説明

磁性体を含んだ粒子を洗浄する洗浄装置

【課題】磁性体を含んだ粒子を高収率で回収することのできる洗浄装置を提供する。
【解決手段】磁性体を含んだ粒子と親水性溶媒と疎水性溶媒とが供給される容器1と、第1磁極MP1及び第2磁極MP2を含んだ磁界発生器とを含んでいる。容器1には、親水性溶媒を排出する第1排出口17と、疎水性溶媒を排出する第2排出口18とが設けられ、第1排出口17は、第2排出口18と比較して下端の位置が低い。第1磁極MP1及び第2磁極MP2は、容器1の下方で、互いに離間して配列し、y方向寸法が、容器1内の空間のy方向の寸法比較して小さい。磁極間の領域の中心を通り且つ鉛直方向に平行な直線と第1排出口17の中心とを結ぶ最短の線分がx方向に対して成す角度は60°乃至90°の範囲内にあり、当該平行な直線と第2排出口18の中心と結ぶ最短の線分がx方向に対して成す角度は60°乃至90°の範囲内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁性体を含んだ粒子を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水資源の有効利用のために、廃水を浄化して再利用することがある。廃水の浄化においては、廃水からの不純物の分離を行う。
【0003】
廃水から不純物を分離する方法としては、膜分離、遠心分離、吸着剤を用いた吸着、オゾン処理、凝集など様々な方法が知られている。
【0004】
油分を分離する場合には、例えば、磁性体を含んだ粒子を吸着剤として用いる方法が使用されている(例えば、特許文献1)。廃液中に分散した油分を当該粒子に吸着させた後、磁場を利用した固液分離を行うことにより、油分を廃液から除去することができる。
【0005】
油分を吸着した粒子は、疎水性溶媒と親水性溶媒との混合液で洗浄することにより、再使用することができる(例えば、特許文献2)。しかしながら、実際には、この洗浄には、当該粒子の収率の点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−56426号公報
【特許文献2】特開2010−99575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、磁性体を含んだ粒子を洗浄する洗浄装置であって、当該粒子を高収率で回収することのできる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る洗浄装置は、磁性体を含んだ粒子を親水性溶媒と疎水性溶媒との混合液で洗浄する洗浄装置である。この洗浄装置は、粒子と親水性溶媒と疎水性溶媒とが供給される容器と、逆極性の第1及び第2磁極を含んだ磁界発生器とを含んでいる。容器には、親水性溶媒を排出する第1排出口と、疎水性溶媒を排出する第2排出口とが設けられ、第1排出口は、第2排出口と比較して下端の位置がより低い。第1及び第2磁極は、容器の下方で、鉛直方向に対して垂直な第1方向に互いから離間して配列し、第1及び第2磁極の各々は、鉛直方向及び第1方向に対して垂直な第2方向の寸法が、容器内の空間の第2方向の寸法と比較してより小さい。第1及び第2磁極間の領域の中心を通り且つ鉛直方向に平行な直線と第1排出口の中心とを結ぶ最短の線分が第1方向に対して成す角度は60°乃至90°の範囲内にあり、当該平行な直線と第2排出口の中心と結ぶ最短の線分が第1方向に対して成す角度は60°乃至90°の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る洗浄装置の一例を示す概略図。
【図2】実施形態に係る洗浄装置に含まれる容器、攪拌装置及び磁界発生器の一例を示す斜視図。
【図3】図2に示す容器及び磁界発生器を、磁界発生器の下方から見た図。
【図4】図3に示す容器及び磁界発生器のVI−VI線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る洗浄装置の一例を示す概略図である。
【0012】
