説明

硬貨搬送用ベルト

【課題】金属製のピンを用いることなく、硬貨の係止板を安定的に取り付けた硬貨搬送用ベルトを開発する。
【解決手段】プーリに噛合する複数の歯部を備えた歯付面を有する搬送ベルトであって、硬貨を係止して搬送するための係止板を歯部側面に設けられている硬貨搬送ベルトにおいて、該係止板は、熱可塑性合成樹脂製であって、硬貨を係止する係止部と歯部に固着する脚部からなり、アウトサート成形により歯部側面に一体的に固着形成されていることを特徴とする硬貨搬送ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動釣り銭機等で用いられる硬貨搬送用ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルトで硬貨等の物品を搬送する場合、歯付面と反対側となるベルト背面に突起部や桟部を設けた搬送ベルト(以下、背面突起付ベルトという)が広く用いられている。そして、このような突起部や桟部の形成は、熱可塑性ウレタンベルトの場合には、あらかじめ、ベルト本体と同質材で形成された突起部や桟部をベルト背面の所定部位にスポット的に熱融着することによって取り付けられている。これに対し、ゴムベルトの場合にはベルト背面の研磨加工によって形成され、また、注型タイプの熱硬化性ウレタンベルトの場合には金型による一体成形によって形成できるため、製作が容易でコスト安となる等、前記した背面突起付ベルトは一般的に製造が比較的容易であるという利点がある。
本出願人は、特許文献1(特許第3588480号公報)として、熱硬化性ウレタンベルト本体に、プーリに噛合する複数の歯部を備えた歯付面を有する搬送ベルトであって、各歯部をベルト長さ方向に間隔を存してベルト幅方向に延ばして成し、これら歯部のうち一定ピッチ毎に、歯の高さ寸法及び歯の長さ寸法の少なくとも一方が他の歯部よりも大きく設定された大型歯部を設け、この大型歯部の側面に金属ピン付き係止板のピン部を突き刺して、ベルト走行時に硬貨を係止して搬送する硬貨搬送ベルトを提案した。
特許文献1に開示された硬貨搬送ベルトは、金属ピンの抜止機構として、くさび形状のかえり、ねじ、ナット止め、接着止め、太いピンをウレタンの圧縮力で留める、熱融着するなどの係止手段を講じている。ピンを締結する歯部は他の歯部より大きく形成する必要があるが、近年の自動釣り銭機のコンパクト化、高速化にともない、より小さいプーリ径で使用されることが多くなり、ピンが締結された大きい歯部の根元部へ、応用力が集中し、亀裂破損が発生しやすい状況になっている。
この点を克服するため、歯部とピンの形状を改良した提案もなされている。ピン径を細くし、取付け歯部を小型化する試みは、耐久性を向上させるが、一方で、ピンを用いる以上、細径にすることにより締結力が小さくなることと取付け歯部に応力が集中することは避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3588480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、金属製のピンを用いることなく、硬貨の係止板を安定的に取り付けた硬貨搬送用ベルトを開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、係止板を、アウトサート形成手段を用いて、硬貨係止部と脚部からなる係止板を歯付き搬送ベルトの側面に一体成形した硬貨搬送ベルトを提案するものである。主な構成は次のとおりである。
(1)プーリに噛合する複数の歯部を備えた歯付面を有する搬送ベルトであって、硬貨を係止して搬送するための係止板を歯部側面に設けられている硬貨搬送ベルトにおいて、
該係止板は、熱可塑性合成樹脂製であって、硬貨を係止する係止部と歯部に固着する脚部からなり、アウトサート成形により歯部側面に一体的に固着形成されていることを特徴とする硬貨搬送ベルト。
(2)係止板の脚部は、係止板を設ける歯部に幅方向に設けられた貫通孔内にアウトサート成形によって充填形成されていることを特徴とする(1)記載の硬貨搬送ベルト。
(3)係止板の脚部は、抜止が形成されていることを特徴とする(1)又は(2)記載の硬貨搬送ベルト。
(4)抜止は、脚部の一部に形成された膨出によって構成されることを特徴とする(3)記載の硬貨搬送ベルト。
(5)係止板の脚部は、コ字状であって、係止板を設ける歯部に対して歯面側と背側に延出され、延出端が連続して一体化して形成されていることを特徴とする(1)記載の硬貨搬送ベルト。
