説明

硬貨判別装置

【課題】硬貨が金属単体により形成されているかどうかを検出して、硬貨を判別する硬貨判別装置を提供する。
【解決手段】硬貨100の搬送経路を介して、上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とが対向して配置されている。上導電性ローラ1には電源ユニット7が接続されており、下導電性ローラ2には判別ユニット8が接続されている。硬貨100が金属製であれば、電源ユニット7から供給される電圧により、判別ユニット8では、硬貨100の導電率の応じた電流量Imが測定される。一方、硬貨100が非金属製であったり、金属製の平板表面全体が非金属部で覆われていれば、電源ユニット7から電圧供給されても、判別ユニット8では、殆ど電流が測定されない。この違いにより、判別ユニット8は硬貨100の組成を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硬貨の判別、特に、金属製の硬貨に対する非金属部分の存在の判別や、金属と非金属とからなるハイブリッド型硬貨の判別に用いる硬貨判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨判別装置としては、特許文献1に示すように、硬貨表面および裏面に光を照射し、その反射光から、表面及び裏面のパターンを光学的に検出するものがある。
【特許文献1】特開平9−319916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、硬貨の表面および裏面に光を照射して光学的に硬貨の表裏面パターンを検出する場合、検出したパターンが、実際の硬貨に刻印されたパターンであるのか、単に平板金属の表面に貼り付けられた紙等の非金属の表面に描かれたパターンであるのかを判別することが非常に困難である。すなわち、硬貨が金属単体により形成されているのか、金属と非金属との組み合わせにより形成されているのかを判別することができない。
【0004】
したがって、この発明の目的は、硬貨が金属単体により形成されているかどうかを検出して、硬貨を判別する硬貨判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の硬貨判別装置は、硬貨の表面および裏面にそれぞれ接触して、硬貨に対して所定方向の搬送力を与える導電性を有する第1、第2搬送手段と、第1搬送手段に電圧を印加する電圧印加手段と、第2搬送手段に導通し、該第2搬送手段に流れる電流量を測定して、電流測定結果に基づいて硬貨の組成を検出する硬貨状態検出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
この構成では、硬貨が全て金属製であれば、第1、第2搬送手段に狭持された状態で電圧印加手段から第1搬送手段に電圧が印加されると、第1搬送手段、硬貨、第2搬送手段により導電路が形成されて、硬貨状態検出手段で所定の電流値が観測される。また、硬貨が全て非導電性材料の非金属であれば、第1、第2搬送手段に狭持された状態で電圧印加手段から第1搬送手段に電圧が印加されても、硬貨が導電路を遮断して、硬貨状態検出手段では電流が殆ど観測されないか、非常に低い電流値が観測される。また、金属製の硬貨の表裏面や内部が層状で非金属である場合も、硬貨全体が非金属である場合と同様に非常に低い電流値が観測される。また、金属製の硬貨の表裏面を貫通して一部が非金属である場合には、金属部では所定の電流値が観測され、非金属部では非常に低い電流値が観測される。このように、硬貨における金属、非金属の組成により観測される電流値が変化する。
【0007】
また、この発明の硬貨判別装置は、第1、第2搬送手段による硬貨搬送状態を検出する搬送状態検出手段を備え、搬送状態検出手段の検出結果に基づき、硬貨が第1、第2搬送手段に狭持されている期間でのみ、電圧印加手段が電圧印加し、硬貨状態検出手段が電流を測定することを特徴としている。
【0008】
この構成では、第1、第2搬送手段が硬貨を狭持している期間でのみ電圧印加されるので、時系列からなる電流測定結果が得られる。これにより、硬貨における搬送方向の組成が検出される。
【0009】
また、この発明の硬貨判別装置は、硬貨の表面形状を観測する表面形状観測手段を備え、硬貨状態検出手段が、硬貨の組成検出結果と表面形状観測結果とに基づいて硬貨を判別することを特徴としている。
【0010】
この構成では、硬貨の表面形状が観測されるとともに、硬貨の組成が検出されることで、硬貨が二つの観点から総合的に判別される。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、金属製の硬貨の表面に非金属が貼り付けられていたり、表面の汚損が発生していたりすることを電気的に判定することができる。これにより、例えば、金属製の硬貨の表面に非導電性の粘着テープ等が貼り付けられている状態を検出することができ、汚損硬貨の回収を確実に行うことができる。
