説明

磁性トナー

【課題】感光体へのトナー融着や接触帯電部材汚染が発生せず、カブリや濃度薄を起こさず、さらに、空玉による機内汚染を起こさないトナーを提供すること。
【解決手段】結着樹脂、ワックス及び磁性酸化鉄を有する磁性トナーであって、
該結着樹脂は、溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度が120℃以上150℃以下であるポリエステル樹脂を含有し、
該磁性酸化鉄20質量部を酢酸エチル80質量部に分散・静置し、磁性酸化鉄の沈殿面高さを測定した酢酸エチル沈降試験において、静置10分後の液面高さをEtA、沈殿面高さをVEtAとしたとき、VEtA/EtAが0.80以下であり、
該磁性酸化鉄20質量部をイソプロピルアルコール80質量部に分散・静置し、磁性酸化鉄の沈殿面高さを測定したイソプロピルアルコール沈降試験において、静置10分後の沈殿面高さをVIPAとしたとき、VIPA/VEtAが1.20以上2.50以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電印刷法、及びトナージェット法の如き画像形成方法に用いられる磁性トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、デジタル化により他の情報機器と結びついた情報出力機器としてすでに広く普及している。そして、画像形成装置に対しては、高精細、高品位、高画質、高速、及び高信頼性などの要求はもちろんのこと、ユーザーの使用方法の多様化により生じる、低価格化及びメディア対応の要望も大きい。
【0003】
画像形成装置の低価格化を達成するためには、装置内の各画像形成過程を単純化し、高生産性を備える高価格マシンには搭載しうる各種機能を削除し、低コスト化を図らなければならない。一方で、高品位、高画質、高信頼性への要望に応えるために、画像形成装置内のトナーや各キーパーツに要求される性能は多くなる一方である。また、ユーザーの使用地域、使用環境、及び使用方法の多様化により、従来はなかなか表面化しなかった問題が顕在化するようになってきている。
【0004】
画像形成装置の小型化が有利な一成分現像方式に用いられる磁性トナーの場合、該磁性トナーに含有される磁性酸化鉄粒子の分散状態や酸化鉄粒子自体の物性が、現像特性、耐久性等のトナーに要求される種々の特性や、トナーの劣化に影響を与えることが一般的に知られている。
【0005】
特に、結着樹脂に高粘度のポリエステル樹脂を用いたトナーの場合、磁性酸化鉄粒子のトナー粒子中での分散状態を制御することが難しく、磁性酸化鉄の分散が不充分な為に、画像濃度の低下やカブリの増加が発生したり、磁性トナー粒子から遊離した磁性酸化鉄が多くなり、感光体へのトナー融着や接触帯電部材汚染の原因となる場合があった。
【0006】
また、結着樹脂中に磁性酸化鉄が均一に分散していないことで、磁性トナー粒子の表面に露出する磁性酸化鉄が多い領域と少ない領域が出来てしまい、磁性トナーの摩擦帯電が不安定になって、カブリや画像濃度薄の原因となる場合があった。さらに分散状態が悪い場合には、磁性トナー中に、磁性酸化鉄が含まれていない粒子(空玉)が存在してしまい、現像器から飛散して機内を汚染する場合があった。
【0007】
このような問題を防ぐ為に、高粘度のポリエステル樹脂に磁性酸化鉄を均一に分散させようとすると、混練温度を高く設定して、結着樹脂の溶融粘度を低くした状態で磁性酸化鉄と混練する必要があった。しかし、高い温度で混練すると、ワックスの溶融粘度が大幅に低下して、磁性酸化鉄がワックス中にも分散してしまうという問題があった。
【0008】
トナー粒子の製造時の粉砕工程では、混練物は結着樹脂とワックスの界面で粉砕されやすい為に、ワックス中に磁性酸化鉄が分散していると、磁性酸化鉄がトナー粒子から外れて遊離しやすくなり、感光体へのトナー融着や接触帯電部材汚染の原因となる場合があった。
【0009】
従来、磁性トナー粒子に含有される磁性酸化鉄に関し、特定の元素を表面及び内部に含有させることによって、流動性や高抵抗化を目的とした件が提案されている。例えば、0.10乃至1.00質量%のSiを含有し、表面にシリカとアルミナの共沈物が存在し、さらにその共沈物上にFe、Ti、Zr、Si、Alから選ばれた元素の酸化物粒子又は含水酸化物粒子が固着された磁性粒子粉末が開示されている(特許文献1)。また、TiとFeの複合酸化鉄層にて被覆されたことを特徴とする酸化鉄粒子が開示されている(特許文献2)。さらに、少なくとも、SiとZnとTiを含有し、磁性酸化鉄の表面から5%を溶解させたときの、それぞれの溶解率を規定した磁性酸化鉄を含有するトナーが開示されている(特許文献3)。
【0010】
これらの試みは、最表層にTiやZnを局在させることにより、磁性体の流動性や高抵抗化をある程度達成しているが、ポリエステル樹脂やワックスとの親和性という観点で、磁性酸化鉄の表面性を制御はしておらず、高粘度ポリエステル樹脂への分散性を制御するという点では更に改善する余地がある。
【0011】
また、粒子の中心から表面へ連続的にケイ素成分を含有し、ケイ素成分と結合したZn、Mn、Cu、Ni、Co、Cr、Cd、Al、Sn、Mg、Tiの中から選ばれる少なくとも一種以上の金属成分からなる金属化合物によって外殻が被覆され、かつ外殻部と内殻部とで、Feに対する上記金属成分の濃度が外殻部の方が高く、かつ表層部の方が高くなるように勾配をつけたマグネタイト粒子が開示されている(特許文献4)。さらに、ケイ素成分が露出した芯粒子に、Al成分を被覆したことを特徴とする酸化鉄粒子が開示されている(特許文献5)。
【0012】
これらの試みは、表面から20%及び40%溶解させた場合の元素の存在量を制御することにより、効果を発揮している。しかし、磁性酸化鉄の表面性を制御するうえでは、表面から10%程度までの表面近傍の物性が重要であることから、特に高粘度ポリエステル樹脂への分散状態をさらに改良する必要がある。
【0013】
すなわち、高粘度のポリエステル樹脂を結着樹脂に用いた場合にも、トナー粒子中に均一に分散しており、かつ結着樹脂やワックスとの親和性を制御することでワックス中に磁性酸化鉄が分散しないようにすることは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−240306号公報
【特許文献2】特開2004−161551号公報
【特許文献3】特開2004−354810号公報
【特許文献4】特許第3224774号公報
【特許文献5】特許第3544316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、従来技術における上記のような事情に鑑み、その課題を改善することを目的としてなされたものである。
即ち、本発明の目的は、感光体へのトナー融着や接触帯電部材汚染を抑制し、カブリの発生や濃度薄を抑制する磁性トナーを提供することにある。
さらに本発明の目的は、空玉による機内汚染を起こさない磁性トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意検討の結果、下記磁性トナーによって、本発明の目的を達成しうることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、結着樹脂、ワックス及び磁性酸化鉄を少なくとも含有するトナー粒子と、無機微粒子とを有する磁性トナーであって、
該結着樹脂は、溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度T10,000が120℃以上150℃以下であるポリエステル樹脂Aを含有し、
該磁性酸化鉄20質量部を酢酸エチル80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿面の高さについて経時変化を測定した酢酸エチル沈降試験において、静置して10分後の液面高さをEtA、沈殿面高さをVEtAとしたとき、VEtAとEtAとの比VEtA/EtAが0.80以下であり、
該磁性酸化鉄20質量部をイソプロピルアルコール80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿面の高さについて経時変化を測定したイソプロピルアルコール沈降試験において、静置して10分後の沈殿面高さをVIPAとしたとき、VIPAとVEtAとの比VIPA/VEtAが、1.20以上2.50以下であることを特徴とする磁性トナーに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、感光体へのトナー融着や接触帯電部材汚染の発生が抑制され、カブリの発生や濃度薄の発生が抑制されている磁性トナーを提供することが可能である。更に、空玉による機内汚染を起こさない磁性トナーを提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で用いる結着樹脂は、溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度T10,000が120℃以上150℃以下であるポリエステル樹脂Aを含有することが重要である。本発明者らは、磁性酸化鉄の分散性とポリエステル樹脂の溶融粘度についての関係を調べたところ、ポリエステル樹脂の溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度T10,000が120℃以上150℃以下(好ましくは125℃以上145℃以下、より好ましくは130℃以上140℃以下)の範囲の時に、良好な分散状態の磁性トナーが得られることを見出した。
【0019】
この理由は明確にはなっていないが、以下のように推測している。溶融混練により、結着樹脂中に磁性酸化鉄を分散させる場合、結着樹脂の溶融粘度が10,000Pa・sである時に、最も磁性酸化鉄の分散状態が良好となる。一方で、磁性トナー粒子の製造時の混練工程では、磁性酸化鉄を結着樹脂中に分散させる際の混練物の温度は120℃以上150℃以下の範囲になっている為、結着樹脂の溶融粘度が10,000Pa・sになる温度がこの範囲であると、非常に優れた磁性酸化鉄の分散状態が得られるものと考えられる。つまり、従来の軟化点のような粘度の表わし方ではなく、特定の粘度になる温度を限定する必要があることを示している。
【0020】
ポリエステル樹脂Aの溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度T10,000が120℃未満であると、溶融混練時に結着樹脂の粘度が低すぎて混練の負荷が低くなり、磁性酸化鉄の分散が悪化して、現像性が低下したり、カブリが発生する傾向がある。T10,000が150℃より大きいと、溶融混練時に結着樹脂が充分に溶融できない為、磁性酸化鉄が結着樹脂中に入り込みにくくなって偏析してしまい、磁性トナー粒子表面への磁性酸化鉄の露出の多い部分と少ない部分が存在してしまう。その結果、長期の使用により磁性トナーの摩擦帯電性が低下して、濃度薄が発生しやすくやカブリが発生しやすくなる。また、磁性トナー中に空玉が多く存在してしまい、空玉が機内に飛散して本体を汚染してしまうという問題が起こることがある。磁性トナーは現像スリーブ上に磁力で保持されているが、空玉は磁性酸化鉄を含まず、磁力を持たない為、現像スリーブ上に保持されずに飛散して、機内汚染の原因となりやすい。
【0021】
さらに本発明で用いられる磁性酸化鉄は、磁性酸化鉄20質量部を酢酸エチル80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿部分の体積について経時変化を測定した酢酸エチル沈降試験において、静置して10分後の酢酸エチル/磁性酸化鉄混合物の体積をEtA、磁性酸化鉄の沈殿部分の体積をVEtAとしたとき、VEtAとEtAとの比VEtA/EtAが0.80以下であることが重要である。同時に、磁性酸化鉄20質量部をイソプロピルアルコール80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿部分の体積について経時変化を測定したイソプロピルアルコール沈降試験において、静置して10分後の磁性酸化鉄の沈殿部分の体積をVIPAとしたとき、VIPAとVEtAとの比VIPA/VEtAが1.20以上2.50以下であることが重要である。
【0022】
本発明では、磁性酸化鉄とワックスとの親和性をあらわす指標として、酢酸エチル沈降試験を行っている。酢酸エチルは、極性がワックスに近いため、酢酸エチル沈降試験で得られる磁性酸化鉄の物性は、磁性酸化鉄表面とワックスとの親和性を表わす指標として好ましく用いられる。
【0023】
酢酸エチル沈降試験は、磁性酸化鉄を酢酸エチルに十分に分散させた後、静置し、沈澱体積の減少速度を評価している。沈澱体積の減少速度が大きい(VEtA/EtAが小さい)ことは、磁性酸化鉄が酢酸エチルになじみにくいことを意味し、磁性酸化鉄とワックスとの親和性が低く、磁性酸化鉄がワックス中には分散しにくいことを表わしている。逆に、沈澱体積の減少速度が小さい(VEtA/EtAが大きい)ことは、磁性酸化鉄が酢酸エチルになじみやすいことを意味し、磁性酸化鉄とワックスとの親和性が高く、磁性酸化鉄がワックス中に分散しやすいことを表わしている。
【0024】
一方、イソプロピルアルコール沈降試験は、磁性酸化鉄をイソプロピルアルコールに十分に分散させた後、静置し、沈澱体積の減少速度を評価している。イソプロピルアルコールは極性がポリエステル樹脂に近いため、イソプロピルアルコール沈降試験で得られる磁性酸化鉄の物性は、磁性酸化鉄表面とポリエステル樹脂との親和性を表わす指標として好ましく用いられる。
【0025】
磁性酸化鉄のVIPAとVEtAとの比VIPA/VEtAは、ポリエステル樹脂との親和性と、ワックスとの親和性の関係を示している。値が大きいほどポリエステル樹脂との親和性が高くてワックスとの親和性が低いことを示しており、逆に値が小さければポリエステル樹脂との親和性が低くてワックスとの親和性が高いことを示している。
【0026】
本発明で用いる磁性酸化鉄は、VEtA/EtAが0.80以下であり、かつ、VIPA/VEtAが1.20以上2.50以下であることが必要である。VEtA/EtAが0.80以下であるということは、磁性酸化鉄表面とワックスとの親和性が低いことを示しており、さらに、VIPA/VEtAが1.20以上2.50以下であることで、磁性酸化鉄表面とポリエステル樹脂との親和性が高いことを示している。即ち、本発明の磁性酸化鉄は、ポリエステル樹脂中に分散しやすく、ワックス中に分散しにくい特性を持つことを表わしている。
【0027】
このような特性を持つ磁性酸化鉄を用いることで、磁性酸化鉄がワックス中には分散せず、ポリエステル樹脂中に均一に分散させた磁性トナー粒子を得ることが出来る。ワックス中に磁性酸化鉄が存在せず、結着樹脂中に磁性酸化鉄が存在することで、磁性トナー粒子の製造時の粉砕工程で遊離の磁性酸化鉄が発生しにくくなり、感光体へのトナー融着や接触帯電部材汚染を抑制することが可能になる。
【0028】
磁性酸化鉄のVEtA/EtAが0.80より大きいと、磁性酸化鉄とワックスの親和性が高すぎて、磁性酸化鉄がワックス中に存在しやすくなってしまう。その結果、磁性トナー粒子の製造時の粉砕工程で、遊離の磁性酸化鉄が発生しやすくなり、感光体へのトナー融着や接触帯電部材汚染が発生しやすくなる。
EtA/EtAが小さいほど、磁性酸化鉄がワックス中に分散しにくくなる為、好ましい。但し、磁性酸化鉄が酢酸エチルに完全に沈殿しきった状態でも、沈殿の体積は磁性酸化鉄自体の体積よりも小さくなることはないので、VEtA/EtAはゼロにはならない。
【0029】
磁性酸化鉄のVIPA/VEtAが1.20未満であると、磁性酸化鉄がポリエステル樹脂中だけでなく、ワックス中にも存在しやすくなる為、感光体へのトナー融着や接触帯電部材汚染が発生しやすくなる。
IPA/VEtAが2.50より大きいと、磁性酸化鉄がポリエステル樹脂にのみ選択的に分散しすぎて、溶融混練時にワックスに混練の負荷がかかりにくくなり、ワックスの分散性が低下して、長期の使用により磁性トナーの現像性が低下する場合がある。
【0030】
ポリエステル樹脂Aは、テトラヒドロフラン不溶分を5質量%以上50質量%以下(好ましくは10質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上35質量%以下)含有することが好ましい。テトラヒドロフラン不溶分をこの範囲の割合で含有することで、混練物の溶融粘度が最適化され、磁性酸化鉄の分散性が良好となる。
ポリエステル樹脂Aは、現像性、耐久性の観点から、テトラヒドロフラン可溶分の分子量分布において、数平均分子量(Mn)が2,000以上50,000以下であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)が10,000以上1,000,000以下であることが好ましく、メインピーク分子量が3,000以上30,000以下の範囲にあることが好ましい。
ポリエステル樹脂Aは、磁性トナーの帯電安定性の観点から、酸価が1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下(好ましくは10mgKOH/g以上80mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下)であることが好ましい。また、水酸基価が1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下(好ましくは20mgKOH/g以上90mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以上70mgKOH/g以下)であることが好ましい。
ポリエステル樹脂Aは、定着性と保存性のバランスから、ガラス転移温度(Tg)が45℃以上70℃以下(好ましくは50℃以上65℃以下)であることが好ましい。
【0031】
本発明の磁性トナーは、ワックスを含有するポリエステル樹脂Bを含有し、該ポリエステル樹脂Bは、軟化点が80℃以上115℃以下であるポリエステル樹脂Cと、該ポリエステル樹脂C100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下(好ましくは10質量部以上40質量部以下)のワックスを含有することが好ましい。
【0032】
軟化点が80℃以上115℃以下であるポリエステル樹脂Cを含有することで、より良好な磁性酸化鉄の分散性が得られる為、好ましい。また、上記軟化点のポリエステル樹脂にワックスを含有させることで、磁性トナー粒子中でのワックス分散を大幅に改良することが出来る為、好ましい。軟化点の低いポリエステル樹脂Cにワックスを含有させることで、溶融混練時にワックスとポリエステル樹脂が同時に溶融する為、ワックスの分散を改良することが可能になる。
【0033】
一方で、多量のワックスを含有する樹脂を溶融混練で混合しようとすると、混練物中で局在化しているワックスが急激に溶融するので、磁性酸化鉄がワックス中に分散して、遊離の磁性酸化鉄が発生する可能性がある。
【0034】
しかし、本発明に使用する磁性酸化鉄はワックスには分散せずに、ポリエステル樹脂に分散しやすい特性を持つ為、ポリエステル樹脂C100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下という多量のワックスを含有する樹脂を用いても、磁性酸化鉄がワックス中に分散しにくく、ポリエステル樹脂中に分散しやすい為、磁性酸化鉄の遊離による問題が起こりにくい。その結果、定着性、ワックスの分散及び磁性酸化鉄の分散のバランスが改善され、かつ遊離に磁性酸化鉄による画像問題の起こらない磁性トナーを得ることが出来る。
【0035】
ポリエステル樹脂Cの軟化点は、磁性酸化鉄の分散性と現像性のバランスから、80℃以上115℃以下(好ましくは85℃以上110℃以下、より好ましくは85℃以上105℃以下)であることが好ましい。
ポリエステル樹脂Cは、現像性、耐久性の観点から、テトラヒドロフラン可溶分の分子量分布において、数平均分子量(Mn)が2,000以上10,000以下であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)が3,000以上30,000以下であることが好ましく、メインピーク分子量が3,000以上15,000以下の範囲にあることが好ましい。
ポリエステル樹脂Cは、磁性トナーの摩擦帯電の安定性の観点から、酸価が1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下(好ましくは5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上40mgKOH/g以下)であることが好ましい。また、水酸基価が1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下(好ましくは10mgKOH/g以上80mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以上50mgKOH/g以下)であることが好ましい。
ポリエステル樹脂Cは、磁性酸化鉄の分散性の観点から、テトラヒドロフラン不溶分を5質量%以下(好ましくはテトラヒドロフラン不溶分を含有しない)含有することが好ましい。
ポリエステル樹脂Cは、定着性と保存性のバランスから、ガラス転移温度(Tg)が45℃以上70℃以下(好ましくは50℃以上65℃以下)であることが好ましい。
【0036】
本発明に用いられる結着樹脂は、ポリエステル樹脂Aを55質量%以上90質量%以下含有し、ポリエステル樹脂Cを10質量%以上45質量%以下含有することが好ましい。ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Cをこの比率で含有することで、優れた定着性と高温オフセット性、現像耐久性を実現することが可能になる。
【0037】
本発明で用いられるポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記式(A)で表わされるビスフェノール及びその誘導体;下記式(B)で示されるジオール類が挙げられる。
【0038】
【化1】

