説明

硬貨処理装置

【課題】硬貨処理装置の選別ユニットにおける硬貨識別時の硬貨の挙動を安定させる手段を提供する。
【解決手段】水平に配置された選別ハウジング12内に配置され、外周縁部に隔置部17で仕切られた複数の硬貨収容部16が形成された搬送ディスク13と、硬貨収容部16に搬入される硬貨を通過させる搬入口18と、搬送ディスク13を間欠駆動するディスク回転モータ15と、硬貨収容部16に収容された硬貨の搬送軌跡上に配置され、間欠駆動による搬送中に硬貨を識別する識別センサ34とを有する選別ユニット11を備えた硬貨処理装置に、識別センサ34を通過する硬貨を、硬貨収容部16の底面16aに整位させる整位レバー41を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転円盤上に投入された硬貨を1枚毎に繰出す繰出ユニットと、繰出された硬貨を取込み、その硬貨を選別する選別ユニットとを硬貨通路で連結した硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の硬貨処理装置は、単なる穴で形成された偽貨通過穴と、開閉する蓋を設けた正貨通過穴とを有する傾斜させたハウジング内に、外周に複数のU字状に切欠かれた硬貨収容部を設けた金属製の回転円盤を配置し、ハウジングの下部に投入された複数の硬貨を硬貨収容部で1枚毎に掬い上げて硬貨判別手段へ搬送し、硬貨判別手段で硬貨の真偽を判別し、真性硬貨は、通常開いた状態となっている正貨通過穴へ搬送して落下させ、偽硬貨は、正貨通過穴を閉じた後に蓋上を通過させて偽貨通過穴へ搬送し、偽貨通過穴から落下させて投入された硬貨を選別している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術においては、ハウジングの下部に投入された複数の硬貨を硬貨収容部で1枚毎に掬い上げて搬送しているため、回転する硬貨収容部の角に硬貨が引っ掛かると、その硬貨が跳ね上がり、硬貨収容部に収容されずに空の硬貨収容部が形成され、硬貨の搬送における確実性が不足し、結果として硬貨の処理効率を低下させるという問題が生ずる。
【0004】
この選別ユニットにおける硬貨搬送の確実性を向上させて硬貨の選別処理における処理効率を向上させために、出願人は、特願2009−264102において、硬貨処理装置を、水平に配置された繰出ハウジング内に配置された繰出回転円盤と、繰出回転円盤上に投入された硬貨を1枚毎に分離して繰出す分離ゲートとを有する繰出ユニットと、水平に配置された選別ハウジング内に配置され、外周縁部に隔置部で仕切られた複数の硬貨収容部が形成された搬送ディスクと、硬貨収容部に搬入される硬貨を通過させる搬入口と、搬送ディスクを間欠駆動するディスク回転モータと、硬貨収容部に収容された硬貨の搬送軌跡上に配置され、搬送される硬貨を識別するための識別センサとを有する選別ユニットと、繰出ユニットの分離ゲートと選別ユニットの搬入口との間を連結する水平に配置された硬貨通路と、硬貨通路の、搬入口の硬貨の搬入方向の上流側に配置され、搬入口から搬入する硬貨を挟持して待機位置に待機させる一対の搬送ローラ対とで構成し、搬送ディスクの硬貨収容部を搬入口に対向させた硬貨搬入位置に停止させたときに、搬送ローラ対を回転させて、待機位置に待機させた硬貨を硬貨収容部に搬入し、間欠駆動による搬送中に硬貨収容部内の硬貨を識別センサで識別し、リジェクト硬貨はリジェクト口へ、正常硬貨は正常硬貨排出口へ落下させて硬貨を選別する技術を提案している(前記出願の明細書の段落0012−0043、0086−0089、第2図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−229513号公報(段落0006−段落0007、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特願2009−264102の技術は、硬貨を硬貨収容部に確実に搬入しながら、硬貨の搬入時間を短縮して間欠駆動における搬送ディスクの停止時間を短くすることができるため、硬貨の選別処理における処理効率の向上に有用な技術であるが、異なる直径の硬貨の搬送を可能にするため搬送ディスクの硬貨収容部は最大直径の硬貨が収容可能な大きさになっている。
【0007】