【0012】
また、この発明によれば、このような組成の判別と表面形状の観測とを行うことにより、硬貨の真偽を判別することができる。例えば、平板金属の表面にパターンが描かれた紙等を貼り付けた偽造硬貨を、真の硬貨と判別することができる。
【0013】
また、この発明によれば、層(厚み)方向の組成のみならず、搬送方向に相当する幅方向の組成をも検出することができるので、非金属と金属とを組み合わせて形成したハイブリッド型の硬貨であっても正確に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本実施形態の硬貨判別装置の概略構成を示す部分斜視図である。
図2は、図1に示す硬貨判別装置の動作を説明するための概念図である。
図3〜図8は硬貨の組成毎に測定電流値の時系列変化を示した図である。なお、図3〜図8において(A)は硬貨100の組成を表す断面図、(B)は測定電流値を示す。また、図3〜図8において、t1は検査開始タイミング、t2は検査終了タイミングを示し、Isは閾値電流を示す。
【0015】
硬貨判別装置は、上導電性ローラ1、下導電性ローラ2、導電性ベアリング3,4、可動アーム5、固定アーム6、電源ユニット7、判別ユニット8、センサ9を備える。
上導電性ローラ1は、例えば、導電性ゴムのような所定の弾性係数を有する材料により形成されており、導電性シャフトに固定されている。上導電性ローラ1が設置された導電性シャフトは、導電性ベアリング3により可動アーム5に回転可能に取り付けられている。可動アーム5は導電性材料からなる。
【0016】
下導電性ローラ2も、上導電性ローラ1と同様に所定の弾性係数を有する材料により形成されており、導電性シャフトに固定されている。下導電性ローラ2が設置された導電性シャフトは、導電性ベアリング4により固定アーム6に回転可能に取り付けられている。固定アーム6も導電性材料からなる。ここで、下導電性ローラ2が設置された導電性シャフトには、図示していないがギアやプーリ等を介して駆動力が与えられてもよく、これにより、硬貨100を略一定速度で搬送することができる。
【0017】
上導電性ローラ1と、下導電性ローラ2とは、硬貨100の搬送経路を挟んで対向する位置に配置されており、硬貨100が搬送されていない状態では、互いの円周面同士が当接している。ここで、硬貨100がローラ間に搬入されると、上導電性ローラ1が硬貨100の厚みに応じた高さで上昇して、硬貨100が狭持される。そして、硬貨100がローラ間から搬出されると、上導電性ローラ1が下降して、下導電性ローラ2に当接する。
【0018】
可動アーム5は、上導電性ローラ1が設置された側の端部に可動検出用突起部51が形成されている。
フォトカプラからなるセンサ9は、発光部と受光部とが可動検出用突起部51を挟んで配置されるように設置されている。
【0019】
電源ユニット7は可動アーム5に接続されており、センサ9に常時電力供給するとともに、センサ9がオン状態になると、可動アーム5に電圧を与える。
【0020】
判別ユニット8は、センサ9がオン状態の時に電流値を測定し、予め設定した閾値電流Isよりも大きいが小さいかを判定して、硬貨100の組成を検出する。ここで、閾値電流Isは、予め上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とが金属を狭持した場合に測定される電流値Imや、非金属を狭持した場合に測定される電流値Inにより設定される。例えば、金属狭持時の電流値Imと非金属狭持時の電流値Inとの中間値であったり、非金属狭持時の電流値Inに所定電流値を加算した値であったりする。
【0021】
(1)硬貨100全体が金属製(真硬貨)の場合
図3(A)は全体が金属製の硬貨100の側面断面図を示し、図3(B)はその電流値測定結果を示す。
【0022】
硬貨100が全体に金属部101であれば、上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とが、硬貨100により所定導電率で導通する。これにより、検査開始タイミングt1から検査終了タイミングt2までに亘り、常時、金属部101の導電率に応じた電流値Imが測定される。この電流値Imは閾値電流Isよりも高いので、判別ユニット8は、この結果に基づいて、硬貨100が全体に金属製であることを検出する。さらに、判別ユニット8は、CCDカメラ等により得られた硬貨100の表裏面パターンを検証する。そして、これら組成、パターン検出の結果が、予め記憶された真の硬貨組成およびパターンに適合すれば、搬送した硬貨100が真であると判定する。
【0023】
(2)硬貨100が全体に非金属製の場合
図4(A)は全体が非金属製の硬貨100の側面断面図を示し、図4(B)はその電流値測定結果を示す。
【0024】
