説明

硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】少量のポリオールから、非常に多くの硬質フォームを種々の用途分野へ利用可能にすることができる、硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】a)ポリイソシアネートを、
b)イソシアネート基と反応性がある水素原子を少なくとも有する化合物と、
c)発泡剤の存在下に、
反応させることによる硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
イソシアネート基と反応性がある少なくとも水素原子を有する化合物が、
bi1)スクロース及び/又はソルビトールを用いて開始され、4個を超える官能価及び400〜550mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、少なくとも一種のポリエーテルアルコール。
bi2)TDAを用いて開始され、120〜240mgKOH/gのヒドロキシル価及び6.5〜15質量%の芳香族含有量を有する、少なくとも一種のポリエーテルアルコール、及び/又はTMPを用いて開始され、120〜240mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、ポリエーテルアルコール、並びに
任意に、
bi3)二官能性又は三官能性アルコールを用いて開始され、300〜600mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、少なくとも一種のポリエーテルアルコール、
を含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネートを、イソシアネート基と反応性がある少なくとも二個の水素原子を有する化合物と反応させることによる硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは公知であり、例えば、冷凍装置、温水貯蔵庫、長距離加熱パイプ、又はサンドイッチ要素(sandwich elements)などの構造物等における断熱材に主に用いられている。硬質ポリウレタンフォームの製造及び用途の概要概説は、非特許文献1などに記載されている。
【0003】
これらは、通常、触媒、発泡剤、助剤及び/又は添加剤の存在下に、ポリイソシアネートを、イソシアネート基と反応性がある少なくとも二個の水素原子を有する化合物と反応させることによって製造される。
【0004】
イソシアネート基と反応性がある少なくとも二個の水素原子を有する化合物は、通常、3〜8個の官能価及び200〜700mgKOH/gのヒドロキシル価を有するポリエーテルアルコールからなる。これらは、通常、H−官能性開始物質をアルキレンオキサイドと反応させることによって製造される。開始物質としては、多官能性アルコール及びアミンなどが好ましく用いられる。多官能性アルコールの例としては、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、糖類(ソルビトール、マンチノール又はスクロースなど)である。アミンの例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、トルエンジアミン(TDA)、ジフェニルメタンジアミン(MDA)などの芳香族アミン、適宜これらの高級同族体との混合物などを挙げることができる。
【0005】
異なるポリウレタン体が、硬質ポリウレタンフォームを使用する種々の分野で要求されている。利用できるポリイソシアネートの数には制限があるので、ポリウレタン体の異なる特性は、イソシアネート基と反応性がある少なくとも二個の水素原子を有する化合物を変化させることによってもたらされる。実際には、これは非常に多くのポリエーテルアルコールを利用可能にすることを意味し、これらを混合することによって処理して所望のポリウレタン体を得る。
【0006】
ポリエーテルの各種類のために別々の容器が必要とされ、ポリエーテルアルコールの製造プラントにおいて頻繁に製品変更を実施しなければならないので、通常の多くのポリエーテルアルコールは論理学上の問題を招く。
【0007】
したがって、硬質ポリウレタンフォーム用の組成物の調製を簡単にするために、これまで多くの試みがなされている。
【0008】
特許文献1では、各用途のために適切な混合物を、多くの塩基性ポリールからインライン混合により製造することができる、ポリオール混合物の製造方法が開示されている。特許文献1において開示されている塩基性ポリオールは、工業的に慣用されているが、限定された数の組成物のみ得死蔵できるものである。
【0009】
【特許文献1】EP768325
【非特許文献1】the KunststoffHandbuch,第7巻,Polyurethane,第1版 1966,Dr.R.Vieweg及びDr.A.Hoechtlen編,第2版 1983,Dr. Guenter Oertel編,及び第3版 1993,Dr.Guenter Oertel,Carl Hanser Verlag,Munich,Vienna編
