磁力反発を利用したマイクロニードルアレイ投与装置
【課題】簡便で使いやすく、弾力性ある皮膚に確実にマイクロニードルアレイを投与する装置と方法を提供する。
【解決手段】本発明のマイクロニードルアレイを皮膚に投与する装置は、固定部磁石と衝撃体磁石の反発を利用してマイクロニードルアレイ裏面を衝撃し、マイクロニードルを皮膚に刺入させるものである。本発明の第１の態様は、固定部磁石と衝撃体磁石が共に永久磁石から成り、両磁石を接近させてトリガを外して衝撃体磁石によりマイクロニードルアレイ裏面を衝撃する。本発明の第２の態様は、固定部磁石として電磁石を用い、コイルに電流を流した瞬間に生じる反発力を利用して衝撃体磁石によりマイクロニードルアレイ裏面を衝撃する。永久磁石としては、ネオジウム磁石を好適に用いることができる。
【解決手段】本発明のマイクロニードルアレイを皮膚に投与する装置は、固定部磁石と衝撃体磁石の反発を利用してマイクロニードルアレイ裏面を衝撃し、マイクロニードルを皮膚に刺入させるものである。本発明の第１の態様は、固定部磁石と衝撃体磁石が共に永久磁石から成り、両磁石を接近させてトリガを外して衝撃体磁石によりマイクロニードルアレイ裏面を衝撃する。本発明の第２の態様は、固定部磁石として電磁石を用い、コイルに電流を流した瞬間に生じる反発力を利用して衝撃体磁石によりマイクロニードルアレイ裏面を衝撃する。永久磁石としては、ネオジウム磁石を好適に用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は皮膚表層及び／又は皮膚角質層に修飾効果及び／又は機能効果を与えるためのマイクロニードルアレイを皮膚に投与する装置と投与する方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
薬物を人の体内に投与する手法として、経口的投与と経皮的投与がよく用いられている。注射は代表的な経皮的投与法である。しかし、注射は医師・看護師のような専門家の手を煩わせねばならず、苦痛を伴い、更にエイズやＢ型肝炎などの感染もあり得る、多くの人にとって歓迎すべからざる手法である。これに対し、最近マイクロニードルアレイを利用した、苦痛を伴わない経皮的投与法が注目されてきた（特許文献１）。
【０００３】
薬物の経皮的投与のさい皮膚角質層は薬物透過のバリアとして働き、単に皮膚表面に薬物を塗布するだけでは透過性は必ずしも十分ではない。これに対し微小な針、すなわちマイクロニードルを用いて角質層を穿孔することにより、塗布法より薬物投与効率を格段に向上させることができる。このマイクロニードルを基板上に多数集積したものがマイクロニードルアレイである。特に、糖質などの体内で代謝により消失する基材を用いてマイクロニードルを作成すれば、仮にニードルが折れ皮膚内に残存したとしても事故とはならない。そればかりか、糖質中に薬物を含ませておくならば刺入されたマイクロニードルが体内で溶解されることにより、容易に薬物を皮内や皮下に投与することができる（特許文献２）。
【０００４】
しかし一般に皮膚は柔軟であり、マイクロニードルアレイを皮膚に投与するさい、マイクロニードルアレイを指で押さえるだけでは皮膚の強い弾力性に妨げられ、容易にマイクロニードルを皮膚内に刺入することはできない。
弾力性ある皮膚にマイクロニードルアレイを投与するには、マイクロニードルアレイを高速で皮膚にたたきつけることが必要である。この方法として、これまで、ばね（特許文献３）や空気圧（特許文献４）などの利用が提案されてきた。ばねは、引き金までばねを圧縮するのにかなりの力を要し、女性や小児には使用が困難である。空気圧の利用にはポンプが必要で、装置が大型化し、簡便とは言えずまた高価となる。このように従来のマイクロニードルアレイ投与装置は実用上欠陥を有しており、利用者からはより簡便でかつ刺入が確実に実現できる装置が求められていた。
【先行技術文献】
【０００５】
【特許文献１】特表２００２−５１７３００号公報（要約、［００２０］、図１）