(6)コ字状に形成された係止板の脚部は、延出端が歯部の他の側端まで伸びていて、歯部の他の側面において延出端が連続して一体化していることを特徴とする(5)記載の硬貨搬送ベルト。
(7)コ字状に形成された係止板の脚部は、延出端が歯部の幅方向中間まで伸びていて、歯部の厚さ方向に設けられた貫通孔にて延出端が連続して一体化していることを特徴とする(5)記載の硬貨搬送ベルト。
(8)係止板の脚部は、搬送ベルトの歯部と同程度の弾性素材によって形成されていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の硬貨搬送ベルト。
(9)搬送ベルトは、熱硬化性ウレタン製ベルトであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の硬貨搬送ベルト。
(10)係止板が設けられる歯部は、他の歯部と同形状に形成されていることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の硬貨搬送ベルト。
(11)係止板が設けられる歯部は、他の歯部よりも大型に形成されていることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の硬貨搬送ベルト。
【発明の効果】
【0006】
係止部と脚部を同材料で搬送ベルトへの固着一体化と同時に行うことができる。抜止構造も成形と同時に形成することができる。係止板は熱可塑性合成樹脂製であるので、弾力性があり、歯部との物性差を小さくできるので、歯部の破損を軽減することができる。脚部の形状、構造は多様性があって、使用される釣り銭機の構造に合わせて容易に変更できる。係止板を設ける歯部の大きさは他の歯部と同じ物を使用することができるので、ベルトの形成において設計が容易となる。また、プーリも同じ形状の凹凸とすることができる。係止板を設ける歯部は他の歯部と同形状とすることができ、係止板を設けた歯部用に特殊な形状を形成する必要が無くなるので、係止板を設ける箇所の自由度が高くなる。
また、特に強度が必要な場合などは、係止板設置用に大きな歯部を設けることができるが、従来の金属製ピンを挿通するような大きな孔は必要ないので、小型化することが可能である。小型化によって応力集中による損傷も小さくなる。
熱硬化性ポリウレタン製ベルト本体と熱可塑性ポリウレタン製係止部などの組み合わせによって、同程度の物性の素材設計を行うことができる。物性の差違による影響を減少させることができ、硬貨に対する損傷も少なくすることができ、搬送騒音も小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】硬貨搬送ベルトの要部図、(a)同形歯部ベルト態様図、(b)特殊歯部ベルト態様図
【図2】係止板の態様を示す図
【図3】中間に抜止を備えた係止板の態様を示す図
【図4】2つの脚部を備えた係止板の態様を示す図。
【図5】係止板背面形成態様図
【図6】成形概略図
【図7】実施例に係る硬貨搬送ベルトの拡大説明図
【図8】硬貨搬送ベルト使用状態例
【図9】硬貨搬送ベルト従来例を示す図
【図10】プーリを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の硬貨搬送ベルトは、歯付ベルトの側面に頭部を有する合成樹脂製の係止板を設け、頭部を硬貨に当接して移送する硬貨搬送ベルトであって、係止板を歯付ベルトに固着する手段として、アウトサート成形手段を採用することにより、係止板を構成する脚部や頭部等を同時に形成でき、かつ、脚部の形状の自由度あるいは細径にすることができ、歯部の形状も小さくあるいは他の歯部を同じ形状とすることができる硬貨搬送ベルトである。
【0009】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施例の硬貨搬送ベルトBの硬貨搬送ベルトの要部を示す。(a)は、通常の寸法形状の歯部3に係止板7を設けた硬貨搬送ベルトの例を示し、(b)は、通常の歯部3より大型に形成した取付歯部2に係止板7を設けた硬貨搬送ベルトの例を示している。なお、背面駆動させた場合にベルト蛇行防止用の凸部6が設けられている。
この硬貨搬送ベルトBは、自動釣り銭機や硬貨選別機等で硬貨の搬送用として用いられる。1は例えば、熱硬化性ウレタン等で形成されたベルト本体である。本例の係止板7は、ベルト本体1の取付箇所となる歯部に貫通する孔2をドリルなどで穿孔して設け、係止板の頭部空間を設けた金型をベルトの側面に密着させ、ベルトの反対側側面に孔を塞ぐように封止材を密着させ、熱可塑性合成樹脂を射出することにより、孔2内部と頭部空間が熱可塑性合成樹脂によって満たされて係止板をアウトサートによって形成することができる。