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、少量のポリオールから、非常に多くの硬質フォームを種々の用途分野へ利用可能にすることができる、硬質ポリウレタンフォームの製造方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ポリオールの特性を決定する基本パラメーターはヒドロキシル価、官能価及び粘度である。これらは化合物の開発のために最も重要な指針になるので、当業者は特定の用途のためにポリオールを選択する際にこれらに特に注意を払う。さらに、フォームの機械特性、特に加工特性は、化合物の開発においてさらに改善されるべきである。
【0012】
ポリウレタンの製造において、ポリオール及びイソシアネートの完全な相溶性は得られない。一種の成分の改善された固有の相溶性は適切な混合を補うことができるので、相溶性の向上は信頼性のある処理をもたらす。スクロース及びソルビトールに基づくポリオールにおけるペンタンの溶解性は、比較的低い。状況次第では、特にポリオール混合物中でのペンタン濃度が高く、ペンタンの溶解性が低い場合には、発泡処理の間にフォーム中にボイドの形成をもたらし得る。
【0013】
スクロース及び/又はソルビトールを用いて開始され、4個を超える官能価及び400〜550mgKOH/gのヒドロキシル価を有する少なくとも一種のポリエーテルアルコール、TDA及び/又はTMPを用いて開始され、120〜240mgKOH/gのヒドロキシル価を有する少なくとも一種のポリエーテルアルコール、及び任意にグリセロールを用いて開始され、300〜600mgKOH/gのヒドロキシル価を有するポリエーテルアルコールを含むポリオール混合物が、産業上の要求を最も満たす硬質ポリウレタンフォームの製造用化合物を調製することができることを驚くべきことに見出した。
【0014】
しがたって、本発明は、
a)ポリイソシアネートを、
b)イソシアネート基と反応性がある水素原子を少なくとも有する化合物と、
反応させることによる硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
イソシアネート基と反応性がある水素原子を少なくとも有する化合物が、
bi1)スクロース及び/又はソルビトールを用いて開始され、4個を超える官能価及び400〜550mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、少なくとも一種のポリエーテルアルコール、
bi2)TDAを用いて開始され、120〜240mgKOH/gのヒドロキシル価及び6.5〜15質量%の芳香族含有量を有する、少なくとも一種のポリエーテルアルコール、及び/又はTMPを用いて開始され、120〜240mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、ポリエーテルアルコール、並びに
任意に、
bi3)二官能性又は三官能性アルコールを用いて開始され、300〜600mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、少なくとも一種のポリエーテルアルコール、
を含む混合物bi)を含むことを特徴とする方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
前記反応は、発泡剤、触媒、並びに任意に助剤及び/又は添加剤(難燃剤、気泡安定剤又は賦形剤など)の存在下に行われる。
【0016】
混合物bi)は、イソシアネート基と反応性がある水素原子を少なくとも有する化合物b)の全質量の少なくとも50質量%の量で用いるのが好ましい。特に、上述した成分は、イソシアネート基と反応性を有する水素原子を少なくとも有する他の化合物のさらなる添加をすることなく使用する。
【0017】
ポリオールbi1)、bi2)及びbi3)の単独での使用は、問題があり、使用に適したフォームが得られない。ポリオールbi1)の単独使用の場合、ポリオールbi1)の高い粘度が処理中に問題を招き得る。さらに、ポリオールbi3)のみを用いて製造された硬質フォームの機械特性及び熱安定性は十分ではない。ポリオールbi2)の単独使用では、硬質フォームが得られずに、冷却時に縮小するゴム状の塊が得られる。
【0018】
成分bi1)、bi2)及びbi3)は、混合物bi)が少なくとも300mgKOH/gのヒドロキシル価及び5質量%未満の芳香族含有量を有するような比で用いるのが好ましい。特に、混合物は、25℃で、10000mPa・s未満の粘度を有するべきである。本発明によりポリオールbi1)、bi2)及びbi3)の混合物を用いて、イソシアネート指数100において製造されたフォームは、少なくとも100℃のガラス転移温度(“Properties of Polymers”,D.W.Van Krevelen,Elsevier,第3版,13章において記載されているDMA測定法を用いて決定されたG'対温度曲線から測定する)を有するのが好ましい。
【0019】
