説明

硬貨識別装置

【課題】 衝突センサへの衝突速度の変化に対する硬貨の識別精度を向上させた硬貨識別装置を提供する。
【解決手段】 硬貨2が投入口3に投入されると、その硬貨2は、自由落下して衝突センサ7に衝突して衝突力が検知される。衝突センサ7は、硬貨2の衝突速度にばらつきがあるとセンサ出力に誤差が発生するので、識別処理部8では、電子検銭センサ6のセンサ出力から硬貨速度検出部10が硬貨2の通過速度を検出し、その通過速度から硬貨衝突速度推定部11が硬貨衝突速度を推定し、衝突センサ出力補正部12が衝突力検知部13で検知した衝突力を、推定した硬貨衝突速度で補正する。これにより、衝突力検知部13の出力は、硬貨衝突速度が一定の場合のセンサ出力になるので、硬貨の識別精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨識別装置に関し、特に自動販売機などに搭載され、投入された硬貨の真偽を判定する硬貨識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機や両替機等に搭載されている硬貨識別装置においては、投入された硬貨が転動しながら通過する硬貨搬送路に硬貨の材質を検知する材質センサ、外形を検知する外形センサ、板厚を検知する板厚センサ等が配置されており、それらのセンサの出力値に基づいて投入された硬貨の真偽の判定が行われている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
各センサは、コイルを有する磁気センサで構成され、所定の周波数にてコイルを発振させている。硬貨がセンサ配置部分を通過した際にコイルのインピーダンスが変化し、それにつれて発振レベルが変化する。この変化量が硬貨の材質(導電率)や硬貨の板厚(形状、模様)に因って発生するため、その変化量を捉えることで硬貨の材質や外形、及び硬貨の板厚変化、つまり、硬貨の模様の検出が可能となっている。
【0004】
また、近年、偽貨がより巧妙になってきた背景と、外国の硬貨が容易に持ち込まれてそれが投入されるなどの悪戯が問題となっており、自動販売機等の硬貨識別装置では、管理上の観点から様々な偽造貨に対して対応を図って正貨を正しく識別できることが要求されている。
【0005】
そのため、硬貨の導電率を利用した識別だけではなく、硬貨の機械的な特徴も検出することで、形状や模様がほぼ同一で、かつ、導電率が近い材料でも、真偽貨の識別を可能とする識別方法が提案されている。その1つに圧電素子を用いた衝突センサによって衝突力を検知し、真偽貨を識別する方法がある(特願2003−424806参照。)。
【0006】
図6は、衝突センサを用いた従来の硬貨識別装置の主要部の概略的な構成例を示す正面図である。
硬貨識別装置101は、硬貨投入口104と、この硬貨投入口104に連結された硬貨搬送路105,106と、この硬貨搬送路105,106の側壁に対向して配置された導電率利用の電子検銭センサ108と、硬貨搬送路105上に取り付けられた圧電素子による衝突センサ107と、検銭済みの硬貨を収納する硬貨収納部109とを備えている。
【0007】
また、衝突センサ107及び電子検銭センサ108のセンサ出力は識別処理部111に接続されている。この識別処理部111は、電子検銭センサ108を硬貨が通過したときのセンサ出力変化に基づいて硬貨103の特徴を検知する特徴検知部112と、衝突センサ107に硬貨が衝突した際のセンサ出力値を検知する衝突力検知部113と、硬貨の真偽及び種類の基準となるデータが予め記憶された基準データ記憶部115と、特徴検知部112及び衝突力検知部113の出力と基準データ記憶部115に記憶された基準データとを比較し、この比較結果により硬貨103の真偽及び種類を判定する判定部114とを備えている。
【0008】
このような構成の硬貨識別装置101において、硬貨投入口104に投入された硬貨103は、図示のような一連の流れに沿って転動していく。すなわち、投入された硬貨103は、自由落下して衝突センサ107に衝突し、その後、電子検銭センサ108を通過していく。このとき、衝突センサ107は、硬貨103が衝突したときの衝突力を検知し、電子検銭センサ108は、その硬貨103の特徴を検知する。衝突センサ107及び電子検銭センサ108のセンサ出力は、識別処理部111に入力されて識別処理される。識別処理部111が正貨と判定すると、投入された硬貨103は、硬貨収納部109へ収納され、正貨と判定されなかった場合は、図示しないゲートにより硬貨搬送路が切り替えられて返却口に戻される。
【0009】
