説明

磁性体分散型樹脂キャリア、現像剤および画像形成方法

【課題】ハーフトーンの均一性があり、白抜けがなく、キャリア付着がなく、線再現性に優れ、長期間に渡って安定な画像濃度を維持できるような高画質な電子写真画像の得られる磁性キャリアを提供することにある。
【解決手段】少なくともバインダー樹脂、金属酸化物を含有するキャリア粒子であって、該金属酸化物が、少なくともFe23−FeTiO3固溶体構造を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法の如き画像形成方法における静電荷潜像を現像するための、現像剤を構成する磁性キャリア粒子、二成分現像剤および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンターや複写機等の電子写真法を用いた画像形成装置において、画質、耐久性及び高速対応性の観点からトナー及び磁性キャリアを含有する二成分系現像剤が好適に用いられている。
【0003】
二成分系現像剤方式に使用される磁性キャリアとしては、従来より鉄粉キャリア、フェライトキャリアが知られているが、この両者は1)体積抵抗が比較的低い、2)磁気力が比較的高いという特徴をもち、それぞれ画像欠陥を起し易い場合がある。
【0004】
まず体積抵抗について説明する。上記したキャリアは一般的には鉄粉もしくはフェライトの表面に樹脂などをコートして体積抵抗を調整して用いるが、鉄粉、フェライト自体の抵抗が低いために、コートが不十分だったり、長時間の使用後にコートが剥れた場合などはキャリアの体積抵抗が低くなる傾向にある。一般的にキャリアの抵抗が低いと、感光ドラムに対して電荷注入が発生し静電荷像を乱す恐れがある。その結果、特にハーフトーン部がムラになるなどの画像欠陥を生じる場合がある。
【0005】
次に、キャリアの磁化について説明する。キャリアの磁化が高い場合には、現像部に形成される磁気ブラシが剛直でかつ密度が低い「疎」な状態になりやすい。その結果、磁気ブラシが「疎」な状態で現像剤が供給されるので、再線再現性に劣る等の問題が起きやすい。上記したキャリアは、それ自体が強い磁性を示す鉄粉やフェライトに樹脂をコートした物であるから、磁気力は比較的高く、上記したような問題が起こりやすい。
【0006】
そこで、この様な問題を解決する為に、磁性体微粒子を樹脂中に分散させた磁性体分散型樹脂キャリアの提案がなされている。磁性体分散型樹脂キャリアは磁性体を樹脂中に分散した構造であり、樹脂の存在によりフェライトキャリアに比べ、比較的高体積抵抗が高く、また混在させる磁性体の量を調節することで磁気力を小さく設計できるため、上記したような画像欠陥を起しにくい。
【0007】
その一方で、磁性体分散型キャリアは、逆にキャリアの抵抗が高すぎて問題を引き起こす場合もあり、一般的にキャリアの体積抵抗が高すぎるとキャリアは絶縁化される。そして、現像時に現像電極として働かなくなるためにハーフトーンとベタ黒との間にエッジ効果が出るいわゆる白抜けが発生したり、トナーが現像しにくくなり(現像性の低下)画像濃度が下がるなどの問題が生じ易くなる。
【0008】
ここで、電子写真プロセスにおいて用いられる感光体として、セレン系感光体、アモルファスシリコン感光体、有機感光体等が実用化されている。その中でも特に、非晶質シリコンを含むアモルファスシリコン感光体は画質及び耐久性に優れた特性を備えていることが知られており、高画質や高速化、高安定を求められる場合に好適に用いられる。
【0009】
しかしながら、アモルファスシリコン感光体を用いてコートキャリアを含む二成分現像剤にAC電界を重畳して現像を行なう場合、アモルファスシリコン感光体表面は比較的抵抗が低いため、現像部においてキャリアから感光体に対して電荷注入が発生しやすくなる傾向がある。
【0010】
すなわち、アモルファスシリコン感光体を用いた場合においては、有機感光体を用いた場合に比べて、比較的キャリアの抵抗を高めに設定する必要がある。その結果前記したような、キャリアの抵抗が高すぎる場合の問題点(白抜け、現像性の低下)がより起こりやすくなる。
【0011】
このような問題を解決するために、以下のような提案がなされている。
【0012】
磁性体分散型キャリア表面にアミノシランカップリング剤及びフルオロアルキルユニット、メチレンユニットなどを有する樹脂でコートし、トナーの離型性を上げることで現像性を上げる提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
しかしながら、前記した方法では、長期間の使用でコート剤が劣化した場合にはトナーの離型性が急激に悪化するなど、キャリア自体の抵抗が高いことによる弊害を根本的に解決するものではなかった。
【0014】
【特許文献1】特開平07−181800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、非磁性トナーと磁性キャリア粒子とを混合した二成分系現像剤を用いる電子写真方式において、比較的抵抗の高く磁気力の低い「磁性体分散型キャリア」のメリットを生かしたまま、キャリアの抵抗値が高いことによる画像の不具合(白抜け、現像性の低下)が起こりにくい磁性体分散型キャリアを提供することにある。
【0016】
すなわち、本発明のキャリアを用いることによって磁性体分散型キャリアの特徴である低磁気力を生かした細線再現性に優れた画像を提供し、かつ感光体ドラムの静電荷潜像を乱すこと(ハーフトーンの均一性)が無いと同時に、キャリアの高抵抗による白抜けや画像濃度の低下を起すことのない良好な画像を、長期間に渡って維持できるような高画質な電子写真画像を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、アモルファスシリコン感光体を用いたフルカラー画像形成方法において、アモルファスシリコン感光体の高耐久性、画像の鮮明さを生かしつつ、初期および長期間に渡って安定した画像濃度を示すような二成分現像剤及びそれを用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明においては、少なくともバインダー樹脂、金属酸化物を含有するキャリアであって、該金属酸化物が少なくともFe23−FeTiO3固溶体構造を含有することを特徴とする磁性体分散型樹脂キャリアを用いることで上記した課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のキャリアを用いることによって磁性体分散型キャリアの特徴である低磁気力を生かした細線再現性に優れた画像を提供し、かつ感光体ドラムの静電荷潜像を乱すことなく(ハーフトーンの均一性)が無いと同時に、キャリアの高抵抗による白抜けや画像濃度の低下を起すことのない良好な画像を、長期間に渡って維持できるような高画質な電子写真画像を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明においては、バインダー樹脂、金属酸化物を含有するキャリア粒子であって、該金属酸化物が少なくともFe23−FeTiO3固溶体構造を有していることが特徴である。
【0021】
以下、本発明のFe23−FeTiO3固溶体構造について説明する。
【0022】
一般的に、Fe34は焼結処理等によって酸化させることによりFe23ヘマタイトに変化し磁気力を失う。しかし前述したように、同時に電気抵抗も高くなってしまうので、これを磁化調整材として樹脂キャリアに用いた場合には現像性が悪くなる場合がある。
【0023】
ここで、本発明者らの検討によれば、Fe34の如き強磁性を示すスピネル型構造を有する鉄系酸化物をTi元素の存在下で焼結することによって、Fe23ヘマタイトの鉄元素の一部がTi元素に置き換わったFe23−FeTiO3固溶体構造が形成され、かつこの構造はFe23ヘマタイトと比較して抵抗値は高くない一方でFe23ヘマタイトと同様に磁気力の低い金属酸化物となることがわかった。
【0024】
ここで本発明者らの検討によれば、磁性体分散型樹脂キャリアの磁気力を調整する際に、ヘマタイトのような抵抗の高い物質を用いず、本発明の如き電気抵抗の低い物質を用いることによって、たとえキャリアの抵抗を高く調整しても、現像性が損なわれることがないことがわかった。
【0025】
そもそもキャリアの抵抗を高く調整した場合に、現像性が損なわれるのは以下のようなメカニズムによると考えられる。キャリアの抵抗が低い場合には、現像スリーブと感光体ドラム間にかかる現像電界によって、キャリアに電荷が注入しキャリアの先端部分(感光体ドラムに最も近い部分)に電荷が蓄積し、見かけ上現像スリーブと感光体ドラム間の距離が小さくなる(電極効果)。しかし、キャリアの抵抗が高い場合には、前述した効果が十分に得られないために見かけ上現像スリーブと感光体ドラム間の距離が大きくなり、トナーが現像されるためにエネルギーをより多く必要とするために現像性が損なわれると考えられる。
【0026】
ここで、本発明のようにキャリア自体の抵抗は高くても、そこに用いられている磁性体あるいは磁性をしめす金属酸化物自体の抵抗が低い場合には、該磁性体あるいは金属酸化物の抵抗が高い場合に比べて、電極効果を得られやすいのではないかと考えられる。
【0027】
実際に本発明において、本発明のFe23−FeTiO3固溶体構造を有している金属酸化物を用いることによって、良好な現像性を保ったまま、比較的抵抗値の高いキャリアを調整することができた。
【0028】
本発明のFe23−FeTiO3固溶体構造を有している金属酸化物は、上記したようにFe34の如き強磁性を示すスピネル型構造を有する鉄系酸化物をTi元素の存在下で焼結することで調整されるが、この焼結の具合によっては該金属酸化物中にはFe23−FeTiO3固溶体構造と、元のスピネル型構造を有する鉄系酸化物構造が混在した形態となる。そして、Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物とFe34の質量の合計を100質量%とした場合に、Fe34の含有比率が43質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0029】
この時の金属酸化物中のスピネル型構造を有する鉄系酸化物構造の割合を調整することによって、本発明のFe23−FeTiO3固溶体構造を有している金属酸化物の磁気力を任意に調節することができる。
【0030】