イソシアネート基と反応性がある少なくとも二個の水素原子を有する化合物とのポリイソシアネートの反応は、90〜200、特に好ましくは100〜150、特に110〜130のイソシアネート指数で行われるのが好ましい。
【0020】
混合物bi)は、それぞれ混合物bi)の質量に対して、50〜95質量%のポリオールbi1)、5〜50質量%のポリオールbi2)、及び0〜50質量%のポリオールbi3)を含むのが好ましい。
【0021】
ポリオールbi1)、bi2)及びbi3)は、アルキレンオキサイド(通常は、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド又は二種のアルキレンオキサイドの混合物)をH−官能性出発材料へ付加する従来公知の方法により調製することができる。付加反応は、通常、触媒、好ましくは塩基性触媒、特に水酸化カリウムの存在下で行われる。
【0022】
ポリオールbi1)の調製のため、出発材料スクロース及びソルビトールを、適切であれば短鎖アルコール及び又は水との混和物中で、アルキレンオキサイドと反応させる。
【0023】
ポリオールbi2)を、アルキレンオキサイドをトルエンジアミン(TDA)又はTMPに付加することにより調製する。TDAを用いた場合、原理上は、いかなる混合物中であっても全てのTDAの異性体を用いることができる。ビシナルTDA(vicinal TDA)とも言われるTDAのオルト異性体を含む混合物を用いるのが好ましい。ビシナルTDAを用いて調製されたポリオールは、炭化水素を含有する発泡剤への優れた溶媒性を有する。ビシナルTDAを含む混合物は、トルエンジアミン(TDI)の調製におけるTDAの精製において得られる。混合物は、少なくとも80質量%のビシナルTDA、特に好ましくは少なくとも90質量%のビシナルTDA、特に少なくとも95質量%のビシナルTDAを含むのが好ましい。好ましい実施形態において、初めにエチレンオキサイドを、好ましくはアルキレンオキサイドの全量の5〜20質量%の量で、触媒を用いることなくTDAに付加する。次の工程で、プロピレンオキサイドを触媒として水酸化カリウムを用いて付加する。成分bi2)の使用により、成分b)の粘度が減少し、ヒドロキシル価が減じる。ヒドロキシル価の減少は架橋の低下をもたらし、これは材料のガラス転移温度の減少を招く。発泡装置の温度、ひいては発泡の温度が比較的低い場合、複合成分の生成におけるガラス転移温度の減少は、通常は、被覆層へのフォームの付着を改善する。一方、混合物中の成分bi2)の量が多すぎる場合、フォームは柔らかくなりすぎ、高温時の寸法安定性が低い。
【0024】
ポリオールbi3)を、二官能性及び三官能性の出発物質へのアルキレンオキサイド、特にプロピレンオキサイドの付加によって調製する。三官能性出発物質としては、特にグリセロール及びトリメチロールプロパンが用いられる。二官能性出発物質の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールなどである。プロピレンオキサイドの付加反応は、触媒の存在下に、特に触媒として水酸化カリウムを用いて同様に行われる。成分bi3)が非常に低い粘度を有することにより、成分bi3)の使用はポリウレタン混合物の粘度を大きく減じ、これにより流動性が改善される。成分bi3)の場合、ヒドロキシル価を順守することが重要である。ヒドロキシル価が高すぎると、接着性が低下し、フォームの脆性が高くなる。ヒドロキシル価が低すぎると、フォームが柔らかくなり、寸法安定性が低下する。
【0025】
本発明の方法において用いられる他の成分については、下記のものが挙げられる。
【0026】
ポリイソシアネートとしては、通常の脂肪族、脂環式、及び特に芳香族のジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートが用いられる。トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及び特にジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンメチレンポリイソシアネートの混合物(粗MDI)を用いるのが好ましい。また、イソシアネートは、ウレトジオン基、カルバメート基、イソシアヌレート基、カルボジイミド基、アロファネート基、特にウレタン基などによって変性されていてもよい。
【0027】
硬質ポリウレタンフォームを製造するために、粗MDIを使用するのが特に好ましい。種々の適用において、イソシアヌレート基をポリイソシアネートへ組み込むのは有利である。
【0028】
上述したように、本発明のポリオールbi1)、bi2)及びbi3)は、イソシアネート基と反応性がある少なくとも二個の水素原子を有する他のいかなる化合物をも用いずにポリイソシアネートと反応させるのが好ましい。しかしながら、イソシアネート基と反応性がある少なくとも二個の水素原子を有する他の化合物を、好ましくは50質量%以下で使用するのがよい。
【0029】
