説明

磁力選別機、磁性不純物の除去方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法

【課題】簡単な構造で磁性不純物を効率良く吸着できる磁力選別機、磁性不純物の除去方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】磁力選別機10の下部から投入された粉体は、棒状磁性体14が挿入された鞘管24と接触しながら、流路18を下方から上方へ流れる。この際、粉体は、流路14内に設けられた複数の突壁16によって、鞘管24の直径より狭められた流路18を流れるため、粉体に含まれる磁性不純物は棒状磁性体14の磁力によって鞘管24に吸着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力選別機、磁性不純物の除去方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体を扱う医薬品、化学原料及び食料品などの製造過程では、原料である非磁性体に含まれる鉄分などの磁性不純物は、磁石等に吸着させることで非磁性体から分離、除去する方法が採用されている。
【0003】
このような磁性不純物の除去装置としては、突起が互い違いに設けられ、スラリー状混合物が流れる管路と、管路を挟んで対向する磁石とを備えた磁気分離装置が開示されている(特許文献1)。
しかし、スラリー状混合物に含まれる金属不純物は、管路内部の側壁の一部にしか捕集されず、また管路内には突起が互い違いに配置されているため、スラリー状混合物の磁力選別には時間が掛かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−341202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、簡単な構造で磁性不純物を効率良く吸着できる磁力選別機、磁性不純物の除去方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の磁力選別機は、粉体が流れる方向に狭幅部と広幅部とを備えた流路と、前記広幅部の中央部へ流路に沿って1列に配置され、前記狭幅部より広幅の棒状磁性体と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の磁力選別機では、棒状磁性体の幅が流路の狭幅部より広くなっている。このため、狭幅部を通過した粉体が棒状磁性体に接触し易く、粉体に含まれる磁性不純物の吸着効率が上がる。なお、「狭幅部」、「広幅部」の表現は、双方を比較した際の相対的な広狭を示すものである。
【0008】
請求項2に記載の磁力選別機は、請求項1に記載の磁力選別機であって、前記棒状磁性体は、同極が向き合うように並べられた複数の磁石片と、前記磁石片に挟まれた継鉄と、磁石片と継鉄とを拘束する拘束部材と、で構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の磁力選別機では、拘束部材により同極の磁石片で挟まれた継鉄部分が磁力の強い磁極となるため、磁極を中心に粉体に含まれた磁性不純物が吸着される。また、磁極の位置は磁石片と継鉄によって自由に決めることができる。
【0010】
請求項3に記載の磁力選別機は、請求項2に記載の磁力選別機であって、前記磁性体は、隣り合う前記磁性体の前記継鉄が、粉体の流れる方向に対してずれるように配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の磁力選別機では、流路を流れる粉体が磁極となる継鉄に接触する頻度を高めることができる。
【0012】
請求項4に記載の磁力選別機は、請求項1〜3に何れか1項に記載の磁力選別機であって、前記流路の内部に架設され、前記棒状磁性体が挿入される非磁性の筒体を有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の磁力選別機では、粉体に含まれる磁性不純物は、棒状磁性体の磁力で筒体に吸着されるため、棒状磁性体が汚れる心配がなく、清掃する手間が省ける。また、筒体から棒状磁性体を取り出すだけで筒体が消磁し、磁性不純物を筒体から取り除くことができる。
【0014】
請求項5に記載の磁力選別機は、請求項4に記載の磁力選別機であって、前記流路の内部に、前記筒体へエアを噴きつけるエア噴出部が設けられたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の磁力選別機では、エアを筒体へ吹き付けて、筒体に付着した磁性不純物を落として回収することができる。
【0016】
