説明

碍子用梱包具

【課題】碍子の使用個数の変動に対応可能で汎用性を高めた梱包具10を提供する。
【解決手段】本発明の碍子用梱包具10は、中心軸方向に連結された複数の碍子11を梱包するものであり、1又は複数の碍子11の外周を取り囲む筒形状の梱包具本体17と、複数の梱包具本体17を碍子11の中心軸X方向に連結する第1の連結手段39と、を備える。複数の梱包具本体17は、同じ個数の碍子11の外周を囲むように互いに同一形状に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬や保管等のために碍子を梱包する碍子用梱包具に関する。
【背景技術】
【0002】
電柱や鉄塔と電線との間を絶縁するために使用される碍子は、例えば電柱設置工事や不良碍子の取替工事等を行う際に、梱包材によって梱包された状態で現地に搬送される。従来、梱包材として複数枚の帯板状の木材を筒状に組んだものが使用されていたが、腐食し易く、耐久性も低いために専ら一度の使用で廃材として焼却処分されていた。
【0003】
しかし、一度の使用で焼却したのでは、焼却費などの処理コストが増大して経済性に欠け、環境保全の観点からも好ましくない。そのため、繰り返しの使用が可能で、資源の有効利用及び廃材処理コストの節約を図った懸垂碍子の梱包容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載の梱包容器は、合成樹脂等の耐腐食性材料からなり、中心軸方向に連なった複数個の碍子にわたる長さを有する複数枚の板材を備え、これら板材の一側縁に第1係合部を形成するとともに、他側縁に第1係合部と着脱可能及び回動可能に係合する第2係合部を設け、複数枚の板材をそれらの両側縁の第1係合部と第2係合部との係合により順次連結することによって多角筒状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−120358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の梱包容器は、合成樹脂製の板材から形成されることによって腐食し難くなっているので、繰り返しの使用が可能である。また、第1係合部と第2係合部とを離脱することができるので、不使用時には板材を分解して積み重ねることで、狭いスペースでも保管することができるという利点もある。
【0007】
しかしながら、この梱包容器は、決まった個数の碍子しか梱包することができず、汎用性が低いという欠点がある。一般に、碍子は、電圧階級や設計条件等によって使用個数が異なっているが、特許文献1の技術では、碍子の使用個数に応じた多く種類の梱包容器が必要となり、種類毎に長さの異なる板材を組み合わせて梱包容器を製造しなければならないので、製造コストが高くなるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の梱包容器は、分解の際に、全ての板材の第1係合部と第2係合部とを完全に離脱しなければならず、また、梱包容器を組み立てる際にも、分解された全ての板材を連結しなければならない。そのため、梱包容器の分解・組立に非常に手間がかかるという問題もある。
【0009】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、碍子の使用個数の変動に対応可能な汎用性の高い梱包具を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、中心軸方向に連結された複数の碍子を梱包するための梱包具であって、
1又は複数の碍子の外周を取り囲む筒形状の梱包具本体と、
複数の梱包具本体を碍子の中心軸方向に連結する第1の連結手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の碍子用梱包具によれば、碍子の使用個数に応じて複数の梱包具本体を碍子の中心軸方向に連結することができる。そのため、碍子の使用個数に対応する多くの種類の梱包具を製造する必要が無くなり、製造コストを低減することができるとともに、梱包具の汎用性を高めることができる。
【0012】
前記梱包具は、互いに異なった個数の碍子を取り囲む異なる大きさの複数の梱包具本体、例えば、1個の碍子の外周を取り囲む梱包具本体と、2個の碍子の外周を取り囲む梱包具本体とを連結することによって構成することも可能である。しかし、この場合、2種類の梱包具本体が必要であるため、製造コスト低減の効果が低い。
そのため、前記複数の梱包具本体は、互いに同数の碍子の外周を取り囲むように同一形状に形成されていることがより好ましい。これにより、1種類の梱包具本体で、碍子の使用個数の変動にも対応することができ、より製造コストの低減効果を高めることができる。
【0013】
前記梱包具本体は、多角形の筒形状に配設される複数の板状の梱包部材と、隣接する梱包部材の側縁部同士を連結する第2の連結手段及び第3の連結手段とを備え、
前記第2の連結手段が、少なくとも1組の隣接する梱包部材を着脱可能に連結し、
前記第3の連結手段が、他の隣接する梱包部材を互いに重ね合わせることができる回動範囲で回動自在に連結していることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第2の連結手段による連結を解除することによって、梱包具を展開することができ、第3の連結手段によって隣接する梱包部材を互いに重ね合わせて折り畳むことができる。したがって、不使用時等に、梱包具をコンパクトに収納することが可能となる。
【0015】
前記第2の連結手段は、隣接する梱包部材の一方に設けられた係合部材と、他方に回動可能に取り付けられると共に前記係合部材に係脱自在に係合する被係合部材とから構成されていることが好ましい。
