説明

磁力線集束のための反磁性材料の使用方法

常磁性材料の入っている磁場中で、該常磁性材料中に磁力線を集束させるための集束材としての反磁性材料の使用方法を記述している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力線集束のための反磁性材料の使用方法、及び反磁性材料を含む、冷却器、熱ポンプまたは熱発生器用の磁熱材料製成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
強磁場を発生させるためにNdFeB磁石などの高価な磁性体がよく用いられる。コストと材料を削減するために、最小量の磁性材料で最大の磁場が得られるように磁石はデザインされる。磁場の特定箇所で磁力線を強化するために、しばしば強磁性材料が用いられる。しかしながら、このような強磁性材料は磁場が他の材料に作用しない場合にのみ使用できる。これは、その強磁性のため、磁力線がこれらの材料へではなく自分自身に集束させるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US6022486A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、一定方向の磁場の磁力線を、増幅を必要とする領域に集束させる材料または装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、本発明により、常磁性材料の入っている磁場中で、該常磁性材料中に磁力線を集束させるための集束材としての反磁性材料の使用方法により達成される。また、本目的は、本発明により、熱輸送媒体を通過させる流路を持ち、磁場中に置くに適した形をもつ磁熱材料からなる冷却器、熱ポンプまたは熱発生器用の成型体であって、該成型体が、磁力線に実質的に平行に延びる表面で反磁性材料により少なくとも部分的に取り囲まれている成型体により達成される。
【0006】
また、本目的は、本発明により、熱輸送媒体を通過させる流路を持ち、磁場中に置くに適した形をもつ磁熱材料からなる冷却器、熱ポンプまたは熱発生器用の成型体であって、該成型体が磁力線に平行な方向に伸びる反磁性材料の包含物をもつ成型体により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
不均一な磁場中で高磁場強度の場所から低磁場強度の場所に移動する性質を持つ材料は、反磁性体または反磁性材料と呼ばれる。逆の挙動を示す物質、即ち強磁場中に移動する物質は、常磁性物質と呼ばれる。反磁性は、磁場と移動する荷電粒子との、特に電子との間の相互作用で生じる。強度的には、常磁性に較べると小さい。他方常磁性は、電子のスピン運動量と軌道角運動量により生じる。反磁性物質は、その原子または分子が閉じられた電子殻を占めている物質のすべてであり、この場合、個々の電子の磁気モーメントが相互に消しあって、全体としての磁気モーメントが外部に表れなくなっている。反磁性物質としては、例えばすべての希ガスや、希ガスに似たイオンや原子をもつすべての物質があげられる。これらの中には、例えばほとんどの有機化合物が含まれる。本発明で好ましく用いられる反磁性材料は、プラスチック、木材、金属酸化物、セラミック、皮革、織物またはこれらの混合物である。プラスチックは、好ましくはポリエチレンやポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、これらの混合物から選ばれる。
【0008】