請求項6に記載の磁力選別機は、請求項1〜5の何れか1項に記載の磁力選別機であって、前記流路は上下方向へ配置され、流路の上部には前記流路の下部から粉体を吸引する第1の吸引手段が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の磁力選別機では、吸引手段によって粉体を下方から上方へ流動させるため、粉体の流速を調節することができる。
【0018】
請求項7に記載の磁力選別機は、請求項6に記載の磁力選別機であって、前記流路の下部には、磁力選別後に前記棒状磁性体に吸着された、粉体に含まれる磁性不純物を吸引する第2の吸引手段が設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の磁力選別機では、磁力選別後に筒体に吸着している磁性不純物は、第2の吸引手段によって下部へ吸引されるため、磁力選別後の粉体と混合せずに回収できる。
【0020】
請求項8に記載の磁性不純物の除去方法は、請求項1〜7の何れか1項に記載された磁力選別機を用いて、前記流路に粉体を投入し、前記磁性体に磁性不純物を吸着させることで磁性不純物を取り除くことを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の磁性不純物の除去方法では、粉体が棒状磁性体に接触し易いように流路が形成されているため、磁性不純物を効率よく棒状磁性体に吸着することができる。
【0022】
請求項9に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法は、請求項1〜7の何れか1項に記載された磁力選別機によって磁性不純物が取り除かれた炭素材料を有機系結着剤及び溶剤と混合させて集電体へ塗布した後に加圧して形成される負極電極と、リチウム化合物を含む正極電極と、でリチウムイオン二次電池を製造することを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法では、炭素材料に含まれる磁性不純物を効率よく除去することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記の構成としたので、簡単な構造で磁性不純物を効率良く吸着できる磁力選別機、磁性不純物の除去方法及びリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係る磁力選別機を説明するための正面図である。
【図2】第1実施形態に係る磁力選別機を説明するための側断面図である。
【図3】第1実施形態に係る棒状磁性体を説明するための側断面図である。
【図4】第1実施形態に係る棒状磁性体の作用効果を説明するための側断面図である。
【図5】第1実施形態に係る鞘管から棒状磁性体が引き抜かれる様子を表した側断面図である。
【図6】第2実施形態に係るエア噴出部を説明するために拡大した断面図である。
【図7】第3実施形態に係る棒状磁性体を説明するために拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図を参照しながら、第1実施形態に係る磁力選別機の全体構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、磁力選別機10は、粉体の流路18が形成された筐体12を備えている。筐体12は密閉空間を形成し、非磁性の材料、例えばSUS316等のオーステナイト系のステンレス等で構成されている。
【0028】
筐体12の上面中央部には粉体の出口である排出口30が形成されている。この排出口30には粉体回収部42に接続される排出管34が設けられている。粉体回収部42の先には粉体を吸い上げる第1の吸引手段としてのポンプ28が設けられている。また排出管34にはバルブ51が設けられている。
【0029】
筐体12の下面中央部には粉体の入口である供給口32が形成されている。また、供給口32には配管36が接続されている。供給口32から延びた配管36は2方向に分岐しており、一方は粉体を供給する供給管38へ接続され、他方は磁性不純物が排出される磁性不純物排出管40へ接続されている。
【0030】
供給管38の先には粉体供給部48が設けられており、粉体供給部48から磁力選別機10へ粉体が供給される。また、磁性不純物排出管40の先には磁性不純物回収部46及び第2の吸引手段としてのポンプ44が設けられている。さらに、供給管38及び磁性不純物排出管40にはそれぞれバルブ50、52が設けられている。
【0031】
次に、本発明の磁力選別機を構成する筐体の好ましい例の詳細について説明する。
【0032】
