説明

碍子の清掃装置

【課題】 例えば、隧道内を通過する電車によってもたらされる風圧を利用して動力源なしに、自動的に碍子の表面を清掃できる装置を提供する。
【解決手段】 清掃装置1は、皿状碍子Dの上部のキャップに取り付けられる。環状の支持部材2がキャップの外周に固着される。支持部材2に軸周り回転自在に回転部材3が支持される。回転部材3に、碍子に摺接する毛材を有するブラシ4が取り付けられる。回転部材3に、円周方向に等間隔に複数の羽根部材5が取り付けられる。羽根部材5は、風を受けて回転部材3を回転させる。羽根部材5は、必要に応じ回転部材3の半径方向に対して同一回転方向へ所定角度伏倒して固着され、あるいは起立転倒自在または屈折可能に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば隧道内に設置される碍子の表面を通過する電車等による風圧を利用して清掃する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道のき電線あるいは電車線を懸垂する碍子を清掃する装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
この装置は、作業者が碍子に装着して使用される。作業に当たり、停電措置をとり、作業足場を組む必要がある。碍子全体をケースで覆い、その中のノズルから洗浄液を噴射して碍子を洗浄する。洗浄液を飛散させず、廃液を回収できるものである。
【特許文献1】特開平11−273479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、風圧を利用して動力源なしに、自動的に碍子の表面を清掃できる装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明においては、上記課題を解決するため、皿状碍子Dの上部中央に装着されるキャップCの外周に取り付ける清掃装置1を構成する。環状の支持部材2がキャップCの外周に固着される。この支持部材2に軸周り回転自在に回転部材3が支持される。この回転部材3に、碍子Dの表面に摺接する毛材を有するブラシ4が取り付けられる。さらに回転部材3に、円周方向に等間隔に複数の羽根部材5が取り付けられる。羽根部材5は、風を受けて回転部材3を回転させる。羽根部材5は、回転部材3の半径方向に対して同一回転方向へ所定角度伏倒して固着し、あるいは起立転倒自在または屈折可能に取り付けることができるが、多方向からの風圧に対応して効率のよい回転が得られれば、伏倒させる必要はない。
【発明の効果】
【0005】
この発明は、風圧を利用して動力源なしに、自動的に碍子の表面を清掃できる装置を提供する。設置時以外作業者の介在を必要としないから、清掃時に停電措置を講じる必要がない。羽根部材が同一回転方向へ所定角度伏倒している場合には、電車の通過で一方向から風が吹いても装置の両側で風圧が相殺されることなく回転部材が必ず回転する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は清掃装置の斜視図、図2は清掃装置の平面図、図3は図2におけるIII−III断面図である。
図において、Dは皿状の碍子で、上部の中央にほぼ円柱状のキャップCが装着される。清掃装置1はキャップCの外周に支持される。
清掃装置1は、環状の支持部材2、環状の回転部材3、ブラシ4、羽根部材5を具備する。環状の支持部材2は、キャップCの外周に固着される。環状の回転部材3は、支持部材2に軸周り回転自在に支持される。回転部材3には、碍子のDの表面に摺接する毛材4aを有するブラシ4が固着される。羽根部材5は、回転部材3に円周方向に等間隔で複数取り付けられ、風を受けて回転部材3を回転させる。
【0007】
羽根部材5は、回転部材3に支持される取り付け部6と、回転部材の半径方向外側へ延出できる風受け部7とを具備する。取り付け部6は、中間において枢ピン8で回転部材3に枢着され、基端においてガイドピン9で、回転部材3の円弧状ガイド溝10に約45度水平回動自在に係合している。したがって、風受け部7は、回転部材3に対して半径方向へ延出した起立位置と、半径方向に対して同一回転方向へ約45度伏倒した伏倒位置の2位置間で回動する。
【0008】
例えば隧道内に設置された碍子D上の清掃装置1が、電車の通過で一方向から風圧を受けると、風向に対して直交方向に対向する一対の羽根部材5のうちの一方は、伏倒して風圧を逃がすのに対し、他方は起立して風圧を受けるから、回転部材3を回転させる。回転部材3の回転により、ブラシ4の毛材が碍子Dの表面に摺接して付着した塵埃を除去する。通過する電車により起こされる風の向が一定であることが多い隧道内では、対向する一対の羽根部材5のうちの一方が伏倒して風圧を逃がすことが、確実に回転部材3の回転をひき起こすのに有効である。隧道内に設置された碍子Dは、雨に曝されないので塵埃が付着しやすい。このため、本装置が有効に働くが、設置場所は隧道内に限定されるものではない。
【0009】