(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+y平均値は0乃至10である。)
【0039】
【化2】

x’及びy’は、0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0乃至10である。)
【0040】
2価の酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステルの如きジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
【0041】
本発明においては、芳香族カルボン酸化合物を90モル%以上含有したカルボン酸成分と、アルコール成分を縮重合したポリエステルであることが好ましく、芳香族カルボン酸化合物の80モル%以上が、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸であることが、磁性酸化鉄やワックスの均一な分散性を高めるという点で好ましい。
【0042】
また、架橋成分として働く3価以上のアルコール成分や3価以上の酸成分を単独で使用するか、もしくは併用することが、磁性酸化鉄やワックスのより均一な分散性を達成するうえで好ましい。3価以上の多価アルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンが挙げられる。特に好ましい三価以上の多価アルコール成分として、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルが挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルは、ノボラック型フェノール樹脂と、分子中1個のエポキシ環を有する化合物とがエーテル結合した構造を有する。ノボラック型フェノール樹脂中のフェノール類の数平均の核体数は通常3乃至60、好ましくは3乃至20、さらに好ましくは4乃至15である。また軟化点(JIS K2531;環球法)は、通常40乃至180℃、好ましくは40乃至150℃、さらに好ましくは50乃至130℃である。軟化点が40℃未満では常温でブロッキングし取り扱いが困難となる。また軟化点が180℃を超えるとポリエステル樹脂の製造過程でゲル化を引き起こすことがあり好ましくない。
【0043】
前記分子中1個のエポキシ環を有する化合物の具体例としては、例えばエチレンオキサイド(EO)、1,2−プロピレンオキサイド(PO)、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリンを挙げることができる。また炭素数1乃至20の脂肪族一価アルコールもしくは一価フェノールのグリシジルエーテルも使用できる。これらの中ではEO及び/又はPOが好ましい。
【0044】
ノボラック型フェノール樹脂1モルに対する、分子中1個のエポキシ環を有する化合物の付加モル数は通常1乃至30モル、好ましくは2乃至15モル、さらに好ましくは2.5乃至10モルであり、またノボラック型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基1個に対する分子中1個のエポキシ環を有する化合物の平均付加モル数は通常0.1乃至10モル、好ましくは0.1乃至4モル、さらに好ましくは0.2乃至2モルである。
【0045】
本発明で特に好ましく用いられるノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの構造を例示する。
【0046】
【化3】

(式中Rはエチレン基又はプロピレン基であり、xは0以上の数であり、y1乃至y3は0以上の同一又は異なった数である。)
【0047】
三価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;下記式(C)で表わされるテトラカルボン酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
【0048】
【化4】