図1及び図2に示すように、筐体12は非磁性であって、筐体12の側面には等間隔に複数の孔部54が形成されている。また、この孔部54には非磁性の筒体としての鞘管24が挿入されている。
【0033】
ここで、筐体12の内壁には鞘管24を支持する窪みである凹部66が形成されており、孔部54に挿入された鞘管24は、凹部66に支持されることで、孔部54と凹部66との間に架設され、流路18を横切る。なお、この孔部54及び凹部66へは、鞘管24が圧入されているため、鞘管24が凹部66から簡単に外れることはない。また、流路18を流れる粉体が孔部54から筐体12の外へ漏れることもない。
【0034】
なお、鞘管24を筐体12へ架設する手段については、凹部66を形成する方法でなくてもよい。例えば、鞘管24を筐体12へ溶接する方法や、鞘管24にフランジを形成して、筐体12に対してねじ止めする方法でもよい。
【0035】
また、筐体12に架設された鞘管24には、シャフト62と磁石部64とで構成される棒状磁性体14が挿入されている。本実施形態では5本の鞘管24が配置され、鞘管24にはそれぞれ棒状磁性体14が挿入されている。なお、鞘管24の数は、選別する粉体の種類によって異なり、例えば、鉄イオンを200ppb含むカーボン粉では流路に沿って等間隔に10〜40本が好ましく、15〜30本がより好ましく、20〜25本が最も好ましい。
【0036】
図1に示すように、筐体12の内部には、孔部54が形成された側面と直交する方向の両側面から、互いに向き合い、上斜面16Aと下斜面16Bとで構成される複数の突壁16が形成されている。
【0037】
突壁16は、孔部54が形成された側面から反対側の側面まで連続して形成されている。また、突壁16の頂部16Cは鞘管24と平行に延びており、鞘管24へ挿入された棒状磁性体14の中間部に位置している(図2参照)。
ここで、突壁16を構成する上斜面16A及び下斜面16Bの傾斜角度は特定されないが、上斜面16Aと下斜面16Bとがなす角度が急峻であると、流路18を流れる粉体が流路内に滞りやすくなり、処理効率が悪くなる。
【0038】
また、互いに向き合う突壁16の頂部16C間の幅Aは、鞘管24の外形Bより狭くなっている。ただし、頂部16C間の幅Aを狭め過ぎると、粉体が流路内に滞ったり、流路18を閉塞したりするため、幅Aは鞘管24の外径Bに対して、0.4〜0.95倍が好ましく、より好ましくは0.5〜0.8倍、更に好ましくは0.6〜0.7倍である。
【0039】
次に、棒状磁性体の構造の詳細について説明する。
【0040】
図3(突壁の凹凸部は省略)に示すように、棒状磁性体14は拘束部材としてのシャフト62と円筒状の磁石部64とで構成されている。また、磁石部64は磁石片20と継鉄22とが交互に配置されて構成されており、隣り合う磁石片20は同極が向き合うように継鉄22を挟んでいる。すなわち、各磁石片20のN極とN極との間、及びS極とS極との間に継鉄22が挟まれている。
【0041】
磁石片20としては、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石又はネオジム磁石等が用いられるが、磁石の種類は特に制限をしない。また、棒状磁性体14の最大磁力は0.3テスラ以上が好ましく、より好ましくは0.8テスラ以上、更に好ましくは1テスラ以上である。
【0042】
そして、磁石片20の直径としては、10〜30mmが好ましく、より好ましくは15〜25mmであればよい。磁石片14の長さは、10〜30mmのものを用いる。
【0043】
シャフト62は、磁石部64を貫通しており、その一端部は磁石部64から露出している。このようにして、鞘管24から棒状磁性体14を引き抜くことができる。また、シャフト62は、ねじが切られており、磁石片20及び継鉄22に形成されたねじ穴に通して、磁石片20が反発して抜け出さないように拘束している。
【0044】
なお、本実施形態では拘束部材としてシャフト62を用いたが、磁石片20と継鉄22を拘束できる部材であれば、例えば、ステンレスチューブ等の容器に納められ反発して抜け出さないようにされていてもよい。また磁石片20と継鉄22とが接着剤等で接着されていてもよい。また、本実施形態では、シャフト62の一端部を磁石部64から露出させているが、棒状磁性体14が鞘管24の長さより長く形成されていれば、シャフト62の一端部を露出さなくても、鞘管24から棒状磁性体14を引き抜くことができる。
【0045】
図3の鎖線部Mは、磁石部64における磁力線を示したものである。磁力線Mは、磁石片20のN極からS極へ向かう曲線であるが、磁力線が密な部分、すなわち継鉄22にあたる部分が最も磁界(磁力)の強い磁極となる。
【0046】
