説明

硬度測定用圧子とその製造方法

【課題】本発明は、多数回の測定にわたって正確に硬度を測定できる硬度測定用の圧子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の硬度測定用圧子10は、電気的に導通可能な表面を有する被測定物90の硬度を測定するための圧子10であって、前記圧子10が導電性材料から成る本体11と前記本体11の先端に取着され前記被測定物90に押圧される絶縁チップ12とを含み、前記圧子10の外周面15における前記本体11と前記絶縁チップ12との境界線14が、前記圧子10の長軸13に対して垂直な平面Bの面内に位置することを特徴とする。本発明の圧子10は、圧子10の表面を覆う被膜を含まないので、多数回の測定による被膜の剥離と、被膜剥離に伴う測定精度の低下という問題が起こらない。よって、本発明の圧子10は、多数回の測定にわたって、正確な硬度を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の硬度測定に使用される圧子に関する。
【背景技術】
【0002】
歯のう蝕(虫歯)の治療では、う蝕で軟化した象牙質を過不足なく的確に除去することが大切である。う蝕象牙質と健全な象牙質との識別は、主に、う蝕検知液による染色、う蝕による自然着色の視認、又はスプーンエキスカベーターによる手応えの変化等で行われている。これらの識別手法は歯科医師の主観に依存するため、識別結果がばらつく恐れがある。そこで、う蝕範囲を客観的に識別するために、口腔内において象牙質の硬度を測定しようとする試みがなされている。
【0003】
口腔内でう蝕歯の硬度を測定するための装置として、タグバックを利用したハンディータイプの硬度測定装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。う蝕歯のように軟化した部位に探針を突き刺し引き上げると、探針がう蝕歯によって引っ張られる現象(タグバック)が起こる。このタグバックによる探針の牽引力は、被測定物の硬度が低いほど牽引力が強くなる。そのような硬度と牽引力との関係を利用して、特許文献1及び2では、探針を突き刺した箇所の硬度が所定の値(例えば、う蝕歯の目安であるヌープ硬度20)がより低いときに、探針が動くように構成されている。すなわち、探針が動いた場合には、その測定箇所はう蝕であることが確認できる。
【0004】
また、生体内の病変部を検出できる硬度測定装置として、周波数偏差を検出する硬度測定装置が知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−319950号公報
【特許文献2】特開2008−29412号公報
【特許文献3】特開平9−145691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2のタグバックを利用した硬度測定装置では、所定の硬度(ヌープ硬度20)より硬いか軟らかいかを判別することはできるものの、硬度自体を知ることができない。特許文献3の硬度測定装置では、硬度を知ることはできるが、複雑な周波数測定回路が必要となる。
【0007】
そこで、比較的構成が簡単で、硬度を知ることのできる別のう蝕歯硬度測定装置が研究されている(清水明彦、「歯科臨床用う蝕象牙質硬さ測定器の試作」、歯機器誌、第13巻第2号、22〜24頁(2007年))。このう蝕歯硬度測定装置は、ヌープ硬度の測定原理に基づいており、圧子による圧痕の寸法と、圧子にかけられた荷重とから硬度を求めることができる。
【0008】
このう蝕歯硬度測定装置の原理を具体的に説明する。使用する圧子は、サファイアから成る圧子本体の表面にAuコーティングを施した「Auコーティングサファイア圧子(本明細書では「Au−サファイア圧子」と称する)」を使用している。この圧子は、先端だけはAuコーティングされていない。つまり、サファイアが露出した圧子の先端は絶縁性で、Auコーティングされた部分は導電性となる。
【0009】
硬度測定時には、圧子をう蝕歯に押し当てて、圧子の先端をう蝕歯に圧入させる。口腔内のう蝕歯は表面が浸出液によって濡れているため、圧子のAuコーティングとう蝕歯とが接触すると、Auコーティングとう蝕歯表面とが電気的に導通状態になる。この導通状態は、Auコーティングと、口腔内に設置可能な口内端子との間の電気抵抗を測定することにより確認できる。そして、Auコーティングとう蝕歯表面とが電気的に導通状態になったときに、圧子に加えられている荷重(本明細書では「導通時荷重」と称する)を計測する。
【0010】
そして、硬度既知の複数試料についても導通時荷重を計測して、荷重−硬度の較正曲線を作成する。この較正曲線を利用すれば、上記の方法で計測されたう蝕歯の導通時荷重から、う蝕歯の硬度を知ることができる。
【0011】
しかしながら、検討を重ねると、このう蝕歯硬度測定装置で使用されるAu−サファイア圧子は、測定回数が増加するとAuコーティングが剥離する恐れがあることが分かった。特に、先端側に位置するAuコーティングの縁部は、測定ごとにう蝕歯と接触するので剥離しやすい。そして、Auコーティングの縁部の剥離が進行すると、圧子の先端が所定深さまで侵入してもAuコーティングとう蝕歯表面とが電気的に導通状態にならず、硬度測定が不正確になる恐れがある。したがって、正確な硬度測定のためには、測定回数が所定回数に達したらAu−サファイア圧子を新しいものに交換する等の対応が必要になる。