【特許文献２】特開２００３−２３８３４７号公報（要約、［０００７］、図７）
【特許文献３】特表２００６−５００９７３号公報（［００３５］、［００３７］、図４、図６）
【特許文献４】同上（［００３８］、図７）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明が解決しようとする課題は、弾力性ある皮膚に確実にマイクロニードルアレイを投与できる簡便で使いやすい装置と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記課題を解決するためになされた本発明に係わるマイクロニードルアレイ投与装置は、磁力による反発を利用したことを特徴とする。より詳細には固定部と衝撃体との２つの磁石を必須とし、固定部は永久磁石もしくは電磁誘導による磁石を用い、衝撃体には永久磁石を用いることを特徴とする。
【０００８】
本発明のマイクロニードルアレイを皮膚に投与する装置は、固定部に永久磁石を用いる場合は（１）永久磁石と（２）マイクロニードルアレイの裏面を衝撃してマイクロニードルアレイを皮膚に投与させる衝撃体永久磁石と（３）前２者を定められた位置に固定しまた近接させるためのハウジングと、（４）トリガーとからなることを特徴とする。
【０００９】
固定部、衝撃部に永久磁石を使用する場合は同じ極同士（ＮとＮ極、もしくはＳとＳ極）を近接させ強い反発力を利用するのが好都合である。両磁石面を２ｍｍ以内に近接させた状態でトリガーによりその状態を維持させ、トリガーを外すことにより衝撃部磁石を急速に移動させマイクロニードルアレイを衝撃する。用いる永久磁石は表面磁束密度が４００ｍＴ以上の磁石が望ましい。
また、固定部磁石及び衝撃体磁石はステンレス線などにより接続されていることが望ましい。これにより衝撃体磁石が急速移動してもハウジングを飛び出すことなく止まり、かつ固定部磁石を右方（図参照）に戻すと線に引かれた衝撃部磁石が元に位置に戻り速やかな次回の衝撃操作に移ることができる効果を生じている。
【００１０】
本発明のマイクロニードルアレイを皮膚に投与する装置は、固定部に電磁誘導磁石を用いる場合は、（１）電流を流すことにより電磁誘導磁石となるコイルと、（２）コイルに電流が流れたときコイル内へ引き込まれるか、又はコイル外へ反発とびだし、マイクロニードルアレイの裏面を衝撃してマイクロニードルアレイを皮膚に投与させる衝撃体永久磁石と、（３）電源と、（４）電源を駆動するスイッチとを有することを特徴とする。
電源を駆動するスイッチをオンにすると、コイルに電流が流れて磁界が発生し、その瞬間に衝撃体に電磁誘導による力が作用し、衝撃体がマイクロニードルアレイを衝撃する。電源としては直流電源若しくはパルス電源を用いることができる。
【００１１】
衝撃体および固定部磁石に用いる永久磁石としては、アルニコ磁石やネオジウム磁石を好適に用いることができる。ネオジウム磁石はアルニコ磁石より強力な駆動力を得ることができ、より有利である。
【００１２】
衝撃体がマイクロニードルアレイを押し込む押し込み力としては、０．４Ｎ以上１００Ｎ以下の力が適当である。これより力が弱くてはマイクロニードルアレイを皮膚に刺入させることが困難であり、これより強くてはマイクロニードルアレイが破損するおそれがある。
【００１３】
投与の際、マイクロニードルアレイはハウジングの皮膚側に保持しても良いし、あるいは単に皮膚上においておくだけでも良い。両磁石を保持するハウジングの皮膚に面した端面に、両面に粘着剤を塗布された両面テープ、あるいは片面のみに粘着剤を塗布された片面テープを装着することにより、マイクロニードルアレイを好適に保持することができる。また，マイクロニードルアレイを挟み込むようにしても良い。
【発明の効果】
【００１４】
磁石の反発力は、動作が迅速確実でかつ装置が簡便軽量である。
