間が過度に長くなる場合があるためである。
また、このような理由により、露光量を0.1〜5J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましく、0.3〜3J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましい。
【0043】
また、本発明の組成物を、加熱して硬化させる場合には、30〜200℃の範囲内の温度で、0.1〜180分間加熱するのが好ましい。このように加熱することにより、基材等を損傷することなく、より効率的に耐擦傷性に優れた硬化膜を得ることができる。
また、このような理由から、50〜180℃の範囲内の温度で、0.5〜120分間加熱するのがより好ましく、80〜150℃の範囲内の温度で、0.5〜60分間加熱するのがさらに好ましい。
【0044】
II.硬化膜
本発明の硬化膜は、上記本発明の組成物を上記のようにして硬化させて得られることを特徴とする。
本発明の硬化膜は、ハードコートとして、特に帯電防止性ハードコートとして有用である。
本発明の硬化膜は、透明性に優れるため、光学的用途に好適である。
【0045】
III.積層体
本発明の積層体は、上記本発明の硬化膜を含んでなることを特徴とする。
本発明の積層体は、基材上に、上記本発明の組成物を塗布、硬化させることによって製造でき、透明性に優れるため、光学的用途、特に帯電防止性反射防止膜として用いられる。
図1に典型的な反射防止膜の断面模式図を示す。反射防止膜1は、透明基材10、ハードコート層12、高屈折率層14、低屈折率層16を含む。本発明の硬化膜は、通常ハードコート層12として用いられるが、高屈折率層を兼ねたハードコート層として用いることもできる。その他の高屈折率層14、低屈折率層16、必要に応じて設けられる中屈折率層(図示せず)等は、特に限定されず、それぞれ公知の材料を用いて形成することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。また、実施例中、各成分の配合量は特に記載のない限り、「部」は重量部を、「%」は重量%を意味している。
【0047】
製造例1:一般式(1)で示される構造を有する化合物(B−1)の合成
乾燥窒素中、2,4−トリレンジイソシアネート10.3部、ジブチル錫ジラウレ−ト0.1部からなる溶液に対し、チッソ(株)製サイラプレーンFM−0411(α−[3−(2’−ヒドロキシエトキシ)プロピル]ポリジメチルシロキサン)68.6部を攪拌しながら20℃で1時間かけて滴下後、60℃で1時間加熱攪拌し、その後室温まで冷却し、中間体(Ba−1)を回収した。
次に、乾燥窒素中、(株)ADEKA製アデカプルロニックTR−701を134.3部及びジブチル錫ジラウレ−ト0.1部からなる溶液に対し、中間体(Ba−1)65.7部を上記と同様に、攪拌しながら20℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱攪拌し、ジメチルシロキサン骨格を有する有機化合物(B−1)200.1部を合成した。
反応液中の残存イソシアネート量をFT−IRで分析したところ0.1%以下であり、反応がほぼ定量的に終了したことを示した。生成物の赤外吸収スペクトルは原料中のイソシアネート化合物に特徴的な2260cm−1の吸収ピークが消失し、新たにウレタン結合に特徴的な1660cm−1のピークが観察され、ウレタン結合、及び、ジメチルシロキサン骨格を有する有機化合物(B−1)が生成していることを示した。
【0048】
製造例2:ATO(アンチモンドープ酸化錫)粒子ゾル(AB−1)の製造
プラスチック容器中に、ATO粒子(石原産業(株)製、SN−100P、1次粒径10〜30nm)、製造例1で製造した化合物(B−1)、及びメタノールを、71.25/3.75/175(重量比)の配合量で混合した(全固形分含量30%、全無機含量28.5%)。次いで、この混合液中にガラスビーズ200gを混合し、容器を密閉した。その後、ペイントシェーカーを用いて、容器を5時間攪拌し、メジアン径77nmの分散ゾル250g(固形分濃度30%)(AB−1)を得た。
【0049】
製造例3:ATO(アンチモンドープ酸化錫)粒子ゾル(AB−2)の製造
製造例2と同様に、プラスチック容器中に、ATO粒子(石原産業(株)製、SN−100P、1次粒径10〜30nm)、製造例1で製造した化合物(B−1)、及びメタノールを、69.75/5.25/175(重量比)の配合量で混合した(全固形分含量30%、全無機含量27.9%)。次いで、この混合液中にガラスビーズ200gを混合し、容器を密閉した。その後、ペイントシェーカーを用いて、容器を5.5時間攪拌し、メジアン径77nmの分散ゾル(AB−2)250g(固形分濃度30%)を得た。
【0050】
製造例4:ATO(アンチモンドープ酸化錫)粒子ゾル(AB−3)の製造
製造例2と同様に、プラスチック容器中に、ATO粒子(石原産業(株)製、SN−100P、1次粒径10〜30nm)、製造例1で製造した化合物(B−1)、及びメタノールを、67.5/7.5/175(重量比)の配合量で混合した(全固形分含量30%、全無機含量27%)。次いで、この混合液中にガラスビーズ200gを混合し、容器を密閉した。その後、ペイントシェーカーを用いて、容器を8時間攪拌し、メジアン径79nmの分散ゾル250g(固形分濃度30%)(AB−3)を得た。
【0051】
製造例5:ATO(アンチモンドープ酸化錫)粒子ゾル(AB−4)の製造