【0012】
そこで、本発明は、多数回の測定にわたって正確に硬度を測定できる硬度測定用の圧子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の硬度測定用圧子は、電気的に導通可能な表面を有する被測定物の硬度を測定するための圧子であって、前記圧子が導電性材料から成る本体と前記本体の先端に取着され前記被測定物に押圧される絶縁チップとを含み、前記圧子の外周面における前記本体と前記絶縁チップとの境界線が、前記圧子の長軸に対して垂直な平面の面内に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の圧子は、従来の「Au−サファイア圧子」とは異なり、圧子の表面を覆う被膜を含まない。そのため、多数回の測定による被膜の剥離と、被膜剥離に伴う測定精度の低下という問題が起こらない。よって、本発明の圧子は、多数回の測定にわたって、正確な硬度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施の形態1に係る硬度測定用圧子を示している。図1(a)は圧子の斜視図、図1(b)は、図1(a)に示したX−Xにおける圧子の断面図、図1(c)は図1(a)に示した矢印C方向から観察した圧子の平面図である。
【図2】図2は、図1に示す硬度測定用圧子を用いた硬度測定を説明するための概略図である(a〜c)。
【図3】図3は、図1に示す硬度測定用圧子を用いた硬度測定を説明するための概略図である。
【図4】図4は、図1に示す硬度測定用圧子を用いて作成した荷重(押し圧)−硬度の較正曲線である。
【図5】図5は、本体と絶縁チップとの境界線が傾斜した硬度測定用圧子を示している。
【図6】図6(a)及び(b)は、図5に示す硬度測定用圧子を用いた硬度測定を説明するための概略図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、図1に示す硬度測定用圧子を用いた硬度測定を説明するための概略図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、図5に示す硬度測定用圧子を用いた硬度測定を説明するための概略図である。
【図9】図9(a)及び(b)は、図1に示す硬度測定用圧子を用いた硬度測定を説明するための概略図である。
【図10】図10は、硬度測定用圧子の先端の拡大図である(a〜b)。
【図11】図11は、別の硬度測定用圧子の先端の拡大図である(a〜b)。
【図12】図12は、図10の硬度測定用圧子の製造工程を説明するための概略斜視図である(a〜c)。
【図13】図13は、図10の硬度測定用圧子の製造工程を説明するための概略断面図である(a〜c)。
【図14】図14は、図11の硬度測定用圧子の製造工程を説明するための概略断面図である(a〜c)。
【図15】図15は、本発明の硬度測定用圧子を使用するハンディータイプの硬度測定装置を説明するための概略図である。
【図16】図16は、図15のハンディータイプの硬度測定装置の概略斜視図である。
【図17】図17は、図15のハンディータイプの硬度測定装置の概略側面図である。
【図18】図18は、本発明の硬度測定用圧子を使用する設置型の硬度測定装置を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及び、それらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0017】
<実施の形態1>
図1は、本発明に係る硬度測定用圧子10を示している。圧子10は、導電性材料から成る本体11と、絶縁チップ12とを含んでいる。本体11の一端は先細りにされており、その先端110に絶縁チップ12が取着されている。絶縁チップ12も先細りにされており、その先端16は、本体11の先端110より更に細くされている。なお、絶縁チップ12の長さ(圧子の長軸13方向における絶縁チップ12の寸法)は、Lで示されている。硬度測定時には、この絶縁チップ12の先端16から被測定物に押し込まれる。
【0018】
本体11と絶縁チップ12との境界面14’は平坦であり(図1(b))、さらに、境界面14’は、圧子10の長軸13に対して垂直な平面Bと一致している。よって、圧子10の外周面15に現れている本体11と絶縁チップ12との境界線14も、平面Bの面内に位置することになる(図1(a))。
【0019】
本発明の圧子10は、従来の「Au−サファイア圧子」とは異なり、圧子10の表面を覆う被膜を含まない。そのため、多数回の測定による被膜の剥離と、被膜剥離に伴う測定精度の低下という問題が起こらない。よって、本発明の圧子10は、多数回の測定にわたって、正確な硬度を測定することができる。
【0020】
本発明の圧子10を用いた硬度測定では、具体的には以下の3ステップを含んでいる。
ステップ(1):圧子10の先端16を被測定物に押し込み、所定の深さまで押し込まれた「時点」を即時に検出する。本発明では、圧子10の本体11と、被測定物90の表面91との導通を検出することにより、その「時点」を検出する。
