説明

硬貨排出機

【課題】釣銭の受取作業を容易化できるようにする。
【解決手段】実施形態の硬貨排出機は、第1の排出口と、第2の排出口と、切替手段と、を有する。第1の排出口は、硬貨収納部から排出された硬貨を貯留部に排出する。第2の排出口は、前記第1の排出口とは別に設けられ、前記硬貨収納部から排出された硬貨を本体外部に排出する。切替手段は、操作者の動作に応じて、前記硬貨の排出経路を、前記第2の排出口に連通する経路に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、硬貨排出機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣銭としての硬貨を、自動的に受け皿に排出する硬貨排出機として、自動販売機や、POS(Point Of Sales System)端末に対応付けて設置される硬貨自動釣銭機などが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の硬貨排出機にあっては、受け皿に硬貨が排出されるため、受け皿に貯まった硬貨を取出す作業が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施形態の硬貨排出機は、第1の排出口と、第2の排出口と、切替手段と、を有する。第1の排出口は、硬貨収納部から排出された硬貨を貯留部に排出する。第2の排出口は、前記第1の排出口とは別に設けられ、前記硬貨収納部から排出された硬貨を本体外部に排出する。切替手段は、操作者の動作に応じて、前記硬貨の排出経路を、前記第2の排出口に連通する経路に切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る硬貨自動釣銭機の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す本体ハウジングの内部の構造を示す縦断側面図である。
【図3】図3は、経路シャッタが開いている状態における硬貨の排出の様子を示す縦断側面図である。
【図4】図4は、経路シャッタが閉じている状態における硬貨の排出の様子を示す縦断側面図である。
【図5】図5は、硬貨自動釣銭機の電気的なハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【図6】図6は、第1の実施形態の硬貨自動釣銭機における機能的構成を説明するためのブロック図である。
【図7】図7は、第1の実施形態の硬貨自動釣銭機で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る硬貨自動釣銭機の外観を示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示す本体ハウジングの内部の構造を示す縦断側面図である。
【図10】図10は、経路切替部の押圧面に対して外部から押圧力が加えられていない状態における硬貨の排出の様子を示す縦断側面図である。
【図11】図11は、経路切替部の押圧面に対して外部から押圧力が加えられ、経路切替部が本体ハウジングの内部奥側に押されている状態における硬貨の排出の様子を示す縦断側面図である。
【図12】図12は、第2の実施形態の硬貨自動釣銭機における機能的構成を説明するためのブロック図である。
【図13】図13は、第2の実施形態の硬貨自動釣銭機で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本実施形態の硬貨排出機は、概略的には、釣銭としての硬貨を、受け皿以外に、操作者の手のひらに直に排出することを可能としたものである。
【0007】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0008】
なお、以下では、本実施形態の硬貨排出機として、スーパーマーケットなどの商品を販売する店舗の決済カウンタに設置され、店員の操作に応じて商品の登録および決済処理を実行するPOS端末に、紙幣自動釣銭機または紙幣ドロワとともに対応付けて設置される硬貨自動釣銭機の場合について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る硬貨自動釣銭機1の外観を示す斜視図である。
【0010】
図1に示すように、第1の実施形態の硬貨自動釣銭機1は、本体ハウジング10を有しており、その本体ハウジング10の上面に位置して操作者側となる端部近傍には、貨幣である硬貨(10円、100円など)Cを一括して投入することが可能な硬貨投入口11と、ユーザインタフェースである操作表示部25(図5参照)とが設けられている。
【0011】