使用可能な熱可塑性合成樹脂は、アウトサートできる合成樹脂は、熱可塑性ポリウレタン樹脂などの熱可塑性エンジニアリングプラスチックを用いることができる。カプロエステル型あるいはエーテル型の熱可塑性ポリウレタン樹脂、アセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アクリロノトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)等が挙げられる。
このアウトサート成形の結果、係止板7は全体が熱可塑性樹脂によって同時に一体に形成される。従来例では、孔に挿入するために脚部は硬い材質が用いられており、係止板の頭部と脚部の接合部にひびなど発生しやすく故障の原因となっている。脚の先端側を太くして抜止を設ける場合は、狭い孔に差し込む必要があるので更に剛性が求められている。接合強度を高くするには脚部を太くする必要があり、それに伴い取付歯部を大型にする必要があった。
本願発明の係止板は、この従来例に対して、アウトサート成形することにより、脚部を含めて全体を弾力性のある熱可塑性合成樹脂を用いることができ、引きちぎれない様に引っ張り強度が求められるが、剛性はさほど求められない。歯部よりも弾力性のある樹脂設計を採用すると、歯部根元に加わる歪みを脚部の弾性変形により吸収することができるので、歯部根元に発生しやすい亀裂障害などを減少させることが可能となる。
図1(a)は、通常の歯部3を利用して係止板7を設けた硬貨搬送ベルトであるので、係止板を設ける箇所はベルト本体1の製作とは関係なく、後から自由に設定できる。この硬貨搬送ベルトを巻き付けるプーリの歯形と同形とすることができる。図1(b)は、係止板取り付け用に通常の歯部3とは異なる大型の歯部2を設けたベルト本体1を用いる例を示している。この場合は、通常歯部に形成する場合に比べて脚部7aを太くできるので、強度を大きくすることができ、過酷な使用環境や安全性を重視する場合には有効である。この例においても、係止板全体がアウトサートによって同時に一体に成形されるので、脚部の接合部は従来例に比較して、弾力性が高く引っ張り強度の高い熱可塑性合成樹脂を使用することができる。この例では、大型歯部に適用したプーリを準備する必要があることは従来と同様である。
【0010】
係止板の多様な形状を図2〜5に示す。
図2は、形成された係止板の断面状体を示す態様図である。(a)に示される係止板7は、円盤状の頭部7bとストレートの脚部7aによって形成されている。アウトサートによって強い力で貫通している細い孔2a内に熱可塑性合成樹脂が圧入されて脚部7aが形成されるので、脚部7aは孔2aに強く密着して固定される。
(b)に示される係止板7は、円盤状の頭部7bとストレートの脚部7a及び脚部の先端がベルト本体の反対側側面に飛び出しており、飛び出し部位を膨出状に形成して抜止部7cを形成している。膨出状の抜止7cが設けられているので、(a)に比べて、更に抜止作用が大きく形成した例である。
(c)に示される係止板7は、円盤状の頭部7bとストレートの脚部7a及び脚部の先端がベルト本体の反対側側面に飛び出しており、飛び出し部位を膨出状に形成して抜止部7cを形成している。膨出状の抜止7cが設けられているので、(a)に比べて、更に抜止作用が大きく形成した例である。
【0011】
図3は、中間に抜止を備えた係止板の態様を示す図である。(a)に示される係止板7は、円盤状の頭部7bとストレートの脚部7aの中間に膨出部を設けて抜止7cが形成されている。抜止7cは、蛇行防止用の凹部5の空間の一部を利用して形成することができる。なお、硬貨搬送ベルトBには、蛇行を防止するために歯部の一部に凹部を連続して設けて、この凹部に案内定規を充てることにより蛇行防止をする場合がある。この蛇行防止用の凹部5を利用して、その空間の一部に膨出部をアウトサートによって抜止7cを形成することができる。
(b)に示される係止板7は、円盤状の頭部7bとストレートの脚部7aの中間に膨出部を設けて抜止7cが形成されている。抜止7cは、蛇行防止用の凹部5の空間の一部を利用して形成することができる。なお、硬貨搬送ベルトBには、蛇行を防止するために歯部の一部に凹部を連続して設けて、この凹部に案内定規を充てることにより蛇行防止をする場合がある。この蛇行防止用の凹部5を利用して、その空間の一部に膨出部をアウトサートによって抜止7cを形成することができる。
(c)に示される係止板7は、脚部形成用の孔を歯部の中間まで形成し、歯部の表面側から設けた孔と連絡して脚部成形空間をL字型形成した例である。ストレートの脚部7aとL形に屈曲した抜止7cが形成され、頭部7bと一体にアウトサートによって形成される例である。