ステップ(2):ステップ(1)で検出された「時点」において、圧子10に加えられている「荷重」(導通時荷重)を測定する。
ステップ(3):ステップ(2)で測定された「荷重」を用いて、硬度に換算する。
以下に、各ステップについて具体的に説明する。
【0021】
<ステップ(1):導通の検出>
図2(a)は、圧子10の先端16が被測定物90に接触する前の状態、図2(b)は、圧子10の先端16が被測定物90に押圧されて、絶縁チップ12の一部が被測定物90に押し込まれている状態、そして、図2(c)は、絶縁チップ12の全部が被測定物90に押し込まれて、圧子10の境界線14が被測定物90の表面91と一致した状態を、それぞれ示している。なお、被測定物90は、導電性材料から形成された被測定物(導電性被測定物)、又は絶縁体材料から形成された被測定物であって、その表面を導電性の被膜で覆われた被測定物(絶縁性被測定物)のいずれかである。
また、圧子10の本体11と被測定物90の表面91との間の導通を検出するために、導通検出手段70が設置されている。
【0022】
図2(a)及び(b)では圧子10の本体11と被測定物90の表面91とが離れており、本体11と表面91との間に電気的な導通は生じていない。そのため、導通検出手段70は、本体11と表面91との間が非導通状態であることを示している。
これに対して、図2(c)では、絶縁チップ12が全て被測定物90に完全に押し込まれて、境界線14(本体11の下端)と表面91とが一致している。この時点で、本体11と表面91とは接触し始める。よって、導通検出手段70は、本体11と表面91との間が導通状態になったことを示している。
【0023】
導通検出手段70が導通状態を示した時点を検出すれば、圧子10の絶縁チップ12が被測定物90内に完全に押し込まれた時点、言い換えれば、圧子10の先端16が、絶縁チップ12の長さLと等しい「深さL」まで押し込まれた時点を知ることができる。
【0024】
<ステップ(2):導通時荷重の測定>
導通時荷重は、荷重測定手段80によって測定される。図3の例では、荷重測定手段80は、荷重測定器81、荷重表示手段82及び荷重表示部83を含んでいる。
圧子10に加えられた荷重は、荷重測定器81によって測定される。測定された荷重のデータDは、荷重測定器81から荷重表示手段82に送られ、荷重表示部83に表示される。また、導通検出手段70は、圧子10の本体11と被測定物90の表面91とが導通したことを検出すると、荷重表示手段82に導通信号Sを送信する。荷重表示手段82が導通信号Sを受信すると、その時点での荷重(導通時荷重)を荷重表示部83に固定して表示する。つまり、導通確認前は、荷重表示部83に表示される数値は変動するが、導通確認後は、その数値は導通時荷重のまま固定される。
【0025】
<ステップ(3):硬度への換算>
図4は、導通時荷重と、被測定物90の硬度との関係を示す荷重−硬度の較正曲線である。図4の例では、硬度既知(ヌープ硬度6.5、7.3、13、15及び35)の5つの材料を準備して、上記ステップ(1)〜(2)により導通時荷重を測定し、その結果に基づいて作成した。そして、硬度未知の被測定物では、ステップ(2)で測定された導通時荷重(荷重表示部83に表示されている)を読取り、図4の較正曲線を用いて硬度に換算する。
なお、較正曲線は、使用する圧子10の絶縁チップ12の長さ、内抱角及び材料によって異なるため、実際に測定に使用する圧子10と同一のものを用いて較正曲線を準備する必要がある。
【0026】
また、図3の荷重測定手段80の荷重表示部83に代えて、硬度換算回路84と硬度表示部85とを設けることにより、図4の較正曲線を用いた硬度換算を自動化できる。
硬度換算回路84は、較正曲線の荷重−硬度換算データ又は荷重−硬度換算式を記憶する記憶領域と、記憶された換算データ又は換算式を用いて、荷重表示手段82から入力された導通時荷重を硬度に換算する換算回路とを備えている。換算された硬度の値は硬度表示部85に送られ、硬度表示部85に表示される。
【0027】
上述のように、本発明の圧子10を用いてステップ(1)〜(3)を行うことにより、被測定物90の硬度を測定することができる。
【0028】
なお、本発明の圧子10は、その外周面15における本体11と絶縁チップ12との境界線14が、圧子10の長軸13に対して垂直な平面Bの面内に位置していることにより、ステップ(1)(本体11と被測定物90の表面91との導通の検出)における測定誤差を抑制することができる。この効果の具体例を以下に説明する。
【0029】
まず、圧子の長軸と、被測定物90の表面91とが垂直ではない場合(傾斜した表面91)における、圧子の押し込み深さの測定誤差について検討する。
【0030】
境界線が圧子の長軸に対して垂直な平面Bにないような圧子(例えば、図5のように、境界線114が長軸113に対して傾斜している圧子100)では、圧子100の先端116と境界線114との距離は、測定箇所によって異なる。境界線114の上にある点のうち、圧子100の先端116から最も近い点を「近位点P」、最も遠い点を「遠位点P」とする。また、先端116から近位点Pまでの距離をL、近位点Pから遠位点Pまでの距離をΔLとする。
【0031】