ここで、隣り合う棒状磁性体14の継鉄22は、垂直方向に磁極の位置がずれるように配置されており、本発明の第1実施形態では、下段の棒状磁性体14に対して、継鉄22をピッチの半分だけずらして配置している。
【0047】
なお、継鉄22のずらし量は特に制限をしないが、流路18を垂直に流れる粉体(矢印F方向)が必ず継鉄22と交わるように配置されていることが望ましい。また、本実施形態では磁石片20と継鉄22を拘束して棒状に一体化したが、円柱状の一本の長い磁石でもよい。
【0048】
次に、本実施形態に係る磁力選別機の作用及び効果について説明する。
【0049】
図1に示すように、筐体12へ粉体を投入する前に、配管36に設けられたバルブ52を閉じる。次に粉体供給部48に粉体を投入する。
【0050】
そして、バルブ50、51を開き、ポンプ28を作動させることで、粉体が供給管38を矢印Cの方向に流れて筐体12へ吸引される。このとき、バルブ52は閉じられているため、粉体が筐体12へ吸引される。
【0051】
供給口32から筐体へ吸引された粉体は、突壁16によって狭められた流路18を通って、棒状磁性体14が挿入された鞘管24と接触しながら筐体12の上部へ吸い上げられる。ここで、流路18の幅Aは鞘管24の直径Bよりも狭いため、粉体は効率よく鞘管24と接触しながら上方へ吸引される。
【0052】
ここで、図4に示すように、粉体に含まれる磁性不純物68は、磁極である継鉄22に引き寄せられ、鞘管24へ吸着される。また、継鉄22は流路18に対して位置をずらして配置されているため、流路18を流れる磁性不純物68の殆どが継鉄22と対応する位置の鞘管24と接触するようになっている。
【0053】
また、図1のポンプ28の吸引力を制御し、状況に応じて粉体の流速を変化させることで、効率良く継鉄22と接触させることが可能となる。すなわち、質量が小さく細かい粉体であれば、ポンプ28の吸引力を弱くして流速を落としたり、質量が大きい粉体であれば、ポンプ28の吸引力を強くして、筐体12へ供給された粉体が分散するように調整できる。
【0054】
このようにして、粉体は磁性不純物68と分離しながら筐体12の上面の排出口30へ到達し、排出管34を矢印Eの方向へ流れて粉体回収部42に集められる。粉体回収部42にはフィルターが設けられており、粉体がポンプ28へ流れることなく粉体回収部42に回収されるようになっている。全ての粉体が粉体回収部42へ集められた後にポンプを停止し、バルブ50、51を閉じて粉体を回収する。
【0055】
一方、鞘管24に吸着された磁性不純物68は、図5に示すように、作業者が筐体12から突き出しているシャフト62を持って棒状磁性体14を鞘管24から引き抜くことで、棒状磁性体14に引きずられて、鞘管24上を筐体12の壁面側まで移動する。
【0056】
なお、本実施形態では棒状磁性体14が5本なので、鞘管24から1本ずつ引き抜いているが、棒状磁性体14の本数によっては、エアシリンダ等を利用して機械的に棒状磁性体14の挿入及び引き抜きを行ってもよい。
【0057】
棒状磁性体14が引き抜かれた鞘管24に吸着された磁性不純物68は、その大半が筐体12の下面へ落下する。
【0058】
全ての棒状磁性体14が鞘管24から引き抜かれた後、図1のバルブ52を開け、ポンプ44を作動させることで、磁性不純物68が吸引されて磁性不純物回収部46へ回収される。また、磁性不純物回収部46にはフィルターが設けられており、磁性不純物68はポンプ44へ流入することなく磁性不純物回収部46に回収される。
【0059】
以上、本発明の第1実施形態に係る磁力選別機の作用及び効果について説明した。
【0060】
ここで、図6に示すように、第2実施形態では突壁16内にはエア供給路74が設けられており、上斜面16A及び下斜面16Bにはそれぞれエアを噴出するエア噴出部としてのエア噴出孔72が、突壁16が連続する方向へ所定の間隔で複数形成されている。このエア噴出孔72は、鞘管24へ向けて開口しており、磁性不純物68を回収する際には、エア噴出孔72からエアを鞘管24に噴出し、鞘管24に付着している磁性不純物68は吹き落とされ、ポンプ44によって吸引される。
【0061】
なお、本発明の第2実施形態では、ポンプ44の吸引及びエアの噴出によって磁性不純物68の回収を行ったが、筐体12を加振させる加振機構が設けられていてもよい。すなわち、鞘管24から棒状磁性体14を引き抜いた時点では、鞘管24の上部に付着している磁性不純物68は落下しないが、加振機構によって筐体12を加振させることで、鞘管24上の磁性不純物68を落下させ、同時にポンプ44を作動させることで効率良く磁性不純物68の回収を行うことができる。
【0062】