製造例2と同様に、プラスチック容器中に、ATO粒子(石原産業(株)製、SN−100P、1次粒径10〜30nm)、製造例1で製造した化合物(B−1)、及びメタノールを、69.75/5.25/175(重量比)の配合量で混合した(全固形分含量30%、全無機含量27.9%)。次いで、この混合液中にガラスビーズ200gを混合し、容器を密閉した。その後、ペイントシェーカーを用いて、容器を3時間攪拌し、メジアン径107nmの分散ゾル(AB−4)250g(固形分濃度30%)を得た。
【0052】
製造例6:ATO(アンチモンドープ酸化錫)粒子ゾル(AB−5)の製造
製造例2と同様に、プラスチック容器中に、ATO粒子(石原産業(株)製、SN−100P、1次粒径10〜30nm)、製造例1で製造した化合物(B−1)、及びメタノールを、69.75/5.25/175(重量比)の配合量で混合した(全固形分含量30%、全無機含量27.9%)。次いで、この混合液中にガラスビーズ200gを混合し、容器を密閉した。その後、ペイントシェーカーを用いて、容器を9時間攪拌し、メジアン径65nmの分散ゾル(AB−5)250g(固形分濃度30%)を得た。
【0053】
製造例7:ATO(アンチモンドープ酸化錫)粒子ゾル(AB−6)の製造
製造例2と同様に、プラスチック容器中に、ATO粒子(石原産業(株)製、SN−100P、1次粒径10〜30nm)、製造例1で製造した化合物(B−1)、及びメタノールを、69.75/5.25/175(重量比)の配合量で混合した(全固形分含量30%、全無機含量27.9%)。次いで、この混合液中にガラスビーズ200gを混合し、容器を密閉した。その後、ペイントシェーカーを用いて、容器を16時間攪拌し、メジアン径46nmの分散ゾル(AB−6)250g(固形分濃度30%)を得た。
【0054】
製造例8:ATO(アンチモンドープ酸化錫)粒子ゾル(Ab’−1)の製造
製造例2と同様に、プラスチック容器中に、ATO粒子(石原産業(株)製、SN−100P、1次粒径10〜30nm)、アデカプルロニックTR−701((株)ADEKA製)、及びメタノールを、72.75/2.25/175(重量比)の配合量で混合した(全固形分含量30%、全無機含量29.1%)。次いで、この混合液中にガラスビーズ200gを混合し、容器を密閉した。その後、ペイントシェーカーを用いて、容器を2.5時間攪拌し、メジアン径75nmの分散ゾル250g(固形分濃度30%)(Ab’−1)を得た。
【0055】
<硬化性樹脂組成物の調製>
実施例1
製造例2で得られたATO(アンチモンドープ酸化錫)粒子ゾル(AB−1)119.12g、DPHA(日本化薬(株)製 商品名 KAYARAD DPHA)134.02g、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(日本チバガイギー(株)製光重合開始剤 イルガキュア184)5.25g、及び、メタノール14.12g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル227.5gを加え攪拌し硬化性組成物を得た。得られた組成物の固形分濃度は35%であった。
【0056】
実施例2〜6、及び比較例1
表1に示す成分を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1の硬化性組成物をそれぞれ調製した。
【0057】
<硬化膜の作製>
上記実施例及び比較例で製造した各硬化性組成物を、ワイヤーバーコータ(#6)を用いて、片面易接着処理を施したPETフィルム(膜厚100μm)上に塗工した後、オーブン中80℃で2分間乾燥した。続いて、空気下、高圧水銀ランプを用いて、0.6J/cmの光照射条件で紫外線を照射することにより、膜厚1.5μm前後の硬化膜(ハードコート層)を形成した。
【0058】
<硬化膜の特性評価>
上記のようにして作製した硬化膜の粒子偏在性、ヘーズ、全光線透過率及び表面抵抗値を下記方法で評価した。結果を表1に示す。
【0059】
(a)粒子の偏在性
得られた硬化膜の断面を透過型電子顕微鏡で観察し、粒子が、硬化膜の空気層側界面近傍に集中して分布している場合を「○」、そうでない場合を「×」と評価した。「○」、及び、「×」とそれぞれ評価した典型例の断面写真を図2及び3に示す。
【0060】
(b)ヘーズ
硬化膜のヘーズ(%)を、カラーヘーズメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
【0061】
(c)全光線透過率
硬化膜の全光線透過率(%)を、カラーヘーズメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
【0062】
(d)表面抵抗値
硬化膜の表面抵抗(Ω/□)を、ハイ・レジスタンス・メーター(アジレント・テクノロジー(株)製 Agilent4339B)、及びレジスティビティ・セル16008B(アジレント・テクノロジー(株)製)を用い、印加電圧100Vの条件で測定した。
【0063】
【表1】

【0064】
表1中の商品名は下記のものを示す。
SN−100P:石原産業(株)製、ATO粒子
TR701:旭電化工業(株)製界面活性剤、ATO粒子分散剤として使用
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(日本化薬(株)製 商品名 KAYARAD DPHA)