本発明の装置又は方法は、装置が小型軽量であるにもかかわらず瞬間的な衝撃力を発生させることができ、女性や小児にも容易に利用できる。これによりマイクロニードルアレイの利用が一層容易かつ便利になると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】永久磁石２個を使用した投与装置の概略図。
【図２】永久磁石１個とコイルを使用した投与装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
次に、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例１】
【００１７】
永久磁石２個を使用するマイクロニードルアレイの投与装置の一例を図１に示す。
アルミニウム製のハウジング（３）には、衝撃体ネオジウム磁石及び固定部ネオジウム磁石が内部で移動可能な円筒状空隙（内直径はそれぞれ１１ｍｍ及び２７ｍｍ）を設けた。永久磁石としてネオジウム磁石（衝撃体（７）：直径１０ｍｍｘ長さ３０ｍｍ、固定部（８）：直径２５ｍｍｘ長さ１５ｍｍ：（株）サンギョウサプライ製）を使用した。固定部ネオジウム磁石（８）を空隙の左端に押し付けるための取っ手（４）を設け下端（６）はハウジングに回転可能な状態で止めた。衝撃体ネオジウム磁石（７）は細い空隙の右端に置かれ、左側への移動はトリガー（５）によって妨げられている。両ネオジウム磁石は直径０．５ｍｍ長さ４ｃｍｍのステンレス線によって結ばれている。それぞれの磁石の方向は同じ極が向き合うように設置する。ハウジング（３）の先端部（９）には両面テープを張り、粘着層付保護フィルム（１２）（直径２０ｍｍ、円形）を保持する。保護フィルムの中央部にはマイクロニードルアレイ（１３）（直径１０ｍｍ、円形）がある。
【００１８】
取っ手（４）をハウジング（３）の柄に近づけるように圧迫すると固定部ネオジウム磁石（８）は空隙左端に移動し衝撃体ネオジウム磁石（７）に対し強い反発力を生じる。この状態でトリガー（５）を引くと、衝撃体ネオジウム磁石（７）の固定が外れ、固定部ネオジウム磁石（８）との反発力のため空隙左端に急速に移動しマイクロニードルアレイ（１３）の裏面を衝撃する。トリガーを引くとき、投与装置の先端部（９）を皮膚から５ｍｍ程度離しておくと，衝撃体ネオジウム磁石（７）の速度、運動量はマイクロニードルを皮膚に刺すに十分なものとなる。このときの衝撃体ネオジウム磁石がマイクロニードルアレイを衝撃する力は約５Ｎと推定される。
この衝撃によりマイクロニードルが人体皮膚内に確実に刺入されることを確認した。
【実施例２】
【００１９】
永久磁石１個と電磁誘導磁石１個を使用するマイクロニードルアレイの投与装置の一例を図２に示す。
内径１２ｍｍ、長さ６ｃｍのプラスチック芯（１０）上に直径０．５ｍｍの被覆銅線を巻き付けコイル（１１）を作成した。巻き付け後のコイルの厚さは約８ｍｍであった。プラスチック芯の一端（図２の左側）は内径１８ｍｍに広げ、粘着層付保護フィルム（１２）をはめ込んでマイクロニードルアレイ（１３）を確実に保持できる構造とした。このようにすることでマイクロニードルを確実に保持すると共に、衝撃によりマイクロニードルアレイを確実に皮膚に刺入できる。
プラスチック芯は支持部により保持される。支持部には２４Ｖの直流電源（１５）と、直流電源を駆動するためのスイッチ（１６）が設けられている。
【００２０】
プラスチック芯（１０）内に円筒形の衝撃体ネオジウム磁石（７）（直径１０ｍｍ×長さ１３ｍｍ：（株）サンギョウサプライ製）を設置した。プラスチック芯の広げられた端にマイクロニードルアレイ（１３）（直径１０ｍｍ、円形、長さ８００μｍのヒアルロン酸製マイクロニードル１２０本付）を保持し、マイクロニードルアレイを皮膚から約５ｍｍ離して皮膚と並行に保持した。スイッチ（１６）をオンにしてコイルに直流電源（１５）から２４Ｖの直流電圧を印加した。電流値は約２Ａであった。コイルは電磁誘導磁石となり、衝撃体ネオジウム磁石（７）は反発により急速に皮膚側に移動し、マイクロニードルアレイ（１３）の裏面を衝撃し、それによりマイクロニードルは皮膚に刺入された。この際の衝撃体ネオジウム磁石がマイクロニードルアレイを衝撃する力は、約２Ｎと推定される。