実施形態に係る洗浄装置は、磁性体を含んだ粒子を親水性溶媒と疎水性溶媒との混合液で洗浄するための装置である。
【0013】
磁性体を含んだ粒子は、例えば、マグネタイト等の磁性体の粉末の表面を多孔質ポリマーによって被覆し、その後、凝集させて得た凝集体である。磁性体を含んだ粒子は、これに限られないが、以下の説明では、一例として、磁性体を含んだ粒子は、先の凝集体であるとする。
【0014】
図1に示す実施形態の洗浄装置は、容器1と、攪拌装置2と、磁界発生器3とを含んでいる。
【0015】
図2に示すように、容器1は、胴部1aと底部1bとを含んでいる。胴部1aは、上下で開口した中空体である。底部1bは、胴部1aの下側の開口を塞いでいる。容器1は、胴部1aの上側の開口を塞ぐ頂部を更に含んでいてもよい。図2に示す例では、容器1の胴部1bの形状は、円柱状であるが、これに限定されず、例えば、角柱状であってもよい。容器1の材質としては、磁性を持たないものであれば特に限定されず、好ましくは、ステンレスが使用される。
【0016】
容器1の内面は、好ましくは、磁界発生器3が含んだ第1及び第2磁極間の領域に対応した位置で下方に向けて先細りした底面を含んでいる。容器1の内面がこのような形状の底面を含んでいることにより、凝集体を回収しやすくなる。
【0017】
図2及び4に示すように、容器1には、第1排出口17及び第2排出口18が設けられている。第1排出口17は、容器1から主に親水性溶媒を排出するのに使用する。他方、第2排出口18は、容器1から主に疎水性溶媒を排出するのに使用する。
【0018】
第1排出口17の下端は、第2排出口18の下端と比較してより低い位置にある。なお、排出口の上端及び下端とは、それぞれ、排出口の開口のうち最も高い位置及び低い位置を指す。ここでは、胴部1aに、第1排出口17と第2排出口18とが設けられているが、第2排出口18が容器1の胴部に設けられ、第1排出口17が容器1の底部に設けられていてもよい。
【0019】
親水性溶媒と疎水性溶媒との混合液による凝集体の洗浄において、洗浄に使用した溶媒を容器から排出する際、相分離した液の界面には、一部の凝集体が集まる。この界面に集まった凝集体が容器1から流出すると、高い収率を達成することはできない。
【0020】
主に親水性溶媒を排出する第1排出口17と、主に疎水性溶媒を排出する第2排出口18とを、第1排出口17の下端が第2排出口18の下端よりも低く位置するように設けると、後で行う説明から明らかなように、凝集体の流出量を低減することができる。即ち、収率を向上させることができる。
【0021】
図4に示すように、第2排出口18の開口の鉛直方向Zの寸法をDとし、第2排出口18の下端の高さと第1排出口17の下端の高さとの差をGとしたときに、G≧D/2であることが好ましく、G≧Dであることがより好ましい。このように高さの差を設けることにより、界面に存在する凝集体が容器1から流出することをより確実に防止することができる。
【0022】
攪拌装置2は、回転軸21と、回転軸21に取り付けられた攪拌羽根22とを含んでいる。攪拌装置2は、攪拌羽根22が容器1内に位置するように設置されている。攪拌装置2は、例えば、攪拌羽根22が上下に移動できるように構成される。攪拌装置2は、省略することができる。
【0023】
磁界発生器3は、図1乃至4に示すように、容器1の下方に設置されている。磁界発生器3は、逆極性の第1磁極MP1及び第2磁極MP2を含んでいる。第1磁極MP1及び第2磁極MP2は、容器1の下方で、鉛直方向Zに対して垂直な第1方向Xに互いから離間して配列している。
【0024】
磁界発生器3は、マグネットユニットを含んでいる。マグネットユニットは、図2に示す例では、両端を斜めに折り曲げた金属板31と、一対の永久磁石32a及び32bとを含んでいる。金属板31は、例えば、常磁性体である。永久磁石32aは、そのS極が金属板31の斜めに折り曲げた端の一方と接するように金属板31に支持されている。永久磁石32bは、そのN極が金属板31の斜めに折り曲げた端の他方と接するように金属板31に支持されている。永久磁石32aのN極及び永久磁石32bのS極は、それぞれ、第1磁極MP1及び第2磁極MP2である。