Irg.184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(日本チバガイギー(株)製、光重合開始剤)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
表1中、括弧を付して配合量を示した成分は、粒子分散ゾル中に含まれる成分(A)の粒子と、成分(B)の化合物の内訳を示す。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の硬化性組成物は、導電性粒子の配合量が少なくても優れた帯電防止性を有する硬化膜を提供できる。本発明の硬化性組成物は、導電性粒子の配合量が少ないため、光学的用途に好適な、透明性に優れた硬化膜を提供するのに有用である。
本発明の硬化性組成物は、帯電防止性を有するハードコートの製造材料として有用である。
本発明の硬化膜は、帯電防止用積層体を製造するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の積層体(帯電防止性反射防止膜)の断面模式図である。
【図2】実施例5で作成した硬化膜の断面写真であり、粒子が、硬化膜の空気層側界面近傍に集中して分布している場合の典型例を示す。
【図3】比較例1で作成した硬化膜の断面写真であり、粒子が、硬化膜の空気層側界面近傍に集中して分布しているとは認められない場合の典型例を示す。
【符号の説明】
【0067】
1 帯電防止性反射防止膜
10 透明基材
12 ハードコート層
14 高屈折率層
16 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(C):
(A)導電性金属酸化物粒子
(B)下記一般式(1)で示される構造を有する化合物
【化1】

[式(1)中、Rは炭素数1〜8の2価の炭化水素基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基であり、nは1〜200であり、合計4個存在するRのうち1〜3個は水素原子であり、残りが下記一般式(2)
【化2】

(式(2)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、pは1〜150である。)で示される構造を有する基である。]
(C)分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する化合物
を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
さらに、(D)放射線照射により活性種を発生する化合物を含有する請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
さらに、(E)有機溶剤を含有する請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記成分(A)導電性酸化物粒子が、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、スズ含有酸化インジウム(ITO)、リン含有酸化スズ(PTO)、フッ素含有酸化スズ、アルミニウム含有酸化亜鉛及びガリウム含有酸化亜鉛からなる群から選択される1種以上からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記成分(A)導電性酸化物粒子が、アンチモン含有酸化スズ(ATO)からなる請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記成分(A)導電性酸化物粒子のメジアン径が、35〜90nmの範囲内である請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記成分(A)導電性酸化物粒子の配合量が、有機溶剤を除く組成物全量を100重量%としたときに、1〜40重量%の範囲内である請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記成分(B)の化合物が、前記一般式(1)において、4個のRの全てが水素原子である化合物(1a)と、2個のイソシアネートを有する化合物と1個の水酸基を有するポリジメチルシロキサン化合物との反応生成物(2a)とを反応させて得られる請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記成分(C)が、3個以上の重合性不飽和基を有する化合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記成分(C)の有する重合性不飽和基が、(メタ)アクリロイル基である請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜。
【請求項12】
請求項11の硬化膜からなるハードコート。
【請求項13】
基材及び請求項11の硬化膜を含む積層体。
【請求項14】
帯電防止用である請求項13に記載の積層体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−247948(P2008−247948A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87309(P2007−87309)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】