図5の圧子100を用いて傾斜した表面91の硬度を測定すると、表面91の傾斜方向と、境界線114の傾斜方向との関係によって、通電時の圧子100の押し込み深さが変化する。図6を参照しながら、具体的に説明する。
【0032】
図6(a)は、左上がりに傾斜した表面91に、境界線114が左上がりに傾斜する向きで圧子100を押し込んだ様子を示している。この場合には、圧子100の押し込み深さが「L+ΔL」になったときに、表面91と遠位点Pとが接触する。そして、表面91と圧子100の本体11との間で通電が検出される。
一方、図6(b)は、右上がりに傾斜した表面91に、境界線114が左上がりに傾斜する向きで圧子100を押し込んだ様子を示している。この場合には、圧子100の押し込み深さが「L」になったときに、表面91と近位点Pとが接触する。そして、表面91と圧子100の本体11との間で通電が検出される。
【0033】
このように、境界線114が長軸113に対して傾斜している圧子100を用いて、傾斜した表面91の硬度を測定すると、表面91の傾斜方向と圧子100の境界面114の傾斜方向との関係が異なるだけで、通電が検出される時の押し込み深さが、最大でΔLの誤差を生じる恐れがある。
【0034】
これに対して、本発明の圧子10は、境界線14が長軸13に対して垂直な平面Bの面内に位置するため、図7(a)のように左上がりに傾斜した表面91でも、図7(b)のように右上がりに傾斜した表面91でも、圧子10の押し込み深さが「L」になったときに、表面91と境界線14とが接触する。すなわち、圧子10では、表面91の傾斜方向に関係なく、通電が検出された時の押し込み深さは、実質的に一定(=L)になる。よって、圧子100(図5)に比べて、誤差が生じにくい。
【0035】
次に、圧子の長軸と、被測定物90の表面91とが垂直の場合における、圧子の押し込み深さの測定誤差について検討する。
【0036】
例えば圧子をハンドピースに取り付けて使用する場合、圧子を押し込んでいる間に手ぶれが生じやすい。その結果、被測定物90の表面91に形成される圧痕の寸法(正確には、圧痕の開口部の寸法)が、圧子の先端(絶縁チップ)の外径寸法よりも僅かに大きくなることがある。図8及び図9は、絶縁チップより大きい寸法の圧痕97と、表面91に押し込まれた圧子と示している。
【0037】
図8では、被測定物90の表面91に、圧子100(図5参照)が、深さL(先端116から近位点Pまでの距離と一致)まで押し込まれている。この時の圧子100の向きは、右側に境界線114の近位点Pが位置し、左側に遠位点Pが位置する向きである。
図8(a)では、圧子100は、圧痕97の中で僅かに右に傾いて、圧子100の絶縁チップ112の右側が、圧痕97の内面と接触している。押し込み深さがLなので、被測定物90の表面91と近位点Pとの高さは一致している。よって、表面91と近位点Pとが接触し、表面91と圧子100の本体11との間で通電が検出される。
【0038】
一方、図8(b)では、圧子100は、圧痕97の中で僅かに左に傾いて、圧子100の絶縁チップ112の左側が、圧痕97の内面と接触している。(このとき、近位点Pと被測定物90の表面91とは離れている。)押し込み深さがLなので、被測定物90の表面91より遠位点Pのほうが高い位置にある。よって、表面91と遠位点Pとは接触せず、表面91と圧子100の本体11との間で通電は検出されない。
【0039】
このように、境界線114が長軸113に対して傾斜している圧子100では、同じ押し込み深さであるにも拘わらず、測定時の僅かな手ぶれによって、通電が検出される場合と、検出されない場合とが起こりうる。そのため、圧子100では、精度のよい硬度測定ができない。
【0040】
これに対して、本発明の圧子10は、境界線14が長軸13に対して垂直な平面Bの面内に位置するため、圧子10が、被測定物90の表面91に深さL(先端16から境界線14までの距離と一致)まで押し込まれているならば、図9(a)のように圧子10が右に傾いても、図9(b)のように圧子10が左に傾いても、表面91と境界線14とが右側または左側で接触する。そのため、いずれの場合でも、表面91と圧子10の本体11との間で通電が検出される。すなわち、本発明の圧子10は、測定時に僅かに手ぶれしても、所定の押し込み深さ(=L)で、常に通電を検出することができる。よって、圧子100(図5)に比べて、誤差が生じにくい。
【0041】
このように、本発明の圧子10は、境界線14が平面Bの面内に位置していることにより、ステップ(1)(本体11と被測定物90の表面91との導通の検出)における測定誤差を抑制でき、その結果として硬度測定の精度も高めることができる。
【0042】
なお、被測定物90の表面91が傾斜している場合、厳密には、圧子10の境界線14が平面Bの面内において矩形や多角形などの場合(すなわち、図1(c)のような平面視において、境界線14が矩形や多角形の場合)、被測定物90の硬度にばらつきを生じる恐れがある。
境界線14が矩形を例にとって説明する。平面視における先端16から境界線14までの距離は、矩形の頂点では長く、矩形の辺部では短い。そのような圧子10を傾斜した表面91に押し込むと、矩形の頂点が表面91の山側部分と接触した場合には、接触点の高さは僅かに高く、矩形の辺部が表面91の山側部分と接触した場合には、接触点の高さは僅かに低い。