従来の磁石設計方法で、例えば強磁性集束器での磁場増強によって増幅されている磁場を、磁場が不必要な領域または磁場領域を取り囲む領域で反磁性材料を用いて、さらに増幅することができる。磁力線は反磁性材料により反発されて、その材料の周囲領域に向きを反らされる。従って反磁性材料外側の磁場の増幅が起こり、磁場を必要とする領域中で増幅が起こる。例えば物理的な効果を与えるために材料Aを磁場に置く場合、磁力線を材料A中に集束させるために、この材料Aの周りを反磁性材料Bで囲むことが望ましい。本発明のある実施様態においては、高磁場強度が求められる領域に磁力線をより強く集束させるために、磁場中に反磁性材料を置くことも望ましい。これらの反磁性材料を磁力線に平行に並べることが特に望ましい。
【0009】
本発明によれば、反磁性材料が常磁性材料と組み合わせて使用され、その結果、常磁性材料の方向にあるいは常磁性材料中に磁力線の向きが変更され集束される。
【0010】
この場合、実質的に磁力線に沿ってあるいは磁力線に平行に、この常磁性材料が反磁性材料で覆われていてもよい。始点が磁場に縦方向に入れられた立方体状の常磁性材料である場合、この立方体は、例えば四面で反磁性材料に取り囲まれ、磁極に面する面(この面に対して磁力線が垂直または実質的に垂直となる)は、反磁性材料で覆われていない。「実質的に」磁力線に沿ってあるいは平行にとは、角の偏差として±10°を、好ましくは±5°、特に±2°を許容するものである。
【0011】
本発明のもう一つの実施様態においては、この常磁性材料が、実質的に磁力線に沿って反磁性材料中に存在する包含物を含んでいてもよい。これらの包含物は、磁力線に平行に常磁性材料中を貫通する棒状体の形で存在していてもよい。これらの棒状体は、円形、四角形、多角形、卵型または他の断面形状を取ることができ、常磁性成型体中を真直ぐ平行な線分として貫通していることが望ましい。これらの棒状体は、常磁性材料中で均一に相互分離して分布していてもよい。
【0012】
本発明のある実施様態においては、磁場中の常磁性材料を入った空間が、実質的に磁力線に沿ってあるいは平行に延びる反磁性材料で取り囲まれている。これにより、ほぼ全ての磁力線がこの常磁性材料中を通過することとなる。
【0013】
もし常磁性、強磁性または反強磁性材料を、最も高磁場強度が望ましい領域を取り囲むのに使用するか、その領域を小領域に分割するのに使用すると、反対の効果が得られるであろう。
【0014】
この常磁性材料は、磁熱材料であることが好ましい。
【0015】
このような材料は原理的には公知であり、例えばWO2004/068512に記載されている。磁熱効果(MCE)を示す材料では、ランダムに並んでいる磁気モーメントを外部磁界により整列させると、その材料の発熱が起こる。この熱は、このMCE材料から周囲雰囲気に伝熱によって取り除かれる。次いでこの磁場の向きを変えるか除くと、磁気モーメントがランダムな配列に戻り、材料が周囲温度より冷却される。この効果を冷却に用いることができる(Nature, vol. 415, January 10,2002, pages 150 to 152も参照のこと)。通常、水などの伝熱媒体が、磁熱材料からの熱の除去に用いられる。従って、熱ポンプや熱発生器としての利用が可能である。
【0016】
代表的な磁気冷却用材料は、少なくとも3種の金属元素と必要ならさらに非金属元素とを含む多金属材料である。「金属系材料」とは、これらの材料の大部分が金属または金属元素でできていることをいう。通常、全体の材料中の比率は、少なくとも50重量%であり、好ましくは少なくとも75重量%、特に少なくとも80重量%である。適当な金属系材料を下に詳細に説明する。この磁熱材料または金属系材料は、より好ましくは
(1)一般式(I)、

