説明

磁性体複合粒子の製造方法

【課題】 生化学用担体、塗料、紙、電子材料、電子写真、化粧品、医薬品、農薬、食品、触媒など広い分野で利用でき、磁気応答時間が短い磁性粒子を得る。
【解決手段】 モノマー100重量部に対して界面活性剤の使用量が0.01重量部以下の割合で前記モノマーを重合して母粒子を製造し、得られた前記母粒子の表面上に、磁性体微粒子を物理的に吸着させる工程を含むことを特徴とする磁性体複合粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体複合粒子の製造方法に関するものである。この磁性体複合粒子は、生化学用担体、塗料、紙、電子材料、電子写真、化粧品、医薬品、農薬、食品、触媒など広い分野で利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
粒子径分布が比較的均一でかつ磁性体を複合化させる粒子の製造法としては、乳化重合、懸濁重合などにより得られた均一粒径母粒子の表面上に、磁性体微粒子を物理的に吸着させ被覆層を形成する方法が提案されている。物理的吸着には母粒子と磁性体微粒子とを攪拌翼付き容器中で攪拌翼の周速度が15m/秒以上の条件下の気流中で高速攪拌するなど、高エネルギーで母粒子と磁性体微粒子を衝突させることが有効である。母粒子表面は、界面活性剤、オリゴマー、低分子量成分などが吸着していると、複合化の阻害因子になるケースが多く、これらが存在していないことが望ましい。ところが、母粒子を得る工程における乳化重合、懸濁重合では、安定化剤として、界面活性剤を使用する事が一般的であり、これらを低減、除去するために遠心、透析などの精製工程を実施していた。この精製工程が煩雑であることが問題となっていた。
【特許文献1】特開2004−205481
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、磁性粒子製造において精製工程を省ける均一粒径母粒子を使用し、効率的に磁性体複合粒子を得る方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、モノマー100重量部に対して界面活性剤の使用量が0.01重量部以下の割合で前記モノマーを重合して母粒子を製造し、得られた前記母粒子の表面上に、磁性体微粒子を物理的に吸着させる工程を含むことを特徴とする磁性体複合粒子の製造方法を提供するものである。
【0005】
本発明で使用する母粒子の平均粒子径は、0.4〜200μm、好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1.5〜50μmである。母粒子のCV(Coefficient of Variation)値は、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。母粒子の平均粒子径が0.4μm未満では、たとえば粒子の高速撹拌による衝突エネルギーが不十分で磁性体微粒子の吸着が困難になる。一方、母粒子の平均粒子径が200μmを超えると、微粒子としての特性が失われてしまう。また、CV値が上記範囲をはずれると、得られる磁性体複合粒子の粒子径の均一性が不十分となる。
【0006】
本発明で使用する母粒子は、重合により得られたポリマー粒子であり、かかるポリマーとしては、特に、ビニル系ポリマーが好ましく、その製造に使用するビニル系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルなどを例示することができる。このビニル系ポリマーは単独重合体であっても、あるいは上記ビニル系モノマーから選ばれた2種以上のモノマーからなる共重合体であってもよい。また、上記ビニル系モノマーとブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジアリルフタレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどの共重合可能なモノマーとの共重合体も使用することができる。
【0007】
本発明の母粒子を、重合時に界面活性剤を使用しないソープフリー乳化重合で得ることが望ましい。ソープフリー乳化重合は、例えばJ.Polym.Sci.Cheem.Ed.,14,2193(1977)、高分子化学,22,481(1965)、高分子論集,32,229(1975)、高分子論集,32,522(1975)などに記載の方法が挙げられる。まだ、重合安定性、粒径コントロールの観点から少量の界面活性剤を使用することもできるが、その上限はモノマー100重量部に対して0.01重量部である。これを超えて使用すると、粒子表面に界面活性剤が吸着することにより磁性体複合化の阻害因子になる。
【0008】
本発明における平均粒子径および粒子径分布は、電子顕微鏡写真上にて100個の粒子の粒子径を無作意に測定して求めたものである。
【0009】
本発明で使用する磁性体微粒子としては、特に制限はないが、酸化鉄系の物質が代表的であり、MnFe(Mn=Co、Ni、Mg、Cu、Li0.5Fe0.5等)で表現されるフェライト、Feで表現されるマグネタイト、あるいはγFeが挙げられる。特に、飽和磁化が強く、かつ残留磁化が少ない磁気材料としてγFe、Feが好ましい。