これに対して、圧子10の境界線14が平面Bの面内において円形(図1(c))であると、平面視における先端16から境界線14までの距離が一定になる。そのため、圧子10を傾斜した表面91に押し込むと、境界線14と表面91の山側部分との接触点は、常に同じ高さになる。よって、境界線14が平面Bの面内において円形であると、硬度測定の精度をさらに向上させることができるので好ましい。
【0043】
次に、本発明の硬度測定用圧子10の具体的な構成について詳説する。
図1に示すように、本実施の形態の硬度測定用圧子10の外形は、一端を削った断面円形の鉛筆に類似している。先端16は縮径された鋭端であり、後端17は平坦にされている。
【0044】
好ましい先端16の内抱角θ(図1(b))は、被測定物90の材質によって異なる。よって、被測定物90に合わせて、最適な内抱角θを有する圧子10を使用するのが最も望ましい。しかしながら、多種類の圧子10を準備するのが困難である場合や、汎用性のある圧子10を準備したい場合には、先端16のチッピング防止と、被測定物90への押し込み易さとの観点を鑑みて、内抱角がθ=30〜90°の範囲にある圧子10を使用するのが好ましい。
【0045】
さらに、図10(b)のように圧子10の先端16’にRを付ける(先端を面取りする)と、図10(a)のように鋭利な先端16に比べてチッピングしにくくなるので好ましい。先端16のRの曲率半径は、0.3〜1.0mil(7.5〜25μm)の範囲であるのが好ましい。曲率半径がその範囲にあると、圧子10を被測定物90に押し込むのに支障がなく、そして先端16’のチッピング抑制に効果がある。
なお、本明細書では、絶縁チップ12の長さL(L、L)は、先端16、16’から、境界線14(境界面14’)までの実際の長さである。よって、鋭利な先端16にRを付けて面取りした先端16’にすると、絶縁チップ12の長さは小さくなる。
【0046】
本体11に絶縁チップ12を固定する方法は、2種類に分類される。
一方は、図10のように、本体11に絶縁チップ12を直接固定する方法である。他方は、図11のように、本体11と絶縁チップ12との間に固定層30を介在させて、本体11に絶縁チップ12を間接的に固定する方法である。
直接固定法と間接固定法について、順次説明する。
【0047】
<直接固定法>
直接固定法で形成した圧子10は、図10のように、本体11と絶縁チップ12との間に固定層(接着剤又はロウ材など)が存在しない。このような圧子10は、固定層中の成分が滲出して、被測定物90を汚染する可能性を回避できる点で有利である。
その反面、本体11と絶縁チップ12とが、焼結等で直接接合できるように、本体11を形成する導電性材料と絶縁チップ12を形成する絶縁材料とを選択する必要がある。
【0048】
焼結による接合が可能な材料の組合せとしては、金合金と、金合金に焼き付け可能な陶材の組合せがある。そこで、本体11を金合金から形成し、絶縁チップ12を金合金に焼付け可能な陶材から形成することにより、本体11に絶縁チップ12を直接接合することができる。
【0049】
具体的な金合金としては、歯科用の陶材焼付用金合金(以下「メタルボンド用金合金」と称する)が利用できる。メタルボンド用金合金としては、金を主成分とし、白金、銀、銅、ロジウム、パラジウム、ガリウム、インジウムなどの合金元素を含むものが挙げられる。メタルボンド用金合金は、陶材を直接焼き付けることができる。また、メタルボンド用金合金は歯科用用途での認可を受けており、口内で使用しても体への悪影響がないことが確認されている。よって、メタルボンド用金合金は、口内の歯牙の硬度測定をする際に使用する圧子10の本体11を形成するのに適している。
【0050】
また、メタルボンド用金合金に焼き付け可能な具体的な陶材としては、歯科用ポーセレンが好適である。歯科用ポーセレンとしては、長石、アルミナ、ジルコニアなどを含むものが挙げられる。歯科用ポーセレンは、メタルボンド用金合金に対して十分な結合強度で焼き付けできるので、圧子10の使用中に本体11から絶縁チップ12が脱落するのを抑制できる。また、メタルボンド用金合金と同様に、歯科用ポーセレンも歯科用用途での認可を受けており、口内で使用しても体への悪影響がないことが確認されている。よって、歯科用ポーセレンは、口内の歯牙の硬度測定をする際に使用する圧子10の絶縁チップ12を形成するのに適している。
【0051】
なお、絶縁チップ12を形成する陶材は、ヌープ硬度200以上であるのが好ましく、様々な材料(例えば歯牙、金属、金属被膜、プラスチック、プラスチック被膜など)の硬度測定を行うことができる。
【0052】
直接固定法による圧子10の製造方法について、図12及び図13を参照しながら説明する。
(1.棒状部材111の作製)
本体11に使用する金合金を用いて、所定寸法(例えば直径1mm、長さ15mm)の棒状部材111を作製する(図12(a)、図13(a))。棒状部材111は、鋳造や機械加工により成形される。棒状部材111の先端110の端面は、棒状部材111の長軸130に対して垂直にされている。
【0053】
(2.チップ用材料120の固定)