硬貨100が全体に非金属部102である場合、上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とは、硬貨100により絶縁される。これにより、検査開始タイミングt1から検査終了タイミングt2までに亘り、常時、非常に低い電流値Inが測定されるか、全く電流値が測定されない。電流値Inは閾値電流Isよりも低いので、判別ユニット8は、この結果に基づいて、少なくとも硬貨100全体が金属製ではないことを検出する。
【0025】
(3)硬貨100が平板金属部101の表面全体に非金属部102を貼り付けた構造である場合
図5(A)は平板金属部101の表面全体に非金属部102を貼り付けた構造の硬貨100の側面断面図を示し、図5(B)はその電流値測定結果を示す。
【0026】
硬貨100の表面が非金属部102で全体に覆われている場合、上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とは、硬貨100の非金属部102で絶縁される。これにより、検査開始タイミングt1から検査終了タイミングt2までに亘り、常時、非常に低い電流値Inが測定されるか、全く電流値が測定されない。電流値Inは閾値電流Isよりも低いので、判別ユニット8は、この結果に基づいて、少なくとも硬貨100全体が金属製ではないことを検出する。
【0027】
(4)硬貨100が金属部101と非金属部102との層状体である場合
図6(A)は金属部101と非金属部102との層状体からなる硬貨100の側面断面図を示し、図6(B)はその電流値測定結果を示す。
【0028】
硬貨100が非金属部102からなる層を備える場合、上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とは、硬貨100の非金属部102からなる層で絶縁される。これにより、検査開始タイミングt1から検査終了タイミングt2までに亘り、常時、非常に低い電流値Inが測定されるか、全く電流値が測定されない。電流値Inは閾値電流Isよりも低いので、判別ユニット8は、この結果に基づいて、硬貨100が全体に金属製ではないことを検出する。
【0029】
(5)硬貨100が平板金属部101の表面に部分的に非金属部102を貼り付けた構造である場合
図7(A)は平板金属部101の表面に部分的に非金属部102を貼り付けた構造の硬貨100の側面断面図を示し、図7(B)はその電流値測定結果を示す。
【0030】
図7(A)に示す硬貨100は、平板状の金属部101と、その表面に部分的に貼り付けられた非金属部102とにより構成される。これら非金属部102は、金属部101の搬送方向の両端に貼り付けられている。
【0031】
硬貨100の表面が非金属部102で部分的に覆われている場合、非金属部102で覆われている範囲では、上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とは硬貨100の非金属部102で絶縁される。一方、非金属部102で覆われていない範囲では、上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とは硬貨100の金属部101により導通される。これにより、図7(A)に示すように、硬貨100の搬送方向の両端の表面に非金属部102が貼り付けられた場合では、検査開始タイミングt1から非金属部102の搬送方向の幅に相当する時間に亘り、非常に低い電流値Inが測定されるか、全く電流値が測定されない。その後、両端の非金属部102に挟まれる金属部101が露出する幅に相当する時間に亘り、金属部101の導電率に相当する電流値Imが測定される。そして、再度、非金属部102の幅に相当する時間に亘り検査終了タイミングt2まで、非常に低い電流値Inが測定されるか、全く電流値が測定されない。判別ユニット8は、この結果に基づいて、少なくとも硬貨100全体が金属製ではなく、部分的に金属製であることを検出する。
【0032】
ここで、現在の日本の場合、硬貨は全て金属製であるので、(2)〜(5)の場合では、判別ユニット8は、搬送した硬貨100が偽造品か汚損品であると判定する。硬貨判別装置は、この結果にしたがって回収処理および警告処理を行う。
【0033】
(6)硬貨100が、それぞれに硬貨100の厚み分存在する金属部101と非金属部102とを組み合わせたハイブリッド型硬貨である場合
この(6)場合を示す以下の説明では、現在、日本では流通されていないハイブリッド型硬貨が存在するものと仮定する。
【0034】
図8(A)は金属部101と非金属部102とからなるハイブリッド型の硬貨100の側面断面図を示し、図8(B)はその電流値測定結果を示す。
【0035】
図8(A)に示す硬貨100は、中心に所定大きさの非金属部102が存在し、その周囲に金属部101が存在するものである。
【0036】