この構成によって、第2の連結手段による梱包部材の連結とその解除とを簡単且つ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の碍子用梱包具によれば、碍子の使用個数の変動に対応可能であり、汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る梱包具の斜視図である。
【図2】同梱包具の正面断面図である。
【図3】第3の連結手段を示す斜視図である。
【図4】第3の連結手段を示す断面図である。
【図5】第2の連結手段を示す断面図である。
【図6】梱包具を折り畳んだ状態を示す正面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る梱包具の斜視図である。
【図8】懸垂碍子の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る梱包具10の斜視図、図2は、同梱包具10の正面断面図である。
本実施形態の梱包具10は、図8に示すような懸垂碍子11を梱包するために使用される。この懸垂碍子11は、傘形状に形成された磁器製の碍子本体12と、この碍子本体12の中心軸X上において碍子本体12の上部に接着された上連結具13と、同じく中心軸X上において碍子本体12の下部に接着された下連結具14とを備えている。そして、一の懸垂碍子11の上連結具13と、他の懸垂碍子11の下連結具14とを連結ピン等によって連結することによって、複数個の懸垂碍子11を中心軸X方向に連結することができる。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態の梱包具10は、互いに連結された複数個の懸垂碍子11(以下、「懸垂碍子群16」ともいう)を梱包するものである。具体的に、梱包具10は、懸垂碍子群16中の1個の懸垂碍子11の外周を取り囲む筒形状の梱包具本体17を備えており、この梱包具本体17の複数個(図示例では5個)を第1の連結手段39によって中心軸X方向に連結することによって構成されている。
【0020】
梱包具本体17は、合成樹脂や軽金属等の耐腐食性材料によって略矩形状に形成された6枚の梱包板(梱包部材)19を六角筒状に配設し、隣接する梱包板19を第2、第3の連結手段21,20で連結することによって構成されている。具体的に、図2に示すように、6枚の梱包板19のうち、一組の隣接する梱包板19の対向する側縁部同士が、第2の連結手段21によって連結され、他の梱包板19の対向する側縁部同士が、第3の連結手段20によって連結されている。
【0021】
図3は、第3の連結手段20を示す斜視図、図4は、第3の連結手段20を示す断面図である。第3の連結手段20は、連結具23と、連結ピン24とを備えている。連結ピン24は、梱包板19の側縁部をコの字状に切り欠いた凹部25に架設され、中心軸Xと平行に配置されている。連結具23は、直方体形状のブロック片に、連結ピン24を挿通可能な2個の挿通孔27を互いに平行に形成したものとなっている。また、連結具23は、2つの分割体28A,28Bをネジ29で連結することによって構成されており、2つの分割体28A,28Bを分解することで2個の挿通孔27が開放され、挿通孔27に連結ピン24を挿入することが可能となっている。なお、本実施形態では挿通孔27が長孔状に形成されており、これによって挿通孔27を開放したときに連結ピン24を挿通孔27内に挿入しやすくなっている。ただし、挿通孔27は円形であってもよいし、四角形等の多角形や楕円形であってもよい。
【0022】
図5は、第2の連結手段21を示す断面図である。第2の連結手段21は、連結具31と、連結ピン32とを備えている。連結ピン32は、前述した第3の連結手段20の連結ピン24と全く同じ構造である。連結具31は、連結ピン32が挿通可能な挿通孔33を備えており、隣接する2枚の梱包板19のうち、一方の梱包板19の連結ピン32が挿通孔33に挿入されている。これにより、当該一方の梱包板19に連結具31が回動自在に取り付けられている。
【0023】
また、連結具(被係合部材)31は、隣接する2枚の梱包板19のうち、他方の梱包板19の連結ピン(係合部材)32に対して係脱自在に係合する係合フック35を備えている。この係合フック35を連結ピン32に係合させることにより、2枚の梱包板19を容易に連結することができ、また、2枚の梱包板19の連結を容易に解除することができる。
【0024】
図1及び図2に示すように、各梱包板19の中央部には、嵌合溝(嵌合孔)37が形成されており、この嵌合溝37には懸垂碍子11の外周部が嵌合されている。これによって、懸垂碍子11が梱包具本体17によって保持され、特に、懸垂碍子11が梱包具本体17から中心軸X方向に抜け落ちるのを防止することができる。
【0025】
図1に示すように、中心軸X方向に隣接する梱包具本体17は、第1の連結手段39によって連結されている。この第1の連結手段39は、図3に示すように、連結具40と、連結ピン41とを備えている。連結ピン41は、前述の連結ピン24と全く同じ構造であり、中心軸X方向に隣接する梱包板19の対向する側縁部に形成された凹部42(図1参照)に架設され、中心軸Xと直交する方向に配置されている。連結具40についても、前述の連結具23と全く同じ構造であり、2つの挿通孔27に連結ピン41を挿入することによって、中心軸X方向に隣接する梱包具本体17が互いに連結される。
【0026】