また、本発明の第1及び第2実施形態では、粉体は筐体12の下方から上方へ吸引されながら流路18を流れるが、逆に筐体12の上方から粉体を自然落下させてもよい。この場合、粉体の回収部及び磁性不純物68の回収は共に筐体12の下方に設けられるため、粉体と磁性不純物68が混入しない仕切り板を設けてもよい。
【0063】
また、本発明の第1及び第2実施形態では、粉体回収部42及び磁性不純物回収部46にフィルターを設けることで、吸引された粉体を回収していたが、他の方法を用いて回収してもよい。例えば、粉体分離器(サイクロン)などを用いて固体と気体を分離してもよい。
【0064】
さらに、本発明の第1及び第2実施形態では鞘管24に棒状磁性体14を挿入して磁性不純物を吸着する構成としたが、棒状磁性体14を剥き出しで流路内に配置する構成でもよい。以上の構成は、以下の第3実施形態においても適用される。
【0065】
次に本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については説明を省略し、同様の符号を用いることとする。
【0066】
図7に示すように、本発明の第3実施形態では、棒状磁性体14の形状を円筒状ではなく、軸方向から見た断面がひし形となるように形成されている。また、鞘管24の形状についても、挿入される棒状磁性体14の形状に合わせた形状となっている。
【0067】
本発明の第3実施形態に係る磁力選別機10を用いて磁性不純物68の分離を実施した場合、鞘管24の四隅は角部になっているため、鞘管24から棒状磁性体14を引き抜いた時点で、棒状磁性体14に吸着されていた磁性不純物68は、鞘管24の斜面を滑って落下する。
【0068】
このようにして、粉体を流路18に滞らせずに、効率よく磁性不純物68の分離を行うことができる。
【0069】
以上、本発明の第3実施形態について説明した。
【0070】
なお、本発明の実施形態では、突壁16は断面が三角形であったが、粉体が流路18内に滞らない形状であれば、特に制限をしない。例えば、突壁16の断面は半円状であってもよく、要は狭幅部と広幅部を形成できればよい。
【0071】
<実施例>
本発明の効果を確かめるために、本発明者は、本発明に係る磁力選別機10の一例を用いて、カーボン粉に含まれる磁性不純物の分離を行った。
【0072】
磁力選別機10を構成する棒状磁性体の直径は25mmとし、棒状磁性体5本を一列に配置した。また、突壁の先端部の間の幅は、17mmとし、突壁にはエア噴出部を設けた。
【0073】
カーボン粉には平均粒径20μmのものを用い、磁力選別機の下方から投入した。また、磁力選別機の上方にブロワを配置し、ブロワによって吸引風量1.2m/minでカーボン粉を吸引した。鞘管に吸着された磁性不純物は、鞘管から棒状磁性体を引き抜いた後にエアを吹き付けることで落下させ、磁力選別機の下方から掃除機で吸引した。
【0074】
磁性不純物の捕集効率については、カーボン粉に含まれる鉄イオン濃度をICP発光分析法により測定することで評価を行った。また、従来磁力選別機でも同様の試験を実施した。本発明の磁力選別機で分離を行った結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
本発明の磁力選別機では、棒状磁性体を5本用いることで、鉄イオン濃度を200ppbから100ppbまで分離することができた。また、従来の磁力選別機では、棒状磁性体を5本用いた場合は、150〜180ppbまでしか分離できないため、磁性不純物の捕集効率が改善されたのを確認した。
【0077】
次に、本発明の磁力選別機によって得られる炭素材料によって構成されるリチウムイオン二次電池について説明する。
【0078】
本発明の磁選機を用いることにより、リチウム二次電池負極炭素材料としての炭素材料から磁性不純物が除去される。この場合に用いられる負極炭素材料としては、各種の天然黒鉛、天然黒鉛加工物、人造黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維等が挙げられる。
【0079】
得られたリチウム二次電池負極炭素材料は、有機系結着剤及び溶剤と混練して混合物を作製し、粘度を適宜調整した後、集電体に塗布される。塗布された混合物を乾燥させ、該集電体と一体化して負極とされる。なお、集電体としては、例えばニッケル、銅等の箔、メッシュ等の金属集電体が使用される。また、一体化させる手段としては、例えばロール、プレス等の成形法で一体化される。
【0080】
このようにして得られた負極と正極とをセパレータを介して対向して配置させ、電解液を注入することにより、リチウムイオン二次電池を得ることができる。ここで、リチウ厶二次電池の正極はリチウム化合物を含むが、その材料に特に制限はなく、例えばLiNiO、LiCoO、LiMn等を単独又は混合して使用される。また、CO、Ni、Mn等の元素の一部を異種元素に置換したリチウム化合物が使用されることもある。