絶縁チップ12に使用する陶材の原料粉末を泥状に練り、棒状部材111の先端110に盛り上げる。その後、棒状部材111を焼成炉で焼成することにより、棒状部材111の先端110にチップ用材料120を焼き付けて固定する(図12(b)、図13(b))。
なお、棒状部材111とチップ用材料120との結合強度を高めるために、絶縁チップ12の形成前に、棒状部材111の先端110の端面を粗面化したり、当該端面にプライマーを塗布してもよい。
【0054】
(3.絶縁チップ12の成形)
棒状部材111の長軸130を中心軸として、チップ用材料120をテーパー加工する。これにより、棒状部材111(本体11)の先端に固定された絶縁チップ12が得られる(図12(c)、図13(c))。なお、テーパー加工の際に、棒状部材111の先端110も共に加工してもかまわない。
その後、必要に応じて、絶縁チップ12の先端16を加工してRを付ける(図10(b))。
【0055】
上述の製造方法により作製された圧子10は、本体11と絶縁チップ12との境界面14’が、圧子10の長軸13(棒状部材111の長軸130と一致)と垂直になる。よって、この製造方法によれば、本体11と絶縁チップ12との境界線14が、圧子10の長軸13と垂直な面内にある圧子10を得ることができる。
【0056】
<間接固定法>
次に、間接固定法について詳述する。
間接固定法で形成した圧子10は、図11のように、本体11と絶縁チップ12との間に固定層30が存在している。本体11と絶縁チップ12とが直接接合できない材料の組合せであっても、固定層30を介在させることにより、接合可能にできる。よって、固定層30を設けることにより、本体11と絶縁チップ12とに使用できる材料の選択肢を広げることができる。
【0057】
固定層30は、導電性材料(例えば、銀ロウ材、リン銅ロウ材、黄銅ロウ材、錫ハンダなど、導電性を有するロウ材)、又は絶縁性材料(例えば、樹脂系接着剤)から形成することができる。固定層30の性質によって、圧子10の本体11と被測定物90の表面91とが導通するまでの深さが異なる。
導電性材料から成る固定層30の場合、絶縁チップ12が被測定物90に完全に押し込まれた時に、本体11と表面91とが、固定層30を介して導通する。すなわち、圧子10の先端16が、図11(a)、(b)に示した絶縁チップ12の高さLだけ押し込まれたときに、本体11と表面91とが導通する。よって、硬度測定時には、L=Lとして取り扱う。
一方、絶縁性材料から成る固定層30の場合、固定層30が被測定物90に完全に押し込まれた時に、本体11と表面91とが導通する。図11(a)、(b)に示した絶縁チップ12の高さLと固定層30の厚さLを用いて表現すれば、圧子10の先端16が(L+L)だけ押し込まれたときに、本体11と表面91とが導通する。よって、硬度測定時には、L=(L+L)として取り扱う。
【0058】
固定層30は、接着剤又はロウ材などから形成することができる。特に、ロウ材には多くの種類があり、多種多様な導電性材料及び絶縁材料を、強固に固定できるので好ましい。
【0059】
例えば、本体11には、様々な金属や合金が利用できるので、本体11の製造コストを引き下げることができる。また、絶縁チップ12には、ダイヤモンドやサファイアなどの高硬度の材料を利用できるので、高硬度の被測定物90の測定にも利用できる。特に、ダイヤモンドの絶縁チップ12は、ほぼ全ての被測定物90の硬度測定に利用できる。
【0060】
間接固定法による圧子10の製造方法について、図14を参照しながら説明する。
(1.棒状部材111の作製)
本体11に使用する導電性材料(例えば金属)を用いて、所定寸法(例えば直径1mm、長さ15mm)の棒状部材111を作製する(図14(a))。棒状部材111は、鋳造や機械加工により成形される。棒状部材111の先端110の端面は、棒状部材111の長軸130に対して垂直にされている。
【0061】
(2.チップ用材料120の固定)
絶縁チップ12に使用する絶縁材料から、チップ用材料120を形成する。なお、チップ用材料120の寸法形状は、棒状部材111の先端110に固定できる程度で、且つ絶縁チップ12より大きければよい。次に、棒状部材111の先端110に固定層30の材料(接着剤又はロウ材)を塗布し、その上にチップ用材料120を固定する(図14(b))。
【0062】
(3.絶縁チップ12の成形)
棒状部材111の長軸130を中心軸として、チップ用材料120をテーパー加工する。これにより、棒状部材111(本体11)の先端に固定された絶縁チップ12が得られる(図14(c))。なお、テーパー加工の際に、棒状部材111の先端110及び固定層30も共に加工してもかまわない。
その後、必要に応じて、絶縁チップ12の先端16を加工してRを付ける(図11(b))。
【0063】
なお、ダイヤモンドのように研磨が困難な材質から絶縁チップ12を形成する場合には、ステップ2(チップ用材料120の固定)より先に、棒状部材111のみをテーパー加工し、その後に、棒状部材111(本体11)の先端に、小さいダイヤモンド粒子を固定するのが好ましい。これにより、ダイヤモンドの研磨量を減らして、研磨にかかる時間を短縮することができる。なお、圧子10の境界線14を圧子10の長軸13に対して垂直にするためには、ダイヤモンド粒子に平坦な面を形成して、棒状部材111(本体11)の先端に接着時に、その平坦面を接着面とするのがよい。よって、ダイヤモンド粒子は、平坦面が形成でき、且つその平坦面を接着面として正確に位置決めできる程度の寸法を有することが望ましい。