(式中Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5〜30のアルキレン基又はアルケニレン基)
【0049】
上記アルコール成分としては40乃至60mol%、好ましくは45乃至55mol%、酸成分としては60乃至40mol%、好ましくは55乃至45mol%であることが好ましい。
【0050】
上記ポリエステル樹脂は通常一般に知られている縮重合によって得られる。ポリエステル樹脂の重合反応は通常触媒の存在下温度150乃至300℃、好ましくは温度170乃至280℃の温度条件下で行われる。また反応は常圧下、減圧下、もしくは加圧下のいずれでも行うことができるが、所定の反応率(例えば30乃至90%程度)に到達後は反応系を200mmHg以下、好ましくは25mmHg以下、更に好ましくは10mmHg以下に減圧し、反応を行うのが好ましい。
【0051】
上記触媒としては、ポリエステル化に用いられる以下の触媒が挙げられる。スズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウムの如き金属;これら金属を含有する化合物(ジブチルスズオキサイド、オルソジブチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸コバルト、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン)。
【0052】
本発明では、重合反応の制御のしやすさからチタン化合物が好ましく用いられる。特に好ましいものとしてテトライソプロピルチタネート、シュウ酸チタニル二カリウムが挙げられる。この際、結着樹脂の着色防止として酸化防止剤(特にリン系酸化防止剤)や、反応促進剤として助触媒(マグネシウム化合物が好ましく、特に酢酸マグネシウムが好ましい)を添加することが特に好ましい。
【0053】
反応物の性質(例えば酸価、軟化点等)が所定の値に到達した時点、あるいは反応機の撹拌トルクまたは撹拌動力が所定の値に到達した時点で反応を停止させることによって本発明のポリエステル系樹脂を得ることができる。
【0054】
本発明に用いられる磁性トナー粒子はワックスを含有する。ワックスとして、磁性トナー粒子中での分散のしやすさ、離型性の高さから、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックスの如き炭化水素系ワックスが好ましく用いられる。必要に応じて一種又は二種以上のワックスを、少量併用してもかまわない。併用されるワックスとしては以下のものが挙げられる。
酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの)、また、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;また、ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、また、植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0055】
また、上記ワックスの示差走査型熱量計(DSC)で測定される昇温時の最大吸熱ピークのピーク温度で規定される融点は、70℃以上140℃以下であることが好ましく、より好ましくは80℃以上120℃以下である。融点がこの温度範囲である時に、定着性、耐高温オフセット性、現像耐久性に優れた性能を発揮する。上記ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度(以下、融点ともいう)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0056】
具体的には、ワックス10mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30乃至200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、DSC測定における吸熱曲線の最大吸熱ピークとする。そして、この最大吸熱ピークのピーク温度を求める。
【0057】
本発明に用いられる磁性酸化鉄は、酢酸エチル沈降試験とイソプロピルアルコール沈降試験において、前記特性が得られれば、達成手段は限定しない。
【0058】
特に本発明では、磁性酸化鉄の合成工程でTiやAl、Si等の元素を添加し、これら元素を磁性酸化鉄内部に取り込ませながら合成し、磁性酸化鉄の表面性を制御したものが、好ましく用いられる。このように内部からTiやAl、Si等の元素が存在することで、これら元素が磁性酸化鉄表面に強固に固定化されるため、混練時に強い力がかかっても磁性酸化鉄の表面が変化しにくく、ポリエステル樹脂やワックスへの分散性を良好に保てるので好ましい。
【0059】
特に本発明では、以下の特性を有する磁性酸化鉄が好ましく用いられる。
i)Ti成分、及びAl成分を少なくとも含有し;
ii)Ti成分の含有量は、Ti元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.30質量%以上5.00質量%以下(好ましくは0.30質量%以上4.00質量%以下、より好ましくは0.30質量%以上3.00質量%以下)であり;
iii)Al成分の含有量は、Al元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.10質量%以上3.00質量%以下(好ましくは0.10質量%以上2.50質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上2.00質量%以下)であり;
iv)磁性酸化鉄に含まれるAl成分をアルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の50.0%以上95.0%以下(好ましくは55.0%以上95.0%以下、より好ましくは60.0%以上95.0%以下)であり;
v)磁性酸化鉄に含まれるAl成分をアルカリ水溶液で溶出した後の磁性酸化鉄をさらに酸水溶液で溶解し、Fe元素溶解率10質量%までの範囲に含まれるAl成分量と、前記アルカリ水溶液で溶出されるAl成分量の合計が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の95.0%以上100.0%以下(好ましくは96.0%以上100.0%以下、より好ましくは97.0%以上100.0%以下)であり;
vi)Fe元素溶解率10質量%までの範囲に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Al成分量のAl元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Al成分量のAl元素換算値)は、2.0以上30.0以下(好ましくは2.2以上25.0以下、より好ましくは2.5以上20.0以下)
であることが好ましい。
【0060】
Ti成分の含有量が、Ti元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.30質量%以上5.00質量%以下の場合に、磁性トナーの流動性や帯電性が良好となり、高い画像濃度やカブリの少ない画像を得られる。
【0061】
Al成分の含有量が、Al元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.10質量%以上3.00質量%以下である場合に、磁性酸化鉄の電気抵抗を高く保つことが可能となり、高温高湿環境での磁性トナーの摩擦帯電性を高くすることが出来る。
【0062】
また、磁性酸化鉄に含まれるAl成分をアルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の50.0%以上95.0%以下である場合に、磁性酸化鉄の電気抵抗を高くし、かつ、磁性酸化鉄表面のAl成分を磁性酸化鉄に強固に付着させることが可能になり、溶融混練時に磁性酸化鉄に強い力がかかっても磁性酸化鉄表面からAl成分がはずれにくくなる為、好ましい。この理由に関しては明確にはなっていないが、アルカリ水溶液による溶出過程においては、Fe成分とTi成分はほとんど溶出しない為、最表層のAl成分のみが溶出すると考えられ、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の多くを磁性酸化鉄の最表面に存在させることで、磁性酸化鉄の電気抵抗をより高く制御し、かつ最表面以外の内層にも存在させることで、Al成分を磁性酸化鉄表面に強く付着させることが出来るためと考えている。
【0063】
また、磁性酸化鉄に含まれるAl成分をアルカリ水溶液で溶出した後の磁性酸化鉄をさらに酸水溶液で溶解し、Fe元素溶解率10質量%までの範囲に含まれるAl成分量と、前記アルカリ水溶液で溶出されるAl成分量の合計が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の95.0%以上100.0%以下であることが好ましい。Al成分量がこの範囲にあると、磁性酸化鉄に含まれるAl成分のほとんどが、磁性酸化鉄の最表層及び表層付近に集中して存在していることになる為、磁性酸化鉄の電気抵抗を高く保つことが可能になる。その結果、高温高湿環境でも高い画像濃度を得ることが出来るようになる。
【0064】
また、本発明においては、Fe元素溶解率10質量%までの範囲に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Al成分量のAl元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Al成分量のAl元素換算値;以下、単にTi/Al比ともいう)は、2.0以上30.0以下であることが好ましい。Ti/Al比が、上記範囲であることにより、磁性酸化鉄のポリエステル樹脂、及びワックスへの親和性が最適のバランスとなる。この理由は定かではないが、本発明者らの検討では、Ti/Al比をこの範囲にすることで、酢酸エチル沈降試験やイソプロピルアルコール沈降試験で得られる、VEtA/EtAや、VIPA/VEtAが本発明の好ましい範囲になることから、おそらく、磁性酸化鉄表層のTi/Al比をこの範囲にすることで、磁性酸化鉄表面のポリエステル樹脂、及びワックスへの親和性のバランスが調整されていると思われる。
【0065】
また、本発明の磁性酸化鉄はSi成分を、Si元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して0.10乃至4.00質量%(好ましくは0.15乃至3.50質量%、より好ましくは0.20乃至3.00質量%)含有することが好ましい。
さらには、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液で溶解したときに溶出されるSi元素量が、磁性酸化鉄に含まれる全Si元素量の5.0乃至30.0%(好ましくは8.0乃至27.0%、より好ましくは10.0乃至25.0%)であることが好ましい。
磁性酸化鉄がSi成分を上述の範囲で含有することにより、磁性トナーの摩擦帯電性が良好となり、高い画像濃度と、カブリの少ない画像を得ることが出来る。
【0066】
さらには、アルカリ水溶液で溶出される磁性酸化鉄最表層のSi元素量を、上記範囲に設定することで、結着樹脂中への磁性酸化鉄の均一分散性を高めるだけでなく、結着樹脂と磁性酸化鉄の密着性も高めることができ、磁性トナー中に含まれる遊離の磁性酸化鉄の数を大幅に減らすことが可能になる。
【0067】
本発明で用いられる磁性酸化鉄は、Fe元素溶解率が10質量%までの範囲に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Si成分量のSi元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Si成分量のSi元素換算値)(以下、単にTi/Si比ともいう)が、1.0以上5.0以下(好ましくは1.2以上4.5以下、より好ましくは1.4以上4.0以下)であることが好ましい。
Ti/Si比が上記範囲にある場合、磁性酸化鉄が磁性トナーの摩擦帯電性を高めるとともに、適度な吸湿性も持つようになるため、低温低湿環境でも磁性トナーがチャージアップしにくくなり、カブリを低減できる。
【0068】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄は、透過型電子顕微鏡写真による観察で、磁性酸化鉄粒子が主に平滑面を有さない曲面で形成された球形状粒子から構成され、八面体粒子を殆ど含まないことが好ましい。
【0069】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄は、後述する測定方法に基づく個数平均粒径が、0.05乃至0.50μmであることが好ましく、より好ましくは0.08乃至0.40μmであり、さらに好ましくは、0.10乃至0.30μmである。当該個数平均粒径を上記範囲にすることで、磁性トナー粒子を構成する結着樹脂中での磁性酸化鉄の分散性、及び、磁性トナーの摩擦帯電の均一性をより向上させることができる。
【0070】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄は、後述する測定方法に基づくBET比表面積が、5.0m2/g以上15.0m2/g以下であることが好ましく、より好ましくは、6.0m2/g以上13.0m2/g以下である。当該BET比表面積を上記範囲にすることで、磁性トナーの摩擦帯電性に影響する磁性酸化鉄の水分吸着量を適正化しやすい。
【0071】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄の磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10.0乃至200.0Am2/kgであることが好ましく、より好ましくは60.0乃至100.0Am2/kgであり、残留磁化が1.0乃至100.0Am2/kgであることが好ましく、より好ましくは2.0乃至20.0Am2/kgであり、保磁力が1.0乃至30.0kA/mであることが好ましく、より好ましくは2.0乃至15.0kA/mである。このような磁気特性を有することで、磁性トナーが画像濃度とかぶりのバランスのとれた良好な現像性を得ることができる。
【0072】
本発明では、合成の終了した磁性酸化鉄に対し、乾式で行う、メカノケミカル処理を施すことが好ましい。メカノケミカル処理を行うことで、磁性酸化鉄の表面を平滑化し、磁性酸化鉄表面に存在するAl元素、Ti元素、Si元素をより強固に磁性酸化鉄表面に付着させることが出来る。その結果、ポリエステル樹脂やワックスと磁性酸化鉄表面との親和性を、より最適な状態に制御することが可能になり、磁性トナー粒子中での磁性酸化鉄の分散性が向上できるので、好ましい。