このため、間欠駆動による硬貨の搬送中に識別センサによって硬貨識別をするときに、特に最小直径の硬貨が硬貨収容部内で間欠駆動による慣性力等によって不規則に移動しながら識別センサを通過することがあり、識別センサで取得した硬貨の特性値、特に硬貨の直径の取得値にバラツキが生じ、選別した硬貨に誤判定が生ずる場合があるという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、選別ユニットにおける硬貨識別時の硬貨の挙動を安定させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、水平に配置された選別ハウジング内に配置され、外周縁部に隔置部で仕切られた複数の硬貨収容部が形成された搬送ディスクと、前記硬貨収容部に搬入される硬貨を通過させる搬入口と、前記搬送ディスクを間欠駆動するディスク駆動源と、前記硬貨収容部に収容された硬貨の搬送軌跡上に配置され、前記間欠駆動による搬送中に硬貨を識別する識別センサとを有する選別ユニットを備えた硬貨処理装置において、前記識別センサを通過する硬貨を、前記硬貨収容部の底面に整位させる整位レバーを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
これにより、本発明は、識別センサを通過する硬貨の挙動を安定させることができ、識別センサによる取得値の精度を向上させて、選別する硬貨Cの誤判定を防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の硬貨処理装置の側方から見た断面を示す説明図
【図2】実施例1の硬貨処理装置の上面を示す説明図
【図3】実施例1の搬送ディスクの形状を示す説明図
【図4】実施例1の硬貨識別時の作用を示す説明図
【図5】実施例2の搬送ディスクの形状を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して本発明による硬貨処理装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1、図2において、1は硬貨処理装置の繰出ユニットである。
2は繰出ユニット1の繰出ハウジングであり、概ね100枚以上の硬貨Cを収容できる高さを有する有底の円筒状部材であって、その底板2aは水平に配置されている。
【0013】
3は繰出回転円盤であり、繰出ハウジング2内に水平に配置され、繰出ハウジング2の底板2aの中心に回転自在に支持された回転軸4を中心に繰出回転方向(図2において、反時計方向)に回転する円盤であって、繰出ハウジング2の側壁2bの内周面との間に、取扱う硬貨Cの中で最小厚さの硬貨Cが挟まらない隙間を形成する直径を有しており、円盤駆動源としての繰出モータ5からギヤ列5aを介して回転軸4に伝達される駆動力により回転駆動される。
【0014】
7は投入部であり、繰出回転円盤3の中央部の上方に配置された、硬貨を投入するための円錐台状部材であって、その落下口7aの近傍には投入された硬貨Cを検出するための図示しない投入検知センサが設けられている。
8は分離ゲートであり、繰出ハウジング2の側壁2bに形成された開口であって、繰出回転円盤3の上面との間に、取扱う全ての硬貨Cを1枚だけ通過させる間隔で形成された上面を有しており、その開口の下面は回転円盤3の上面より僅かに低く形成されている。
【0015】
9は幅寄せガイドであり、分離ゲート8の開口の一方の側面との間に、取扱う硬貨Cの中で最大直径の硬貨C(以下単に最大直径の硬貨という。日本国の硬貨では500円硬貨)を1枚だけ通過させる距離分離間した位置に配置され、分離ゲート8で1枚に分離され繰出回転円盤3により円周方向に搬送される硬貨Cを、分離ゲート8の開口の、幅寄せガイド9に対向する一方の側面の方向に押戻す機能を有している。
【0016】
また、繰出ハウジング2の側壁2bは、繰出回転円盤3の回転による遠心力で当接した硬貨Cを、その内周面に沿って分離ゲート8の方向へ導く繰出硬貨ガイド部材としても機能する。
11は硬貨処理装置の選別ユニットであり、有底の円筒状部材である合成樹脂で形成された選別ハウジング12を備えており、その底板12aは水平に配置されている。
【0017】
13は搬送ディスクであり、選別ハウジング12内に水平に配置され、選別ハウジング12の底板12aの中心に回転自在に支持された回転軸14を中心に搬送回転方向(図2において、時計方向)に回転する合成樹脂で形成された円盤状部材であって、ディスク駆動源としてのディスク回転モータ15からギヤ列15aを介して回転軸14に伝達される駆動力により回転駆動される。
【0018】
16は硬貨収容部であり、搬送ディスク13の外周縁部を台形状に切欠いて形成された最大直径の硬貨Cを1枚だけ収容可能な収容部であって、隣合う硬貨収容部16との間を隔置部17で仕切られて所定の等ピッチ角度で複数形成され、その硬貨収容部16の入口の、図2に矢印Aで示す搬入方向の直交方向の幅は、取扱う最大直径の硬貨Cの直径より大きく設定されており、搬入口18から搬入された硬貨Cを収容する。