また、本体ハウジング10の正面下方には、釣銭として払出される硬貨Cを受け、貯留空間に貯留する貯留部としての受け皿12が設けられている。
【0012】
図2は、本体ハウジング10の内部の構造を示す縦断側面図である。
【0013】
図2に示すように、本体ハウジング10の操作表示部25が設けられた矩形状の突出部分10Aの下面10aには、釣銭としての硬貨Cを受け皿12に排出させるための第1の排出口13と、操作者としての店員の手のひらHP(図4参照)に排出させるための第2の排出口14と、検知部64が検知対象物を検知するための検知窓64aとが形成されている。
【0014】
そして、本体ハウジング10の内部には、硬貨Cを入金する硬貨入金部2と、硬貨入金部2で入金された硬貨Cを金種別に選別する硬貨選別部3と、硬貨選別部3で選別された硬貨Cを金種別に収納する硬貨収納部4と、硬貨収納部4に収納されている硬貨Cを排出する硬貨排出部5と、硬貨排出部5で排出された硬貨Cの排出先(第1の排出口13または第2の排出口14)を切替える排出経路切替部6とが設けられている。
【0015】
ここで、硬貨入金部2、硬貨選別部3、硬貨収納部4および硬貨排出部5は、周知技術であり、例えば、特開2005−258531号公報に示される硬貨入出金装置の硬貨入金部(30)、硬貨選別部(9)、硬貨収納部(12)および硬貨排出部(硬貨排出ベルト(13)、駆動ローラ(14)、従動ローラ(15)、リバースローラ(16)、硬貨待機部(18)、硬貨シャッタ(19)、払出ソレノイド(20)および払出センサ(21)を含む)と同様の構成により実現されるので、ここでの説明は省略する。
【0016】
排出経路切替部6は、第1の実施形態に係る硬貨自動釣銭機1の特有の構成であり、第1の排出経路部61、第2の排出経路部62、経路切替部63および検知部64を主体に構成されている。
【0017】
第1の排出経路部61は、硬貨排出部5の構成要素である硬貨排出ベルト51の搬送方向Aの下流側の終端(以下、単に「第1の終端部」という。)51aから落下した硬貨Cを、第1の排出口13に案内する案内通路611を有している。
【0018】
案内通路611は、本体ハウジング10内で固定され、一端の開口が第1の終端部51aの付近に配置され、他端の開口が第1の排出口13に連通されている。
【0019】
第2の排出経路部62は、第1の終端部51aから落下した硬貨Cを、第2の排出口14に案内する案内ベルト部621および案内通路622を有している。
【0020】
案内ベルト部621は、本体ハウジング10内で支持されており、駆動ローラ621aと、従動ローラ621bと、それらに掛け渡された案内ベルト621cとを主体に構成されている。
【0021】
従動ローラ621bは、第1の終端部51aと、所定スペース、即ち、後述の経路切替部63の経路シャッタ631が開閉可能なスペースを隔てて配置されており、駆動ローラ621aは、従動ローラ621bと所定距離(即ち、案内ベルト621cの片道分の長さ)を隔てて配置されている。
【0022】
案内通路622は、本体ハウジング10内で固定され、一端の開口が案内ベルト621cの案内方向Bの下流側の終端(以下、単に「第2の終端部」という。)621c−1の付近に配置され、他端の開口が第2の排出口14に連通されている。
【0023】
経路切替部63は、第1の終端部51aから落下する硬貨Cを、第1の排出経路部61または第2の排出経路部62のいずれかに切替えて落下させるための経路シャッタ631および切替ソレノイド632を有している。
【0024】
経路シャッタ631は、第1の終端部51aと、案内ベルト621cの従動ローラ621bが配置される一端側との間のスペース(落下口)を開閉するシャッタ部材である。
【0025】
切替ソレノイド632は、経路シャッタ631を開閉駆動するための駆動手段である。
【0026】
検知部64は、検知窓64aを介して、操作者としての店員の手のひら(検知対象物)HPの有無を検知する検知手段であり、例えば、赤外線センサなどで実現される。
【0027】
図3は、経路シャッタ631が開いている状態における硬貨Cの排出の様子を説明するための縦断側面図である。
【0028】
図3において、所定のタイミングにおいて検知部64で店員の手のひらHPが検知されていない場合、即ち、店員により釣銭の受け皿12への排出が選択された場合(デフォルト状態)には、経路シャッタ631が開状態にされる。
【0029】
これにより、第1の終端部51aから落下した硬貨Cは、第1の排出経路部61側に落下し、案内通路611により第1の排出口13まで案内されて、第1の排出口13から本体ハウジング10の外部に排出され、傾斜面15を経由して受け皿12に排出される。即ち、硬貨収納部4から釣銭として払い出された1または複数の硬貨Cは、受け皿12に貯留される。