このような装置の具体例としては、サンドミル、遊星ミル等が挙げられる。メカノケミカル処理は、磁性酸化鉄粒子の酸化が進まないように、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、さらには磁性酸化鉄粒子を50℃以上200℃以下に加熱しながら行うことが、処理時間を短縮できるので好ましい。
メカノケミカル処理の強度は、磁性酸化鉄粒子が破壊されない程度に、適宜調整を行う。例えば、サンドミルを用いる場合には、線圧を150乃至200kgf/cmとすることが好ましい。メカノケミカル処理の処理時間は、5分間以上60分間以下が好ましい。
【0073】
本発明の磁性トナーにおいて、上記磁性酸化鉄の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、磁性酸化鉄が30乃至150質量部であることが好ましく、より好ましくは磁性酸化鉄が50乃至120質量部である。磁性酸化鉄の含有量がこの範囲である場合に、画像濃度とカブリのバランスに優れる。
【0074】
本発明で用いられる磁性酸化鉄の製造方法について例示する。
(第一工程)
硫酸第一鉄水溶液、ケイ酸ソーダ、水酸化ナトリウム及び水を混合し、混合溶液を調製する。この混合溶液の温度を90℃に維持し、かつpHを6乃至9に維持しながら空気を吹き込み、液中に生成した水酸化第一鉄を湿式酸化する。水酸化第一鉄が、当初の量に対して、70乃至90%消費された時点で生成されたマグネタイト粒子の中心域の形成を確認する。
(第二工程)
第一工程を行っている途中に、液中における未反応の水酸化第一鉄の濃度を調べることで酸化反応の進行率を調べ、上記水酸化第一鉄が、当初の量に対して70乃至90%消費された時点を特定する。特定された時点において、第一工程で用いたものと同濃度の硫酸第一鉄水溶液と、硫酸チタニル、硫酸アルミニウムを当該溶液に加え、更に水を加えて液量を調整する。これに、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを9乃至12に調整する。この溶液には、第一工程で加えたケイ酸ソーダが残存している。液温90℃にて空気を吹き込み湿式酸化を進行させ、中間域を生成させる。
(第三工程)
第二工程を行っている途中に、液中における未反応の水酸化第一鉄が、95乃至99%消費された時点で空気の吹き込みを停止し、ケイ酸ソーダ、及び硫酸アルミニウムを当該溶液に添加する。また、希硫酸を添加して液のpHを5乃至9に調整する。
(第四工程)
このようにして得られたマグネタイト粒子を、常法により洗浄、ろ過、乾燥させ、粉砕した後、好ましくはメカノケミカル処理を施して、磁性酸化鉄を得る。
【0075】
なお、本発明に用いられる磁性酸化鉄は、特に第一工程において、水酸化第一鉄が、当初の量に対して、70乃至90%消費された時点で第二工程に移行し、第二工程で、硫酸チタニルを添加し、その際の硫酸チタニルと硫酸アルミニウムの量を適宜調整し、かつ、第二工程でのpHを9乃至12に調整し、さらに、水酸化第一鉄が、95乃至99%消費された時点で第三工程に移行し、第三工程において、ケイ酸ソーダと硫酸アルミニウムの添加量を適宜調整することによって、上記特性を付与することが可能である。
【0076】
本発明における各種物性データの測定法を以下に詳述する。
【0077】
<1>酢酸エチル沈降試験
磁性酸化鉄の酢酸エチル沈降試験測定方法を以下に述べる。
(1)磁性酸化鉄20g、酢酸エチル30gを有栓耐圧性ガラス瓶に入れ、ペイントシェーカで5分間しんとうすることで磁性酸化鉄を酢酸エチルに分散させ、スラリーを得る。
(2)前記スラリー20g、酢酸エチル20gをメスシリンダーに入れ、メスシリンダーの口をゴム栓でふさぐ。メスシリンダーは、JIS R−3504規格取得の50mLメスシリンダーを用いる。メスシリンダーとしては、たとえば柴田科学製3Zを用いることができる。
(3)ゴム栓をしたメスシリンダーを10秒間手で振り、これを水平な台上に静置する。静置と同時にストップウォッチをスタートし、計時を開始する。静置後、時間経過とともに磁性酸化鉄が沈殿していき、酢酸エチルの上澄み部分と、磁性酸化鉄の沈殿部分との境界が目視で確認できるようになる。
(4)静置して10分後に、メスシリンダー上部の空気と上澄み部分の液面との境界面、上澄み部分と沈殿部分の境界面、をそれぞれメスシリンダーの目盛りから読み取る。メスシリンダー上部の空気と上澄み部分の液面との境界面から読み取った体積をEtAとし、上澄み部分と沈殿部分の境界面から読み取った体積をVEtAとする。なお沈澱部分の境界面が荒れている場合、山と谷の平均を線引きして計測する。
(5)(1)乃至(4)の操作を繰り返し行い、3回の測定値の平均値をEtA、VEtAとし、VEtAとEtAとの比、VEtA/EtAを算出する。
【0078】
<2>イソプロピルアルコール沈降試験
酢酸エチルをイソプロピルアルコールに変更する以外は酢酸エチル沈降試験と同様にして、VIPAを求め、VIPAとVEtAとの比、VIPA/VEtAを算出する。
【0079】
<3>磁性酸化鉄に含まれるAl成分、又はSi成分をアルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量又はSi成分量の定量方法。
(1)試料の調製
磁性酸化鉄0.9gを計量し、メチルペンテン製ビーカーに入れる。次に、1mol/LのNaOHを25ml計量して、ビーカー中に投入する。回転子をビーカーに入れて、蓋をし、ホットスターラー上で4時間加温・撹拌(液温70℃)した後、放冷する。放冷後、回転子に付着している磁性酸化鉄を含め、全ての磁性酸化鉄をメスシリンダー中に純水で流しいれる。純水で液量を125mlに調整後、ビーカーに移し変えて十分に撹拌させる。その後、磁石上にビーカーを静置し、上澄みが透明になるまで磁性酸化鉄を沈降させる。沈降後、上澄みをろ過し、ろ液を得る。
(2)測定方法
得られたろ液をICP発光光度分析装置(商品名:ICPS2000、製造元:島津製作所)の誘導結合プラズマ中に噴霧し、波長288.16nm(Si)、波長396.15nm(Al)での発光強度を測定して、濃度既知の検量線液の発光強度と比較することで、当該ろ液中のAl元素濃度(mg/L)、Si元素濃度(mg/L)を定量する。
(3)上記検量線液の調製方法
100mLポリメスフラスコに、4gのNaOH、Si成分、及びAl成分を加え、イオン交換水で100mLに定容して、Si成分のSi元素濃度が[0〜50mg/L]の範囲にあり、Al成分のAl元素濃度が[0〜40mg/L]の範囲にある検量線液を数水準作製する。
(4)計算式
磁性酸化鉄に含まれるAl成分、又はSi成分を上記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量(Al元素換算値:[質量%])又はSi成分量(Si元素換算値:[質量%])は以下の式より算出する。
(式):Al成分量(Al元素換算値:[質量%])又はSi成分量(Si元素換算値:[質量%])=(L×0.125)/(S×1000)×100
但しL:各元素のICP測定値から得られた各元素の濃度(mg/L)
S:試料質量0.9(g)
【0080】
<4>Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含有される各元素の定量方法
(1)試料の調製
上記<3>の[(1)試料の調製]に記載された、試料調製終了後のビーカー内に沈降した磁性酸化鉄、即ち、磁性酸化鉄に含まれるAl成分、又はSi成分をアルカリ水溶液で溶出した後の磁性酸化鉄を集めて乾燥させる。得られた磁性酸化鉄の乾燥物を25g計量し、5Lガラスビーカーに入れる。次に、0.5mol/LのH2SO4を5L添加し撹拌しながら、ウォーターバス中で室温から80℃まで徐々に昇温させて、当該磁性酸化鉄を表面から徐々に溶解し、溶解液を得る。ここで、磁性酸化鉄が全て溶解された溶解液中に含まれるFe元素量を総Fe元素量としたときに、総Fe元素量の10質量%が溶解液に存在する状態まで磁性酸化鉄を溶解した溶解液(Fe元素溶解率10質量%溶解液という)を取得する。得られたFe元素溶解率10質量%溶解液(スラリー)を25ml採取する。採取したスラリーを0.1μmメンブランフィルターでろ過し、ろ液を得る。
(2)測定方法
得られたろ液を、ICP発光光度分析装置(商品名:ICPS2000、製造元:島津製作所)の誘導結合プラズマ中に噴霧し、波長288.16nm(Si)、波長396.15nm(Al)、波長334.94nm(Ti)、波長259.94nm(Fe)での発光強度を測定して、濃度既知の検量線液の発光強度と比較することで、当該ろ液中のSi元素濃度(mg/L)、Ti元素濃度(mg/L)、Al元素濃度(mg/L)、Fe元素濃度(mg/L)を定量する。
(3)上記検量線液の調製方法
1000mLポリメスフラスコに、51gのH2SO4、Fe成分、Si成分、Al成分、及びTi成分を加え、イオン交換水で1000mLに定容して、Fe成分のFe元素濃度が[100乃至4000mg/L]の範囲にあり、Si成分のSi元素濃度が[0乃至150mg/L]の範囲にあり、Al成分のAl元素濃度が[0乃至40mg/L]の範囲にあり、Ti成分のTi元素濃度が[0乃至30mg/L]の範囲にある検量線液を数水準作製する。
(4)計算式
上記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含有される、Si成分量(Si元素換算値:[質量%])、Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、Al成分量(Al元素換算値:[質量%])、及びFe成分量(Fe元素換算値:[質量%])は次式を用いて算出する。
(式):Si成分量(Si元素換算値:[質量%])、Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、Al成分量(Al元素換算値:[質量%])、又はFe成分量(Fe元素換算値:[質量%])
=(L×5)/(S×1000)×100
但しL:各元素のICP測定値から得られた各元素の濃度(mg/L)
S:試料質量25(g)
【0081】
<5>磁性酸化鉄に含有される全Si成分量(Si元素換算値[質量%])、全Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、又は全Al成分量(Al元素換算値:[質量%])の定量方法。
(1)試料の調製
磁性酸化鉄1.00gを計量し100mLフッ素樹脂製のビーカーに入れる。次に水10mL、濃塩酸16mLを添加後、加熱し、磁性酸化鉄を全て溶解する。冷却後、弗化水素酸(1+1)を4mL添加し、20分放置する。次に、得られた溶液を100mLポリメスフラスコに移して、界面活性剤(商品名:トリトンX[10g/L])を1mL添加し100mLにメスアップする。
(2)測定方法
上記調製された試料溶液をICP発光光度分析装置(商品名:ICPS2000、製造元:島津製作所)の誘導結合プラズマ中に噴霧し、波長288.16nm(Si)、波長396.15nm(Al)、波長334.94nm(Ti)での発光強度を測定して、濃度既知の検量線液の発光強度と比較することで、当該試料溶液中のSi元素(mg/L)、Ti元素(mg/L)、Al元素(mg/L)を定量する。
(3)上記検量線液の調製方法
1000mLポリメスフラスコに、16mLのHCl、4mLのHF(1+1)、1mLの界面活性剤(1%トリトンX)、650mgのFe、Si成分、Al成分、及びTi成分を加え、イオン交換水で1000mLに定容して、Si成分のSi元素濃度、Al成分のAl元素濃度、及びTi成分のTi元素濃度がそれぞれ[0乃至200mg/L]の範囲にある検量線液を数水準作製する。
(4)計算式
磁性酸化鉄に含有される全Si成分量(Si元素換算値[質量%])、全Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、又は全Al成分量(Al元素換算値:[質量%])は次式を用いて算出する。
(式):全Si成分量(Si元素換算値[質量%])、全Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、又は全Al成分量(Al元素換算値:[質量%])
=(L×0.1)/(S×1000)×100
但しL:各元素のICP測定値から得られた各元素の濃度(mg/L)
S:試料質量1.00(g)
本発明において使用される、磁性酸化鉄に含有される、(全)Ti成分量(Ti元素換算値:[質量%])、又は(全)Al成分量(Al元素換算値:[質量%])は、上記<5>の方法により算出される。
【0082】
本発明において使用される、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるAl成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量に対する割合(%)、又は、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるSi成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるSi成分量の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Si成分量に対する割合(%)は、上記<3>及び<5>の結果より算出される。
【0083】
本発明において、使用される磁性酸化鉄に含まれるAl成分をアルカリ水溶液で溶出した後の磁性酸化鉄をさらに酸水溶液で溶解し、溶解液を得、磁性酸化鉄が全て溶解された溶解液中に含まれるFe元素量を総Fe元素量としたときに、総Fe元素量の10質量%が溶解液に存在する状態まで磁性酸化鉄を溶解した溶解液(Fe元素溶解率10質量%溶解液)中に含まれるAl成分量と、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるAl成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量との合計の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量に対する割合(%)は、上記<3>、<4>及び<5>の結果より算出される。
【0084】
本発明において使用される、上記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Al成分量のAl元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Al成分量のAl元素換算値)、又は、上記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Si成分量のSi元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Si成分量のSi元素換算値)は、上記<4>の結果より算出される。