(Ayy-12+δwxz (I)

式中、
Aは、Mn又はCoであり、
Bは、Fe、Cr又はNiであり、
C、D、E:CとDとEのうち少なくとも二つは、相互に異なり、常にゼロ濃度でなく、P、B、Se、Ge、Ga、Si、Sn、N、As及びSbから選ばれ、
CとDとEのうち少なくとも一つは、Ge、As又はSiであり、
δは、−0.1〜0.1の範囲であり、
wとxとyとzは、それぞれ0〜1の範囲であり、w+x+z=1である;
【0017】
(2)一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)のLa系およびFe系化合物、

Le(FexAl1-x13yまたはLa(FexSi1-x13y (II)

式中、
xは、0.7〜0.95であり、
yは、0〜3、好ましくは0〜2である;

La(FexAlyCoz13またはLa(FexSiyCoz13 (III)

式中、
xは、0.7〜0.95であり、
yは、0.05〜1−xであり
zは、0.005〜0.5である;

LaMnxFe2-xe (IV)

式中、
xは、1.7〜1.95である、及び
【0018】
(3)MnTP型のホイスラー合金(式中、Tは遷移金属であり、Pはp−ドーピング金属である)で、原子あたりの電子数e/aが7〜8.5の範囲にあるもの、から選ばれる。
【0019】
本発明で特に好適な材料が、例えばWO2004/068512, Rare Metals, vol. 25,2006, pp. 544 to 549, J. Appl. Phys. 99.08Q107 (2006), Nature, Vol. 415, January 10, 2002, pp. 150 to 152 and Physica B 327 (2003), pp. 431 to 437に記載されている。
【0020】
上記の一般式(I)の化合物中で、CとDとEは、好ましくは同一であるか異なって、PとGe、Si、Sn、Gaの少なくとも一種から選ばれる。
【0021】
一般式(I)の金属系材料は、好ましくはMnとFeとPと必要ならSbに加えて、さらにGe、Si、As、Ge及びSi、Ge及びAs、Si及びAs、又はGe、Si及びAsを含む少なくとも四元の化合物から選ばれる。
【0022】
成分Aの好ましくは少なくとも90重量%が、より好ましくは少なくとも95重量%がMnである。Bの好ましくは少なくとも90重量%が、より好ましくは少なくとも95重量%が、Feである。Cの好ましくは少なくとも90重量%が、より好ましくは少なくとも95重量%がPである。Dの好ましくは少なくとも90重量%が、より好ましくは少なくとも95重量%がGeである。Eの好ましくは少なくとも90重量%が、より好ましくは少なくとも95重量%がSiである。この材料が、一般式MnFe(PwGexSiz)であることが好ましい。
【0023】
xは、好ましくは0.3〜0.7の範囲であり、wは1−x以下であり、zは1−x−wである。
【0024】
この材料は、結晶性の六方晶型Fe2P構造をもつことが好ましい。好適構造の例は、MnFeP0.45-0.7、Ge0.55-0.30及びMnFeP0.5-0.70、(Si/Ge)0.5-0.30である。
【0025】
他の好適な化合物は、Mn1+xFe1-x1-yGeyである。式中、xは−0.3〜0.5の範囲であり、yは0.1〜0.6の範囲である。同様に、一般式Mn1+xFe1-x1-yGey-zSbzの化合物も好適である。式中、xは−0.3〜0.5の範囲であり、yは0.1〜0.6の範囲であり、zはy未満で、0.2より小さい。式Mn1+xFe1-x1-yGey-zSizの化合物もまた好適である。式中、xは0.3〜0.5の範囲であり、yは0.1〜0.66の範囲であり、zはy以下で、0.6より小さい。
【0026】
好ましい一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)のLa系及びFe系化合物としては、La(Fe0.90Si0.1013、La(Fe0.89Si0.1113、La(Fe0.880Si0.12013、La(Fe0.877Si0.12313、LaFe11.8Si1.2、La(Fe0.88Si0.12130.5、La(Fe0.88Si0.12131.0、LaFe11.7Si1.31.1、LaFe11.57Si1.431.3、La(Fe0.88Si0.12)H1.5、LaFe11.2Co0.7Si1.1、LaFe11.5Al1.50.1、LaFe11.5Al1.50.2、LaFe11.5Al1.50.4、LaFe11.5Al1.5Co0.5、La(Fe0.94Co0.0611.83Al1.17、La(Fe0.92Co0.0811.83Al1.17があげられる。
【0027】