この衝撃によりマイクロニードルが人体皮膚内に確実に刺入されることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【００２１】
本発明によるマイクロニードルアレイの投与装置は、医療や美容の分野において広く利用されるものと期待される。
【符号の説明】
【００２２】
３……ハウジング
４……取っ手
５……トリガー
７……衝撃体磁石
８……固定部磁石
９……マイクロニードルアレイを保持するハウジング先端部
１０……プラスチック芯
１１……プラスチック芯に巻き付けたコイル
１２……マイクロニードル保護テープ
１３……マイクロニードルアレイ
１５……直流電源
１６……スイッチ
１７……皮膚
【技術分野】
【０００１】
本発明は皮膚表層及び／又は皮膚角質層に修飾効果及び／又は機能効果を与えるためのマイクロニードルアレイを皮膚に投与する装置と投与する方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
薬物を人の体内に投与する手法として、経口的投与と経皮的投与がよく用いられている。注射は代表的な経皮的投与法である。しかし、注射は医師・看護師のような専門家の手を煩わせねばならず、苦痛を伴い、更にエイズやＢ型肝炎などの感染もあり得る、多くの人にとって歓迎すべからざる手法である。これに対し、最近マイクロニードルアレイを利用した、苦痛を伴わない経皮的投与法が注目されてきた（特許文献１）。
【０００３】
薬物の経皮的投与のさい皮膚角質層は薬物透過のバリアとして働き、単に皮膚表面に薬物を塗布するだけでは透過性は必ずしも十分ではない。これに対し微小な針、すなわちマイクロニードルを用いて角質層を穿孔することにより、塗布法より薬物投与効率を格段に向上させることができる。このマイクロニードルを基板上に多数集積したものがマイクロニードルアレイである。特に、糖質などの体内で代謝により消失する基材を用いてマイクロニードルを作成すれば、仮にニードルが折れ皮膚内に残存したとしても事故とはならない。そればかりか、糖質中に薬物を含ませておくならば刺入されたマイクロニードルが体内で溶解されることにより、容易に薬物を皮内や皮下に投与することができる（特許文献２）。
【０００４】
しかし一般に皮膚は柔軟であり、マイクロニードルアレイを皮膚に投与するさい、マイクロニードルアレイを指で押さえるだけでは皮膚の強い弾力性に妨げられ、容易にマイクロニードルを皮膚内に刺入することはできない。
弾力性ある皮膚にマイクロニードルアレイを投与するには、マイクロニードルアレイを高速で皮膚にたたきつけることが必要である。この方法として、これまで、ばね（特許文献３）や空気圧（特許文献４）などの利用が提案されてきた。ばねは、引き金までばねを圧縮するのにかなりの力を要し、女性や小児には使用が困難である。空気圧の利用にはポンプが必要で、装置が大型化し、簡便とは言えずまた高価となる。このように従来のマイクロニードルアレイ投与装置は実用上欠陥を有しており、利用者からはより簡便でかつ刺入が確実に実現できる装置が求められていた。
【先行技術文献】
【０００５】
【特許文献１】特表２００２−５１７３００号公報（要約、［００２０］、図１）
【特許文献２】特開２００３−２３８３４７号公報（要約、［０００７］、図７）
【特許文献３】特表２００６−５００９７３号公報（［００３５］、［００３７］、図４、図６）
【特許文献４】同上（［００３８］、図７）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明が解決しようとする課題は、弾力性ある皮膚に確実にマイクロニードルアレイを投与できる簡便で使いやすい装置と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記課題を解決するためになされた本発明に係わるマイクロニードルアレイ投与装置は、磁力による反発を利用したことを特徴とする。より詳細には固定部と衝撃体との２つの磁石を必須とし、固定部は永久磁石もしくは電磁誘導による磁石を用い、衝撃体には永久磁石を用いることを特徴とする。