【0085】
<6>磁性酸化鉄の個数平均粒径の測定方法
透過型電子顕微鏡を用い、倍率30000倍で、磁性酸化鉄の写真を撮影する。当該写真に撮影された磁性酸化鉄粒子を無造作に100個選び、そのフェレ径を計測し、その平均値をもって、個数平均粒径とする。
【0086】
<7>磁性酸化鉄の比表面積の測定方法
比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用い、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
【0087】
<8>磁性酸化鉄の磁気特性の測定方法
振動試料型磁力計(VSM−3S−15、東英工業社製)を用いて、外部磁場795.8kA/mの下で測定する。
【0088】
<9>テトラヒドロフラン可溶分の分子量分布の測定方法
本発明において、結着樹脂のテトラヒドロフラン可溶分の分子量分布は以下の方法で測定される。
まず、室温で24時間かけて、サンプルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0089】
<10>テトラヒドロフラン不溶分の測定方法
結着樹脂を秤量し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28mm×10mm 東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてテトラヒドロフラン200mlを用いて、16時間抽出する。このとき、テトラヒドロフランの抽出サイクルが約5分に1回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、秤量することによって結着樹脂の不溶分を得る。
【0090】
結着樹脂が結着樹脂以外のテトラヒドロフラン不溶分(例えば、磁性体、顔料、ワックス、荷電制御剤)を含有している場合、円筒ろ紙に入れた結着樹脂の質量をW1gとし、抽出されたTHF可溶分の質量をW2gとし、トナーに含まれている樹脂成分以外のテトラヒドロフラン不溶成分の質量をW3gとすると、結着樹脂成分のテトラヒドロフラン不溶分の含有量は下記式から求められる。
テトラヒドロフラン不溶分(質量%)=[{W1−(W3+W2)}/(W1−W3)]×100
【0091】
<11>結着樹脂の酸価の測定法
本発明における結着樹脂の酸価の測定は、下記のように実施することができる。基本操作はJIS K0070に準ずる。
(1)結着樹脂の粉砕品0.5乃至2.0(g)を精秤し、結着樹脂の重さW(g)とする。
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
(3)0.1mol/リットルのKOHのメタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットとを用いての自動滴定が利用できる。)。
(4)この時のKOH溶液の使用量S(ml)とし、同時にブランクを測定しこの時のKOH溶液の使用量をB(ml)とする。
(5)次式により結着樹脂の酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=((S−B)×f×5.61)/W
【0092】
<12>結着樹脂の水酸基価の測定法
本発明における結着樹脂の水酸基価の測定は、下記のように実施することができる。
(A)試薬
(a)アセチル化試薬:無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜる。アセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス及び酸の蒸気に触れないようにし、褐色びんに保存する。
(b)フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95vol%)100mlに溶かす。
(c)0.5mol/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液:水酸化カリウム35gをできるだけ少量の水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1リットルとし、2〜3日間放置後ろ過する。標定はJIS K8006によって行う。
(B)操作
試料0.5gを丸底フラスコに正しくはかりとり、これにアセチル化試薬5mlを正しく加える。フラスコの口に小さな漏斗をかけ、95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首が浴の熱を受けて温度の上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円盤をフラスコの首の付根にかぶせる。1時間後フラスコを浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。さらに分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エチルアルコール5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗い、フェノールフタレイン溶液を指示薬として0.5mol/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。なお、本試験と並行して空試験を行う。
(C)計算式
次式によって結着樹脂の水酸基価を算出する。
A=[{(B+C)×f×28.05}/S]+D
但し、
A:結着樹脂の水酸基価
B:空試験の0.5mol/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
C:本試験の0.5mol/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:0.5mol/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
D:樹脂の酸価
【0093】
<13>結着樹脂のガラス転移点の測定法
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。測定は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、本発明におけるトナー及び結着樹脂のガラス転移点Tgとする。
【0094】
<14>軟化点及び溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度T10,000の測定法
本発明の軟化点、及び溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度T10,000とは、以下の方法により測定された値である。高化式フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
【0095】
溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度T10,000は、1℃刻みで温度と粘度の関係をプロットし、最初に溶融粘度10,000Pa・sに達する直前直後の温度と粘度を読み取る。次にこの2点の温度と粘度の関係を直線で近似し、近似直線を算出し、近似直線の式より粘度が10,000Pa・sに到達する温度を算出する。
【0096】
本発明の磁性トナーには、荷電制御剤を含有させることが好ましい。特に、本発明の磁性トナー粒子は、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体A(以下、重合体Aともいう)を含有することが好ましい。
【0097】
高温高湿下では、磁性酸化鉄の分散状態の影響により、磁性トナーの摩擦帯電性が低下する場合がある。しかしながら、上記重合体Aを含有させることにより、理由は定かではないが、高温高湿下での磁性トナーの摩擦帯電性を制御しやすくなる。
【0098】
荷電制御樹脂である上記重合体Aを単独で磁性トナーに含有させると、使用環境や使用状況によっては、磁性トナーが過剰に摩擦帯電して画像濃度が低下するチャージアップ現象が起こりやすくなる。しかし、本発明において、上記重合体Aと上記磁性酸化鉄とを同時に使用することにより、磁性トナーの過剰な摩擦帯電が抑制され、磁性トナーの摩擦帯電性を適切に制御しやすいことを見出した。
【0099】
さらに、本発明においては、磁性トナー粒子は、上記重合体A及び芳香族オキシカルボン酸又はその誘導体の金属化合物B(以下、化合物Bともいう)を同時に含有することがより好ましい。これにより、磁性トナーの帯電をより制御しやすく、上記重合体Aを添加することによるトナーの過剰帯電を効果的に抑制でき、高い画像濃度と少ないカブリを両立させやすい。
【0100】
上記化合物Bは、磁性トナー粒子製造の溶融混練工程で結着樹脂のカルボキシル基と相互作用、すなわち配位子の交換反応と推定される一種の錯形成反応を行い、結着樹脂に架橋構造を形成する。その結果、溶融混練工程で適度なシェアがかかり、重合体Aが磁性トナー粒子中に微分散しやすく、重合体Aの添加効果をより発揮することが可能になる。
【0101】
さらに、本発明においては、磁性トナー粒子は、上記重合体A、上記化合物B及びアゾ系鉄化合物C(以下、化合物Cともいう)を同時に含有することがさらに好ましい。これにより、磁性トナーの摩擦帯電をさらに制御しやすく、上記重合体Aを添加することによる磁性トナーの過剰な摩擦帯電を抑制でき、高い画像濃度と少ないカブリをより高いレベルで両立させやすい。
【0102】
明確ではないが、3者を同時に含有させた場合に、効果を発現する理由は以下のように考えられる。
重合体Aは、化合物B及び化合物Cに比べて、磁性トナーへの摩擦電荷の付与能が大きい傾向がある。本発明者らは、化合物Cは、重合体Aと併用した場合に、重合体Aの周囲に共存することによって、重合体Aによる磁性トナーの過剰な摩擦帯電を抑制するような働きがあると推定する。
一方、上述のように、化合物Bは、磁性トナー粒子製造の溶融混練工程で架橋構造を形成するため、溶融混練工程で適度なシェアがかかる。結果、重合体Aの周囲に、化合物Cがより微分散しやすくなる。また、磁性トナー粒子全体において、重合体Aと化合物Cが均一に分散しやすくなる。本発明の目的とする効果を発現するためには、この重合体Aと化合物Cの高い均一分散性を達成することが好ましい。
【0103】
上記重合体Aとしては、本発明の効果を最大限に発揮する点で、特にスチレン系単量体及びアクリル系単量体とスルホン酸含有アクリルアミド単量体との共重合体(スルホン酸基含有共重合体)が好ましく用いられる。
【0104】
重合体Aに用いられるスチレン系単量体及びアクリル系単量体としては、ビニル系共重合体を生成する為に用いられる公知のビニル系モノマーの中から適宜選択される。好ましくはスチレンとアクリル酸エステル、又は、スチレンとメタクリル酸エステルとの組み合わせが挙げられる。
重合体Aに用いられるスルホン酸含有アクリルアミド系単量体としては、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ヘキサンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−オクタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ドデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルフェニルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(4−クロロフェニル)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−カルボキシメチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(2−ピリジン)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−n−デカンスルホン酸、2−メタクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸等を挙げることができる。この中で、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が帯電性の面からより好ましい。
【0105】
重合体Aを合成する際に使用される重合開始剤としては、上述のビニル系共重合体を生成する際に使用される開始剤の中から適宜選択される。好ましくは過酸化物開始剤が使用される。
【0106】
また、重合体Aの合成方法としては、特に制限はなく、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等、いずれの方法も使用可能であるが、低級アルコールを含む有機溶剤中で共重合させる溶液重合が好ましい。
【0107】
スチレン系単量体及びアクリル系単量体とスルホン酸含有アクリルアミド系単量体との共重合質量比は、スチレン系単量体及びアクリル系単量体:スルホン酸含有アクリルアミド系単量体=98:2乃至80:20であることが、十分な摩擦帯電特性が得られるため好ましい。
【0108】
重合体Aの酸価(mgKOH/g)は3.0乃至80.0が好ましい。より好ましくは5.0乃至50.0であり、さらに好ましくは10.0乃至40.0である。酸価がこの範囲にあることで、摩擦帯電性が使用環境によらず安定する。
【0109】
重合体Aの分子量は重量平均分子量(Mw)が2000乃至200000であることが好ましく、より好ましくは、17000乃至100000であり、さらに好ましくは、27000乃至50000である。重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあることで、重合体Aが結着樹脂に最適な状態で分散しやすく、摩擦帯電の環境安定性が高まる。
【0110】
重合体Aのガラス転移点(Tg)は30℃乃至120℃であることが好ましく、より好ましくは50℃乃至100℃であり、更に好ましくは70℃乃至95℃である。
【0111】
本発明において、上記重合体Aは、そのまま使用することができるが、公知の粉砕手段により粉砕して粒径を揃えることが、他材料との相溶性・分散性向上となり好ましい。粉砕粒子径としては、好ましくは300μm以下、更に好ましくは150μm以下とすることで、他材料との分散が良好となりやすい。
【0112】
上記重合体Aは、結着樹脂100質量部当り0.80乃至6.0質量部含有されていることが好ましい。より好ましくは0.90乃至4.5質量部であり、さらに好ましくは1.0乃至4.0質量部である。
【0113】
上記化合物Cとしては、下記一般式で表されるアゾ系鉄化合物が、摩擦帯電量を高く、安定して与えることが可能であることから好ましい。
【0114】
【化5】