【0010】
本発明で使用する磁性体微粒子は、母粒子の平均粒子径の好ましくは1/5以下、より好ましくは1/10以下、さらに好ましくは1/20以下の平均粒子径を有する。磁性体微粒子の平均粒子径が母粒子の平均粒子径の1/5を超えると母粒子表面に均一かつ十分な厚みを持った被覆層を形成することができにくい。
【0011】
本発明での母粒子と磁性体微粒子との比(母粒子:磁性体微粒子)は、重量比で95:5〜20:80が好ましい。磁性体微粒子がこの範囲の量より少ないと、複合化効果が少なくなる。磁性体微粒子がこの範囲の量より多いと、母粒子の対する量が過剰となり、複合化されない磁性体微粒子が多くなる。
【0012】
本発明で使用する磁性体微粒子は、母粒子と後工程で使用する単量体モノマーとの親和性、相溶性との観点から表面が疎水化されたものが望ましい。磁性体微粒子の表面の疎水化処理方法としては、磁性体微粒子と極めて親和性の高い部分と疎水性の部分とを分子内に有する化合物を磁性体微粒子に接触させて結合させる方法を挙げることができる。このような化合物としてはシランカップリング剤に代表されるシラン化合物を挙げることができる。シラン化合物による疎水化は、薬品耐性、特にアルカリ耐性に優れており、使用中に疎水化層が脱落する事による磁性体の剥離、磁気性能が低下する問題、あるいは脱離した磁性体や界面活性剤が浮遊する事による系に汚染物が混入する問題の発生を効果的に防止することができる。また、本発明においては、疎水化された磁性体微粒子が、たとえばトルエンに良好に分散することができる場合に、十分に疎水化されているということができる。
【0013】
シランカップリング剤に代表されるシラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランなどがある。
【0014】
これらのシラン化合物を磁性体微粒子に結合させる方法としては、例えば、磁性体微粒子と、シラン化合物とを水などの無機媒質またはアルコール、エーテル、ケトン、エステルなどの有機媒質中で混合し、撹拌しながら加熱した後、磁性体微粒子をデカンテーションなどにより分離して減圧乾燥により無機媒質または有機媒質を除去する手段を挙げることができる。また、磁性体微粒子とシラン化合物とを直接混合し加熱させて両者を結合させてもよい。これらの手段において、加熱温度は通常30〜100℃であり、加熱温度は0.5〜2時間程度である。また、シラン化合物の使用量は、磁性体微粒子の表面積によって適宜定められているが、通常磁性体微粒子100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部である。
【0015】
本発明の方法によって母粒子の表面に磁性体微粒子の被覆層を形成するには、先ず母粒子と磁性体微粒子とを混合し、母粒子の表面に磁性体微粒子を物理的に吸着させる。本発明で述べる物理的吸着法とは、化学反応を伴わない吸着法、結合法を指すものであり、原理としては、疎水/疎水吸着、溶融結合または吸着、融着結合または吸着、水素結合、ファンデルワールス結合などを指す。疎水/疎水吸着を利用する場合の例としては、母粒子表面および磁性体微粒子表面が疎水性のもの或いは疎水化処理されたものを選択し、ドライブレンドするか、或いは、母粒子、磁性体微粒子の双方を侵すことなく良分散性の溶剤、例えばトルエン、ヘキサン中で充分分散させた後、混合条件下で溶剤を揮発させる方法が挙げられる。また、母粒子表面および磁性体微粒子表面を多少溶かす材質あるいは溶剤の選択および/または混合時の温度条件を選択することにより、溶融結合または吸着、融着結合または吸着を利用した複合化も可能である。
【0016】
物理的に強い力を外部から加えることにより複合化を実現させる方法も有効である。例えば乳鉢、自動乳鉢、ボールミル、ブレード加圧式粉体圧縮法、メカノフュージョン法のようなメカノケミカル効果を利用するもの、あるいはジェットミル、ハイブリダイザーなど高速気流中衝撃法を利用するものが挙げられる。効率よくかつ強固に複合化を実施するには物理的吸着力が強いことが望ましい。その方法としては攪拌翼付き容器中で攪拌翼の周速度が好ましくは15m/秒以上、より好ましくは30m/秒以上、さらに好ましくは40〜150m/秒で実施することが挙げられる。撹拌翼の周速度が15m/秒より低いと、被覆層を形成する十分なエネルギーを得ることができないことがある。なお、撹拌翼の周速度の上限については、特に制限はないが、使用する装置、エネルギー効率などの点から自ずと決定される。