【０００８】
本発明のマイクロニードルアレイを皮膚に投与する装置は、固定部に永久磁石を用いる場合は（１）永久磁石と（２）マイクロニードルアレイの裏面を衝撃してマイクロニードルアレイを皮膚に投与させる衝撃体永久磁石と（３）前２者を定められた位置に固定しまた近接させるためのハウジングと、（４）トリガーとからなることを特徴とする。
【０００９】
固定部、衝撃部に永久磁石を使用する場合は同じ極同士（ＮとＮ極、もしくはＳとＳ極）を近接させ強い反発力を利用するのが好都合である。両磁石面を２ｍｍ以内に近接させた状態でトリガーによりその状態を維持させ、トリガーを外すことにより衝撃部磁石を急速に移動させマイクロニードルアレイを衝撃する。用いる永久磁石は表面磁束密度が４００ｍＴ以上の磁石が望ましい。
また、固定部磁石及び衝撃体磁石はステンレス線などにより接続されていることが望ましい。これにより衝撃体磁石が急速移動してもハウジングを飛び出すことなく止まり、かつ固定部磁石を右方（図参照）に戻すと線に引かれた衝撃部磁石が元に位置に戻り速やかな次回の衝撃操作に移ることができる効果を生じている。
【００１０】
本発明のマイクロニードルアレイを皮膚に投与する装置は、固定部に電磁誘導磁石を用いる場合は、（１）電流を流すことにより電磁誘導磁石となるコイルと、（２）コイルに電流が流れたときコイル内へ引き込まれるか、又はコイル外へ反発とびだし、マイクロニードルアレイの裏面を衝撃してマイクロニードルアレイを皮膚に投与させる衝撃体永久磁石と、（３）電源と、（４）電源を駆動するスイッチとを有することを特徴とする。
電源を駆動するスイッチをオンにすると、コイルに電流が流れて磁界が発生し、その瞬間に衝撃体に電磁誘導による力が作用し、衝撃体がマイクロニードルアレイを衝撃する。電源としては直流電源若しくはパルス電源を用いることができる。
【００１１】
衝撃体および固定部磁石に用いる永久磁石としては、アルニコ磁石やネオジウム磁石を好適に用いることができる。ネオジウム磁石はアルニコ磁石より強力な駆動力を得ることができ、より有利である。
【００１２】
衝撃体がマイクロニードルアレイを押し込む押し込み力としては、０．４Ｎ以上１００Ｎ以下の力が適当である。これより力が弱くてはマイクロニードルアレイを皮膚に刺入させることが困難であり、これより強くてはマイクロニードルアレイが破損するおそれがある。
【００１３】
投与の際、マイクロニードルアレイはハウジングの皮膚側に保持しても良いし、あるいは単に皮膚上においておくだけでも良い。両磁石を保持するハウジングの皮膚に面した端面に、両面に粘着剤を塗布された両面テープ、あるいは片面のみに粘着剤を塗布された片面テープを装着することにより、マイクロニードルアレイを好適に保持することができる。また，マイクロニードルアレイを挟み込むようにしても良い。
【発明の効果】
【００１４】
磁石の反発力は、動作が迅速確実でかつ装置が簡便軽量である。
本発明の装置又は方法は、装置が小型軽量であるにもかかわらず瞬間的な衝撃力を発生させることができ、女性や小児にも容易に利用できる。これによりマイクロニードルアレイの利用が一層容易かつ便利になると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】永久磁石２個を使用した投与装置の概略図。
【図２】永久磁石１個とコイルを使用した投与装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
次に、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例１】
【００１７】
永久磁石２個を使用するマイクロニードルアレイの投与装置の一例を図１に示す。