【0019】
また、選別ハウジング12の側壁12bは、その内周面によって、硬貨収容部16に収容され搬送ディスク13の回転による遠心力で当接した硬貨Cの搬送回転方向への搬送をガイドする搬送ガイド部材としても機能する。
【0020】
搬入口18は、選別ハウジング12の側壁12bに形成された開口であって、取扱う硬貨Cの中で最大厚さの硬貨Cを通過させる高さと、最大直径の硬貨Cを通過させる幅を有しており、その下面は選別ハウジング12の底面、つまり底板12aの上面より僅かに高く形成され、搬入方向Aの下流側には、選別ハウジング12の側壁12bの内周面と隔置部17の外径との隙間の間を搬入される硬貨Cの外周面をガイドするガイド部19(図1参照)が設けられている。
【0021】
21は位置決め部材であり、搬送ディスク13上に同軸で立設された円筒部材であって、その円筒壁には、スリット21a(図2において、黒塗りの部位)が、硬貨収容部16と所定の位相ずれた状態で同じピッチ角度で形成されている。
【0022】
22は位置検出センサであり、位置決め部材21の円筒壁を挟んで発光部と受光部とを対向配置させた硬貨収容部16の位置を検出するための光学式センサであって、発光部からの光を円筒壁が遮断したこと受光部で検出したときに「ON」になり、発光部からの光がスリット21aを通過して受光部に達したことを検出したときに「OFF」になる。
【0023】
24は搬入検出センサであり、選別ハウジング12の搬送ディスク13のいずれかの硬貨収容部16の入口が搬入口18に対向する位置(図2に示す位置、硬貨搬入位置という。)に停止したとき、その硬貨収容部16に搬入された硬貨Cを検出するための磁気センサであって、図2に示すように、搬入口18の搬入方向Aの下流側で、硬貨搬入位置に停止した硬貨収容部16に収容された、取扱う硬貨Cの中で最小直径の硬貨C(以下、単に最小直径の硬貨という。日本国の硬貨では1円硬貨)の範囲内に配置されており、搬入された硬貨Cの所定の特性値を取得して硬貨Cの存在を検出したときに「ON」になり、所定の特性値を取得できずに硬貨Cの不存在を検出したときに「OFF」になる。
【0024】
26は硬貨通路であり、繰出ユニット1の分離ゲート8の開口と選別ユニット11の搬入口18の開口とを連結するコの字状断面形状のガイド部材であって、分離ゲート8の下面および搬入口18の下面と面一に形成され水平に配置された底面を形成する底板と、その搬入方向Aに沿った両側に立設されたサイドガイド板を有している。
【0025】
27は搬送ローラ対であり、外周面に摩擦部材が被覆された第1の搬送ローラ27aと第2の搬送ローラ27bとを対向配置した一対の搬送ローラであって、搬入口18の搬入方向Aの上流側に近接してその直前に配置され、第1の搬送ローラ27aは、硬貨通路26の底面に設けられた窓部から外周面の一部を突出させて配置され(図1参照)、第2の搬送ローラ27bは、図示しないバネ部材によって第1の搬送ローラ27aの方向に押圧され、硬貨Cの厚さに応じて移動するよう構成され、第1および第2の搬送ローラ27a、27bの間に硬貨Cを挟持して搬送する。
【0026】
また、第1および第2の搬送ローラ27a、27bは、第2の搬送ローラ27bの回転軸を揺動可能に支持した図示しないアーム式等の連動機構によって、搬送モータ29からギヤ列29aを介して伝達される駆動力によりそれぞれ同期して回転駆動されるよう構成されている。
更に、搬送ローラ対27による硬貨Cの搬入方向Aは、図2に示すように、搬送ディスク13の回転中心より搬送回転方向の前方側にずらした状態で設定されている。
【0027】
31は待機検出センサであり、硬貨通路26の底板および搬送ローラ対27に挟持された硬貨Cを挟んで発光部と受光部とを対向配置させた搬送ローラ対27に挟持された硬貨Cを検出するための光学式センサであって、最小直径の硬貨Cが、その中心を搬送ローラ対27の軸芯と一致させたときに、搬送ローラ対27の挟持部の搬入方向Aの下流側を覆う領域内に形成された図示しない透過穴を通して照射された発行部からの光を、搬送ローラ対27に挟持された硬貨Cが遮断したことを受光部で検出したときに「ON」になり、発光部からの光が、透過穴31aを通過して受光部に達したことを検出したときに「OFF」になる。
【0028】
図2において、33は識別部であり、選別ユニット11の搬入口18の搬送回転方向の前方側に配置された磁気センサ等からなる3つの識別センサ34a、34b、34cを有しており、搬送ディスク13の硬貨収容部16に収容されて搬送される硬貨Cの後述する搬送軌跡上に配置され、後述する搬送ディスク13の間欠駆動による搬送中に当該硬貨Cの各種の特性値を取得して真偽、金種等を識別する機能を有している。