【0030】
図4は、経路シャッタ631が閉じている状態における硬貨Cの排出の様子を説明するための縦断側面図である。
【0031】
図4において、所定のタイミングにおいて検知部64で店員の手のひらHPが検知された場合、即ち、店員により釣銭の手のひらHPへの排出が選択された場合には、経路シャッタ631が閉状態にされる。
【0032】
これにより、第1の終端部51aから落下した硬貨Cは、経路シャッタ631経由で、第2の排出経路部62側に落下し、案内ベルト部621および案内通路622により第2の排出口14まで案内されて、第2の排出口14から本体ハウジング10の外部に排出され、第2の排出口14の下方に用意された店員の手のひらHPに排出される。即ち、硬貨収納部4から釣銭として払い出された1または複数の硬貨Cは、店員の手のひらHPに貯留される。
【0033】
図5は、硬貨自動釣銭機1の電気的なハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0034】
図5に示すように、この硬貨自動釣銭機1は、本体ハウジング10内に、CPU(Central Processing Unit)20と、このCPU20とバスラインBLを介して接続されるROM(Read Only Memory)21、RAM(Random Access Memory)22、センサ部23、駆動部24、操作表示部25および通信I/F部26と、電力供給部27などを備えている。
【0035】
ここで、CPU20は、硬貨自動釣銭機1全体の制御、即ち、各種演算や各構成要素部に対する各種処理を制御する。また、ROM21は、硬貨自動釣銭機1における各種処理(後述の図7に示す処理など)を実行するための処理プログラムPなどの各種ファイルを記憶する。また、RAM22は、入力データや表示データなどの作業中のデータを一時的に記憶し、硬貨自動釣銭機1の起動時にROM21から読み出された処理プログラムPなどの各種ファイルを一時的に記憶する。
【0036】
センサ部23は、投入センサ(不図示)、計数センサ(不図示)および払出センサ(不図示)などの各種センサを有するとともに、前記した検知部(手のひら検知センサ)64(図2〜図4参照)を有している。
【0037】
投入センサ(不図示)、計数センサ(不図示)および払出センサ(不図示)は、例えば、硬貨Cの通過を光学的に検出し、検出信号をCPU20に出力する。
【0038】
駆動部24は、払出ソレノイド(不図示)や、切替ソレノイド632や、案内ベルト部621の駆動ローラ621aを回転させるモータ621dや、その他の機構を駆動するモータ(不図示)などを有し、各機構を駆動する。
【0039】
操作表示部25は、各種情報を表示する表示部と、各種情報を入力する操作部とを有し、ユーザインタフェースを構成する。
【0040】
通信I/F部26は、通信ケーブル(不図示)などを介して接続されるホスト装置としてのPOS端末30との間で各種データの送受信を行う通信インタフェースである。
【0041】
電力供給部27は、コンセントなどの商用電源にプラグなどの差込み器具が接続されることで、商用電源からの電力を各負荷部に必要な電力に変換して供給する。
【0042】
図6は、硬貨自動釣銭機1における機能的構成を説明するためのブロック図である。
【0043】
図6に示すように、硬貨自動釣銭機1は、機能的構成として、排出先選択報知部110、硬貨排出制御部120、検知信号入力部130および経路切替制御部140を含み、POS端末30からの釣銭排出要求信号に応じて、釣銭としての硬貨を排出する制御を行う釣銭排出制御部100を有している。
【0044】
ここで、排出先選択報知部110は、釣銭排出制御部100が釣銭排出要求信号を受信した場合に、操作表示部25を用いて、釣銭としての硬貨Cの排出先を、受け皿12にするか、手のひらHPにするかを選択する旨を報知する。
【0045】
より具体的には、例えば、排出先選択報知部110は、操作表示部25で、「釣銭を手のひらで受け取りたい場合には、手のひら用の排出口の下方に手のひらを配置して下さい。」などの文字情報を表示する。
【0046】
硬貨排出制御部120は、経路切替制御部140から排出開始信号を受信した場合に、硬貨排出部5を用いて、釣銭排出要求信号で特定される釣銭の金額分の硬貨Cを、硬貨収納部4から排出する処理を実行する。
【0047】
検知信号入力部130は、検知部64からの検知信号、即ち、検知対象物である店員の手のひらHPを検知したことを示す検知有り信号や、店員の手のひらHPを検知していないことを示す検知無し信号を入力し、検知有り信号を入力した場合に、後段の経路切替制御部140に検知有り信号を出力する。
【0048】