Fe23−FeTiO3固溶体構造を有している金属酸化物の焼結時間を長くしたり、温度を高くしたりして焼結をすすめると、その構造の一部にFe2TiO5構造が生成される場合がある。このような構造を有することも本発明においては好ましい金属酸化物の形態の一つである。
【0031】
また本発明のFe23−FeTiO3固溶体構造を有している金属酸化物を調製する際にTi元素とともにNa元素を存在させることで、微妙な磁気力調整が可能となり、本発明の金属酸化物を効率的に調整するには有効な手段である。
【0032】
本発明のキャリアにおいては、79.58kA/m(1キロエルステッド)における磁化の強さが35.0乃至46.7Am2/kgであることが好ましい。このことにより帯電ドラムの潜像を乱すことなく、また現像効率を下げることなく長期間に渡って安定した画像を提供することができる。
【0033】
79.58kA/m(1キロエルステッド)における磁化の強さが、35Am2/kgより低くなると、特に高速複写機や高速レーザープリンターにおいて、感光体へのキャリア付着が生じやすくなる。さらに、現像剤担持体上へのトナー搬送性が低下しやすくなる。また、46.7Am2/kgより大きくなると、キャリア粒径にも関係するが、現像極での現像剤担時体上に形成される磁気ブラシの密度が減少し、穂長が長くなり、かつ剛直化してしまう。このため、画像上に掃き目ムラが生じやすく、細線再現性に劣る。また特に多数枚の複写又はプリントによる現像剤の耐久劣化が生じやすい。また、現像器内において、現像剤担持体上からキャリア粒子が剥ぎ取られにくくなり、選択的にキャリア粒子の劣化を起こしてしまうことがある。
【0034】
本発明においては、前記したFeTiO3−Fe23固溶体構造を有する金属酸化物自体の磁気力を調整することでキャリアの磁気力を調整してもよいが、前記固溶体構造を有する金属酸化物に加えて、マグネタイトのごとき磁性体を併用することでキャリアの磁気力を調整することも好ましい形態の一つである。
【0035】
本発明の磁性体分散型樹脂キャリアの比抵抗は5.0×105V/m印加時において、1.0×1011Ω・cm以上1.0×1013Ω・cm以下であることが好ましい。更に感光体として、アモルファスシリコン感光体を用いた場合には、1.0×1012Ω・cm以上であることが好ましい。磁性体分散型樹脂キャリアの比抵抗が1.0×1011Ω・cm未満であると、感光体へのキャリア付着をおこしたり、感光体上に描かれた静電潜像を乱してしまうことがある。逆に磁性体分散型樹脂キャリアの比抵抗が1.0×1013Ω・cmを超えると、トナーが飛びにくくなり、特に長期間の印字後濃度が低下する場合がある。
【0036】
以下に本発明のFe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物、および磁性体分散型キャリアの製造方法について述べる。
【0037】
本発明のFe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物は、前述したようにFe34の如きスピネル型構造を有する鉄酸化物をTi元素、必要に応じてNa元素の存在下で焼結することによって調整することができる。Ti元素および、Na元素はそれぞれの塩化合物でスピネル型構造を有する鉄酸化物を処理することによって供給することができる。これらの塩は、スピネル型構造を有する鉄酸化物に対して物理的に固着したり、スピネル型構造を有する鉄酸化物を調整する際に反応系に存在させることによって処理することができる。
【0038】
本発明のFe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物中の結晶はX線回折のピークで確認することができる。
【0039】
例えば出発原料であるスピネル型構造を有する鉄酸化物としてFe34を用いた場合には、まずFe34構造に起因するピークとして2θ=30°付近に回折ピークが観察される。これをTi元素と共に焼結することによりFe23−FeTiO3固溶体構造が生成されてくると、前述したピークが減少し変わりにFe23−FeTiO3固溶体構造による回折ピークが2θ=32.5乃至33.1°に出現する。この値は、Tiの含有量によってことなり、Ti含有量が多いほど狭角側にシフトする。また、更にNa元素を共存させて焼結した場合には、上記Fe23−FeTiO3固溶体構造に由来する回折ピークに加えてNaFeTi38に由来する2θ=29付近にピークも僅かに出現する。更に、焼結がすすみFeTiO5が生成し始めると、2θ=25.5付近にピークが観察される。
【0040】
本発明の磁性体分散型キャリアは少なくともバインダー樹脂に少なくともFe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物、必要に応じてマグネタイトの如きその他の金属酸化物を分散させることによって調整される。
【0041】
製造方法としては、前記金属酸化物をバインダー樹脂を構成するモノマーに分散させ開始剤或いは触媒を添加し、例えば水系媒体中に分散して重合する重合法や、磁性微粒子を含有したバインダー樹脂を粉砕する、混練粉砕法等を用いることができる。
【0042】
その中でも、キャリアの粒径を容易に制御し、シャープな粒度分布にするために重合法が好ましい。
【0043】
特に高画質化を達成するために重量平均粒径が3乃至10μmのように小粒径トナーを用いた場合、キャリアもトナーに応じて小粒径化することが好ましく、上述した重合法であれば、キャリア粒径が小粒径化しても平均粒径に関係なく微粉の少ないキャリアを製造できるというメリットも有している。
【0044】
本発明の磁性体分散型キャリアのバインダーに用いる樹脂としては以下のようなものを用いることができる。熱硬化性樹脂としては例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂また熱可塑性樹脂としてはスチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0045】
なかでも、熱硬化性樹脂が好ましく、更にその中でもフェノール樹脂、メラミン樹脂が好ましい。これらの樹脂を用いると分散する金属化合物粒子を強固に結着できるため、磁性体分散型樹脂キャリアの強度をアップさせることができ、多数枚の複写においても金属化合物粒子の脱離が起こりにくい。
【0046】
バインダー樹脂としてフェノール樹脂を用いた磁性体分散型キャリア粒子の製造は、例えば、水性媒体中にフェノール類とアルデヒド類と親油化処理を行った磁性微粒子を分散させ、塩基性触媒を添加して反応させる方法が挙げられる。フェノール類とともにロジンの如き天然樹脂や、桐油、亜麻仁油の如き乾性油を混合して反応させる、所謂、変性フェノール樹脂を形成させる方法も挙げられる。
【0047】
バインダー樹脂としてエポキシ樹脂を用いた磁性体分散型キャリア粒子の製造方法としては例えば、水性媒体中にビスフェノール類とエピハロヒドリンと親油化処理を行った金属酸化物を分散させ、アルカリ水性媒体中で反応させる方法が挙げられる。
【0048】
バインダー樹脂として、メラミン樹脂を用いた磁性体分散型キャリア粒子の製造方法としては例えば、水性媒体中にメラミン類とアルデヒド類と、親油化処理を行った磁性微粒子を分散させ、弱酸性触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0049】
バインダー樹脂として、熱可塑性樹脂を用いた磁性体分散型キャリア粒子の製造方法としては例えば、磁性体を種々の樹脂と混練した後、粉砕し、さらには必要に応じて球形化処理を行う方法等が挙げられる。
【0050】
以下、本発明の磁性体分散型樹脂キャリアの樹脂の出発原料(モノマー)を例示する。
【0051】
フェノール樹脂の出発原料としては、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシル、p−tert−ブチルフェノールの如きフェノール化合物、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラールの如きアルデヒド化合物が挙げられる。特にフェノールとホルマリンの組み合わせが好ましい。
【0052】
その他の熱硬化性樹脂の出発原料としては、エポキシ樹脂;ビスフェノール類とエピクロルヒドリン、尿素樹脂;尿素とアルデヒド類、メラミン樹脂;メラミンとアルデヒド類が挙げられる。
【0053】
これらのフェノール樹脂又はメラミン樹脂を用いる場合には、硬化触媒として塩基性触媒を用いることができる。塩基性触媒として通常のレゾール樹脂製造に使用される種々のものを用いることができる。具体的にはアンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミンの如きアミン類を挙げることができる。
【0054】
更にこれらの熱硬化性樹脂は単独で用いることもできるが、被膜強度を高め、好ましい帯電に制御するために、カップリング剤と併用して用いることが好ましい。
【0055】
さらに、前述のカップリング剤は、その一部が、樹脂をコートする前に、被コート表面に処理される、いわゆるプライマー剤として用いられることも好ましい。カップリング剤をプライマー剤として使用することにより、その後の樹脂層の形成において、共有結合を伴った、より密着性の高い状態で形成することができる。
【0056】
上記カップリング剤としては、本発明では前述したように種々のシラン化合物を用いることができるが、アミノ基を有するシラン化合物であるアミノシランを用いると良い。その結果、ポジ帯電性を持ったアミノ基をキャリア表面に導入でき、好ましい帯電量をトナーに付与できる。さらに、アミノ基の存在は、金属化合物に好ましく処理されている、親油化処理剤と、シリコーン樹脂との両者を活性化させることができ、このため、シリコーン樹脂とキャリア粒子との密着性をさらに高め、同時に樹脂の硬化を促進することで、より強固な被膜を形成することができる。
【0057】
磁性体分散型キャリア表面をカップリング剤によって被覆処理する場合には、常法によりカップリング剤を水や溶剤に溶解したものに、複合体粒子を浸漬した後、濾過及び乾燥する方法や、複合体粒子を撹拌しながらカップリング剤の水溶液や溶媒液をスプレーし、乾燥する方法が用いられる。特に複合体粒子の合一化を防止し、均一な被覆層を形成するために、撹拌しながら処理する方法が好ましい。
【0058】