【0029】
また、本実施例の各識別センサ34は、搬送ディスク13が硬貨搬入位置に停止したときに、硬貨収容部16間の隔置部17にそれぞれ対向する位置に配置され、識別センサ34aは、主に硬貨Cの大きさ(直径)を測定するために設けられている。
【0030】
36は排出口としてのリジェクト口であり、識別部33の搬送回転方向の前方側で、硬貨搬入位置に停止した搬送ディスク13の硬貨収容部16が存在する位置の選別ハウジング12の底板12aに形成された、識別部33で偽硬貨や外国硬貨等と識別されたリジェクト硬貨を落下させて排出する穴であって、リジェクト硬貨が搬送されたときに開作動するスライド式等のリジェクト口開閉シャッタ36aが設けられている。
【0031】
38は排出口としての正常硬貨排出口であり、リジェクト口36の搬送回転方向の前方側で、硬貨搬入位置に停止した搬送ディスク13の、搬入口18に対向する硬貨収容部16に搬送回転方向の後方側で隣合う硬貨収容部16が存在する位置の選別ハウジング12の底板12aに形成された単なる穴であって、識別部33で真性硬貨と識別された各金種の正常硬貨を落下させて排出する。
【0032】
図3において、41は整位レバーであり、選別ハウジング12の側壁12bの半径方向外側に配置された回動支点42を中心に回動可能に構成された合成樹脂製の部材であって、その先端41aは、直近の識別センサ34aの搬送回転方向の前方側まで延在し、その幅は側壁12bの高さと同等に形成されており、整位レバー41の先端41aは、図示しないトーションスプリング等のバネ部材によって搬送ディスク13の中心側に向けて回動する方向に付勢され、選別ハウジング12の側壁12bの一部を矩形に切欠いて設けられた切欠部43から選別ハウジング12の内部に突出している。
【0033】
また、整位レバー41は、図示しないストッパによって、その先端41aが搬送ディスク13の外周面(図3に示す搬送ディスク13の中心からの半径R1の面をいう。)に接触しない位置で、かつ硬貨収容部16に収容された最小直径の硬貨C(図3の実線で示す硬貨Ca、Cc)を硬貨収容部16の入口の反対側の面(底面16aという。)に押圧することが可能な位置に係止されており(図3に示す硬貨Ca参照)、硬貨収容部16に収容された状態で識別センサ34aを通過する各種の硬貨Cを、硬貨収容部16の底面16aに押圧して整位させる機能を有している。
【0034】
なお、硬貨収容部16の底面16aは、最大直径の硬貨Cが選別ハウジング12の側壁12bの内周面に案内されながら搬送されるときに、最大直径の硬貨Cの外径との間に隙間が形成される位置に設けられている(図3に破線で示す硬貨Cb参照)。
また、搬送ディスク13の外周面の半径R1は、選別ハウジング12の側壁12bの内周面との間に半径方向隙間ΔRを形成するよう設定され、その半径方向隙間ΔRは、最小直径の硬貨Cの半径より狭い隙間に設定されている(図3に示す硬貨Cc参照)。
【0035】
上記のように、本実施例の各識別センサ34は、合成樹脂製の選別ハウジング12に内配置された合成樹脂製の搬送ディスク13を硬貨搬入位置に停止させたときに、その隔置部17に対向する位置に配置され、間欠駆動により搬送されるときに、識別センサ34aの近傍に配置された合成樹脂製の整位レバー41によって整位されながら通過する硬貨Cの特性値を取得するように構成されているので、その出力から搬送ディスク13や整位レバー41等による磁気的影響を除外することができ、搬送ディスク13により搬送される硬貨Cの特性値を確実に取得して正確な識別を行うことができる。
【0036】
以下に、本実施例の硬貨処理装置による硬貨Cの選別動作について説明する。
投入部7に一括して投入された複数の硬貨Cが繰出回転円盤3上に落下すると、繰出モータ5による繰出回転円盤3の繰出回転方向への駆動が開始されると共に、搬送モータ29による搬送ローラ対27の駆動およびディスク回転モータ15による搬送ディスク13の駆動が開始される。
【0037】
繰出回転円盤3が繰出回転方向に回転すると、繰出回転円盤3上に受入れられた硬貨Cは回転による遠心力によって繰出ハウジング2の側壁2bの内周面に当接し、側壁2bの内周面をガイド面として分離ゲート8の方向へ運ばれ、分離ゲート8によって1枚に分離されて硬貨通路26へ繰出され、繰出された最初の硬貨Cは後続する硬貨Cによって押されながら硬貨通路26を搬送ローラ対27の方向へ移動する。
【0038】