【0025】
ここでは、金属板31の両端をハ字型に折り曲げているが、金属板31の両端は、直角に折り曲げてもよく、折り曲げなくてもよい。また、磁界発生器3は、マグネットユニットとして、電磁石などの一時磁石を含んでいてもよい。
【0026】
磁界発生器3は、マグネットユニットを上下動させる駆動機構を更に含んでいる。なお、図1における白抜きの矢印は、マグネットユニットの移動方向を表している。マグネットユニットが電磁石である場合、この駆動機構は省略することができる。
【0027】
磁界発生器3は、図1に示すコントローラ28と接続されている。磁界発生器3が永久磁石を含んでいる場合、コントローラ28は、駆動機構の動作を制御する。磁界発生器3が電磁石を含んでいる場合、コントローラ28は、電磁石に供給する電流の大きさを制御する。このようなコントローラ28による制御のもと、磁界発生器3は、容器1内の空間のうち磁界発生器3の近傍の領域における磁界の強さを変化させる。具体的には、この洗浄装置では、磁性体を含んだ粒子を親水性溶媒と疎水性溶媒との混合液で洗浄している間は、先の領域における磁界をゼロにするか又は弱めて、粒子を混合液中に分散させる。そして、容器1から親水性溶媒又は疎水性溶媒を排出する際には、先の領域に磁界を発生させるか又は先の領域における磁界を強めて、粒子を先の領域に集める。
【0028】
第1磁極MP1及び第2磁極MP2の各々は、図2及び3に示すように、鉛直方向Z及び第1方向Xに対して垂直な第2方向Yの寸法が、容器1内の空間の第2方向Yの寸法と比較してより小さい。好ましくは、第1磁極MP1及び第2磁極MP2の各々は、第2方向Yの寸法が、容器1内の空間の第2方向Yの寸法の8割以下である。なお、底部1bの形状及び凝集体の量に依存するが、好ましくは、第1磁極MP1及び第2磁極MP2の各々は、第2方向Yの寸法が、容器1内の空間の第2方向Yの寸法の3割以上である。
【0029】
図2に示すように、第1磁極MP1及び第2磁極MP2間の領域の中心を通り且つ鉛直方向Zに平行な直線L1と第1排出口17の中心とを結ぶ最短の線分LS1が第1方向Xに対して成す角度は60°乃至90°の範囲内にある。そして、直線L1と第2排出口18の中心とを結ぶ最短の線分LS2が第1方向Xに対して成す角度は60°乃至90°の範囲内にある。好ましくは、線分LS1及び線分LS2が第1方向Xに対して成す角度は、それぞれ、90°である。
【0030】
上記の構成を採用すると、容器1から親水性溶媒又は疎水性溶媒を排出する際に、強い磁界が排出口17及び18の近傍にまで広がるのを防止できる。従って、親水性溶媒又は疎水性溶媒を容器1から排出する際に、容器1から流出する凝集体の量を最小化することができる。
【0031】
容器1には、図1に示すように、センサ29が設けられている。センサ29は、コントローラ28と接続されている。センサ29は、容器1内の液面の高さを検出し、検出信号をコントローラ28に出力する。なお、図1には、センサを1つのみ描いているが、容器1にはセンサを複数設けてもよい。或いは、センサ29は省略してもよい。
【0032】
容器1には、第1供給装置及び第2供給装置が接続されている。
【0033】
第1供給装置は、図1に示すタンク4と第1流路とを含んでいる。タンク4は、親水性溶媒に凝集体を分散させてなる分散液を収容している。第1流路は、タンク4を容器1に接続している。
【0034】
第1流路は、ポンプ23とバルブ12と第1供給ライン7とを含んでいる。ポンプ23及びバルブ12には、コントローラ28が接続されている。ポンプ23及びバルブ12は、コントローラ28による制御のもと、タンク4内の分散液を、第1供給ライン7を介して容器1へと供給する。この供給は、例えば、センサ29によって検出された液面の高さが第1設定値に達した時点で終了する。ここで、第1設定値は、第1排出口17の下端よりも高い液面の高さに相当している。
【0035】
なお、第1供給装置は、親水性溶媒のみ容器1へ供給するための構造を更に含んでいてもよい。
【0036】