経路切替制御部140は、切替ソレノイド632を制御して、経路シャッタ631の開閉を制御する。
【0049】
より具体的には、経路切替制御部140は、釣銭排出制御部100が釣銭排出要求信号を受信してから所定時間内に検知信号入力部130から検知有り信号を入力するか否かを監視し、その監視の結果、検知有り信号を入力しなかった場合には、硬貨排出部5で排出され、第1の終端部51aから落下する硬貨Cを、第1の排出経路部61経由で受け皿12に排出させるべく、経路シャッタ631をデフォルトの開状態(図2、3参照)に維持し、硬貨排出制御部120に排出開始信号を出力する。
【0050】
他方、経路切替制御部140は、前記監視の結果、検知有り信号を入力した場合には、第1の終端部51aから落下する硬貨Cを、第2の排出経路部62経由で店員の手のひらHPに向けて排出させるべく、切替ソレノイド632の動作を制御して、経路シャッタ631を閉状態に移行させるとともに、モータ621dの回転動作を制御して、案内ベルト部621の駆動ローラ621aを回転させ、硬貨排出制御部120に排出開始信号を出力する。
【0051】
なお、経路切替制御部140は、硬貨排出制御部120による釣銭の金額分の硬貨Cの排出が全て終了して所定時間が経過した後に、モータ621dの回転動作を制御して、案内ベルト部621の駆動ローラ621aの回転を停止させる。
【0052】
なお、図6における各機能構成部は、CPU20がROM21などの記憶手段に記憶されている処理プログラムPを、RAM22上に展開して実行することにより実現されるものである。
【0053】
次に、前記した構成の硬貨自動釣銭機1における処理動作について説明する。
【0054】
図7は、硬貨自動釣銭機1で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
図7に示すように、硬貨自動釣銭機1では、ホスト装置としてのPOS端末30において、一取引における決済処理時に、客からの預かり金額が商品合計金額より大きく、釣銭として硬貨Cの払い出しが必要になった場合に、ステップS11において、釣銭排出制御部100が、POS端末30から釣銭排出要求信号を受信する。
【0056】
続いて、ステップS12において、釣銭排出制御部100では、排出先選択報知部110が、操作表示部25を用いて、店員に釣銭の排出先(受け皿12または店員の手のひらHP)の選択を促す報知処理を実行する。
【0057】
続いて、ステップS13において、釣銭排出制御部100では、経路切替制御部140が、所定時間内に、検知信号入力部130から、検知有り信号を入力するか否かを監視し、この監視の結果、検知有り信号を入力しなかった場合には(ステップS13:No)、続いて、ステップS14において、釣銭排出制御部100では、釣銭を受け皿12に排出するための処理を実行する。
【0058】
具体的には、ステップS14の処理では、経路切替制御部140が、硬貨排出制御部120に排出開始信号を出力する。これにより、硬貨排出制御部120が、硬貨排出部5を用いて、釣銭排出要求信号で特定される釣銭の金額分の硬貨Cを、硬貨収納部4から排出させる。これにより、硬貨排出部5の第1の終端部51aから落下した硬貨Cが、第1の排出経路部61経由で受け皿12に排出される。
【0059】
一方、ステップS13の監視の結果、経路切替制御部140が、所定時間内に、検知信号入力部130から、検知有り信号を入力した場合には(ステップS13:Yes)、続いて、ステップS15において、釣銭排出制御部100では、釣銭を店員の手のひらHPに排出するための処理を実行する。
【0060】
具体的には、ステップS15の処理では、経路切替制御部140が、切替ソレノイド632の動作を制御して、経路シャッタ631を閉状態に移行させるとともに、モータ621dの回転動作を制御して、案内ベルト部621の駆動ローラ621aを回転させ、硬貨排出制御部120に排出開始信号を出力する。すると、硬貨排出制御部120が、硬貨排出部5を用いて、釣銭排出要求信号で特定される釣銭の金額分の硬貨Cを、硬貨収納部4から排出させる。これにより、硬貨排出部5の第1の終端部51aから落下する硬貨Cが、第2の排出経路部62経由で店員の手のひらHPに排出される。
【0061】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の硬貨自動釣銭機1では、店員の手のひら(検知対象物)HPを検知した場合に、自動的に、経路を切り替えて、釣銭を店員の手のひらHPに直に排出することが可能な形態について説明したが、以下では、店員の手動操作により、経路を切り替えて、釣銭を店員の手のひらHPに直に排出することが可能な第2の実施形態について説明する。
【0062】
図8は、第2の実施形態に係る硬貨自動釣銭機1Xの外観を示す斜視図である。