好適なマンガン含有化合物としては、MnFeGe、MnFe0.9Co0.1Ge、MnFe0.8Co0.2Ge、MnFe0.7Co0.3Ge、MnFe0.6Co0.4Ge、MnFe0.5Co0.5Ge、MnFe0.4Co0.6Ge、MnFe0.3Co0.7Ge、MnFe0.2Co0.8Ge、MnFe0.15Co0.85Ge、MnFe0.1Co0.9Ge、MnCoGe、Mn5Ge2.5Si0.5、Mn5Ge2Si、Mn5Ge1.5Si1.5、Mn5GeSi2、Mn5Ge3、Mn5Ge2.9Sb0.1、Mn5Ge2.8Sb0.2、Mn5Ge2.7Sb0.3、LaMn1.9Fe0.1Ge、LaMn1.85Fe0.15Ge、LaMn1.8Fe0.2Ge、(Fe0.9Mn0.13C、(Fe0.8Mn0.23C、(Fe0.7Mn0.33C、Mn3GaC、MnAs、(Mn,Fe)As、Mn1+δAs0.8Sb0.2、MnAs0.75Sb0.25、Mn1.1As0.75Sb0.25、Mn1.5As0.75Sb0.25があげられる。
【0028】
本発明で好適なホイスラー合金としては、例えばFe2MnSi0.5Ge0.5、Ni52.9Mn22.4Ga24.7、Ni50.9Mn24.7Ga24.4、Ni55.2Mn18.6Ga26.2、Ni51.6Mn24.7Ga23.8、Ni52.7Mn23.9Ga23.4、CoMnSb、CoNb0.2Mn0.8Sb、CoNb0.4Mn0.6SB、CoNb0.6Mn0.4Sb、Ni50Mn35Sn15、Ni50Mn37Sn13、MnFeP0.45As0.55、MnFeP0.47As0.53、Mn1.1Fe0.90.47As0.53、MnFeP0.89-xSixGe0.11、x=0.22、x=0.26、x=0.30、x=0.33があげられる。
【0029】
その平均結晶径は、一般的には10〜400nmの範囲であり、より好ましくは20〜200nm、特に30〜80nmの範囲である。平均結晶径はX線回折で決定できる。結晶径が小さすぎる場合は、最大磁熱効果が低下する。反対に結晶径が大きすぎると、系のヒステリシスが上昇する。
【0030】
従来の材料は、ボールミル中での材料用出発元素または出発合金の固相反応と、続くプレス、不活性ガス雰囲気下での焼成と熱処理、続く室温への徐冷により製造されている。
【0031】
溶融紡糸による加工も可能である。これにより均一な元素分布が可能となり磁熱効果の改善が可能となる。そこに記載のプロセスでは、出発元素をまずアルゴンガス雰囲気下で誘導溶融し、溶融状態でノズルから回転銅ローラー上に噴射する。次いで1000℃で焼成し、室温まで徐冷する。
【0032】
磁気冷却、熱ポンプまたは熱発生器用の金属系材料は、例えば以下の工程で製造される。
a)その金属系材料に相当する化学量の化学元素及び/又は合金を固体及び/又は液相で反応させ、
b)適当ならこの工程a)からの反応生成物を固化させ、
c)工程a)またはb)からの固体を焼成及び/又は熱処理し、
d)工程c)からの焼成及び/又は熱処理後の固体を少なくとも100K/sの冷却速度で急冷する。
【0033】
この急冷は、いずれか適当な冷却プロセスで、例えば固体を冷水または氷/水混合物などの水または水性液体で冷却して行われる。例えば固体を氷水中に落としてもよい。液体窒素などの低温ガスで固体を急冷することもできる。他の急冷方法は当業界の熟練者には公知である。制御された急冷が好ましい。
【0034】
本発明の方法の工程(a)では、最終の金属系材料に含まれる元素及び/又は合金を、固体または液相でその金属系材料の化学量で変換する。
【0035】
工程a)の反応を、これらの元素及び/又は合金の密閉容器あるいは押出機中での混合加熱で、あるいはボールミル中での固相反応で行うことが好ましい。固相反応が、特にボールミル中での固相反応が特に好ましい。このような反応は原理的には公知である(引用文献を参照)。通常、最終の金属系材料中に存在するそれぞれの元素の粉末が、あるいは二種以上の元素の合金の粉末が、粉末状で適当な重量比で混合される。必要なら、微結晶の混合粉末を得るためにこの混合物をさらに粉砕してもよい。この混合粉末をボールミルで加熱することが好ましい。これにより粉砕と混合が進み、混合粉末の固相反応が進む。
【0036】
あるいは、それぞれの元素を、選ばれた化学量で粉末状で混合し溶融してもよい。
【0037】
この密閉容器中での混合加熱することで、揮発性元素の固定と化学量の制御が可能となる。例えばリンを使用する場合、開放系中であってはリンは容易に気化する。
【0038】
この反応に続いて、この固体を焼成及び/又は熱処理するが、このために一つ以上の中間工程が設けられてもよい。例えば、工程a)で得られた固体を、焼成及び/又は熱処理の前にプレスしてもよい。これにより材料の密度が増加し、後での利用で高密度の磁熱材料が使用できる。このようにして磁場が存在する体積を削減でき、大幅なコスト削減が可能となるため好ましい。プレスは公知であり、プレス用具を使用してあるいは使用せずに実施できる。このプレスにいずれか適当な金型を用いることもできる。このプレスのみでも所望の三次元構造をもつ成型体を得ることができる。このプレスの後に工程c)の焼成及び/又は熱処理と工程d)の急冷を行ってもよい。