イソシアネート基と反応性がある少なくとも二個の水素原子を有する他の化合物としては、特に、2〜8個のOH基を有する化合物である。ポリエーテルオール及び/又はポリエステルオールを用いるのが好ましい。硬質ポリウレタンフォームの製造において用いられるポリエーテルオール及び/又はポリエステルオールのヒドロキシル価は、100〜850mgKOH/g、好ましくは200〜600mgKOH/gであり、分子量は、400を超えるのが好ましい。ポリウレタンは、鎖延長剤及び/又は架橋剤を使用して又は使用せずに製造することができる。鎖延長剤及び/又は架橋剤は、特に二官能性、三官能性又は四官能性のアミン及びアルコール、特に400未満、好ましくは60〜300の分子量を有するものが用いられる。
【0030】
混合物のペンタン溶解性を向上させるために、400〜2000の分子量を有するポリウレタングリコールを添加する。
【0031】
発泡剤として、イソシアネート基と反応して二酸化炭素を除去する水を使用することができる。また、物理的な発泡剤も、水と組合わせて、又は好ましくは水に代えて用いることもできる。物理的発泡剤は、出発成分に対して不活性であり、通常は室温で液体であり、且つウレタン反応の条件下で気化する化合物である。これらの化合物の沸点は、好ましくは50℃以下である。また、物理的発泡剤としては、例えば、二酸化炭素、低沸点アルカン及びフルオロアルカンなど、室温で気体であり、加圧下で出発原料中に導入するか溶解する化合物が挙げられる。
【0032】
物理的発泡剤は、通常、少なくとも四個の炭素原子を有するアルカン及びシクロアルカン、ジアルキルエーテル、エステル、ケトン、アセタール、アルキル鎖中に1〜3個の炭素原子を有するテトラアルキルシラン、特にテトラメチルシランよりなる群から選択される。
【0033】
上記の例としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン及びシクロブタン、n−ペンタン、イソペンタン及びシクロペンタン、シクロヘキサン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、ギ酸メチル、アセトン、及び対流圏において分解できるためオゾン層を破壊しないフルオロアルカン(例えば、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン及びヘプタフルオロプロパンなど)である。上述した物理的発泡剤は、単独でもちいてもよく、他のものとの組み合わせで用いてもよい。ペンタン、特にシクロペンタンの異性体を用いるのが好ましい。
【0034】
ポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームは、通常、難燃剤をさらに含む。ハロゲンを含まない難燃剤を用いるのが好ましい。リン含有難燃剤、特にトリスクロロイソプロピルホスファート、ジエチルエタンホスホナート、トリエチルホスファート及び/又はジフェニルクレシルホスファートが特に好ましい。
【0035】
使用する触媒は、特に、イソシアネート基と反応性がある基とイソシアネート基との反応を強く促進させる化合物である。
【0036】
このような触媒は、第3級脂肪族アミン、イミダゾール、アミジン及びアルカノールアミン及び/又は有機金属化合物、特にスズに基づくものなどの強塩基アミンである。
【0037】
イソシアヌレート基を硬質フォームへ組み入れるには、特定の触媒が必要である。用いられるイソシアヌレート触媒は、通常は、金属カルボン酸塩、特に酢酸カリウム及びその溶液である。
【0038】
触媒は、条件にもよるが、単独で用いられてもよく、他のものとの混合物として用いられてもよい。
【0039】
助剤及び/又は添加剤は、表面活性剤、気泡安定剤、気泡調整剤、充填剤、顔料、染料、加水分解抑制剤、静電防止剤、静真菌剤及び静菌性剤など、従来公知のものである。
【0040】
イソシアネートに基づく硬質フォームの製造のため、ポリイソシアネート及びイソシアネート基と反応する少なくとも二個の水素原子を有する化合物を、ポリウレタンフォームの場合ではイソシアネート指数を100〜220、好ましくは115〜180の範囲内で反応させる。硬質ポリウレタンフォームは、公知の混合装置を用いて、回分式又は連続式で製造することができる。
【0041】
また、ポリイソシアヌレートフォームの製造では、>180、好ましくは300〜400の指数が用いられる。
【0042】
出発成分の混合は、公知の混合装置を用いて実施することができる。
【0043】
本発明の硬質PURフォームは、通常、2成分方式によって製造される。この方式において、イソシアネート基と反応性がある少なくとも二個の水素原子を有する化合物、発泡剤、触媒並びに他の助剤及び/又は添加剤を混合してポリオール成分を調製し、これをイソシアネート成分とも言われるポリイソシアネート又はポリイソシアネートの混合物、及び適切であれば発泡剤と反応させる。
【0044】
出発成分を、通常、15〜35℃、好ましくは20〜30℃の温度で混合する。反応混合物は、高圧又は低圧計量装置を用いて混合することができる。
【0045】
当該目的のために用いられる硬質フォームの密度は、10〜400kg/m3、好ましくは20〜200kg/m3、特に30〜100kg/m3であるのが好ましい。
【0046】