【0063】
図8に示すように、この硬貨自動釣銭機1Xは、本体ハウジング10Xを有しており、その本体ハウジング10Xの上面に位置して操作者側となる端部近傍には、第1の実施形態の硬貨自動釣銭機1と同様に、硬貨投入口11および操作表示部25が設けられている。
【0064】
また、本体ハウジング10Xの正面下方には、第1の実施形態の硬貨自動釣銭機1と同様に、受け皿12が設けられている。
【0065】
更に、本体ハウジング10Xの操作表示部25が設けられた矩形状の突出部分10Aの下面10aには、第1の実施形態の硬貨自動釣銭機1と同様に、第1の排出口13(図9参照)と、第2の排出口14(図9参照)とが形成されている。
【0066】
更に、突出部分10Aの正面から、第2の実施形態の硬貨自動釣銭機1Xの特有の構成である経路切替部84が、一部突出する態様で設けられている。
【0067】
図9は、本体ハウジング10Xの内部の構造を示す縦断側面図である。
【0068】
図9に示すように、本体ハウジング10Xの内部には、第1の実施形態と同様に、硬貨入金部2、硬貨選別部3および硬貨収納部4が設けられているとともに、第1の実施形態の排出経路切替部6とは異なる排出経路切替部8が設けられている。
【0069】
排出経路切替部8は、第1の固定経路81と、第2の固定経路82と、第3の固定経路83と、経路切替部84と、付勢部85と、位置決め部86とを主体に構成されている。
【0070】
第1の固定経路81、第2の固定経路82および第3の固定経路83は、それぞれ本体ハウジング10X内で固定的に位置決めされている。
【0071】
第1の固定経路81は、一端の開口が第1の終端部51aの付近に配置され、他端の開口が経路切替部84の上面に略接する位置に配置されている。
【0072】
第2の固定経路82は、一端の開口が第1の排出口13に連通され、他端の開口が経路切替部84の下面に略接する位置に配置されている。
【0073】
第3の固定経路83は、一端開口が第2の排出口14に連通され、多端開口が経路切替部84の下面に略接する位置に配置されている。
【0074】
経路切替部84は、第1の可動経路841および第2の可動経路842を有するとともに、係合突起部843を有し、外部から加えられる外力により、本体ハウジング10に対して可動可能な可動部材である。
【0075】
ここで、第1の可動経路841は、第1の固定経路81および第2の固定経路82と連通可能な経路であり、一方の開口が第1の固定経路81の硬貨落下方向の終端側の口(以下、単に「終端口」という。)81aと連通可能であり、他方の開口が第1の排出口13に連通可能である。
【0076】
第2の可動経路842は、第1の固定経路81および第3の固定経路83と連通可能な経路であり、一方の開口が終端口81aと連通可能であり、他方の開口が第2の排出口14に連通可能である。
【0077】
なお、経路切替部84は、押圧面84aに対する押圧力、および、後述の付勢部85の付勢ばね852の付勢力により、本体ハウジング10X内に固定されたガイド部材87に案内されて前後方向Dに移動可能である。
【0078】
付勢部85は、本体ハウジング10X内で固定された固定部材851と、固定部材851に一端が固定され、他端が経路切替部84の背面84bに固定された付勢ばね852とを有し、付勢ばね852の付勢力により経路切替部84を前方方向Eに向けて付勢する。
【0079】
位置決め部86は、第1の固定経路81および第2の固定経路82と、第1の可動経路841とが適切に連通するための経路切替部84の位置を決める第1の位置決め部材861と、第1の固定経路81および第3の固定経路83と、第2の可動経路842とが適切に連通するための経路切替部84の位置を決める第2の位置決め部材862とを有している。
【0080】
図10は、経路切替部84の押圧面84aに対して外部から押圧力が加えられていない状態における硬貨Cの排出の様子を説明するための縦断側面図である。
【0081】
図10において、店員により押圧面84aに押圧力が加えられていない状況では、付勢ばね852の付勢力と、第1の位置決め部材861との作用により、経路切替部84の先端側が突出部分10Aの正面から突出し、第1の固定経路81および第2の固定経路82と、第1の可動経路841とが連通した状態となっている。
【0082】
これにより、第1の終端部51aから第1の固定経路81に落下した硬貨Cは、第1の可動経路841経由で、第2の固定経路82に案内されて、第1の排出口13から本体ハウジング10Xの外部に排出され、傾斜面15を経由して受け皿12に排出される。即ち、硬貨収納部4から釣銭として払い出された1または複数の硬貨Cは、受け皿12に貯留される。
【0083】