【0039】
あるいは、ボールミルから得られる固体を溶融紡糸プロセスに供給することもできる。溶融紡糸プロセスは公知であり、例えば、Rare Metals, vol. 25, October 2006, pp. 544 to 549やWO2004/068512に記載されている。
【0040】
これらのプロセスでは、工程a)で得られる組成物を溶融して回転する冷却金属ローラー上に噴射する。この噴射は、噴射ノズル上流の加圧あるいは噴射ノズル下流の減圧により行われる。通常、回転銅ドラムまたはローラーが用いられ、必要ならこれらをさらに冷却してもよい。この銅ドラムの回転の表面速度は10〜40m/sであることが、特に20〜30m/sであることが好ましい。この銅ドラム上で、液体組成物が好ましくは102〜107K/sの速度で、より好ましくは少なくとも104K/s、特に0.5〜2×106K/sの速度で冷却される。
【0041】
工程a)の反応と同様に、この溶融紡糸を減圧下であるいは不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。
【0042】
この溶融紡糸は、続く焼成と熱処理を短縮できるため、高い加工速度を達成可能とする。具体的には金属系材料の製造が、工業スケールでより経済的に実施可能となる。噴霧乾燥もまた高い加工速度を可能とする。溶融紡糸を行うことが特に好ましい。
【0043】
あるいは、工程b)で噴射冷却を実施可能であり、その場合工程a)からの組成物が噴射塔中に噴射される。例えば、この噴射塔をさらに冷却することができる。噴射塔中では、103〜105K/sの範囲の、特に約104K/sの冷却速度がしばしば達成される。
【0044】
この固体の焼成及び/又は熱処理は、工程c)で、好ましくはまず800〜1400℃の範囲の温度で焼成し、次いで500〜750℃の範囲の温度で熱処理して行われる。これらの値は特に成型物に適用されるものであり、粉末に対しては焼成と熱処理ともにより低温が使用可能である。その場合例えば、この焼成を500〜800℃の範囲の温度で行うこともできる。成型物/固体の焼成は、1000〜1300℃の範囲の温度で、特に1100〜1300℃の範囲の温度で行うことがより好ましい。その場合、この熱処理を例えば600〜700℃で実施できる。
【0045】
焼成は、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に5〜15時間行われる。この熱処理は、好ましくは10〜100時間の範囲で、より好ましくは10〜60時間、特に30〜50時間の範囲で行われる。実際の処理時間は、その材料に求められる要件に応じて調整可能である。
【0046】
溶融紡糸プロセスを採用する場合、焼成を省けることが多く、熱処理を大幅に短縮することが、例えば5分間〜5時間へ、好ましくは10分〜1時間へ短縮することができる。従来法での値である焼成の10時間と熱処理の50時間と較べて、このプロセスは大きな時間的な利点を与える。
【0047】
この焼成/熱処理により粒子境界で部分的な溶融が起こり、この材料がさらに緻密となる。
【0048】
本発明の金属系材料は、上述のように磁気冷却に用いることが好ましい。対応する冷蔵庫は、磁石、好ましくは永久磁石に加えて、上述のような金属系材料をもつ。コンピューターチップや太陽発電器の冷却もまた可能である、他の利用分野は、熱ポンプや空調システム、熱発生器である。
【0049】
これらの磁熱材料を磁場内に置く場合、この磁熱材料が存在する領域に磁場を集束させることが望ましい。したがって本発明によれば、これらの磁熱材料が反磁性材料で取り囲まれていてもよい(磁力線に垂直な端面側を除く)。また、例えば、磁熱成型体中の長さ方向に延びる内孔中に、反磁性材料の棒状体を、この棒状体が磁力線に平行に延びるように挿入することもできる。これにより磁熱材料中の磁力線密度を増加させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常磁性材料の入っている磁場中で、該常磁性材料中に磁力線を集束させるための集束材としての反磁性材料の使用方法。
【請求項2】
上記常磁性材料が、磁力線に実質的に平行な上記反磁性材料により取り囲まれている請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
上記常磁性材料が、実質的に磁力線に沿った反磁性材料の包含物を含む請求項1に記載の使用方法。
【請求項4】
磁場中で常磁性材料が入っている空間が磁力線に実質的に平行な反磁性材料で取り囲まれている請求項1に記載の使用方法。
【請求項5】
上記常磁性材料が磁熱材料である請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項6】
上記磁熱材料が、
(1)一般式(I)の化合物、