第2供給装置は、タンク5と第2流路とを含んでいる。タンク5は、疎水性溶媒を収容している。第2流路は、タンク5を容器1に接続している。
【0037】
第2流路は、ポンプ24とバルブ13と第2供給ライン8とを含んでいる。ポンプ24及びバルブ13には、コントローラ28が接続されている。ポンプ24及びバルブ13は、コントローラ28による制御のもと、タンク5内の疎水性溶媒を、第2供給ライン8を介して容器1へと供給する。この供給は、例えば、センサ29によって検出された液面の高さが第2設定値に達した時点で終了する。ここで、第2設定値は、第2排出口18の下端よりも高い液面の高さに相当している。
【0038】
容器1には、更に、第1排出装置及び第2排出装置が接続されている。
【0039】
第1排出装置は、第3流路を含んでいる。第3流路は、一端が容器1の第1排出口17に接続されている。
【0040】
第3流路は、ポンプ27とバルブ16と第1排出ライン11とを含んでいる。ポンプ27及びバルブ16には、コントローラ28が接続されている。ポンプ27及びバルブ16は、コントローラ28による制御のもと、主に親水性溶媒を、タンク1から第1排出ライン11を介して容器1の外部へと排出させる。この排出は、例えば、センサ29によって検出された液面の高さが第3設定値に達した時点で終了する。ここで、第3設定値は、第1排出口17の下端と等しい液面の高さに相当しているか、又は、第1設定値よりも低い高さであって、第1排出口17の下端より高く且つ第2排出口18の下端よりも低い液面の高さに相当している。なお、ポンプ27は省略することができる。
【0041】
第2排出装置は、第4流路を含んでいる。第4流路は、一端が容器1の第2排出口18に接続されている。
【0042】
第4流路は、ポンプ26とバルブ15と第2排出ライン10とを含んでいる。ポンプ26及びバルブ15は、コントローラ28による制御のもと、主に疎水性溶媒を、タンク1から第2排出ライン10を介して容器1の外部へと排出させる。この排出は、例えば、センサ29によって検出された液面の高さが第4設定値に達した時点で終了する。ここで、第4設定値は、第2排出口18の下端と等しい液面の高さに相当しているか、又は、第2設定値よりも低い高さであって、第2排出口18の下端より高い液面の高さに相当している。なお、ポンプ26は省略することができる。
【0043】
ここでは、供給及び排出動作の制御にセンサ29の出力を利用する構成について説明したが、そのような制御は、センサ29の出力を利用せずに行うことができる。例えば、それら動作を開始してから終了するまでの時間をコントローラ28に予め記憶させておき、動作開始からの経過時間が予め記憶している時間に達した時点で、その動作を停止してもよい。
【0044】
容器1には、第4流路を介して疎水性溶媒再生装置6が接続されている。疎水性溶媒再生装置6は、容器1から第4流路を介して供給される流体を、疎水性溶媒と不純物とに分離する。
【0045】
疎水性溶媒再生装置6は、第5流路を介してタンク5に接続されている。第5流路は、ポンプ25とバルブ14とライン9とを含んでいる。ポンプ25及びバルブ14は、コントローラ28による制御のもと、疎水性溶媒を、疎水性溶媒再生装置6からライン9を介してタンク5へと供給する。疎水性溶媒再生装置6及び第5流路は、省略することができる。
【0046】
この洗浄装置を使用した凝集体の洗浄は、例えば、以下の手順で行われる。
【0047】
まず、コントローラ28による制御のもと、第1供給装置を作動させて、容器1内に凝集体と親水性溶媒とを供給する。この供給は、容器1内における液面が、第1排出口17の下端よりも上方に位置するように、例えば、第1排出口17の上端よりも上方に位置するように行う。
【0048】
凝集体は、例えば、廃水の浄化に用いられたものであって、表面の多孔質ポリマーは、油分などの不純物を吸着している。親水性溶媒は、例えば、水、水に可溶な1つ以上の溶媒、又は、水と水に可溶な1つ以上の溶媒との混合物である。水に可溶な溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、又はテトラヒドロフランである。好ましくは、親水性溶媒は水である。