また、本発明において上記した熱硬化性樹脂以外に熱可塑性樹脂を用いることもできるが、その際の出発原料としては以下に示すようなラジカルの重合性モノマー用いることができる。例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、p−ターシャリーブチルスチレンの如きスチレン誘導体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸差フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ベンジルの如きメタクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルエーテル、イソブチルエーテル、β−クロルエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルエーテル、p−クロルフェニルエーテル、p−ブロムフェニルエーテル、p−ニトロフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテルの如きビニルエーテル;ブタジエンの如きジエン化合物を挙げることができる。
【0059】
これらのモノマーは単独又は混合して使用することができ、好ましい特性が得られるような好適な重合体組成を選択することができる。
【0060】
前述したように、磁性体分散型樹脂キャリアのバインダー樹脂は三次元的に架橋されていることが好ましく、本発明では、このような架橋を形成する架橋剤を用いることが好ましい。架橋剤としては、重合性の二重結合を一分子当たり二個以上有する架橋剤を使用することが好ましい。
【0061】
架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンの如き芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールアクロキシジメタクリレート、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォンが挙げられる。
【0062】
これらの架橋剤は、二種類以上を適宜混合して使用しても良い。架橋剤は、重合性混合物にあらかじめ混合しておくこともできるし、必要に応じて適宜重合の途中で添加することもできる。
【0063】
一方、繰り返し述べているようにキャリアの抵抗が低すぎると、潜像電位をキャリアがリークし、良好な現像画像を得られなくなるため、キャリアとしてはある程度以上の抵抗が必要である。そこで、本発明では磁性体分散型キャリアを樹脂等でコートして用いるのが好ましい。
【0064】
コート層に用いることのできる樹脂としては例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体の如きアクリル樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフロロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース、セルロース誘導体、ノボラック樹脂、低分子量ポリエチレン、飽和アルキルポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂の如き熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂および無水マレインとテレフタル酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂の如き熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0065】
コート層を形成する樹脂のコート量は、本発明においては抵抗を調整する手段の一つにもなっており、所望の抵抗値を得るためには、特に制限を受けないが、1種のコート層あたりに用いるコート樹脂の量がキャリアコア粒子100質量部に対して4.0質量部を超えると、コート時に均一なコートができなくなり、製造安定性にかけるため、これ以下の範囲で用いることが好ましい。
【0066】
上記したコート層には必要に応じて、コート樹脂100質量部に対し、導電性粒子を1乃至20質量部を含有させて用いることも、磁性キャリアの抵抗を調整し、また磁性キャリア表面の残留電荷除去のためにも好ましい形態の一つである。
【0067】
導電性粒子としては、比抵抗が1×108Ωcm以下のものが好ましく、さらには、比抵抗が1×106Ωcm以下のものがより好ましい。導電性粒子は、具体的には、カーボンブラック、マグネタイト、グラファイト、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、及び酸化錫から選ばれる少なくとも一種以上の粒子を含有する粒子が好ましい。特に導電性を有する粒子としては、カーボンブラックが、粒径が小さく磁性キャリア表面の微粒子による凹凸を阻害することなく好ましく用いることができる。導電性粒子の粒径は、個数基準でピーク値が10nm乃至60nm(より好ましくは15乃至50nm)であることが、磁性キャリア表面の残留電荷を良好に除去し、かつ磁性キャリアからの脱離を良好に防止するために好ましい。
【0068】
複合体粒子の表面を樹脂で被覆する場合には、樹脂の被覆は、周知の方法によって行えばよい。例えば、ヘンシェルミキサーや、ハイスピードミキサーの如き撹拌機を用いて複合体粒子と樹脂とを混合する方法、樹脂を含む溶剤中へ複合体粒子を含浸する方法、スプレードライヤーを用いて複合体粒子に樹脂を吹き付ける方法のいずれであってもよい。
【0069】
本発明の磁性体分散型樹脂キャリアに含有される金属化合物粒子は、親油化処理されていることが、磁性キャリア粒子の粒度分布をシャープにすること、及び金属化合物粒子のキャリア粒子からの脱離を防止する上で好ましい。特に、好ましく用いられる重合法においてキャリア粒子を製造した場合、モノマーと溶媒が均一になっている液中から重合反応が進むと同時に溶液に不溶化した粒子が生成する。そのときに、上記親油化処理には、金属化合物粒子が粒子内部で均一に、かつ高密度に取り込まれる作用と粒子同士の凝集を防止し粒度分布をシャープ化する作用があると考えられる。
【0070】
親油化処理は、エポキシ基、アミノ基、及びメルカプト基から選ばれた一種又は二種以上の官能基を有する有機化合物や、それらの混合物である親油化処理剤で処理されていることが好ましい。特に、好ましく用いられる重合法によりキャリア粒子を製造した場合、親油性及び疎水性と親水性のバランスが取れた上記のような基を持った処理剤を用いて処理することで、帯電付与性能が安定し、粒子強度の高い高耐久性のキャリア粒子を得ることができる。なかでも、とりわけエポキシ基が好ましく用いられる。
【0071】
更に本発明においては、上記の親油処理剤として、アミノ基を持つ親油化処理剤を用いることも好ましい。
【0072】
アミノ基を持つ親油化処理剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、エチレンジアミン、エチレントリアミン、スチレン−(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネート等が挙げられる。メルカプト基を有する親油化処理剤としては、例えばメルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。エポキシ基をもつ親油化処理剤としては、例えばγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、エピクロルヒドリン、グリシドール、スチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
【0073】
本発明においては、バインダー樹脂と、このバインダー樹脂中に分散され少なくともFe23−FeTiO3固溶体を含む金属化合物粒子からなるキャリア粒子において、該キャリア粒子中における金属化合物粒子の含有率が80乃至99質量%であることが好ましい。磁性体分散型樹脂キャリア粒子中における金属化合物粒子の含有率が80質量%未満であると、適度な比重が得られないため、トナーとの混合性が悪化し、均一な帯電を得ることが難しくなる。さらに、キャリア粒子の磁気特性とも関係するが、感光体へのキャリア付着が生じやすくなる。また、99質量%を超えるとキャリア粒子の強度が低下して、耐久によるキャリア粒子の割れなどの問題を生じやすくなる。
【0074】
本発明の磁性体分散型樹脂キャリアは、体積平均粒径が25μm乃至60μmであることが好ましく、30μ乃至50μmであることがより好ましい。なお本発明においてキャリア粒子の体積平均粒径は、体積分布を分布基準とする粒度分布におけるメジアン値であり、例えばこの粒度分布における累積分布値が50%となる値や、粒径の測定範囲を適当に分割したときの、累積分布値50%を含む区分の算術平均値である。キャリア粒子の体積平均粒径が25μm以下であると、キャリア粒子の粒度分布のうち、微粒子側の粒子による非画像部へのキャリア付着を良好に防止できない場合がある。また、特に本発明のような高い磁化を達成しようとした場合、十分な抵抗が得難くなる。キャリア粒子の体積平均粒径が60μmより大きいと、磁気ブラシの緻密さが損なわれやすくなり、画像のムラを生じてしまう場合がある。
【0075】
次に本発明におけるトナーについて説明する。
【0076】
本発明に用いられるトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有する静電荷現像用トナーであり、重量平均粒径が3乃至10μmである。本発明では、重量平均粒径が3乃至8μmのトナーを用いることが特に有効であり好ましい。
【0077】
トナーの重量平均粒径が3μm未満の場合、特に、低湿環境下においてチャージアップの如き問題が起こりやすくなる。また、トナー自身も粉体としてのハンドリング性が低い。トナーの重量平均粒径が10μmを超えると、特に高温高湿下において、飛び散り及びかぶりの如き問題が起こりやすくなる。また、トナー粒子一個が大きくなるために、解像度の高いより緻密な画像を得にくく、さらに、静電的な転写を行うとトナーの飛び散りが生じやすくなる。
【0078】