(Ayy-12+δwxz (I)

(式中、
Aは、Mn又はCoであり、
Bは、Fe、Cr又はNiであり、
C、D、E:CとDとEのうち少なくとも二つは、相互に異なり、常にゼロ濃度でなく、P、B、Se、Ge、Ga、Si、Sn、N、As及びSbから選ばれ、
CとDとEのうち少なくとも一つは、Ge、As又はSiであり、
δは、−0.1〜0.1の範囲であり、
wとxとyとzは、それぞれ0〜1の範囲であり、w+x+z=1である。)

(2)一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)のLa系およびFe系化合物、

Le(FexAl1-x13yまたはLa(FexSi1-x13y (II)

(式中、
xは、0.7〜0.95であり、
yは、0〜3である。)

La(FexAlyCoz13またはLa(FexSiyCoz13 (III)

(式中、
xは、0.7〜0.95であり、
yは、0.05〜1−xであり
zは、0.005〜0.5である。)

LaMnxFe2-xGe (IV)

(式中、
xは、1.7〜1.95である。)、及び

(3)MnTP型のホイスラー合金(式中、Tは遷移金属であり、Pはp−ドーピング金属である)で、原子あたりの電子数e/aが7〜8.5の範囲にあるもの、
から選ばれる請求項5に記載の使用方法。
【請求項7】
上記磁熱材料が、MnとFeとPと必要ならSbに加えて、さらにGe、Si、As、Ge及びAs、Si及びAs、又はGe、Si及びAsを含む一般式(I)の少なくとも四元の化合物から選ばれる請求項6に記載の使用方法。
【請求項8】
上記反磁性材料が、プラスチック、木材、金属酸化物、セラミック、皮革、織物またはこれらの混合物から選ばれる請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項9】
熱輸送媒体を通過させる流路を持ち、磁場中に置くに適した形をもつ磁熱材料から構成される冷却器、熱ポンプまたは熱発生器用の成型体であって、該成型体が、磁力線に実質的に平行に延びる表面において少なくとも部分的に反磁性材料により取り囲まれている成型体。
【請求項10】
熱輸送媒体を通過させる流路を持ち、磁場中に置くに適した形をもつ磁熱材料から構成される冷却器、熱ポンプまたは熱発生器用の成型体であって、該成型体が磁力線の方向に伸びる反磁性材料の包含物をもつ成型体。

【公表番号】特表2013−501907(P2013−501907A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521036(P2012−521036)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060602
【国際公開番号】WO2011/009904
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】