[式中、X2及びX3は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子を示し、k及びk’は1乃至3の整数を示し、Y1およびY3は水素原子、C1乃至C18のアルキル,C2乃至C18のアルケニル、スルホンアミド、メシル、スルホン酸、カルボキシエステル、ヒドロキシ、C1乃至C18のアルコキシ、アセチルアミノ、ベンゾイル、アミノ基又はハロゲン原子を示し、l及びl’は1乃至3の整数を示し、Y2およびY4は水素原子またはニトロ基を示し(上記のX2とX3、kとk’、Y1とY3、lとl’、Y2とY4は同一でも異なっていても良い。)、A”+はアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、水素イオン又はそれらの混合イオンを示す。]
【0115】
上記式において、A”+はアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、水素イオン又はそれらの混合イオンを示すが、本発明においては、理由は定かではないが、重合体Aによるトナーの過剰帯電を抑制するという点においては、ナトリウムイオンであることが好ましい。
【0116】
次に、アゾ系鉄化合物の具体例を示す。
【0117】
【化6】

【0118】
なかでも、上記アゾ系鉄化合物(1)式で表されるものが、重合体Aによるトナーの過剰帯電抑制効果という点で好ましい。アゾ系鉄化合物(1)は、Cl元素をターゲットとすることにより、トナー中の含有量を特定することが可能である。
【0119】
上記アゾ鉄化合物(化合物C)の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して0.10乃至5.0質量部が好ましく、より好ましくは0.10乃至4.0質量部である。
【0120】
上記化合物Bとしては、下記一般式に示した芳香族オキシカルボン酸又はその誘導体の金属化合物Bが挙げられる。
【0121】
【化7】