硬貨100がハイブリッド型である場合、非金属部102では上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とが硬貨100の非金属部102で絶縁され、金属部101では、上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とが硬貨100の金属部101により導通される。これにより、図8(A)に示すように、硬貨100の搬送方向の両端の表面に金属部101が存在する場合では、検査開始タイミングt1から金属部101の搬送方向の幅に相当する時間に亘り、金属部101の導電率に対応する電流値Imが測定される。その後、中央の非金属部102の幅に相当する時間に亘り、非常に低い電流値Inが測定されるか、全く電流値が測定されない。そして、再度、金属部101の幅に相当する時間に亘り検査終了タイミングt2まで、金属部101の導電率に相当する電流値Imが測定される。判別ユニット8は、この結果に基づいて、予め記憶しておいたハイブリッド型硬貨の電流値測定パターンと比較し、硬貨100を判別する。
【0037】
以上のように、本実施形態の構成を用いることで、硬貨の組成を検出し、さらには、硬貨の真偽や汚損を検出する硬貨判別装置を構成することができる。
【0038】
なお、前述の説明では、下導電性ローラに直接判別ユニットを接続したが、図9に示すような構成であってもよい。
【0039】
図9は他の構成からなる硬貨判別装置の構成図である。
図9に示す硬貨判別装置は、上導電性ローラ1に対向する下導電性ローラ2とともに、複数の下導電性ローラ20やプーリ(図示せず)で導電性ベルト21を保持し、下搬送経路を形成したものである。そして、判別ユニット8は、下導電性ローラ2に対して導電性ベルト21で導通する下導電性ローラ20に接続されている。
【0040】
このような構成であっても、硬貨100の金属部が上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とに狭持されれば、判別ユニット8で硬貨100の金属部の導電率に応じた電流量を測定することができる。一方で、硬貨100の非金属部が上導電性ローラ1と下導電性ローラ2とに狭持されれば、判別ユニット8では殆ど電流量を測定することができない。したがって、前述の構成のように硬貨の組成を検出することができる。
【0041】
また、前述の説明では、硬貨の組成検出に用いる上導電性ローラと下導電性ローラとは一組であったが、軸方向の複数のローラ対を備えてもよい。これにより、軸方向の組成検出分解能をあげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態の硬貨判別装置の概略構成を示す部分斜視図
【図2】図1に示す硬貨判別装置の動作を説明するための概念図
【図3】全体が金属製の硬貨100の側面断面図、および、その電流値測定結果を示す図
【図4】全体が非金属製の硬貨100の側面断面図、および、その電流値測定結果を示す図
【図5】平板金属部101の表面全体に非金属部102を貼り付けた構造の硬貨100の側面断面図、および、その電流値測定結果を示す図
【図6】金属部101と非金属部102との層状体からなる硬貨100の側面断面図、および、その電流値測定結果を示す図
【図7】平板金属部101の表面に部分的に非金属部102を貼り付けた構造の硬貨100の側面断面図、および、その電流値測定結果を示す図
【図8】金属部101と非金属部102とからなるハイブリッド型の硬貨100の側面断面図、および、その電流値測定結果を示す図
【図9】本発明の実施形態のおける他の構成からなる硬貨判別装置の構成図
【符号の説明】
【0043】
1−上導電性ローラ
2,20−下導電性ローラ
21−導電性ベルト
3,4−導電性ベアリング
5−可動アーム
51−可動検出用突起部
6−固定アーム
7−電源ユニット
8−判別ユニット
9−センサ
100−硬貨
101−金属部
102−非金属部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨の表面および裏面にそれぞれ接触して、前記硬貨に対して所定方向の搬送力を与える導電性を有する第1、第2搬送手段と、
第1搬送手段に電圧を印加する電圧印加手段と、
第2搬送手段に導通し、該第2搬送手段に流れる電流量を測定して、電流測定結果に基づいて硬貨の組成を検出する硬貨状態検出手段と、
を備えたことを特徴とする硬貨判別装置。
【請求項2】
前記第1、第2搬送手段による硬貨搬送状態を検出する搬送状態検出手段を備え、
前記搬送状態検出手段の検出結果に基づき、前記硬貨が前記第1、第2搬送手段に狭持されている期間でのみ、前記電圧印加手段は電圧印加し、前記硬貨状態検出手段は電流量を測定する請求項1に記載の硬貨判別装置。
【請求項3】
硬貨の表面形状を観測する表面形状観測手段を備え、
前記硬貨状態検出手段は、硬貨の組成検出結果と表面形状観測結果とに基づいて硬貨を判別する請求項1または請求項2に記載の硬貨判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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