トナーを製造する方法としては、特に限定されず、結着樹脂及び着色剤、その他の内添物を溶融混練し、混練物を冷却後粉砕分級する方法;少なくとも結着樹脂と着色剤とを溶剤中に溶解/膨潤/分散させた溶液をしかるべき粒径に分散させ、該溶剤を除去することによってトナー粒子を得る所謂懸濁造粒方法;少なくとも結着樹脂の構成要素となるモノマーと着色剤とを含む単量体系を、該単量体が不溶または難溶な溶剤中に分散し、該モノマーを重合させてトナー粒子を得る所謂懸濁重合法;単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用い直接トナーを生成する分散重合方法;又は水溶性極性重合開始剤存在下で少なくとも結着樹脂の構成要素となるモノマーを水中で重合し樹脂粒子を得、その後必要に応じて該樹脂粒子を凝集・合一させてトナー粒子を得る乳化凝集法等、種々の方法が挙げられる。
【0079】
粉砕法や、懸濁造粒法の如き、樹脂を利用してトナーを調製する場合に用いられる樹脂としては、ポリエステルユニットを含有することが望ましい。「ポリエステルユニット」とは、ポリエステルに由来する部分を示す。ポリエステルユニットを含有する樹脂は、定着性に優れ、トナーの結着樹脂に好ましく用いられている。
【0080】
ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、又は二以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸エステル等のカルボン酸成分とが原料モノマーとして使用できる。
【0081】
具体的には、例えば二価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0082】
三価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0083】
前記カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6乃至12のアルキル基で置換された琥珀酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
【0084】
前記ポリエステル樹脂は、特に下式で代表されるビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
【0085】
【化1】

(式中、Rはエチレン基及びプロピレン基から選ばれる一種以上であり、x、yは1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
【0086】
また、架橋部位を有するポリエステル樹脂を形成するための三価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、及びこれらの酸無水物やエステル化合物が挙げられる。三価以上の多価カルボン酸成分の使用量は、全モノマー基準で0.1乃至1.9mol%が好ましい。
【0087】
その他の結着樹脂としては、例えばポリスチレン;ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン誘導体から得られる高分子化合物;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂;脂肪族多価アルコール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアルコール類及びジフェノール類から選択される単量体を構造単位として有するポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂が挙げられる。
【0088】
更に、また、本発明においては、(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物、(d)ポリエステル樹脂とビニル系重合体との混合物、及び(e)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、(f)ポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物のいずれかから選択される樹脂を用いることが好ましい。
【0089】
上記樹脂や重合法によってトナーを調整する場合等の、本発明に用いられる樹脂を形成するための重合性単量体としては、具体的には、スチレン;o−(m−,p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンの如きスチレン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルの如き(メタ)アクリル酸エステル単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸アミドの如きエン単量体が好ましく用いられる。樹脂の極性は、樹脂や単量体の種類を適宜選択することで調整してもよいし、アミノ基やスルホン基、水酸基等の親水基を樹脂に導入することで調整してもよい。
【0090】
本発明に用いられる着色剤としては下記のものが挙げられる。イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180、185等が挙げられる。
【0091】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、122、144、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254が特に好ましい。
【0092】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0093】
これらの着色剤は、単独又は混合して用いることができ、さらには固溶体の状態で用いることができる。
【0094】
ブラック着色剤としては、カーボンブラック、及び上記に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色したもの等が挙げられる。
【0095】
着色剤は、カラートナーの場合、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、結着樹脂や外殻樹脂等を含む樹脂100質量部に対し1乃至20質量部添加して用いられる。
【0096】
本発明に用いられるトナーには、荷電制御剤等、結着樹脂や着色剤の他にも種々の材料を添加することができる。トナーに用いられる荷電制御剤としては、公知のものが利用できる。カラートナーの場合は、特に、無色又は淡色でトナーの帯電スピードが速くかつ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに本発明において直接重合方法を用いる場合には、重合阻害性がなく水系媒体への可溶化物のない荷電制御剤が特に好ましい。
【0097】
例えば、ネガ系荷電制御剤として、サリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸又はそれらの誘導体の金属化合物;スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物;ホウ素化合物;尿素化合物;ケイ素化合物;カリークスアレーン等が挙げられる。また、ポジ系荷電制御剤として、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が好ましく用いられる。
【0098】
本発明に用いられる離型剤としては、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。さらにベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。特に好ましく用いられるワックスとしては、分子鎖が短く、かつ立体障害が少なくモビリティに優れるパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスである。
【0099】
ワックスが1乃至40質量%、好ましくは2乃至30質量%含有されることが好適である。ワックスが1質量%未満であるとオフセット抑制効果が小さく、40質量%を超えるとトナー表面にも偏在するようになり、トナーによるキャリア粒子汚染等が生じやすくなることで、画像濃度変化が大きくなりやすい。
【0100】
本発明に用いられるトナーは、シリカ微粒子及び酸化チタン微粒子から少なくとも選択される微粒子を外添剤として有することが、現像剤に流動性を持たせると共に環境特性を向上させる上でより好ましい。
【0101】
その他の外添剤としては、金属酸化物粉体(酸化アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化錫、酸化亜鉛、など)、窒化物粉体(窒化ケイ素など)、炭化物粉体(炭化ケイ素など)、金属塩粉体(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)、脂肪酸金属塩粉体(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなど)、カーボンブラック、シリカ粉体、ポリテトラフロロエチレン、ポリビニリデンフロライド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、シリコーンの如き材料の微粉末が好ましい。
【0102】
外添剤の使用量は、トナー粒子100質量部に対し、好ましくは0.01乃至10質量部、より好ましくは0.05乃至5質量部が用いられる。外添剤は、単独で用いても、又、複数併用しても良い。外添剤は、疎水化処理を行ったものがより好ましい。また、外添剤は、BET法による窒素吸着によった比表面積が30m2/g以上、特に50乃至400m2/gの範囲のものが良好である。また、トナー粒子と外添剤との混合処理は、ヘンシェルミキサーの如き混合機を使用して行うことができる。
【0103】
本発明の磁性キャリアとトナーは、比表面積が合う形で混合して用いることができる。トナー濃度としては、二成分現像剤100質量%に対し、4質量%乃至12質量%程度で用いることが、帯電量付与、カブリ、画像濃度、白抜け防止など考慮して好ましく用いられる。トナー及び磁性キャリアを混合した二成分系現像剤の安息角が30乃至41°であることが、白抜けを良化しつつ、トナー飛散を抑制し、かつ転写性の両立を良好にする為に必要である。現像剤の安息角は、磁性キャリアの表面性、トナーの形状、トナー外添剤の種類、外添剤量、外添剤粒径などを変えることにより適宜使用できる。