後続硬貨によって押されながら搬送ローラ対27に達した硬貨Cが搬送ローラ対27に挟持されたことを待機検出センサ31が検出すると、搬送モータ29による搬送ローラ対27の駆動が停止され、その硬貨Cは搬送ローラ対27に挟持された状態で規定の待機位置に待機させられる。
【0039】
このとき、選別ユニット11の搬送ディスク13は、ディスク回転モータ15によって、所定の駆動時間(硬貨収容部16の1ピッチ分の回転時間)の駆動後に、所定の停止時間停止させる一定周期で回転、停止を繰返す間欠駆動で駆動されている。
【0040】
この間欠駆動は、位置検出センサ22が搬送ディスク13と一体に回転する位置決め部材21のスリット21aを検出したとき、つまり位置検知センサ22がONからOFFに変化したときをトリガとして硬貨収容部16の入口を搬入口18と対向する硬貨搬入位置で一旦停止させ、所定の停止時間の経過後に再び所定の駆動時間駆動することにより行われ、投入された全ての硬貨Cの選別動作の終了までの間継続される。
【0041】
搬送ディスク13の硬貨収容部16が硬貨搬入位置に停止すると、搬送モータ29が回転し、搬送ローラ対27に挟持され待機位置に停止していた硬貨Cが、搬入口18から硬貨収容部16へ搬入され、搬入検出センサ24が搬入された硬貨Cを検出(ON)する。
【0042】
そして、所定の停止時間の経過後に、搬送ディスク13が再び回転を開始し、硬貨搬入位置で硬貨収容部16に収容された硬貨Cは、図4(a)に示すように、搬送ディスク13の回転に伴って、その回転による遠心力により選別ハウジング12の側壁12bの内周面に当接し、搬送回転方向後方側の隔置部17に押されながら側壁12bの内周面に沿って選別ハウジング12の底板12a上を識別部33の方向へ搬送されて行く。なお、図4に示す硬貨Cは最小直径の硬貨Cである。
【0043】
硬貨収容部16に収容された硬貨Cが、整位レバー41まで搬送されてくると、その硬貨Cは、搬送ディスク13の中心側に向けて回動する方向に付勢され選別ハウジング12の側壁12bの切欠部43から選別ハウジング12内に突出している整位レバー41に当接し、図4(b)に示すように、図示しないストッパに付勢力により係止され停止している整位レバー41によって、硬貨収容部16の底面16aの方向に幅寄せされ、更に搬送されると、図4(c)に示すように、硬貨Cの外径が識別センサ34aに達する前に底面16aに当接する。
【0044】
そして、底面16aへの当接後に硬貨Cは、図4(d)に示すように、整位レバー41の付勢力に抗して整位レバー41を回動支点42を中心に半径方向外側に押し広げながら、整位レバー41と硬貨収容部16の底面16aとの間に挟み込まれた状態で搬送され、識別センサ34aを通過する。本実施例では、硬貨Cが整位レバー41と底面16aとの間に挟み込まれた状態で搬送は、少なくとも硬貨Cの中心と搬送ディスク13の中心とを結んだ線が、識別センサ34aを通過するまで継続される。
【0045】
硬貨Cの外形面が整位レバー41の先端41aを通過すると、その硬貨Cは搬送ディスク13の回転による遠心力によって選別ハウジング12の側壁12bの内周面に再び当接し、周期的な間欠駆動に伴って識別センサ34b、34cを通過する。
上記した、側壁12bの内周面に沿って搬送された硬貨Cが、整位レバー41によって一旦硬貨収容部16の底面16aに押圧され、再び側壁12bの内周面に沿って搬送されていく硬貨Cの移動軌跡を、本実施例では硬貨Cの搬送軌跡という。
【0046】
そして、硬貨収容部16に収容された硬貨Cが識別部33の各識別センサ34を間欠搬送により通過したときに、当該硬貨の特性値が間欠駆動による搬送1回につき一つの識別センサ34により取得され、識別センサ34aにより取得した当該硬貨の大きさと、他の2つの識別センサ34b、34cの取得値を用いて当該硬貨の真偽や金種等が識別部33により識別され、その識別結果が、リジェクト硬貨の場合は、当該硬貨を収容した硬貨収容部16がリジェクト口36上に停止したときに、リジェクト口開閉シャッタ36aが開作動し、リジェクト硬貨が自重によりリジェクト口36へ落下し、落下後にリジェクト口開閉シャッタ36aが閉作動してリジェクト口36が閉鎖される。
【0047】
また、識別部33による識別結果が、真性硬貨と識別された正常硬貨である場合は、金種に関わらずリジェクト口開閉シャッタ36a上を通過させて正常硬貨排出口38へ搬送され、正常硬貨を収容した硬貨収容部16が正常硬貨排出口38上に停止したときに、硬貨Cが自重により正常硬貨排出口38へ落下し排出される。
【0048】