【0049】
続いて、コントローラ28により磁界発生器3を作動させて、容器1内の空間のうち磁界発生器3の近傍の領域に磁界を発生させるか又はこの領域における磁界を強める。これにより、先の領域に凝集体を集めるとともに、集めた凝集体の移動を制限する。
【0050】
その後、コントローラ28による制御のもと、第1排出装置を作動させて、親水性溶媒の一部を、第1排出口17を介して容器1から排出し、親水性溶媒の液面を第1排出口17の下端の高さに位置させる。上記の通り、磁界によって凝集体の移動が制限されているのに加え、第1排出口17の近傍に凝集体は殆ど存在していない。従って、凝集体の殆どは、容器1内に残留する。
【0051】
このように親水性溶媒の液面の高さを調節した後、コントローラ28により磁界発生器3の動作を制御して、先の領域における磁界を弱める。
【0052】
その後、磁界を弱めたまま、コントローラ28による制御のもと、第2供給装置を作動させて、容器1に疎水性溶媒を供給する。この供給は、親水性溶媒と疎水性溶媒との混合液の液面が、第2排出口18の下端よりも上方に位置するように、例えば、第2排出口18の上端よりも上方に位置するように行う。疎水性溶媒は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエン、キシレン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、又は灯油である。好ましくは、疎水性溶媒は、洗浄能力に優れたヘキサンである。
【0053】
容器1内に存在する親水性溶媒と疎水性溶媒との体積比は、好ましくは、親水性溶媒:疎水性溶媒=1:9乃至9:1であり、且つ、より少ない方の溶媒の体積が、凝集体の体積の少なくとも2分の1である。この条件を満たす場合、親水性の不純物及び疎水性の不純物をそれぞれ親水性溶媒と疎水性溶媒とに十分に溶解させることができ、洗浄効率が向上する。
【0054】
続いて、攪拌装置2を作動させて、容器1内の混合液を攪拌する。攪拌時間は、例えば、10分乃至1時間である。
【0055】
その後、攪拌装置2を停止させるとともに、コントローラ28により、磁力発生器3の動作を制御して、先の領域における磁界を強める。これにより、混合液を、主に親水性溶媒からなる第1相と、主に疎水性溶媒からなる第2相とに分離するとともに、容器1内の空間のうち磁界発生器3の近傍の領域に凝集体を集め、集めた凝集体の移動を制限する。なお、これら動作により、凝集体の多くは先の領域に集まるが、一部の凝集体は第1相と第2相との界面に集まる。
【0056】
攪拌装置2の停止は、例えば、磁力発生器3が磁界を強める動作と同時に行う。攪拌装置2の停止は、磁力発生器3が磁界を強める動作に先立って行ってもよく、磁力発生器3が磁界を強める動作の後に行ってもよい。
【0057】
次に、磁界を強めたまま、コントローラ28による制御のもと、第2排出装置を作動させて、疎水性溶媒の一部を、第2排出口18を介して容器1から排出する。この排出は、例えば、混合液の液面の高さが第2排出口18の下端の高さと等しくなるように行う。
【0058】
このとき、第1相と第2相との界面は第2排出口18の下端よりも下方に位置するため、この界面に存在する凝集体の殆どは第2排出口18から流出することはない。また、磁界によって凝集体の移動が制限されているのに加え、第2排出口18の近傍に凝集体は殆ど存在していない。従って、上記の領域に集められた凝集体も、殆ど第2排出口18から流出することなしに、容器1内に残留する。
【0059】
その後、必要に応じて、疎水性溶媒の供給から排出までの一連の工程を、更に例えば1〜5回行う。以上のようにして、洗浄を終了する。
【0060】
最後に、凝集体中に含まれる水以外の溶媒を除去する。例えば、容器1内に湯を加えるか、又は蒸気を送り込み、溶媒を揮発させて除去する。また、例えば、磁石などを用いて、凝集体を容器1から別の容器に移動し、温風を凝集体に吹き付け、溶媒を揮発させて除去してもよい。このようにして再生された凝集体は、例えば、廃水の浄化において再使用することができる。