【0012】
図4は、2つの脚部を備えた係止板の態様を示す。2つの脚部の先端側を連結するように形成することにより抜止機能を発揮することができる。
(a)に示される係止板7は、ベルト本体の表裏面と側面に周回するように係止板の頭部、脚部、抜止部となる空間を形成し、該空間に熱可塑性合成樹脂をアウトサート成形することにより、係止板を一体に固定形成したものである。頭部7bからベルト本体1の背側に脚部7a2と歯部側に脚部7a1が伸び、反対側側面に2つの脚部を連絡する抜止7cが一体に形成された係止板7である。この例では、ベルト本体に係止板形成用の工夫をする必要はないが、プーリの形状は変更する必要がある。一方、ベルト本体1に脚部や係止部係止箇所に溝を形成すると、プーリは変更する必要がない。
(b)に示される係止板7は、中間部に上下に貫通する空間を設けて、上下の脚部空間と連絡した例である。この例では、頭部7bからベルト本体1の背側に脚部7a2と歯部側に脚部7a1を中間まで伸び、2つの脚部を連絡する抜止7cがベルト本体を厚み方向に貫通して一体に形成された係止板7である。図(a)と同様に、ベルト表面に脚用の溝を形成することもできるし、プーリの加工も同様である。
【0013】
図5は、背側に設けられた凸部に係止板をアウトサートによって形成した例を示す。背側の凸部は蛇行防止用の凸部6や両面に歯部を設けたベルトを利用することができる。
【0014】
図6は、アウトサート成形の概略を示す図である。図2(c)に示す係止板を想定している。
図6(a)は、ベルト本体1の係止板形成箇所付近を上側のベルト固定具20aと下側のベルト固定具20bで挟み込んで固定する状態を示す。上下のベルト固定具は接触するベルトの形状に沿う形状とする。この固定した状態のベルトの歯部に細径部21aと基部に大径部21bを備えたドリル21を用いて孔2aを穿孔する。穿孔された孔2aは、頭部7bが形成される側よりも抜止7cが形成される側面がわの大きい空間の孔となる。
この穿孔作業後上下から固定しつつ両側面に金型を密着して、係止板7となるキャビティーを形成する。頭部7bに相当するヘッド形成空間27を備えた金型25と反対側の側面に平に接触する平面金型26によってベルトの歪むことがないようにしっかり密閉する。この状態にて、熱可塑性樹脂を射出注型することにより、抜止7cと頭部7bを歯部の内部に通過する脚部7aによって一体に形成された係止板7を設けることができる。
他の形状の係止板についても、ベルト本体を上下固定及び両側面から固定して形成した係止板の形状に相当するキャビティーに熱可塑性合成樹脂を射出することにより、それぞれの形状に即した係止板を設けることができる。
熱硬化性ポリウレタンがベルト本体の形成樹脂として適している。係止板は熱可塑性ウレタンを使用することができる。熱可塑性ウレタンは、弾力性の設計が容易で引っ張り耐性も大きく、硬貨搬送ベルト用に係止板成形樹脂として適している。
【0015】
図9に従来例の硬貨搬送ベルト示す。大型の取付け歯部2に設けた孔2aに中間に膨らんだ抜止9を設けたピン形の係止板7の脚部7aを挿入している。図10は、プーリCを示す。(a)は同じ歯形の備えた同歯形プーリを示している。図2(a)に示す通常歯形に係止板を設けた硬貨搬送ベルトに適用できる。(b)は大型歯部に係止板を設けた場合に、大型歯部に対応する特殊な溝部を形成したプーリを示す。図2(b)に示す係止板に対応できるプーリである。プーリは、使用するベルトの歯形に応じて作成される。
【0016】
本発明の硬貨搬送ベルトは、図8に例示されるようにプーリに複雑に屈曲するように掛け回されて使用される。この硬貨搬送ベルトは、硬貨を係止して搬送するための突起部としての係止板がベルト側面に取り付けられた構成である。
通常のベルトは、プーリに蛇行防止用フランジを設けるが、この硬貨搬送ベルトは側面に硬貨を押す係止板が設けられているのでこのようなフランジを設けることはできない。歯部の一部を切欠き、長手方向に凹部を連続して設けて、案内突条との案内係合部分として設けることにより蛇行を防止することができる。図2〜5に示した係止板の各種態様図には、この凹部を明記していない例もあるが、必要に応じて形成できる。
【0017】
以上のような、この種の硬貨搬送ベルトを、更に、小型化、コンパクト化された自動釣り銭機などに適用するために、特に、背面アイドラプーリM部においては、駆動プーリ等のプーリCとは異なり、背面側が内側に湾曲され、通常の歯部側に引っ張り応力が発生し易いが、本発明は、きつい逆湾曲に対しても耐久性のある硬貨搬送ベルトの構造を提案する。小型化するためには、ベルトの大型歯部も小さくなる必要がある。