【0064】
次に、本発明の圧子10を使用した2種類の硬度測定装置を説明する。1つは、ハンディータイプの硬度測定装置であり(図15〜図17)、もう1つは設置型の硬度測定装置である(図18)。
【0065】
まず、図15〜図17を参照しながら、ハンディータイプの硬度測定装置40と、その使用方法について説明する。この例では、硬度測定装置40により、被測定物94(歯牙のう蝕部)の硬度を測定する。
【0066】
硬度測定装置40は、ケース42と、先端に圧子10が固定されたハンドピース41と、口内に設置される口内端子43とを含んでいる。
ケース42には、導通検出手段70と荷重表示部83とが内蔵されている。導通検出手段70は、口内端子43と、ハンドピース41に固定された圧子10との間の導通を検出できるようになっている。
ハンドピース41は、圧子10を固定する部分に荷重測定器81を備え、またハンドピース41の把持部410内に荷重表示手段82を備えている。荷重表示手段82は、荷重測定器81からの荷重データDを荷重表示部83に表示する。また、荷重表示手段82は、導通検出手段70からの導通信号Sを受信して、荷重表示部83の数値(導通時荷重)を固定することができる。
口内端子43は、口内粘膜と接触して、口内と導通させるものである。図15には、口唇に引っ掛けるフック状の口内端子43が図示されており、口内端子43の先端は、口内粘膜93と接触可能にされている。
【0067】
硬度測定前に、口内端子43を口唇に引っ掛けて、口内端子43を口内粘膜93と接触させる。一方、歯牙象牙質90の表面(被測定面)91は、導電性の浸出液によって濡れており、また、歯牙象牙質表面91には、導電性の象牙細管92が露出している。象牙細管92は、導電性の歯髄95につながっており、歯髄95は導電性の歯肉96と接触している。すなわち、口内粘膜93と歯牙象牙質表面91とは、浸出液、象牙細管92、歯髄95及び歯肉96を介して導通している(図15に、口内粘膜93と歯牙象牙質表面91との間の導通経路Pを破線で示す)。よって、口内端子43と歯牙象牙質表面91とは、導通経路Pと口内粘膜93とを通って電気的に導通している。なお、歯牙象牙質90の表面(被測定面)91が乾燥している場合は、導電性フッ化物などを歯牙象牙質表面91に塗布して、導電性の被膜を意図的に形成することができる。導電性フッ化物により形成された導電性被膜を介して、歯牙象牙質表面91と口内端子43とを導通させることもできる。
【0068】
硬度測定時には、測定者(歯科医師)がハンドピース41を把持し、圧子10を口内に挿入する。圧子10の先端16をう蝕部94に押し付けて、圧子10の絶縁チップ12をう蝕部94に押し込む。絶縁チップ12が完全に押し込まれて、圧子10の本体11と歯牙表面91とが接触した時に、本体11と口内端子43とが導通する。導通検出手段70は、本体11と口内端子43との導通を検出して、荷重表示手段82に導通信号Sを送信する。導通信号Sを受信した荷重表示手段82は、荷重表示部83の荷重表示を固定する。固定された荷重の表示が導通時荷重である。そして、荷重表示部83に表示された導通時荷重を換算して、う蝕部94の硬度が得られる。
【0069】
ハンディータイプの硬度測定装置40は、図16及び図17のように、ケース40内にハンドピース41と口内端子43を収納できるように設計されており、持ち運びに適している。また、ケース40内にバッテリーを内蔵すれば、電源のない場所でも硬度を測定できる。
【0070】
次に、図18を参照しながら、設置型の硬度測定装置50と、その使用方法について説明する。この例では、硬度測定装置50により、導電性の被測定物90(金属板)の硬度を測定する。
【0071】
硬度測定装置50は、本体51と、金属板90を載置する測定テーブル52と、先端に圧子10が固定されたアーム53とを含んでいる。
本体51には、導通検出手段70と荷重表示部83とが内蔵されている。導通検出手段70は、測定テーブル52と、アーム53に固定された圧子10との間の導通を検出できるようになっている。
アーム53は、圧子10を固定する部分に荷重測定器81と荷重表示手段82を備えている。荷重表示手段82は、荷重測定器81からの荷重データDを荷重表示部83に表示する。また、荷重表示手段82は、導通検出手段70からの導通信号Sを受信して、荷重表示部83の数値(導通時荷重)を固定することができる。
【0072】
硬度測定時には、測定者が手動あるいは自動でアーム53を垂直下方に下げて、圧子10の先端16を金属板90の表面91に接触させる。さらにアーム53を下げて、圧子10の先端16を金属板90の表面91に押し付け、圧子10の絶縁チップ12を押し込む。絶縁チップ12が完全に押し込まれて、圧子10の本体11と金属板90の表面91とが接触した時に、金属板90を通って測定テーブル52と本体11とが導通する。導通検出手段70は、本体11と測定テーブル52との導通を検出して、荷重表示手段82に導通信号Sを送信する。導通信号Sを受信した荷重表示手段82は、荷重表示部83の荷重表示を固定する。固定された荷重の表示が導通時荷重である。そして、荷重表示部83に表示された導通時荷重を換算して金属板90の硬度が得られる。