図7は、衝突センサに弾性係数の異なる硬貨が衝突したときのセンサ出力電圧の時間変化を示す図であり、図8は、衝突センサに弾性係数の異なる硬貨が異なる速度で衝突したときのセンサ出力電圧の時間変化を示す図である。
【0010】
図7には、硬貨103が衝突センサ107に衝突したときのセンサ出力波形116とその硬貨103よりも弾性係数の小さい硬貨103aが衝突センサ107に衝突したときのセンサ出力波形117とが示されている。ここで、衝突センサ107のセンサ出力電圧は、硬貨103よりも弾性係数の小さい硬貨103aが衝突した場合の方がセンサ出力電圧の大きさが小さくなっている。
【0011】
これは、硬貨103,103aが自由落下の途中である速度(運動エネルギ)をもって衝突センサ107に衝突するが、衝突する速度(運動エネルギ)が同じならば、硬貨103,103aの弾性係数の違いによって、衝突センサ107のセンサ出力電圧に差が発生するからである。この場合、センサ出力電圧とセンサ出力の発生時間との積(運動エネルギ、グラフの面積118と119)は一致するが、弾性係数が小さくなるほど衝突時間が長くなって衝突力が小さくなり、弾性係数が大きくなるほど衝突の時間が短くなって衝突力が大きくなる。このため、その弾性係数の差によって衝突力に差が発生するので、それにほぼ比例して衝突センサ107のセンサ出力電圧に差120が発生することになる。この弾性係数は、その硬貨の材料に固有のものである。したがって、センサ出力電圧の大きさのみに着目した検出の場合には、偽貨の材料に正貨と異なるものが使用されていると、それらの弾性係数も異なり、衝突センサ107のセンサ出力電圧に差120が発生するため、この差120を検出することにより、真偽貨の判別が可能となっている。
【0012】
以上は、衝突センサ107に衝突するときの硬貨103,103aの速度が等しいということを前提としていた。しかし、その衝突時の速度は、硬貨投入口104に硬貨103,103aを投入する状況や、硬貨投入口104から衝突センサ107まで硬貨103,103aをガイドする硬貨搬送路の形状によっても変化してしまうため、必ずしも同じ衝突速度とはならない。
【0013】
たとえば、図8に示したように、硬貨103の場合、弾性係数が大きくても衝突速度が小さい(運動エネルギが小さい)と、図7と比較して、センサ出力電圧の小さなセンサ出力波形121になり、硬貨103aの場合、弾性係数が小さくても衝突速度が大きい(運動エネルギが大きい)と、図7と比較して、センサ出力電圧の大きなセンサ出力波形122になっている。つまり、衝突速度に差があると、弾性係数の違いによって発生するセンサ出力電圧の差が一定せず、場合によっては大きさの関係が逆転する場合もある。
【特許文献1】特開2003−51043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、従来の硬貨識別装置においては、硬貨が衝突センサに衝突する速度にばらつきがあると、弾性係数の違いに基づいて判定していた衝突センサのセンサ出力に誤差が生じることになり、これによって、真偽貨の識別精度が低下してしまうことがあるという問題点があった。
【0015】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、衝突センサへの硬貨の衝突速度が変化しても、硬貨の識別精度が低下しないようにした硬貨識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では上記問題を解決するために、硬貨の導電率の変化を利用して硬貨の特徴を検出する電子検銭センサと、硬貨の弾性係数の違いを利用して硬貨の材料を検出する衝突センサとを備えた硬貨識別装置において、硬貨が衝突センサに衝突するときの硬貨衝突速度を検出する硬貨衝突速度検出手段と、衝突センサのセンサ出力を、硬貨衝突速度検出手段によって検出された硬貨衝突速度によって補正する衝突センサ出力補正手段と、を備えていることを特徴とする硬貨識別装置が提供される。
【0017】
このような硬貨識別装置によれば、衝突センサ出力補正手段によって衝突センサの出力値を硬貨衝突速度検出手段が検出した硬貨衝突速度で補正することができ、これにより、衝突センサに衝突する際の衝突速度にばらつきが生じた場合であっても、硬貨の衝突条件を同じにすることができるので、硬貨の識別精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の硬貨識別装置は、電子検銭センサによって検知されたセンサ出力から衝突センサに衝突する際の硬貨衝突速度を求め、その硬貨衝突速度から衝突センサのセンサ出力を補正するようにしたことにより、衝突センサのセンサ出力精度を確保することができ、より硬貨の識別精度を向上させることが可能となるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、自動販売機に適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態の硬貨識別装置の主要部の概略構成を示す側面図である。