図4にはこの発明の他の実施形態を示す。図4は清掃装置の平面図である。なお、先の実施形態と同等の構成部には同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
この実施形態においては、羽根部材5の取り付け部6が、基端側において回転部材3に固着される。風受け部7は、基端側において取り付け部6の先端にヒンジ11を介して枢支される。風受け部7は、回転部材3に対して半径方向へ延出する起立位置と、半径方向に対して同一回転方向へ約45度伏倒する伏倒位置の2位置間で、取り付け部6との相互延出角度を自動的に変更できる。
【0011】
図5にはこの発明のさらに他の実施形態を示す。図5は清掃装置の平面図である。なお、先の実施形態と同等の構成部には同一の符号を付して説明を省略する。
【0012】
この実施形態においては、羽根部材5が、回転部材3に固着される。羽根部材5は、全体が回転部材3の半径方向に対して同一回転方向へ約45度伏倒している。
【0013】
いずれの実施形態においても、一方向の風圧に対し、風向に直交する方向に対向する一対の羽根部材5の抵抗が異なる。このため、対向する両側で風圧が相殺されることなく、常に回転部材3を一方向へ回転させ、電車の通過の度ごとに碍子を確実に清掃することができる。
【0014】
なお、この発明の清掃装置は、駆動源としての風圧の発生源を問うものではない。羽根部材5は、回転部材3の半径方向に対して同一回転方向へ伏倒していることを必須条件とするものでもない。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明は、例えば、隧道内を通過する電車によってもたらされる風圧を利用して動力源なしに、自動的に碍子の表面を常時清掃できる清掃装置として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】清掃装置の斜視図ある。
【図2】清掃装置の平面図ある。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】他の実施形態の清掃装置の平面図ある。
【図5】さらに他の実施形態の清掃装置の平面図ある。
【符号の説明】
【0017】
1 清掃装置
2 環状の支持部材
3 回転部材
4 ブラシ
5 羽根部材
6 取り付け部
7 風受け部
8 枢ピン
9 ガイドピン
10 円弧状ガイド溝
11 ヒンジ
D 碍子
C キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿状碍子の上部中央に装着されるほぼ円柱状キャップの外周に固着される環状の支持部材と、この支持部材に軸周り回転自在に支持される環状の回転部材と、この回転部材に取り付けられ碍子の表面に摺接する毛材を有するブラシと、前記回転部材に円周方向に等間隔で複数取り付けられ風を受けて回転部材を回転させる羽根部材とを具備することを特徴とする碍子の清掃装置。
【請求項2】
前記羽根部材が、前記回転部材の半径方向に対して同一回転方向へ所定角度伏倒していることを特徴とする請求項1に記載の碍子の清掃装置。
【請求項3】
皿状碍子の上部中央に装着されるほぼ円柱状キャップの外周に固着される環状の支持部材と、この支持部材に軸周り回転自在に支持される環状の回転部材と、この回転部材に取り付けられ碍子の表面に摺接する毛材を有するブラシと、前記回転部材に円周方向に等間隔で複数取り付けられ風を受けて回転部材を回転させる羽根部材とを具備し、
前記羽根部材は、前記回転部材に支持される取り付け部と、回転部材の半径方向外側へ延出できる風受け部とを具備し、
前記羽根部材の取り付け部は、風受け部を前記回転部材に対して半径方向へ延出させる起立位置と半径方向に対して同一回転方向へ所定角度伏倒させる伏倒位置の2位置間で移動自在に前記回転部材に支持されることを特徴とする碍子の清掃装置。
【請求項4】
皿状碍子の上部中央に装着されるほぼ円柱状キャップの外周に固着される環状の支持部材と、この支持部材に軸周り回転自在に支持される環状の回転部材と、この回転部材に取り付けられ碍子の表面に摺接する毛材を有するブラシと、前記回転部材に円周方向に等間隔で複数取り付けられ風を受けて回転部材を回転させる羽根部材とを具備し、
前記羽根部材は、基端側において前記回転部材に固定される取り付け部と、回転部材の半径方向外側へ延出できる風受け部とを具備し、
前記風受け部は、前記回転部材に対して半径方向へ延出する起立位置と半径方向に対して同一回転方向へ所定角度伏倒する伏倒位置の2位置間で相互延出角度を変更できるように、基端側において前記取り付け部の先端側に結合されることを特徴とする碍子の清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−24410(P2006−24410A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200310(P2004−200310)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】