【0104】
次に本発明で用いる感光体について述べる。
【0105】
〔有機光導電体:OPC〕
導電性基体としては、アルミニウム・ステンレス等の金属、アルミニウム合金・酸化インジウム−酸化錫合金等による被膜層を有するプラスチック、導電性粒子を含侵させた紙・プラスチック、導電性ポリマーを有するプラスチック等の円筒状シリンダー及びフィルムが用いられる。
【0106】
これら導電性基体上には、感光層の接着性向上・塗工性改良・基体の保護・基体上に欠陥の被覆・基体からの電荷注入性改良・感光層の電気的破壊に対する保護等を目的として下引き層を設けても良い。下引き層は、ポリビニルアルコール・ポリ−N−ビニルイミダゾール・ポリエチレンオキシド・エチルセルロース・メチルセルロース・ニトロセルロース・エチレン−アクリル酸コポリマー・ポリビニルブチラール・フェノール樹脂・カゼイン・ポリアミド・共重合ナイロン・ニカワ・ゼラチン・ポリウレタン・酸化アルミニウム等の材料によって形成される。その膜厚は通常0.1乃至10μm、好ましくは0.1乃至3μm程度である。
【0107】
電荷発生層は、アゾ系顔料・フタロシアニン系顔料・インジゴ系顔料・ペリレン系顔料・多環キノン系顔料・スクワリリウム色素・ピリリウム塩類・チオピリリウム塩類・トリフェニルメタン系色素、セレン・非晶質シリコン等の無機物質等の電荷発生物質を適当な結着剤に分散し塗工する或いは蒸着等により形成される。中でもフタロシアニン系顔料が感光体感度を本発明に適合する感度に調整する上で好ましい。結着剤としては、広範囲な結着性樹脂から選択出来、例えば、ポリカーボネート樹脂・ポリエステル樹脂・ポリビニルブチラール樹脂・ポリスチレン樹脂・アクリル樹脂・メタクリル樹脂・フェノール樹脂・シリコーン樹脂・エポキシ樹脂・酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。電荷発生層中に含有される結着剤の量は80質量%以下、好ましくは0乃至40質量%に選ぶ。また、電荷発生層の膜厚は5μm以下、特には0.05乃至2μmが好ましい。
【0108】
電荷輸送層は、電界の存在下で電荷発生層から電荷キャリアを受け取り、これを輸送する機能を有している。電荷輸送層は電荷輸送物質を必要に応じて結着樹脂と共に溶剤中に溶解し、塗工することによって形成され、その膜厚は一般的には5乃至40μmである。電荷輸送物質としては、主鎖又は側鎖にビフェニレン・アントラセン・ピレン・フェナントレン等の構造を有する多環芳香族化合物、インドール・カルバゾール・オキサジアゾール・ピラゾリン等の含窒素環式化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、セレン・セレン−テルル・非晶質シリコン・硫化カドニウム等が挙げられる。
【0109】
これら電荷輸送物質を分散させる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂・ポリエステル樹脂・ポリメタクリル酸エステル・ポリスチレン樹脂・アクリル樹脂・ポリアミド樹脂等の樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール・ポリビニルアントラセン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。
【0110】
また、表面層として、保護層を設けてもよい。保護層の樹脂としては、ポリエステル・ポリカーボネート・アクリル樹脂・エポキシ樹脂・フェノール樹脂、或いはこれらの樹脂の硬化剤等が単独或いは2種以上組み合わされて用いられる。
【0111】
また、保護層の樹脂中に導電性微粒子を分散してもよい。導電性微粒子の例としては、金属・金属酸化物等が挙げられ、好ましくは、酸化亜鉛・酸化チタン・酸化スズ・酸化アンチモン・酸化インジウム・酸化ビスマス・酸化スズ被膜酸化チタン・スズ被膜酸化インジウム・アンチモン被膜酸化スズ・酸化ジルコニウム等の超微粒子がある。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いても良い。一般的に保護層に粒子を分散させる場合、分散粒子による入射光の散乱を防ぐ為に入射光の波長よりも粒子の粒径の方が小さい事が必要であり、本発明における保護層に分散される導電性、絶縁性粒子の粒径としては0.5μm以下である事が好ましい。また、保護層中での含有量は、保護層総質量に対して2乃至90質量%が好ましく、5乃至80質量%がより好ましい。保護層の膜厚は、0.1乃至10μmが好ましく、1乃至7μmがより好ましい。
【0112】
表面層の塗工は、樹脂分散液をスプレーコーティング、ビームコーティングあるいは浸透(ディッピング)コーティングすることによって行うことが出来る。
【0113】
〔無機光導電体:アモルファスシリコン系感光体(a−Si)〕
a−Si:Hを用いた画像形成装置用感光体は、一般的には、導電性支持体を50℃乃至400℃に加熱し、該支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法(以下、「PCVD法」と称する)等の成膜法によりa−Siからなる光導電層を形成する。なかでもPCVD法、すなわち、原料ガスを直流または高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上に順次a−Si堆積膜を形成する方法が好適なものとして実用に付されている。
【0114】
{支持体}
本発明において使用される支持体としては、導電性でも電気絶縁性であってもよい。導電性支持体としては、Al、Feなどの周知の金属、およびこれらの合金、例えばステンレス等が挙げられる。また、合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セラミック等の電気絶縁性支持体の少なくとも感光層を形成する側の表面を導電処理した支持体も用いることができる。
【0115】
また、レーザー光などの可干渉光を用いた場合の干渉縞模様による画像不良をより効果的に解消する別の方法として、帯電キャリアの減少が実質的にない範囲で支持体の表面に複数の球状痕跡窪みによる凹凸形状を設けたり、感光層の下側に光吸収層等の干渉防止層或いは領域を設けても良い。
【0116】
{光導電層}
本発明において、その目的を効果的に達成するために支持体上、必要に応じて下引き層上に形成され、感光層の一部を構成する光導電層は真空堆積膜形成方法によって、所望特性が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件が設定されて作製される。
【0117】
グロー放電法によって光導電層を形成するには、基本的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガスまたは/及びハロゲン原子(X)を供給し得るX供給用の原料ガスを、内部が減圧にし得る反応容器内に所望のガス状態で導入して、該反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置されてある所定の支持体上にa−Si:H,Xからなる層を形成すればよい。
【0118】
伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、周知の如く、p型伝導特性を与える周期表13族元素またはn型伝導特性を与える周期表15族元素を用いることができる。
【0119】
本発明において、光導電層の層厚は所望の電子写真特性が得られること及び経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは20乃至50μm、より好ましくは23乃至45μm、最適には25乃至40μmとされるのが望ましい。
【0120】
本発明の目的を達成し、所望の膜特性を有する光導電層を形成するために、Si供給用のガスと希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに支持体温度を適宜設定することが必できる。
【0121】
{表面層}
本発明においては、上述のようにして支持体上に形成された光導電層の上に、更に表面層を形成することが好ましい。この表面層は自由表面を有し、主に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性、耐久性において本発明の目的を達成するために設けられる。
【0122】
表面層は、アモルファスシリコン(a−Si)系の材料や、例えば、水素原子(H)及び/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に炭素原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a−SiC:H,X」と表記する)、水素原子(H)及び/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に酸素原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a−SiO:H,X」と表記する)、水素原子(H)及び/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に窒素原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a−SiN:H,X」と表記する)、水素原子(H)及び/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に炭素原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも一つを含有するアモルファスシリコン(以下「a−SiCON:H,X」と表記する)、または、アモルファスカーボン(a−C:H,X)等の材料が好適に用いられる。
【0123】
表面層をa−SiCを主成分として構成する場合の炭素量は、シリコン原子と炭素原子の和に対して30%から90%の範囲が好ましい。
【0124】
本発明における表面層の層厚としては、通常0.01乃至3μm、好適には0.05乃至2μm、最適には0.1乃至1μmとされるのが望ましいものである。層厚が0.01μmよりも薄いと感光体を使用中に摩耗等の理由により表面層が失われてしまい、3μmを超えると残留電位の増加等の電子写真特性の低下がみられる。