【0061】
なお、第2排出口18から排出した流体は、疎水性溶媒再生装置6へと導き、例えば、蒸留によって疎水性溶媒と不純物とに分離する。そして、分離した疎水性溶媒は、タンク5へと導いて、上記の洗浄に再利用する。
【0062】
以下、より具体的な例を、前述した洗浄装置を参照して説明する。
【0063】
(実施例1)
ポリメチルメタクリレート1380重量部を、24000重量部のアセトンに溶解させ、さらに、平均粒子径2μmのマグネタイト粒子15000重量部を分散させて溶液を得た。次に、この溶液をスプレードライヤーにより噴霧乾燥し、平均粒子径45μmの球状の凝集体を得た。続いて、この凝集体5kgに、水20Lを添加して混合しながら、ギアオイル3.5kgを徐々に加え、10分間混合した。このとき、水中のギアオイルの全量が凝集体に吸着されたことを確認した。この凝集体を被洗浄物として以下の洗浄試験において使用した。
【0064】
水と凝集体とを容器1に入れ、凝集体を磁界発生器3で固定した後、第1排出口17を介して容器1から水を排出し、水の液面の高さを、第2排出口18の下端よりも下になるように調整した。このとき、容器1内に残った水は約4Lであった。続いて、容器1内に、タンク16からヘキサン15Lを供給し、攪拌装置2により20分間撹拌した。混合後、磁界発生器3により凝集体を固定し、第2排出装置によってヘキサンを排出した。この時、凝集体は容器1からほとんど流出しなかった。その後、第2供給装置によりへキサン15Lを添加して20分間撹拌し、第2排出装置によりヘキサンの一部を排出する操作を3回繰り返し、凝集体の洗浄を完了した。凝集体に含まれる油分は、初期投入量の97%が除去されていた。
【0065】
容器1からの凝集体の流出量は、初期投入量5kgの0.16%に相当する8gであった。
【0066】
なお、容器1から排出された油を含んだヘキサンは、疎水性溶媒再生装置6へと導かれ、ヘキサンと油とに分離された。分離されたヘキサンは、タンク5に収容され、第2供給装置から、再び、容器1に供給された。
【0067】
(比較例1)
容器1の代わりに、親水性溶媒排出口17及び疎水性溶媒排出口18が、下端の位置が同じ高さになるように設けられた容器を使用したこと以外は、実施例1と同様の試験を行った。
【0068】
凝集体の流出量は、初期投入量の10%に相当する500gであった。
【0069】
(実施例2)
ヘキサンの代わりにデカンを疎水性溶媒として使用したこと以外は実施例1と同様の試験を行った。
【0070】
凝集体の流出量は、初期投入量5kgの0.16%に相当する10gであった。
【0071】
また、凝集体に吸着された油分は、初期投入量の97%が除去されていた。
【0072】
(実施例3)
n−オクチルトリエトキシシラン1000重量部を30000重量部の水と100重量部の酢酸とに溶解させ、更に、平均粒子径2μmのマグネタイト粒子3000重量部を分散させて溶液を得た。この溶液をスプレードライヤーにより噴霧し、平均粒子径35μmの球状の凝集体を得た。
【0073】
この凝集体を使用したこと以外は実施例1と同様の試験を行った。
【0074】
凝集体の流出量は、初期投入量の0.1%以下に相当する4gであった。
【0075】
(比較例2)
容器1の代わりに、親水性溶媒排出口17及び疎水性溶媒排出口18が、下端の位置が同じ高さになるように設けられた容器を使用したこと、実施例3で得られた凝集体を使用したこと以外は、実施例1と同様の試験を行った。
【0076】
凝集体の流出量は、初期投入量の4%に相当する約200gであった。
【0077】