【0122】
次に、該ヒドロキシカルボン酸金属化合物の具体例を示す。
【0123】
【化8】

【0124】
なかでも、中心金属としてAl元素、Zn元素、Zr元素のものが、摩擦帯電量の高さから好ましく、特に、中心金属としてAl元素のものが、上記重合体Aと化合物Cの帯電を阻害することのない程度に、比較的高い摩擦帯電量を有するため、好ましい。
【0125】
上記化合物Bの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.10〜2.0質量部が好ましく、より好ましくは、0.15〜1.5質量部である。特に、架橋構造の形成と重合体Aと化合物Cの均一分散性の点で、0.20質量部以上1.0質量部未満とすることが好ましい。
【0126】
本発明のトナーに用いられるトナー粒子は、上述の理由で、重合体A、化合物Bおよび化合物Cを全て含有することが特に好ましい。これらを全て含有する場合は、結着樹脂100質量部に対する、重合体A、化合物Bおよび化合物Cの含有量を、それぞれMA(質量部)、MB(質量部)、MC(質量部)とした場合、下記式(1)乃至(3)を満たすことが、特に好ましい。
式(1):8.0>MA/MB>1.5
(より好ましくは7.0>MA/MB>1.8、さらに好ましくは6.0>MA/MB>2.0)
式(2):5.0>MA/MC>0.80
(より好ましくは4.5>MA/MB>0.90、さらに好ましくは、4.0>MA/MB>1.0)
式(3):MA>MC>MB
【0127】
また、より好ましくは、下記(4)式を満たすことである。
式(4):1.0×101>MC/MB>1.2
(より好ましくは8.0>MA/MB>1.3、さらに好ましくは6.0>MA/MB>1.4)
【0128】
上記式(1)乃至(4)を満たすように、重合体A、化合物B、及び化合物Cを添加することによって、より本発明の意図する効果を得られやすい。
【0129】
また、磁性トナーの摩擦帯電の安定性の観点で、好ましくは、該MA、MB及びMCが下記式(5)を満たすことが好ましい。
式(5):5.0>MA+MB+MC>1.0
【0130】
本発明の磁性トナーは、磁性トナーの流動性を向上させるために、磁性トナー粒子に無機微粒子が外添されることが好ましい。当該無機微粒子として、フッ化ビニリデン微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の如きフッ素系樹脂微粒子;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粒子シリカ、微粒子酸化チタン、微粒子アルミナ、それらを有機ケイ素化合物、チタンカップリング剤、シリコ−ンオイル等により表面処理(疎水化処理)を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナ等が挙げられる。
【0131】
シリカ微粒子は、表面を疎水化処理した処理シリカ微粒子であることがより好ましい。該処理シリカ微粒子は、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粒子を処理したものが特に好ましい。
上記疎水化処理の方法としては、シリカ微粒子と反応あるいは物理吸着する、有機ケイ素化合物及び/又はシリコーンオイルで化学的に処理する方法が挙げられる。ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粒子を有機ケイ素化合物で化学的に処理する方法が、好ましい方法として挙げられる。
【0132】
上記無機微粒子は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましい。
【0133】
また、上記無機微粒子の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、無機微粒子0.01乃至8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1乃至4質量部である。
【0134】
上記BET法で測定した窒素吸着による比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行なう。測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。
【0135】
本発明の磁性トナーの製造工程においては、特に限定されず、公知の方法によって製造することができる。
例えば、製造方法は以下の通りである。まず、結着樹脂、ワックス及び磁性酸化鉄、並びに、必要に応じて、着色剤、及び荷電制御剤などのその他の材料を、ヘンシェルミキサー又はボールミルの如き混合機により十分混合してから、ロール、ニーダー及びエクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び混練して樹脂類を互いに相溶あるいは分散させる。得られた溶融混練物を冷却固化後に粉砕機を用いて粗粉砕を行ったのち、無機微粒子等の外添剤を前記混合機により混合することによって得ることができる。
【0136】
上記混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製)等等が挙げられる。
【0137】
上記混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製)等が挙げられる。
【0138】
上記粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング)等が挙げられる。
【0139】
上記分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)等が挙げられる。
【0140】
粗粒等をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製)等が挙げられる。
【0141】
本発明の磁性トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。
【0142】
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
【0143】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0144】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0145】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例】
【0146】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の配合における部数は特に説明が無い場合は質量部である。
【0147】
(磁性酸化鉄の製造例1)
[工程1]
Fe2+を1.8mol/L含む硫酸第一鉄水溶液8.1Lと、Si品位13.4%のケイ酸ソーダ75gと、水酸化ナトリウム1.06kgを混合し、水を加えて全量を16.2Lとした。この溶液の温度を90℃に維持し、かつpHを6乃至9に維持しながら空気を2L/minで吹き込み、液中に生成した水酸化第一鉄を湿式酸化した。水酸化第一鉄が、当初の量に対して90%消費された時点でマグネタイトの中心域の形成を確認した。この中心域は、Si元素を含有するものであった。
【0148】
[工程2]
工程1を行っている途中に、溶液中における未反応の水酸化第一鉄の濃度を調べることで酸化反応の進行率を調べ、水酸化第一鉄が、当初の量に対して90%消費された時点で、上記工程1で用いたものと同濃度の硫酸第一鉄水溶液0.9Lと、Ti品位20.0%の硫酸チタニル50gを溶液に加え、更に水を加えて液量を18Lとした。これに加えて、水酸化ナトリウムを添加して液のpHを9乃至12に調整した。この溶液には、工程1で加えたケイ酸ソーダが残存していた。液温90℃にて空気を1L/minで吹き込み湿式酸化を進行させ、Si元素及びTi元素を含むマグネタイトからなる中間域を生成させた。
【0149】
[工程3]
上記工程2を行っている途中に、液中における未反応の水酸化第一鉄が、当初の量に対して95%消費された時点で空気の吹き込みを停止し、Si品位が13.4%のケイ酸ソーダ15g及び、Al品位が6%の硫酸アルミニウム55gを溶液に添加した。また、希硫酸を添加して液のpHを5乃至9に調整した。
【0150】
このようにして得られたマグネタイト粒子を、常法により洗浄、ろ過、乾燥、粉砕させた。
このマグネタイト粒子をサンドミルMPUV−2(ヨドキャスティング社製)により、窒素雰囲気下、温度80℃、線荷重150kg/cmで15分間、メカノケミカル処理を行った。得られた磁性酸化鉄1について、その諸特性を測定した。結果を表1に示す。
【0151】
(磁性酸化鉄の製造例2乃至4)
上記磁性酸化鉄の製造例1において、硫酸チタニル、ケイ酸ソーダ、硫酸アルミニウムの量を適宜変更し、工程1、2において、それぞれ水酸化第一鉄が消費された割合をモニターしながら、工程1から硫酸チタニルを添加する工程2、工程2から硫酸アルミニウムを添加する工程3への移行のタイミング(水酸化第一鉄の消費割合)を微調整した以外は製造例1と同様にして、磁性酸化鉄2乃至4を得た。その諸特性を測定した結果を表1に示す。
【0152】
(磁性酸化鉄の製造例5)
上記磁性酸化鉄の製造例4において、サンドミルによるメカノケミカル処理を行わないこと以外は製造例4と同様にして、磁性酸化鉄5を得た。その諸特性を測定した結果を表1に示す。
【0153】
(磁性酸化鉄の製造例6乃至15)
上記磁性酸化鉄の製造例1において、硫酸チタニル、ケイ酸ソーダ、硫酸アルミニウムの量を適宜変更し、工程1、2において、それぞれ水酸化第一鉄が消費された割合をモニターしながら、工程1から硫酸チタニルを添加する工程2、工程2から硫酸アルミニウムを添加する工程3への移行のタイミング(水酸化第一鉄の消費割合)を微調整し、サンドミルによるメカノケミカル処理を行わないこと以外は製造例1と同様にして、磁性酸化鉄6乃至15を得た。その諸特性を測定した結果を表1に示す。
【0154】
【表1】