本発明の方法を実施するために用いられる出発原料、発泡剤、触媒並びに助剤及び/又は添加剤についてのさらなる説明は、the Kunststoffhandbuch,第7巻,“Polyurethane“Carl−Hanser−Verlag Munich,第1版,1966,第2版,1983及び第3版,1993において記載されている。
【0047】
本発明のポリオール混合物の使用は、広範な特性プロフィール(property profile)を有する硬質ポリウレタンフォームを製造することが可能となる。当該目的のため、これらのポリオールの比は、フォームに要求される特性プロフィールにより上述した制限内で変えることができる。
【0048】
本発明において用いられるポリオール混合物は、ポリイソシアネートとの非常に優れた相溶性、発泡剤、特にシクロペンタンとの向上した溶媒性を有し、等方性気泡構造(isotropic cell structure)を有するフォームが得られる。前記フォームは、割れ目や表面欠陥のない均一な気泡構造を有する。向上した気泡の等方性により、前記フォームは、同じ硬度でより優れた安定性を有する。
【0049】
本発明の方法により製造された硬質フォームは、多くの用途に用いることができる。したがって、これらは、冷凍装置、熱水貯蔵庫又はパイプ断熱材などの回分式フォーム形成、又は、ダブルベルト技術(double belt technology)を用いた複合成分の製造など連続式フォーム形成において使用することができる。
【実施例】
【0050】
本発明を下記実施例により説明する。
【0051】
原料は下記のものを用いた。
【0052】
ポリオール
ポリオールA:ソルビトールへのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=340mgKOH/g、官能価=4.7
ポリオールB:スクロース、ペンタエリスリトール及びジエチレングリコールの混合物へのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=405mgKOH/g、官能価=3.9
ポリオールC:スクロース及びジエチレングリコールの混合物へのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=440mgKOH/g、官能価=4.3
ポリオールD:スクロース及びグリセロールの混合物へのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=400mgKOH/g、官能価=4.5
ポリオールE:プロピレングリコール、ヒドロキシル価=500mgKOH/g、官能価=2
ポリオールF:ビシナルTDAへのエチレンオキサイド、及びその後にプロピレンオキサイドの付加により製造(TDA/エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドの質量比 9.2/8.6/82.2)、ヒドロキシル価=160mgKOH/g、官能価=3.9
ポリオールG:ソルビトールへのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=490mgKOH/g、官能価=5.0
ポリオールH:スクロース及びグリセロールの混合物へのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=490mgKOH/g、官能価=4.3
ポリオールI:TMPへのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=160mgKOH/g、官能価=3.0
ポリオールJ:グリセロールへのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=400mgKOH/g、官能価=3.0
ポリオールK:グリセロールへのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=160mgKOH/g、官能価=3.0
ポリオールL:グリセロールへのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=230mgKOH/g、官能価=3.0
ポリオールM:エチレンジアミンへのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=470mgKOH/g、官能価=4.0
ポリオールN:プロピレングリコール、ヒドロキシル価=105mgKOH/g、官能価=2
ポリオールO:エチレンジアミンへのプロピレンオキサイドの付加により製造、ヒドロキシル価=750mgKOH/g、官能価=4.0

ポリイソシアネート
ポリイソシアネートI:31.5質量%のNCO含有量を有するポリマーMDI(Lupranat(登録商標) M20S,BASF社製)
ポリイソシアネートII:4,4'−MDIから誘導されたプレポリマー、NCO含有量=23質量%(Lupranat(登録商標) MP102,BASF社製)

添加剤
気泡安定剤1:Tegostab(登録商標) B8467(Goldschmidt社製)
気泡安定剤2:Dabco(登録商標) DC193(Air Products社製)