上記実施例及び比較例から、実施形態に係る洗浄装置を用いることにより、磁性体の種類に関わらず、凝集体の流出が低減され、凝集体を高い収率で回収することができたことを確認した。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…容器、2…攪拌装置、3…磁界発生器、4…タンク、5…タンク、6…疎水性溶媒再生装置、7…第1供給ライン、8…第2供給ライン、9…ライン、10…第2排出ライン、11…第1排出ライン、12…バルブ、13…バルブ、14…バルブ、15…バルブ、16…バルブ、17…第1排出口、18…第2排出口、21…回転軸、22…攪拌羽根、23…ポンプ、24…ポンプ、25…ポンプ、26…ポンプ、27…ポンプ、28…コントローラ、29…センサ、31…金属板、32…永久磁石、MP1…第1磁極、MP2…第2磁極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を含んだ粒子を親水性溶媒と疎水性溶媒との混合液で洗浄する洗浄装置であって、
前記粒子と前記親水性溶媒と前記疎水性溶媒とが供給され、前記親水性溶媒を排出する第1排出口と、前記疎水性溶媒を排出する第2排出口とが設けられ、前記第1排出口は前記第2排出口と比較して下端の位置がより低い容器と、
逆極性の第1及び第2磁極を含み、前記第1及び第2磁極は、前記容器の下方で、鉛直方向に対して垂直な第1方向に互いから離間して配列し、前記第1及び第2磁極の各々は、前記鉛直方向及び前記第1方向に対して垂直な第2方向の寸法が、前記容器内の空間の前記第2方向の寸法と比較してより小さく、前記第1及び第2磁極間の領域の中心を通り且つ前記鉛直方向に平行な直線と前記第1排出口の中心とを結ぶ最短の線分が前記第1方向に対して成す角度は60°乃至90°の範囲内にあり、前記直線と前記第2排出口の中心と結ぶ最短の線分が前記第1方向に対して成す角度は60°乃至90°の範囲内にある磁界発生器と
を具備した洗浄装置。
【請求項2】
前記容器の内面は、前記第1及び第2磁極間の領域に対応した位置で下方に向けて先細りした底面を含んでいる請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記磁界発生器は、前記第1及び第2磁極が前記容器内に発生させる磁界の強度を変化させることが可能である請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記容器に前記粒子と前記親水性溶媒とを供給する第1供給装置と、
前記容器に前記疎水性溶媒を供給する第2供給装置と、
前記第1排出口に接続され、前記容器から前記親水性溶媒の一部を除去する第1排出装置と、
前記第2排出口に接続され、前記容器から前記疎水性溶媒の一部を除去する第2排出装置と、
前記磁界発生器、前記第1及び第2供給装置、並びに前記第1及び第2排出装置の動作を制御するコントローラと
を更に具備した請求項3に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記第1供給装置を動作させて、前記親水性溶媒の液面を前記第1排出口の下端よりも上方に位置させる第1ステップと、
前記磁界が強まるように前記磁界発生器の動作を制御する第2ステップと、
前記磁界を強めたまま、前記第1排出装置を動作させて、前記親水性溶媒の液面を前記第1排出口の下端の高さに位置させる第3ステップと、
前記磁界が弱まるように前記磁界発生器の動作を制御する第4ステップと、
前記磁界を弱めたまま、前記第2供給装置を動作させて、前記混合液の液面を前記第2排出口の下端よりも上方に位置させる第5ステップと、
前記磁界が強まるように前記磁界発生器の動作を制御する第6ステップと、
前記磁界を強めたまま、前記第2排出装置を動作させて、前記混合液の液面を前記第2排出口の下端の高さに位置させる第7ステップと
がこの順に行われるように前記磁界発生器、前記第1及び第2供給装置、並びに前記第1及び第2排出装置の動作を制御する請求項4に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63394(P2013−63394A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203720(P2011−203720)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】