【0155】
(ポリエステル樹脂Aの製造例1)
・テレフタル酸 18質量部
・イソフタル酸 3質量部
・無水トリメリット酸 7質量部
・上記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基でx+y=2.2)
70質量部
・ノボラック型フェノール樹脂(核体数約5.5)の5.5モルEO付加物 2質量部
これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.5質量部を添加し、240℃で縮合重合して、ポリエステル樹脂A−1(T10,000=134℃、メインピーク分子量=7,200、テトラヒドロフラン不溶分=27質量%)を得た。その諸特性を測定した結果を表2に示す。
【0156】
(ポリエステル樹脂Aの製造例2)
・テレフタル酸 20質量部
・イソフタル酸 3質量部
・無水トリメリット酸 10質量部
・上記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基でx+y=2.2)
65質量部
・ノボラック型フェノール樹脂(核体数約5.5)の5.5モルEO付加物 2質量部
これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.5質量部を添加し、240℃で縮合重合して、ポリエステル樹脂A−2を得た。その諸特性を測定した結果を表2に示す。
【0157】
(ポリエステル樹脂Aの製造例3)
・テレフタル酸 15質量部
・イソフタル酸 3質量部
・無水トリメリット酸 5質量部
・上記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基でx+y=2.2)
75質量部
・ノボラック型フェノール樹脂(核体数約5.5)の5.5モルEO付加物 2質量部
これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.5質量部を添加し、240℃で縮合重合して、ポリエステル樹脂A−3を得た。その諸特性を測定した結果を表2に示す。
【0158】
【表2】

【0159】
(ポリエステル樹脂Bの製造例1)
・テレフタル酸 25質量部
・無水トリメリット酸 3質量部
・式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基でx+y=2.2)
72質量部
これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.3質量部を添加し、220℃で縮合重合して、THF不溶分を含まないポリエステル樹脂C−1を得た。その諸特性を測定した結果を表3に示す。
【0160】
ポリエステル樹脂C−1を重合後、反応槽の温度を180℃まで下げ、ポリエステル樹脂C−1 100質量部に対して、フィッシャートロプシュワックス(融点105℃)25質量部を添加混合し、その後、冷却してポリエステル樹脂B−1を得た。
【0161】
(ポリエステル樹脂Bの製造例2乃至7)
モノマー組成、及び添加するワックスの種類と量を変更する以外はポリエステル樹脂Bの製造例1と同様にして、ポリエステル樹脂B−2乃至7を得た。ポリエステル樹脂C−2乃至7の諸特性を表3に、添加したワックスの種類と量を表4に示す。
【0162】
【表3】

【0163】
【表4】

【0164】
(重合体Aの製造例)
・メタノール 300質量部
・トルエン 100質量部
・スチレン 470質量部
・2−エチルヘキシルアクリレート 78質量部
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸 42質量部
・ラウロイルパーオキサイド 6質量部
上記原料をフラスコに仕込み、撹拌装置,温度測定装置,窒素導入装置を装着して、窒素雰囲気下70℃で溶液重合させ、10時間保持して重合反応を終了させた。得られた重合物を減圧乾燥・粗粉砕して、重量平均分子量(Mw)35,600、ガラス転移温度(Tg)76.9℃、酸価22mgKOH/g、平均粒子径120μmの重合体Aを得た。
【0165】
(磁性トナーの製造例1)
・ポリエステル樹脂A−1 80質量部
・ポリエステル樹脂B−1 25質量部
・磁性酸化鉄1 100質量部
・重合体A 1.5質量部
・例示アゾ系鉄化合物(1)カウンターイオンはNa+ 1.0質量部
・サリチル酸Al化合物(1) 0.5質量部
上記原材料をヘンシェルミキサーで4分間予備混合した後、設定温度120℃、主軸回転数150rpmに設定した二軸混練押し出し機により、溶融混練した。混練機出口付近における溶融混練物の温度を測定したところ、149℃であった。混練機の設定温度が120℃であり、溶融混練物の温度が149℃であったことから、溶融混練物は120℃以上149℃以下の温度で混練されたことが確認できた。
【0166】
得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミル(ターボ工業社製)を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均径(D4)6.5μmの磁性トナー粒子1を得た。
【0167】
この磁性トナー粒子1の100質量部に対し、疎水性シリカ微粒子を1.2質量部添加し、ヘンシェルミキサーで外添混合し、磁性トナー1を得た。
【0168】
(磁性トナーの製造例2乃至23)
表5に示すように、各原材料の配合量を調整した以外は磁性トナーの製造例1と同様にして、磁性トナー2乃至23を得た。
【0169】
【表5】

【0170】
<実施例1乃至21、比較例1及び2>
得られた磁性トナー1乃至23を、市販のLBPプリンタ(Laser Jet P4515n、hp社製)を改造して、A4サイズ65枚/分とし、これを画出し試験機として評価した。画出し環境として、常温常湿環境(温度23℃、湿度60%)、高温高湿環境(温度32℃、湿度85%)、低温低湿環境(温度15℃、湿度10%)を使用した。印字率4%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで3万枚のプリント試験を行った。プリント試験初期と、3万枚プリント後の画像濃度、カブリでトナーの現像性を評価した。
【0171】
また、この試験で、感光体へのトナー融着、接触帯電部材汚染による帯電不良、及び、空玉による機内汚染の評価を行った。
【0172】
画像濃度は、マクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、5mm角のベタ黒画像を反射濃度測定することにより測定した。
【0173】
カブリは、ベタ白画像を、反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて画像形成前後の転写材を測定した。画像形成後の反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Ds−Drを求め、これをカブリ量として評価した。数値の少ない方がカブリが抑制されていることを示す。
【0174】
感光体へのトナー融着は、感光体表面のトナー融着の発生状況とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
A:未発生
B:トナー融着はあるが軽微で目立たない
C:トナー融着が多く、ベタ黒画像で点状に白抜けした画像欠陥が目立つ
D:大きなトナー融着が発生し、数mmの線状に白抜けした画像欠陥が目立つ
【0175】
接触帯電部材へのトナー付着による帯電不良は、接触帯電部材表面のトナー付着状況と、プリントアウト画像への影響を目視で評価した。
A:接触帯電部材に汚れが全く無い
B:接触帯電部材にわずかに汚れがあるが、画像には影響が出ていない
C:画像に軽微な影響が出ている
D:画像にひどい影響が出ている
【0176】
機内汚染に関しては、高温高湿環境(温度32℃、湿度80%)での3万枚画出し試験後に、機内汚染のレベルを目視で判断した。
A:発生なし
B:ごく軽微な機内汚染が見られる
C:軽微な機内汚染が見られる
D:機内汚染が目立つ
E:機内汚染が激しい
【0177】
これら評価結果を表6に示す。
【0178】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、ワックス及び磁性酸化鉄を少なくとも含有するトナー粒子と、無機微粒子とを有する磁性トナーであって、
該結着樹脂は、溶融粘度が10,000Pa・sとなる温度T10,000が120℃以上150℃以下であるポリエステル樹脂Aを含有し、
該磁性酸化鉄20質量部を酢酸エチル80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿部分の体積について経時変化を測定した酢酸エチル沈降試験において、静置して10分後の酢酸エチル/磁性酸化鉄混合物の体積をEtA、磁性酸化鉄の沈殿部分の体積をVEtAとしたとき、VEtAとEtAとの比VEtA/EtAが0.80以下であり、
該磁性酸化鉄20質量部をイソプロピルアルコール80質量部に分散させた後、静置し、磁性酸化鉄の沈殿部分の体積について経時変化を測定したイソプロピルアルコール沈降試験において、静置して10分後の磁性酸化鉄の沈殿部分の体積をVIPAとしたとき、VIPAとVEtAとの比VIPA/VEtAが1.20以上2.50以下であることを特徴とする磁性トナー。
【請求項2】
該結着樹脂は、ワックスを含有するポリエステル樹脂Bを含有し、該ポリエステル樹脂Bは、軟化点が80℃以上115℃以下であるポリエステル樹脂Cと、該ポリエステル樹脂C100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下のワックスを含有することを特徴とする請求項1に記載の磁性トナー。
【請求項3】
該結着樹脂は、ポリエステル樹脂Aを55質量%以上90質量%以下含有し、ポリエステル樹脂Cを10質量%以上45質量%以下含有することを特徴とする請求項2に記載の磁性トナー。
【請求項4】
該磁性酸化鉄は、Ti成分及びAl成分を少なくとも含有し、該Ti成分の含有量が、Ti元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.30質量%以上5.00質量%以下であり、該Al成分の含有量が、Al元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.10質量%以上3.00質量%以下であり、
該磁性酸化鉄に含まれるAl成分をアルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の50.0%以上95.0%以下であり、
アルカリ水溶液で溶出した後の磁性酸化鉄を、さらに酸水溶液で溶解したときに、Fe元素溶解率が10質量%までの範囲に含まれるAl成分量と、前記アルカリ水溶液で溶出されるAl成分量の合計が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の95.0%以上100.0%以下であり、
Fe元素溶解率が10質量%までの範囲に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Al成分量のAl元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Al成分量のAl元素換算値)が、2.0以上30.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁性トナー。
【請求項5】
該磁性酸化鉄はSi成分を含有し、該Si成分の含有量が、Si元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して0.10質量%以上4.00質量%以下であり、
該磁性酸化鉄をアルカリ水溶液で溶解したときに溶出されるSi元素量が、磁性酸化鉄に含まれる全Si元素量の5.0%以上30.0%以下であることを特徴とする請求項4に記載の磁性トナー。
【請求項6】
該磁性酸化鉄の、Fe元素溶解率が10質量%までの範囲に含まれる、Ti成分量のTi元素換算値の、Si成分量のSi元素換算値に対する比(Ti成分量のTi元素換算値/Si成分量のSi元素換算値)が、1.0以上5.0以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の磁性トナー。

【公開番号】特開2011−13353(P2011−13353A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155878(P2009−155878)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】