気泡安定剤3:Tegostab(登録商標) B8443(Goldschmidt社製)
気泡安定剤4:Dabco(登録商標) DC5103(Air Products社製)
気泡安定剤5:Tegostab(登録商標) B8404(Goldschmidt社製)
難燃剤:トリスクロロイソプロピルホスファート(TCCP)
難燃剤:トリエチルホスファート(TEP)

触媒:ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)
【0053】
実験例1〜17
表1及び2に記載のポリオール混合物を調製した。イソシアネート溶解性及びペンタン溶解性をポリオール又はポリオール混合物で測定し、これらの混合物から製造されたフォームのガラス転移温度を測定した。混合物の組成及び特性、並びに得られた結果を表1及び2に示す。
【0054】
フォームを既知のポリオール(ポリオールA〜D)から製造するように、実験を設計した(比較例1、4、8及び11)。その後、本発明のポリオールの混合物をポリオールE〜Jを用いて製造し、これにより混合物は既知のポリオールと実質的に同じヒドロキシル価及び官能価を有する(実験例2、3、5、6、7、9、10、12及び13)。混合物のヒドロキシル価及び官能価は、既知のポリオールと最高で10%異なるべきである。したがって、実験例1〜3、4〜7、8〜10及び11〜13が対応する。既知のポリオール及び本発明の混合物から製造したフォームのペンタン溶解性、イソシアネート相溶性、ガラス転移温度及び粘度は、同じ範囲内であることが分かった。実験例14〜17は、本発明によるものではないポリオールK及びLの混合物からの硬質フォームを記載している。比較例14は実験例4、5、6及び7との比較であり、比較例15は実験例1、2及び3との比較であり、比較例16及び17は、実験例11、12及び13との比較である。これらの比較例において用いたポリオール混合物では、より低いペンタン溶解性、イソシアネート相溶性及びガラス転移温度を示すことが分かった。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
ペンタン溶解性の測定
ポリオール50gを100ミリリットルの瓶中に設置した。既定量のシクロペンタンを添加して瓶を密閉し、5分間強く振動させ、瓶を一時間置いた。その後、混合物を視覚的に評価した。混合物が透明で安定であれば、実験をより多量のシクロペンタンで繰り返した。混合物が不透明であれば、実験をより少量のシクロペンタンを用いて繰り返した。当該方法で、混合物中のシクロペンタンの最大濃度を測定した。前記濃度を、ポリオール又はポリオール混合物中の“最大ペンタン溶解性”ともいう。
【0059】
イソシネート相溶性の測定
高分子MDI、例えば、イソシアネートI、及びポリオール又はポリオール混合物は、混和しない。イソシアネートII、プレポリマーは、ポリオール又はポリオール混合物と完全に混和する。イソシアネートI及びIIの混合物は、イソシアネートの割合に基づき、混和することができる。混和性を測定するために、ポリオール1gを4cmの直径を有するクロックガラス(clock glass)に設置した。イソシアネートI及びイソシアネートIIの混合物1gをポリオールに添加し、気泡が形成しないように、混合物を1分間、スパチュラで混合した。1分後に撹拌をやめ、混合物を視覚的に評価した。混合物が不透明な場合、イソシアネートII含有量がより高い混合物を用いて実験を繰り返した。混合物が透明な場合、イソシアネートII含有量がより低い混合物を用いて実験を繰り返した。当該方法において、混合物がまだ透明である混合物中のイソシアネートIの最大濃度を測定した。当該方法の制度は2%である。
【0060】
ガラス転移温度Tgの測定
ポリオール又はポリオール混合物100g、気泡安定剤2.4g、シクロペンタン15g、及び45〜90秒のゲル化時間に必要な量のDMCHAの混合物を調製した。混合物を、100の指数でイソシアネートIとともに発泡させた。必要量を、735mlの容量を有する紙コップ中に設置し、1500分-1で10秒間、撹拌した。発泡が完了した後、フォームを3日間、保管した。その後、フォームの上部から、2mm厚さの薄片を切り出した。58mm×12mmのエッヂ長さ(edge lengths)を有する長方形試料を、前記薄片から切り出した。Rheometric Scientific Ares DMA機器を用いて試料上の温度の関数としてG'を決定した。測定は、1Hzの周波数で実施し、測定を5℃ごとに記録した。ガラス転移温度は、“Properties of Polymers“,D.W.Van Krevelen,Elsevier、第3版、第13章に記載の通りに決定した。
【0061】
実験例18〜30
ポリオール又はポリオール混合物100質量部、2.4質量部の気泡安定剤1、水0.85質量部、シクロペンタンおよびDMCHAを含む混合物を、100の指数でイソシアネート1とともに発泡させた。使用した正確な量を表1に示す。11.4リットルの体積を有する立方体の型中で発泡を実施した。20分後、フォームを取り出し、3日間、保管した。
【0062】