本発明は従来のピン形の係止板の挿入タイプを採用する必要は無く、アウトサートにより引張り強度が高く弾力性が高い熱可塑性合成樹脂製の係止板を設けているので、脚部と頭部の接合部の脆弱性を改善した新しいタイプの硬貨搬送ベルトを提供するものである。
アウトサートにより一体成形することができるので、別体にピン形の係止板を準備する必要がない。脚部はピンよりも細くできるので、係止板を取り付ける歯部は更に小型することができ、さらには、通常の歯部を利用することができるので、ベルト本体の設計及びプーリの制約が小さくなる。
通常形状の歯形をそのまま使用する場合は、釣り銭機の仕様に応じたベルトを作成せずに共通化することが可能となる。
更に、係止板の取付け構造も多様にすることができるので、更に硬貨搬送経路の多様性に応ずることができる。
したがって、本願発明のアウトサートによる係止板を成形した硬貨搬送ベルトは、小型化、耐久性、設計の自由度を改善することができる。
【符号の説明】
【0018】
A 係止板
B 硬貨搬送ベルト
C プーリ
M 背面アイドラプーリ
1 ベルト本体
2 取付歯部
2a 孔
2c 抜止空間
3 歯部
5 凹部
6 蛇行防止用凸部
7 係止板
7a 脚部
7b 頭部
7c 抜止部
9 係止部
12 取付歯部用溝部
13 溝部
20 固定具
20a ベルト固定具上
20b ベルト固定具下
21 ドリル
21a 細径部
21b 大径部
25 金型
26 金型
27 ヘッド形成空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリに噛合する複数の歯部を備えた歯付面を有する搬送ベルトであって、硬貨を係止して搬送するための係止板を歯部側面に設けられている硬貨搬送ベルトにおいて、
該係止板は、熱可塑性合成樹脂製であって、硬貨を係止する係止部と歯部に固着する脚部からなり、アウトサート成形により歯部側面に一体的に固着形成されていることを特徴とする硬貨搬送ベルト。
【請求項2】
係止板の脚部は、係止板を設ける歯部に幅方向に設けられた貫通孔内にアウトサート成形によって充填形成されていることを特徴とする請求項1記載の硬貨搬送ベルト。
【請求項3】
係止板の脚部は、抜止が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の硬貨搬送ベルト。
【請求項4】
抜止は、脚部の一部に形成された膨出によって構成されることを特徴とする請求項3記載の硬貨搬送ベルト。
【請求項5】
係止板の脚部は、コ字状であって、係止板を設ける歯部に対して歯面側と背側に延出され、延出端が連続して一体化して形成されていることを特徴とする請求項1記載の硬貨搬送ベルト。
【請求項6】
コ字状に形成された係止板の脚部は、延出端が歯部の他の側端まで伸びていて、歯部の他の側面において延出端が連続して一体化していることを特徴とする請求項5記載の硬貨搬送ベルト。
【請求項7】
コ字状に形成された係止板の脚部は、延出端が歯部の幅方向中間まで伸びていて、歯部の厚さ方向に設けられた貫通孔にて延出端が連続して一体化していることを特徴とする請求項5記載の硬貨搬送ベルト。
【請求項8】
係止板の脚部は、搬送ベルトの歯部と同程度の弾性素材によって形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の硬貨搬送ベルト。
【請求項9】
搬送ベルトは、熱硬化性ウレタン製ベルトであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の硬貨搬送ベルト。
【請求項10】
係止板が設けられる歯部は、他の歯部と同形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の硬貨搬送ベルト。
【請求項11】
係止板が設けられる歯部は、他の歯部よりも大型に形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の硬貨搬送ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−205230(P2010−205230A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53122(P2009−53122)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】