このようにして、繰出ユニット1から繰出された硬貨Cが、硬貨収容部16のピッチ毎に1枚ずつ選別される選別動作が行われ、投入された全ての硬貨Cの選別が終了したときに、繰出モータ5による繰出回転円盤3の駆動、搬送モータ29による搬送ローラ対27の駆動およびディスク回転モータ15による搬送ディスク13の駆動が停止される。
【0049】
上記のように、本実施例では、搬送ディスク13で硬貨Cを間欠的に搬送しながら識別部33の識別センサ34aによって硬貨Cの特性値を取得する際に、整位レバー41によって硬貨Cを硬貨収容部16の底面16aに幅寄せして挟み込むので、識別センサ34aの通過時に硬貨Cの挙動を安定させることができ、識別センサ34aによる特性値の取得精度を向上させることができる。
【0050】
なお、本実施例では、整位レバー41は識別センサ34aの近傍にのみ設けるとして説明したが、他の2つの識別センサ34b、34cについても同様に、それぞれの識別センサ34に対応する位置に同様の整位レバー41を設けるようにしてもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施例では、硬貨収容部に収容された硬貨Cを間欠駆動による搬送中に識別センサを通過させて硬貨Cの識別を行う硬貨処理装置に、識別センサを通過する硬貨を硬貨収容部の底面に整位させる整位レバーを設けたことことによって、識別センサを通過する硬貨Cの挙動を安定させることができ、識別センサによる特性値の取得精度を向上させて、選別する硬貨Cの誤判定を防止することができる。
【実施例2】
【0052】
以下に、図5を用いて本実施例の硬貨処理装置について説明する。なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の硬貨処理装置の選別ユニット11の搬送ディスク13には、図5に示すように、各硬貨収容部16の底部に押圧レバー51が設けられている。
【0053】
この押圧レバー51は、搬送ディスク13の硬貨収容部16の底部の、搬送回転方向(図5において時計方向)の前方側の隔置部17の付根部に設けられた回動支点52を中心に回動可能に構成された合成樹脂製の部材であって、その先端51aまでの長さは、硬貨収容部16の底面16aと同等の長さに、その幅は取扱う硬貨の中で最大厚さの硬貨Cの厚さ以上に形成されて、搬送ディスク13の、選別ハウジング12の底板12a側に配置されており、押圧レバー51の先端51aは、図示しないトーションスプリング等のバネ部材によって搬送ディスク13の半径方向外側に向けて回動する方向に付勢されている。
【0054】
また、押圧レバー51は、図示しないストッパによって、その先端51aが搬入口18から搬入される、最小直径の硬貨Cを選別ハウジング12の側壁12bの内周面に押圧することが可能な位置であって(図5に示す硬貨Cd参照)、搬送ディスク13が硬貨搬入位置に停止したときに、磁気センサである搬入検出センサ24による硬貨Cの検出を妨げず、かつ最大直径の硬貨Cの搬入を可能にする位置に係止されており、硬貨収容部16に収容された状態で識別センサ34a〜34cを通過する各種の硬貨Cを、側壁12bの内周面に押圧して整位させる機能を有している。
【0055】
なお、硬貨収容部16の底面16aは、最大直径の硬貨Cが選別ハウジング12の側壁12bの内周面に案内されながら搬送されるときに、最大直径の硬貨Cの外径との間に隙間が形成される位置に設けられている(図5に示す硬貨Ce参照)。
また、搬送ディスク13の外周面の半径R1は、上記実施例と同様の半径方向隙間ΔRを選別ハウジング12の側壁12bの内周面との間に形成するよう設定されている。
【0056】
本実施例の各識別センサ34は、上記実施例1と同様に、合成樹脂製の選別ハウジング12に内配置された合成樹脂製の搬送ディスク13を硬貨搬入位置に停止させたときに、その隔置部17に対向する位置に配置され、間欠駆動により搬送されるときに、各硬貨収容部16の底部に設けられた合成樹脂製の押圧レバー51によって選別ハウジング12の側壁12bの内周面に整位されながら通過する硬貨Cの特性値を取得するように構成されているので、その出力から搬送ディスク13や押圧レバー51等による磁気的影響を除外することができ、搬送ディスク13により搬送される硬貨Cの特性値を確実に取得して正確な識別を行うことができる。
【0057】
以下に、本実施例の硬貨処理装置による硬貨Cの選別動作について説明する。
本実施例における、投入部7に硬貨Cが一括して投入されたときから、搬送ディスク13の硬貨収容部16が硬貨搬入位置に停止するまでの動作は、上記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0058】