フォームの密度を、ISO845に準拠して決定し、発泡方向に対して平行する圧縮強さと横断する圧縮強さを、ISO604に準拠して測定した。
【0063】
使用した原材料の量及び測定値を表3に記載する。
【0064】
驚くべきことに、既知のポリオールA及びポリオールDからのフォームの機械的特性は、本発明による混合物のものとよく一致することが分かった。
【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
実験例31〜33
表3に示す組成物を二重ベルト装置(double belt plant)の軟質被覆層で処理した。混合成分は、不具合なく優れたフォーム品質を有していた。フォームは、115の指数でイソシアネートIを用いて製造した。
【0068】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリイソシアネートを、
b)イソシアネート基と反応性がある少なくとも水素原子を有する化合物と、
c)発泡剤の存在下に、
反応させることによる硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
イソシアネート基と反応性がある水素原子を少なくとも有する化合物が、
bi1)スクロース及び/又はソルビトールを用いて開始され、4個を超える官能価及び400〜550mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、少なくとも一種のポリエーテルアルコール、
bi2)TDAを用いて開始され、120〜240mgKOH/gのヒドロキシル価及び6.5〜15質量%の芳香族含有量を有する、少なくとも一種のポリエーテルアルコール、又はTMPを用いて開始され、120〜240mgKOH/gのヒドロキシル価を有するポリエーテルアルコール、並びに
任意に、
bi3)二官能性又は三官能性アルコールを用いて開始され、300〜600mgKOH/gのヒドロキシル価を有する少なくとも一種のポリエーテルアルコール、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
混合物bi)が、イソシアネート基と反応性がある水素原子を少なくとも有する混合物b)の全質量の少なくとも50質量%を構成する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合物bi)が、少なくとも300mgKOH/gのヒドロキシル価及び5質量%未満の芳香族含有量を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
混合物bi)が、25℃で10000mPa・s未満の粘度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
混合物bi)が、それぞれ混合物bi)の質量に対して50〜95質量%のポリオールbi1)、5〜50質量%のポリオールbi2)、及び0〜50質量%のポリオールbi3)を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリオールbi2)が、少なくとも80質量%のビシナルトルエンジアミンの含有量を有するトルエンジアミンへのアルキレンオキサイドの付加により製造される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリオールbi2)が、少なくとも90質量%のビシナルトルエンジアミンの含有量を有するトルエンジアミンへのアルキレンオキサイドの付加により製造される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリオールbi2)が、少なくとも95質量%のビシナルトルエンジアミンの含有量を有するトルエンジアミンへのアルキレンオキサイドの付加により製造される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
粗MDIがポリイソシアネートとして用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
炭化水素が発泡剤として用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により製造されてなる硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項12】
イソシアネート指数100において、少なくとも100℃のガラス転移温度を有する請求項11に記載の硬質ポリウレタンフォーム。

【公表番号】特表2008−517115(P2008−517115A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537164(P2007−537164)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010955
【国際公開番号】WO2006/042674
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】