図11は、経路切替部84の押圧面84aに対して外部から押圧力が加えられ、経路切替部84が本体ハウジング10Xの内部奥側に押されている状態における硬貨Cの排出の様子を説明するための縦断側面図である。
【0084】
図11において、店員の指fなどにより押圧面84aに対して後方方向Fに押圧力が加えられ、経路切替部84の下面の右端部分が第2の位置決め部材862に係合するまで、経路切替部84を、本体ハウジング10Xの内部奥側に向って移動させた状況では、経路切替部84の突出部分10Aの正面からの突出がほぼ無くなり、第1の固定経路81および第3の固定経路83と、第2の可動経路842とが連通した状態となっている。
【0085】
なお、第2の実施形態の硬貨自動釣銭機1Xの電気的なハードウェア構成は、前記した第1の実施形態の硬貨自動釣銭機1と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0086】
図12は、第2の実施形態の硬貨自動釣銭機1Xにおける機能的構成を説明するためのブロック図である。
【0087】
図12に示すように、硬貨自動釣銭機1Xは、機能的構成として、排出先選択報知部210および硬貨排出制御部220を含み、POS端末30からの釣銭排出要求信号に応じて、釣銭としての硬貨Cを排出する制御を行う釣銭排出制御部200を有している。
【0088】
ここで、排出先選択報知部210は、前記した排出先選択報知部110と略同様の報知処理を行うものであり、この場合には、例えば、操作表示部25で、「釣銭を手のひらで受け取りたい場合には、手のひら用の排出口の下方に手のひらを配置し、可動部分を奥側に押し込んで下さい。」などの文字情報を表示する。
【0089】
ここで、硬貨排出制御部220は、排出先選択報知部210から報知開始信号を入力した後、所定時間を計数し、所定時間が経過した後、硬貨排出部5を用いて、釣銭排出要求信号で特定される釣銭の金額分の硬貨Cを、硬貨収納部4から排出する処理を実行する。
【0090】
なお、図12における各機能構成部は、CPU20がROM21などの記憶手段に記憶されている処理プログラム(不図示)を、RAM22上に展開して実行することにより実現されるものである。
【0091】
次に、第2の実施形態の硬貨自動釣銭機1Xにおける処理動作について説明する。
【0092】
図13は、硬貨自動釣銭機1Xで実行される処理の流れを示すフローチャートである。なお、この図13の処理手順におけるステップS21およびステップS22は、図7の処理手順におけるステップS11およびステップS12と同様の処理であるため、ここでは説明を省略する。
【0093】
図13において、ステップS22の報知処理後、続いて、ステップS23において、硬貨排出制御部220が、所定時間が経過するか否かを監視し、該監視の結果、所定時間が経過した場合に(ステップS23:Yes)、続いて、ステップS24において、硬貨排出制御部220が、硬貨排出部5を用いて、釣銭排出要求信号で特定される釣銭の金額分の硬貨Cを、硬貨収納部4から排出させる。これにより、硬貨排出部5から落下した硬貨Cが、経路切替部84の停止位置に応じて、受け皿12または店員の手のひらHPに排出される。
【0094】
以上説明した本実施形態の硬貨自動釣銭機(硬貨排出機)1、1Xによれば、釣銭として排出される硬貨Cの受け取り作業を簡単化することができる。
【0095】
より具体的には、本実施形態の硬貨自動釣銭機1、1Xによれば、釣銭として排出される硬貨Cを受け皿12以外に、店員(操作者)の手のひらHPに直に排出することができるので、店員による硬貨Cの受け取り作業を簡単化することができる。
【0096】
特に、従来の硬貨自動釣銭機にあっては、釣銭として多数の硬貨が受け皿に排出された場合には、店員は、1回の取り出し作業により、受け皿から全ての硬貨を一括して取り出すことができず、複数回の取り出し作業により、全ての硬貨を取り出すようになっており、硬貨の取り出しに時間が掛かり、店員に対して面倒な作業を要していたなどの課題があったが、これに対し、本実施形態の硬貨自動釣銭機1、1Xによれば、店員の手のひらHPに釣銭としての硬貨Cを直に排出することで、受け皿12から硬貨Cを取り出す作業を省略でき、前記した課題を解消することができる。
【0097】
また、本実施形態の硬貨自動釣銭機1、1Xは、店員の希望に応じて、釣銭として排出される硬貨Cを、受け皿12に排出するか、店員の手のひらHPに排出するかを決定することができるので、店員にとって使い勝手の良いものである。
【0098】
以上、例示的な実施形態に基づいて説明したが、本実施形態は、前記した実施形態により限定されるものではない。
【0099】