アルミニウム製のハウジング（３）には、衝撃体ネオジウム磁石及び固定部ネオジウム磁石が内部で移動可能な円筒状空隙（内直径はそれぞれ１１ｍｍ及び２７ｍｍ）を設けた。永久磁石としてネオジウム磁石（衝撃体（７）：直径１０ｍｍｘ長さ３０ｍｍ、固定部（８）：直径２５ｍｍｘ長さ１５ｍｍ：（株）サンギョウサプライ製）を使用した。固定部ネオジウム磁石（８）を空隙の左端に押し付けるための取っ手（４）を設け下端（６）はハウジングに回転可能な状態で止めた。衝撃体ネオジウム磁石（７）は細い空隙の右端に置かれ、左側への移動はトリガー（５）によって妨げられている。両ネオジウム磁石は直径０．５ｍｍ長さ４ｃｍｍのステンレス線によって結ばれている。それぞれの磁石の方向は同じ極が向き合うように設置する。ハウジング（３）の先端部（９）には両面テープを張り、粘着層付保護フィルム（１２）（直径２０ｍｍ、円形）を保持する。保護フィルムの中央部にはマイクロニードルアレイ（１３）（直径１０ｍｍ、円形）がある。
【００１８】
取っ手（４）をハウジング（３）の柄に近づけるように圧迫すると固定部ネオジウム磁石（８）は空隙左端に移動し衝撃体ネオジウム磁石（７）に対し強い反発力を生じる。この状態でトリガー（５）を引くと、衝撃体ネオジウム磁石（７）の固定が外れ、固定部ネオジウム磁石（８）との反発力のため空隙左端に急速に移動しマイクロニードルアレイ（１３）の裏面を衝撃する。トリガーを引くとき、投与装置の先端部（９）を皮膚から５ｍｍ程度離しておくと，衝撃体ネオジウム磁石（７）の速度、運動量はマイクロニードルを皮膚に刺すに十分なものとなる。このときの衝撃体ネオジウム磁石がマイクロニードルアレイを衝撃する力は約５Ｎと推定される。
この衝撃によりマイクロニードルが人体皮膚内に確実に刺入されることを確認した。
【実施例２】
【００１９】
永久磁石１個と電磁誘導磁石１個を使用するマイクロニードルアレイの投与装置の一例を図２に示す。
内径１２ｍｍ、長さ６ｃｍのプラスチック芯（１０）上に直径０．５ｍｍの被覆銅線を巻き付けコイル（１１）を作成した。巻き付け後のコイルの厚さは約８ｍｍであった。プラスチック芯の一端（図２の左側）は内径１８ｍｍに広げ、粘着層付保護フィルム（１２）をはめ込んでマイクロニードルアレイ（１３）を確実に保持できる構造とした。このようにすることでマイクロニードルを確実に保持すると共に、衝撃によりマイクロニードルアレイを確実に皮膚に刺入できる。
プラスチック芯は支持部により保持される。支持部には２４Ｖの直流電源（１５）と、直流電源を駆動するためのスイッチ（１６）が設けられている。
【００２０】
プラスチック芯（１０）内に円筒形の衝撃体ネオジウム磁石（７）（直径１０ｍｍ×長さ１３ｍｍ：（株）サンギョウサプライ製）を設置した。プラスチック芯の広げられた端にマイクロニードルアレイ（１３）（直径１０ｍｍ、円形、長さ８００μｍのヒアルロン酸製マイクロニードル１２０本付）を保持し、マイクロニードルアレイを皮膚から約５ｍｍ離して皮膚と並行に保持した。スイッチ（１６）をオンにしてコイルに直流電源（１５）から２４Ｖの直流電圧を印加した。電流値は約２Ａであった。コイルは電磁誘導磁石となり、衝撃体ネオジウム磁石（７）は反発により急速に皮膚側に移動し、マイクロニードルアレイ（１３）の裏面を衝撃し、それによりマイクロニードルは皮膚に刺入された。この際の衝撃体ネオジウム磁石がマイクロニードルアレイを衝撃する力は、約２Ｎと推定される。
この衝撃によりマイクロニードルが人体皮膚内に確実に刺入されることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【００２１】
本発明によるマイクロニードルアレイの投与装置は、医療や美容の分野において広く利用されるものと期待される。
【符号の説明】
【００２２】
３……ハウジング
４……取っ手
５……トリガー
７……衝撃体磁石
８……固定部磁石
９……マイクロニードルアレイを保持するハウジング先端部