【0073】
この硬度測定装置50は、従来のヌープ硬度計に比べて構造が簡単なので、安価に製造できる。また、設置場所が厳密に水平でなくても良いので、金属板90を製造している製造現場に設置して、即時に硬度を測定できる。また、簡便な測定に比して、精度の高い硬度測定が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の硬度測定装置は、歯科分野における口腔内のう蝕歯の硬度測定の他にも、金属材料、金属被膜、ゴム材料、プラスチック材料、プラスチック被膜、鉱石などの硬度測定に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 硬度測定用圧子
11 本体
110 本体の先端
111 棒状部材
12 絶縁チップ
120 チップ用材料
13 長軸
14 境界線
14’ 境界面
15 外周面
16 先端
17 後端
30 固定層
40 ハンディータイプ硬度測定装置
41 ハンドピース
410 把持部
42 ケース
43 口内端子
50 設置型硬度測定装置
51 本体
52 測定テーブル
53 アーム
70 導通検出手段
80 荷重測定手段
81 荷重測定器
82 荷重表示手段
83 荷重表示部
84 硬度換算回路
85 硬度表示部
90 被測定物(歯牙象牙質)
91 被測定物の表面(歯牙象牙質表面)
92 象牙細管
93 口内粘膜
94 う蝕部
95 歯髄
96 歯肉
B 平面
D 荷重データ
L 絶縁チップの長さ
P 導通経路
S 導通信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に導通可能な表面を有する被測定物の硬度を測定するための圧子であって、
前記圧子が、導電性材料から成る本体と、前記本体の先端に取着され前記被測定物に押圧される絶縁チップとを含み、
前記圧子の外周面における前記本体と前記絶縁チップとの境界線が、前記圧子の長軸に対して垂直な平面の面内に位置することを特徴とする硬度測定用圧子。
【請求項2】
前記本体が、金合金から成り、
前記絶縁チップが、前記金合金に焼付け可能な陶材から成ることを特徴とする請求項1に記載の硬度測定用圧子。
【請求項3】
前記陶材が、ヌープ硬度200以上を有することを特徴とする請求項2に記載に硬度測定用圧子。
【請求項4】
前記金合金が、歯科用の陶材焼付用金合金であり、
前記陶材が、歯科用ポーセレンであることを特徴とする請求項2又は3に記載の硬度測定用圧子。
【請求項5】
前記本体が金属から成り、
前記絶縁チップがダイヤモンドから成ることを特徴とする請求項1に記載の硬度測定用圧子。
【請求項6】
前記本体と前記絶縁チップとが、固定層を介して固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硬度測定用圧子。
【請求項7】
前記固定層が、導電性のロウ材から成ることを特徴とする請求項6に記載の硬度測定用圧子。
【請求項8】
前記被測定物が、導電性薄膜により表面を覆われた絶縁性材料であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の硬度測定用圧子。
【請求項9】
前記被測定物が、歯牙象牙質であることを特徴とする請求項8に記載の硬度測定用圧子。
【請求項10】
前記歯牙象牙質が、導電性フッ化物により表面を覆われていることを特徴とする請求項9に記載の硬度測定用圧子。
【請求項11】
前記被測定物が導電性材料であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の硬度測定用圧子。
【請求項12】
前記圧子の前記境界線が、前記平面の面内において円形であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の硬度測定用圧子。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の硬度測定用圧子を製造する方法であって、
導電性材料から成る棒状部材を調製する工程であって、前記棒状部材の一方の端面が当該棒状部材の長軸に対して垂直になるように成形することを含む、前記調製する工程と、
前記棒状部材の一端に絶縁性材料から成るチップ用材料を固定する工程と、
前記チップ用材料を、前記棒状部材の長軸を中心軸としてテーパー加工して、絶縁チップに成形する工程と、
を含むことを特徴とする硬度測定用圧子の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の硬度測定用圧子を使用する硬度測定装置であって、
前記圧子の前記本体と前記被測定物の前記表面との導通状態を検出する導通検出手段と、
前記導通検出手段により導通が検出された時に前記圧子に加えられている荷重を測定する荷重測定手段と、
を備えていることを特徴とする硬度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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