【0125】
さらに本発明においては、光導電層と表面層の間に、炭素原子、酸素原子、窒素原子の含有量を表面層より減らしたブロッキング層(下部表面層)を設けることも帯電能等の特性を更に向上させるためには有効である。
【0126】
{電荷注入阻止層}
本発明の画像形成装置用感光体においては、導電性支持体と光導電層との間に、導電性支持体側からの電荷の注入を阻止する働きのある電荷注入阻止層を設けるのがいっそう効果的である。
【0127】
電荷注入阻止層に含有される伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、p型伝導特性を与える周期表13族元素またはn型伝導特性を与える周期表15族元素を用いることができる。
【0128】
さらに、電荷注入阻止層には、炭素原子、窒素原子及び酸素原子の少なくとも一種を含有させることによって、該電荷注入阻止層に直接接触して設けられる他の層との間の密着性の向上をよりいっそう図ることができる。
【0129】
また、本発明における電荷注入阻止層に含有される水素原子および/またはハロゲン原子は層内に存在する未結合手を補償し膜質の向上に効果を奏する。
【0130】
本発明において、電荷注入阻止層の層厚は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果等の点から好ましくは0.1乃至5μm、より好ましくは0.3乃至4μm、最適には0.5乃至3μmとされるのが望ましい。
【0131】
また、本発明の画像形成装置用感光体においては、支持体と光導電層あるいは電荷注入阻止層との間の密着性の一層の向上を図る目的で、例えば、Si34、SiO2、SiO、あるいはシリコン原子を母体とし、水素原子及び/またはハロゲン原子と、炭素原子及び/または酸素原子及び/または窒素原子とを含む非晶質材料等で構成される密着層を設けても良い。更に、前述のごとく、支持体からの反射光による干渉模様の発生を防止するための光吸収層を設けても良い。
【0132】
本発明の画像形成方法においては電荷容量が1.0乃至8.0μF/m2である、電子写真感光体を用いることが好ましい。電荷容量が1.5μF/m2より小さい場合、解像度の低い画像では問題はないものの、解像度が上がるに従い、ドットの忠実性が低くなる結果となっている。また、電荷容量が8.0μF/m2より大きい場合、ドットの忠実性高いものの、感光体をうめるトナー電荷が増え、十分に電荷を埋められなかったり、感光体の電位を下げることによるさまざまな、欠陥を拾いやすくなる。更には、電荷容量が1.5乃至6.0μF/m2である、電子写真感光体用いることがより好ましい。電荷容量を変えるためには、感光体の素材を変え、感光体の誘電率を調整する、電荷保持領域の膜厚を変えることにより任意の電荷容量をもつ感光体を作製することが出来る。
【0133】
本発明に関する物性の好適な測定法について以下に説明する。
【0134】
<Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物中の結晶構造の確認>
本発明のFe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物中の結晶構造の同定は、X線回折測定を以下のような条件で行うことによって行った。
【0135】
CuKα線を用い以下の条件で各サンプルのX線回折を測定した。
【0136】
使用測定機/理学電機(株)社製、全自動X線回折装置RINT−TTRII
X線管球/Cu
管電圧/50KV
管電流/300mA
走査モード/連続 スキャン速度/4deg./min
サンプリング間隔/0.020deg.
スタート角度(2θ)/3deg.
ストップ角度(2θ)/60deg.
発散スリット/開放
発散縦制限スリット/10.00mm
散乱スリット/開放
受光スリット/開放
湾曲モノクロメーター使用
【0137】
なお、各結晶構造の同定は各回折ピーク(2θ)の有無にて行った。
・Fe34構造:2θ=30°付近
・Fe23−FeTiO3固溶体構造:2θ=32.5乃至33.1°付近
・NaFeTi38構造2θ=29°付近
・FeTiO5構造:2θ=25.5°付近
【0138】
<Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物中のTi元素/Fe元素の存在比の測定>
Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物のFe元素に対するTi元素の含有量の算出は、蛍光X線分析によってFeおよびTi元素の含有量を計測し、Ti元素の含有量%/Fe元素の含有量%を計算することで算出した。なお、FeおよびTiの含有量は予めFe34、硫酸チタニルにてそれぞれの元素の検量線を作成することによって算出した。
【0139】
検量線、およびサンプルの測定はスチレン樹脂をマトリクスとして、正確な濃度の混合物を調整し、該混合物を試料プレス成型機(MAEKAWA Testing machine (MFG Co., LTD製)を用いてプレス成形することによってサンプル調整し測定した。
【0140】
蛍光X線測定には、「蛍光X線分析装置 RIX−2100型」(理学電気工業(株)製)を用いて行った。
【0141】
<磁化の測定方法>
磁性体分散型樹脂キャリアの磁気特性は、例えば理研電子(株)製の振動磁場型磁気特性自動記録装置BHV−35を用いて測定することができる。この装置を用いる場合の測定条件としては、79.58kA/m(1キロエルステッド)の外部磁場を作り、一方で、本発明の磁性体分散型樹脂キャリアを円筒状のプラスチック容器に、キャリア粒子が動かないように十分密になるようにパッキングした状態に収容し、この状態で磁化モーメントを測定し、試料を入れたときの実際の重量を測定して、磁化の強さ(Am2/kg)を求める。
【0142】
<磁性キャリアおよび金属酸化物の比抵抗の測定方法>
なお、非磁性無機化合物及び磁性体の比抵抗値は、図1に示した測定装置を用いて行なう。セルEに、キャリア粒子を充填し、該充填キャリア粒子に接するように下部電極11及び上部電極12を配し、これらの電極間に電圧を印加し、そのときに流れる電流を測定することによって比抵抗を求める方法を用いる。本発明における比抵抗の測定条件は、充填キャリア粒子と電極との接触面積S=約2.3cm2、厚みd=約0.5mm、上部電極12の荷重180gとする。
【0143】
<トナーの粒径の測定方法>
本発明においてトナーの粒径は下記方法にて測定することができる。測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100乃至150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1乃至5ml加え、更に測定試料を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、粒径2.00乃至40.30μmのトナー粒子の体積及び個数各チャンネルごとに測定して、トナーの体積分布と個数分布とを算出する。それから、トナー粒子の体積分布から求めた重量基準のトナー粒子の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。
【0144】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32.00〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
【0145】
<磁性キャリアおよび金属酸化物の粒径の測定>
磁性キャリア粒子の粒径については、走査電子顕微鏡(5,000倍)により、粒径0.1μm以上の磁性キャリア粒子をランダムに300個以上抽出し、デジタイザにより、個数平均の水平方向フェレ径をもってキャリアの個数平均粒子径とする。
【実施例】
【0146】
以下、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0147】
<Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物の製造例1>
球状マグネタイト粒子粉末10kgを含有する水懸濁液に、硫酸チタニル43.6molを含有する水溶液(マグネタイト粒子粉末の全Feに対してTi換算で30原子%に相当)を添加する。なお添加時に反応溶液のpHを8.5以上に保持するように混合溶液中にNaOHを添加した。次いで、混合溶液のpHを8.0に調整してマグネタイト粒子の粒子表面にチタンの含水酸化物を沈着させた後、濾別、水洗、乾燥して粒子表面がチタン含水酸化物で被覆処理された黒色沈殿物1を得た。
【0148】
この黒色沈殿物1を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、黒色沈殿物100gに対し、硫酸ナトリウム4.2gを加えて混合した。次いで、N2ガス流下740℃で120分間加熱焼成した後、粉砕処理して、Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物1を得た。
【0149】
この金属酸化物のX線回折ピークを測定したところ、Fe23−FeTiO3固溶体、Fe34、NaFeTi38およびFe2TiO5、それぞれに起因する回折ピークが観察され、この金属酸化物1はそれぞれの構造を有していることが確認された。固溶体の処方および確認された結晶構造を表1−1に示した。固溶体の体積抵抗および磁気力を表1−2に示した。
【0150】
<Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物の製造例2>
2.76NのNaOH溶液22.2Lに、1.8mol/Lの硫酸第一鉄水溶液17.8Lを添加し、全量40L、pH6.5の水酸化鉄塩コロイドを含む反応溶液を得た。その後この反応溶液を85℃に昇温し、200分間空気を通気するとともに0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液18Lを添加し、黒色沈殿物2を生成した。この間、温度85℃、pH6.0に保持した。
【0151】