【0020】
第1の実施の形態による硬貨識別装置1は、その上部に投入された硬貨2を受け入れるように開口された投入口3を有し、この投入口3の下部に連結して硬貨搬送路4,5が設けられている。硬貨搬送路4には、投入口3から硬貨2が自由落下してくる位置に衝突センサ7が配置され、硬貨搬送路5には、その側壁に対向して電子検銭センサ6が配置されている。衝突センサ7は、圧電素子によって構成されている。
【0021】
電子検銭センサ6の下流側には、この電子検銭センサ6を通過した硬貨2を振り分ける図示しない振り分け機構及び振り分けられた硬貨を収納する硬貨収納部16が設けられている。振り分け機構は、識別された硬貨2が正貨の場合は、硬貨の種類に応じた振り分けを行うゲートと、偽貨の場合は、所定の返却口へ導くよう振り分けるゲートとを有している。
【0022】
また、衝突センサ7及び電子検銭センサ6の出力は、識別処理部8に接続されている。この識別処理部8は、電子検銭センサ6の出力を受けるように接続された特徴検知部9及び硬貨速度検出部10を備えている。硬貨速度検出部10の出力は、硬貨衝突速度推定部11を介して衝突センサ出力補正部12に接続されている。衝突センサ7の出力は、衝突力検知部13を介して衝突センサ出力補正部12に接続されている。識別処理部8は、また、基準データ記憶部14を備え、その出力は、硬貨衝突速度推定部11、衝突センサ出力補正部12及び判定部15に接続されている。判定部15は、また、特徴検知部9及び衝突センサ出力補正部12にも接続されている。ここで、硬貨速度検出部10及び硬貨衝突速度推定部11は、硬貨衝突速度検出手段を構成し、衝突センサ出力補正部12は、衝突センサ出力補正手段を構成している。
【0023】
電子検銭センサ6を硬貨2が通過した時のセンサ出力変化に基づいて、特徴検知部9は、硬貨2の特徴を検知し、硬貨速度検出部10は、硬貨2の通過速度を検出する。衝突力検知部13は、衝突センサ7に硬貨2が衝突した際の衝突センサ出力の値を検知する。基準データ記憶部14は、硬貨の真偽及び種類の判定基準となるデータと衝突速度補正用の関係式とが予め記憶されている。硬貨衝突速度推定部11は、硬貨速度検出部10で検出された通過速度及び基準データ記憶部14に記憶された関係式から衝突センサ7に硬貨2が衝突する際の衝突速度を推定する。衝突センサ出力補正部12は、硬貨衝突速度推定部11で推定された衝突速度及び基準データ記憶部14に記憶された関係式から衝突センサ7の出力値を補正する。判定部15は、特徴検知部9が検知した硬貨2の特徴を基にして、衝突センサ出力補正部12で補正された衝突力検知部13の出力と基準データ記憶部14に記憶された基準データとを比較し、この比較結果により硬貨2の真偽及び種類を判定する。
【0024】
このような構成の硬貨識別装置1において、硬貨2が投入口3から投入されると、その硬貨2は、自由落下して衝突センサ7に衝突して衝突力が検知され、その後、電子検銭センサ6を通過して特徴が検知され、衝突センサ7及び電子検銭センサ6のセンサ出力を基に識別処理部8が識別処理する。識別処理部8が正貨と判定すると、投入された硬貨2は、図示しない振り分け機構により硬貨搬送路が切り替えられて、硬貨収納部16へ収納され、正貨と判定されなかった場合は、返却口に戻される。
【0025】
次に、衝突センサ7に硬貨2が衝突したときの衝突速度の求め方について説明する。本実施の形態では、硬貨2が衝突センサ7に衝突するときの衝突速度を直接検知しているのではなく、この硬貨識別装置1が既に備えている電子検銭センサ6を利用して衝突速度を間接的に検知するようにしている。具体的には、硬貨2が電子検銭センサ6を通過する速度から衝突速度を推定する手法をとっている。
【0026】
図2は、電子検銭センサを硬貨が通過したときのセンサ出力を示す図であり、図3は、電子検銭センサにおける硬貨の通過速度と衝突速度との相関関係を示す図であり、図4は、衝突センサ出力と衝突速度との相関関係を示す図である。
【0027】
まず、投入口3から投入された硬貨2は、衝突センサ7に衝突し、その後、電子検銭センサ6を通過する。電子検銭センサ6は、硬貨2が通過していく方向にある決められた長さ(硬貨2の通過距離)を有しているので、硬貨2を検出している時間が分かれば、硬貨2が電子検銭センサ6を通過する速度を知ることができる。
【0028】