【0081】
電解液としては、例えば、LiClO、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSOCF、CHSOLi、CFSOLi等のリチウム塩を、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、プロピロニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン等の非水系溶剤に溶かしたいわゆる有機電解液や、固体若しくはゲル状のいわゆるポリマー電解質が用いられる。また、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0082】
セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム又はそれらを組み合わせたものが用いられる。特に、作製するリチウム二次電池の急速充放電特性、サイクル特性の点で、体積空隙率が80%以上の微孔フィルムを用いるのが好ましい。また、厚みは5〜40μmが好ましい。なお、作製するリチウム二次電池の正極と負極が直接接触しない構造にした場合は、セパレータを使用する必要はない。
【0083】
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1、第2の施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、棒状磁性体は流路18に沿って1列に設けられていれば、直線状に並べられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 磁力選別機
12 筐体
14 棒状磁性体
16 突壁
18 流路
20 磁石片
22 継鉄
24 鞘管
28 ポンプ(第1の吸引手段)
44 ポンプ(第2の吸引手段)
62 シャフト(拘束部材)
72 エア噴出孔(エア噴出部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体が流れる方向に狭幅部と広幅部とを備えた流路と、
前記広幅部の中央部へ流路に沿って1列に配置され、前記狭幅部より広幅の棒状磁性体と、
を有する磁力選別機。
【請求項2】
前記棒状磁性体は、同極が向き合うように並べられた複数の磁石片と、前記磁石片に挟まれた継鉄と、磁石片と継鉄とを拘束する拘束部材と、で構成されている請求項1に記載の磁力選別機。
【請求項3】
前記磁性体は、隣り合う前記磁性体の前記継鉄が、粉体の流れる方向に対してずれるように配置されている請求項2に記載の磁力選別機。
【請求項4】
前記流路の内部に架設され、前記棒状磁性体が挿入される非磁性の筒体を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の磁力選別機。
【請求項5】
前記流路には、前記筒体へエアを噴きつけるエア噴出部が設けられた請求項4に記載の磁力選別機。
【請求項6】
前記流路は上下方向へ配置され、流路の上部には前記流路の下部から粉体を吸引する第1の吸引手段が設けられている請求項1〜5の何れか1項に記載の磁力選別機。
【請求項7】
前記流路の下部には、磁力選別後に前記棒状磁性体に吸着された、粉体に含まれる磁性不純物を吸引する第2の吸引手段が設けられている請求項6に記載の磁力選別機。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載された磁力選別機を用いて、前記流路に粉体を投入し、前記磁性体に粉体に含まれた磁性不純物を吸着させることで磁性不純物を取り除く、磁性不純物の除去方法。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項に記載された磁力選別機によって磁性不純物が取り除かれた炭素材料を有機系結着剤及び溶剤と混合させて集電体へ塗布した後に加圧して形成される負極電極と、リチウム化合物を含む正極電極と、でリチウムイオン二次電池を製造するリチウムイオン二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240019(P2012−240019A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115229(P2011−115229)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】