この黒色沈殿物2を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、黒色沈殿物100gに対し、硫酸ナトリウム4.2gを加えて混合した。次いで得られた混合物をN2ガス流下730℃で60分間加熱焼成した後、粉砕処理して、Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物2を得た。
【0152】
この金属酸化物X線回折ピークを測定したところ、Fe23−FeTiO3固溶体、Fe34、NaFeTi38それぞれに起因する回折ピークが観察され、この金属酸化物2はそれぞれの構造を有していることが確認された。この固溶体に固溶体の処方および確認された結晶構造を表1−1に示した。固溶体の体積抵抗および磁気力を表1−2に示した。
【0153】
<Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物の製造例3>
球状マグネタイト粒子粉末10kgを含有する水懸濁液に、硫酸チタニル21.8molを含有する水溶液(マグネタイト粒子粉末の全Feに対してTi換算で15原子%に相当)を添加する。なお添加時に反応溶液のpHを8.5以上に保持するように混合溶液中にNaOHを添加した。次いで、混合溶液のpHを8.0に調整してマグネタイト粒子の粒子表面にチタンの含水酸化物を沈着させた後、濾別、水洗、乾燥して粒子表面がチタン含水酸化物で被覆されている黒色沈殿物3を得た。
【0154】
上記黒色沈殿物3、100gを、N2ガス流下790℃で120分間加熱焼成した後、粉砕処理して、Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物3を得た。
【0155】
この金属酸化物X線回折ピークを測定したところ、Fe23−FeTiO3固溶体、Fe34およびFe2TiO5に起因する回折ピークが観察され、この金属酸化物3はそれぞれの構造を有していることが確認された。固溶体の処方および確認された結晶構造を表1−1に示した。固溶体の体積抵抗および磁気力を表1−2に示した。
【0156】
<Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物の製造例4>
Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物の製造例3で焼結条件を790℃120分としたのを、700℃60分とした以外は同様にしてFe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物4を得た。
【0157】
この金属酸化物X線回折ピークを測定したところ、Fe23−FeTiO3固溶体、およびFe34に起因する回折ピークが観察され、この金属酸化物4はそれぞれの構造を有していることが確認された。固溶体の処方および確認された結晶構造を表1−1に示した。固溶体の体積抵抗および磁気力を表1−2に示した。
【0158】
<キャリアの製造例1>
(i)フェノール 7.5質量部
(ii)ホルマリン溶液 11.25質量部
(ホルムアルデヒド約40%、メタノール約10%、残りは水)
(iii)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.0質量%で親油化処理
したマグネタイトFe34微粒子 64.4質量部
(平均粒径0.35μm、比抵抗5.3×105Ωcm)
(iv)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.0質量%で親油化処理した
固溶体1 35.6質量部
(平均粒径0.30μm、比抵抗8.0×107Ω・cm)
上記材料及び水11質量部を40℃に保ちながら1時間混合した。ここで、上記マグネタイト及び固溶体1の親油化処理は、マグネタイト99.0質量部及び固溶体1 99.0質量部のそれぞれに対して1.0質量部のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを加え、ヘンシェルミキサー内で100℃で30分間、予備混合撹拌することによって行った。
【0159】
このスラリーに、塩基性触媒として28質量%アンモニア水2.0質量部、及び水11質量部を加え、撹拌、混合しながら40分間で85℃まで昇温・保持し、3時間反応させ、フェノール樹脂を生成し硬化させた。その後、30℃まで冷却した後、生成粒子をろ別、水洗、160℃で乾燥して、フェノール樹脂をバインダー樹脂としたキャリアコア粒子を得た。
【0160】
ついで、フッ素アクリル樹脂(Tg=70℃)の10%トルエン溶液に対し、カーボンブラックを1質量部投入し、耐圧性の容器に入れ、1mm直径のガラスビーズ50質量部を加え、ペイントシェーカーにて30分分散した。キャリアコア粒子100質量部に対して、得られたカーボンブラック分散フッソアクリル樹脂10質量部とをコートし、200℃20分焼き付けた。
【0161】
次いで、上記コートを行った粒子を、100メッシュの篩にかけて凝集による粗大粒子をカットしコートキャリア1を得た。
【0162】
上記コートキャリアの製造方法を表2に、物性を表3にそれぞれ示す。
【0163】
<キャリアの製造例2>
キャリアの製造例1において用いた固溶体およびFe23の混合比を表2の通りに変更した以外は同様にしてキャリアコア粒子を得た。
【0164】
ついで、得られたキャリアコア粒子をコーター内に投入し、剪断応力を連続して印加しながら、トルエン溶媒を用いて希釈したγ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%を投入し、キャリアコア粒子表面を処理した。キャリアコア粒子表面の処理は、40℃、500torr(6.7×104Pa)、乾燥窒素気流下で溶媒を揮発させながら行った。引き続き、上記表面処理を行ったコア粒子に、置換基がすべてメチル基であるストレートシリコーン樹脂1.0質量%及びγ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.15質量%の混合物を、トルエンを溶媒としてコートし、140℃で焼き付けた。
【0165】
以上の製造例を表2に示す。
【0166】
次いで、上記コートを行った粒子を、100メッシュの篩にかけて凝集による粗大粒子をカットしコートキャリア2を得た。
【0167】
得られたコートキャリア2の物性を表3に示す。
【0168】
<キャリアの製造例3>
キャリアの製造例1において用いた固溶体を表2に示したとおりに変更し、キャリアコア製造時の攪拌速度を1.5倍にした以外は同様にしてコートキャリア3を得た。得られたコートキャリアの物性を表3に示す。
【0169】
<キャリアの製造例4>
キャリアの製造例3において用いた固溶体を表2に示したとおりに変更した以外は同様にしてコートキャリア4を得た。得られたコートキャリアの物性を表3に示す。
【0170】
<キャリアの比較製造例1>
キャリアの製造例1において用いた固溶体とFe34を用いていたのを、表2に従ってFe34およびαFe23に変更した以外は同様にして、キャリアコア粒子を得た。
【0171】
ついで、製造例2において、コート層に、置換基がすべてメチル基であるストレートシリコーン樹脂1.0質量%及びγ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.15質量%の混合物を用いたのをそれぞれ、0.5質量%、0.5質量%に変更した以外は同様にして、比較コートキャリア1を得た。得られたコートキャリアの物性を表3に示す。
【0172】
<キャリアの比較製造例2>
キャリアの製造例1において用いた固溶体とFe34を用いていたのを、表2に従ってFe34に変更した以外は同様にして、キャリアコア粒子を得た。
【0173】
ついで、製造例2と同様の方法にして、比較コートキャリア2を得た。得られたコートキャリアの物性を表3に示す。
【0174】
【表1−1】

【0175】
【表1−2】

【0176】
【表2】

【0177】
【表3】

【0178】
<トナーの製造例1>
・ポリエステル樹脂(プロポキシ化ビスフェノールAとフマール酸との縮合ポリマー、
酸化10.8mgKOH/g) 100質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7質量部
・ジアルキルサリチル酸のアルミニウム化合物 0.5質量部
・低分子量ポリプロピレン 5質量部
上記材料をヘンシェルミキサーにより混合し、ペントロを吸引ポンプに接続し吸引しつつ、二軸押し出し機にて溶融混練を行った。この溶融混練物をハンマーミルにて粗砕して、1mmのメッシュパスの粗砕物を得た。さらにジェットミルにて微粉砕を行った後、多分割分級機(エルボウジェット)により分級を行い、シアントナー粒子を得た。
【0179】
このシアントナー粒子100質量部に対して、疎水化処理酸化チタン微粉体(一次粒子の個数平均粒径:0.02μm)1.5質量部をヘンシェルミキサーにより混合し、重量平均粒径6.0μmのシアントナー1を得た。
【0180】
(アモルファスシリコン感光体の製造例)
RF−PCVD法による画像形成装置用感光体の製造装置を用い、直径60mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー上に、表4に示す条件で負帯電の感光体を作製した。
【0181】
【表4】

【0182】
〔実施例1〜4〕
前述のコートキャリアの製造方法1〜4で調製したコートキャリアに対して、それぞれトナー濃度6質量%になるように上記トナーを秤量し、V型混合機で混合してそれぞれシアン現像剤を調製した。
【0183】
これらの現像剤を用いて以下の方法で画像評価を行った。
【0184】
図2は本発明を実施した画像形成装置である電子写真方式のフルカラー機の概略構成図である。
【0185】
図2において、ABCDの各ステーションは、フルカラー画像のそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するがステーションの色順については一切問わない。以下の説明において、例えば一次帯電器21とあれば、ABCD各ステーションにおける一次帯電器21A、21B、21C、21D指すものとする。
【0186】
それぞれのステーションにおいて、画像形成は次のように行われる。
【0187】
まず、像担持体である感光ドラム4を回転自在に設け、該感光ドラム4を一次帯電器21で一様に帯電し、次に例えばレーザのような発光素子22によって情報信号を露光して静電潜像を形成し、現像装置9で可視像化する。次に該可視像を転写帯電器23により転写紙搬送シート27により搬送された転写紙24に転写される。