例えば、前記した実施形態では、第1の実施形態において、赤外線センサなどの検知部64により、操作者としての店員の手のひらHPを検知した場合に、釣銭としての硬貨Cを受け皿12ではなく、店員の手のひらHPに向けて排出する形態について説明したが、これ以外にも、硬貨Cの排出経路を指定する選択スイッチ(スイッチ手段)を設け、その選択スイッチにより硬貨Cの排出経路として第2の排出口14に連通する経路が選択された場合に、硬貨Cの排出経路を、第2の排出口14に連通する経路に切り替えるような形態とすることも可能である。
【0100】
また、前記した実施形態では、第1の実施形態において、検知手段として、赤外線センサで実現される検知部64を用いる場合について説明したが、これに限定されず、他のセンサで実現される検知部を用いることも可能である。
【0101】
また、第1の実施形態においては、前記した検知手段としての検知部64が、検知対象物としての店員の手のひらHPを検知するための検知窓64aの設置箇所として、第2の排出口14の近傍の設置箇所である場合について説明したが、これに限定されず、例えば、検知窓64aの設置箇所としては、本体ハウジング10、10Xの正面または上面(矩形状の突出部分10Aの正面または上面)などのその他の設置箇所とすることも可能である。
【0102】
また、前記した実施形態では、第1の実施形態において、第2の排出経路部62として、案内ベルト部621および案内通路622を備える形態について説明したが、これ以外にも、例えば、案内ベルト621および案内通路622の代わりに、一端の開口が、経路シャッタ631の開閉スペースを隔てて配置され、他端の開口が、第2の排出口14に連通される傾斜面を有する固定経路を備える第2の排出経路部62とすることも可能である。
【0103】
また、前記した実施形態では、第1および第2の実施形態において、好ましい形態として、第2の排出口14を受け皿12の上方に配置し、第1の排出口13の近くに設ける形態について説明したが、これに限定されず、第2の排出口14の設置箇所は、受け皿12の上方以外でも良く、例えば、本体ハウジング10、10Xの正面に設けるような形態とすることも可能である。
【0104】
また、前記した実施形態では、第2の実施形態において、第2の固定経路82および第3の固定経路83を設ける形態について説明したが、これ以外にも、例えば、第2の固定経路82および第3の固定経路83を省略して、第1の可動経路841の下端側の開口が、第1の排出口13に直接的に連通し、一方、第2の可動経路842の下端側の開口が、第2の排出口14に直接的に連通するような形態とすることも可能である。
【0105】
また、その他、第2の実施形態においては、第1の可動経路841の下端側の開口が、第1の排出口13となり、第2の可動経路842の下端側の開口が、第2の排出口14となるような形態とすることも可能である。
【0106】
また、前記した実施形態では、第1および第2の実施形態において、硬貨Cの排出先(受け皿12または店員のてのひらHP)の選択を促す報知を操作表示部25の表示部を用いて行う場合について説明したが、これ以外にも、例えば、LED(Light Emitting Diode)の発光や、スピーカによる報知音の鳴動または音声ガイダンスにより報知するような形態とすることも可能である。
【0107】
また、前記した実施形態では、第1および第2の実施形態において、硬貨Cの排出先の選択を促す報知処理を行う形態について説明したが、これ以外にも、例えば、報知処理を行わないような形態、即ち、図7のステップS12や図13のステップS22の処理を省略するような形態とすることも可能である。
【0108】
また、その他、第1および第2の実施形態において、釣銭排出要求があった場合に、硬貨排出部5を用いて、硬貨収納部4から釣銭としての硬貨Cを排出開始してしまい、硬貨Cの排出中に、硬貨Cの排出先を第1の排出口13および第2の排出口14のいずれかに切替え可能とするような形態とすることも可能である。
【0109】
また、前記した実施形態では、第1の実施形態において、操作者としての店員の手のひらHPを検知する検知手段として赤外線センサを用いる場合について説明したが、これに限定されず、その他の検知手段を用いることも可能である。
【0110】
また、前記した実施形態では、第2の実施形態において、経路切替部84に対して付勢力を加える付勢手段として固定部材851および付勢ばね852からなる付勢部85の場合について説明したが、これに限定されず、他の付勢手段であっても良く、例えば、付勢ばね852の代わりに、ゴムなどの弾性部材を採用することも可能である。
【0111】