電子検銭センサ6を硬貨2が通過したときは、図2に示したようなセンサ出力が得られる。ここで、センサ出力が現れている時間17が硬貨2の通過時間であり、これは硬貨速度検出部10によって検出され、その通過時間から硬貨通過速度が求められる。その時間17の間に現れている出力波形18は、硬貨の特徴を検知している部分であり、特徴検知部9によって検知される。
【0029】
このようにして硬貨速度検出部10によって検出された硬貨の通過速度は、硬貨衝突速度推定部11に入力され、ここで、硬貨衝突速度が推定される。硬貨2が実際に衝突センサ7に衝突するときの衝突速度とその後に電子検銭センサ6を通過したときの通過速度とを実測すると、図3に示したような結果が得られた。この測定結果から、実測したデータ19は、ばらつきはあるが統計的にみて、通過速度と衝突速度とに比例的な相関関係があることが分かった。その相関関係は、(y=ax+b)で表される比例関数20で近似することができる。したがって、基準データ記憶部14には、その比例関数20が記憶されており、硬貨衝突速度推定部11では、その比例関数20を参照して、通過速度から硬貨衝突速度を推定するようにしている。
【0030】
次に、硬貨衝突速度推定部11が推定した硬貨2の衝突速度と標準的(平均的)な硬貨の衝突速度との誤差を算出し、衝突センサ出力補正部12によって衝突力検知部13が検知した衝突センサ7のセンサ出力値を誤差分だけ増減して補正をする。この誤差は、(速度誤差×比例定数c)によって表されるもので、これについても、硬貨2の衝突速度と衝突センサ7のセンサ出力とを事前に測定し、統計的にその関係式を抽出する。その際、図4に示したように、硬貨2の衝突速度と衝突センサ7のセンサ出力とは、ばらついたデータ21となるが、概ね(y=cx+d)で表される比例関数22で近似することができる。この比例関数22についても基準データ記憶部14に記憶しておき、衝突センサ出力補正部12がセンサ出力値を補正する際にその関係式22を参照し、衝突センサ出力補正部12は、衝突力検知部13にて得られた衝突センサ7のセンサ出力に対応する標準的な衝突速度と硬貨衝突速度推定部11によって推定された衝突速度との誤差を算出し、その誤差分だけ衝突センサ7のセンサ出力を補正する。
【0031】
このように衝突速度によって補正された衝突力は、判定部15に入力される。判定部15は、その補正された衝突力と、基準データ記憶部14に予め記憶された硬貨の真偽及び種類の基準となるデータとを比較し、かつ、導電率を利用した電子検銭センサ6のセンサ出力から特徴検知部9によって得られた硬貨2の特徴と合わせて、硬貨2の真偽及び種類を最終的に判定する。
【0032】
このように、硬貨識別装置1は、硬貨2が衝突センサ7に衝突するときの衝突速度のばらつきによって生じる衝突センサ7のセンサ出力の誤差を補正することができるため、より識別精度を向上させることができる。その結果、硬貨の弾性係数の差をより感度良く感知できるため、形状や模様がほぼ同一で、かつ、導電率が近い材料の硬貨でも、識別が可能になる。
【0033】
図5は、第2の実施の形態の硬貨識別装置の主要部の概略構成を示す側面図である。なお、この図5において、図1に示した構成要素と同じ又は同等の機能を有する構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0034】
この第2の実施の形態の硬貨識別装置1aは、第1の実施の形態の硬貨識別装置1と比較して、衝突センサ7を電子検銭センサ6の後部に配置した点で異なる。すなわち、衝突センサ7は、電子検銭センサ6の下流側において硬貨2が転動していく方向の延長線上に衝突面を電子検銭センサ6の方向に向けて配置されている。これにより、硬貨2は、電子検銭センサ6を通過した直後に衝突センサ7に衝突するようにしている。
【0035】
以上の構成において、硬貨識別装置1aの投入口3に投入された硬貨2は、自重により下方へ自由落下してその途中に設けられた硬貨搬送路4に衝突する。その後、その衝突による飛び跳ねが収まると、硬貨2は、硬貨搬送路5に沿って転動していく。その転動途中に配置された電子検銭センサ6が転動していく硬貨2を検出し、そのセンサ出力から識別処理部8の硬貨速度検出部10が硬貨2の通過速度を検出する。電子検銭センサ6を通過した硬貨2は、その後、衝突センサ7に衝突する。その際、衝突センサ7は、その硬貨2の弾性係数に応じたセンサ出力を発生し、識別処理部8の衝突力検知部13にて検知される。
【0036】
硬貨速度検出部10で検知された硬貨2の通過速度は、硬貨衝突速度推定部11に入力されて硬貨2が衝突センサ7に衝突するときの衝突速度が第1の実施の形態の硬貨識別装置1と同様の方法にて推定され、衝突センサ出力補正部12に入力される。衝突センサ出力補正部12は、衝突力検知部13にて検知されたセンサ出力をその推定された衝突速度で補正し、判定部15に送る。