【0188】
転写紙24は各ステーションでイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像が順に重ね転写される。
【0189】
この4色の各トナー像が積層された転写紙24は定着装置25で熱と圧力とにより混色及び定着され、フルカラー像として装置外に排出される。
【0190】
また感光体は上記で製造したアモルファスシリコン感光体を用いた。さらに、現像ローラー上の現像剤の載り量は、30mg/cm2になるように、規制ブレードで調整した。また、現像ローラーとアモルファスシリコン感光体の間隔は400μmになるように調整した。
【0191】
更に、レーザーは650nmの半導体レーザーを用い、スポット径を絞り、1200dpiで出力出来るようにした。また、定着ユニットの定着ローラーの表層をシリコーンチューブに変え、オイル塗布機構を取り外した。常温常湿(23℃,60%RH)下で画出し評価を行った。
【0192】
画像評価は以下の項目について行った。
【0193】
<ハーフトーン均一性の測定>
前記改造機30H画像を形成し、この画像を目視にて観察し、前記画像のドットの再現性について以下の基準に基づきガサツキの度合いで評価した。なお、30H画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hをベタ白(非画像)とし、FFHをベタ黒(全面画像)とするときのハーフトーン画像である。
【0194】
<白抜けの測定>
転写紙の搬送方向に対して、ハーフトーン横帯(30H 幅10mm)とベタ黒横帯(FFH、幅10mm)を交互に並べたチャートを出力する。その画像をスキャナで読みとり、二値化処理を行う。二値化画像の搬送方向におけるあるラインの輝度分布(256階調)をとり、そのときのハーフトーンの輝度に接線を引き、ベタ部輝度と交わるまでのハーフトーン部後端の接線からずれた輝度の領域(面積:輝度数の和)をもって、白抜け度とする。
A:50以下 殆ど目立たず、非常に良好である。
B:51乃至150 良好である。
C:151乃至300 白抜けはあるが、実用上問題ないレベルである。
D:301乃至600 白抜けが目立ち、問題である。
E:601以上 非常に目立つ。
【0195】
<細線再現性の測定>
前記改造機にてキヤノンオリジナル画像を出力し、プリントアウト画像の細線の再現性を評価した。
A:良好な細線の再現性を示す
B:軽微な細線の幅の変動が見られる
C:細線の細りや飛び散りが目立つ
D:所々で細線の断裂が見られ、再現性に劣る
【0196】
<キャリア付着の測定>
キャリア付着の評価にあっては、A3画像でベタ白画像を出力させた際のキャリア付着量で評価した。評価基準は以下の通り・
A:1mg未満
B:1mg以上〜20mg未満
C:20mg以上
【0197】
なお、本発明においてはBレベルまでを良好なキャリア付着の範囲とした。
【0198】
<画像濃度の測定>
常温低湿下において、初期及び画像濃度、および200rpmのスピードで空回転を100分間行った後のベタ画像を複写し、その濃度をカラー反射濃度計(Color reflection densitometer X−RITE 404A manufactured by X−Rite Co.)で測定した。
【0199】
それぞれの現像剤の評価結果を表5に示す。
【0200】
・初期画像濃度
それぞれの現像剤の初期画像濃度を評価したところ、全ての現像剤で良好な画像濃度が得られ、それは空回転後の劣化した現像剤においても悪化することは無かった。このように、キャリアの抵抗が比較的高いのにも関わらず、アモルファスシリコンドラムを用いた場合にも良好な画像濃度を得られ、かつ後述するよう細線再現性に優れた画像を提供できたのは、本発明のFe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物によって、用いた金属酸化物の抵抗値を高めることなく磁気力を調整できたからであると思われた。
【0201】
・穂立ちの観察
それぞれの現像剤の、現像スリーブの上の現像極付近の現像ブラシの穂立ちを顕微鏡観察した結果、表5に示したとおり、緻密で穂が短くなっているものと、若干疎な穂で穂長が長めになっているものがあった。これは、キャリアの磁化に起因するものと思われた。
【0202】
・ハーフトーン均一性
それぞれの現像剤のハーフトーンの均一性を評価したところ、実施例3、4が若干他の実施例よりも劣っていたものの、どれも良好な特性を示していた。実施例3および4がハーフトーンの均一性にやや劣っていたのはキャリアの抵抗値がやや低いために、感光体ドラムに電荷が注入し、潜像を乱したためと思われた。
【0203】
・白抜け
それぞれの現像剤の白抜けを評価したところ、実施例2がやや他の実施例よりも劣るものの、どれも良好な特性を示していた。実施例2が他よりやや劣っていたのは用いたキャリアの抵抗が若干高いためと思われた。
【0204】
・細線再現性
それぞれの現像剤の細線再現性を評価したところ、実施例2がやや他の実施例よりも劣るものの、どれも良好な特性を示していた。実施例2が他よりやや劣っていたのは用いたキャリアの磁気力がやや高いためであると思われた。
【0205】
・キャリア付着
それぞれの現像剤のキャリア付着を評価したところ、実施例3のキャリアが若干他より劣るものの、どの現像剤もキャリア付着は観察されず良好な結果であった。実施例3のキャリア付着がやや悪かったのは磁気力がやや弱かったためと思われた。
【0206】
〔比較例1〕
比較コートキャリア1に対して、トナー濃度6%となるように実施例1〜3と同様の方法で現像剤を調整し評価を行った。
【0207】
評価の結果比較コートキャリア1を用いた現像剤は、初期の画像が若干薄く、また空回転後の画像濃度も薄くなっていることが確認された。これは、キャリアコアを形成する磁性体および金属酸化物の抵抗が高いために、現像性がやや劣ったためと思われる。
【0208】
〔比較例2〕
比較コートキャリア2に対して、トナー濃度6%となるように実施例1〜3と同様の方法で現像剤を調整し評価を行った。
【0209】
評価の結果、比較コートキャリア2を用いた現像剤は、キャリアブラシが疎で、後長く、剛直になっていることが確認された。また他の実施例に比べ再線の再現性が若干劣っていた。これはキャリアの磁化が高いためであると思われる。
【0210】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】本発明の磁性キャリア金属酸化物の比抵抗を測定する装置の概略的断面図。
【図2】本発明を表す、複数の現像剤保持体を持つ現像器を用いた画像形成装置を表す断面図。
【符号の説明】
【0212】
11:下部電極
12:上部電極
13:絶縁物
14:電流計
15:電圧計
16:定電圧装置
17:キャリア
18:ガイドリング
d:試料厚み
E:抵抗測定セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともバインダー樹脂、金属酸化物を含有するキャリアであって、該金属酸化物が、少なくともFe23−FeTiO3固溶体構造を有することを特徴とする磁性体分散型樹脂キャリア。
【請求項2】
該キャリアの79.58kA/m(1キロエルステッド)における磁化の強さが35.0Am2/kg以上46.7Am2/kg以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁性体分散型樹脂キャリア。
【請求項3】
Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物中に、スピネル型構造を有する鉄系酸化物構造が存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性体分散型樹脂キャリア。
【請求項4】
Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物中に、Fe2TiO5構造が存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁性体分散型樹脂キャリア。
【請求項5】
Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物中に、NaFeTi38構造が存在することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁性体分散型樹脂キャリア。
【請求項6】
Fe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物とFe34とを含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁性体分散型樹脂キャリア。
【請求項7】
該金属酸化物が少なくともFe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物とFe34とを含み、かつFe23−FeTiO3固溶体構造を有する金属酸化物とFe34の質量の合計を100質量%とした場合に、Fe34の含有比率が43質量%以上80質量%以下であることを特徴とする請求項6に記載の磁性体分散型樹脂キャリア。
【請求項8】
5.0×105V/m印加時の体積抵抗が1.0×1011Ω・cm以上1.0×1013Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の磁性体分散型樹脂キャリア。
【請求項9】
少なくとも請求項1乃至8のいずれかに記載のキャリアと少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナーとからなる二成分現像剤。
【請求項10】
請求項9に記載の現像剤とアモルファスシリコン感光体とを用いてなることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−90024(P2008−90024A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271401(P2006−271401)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】