また、前記した実施形態では、第1および第2の実施形態において、本実施形態の硬貨排出機として、店員の操作により商品の登録および決済処理を実行するPOS端末に対応付けて設置される硬貨自動釣銭機の場合について説明したが、これに限定されず、その他の硬貨排出機に適用することも可能である。例えば、店舗に設置され、店員の操作により決済処理を実行するECR(Electronic Cash Register)や、店舗に設置され、客の操作により商品の登録および決済処理を実行可能なセルフ式のPOS端末に実装された硬貨自動釣銭機や、道端などに設置され、商品(飲料品やタバコなど)を自動的に販売する自動販売機などのその他の硬貨排出機に適用することも可能である。
【0112】
また、前記した実施形態の硬貨自動釣銭機1、1Xで実行される処理プログラム(P)は、ROMなどの記憶手段に予め組み込むように提供しても良いし、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶して提供するように構成しても良いし、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0113】
その他、前記した実施形態における硬貨自動釣銭機1、1Xの外観構成、各構成要素の形状、ハードウェア構成、ソフトウェア構成、処理手順などは、単なる例として記載したものであり、本実施形態は、これらにより限定されない。
【符号の説明】
【0114】
1、1X 釣銭排出機
4 硬貨収納部
6、8 排出経路切替部(切替手段)
12 受け皿(貯留部)
13 第1の排出口
14 第2の排出口
64 検知部(検知手段)
64a 検知窓
84 経路切替部(切替手段)
100、200 釣銭排出制御部(切替手段)
110、210 排出先選択報知部
120、220 硬貨排出制御部(切替手段)
130 検知信号入力部
140 経路切替制御部(切替手段)
81、82、83 固定経路
81a 終端口
841 第1の可動経路
842 第2の可動経路
C 硬貨
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】
【特許文献1】登録実用新案第3001749号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨収納部から排出された硬貨を貯留部に排出する第1の排出口と、
前記第1の排出口とは別に設けられ、前記硬貨収納部から排出された硬貨を本体外部に排出する第2の排出口と、
操作者の動作に応じて、前記硬貨の排出経路を、前記第2の排出口に連通する経路に切り替える切替手段と、
を有する、硬貨排出機。
【請求項2】
前記切替手段は、所定位置における検知対象物の有無を検知する検知手段を有し、前記検知手段により前記検知対象物が検知された場合に、前記硬貨の排出経路を、前記第2の排出口に連通する経路に切り替える、請求項1に記載の硬貨排出機。
【請求項3】
前記切替手段は、前記硬貨の排出経路を指定するスイッチ手段を有し、前記スイッチ手段により前記硬貨の排出経路として前記第2の排出口に連通する経路が指定された場合に、前記硬貨の排出経路を、前記第2の排出口に連通する経路に切り替える、請求項1に記載の硬貨排出機。
【請求項4】
前記切替手段は、本体内部で位置決めされ、前記硬貨収納部から排出された硬貨が通過する固定経路と、本体外部から受ける外力により本体に対して可動可能であり、前記固定経路と連通可能な第1の可動経路および第2の可動経路を有する可動部材とを有し、前記外力により前記可動部材が可動されることにより、前記硬貨の排出経路を、前記第2の排出口に連通する経路に切り替える、請求項1に記載の硬貨排出機。
【請求項5】
前記第1の可動経路は、一端の開口が前記固定経路の終端口と連通可能で、且つ、他端の開口が前記第1の排出口に連通可能であり、前記第2の可動経路は、一端の開口が前記固定経路の終端口と連通可能で、且つ、他端の開口が前記第2の排出口に連通可能である、請求項4に記載の硬貨排出機。
【請求項6】
硬貨を入金する硬貨入金部と、前記硬貨入金部で入金された硬貨を金種別に選別する硬貨選別部と、前記硬貨選別部で選別された硬貨を金種別に収納する前記硬貨収納部と、前記硬貨収納部に収納されている硬貨を排出する硬貨排出部と、を更に有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬貨排出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−53692(P2012−53692A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196100(P2010−196100)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】