搬送ディスク13の硬貨収容部16が硬貨搬入位置に停止すると、搬送モータ29が回転し、搬送ローラ対27に挟持され待機位置に停止していた硬貨Cが、搬入口18から硬貨収容部16へ搬入され、搬入検出センサ24が搬入された硬貨Cを検出(ON)する。
このとき、搬入された硬貨Cは、押圧レバー51に衝突してその衝撃力がバネ部材の変形によって吸収され、最小直径の硬貨Cは押圧レバー51の付勢力によって押し戻され、係止位置で停止した押圧レバー51と搬送回転方向前方側の隔置部17との間で保持される。
【0059】
また、最大直径の硬貨Cは押圧レバー51の付勢力によって押し戻され、係止位置で停止した押圧レバー51と搬送回転方向前方側の隔置部17と搬入口18の搬送回転方向前方側の側面の角部との間で保持される。この場合に、最大直径の硬貨Cの外径の一部が搬入口18からはみ出すが、そのはみ出し部が搬送ローラ対27の挟持部に達しないように搬送ローラ対27の位置が設定されている。
【0060】
そして、所定の停止時間の経過後に、搬送ディスク13が再び回転を開始し、硬貨搬入位置で硬貨収容部16に収容された硬貨Cは、搬送ディスク13の回転に伴って、搬送回転方向後方側の隔置部17に押されながら側壁12bの内周面に沿って選別ハウジング12の底板12a上を識別部33の方向へ搬送されて行く(図5に示す硬貨Ce参照)。
【0061】
このとき、最小直径の硬貨Cは、搬送ディスク13の回転による遠心力により選別ハウジング12の側壁12bの内周面に当接し、選別ハウジング12の底板12aとの摩擦力および側壁12bとの摩擦力により押圧レバー51の付勢力に抗して押圧レバー51を回転支点52を中心に硬貨収容部16の底面16aの方向に回動させ、搬送回転方向後方側の隔置部17に当接して、それに押されながら側壁12bの内周面に沿って搬送されて行く(図5に示す硬貨Cd参照)。
上記した、押圧レバー51によって側壁12bに押圧されながら、その内周面に沿って搬送されていく硬貨Cの移動軌跡を、本実施例では硬貨Cの搬送軌跡という。
【0062】
そして、硬貨収容部16に収容され、押圧レバー51によって側壁12bに押圧された硬貨Cが識別部33の各識別センサ34を間欠搬送により通過したときに、当該硬貨の特性値が間欠駆動による搬送1回につき一つの識別センサ34により取得され、識別センサ34aにより取得した当該硬貨の大きさと、他の2つの識別センサ34b、34cの取得値を用いて当該硬貨の真偽や金種等が識別部33より識別される。
その後の識別結果に基づく硬貨Cの搬送動作は、上記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0063】
上記のように、本実施例では、搬送ディスク13で硬貨Cを間欠的に搬送しながら識別部33の識別センサ34aによって硬貨Cの特性値を取得する際に、各硬貨収容部16に設けられた押圧レバー51によって硬貨Cを選別ハウジング12の側壁12bの内周面に幅寄せするので、各識別センサ34の通過時に硬貨Cの挙動を安定させることができ、識別センサ34による特性値の取得精度を向上させることができる。
【0064】
以上説明したように、本実施例では、硬貨収容部に収容された硬貨Cを間欠駆動による搬送中に識別センサを通過させて硬貨Cの識別を行う硬貨処理装置の搬送ディスクの各硬貨収容部の底部に、収容した硬貨を選別ハウジングの側壁の内周面に押圧する押圧レバーを設けたことことによって、識別センサを通過する硬貨Cの挙動を安定させることができ、識別センサによる特性値の取得精度を向上させて、選別する硬貨Cの誤判定を防止することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 繰出ユニット
2 繰出ハウジング
2a、12a 底板
2b、12b 側壁
3 繰出回転円盤
4、14 回転軸
5 繰出モータ
5a、15a、29a ギヤ列
7 投入部
7a 落下口
8 分離ゲート
9 幅寄せガイド
11 選別ユニット
12 選別ハウジング
13 搬送ディスク
15 ディスク回転モータ
16 硬貨収容部
16a 底面
17 隔置部
18 搬入口
19 ガイド部
21 位置決め部材
21a スリット
22 位置検出センサ
24 搬入検出センサ
26 硬貨通路
27 搬送ローラ対
27a 第1の搬送ローラ
27b 第2の搬送ローラ
29 搬送モータ
31 待機検出センサ
33 識別部
34a、34b、34c 識別センサ
36 リジェクト口
36a リジェクト口開閉シャッタ
38 正常硬貨排出口
41 整位レバー
41a、51a 先端
42、52 回動支点
43 切欠部