【0037】
以上のように、この第2の実施の形態の硬貨識別装置1aは、硬貨2の通過速度の検出を衝突センサ7に衝突する直前の位置にて行っているため、硬貨衝突速度推定部11で推定する衝突速度と実際に衝突センサ7に衝突するときの衝突速度との誤差を少なくすることができる。
【0038】
また、電子検銭センサ6を、衝突センサ7に衝突した後の硬貨2を検出しない程度まで衝突センサ7に近接配置することで、硬貨速度検出部10で検知した硬貨2の通過速度と実際に衝突センサ7に衝突するときの衝突速度との誤差を実質的に無視することができるまで小さくすることができ、この場合は、硬貨衝突速度推定部11を識別処理部8から省くことができる。
【0039】
この第2の実施の形態の硬貨識別装置1aでは、硬貨2は、硬貨搬送路4,5上を転動していくだけなので、電子検銭センサ6を通過し、衝突センサ7に衝突するまでの挙動が安定しており、したがって、各センサの検出誤差が少なくなって、硬貨2の判定をより高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1の実施の形態の硬貨識別装置の主要部の概略構成を示す側面図である。
【図2】電子検銭センサを硬貨が通過したときのセンサ出力を示す図である。
【図3】電子検銭センサにおける硬貨の通過速度と衝突速度との相関関係を示す図である。
【図4】衝突センサ出力と衝突速度との相関関係を示す図である。
【図5】第2の実施の形態の硬貨識別装置の主要部の概略構成を示す側面図である。
【図6】衝突センサを用いた従来の硬貨識別装置の主要部の概略的な構成例を示す正面図である。
【図7】衝突センサに弾性係数の異なる硬貨が衝突したときのセンサ出力電圧の時間変化を示す図である。
【図8】衝突センサに弾性係数の異なる硬貨が異なる速度で衝突したときのセンサ出力電圧の時間変化を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1,1a 硬貨識別装置
2 硬貨
3 投入口
4,5 硬貨搬送路
6 電子検銭センサ
7 衝突センサ
8 識別処理部
9 特徴検知部
10 硬貨速度検出部
11 硬貨衝突速度推定部
12 衝突センサ出力補正部
13 衝突力検知部
14 基準データ記憶部
15 判定部
16 硬貨収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨の導電率の変化を利用して前記硬貨の特徴を検出する電子検銭センサと、前記硬貨の弾性係数の違いを利用して前記硬貨の材料を検出する衝突センサとを備えた硬貨識別装置において、
前記硬貨が前記衝突センサに衝突するときの硬貨衝突速度を検出する硬貨衝突速度検出手段と、
前記衝突センサのセンサ出力を、前記硬貨衝突速度検出手段によって検出された前記硬貨衝突速度によって補正する衝突センサ出力補正手段と、
を備えていることを特徴とする硬貨識別装置。
【請求項2】
前記硬貨衝突速度検出手段は、前記電子検銭センサが前記硬貨を検出している時間から硬貨速度を検出する硬貨速度検出部と、前記硬貨速度検出部によって検出した前記硬貨速度から前記硬貨が前記衝突センサに衝突するときの前記硬貨衝突速度を推定する硬貨衝突速度推定部とを有していることを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。
【請求項3】
前記硬貨衝突速度推定部は、前記硬貨速度と前記硬貨衝突速度との関係を比例関数によって近似し、前記比例関数を用いて前記硬貨速度から前記硬貨衝突速度を推定するようにしたことを特徴とする請求項2記載の硬貨識別装置。
【請求項4】
前記衝突センサ出力補正手段は、前記硬貨衝突速度と前記衝突センサのセンサ出力との関係を比例関数によって近似し、前記比例関数を用いて前記衝突センサのセンサ出力を前記硬貨衝突速度で補正するようにしたことを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。
【請求項5】
前記硬貨が前記電子検銭センサを通過直後に前記衝突センサに衝突するようなセンサ配置構成を有し、前記硬貨衝突速度検出手段は、前記電子検銭センサが前記硬貨を検出している時間から硬貨速度を検出し、検出した前記硬貨速度を前記硬貨が前記衝突センサに衝突するときの前記硬貨衝突速度としたことを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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