以上の構成において、本実施形態の梱包具10は、複数の梱包具本体17を中心軸X方向に連結することによって構成されている。全ての梱包具本体17は同じ構造であり、それぞれ1個の懸垂碍子11の外周を囲うように構成されている。したがって、懸垂碍子群16を構成する懸垂碍子11の個数に応じた数の梱包具本体17を連結すれば、当該懸垂碍子群16に適合した梱包具10を形成することができる。そのため、懸垂碍子11の使用個数毎に専用の梱包具10を製造する必要が無くなり、製造コストの低減を図ることができる。
【0027】
また、梱包具本体17を構成する各梱包板19は、第3の連結手段20によって回動自在に連結されており、さらに、一組の隣接する梱包板19は、第2の連結手段21によって着脱自在(係脱自在)に連結されている。したがって、この第2の連結手段21による連結を解除することによって梱包具10を展開し、懸垂碍子11を容易に取り出すことができる。
また、図5に示すように、第2の連結手段21は、連結ピン32と係合フック35との係合構造を用いているので、隣接する梱包板19同士の連結とその解除とを簡単且つ迅速に行うことができる。
【0028】
さらに、図6に示すように、第2の連結手段21による連結を解除した状態で、第3の連結手段20を介して隣接する梱包板19を回動させ、互いに重ね合わせることによって、梱包具10全体を折り畳むことができる。これにより、梱包具10の不使用時等にコンパクトに収納することができる。
【0029】
再度、梱包具10によって、懸垂碍子群16を梱包するには、折り畳まれた状態の梱包具10を拡げ、その上に懸垂碍子群16を載せた後、梱包板19によって懸垂碍子群16の外周を取り囲み、両端の梱包板19の側縁部同士を第2の連結手段21によって連結すればよい。これにより、簡単に梱包具10を組み立てることができる。
【0030】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る梱包具10の斜視図である。
本実施形態では、2つの梱包具本体17が中心軸X方向に連結され、各梱包具本体17は、2個の懸垂碍子11の外周を取り囲むことができる中心軸X方向の長さを有している。その他の構成は、第1の実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。
本実施形態では、特に偶数個の懸垂碍子11を連結してなる懸垂碍子群16を梱包するために好適に利用することができる。
【0031】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能であり、例えば、以下のように構成することができる。
(1)上記実施形態では、6枚の梱包板19の側縁部のうち、1箇所を着脱可能な第2の連結手段21によって連結しているが、全ての側縁部を第3の連結手段20によって連結しても良い。この場合、図4に示すようにネジ29を取り外すことによって挿通孔27を開放し、挿通孔27から連結ピン24を離脱させることにより、梱包を解くことができる。
【0032】
(2)上記実施形態では、梱包具本体17が6枚の梱包板19によって六角筒形状に形成されているが、碍子11の外周を取り囲むことができる構造であれば、梱包板19の枚数や形状は特に限定されるものではない。
【0033】
(3)上記実施形態の梱包具10は、懸垂碍子11を梱包するものとして説明したが、長幹碍子などの他の碍子の梱包にも本発明の梱包具10を適用することができる。
【0034】
(4)第1の実施形態の梱包具本体17は1個の懸垂碍子11の外周を取り囲む大きさに形成され、第2の実施形態の梱包具本体17は2個の懸垂碍子11の外周を取り囲む大きさに形成されているが、梱包具本体17は、3個以上の懸垂碍子11の外周を取り囲む大きさに形成されていてもよい。また、異なる大きさの梱包具本体17同士、例えば、第1実施形態の梱包具本体17と、第2実施形態の梱包具本体17とを第1の連結手段39によって連結することで、梱包具10を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
10: 梱包具
11: 懸垂碍子
16: 懸垂碍子群
17: 梱包具本体
19: 梱包板(梱包部材)
20: 第3の連結手段
21: 第2の連結手段
31: 連結具(被係合部材)
32: 連結ピン(係合部材)
39: 第1の連結手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸方向に連結された複数の碍子を梱包するための梱包具であって、
1又は複数の碍子の外周を取り囲む筒形状の梱包具本体と、
複数の梱包具本体を碍子の中心軸方向に連結する第1の連結手段と、を備えていることを特徴とする碍子用梱包具。
【請求項2】
前記複数の梱包具本体が互いに同一形状に形成されている請求項1に記載の碍子用梱包具。
【請求項3】
前記梱包具本体は、多角形の筒形状に配設される複数の板状の梱包部材と、隣接する梱包部材の側縁部同士を連結する第2の連結手段及び第3の連結手段とを備え、
前記第2の連結手段が、少なくとも1組の隣接する梱包部材を着脱可能に連結し、
前記第3の連結手段が、他の隣接する梱包部材を互いに重ね合わせることができる回動範囲で回動自在に連結している請求項1又は2に記載の碍子用梱包具。
【請求項4】
前記第2の連結手段が、隣接する梱包部材の一方に設けられた係合部材と、他方に回動可能に取り付けられると共に前記係合部材に係脱自在に係合する被係合部材とから構成されている請求項3に記載の碍子用梱包具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−140322(P2011−140322A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1404(P2010−1404)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】