51 押圧レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に配置された選別ハウジング内に配置され、外周縁部に隔置部で仕切られた複数の硬貨収容部が形成された搬送ディスクと、前記硬貨収容部に搬入される硬貨を通過させる搬入口と、前記搬送ディスクを間欠駆動するディスク駆動源と、前記硬貨収容部に収容された硬貨の搬送軌跡上に配置され、前記間欠駆動による搬送中に硬貨を識別する識別センサとを有する選別ユニットを備えた硬貨処理装置において、
前記識別センサを通過する硬貨を、前記硬貨収容部の底面に整位させる整位レバーを設けたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の硬貨処理装置において、
前記識別センサを、前記搬送ディスクの硬貨収容部を前記搬入口に対向させた硬貨搬入位置に停止させた搬送ディスクの前記隔置部に対向させて配置したことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の硬貨処理装置において、
前記整位レバーの回動支点を、前記選別ハウジングの側壁の半径方向外側に配置すると共に、前記整位レバーの先端を、前記識別センサの前記搬送ディスクの搬送回転方向の前方側に延在させ、
前記整位レバーの先端を、前記搬送ディスクの中心側に向けて回動させる方向に付勢したことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の硬貨処理装置において、
前記識別センサを、複数設けたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の硬貨処理装置において、
前記整位レバーを、各識別センサに対応する位置に設けたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項6】
水平に配置された選別ハウジング内に配置され、外周縁部に隔置部で仕切られた複数の硬貨収容部が形成された搬送ディスクと、前記硬貨収容部に搬入される硬貨を通過させる搬入口と、前記搬送ディスクを間欠駆動するディスク駆動源と、前記硬貨収容部に収容された硬貨の搬送軌跡上に配置され、前記間欠駆動による搬送中に硬貨を識別する識別センサとを有する選別ユニットを備えた硬貨処理装置において、
前記各硬貨収容部の底部に、収容した硬貨を前記選別ハウジングの側壁の内周面に押圧する押圧レバーを設けたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の硬貨処理装置において、
前記識別センサを、前記搬送ディスクの硬貨収容部を前記搬入口に対向させた硬貨搬入位置に停止させた搬送ディスクの前記隔置部に対向させて配置したことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項8】
請求項6に記載の硬貨処理装置において、
前記押圧レバーを回動支点を中心に回動可能に構成し、
前記押圧レバーの先端を、前記搬送ディスクの半径方向の外側に向けて回動する方向に付勢したことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載の硬貨処理装置において、
前記識別センサを、複数設けたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項10】
請求項1または請求項6に記載の硬貨処理装置において、
水平に配置された繰出ハウジング内に配置された繰出回転円盤と、前記繰出回転円盤上に投入された硬貨を1枚毎に分離して繰出す分離ゲートとを有する繰出ユニットと、
前記繰出ユニットの分離ゲートと、前記選別ユニットの搬入口との間を連結する水平に配置された硬貨通路と、
前記硬貨通路の、前記搬入口の硬貨の搬入方向の上流側に配置され、前記搬入口から搬入する硬貨を挟持して待機位置に待機させる一対の搬送ローラ対とを設け、
前記搬送ディスクの硬貨収容部を前記搬入口に対向させた硬貨搬入位置に停止させたときに、前記搬送ローラ対を回転させて、前記待機位置に待機させた硬貨を前記硬貨収容部に搬入することを特徴とする硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−53636(P2012−53636A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195135(P2010−195135)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591089556)株式会社 沖情報システムズ (276)
【Fターム(参考)】