１０……プラスチック芯
１１……プラスチック芯に巻き付けたコイル
１２……マイクロニードル保護テープ
１３……マイクロニードルアレイ
１５……直流電源
１６……スイッチ
１７……皮膚
【特許請求の範囲】
【請求項１】
マイクロニードルアレイを皮膚に投与するための装置であって、
固定部磁石と衝撃体磁石とを有し、固定部磁石と衝撃体磁石との反発力を利用してマイクロニードルを皮膚に刺入するマイクロニードルアレイの投与装置。
【請求項２】
固定部磁石及び衝撃体磁石が共に永久磁石である請求項１に記載のマイクロニードルアレイの投与装置。
【請求項３】
固定部磁石が電磁誘導による磁石であり衝撃体磁石は永久磁石である請求項１に記載のマイクロニードルアレイの投与装置。
【請求項４】
永久磁石がネオジウム磁石若しくはアルニコ磁石である、請求項２又は請求項３のいずれかに記載のマイクロニードルアレイの投与装置。
【請求項５】
衝撃体磁石がマイクロニードルアレイを皮膚内に押し込む押し込み力が０．４Ｎ〜１００Ｎである、請求項１ないし請求項４のいずれか１項に記載のマイクロニードルアレイの投与装置
【請求項５】
装置の皮膚に近い端部にマイクロニードルアレイ保持部を有する、請求項１ないし請求項４のいずれか１項に記載のマイクロニードルアレイの投与装置。
【請求項６】
マイクロニードルアレイを皮膚に投与するための方法であって、
固定部磁石と衝撃体磁石とを用い、固定部磁石と衝撃体磁石との反発力を利用してマイクロニードルを皮膚に刺入するマイクロニードルアレイの投与方法。
【請求項１】
マイクロニードルアレイを皮膚に投与するための装置であって、
固定部磁石と衝撃体磁石とを有し、固定部磁石と衝撃体磁石との反発力を利用してマイクロニードルを皮膚に刺入するマイクロニードルアレイの投与装置。
【請求項２】
固定部磁石及び衝撃体磁石が共に永久磁石である請求項１に記載のマイクロニードルアレイの投与装置。
【請求項３】
固定部磁石が電磁誘導による磁石であり衝撃体磁石は永久磁石である請求項１に記載のマイクロニードルアレイの投与装置。
【請求項４】
永久磁石がネオジウム磁石若しくはアルニコ磁石である、請求項２又は請求項３のいずれかに記載のマイクロニードルアレイの投与装置。
【請求項５】
衝撃体磁石がマイクロニードルアレイを皮膚内に押し込む押し込み力が０．４Ｎ〜１００Ｎである、請求項１ないし請求項４のいずれか１項に記載のマイクロニードルアレイの投与装置
【請求項５】
装置の皮膚に近い端部にマイクロニードルアレイ保持部を有する、請求項１ないし請求項４のいずれか１項に記載のマイクロニードルアレイの投与装置。
【請求項６】
マイクロニードルアレイを皮膚に投与するための方法であって、
固定部磁石と衝撃体磁石とを用い、固定部磁石と衝撃体磁石との反発力を利用してマイクロニードルを皮膚に刺入するマイクロニードルアレイの投与方法。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２０１１−７８７１１（Ｐ２０１１−７８７１１Ａ）
【公開日】平成２３年４月２１日（２０１１．４．２１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−２４５８８４（Ｐ２００９−２４５８８４）
【出願日】平成２１年１０月５日（２００９．１０．５）
【出願人】（５０１２９６３８０）コスメディ製薬株式会社 (42)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年４月２１日（２０１１．４．２１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年１０月５日（２００９．１０．５）
【出願人】（５０１２９６３８０）コスメディ製薬株式会社 (42)
【Ｆターム（参考）】
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