また、同一種または異なる種類の磁性微粒子および/または非磁性微粒子を用いて複合化を複数回実施し、複数の被覆層を有する多層構造の被覆層からなる磁性体複合粒子を製造することもできる。例えば、母粒子と磁性体微粒子とを用いて第1の被覆層を形成した後、さらにポリマー粒子を加えてこれを第1の被覆層上に物理的に吸着させ、第2の被覆層を形成し、必要に応じてこれを繰り返すことで複数の被覆層を形成することができる。このように、多層構造の被覆層を形成する際に使用する非磁性微粒子の成分としては、ポリマー粒子、好ましくは熱可塑性ポリマー粒子を使用するのがよい。この熱可塑性ポリマー粒子としては、上記ビニル系ポリマーのなかから目的に応じて適宜選択することができる。熱可塑性ポリマー粒子としては、粒子径が母粒子の粒子径の1〜60%、重量平均分子量1万〜100万、素材はアクリル系のものが望ましい。これらのポリマー成分の添加量としては、母粒子100重量部に対し100重量部以下が望ましい。この場合、非磁性微粒子であるポリマーの種類を母粒子と変えると摩擦帯電で付着しやすくなり、被覆層の形成がより容易になる。
次に、被覆層上にさらにコーティングのために形成されるポリマー層(以下、「コーティングポリマー層」ともいう)について述べる。
【0017】
かかるポリマー層は、母粒子の表面に被覆層が形成された粒子(以下、「磁性体被覆粒子」という)の存在下で、主原料としての共重合性モノマーと、副原料である重合開始剤、乳化剤、分散剤、界面活性剤、電解質、架橋剤、分子量調節剤などが必要に応じて添加され液体中で重合を行うことにより形成される。このようにコーティングポリマー層を重合によって形成することにより、当該ポリマー層の表面に所望の官能基を導入することができるなど、表面加工性にすぐれる。
【0018】
ポリマー層の成分としては特に、ビニル系ポリマーが好ましく、その製造に使用するビニル系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルなどを例示することができる。このビニル系ポリマーは単独重合体であっても、あるいは上記ビニル系モノマーから選ばれた2種以上のモノマーからなる共重合体であってもよい。
【0019】
また、上記ビニル系モノマーとブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジアリルフタレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、イソプレンスルホン酸およびそのナトリウム塩などの共重合可能なモノマーとの共重合体も使用することができる。
【0020】
重合開始剤としては、水への溶解性の観点から分類すると、油溶性重合開始剤が好ましい。水溶性の重合開始剤を用いると複合粒子表面での重合でなく、磁性体被覆粒子を含まない疎水性重合モノマーのみが重合した新粒子が多量に生じる傾向がある。
【0021】
油溶性重合開始剤としては、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ターシャリーブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等の過酸化化合物、アゾ化合物が挙げられる。
【0022】
水溶性開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、2−2アゾビス(2−アミノプロパン)鉱酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびそのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩等があげられ、また、過硫酸塩、過酸化水素塩と重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化第一鉄等を組み合わせたレドックス開始剤もあげられ、中でも過硫酸塩が好適に用いられる。これらの重合開始剤のモノマー全体に対する割合は0.01〜8重量%の範囲が好適に用いられる。
【0023】
界面活性剤としては、通常使用されている陰イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤等、を単独もしくは組み合わせて用いることができる。例えば反応性陰イオン性界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステルのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルフェニル)エーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルフェニル)エーテルのリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などの陰イオン性界面活性剤の他、ラテムルS−180A(花王(株)製)、エレミノールJS−2(三洋化成(株)製)、アクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−10N(旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。
【0024】
また、非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのほか、アクアロンRS−20(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープNE−20(旭電化工業(株)製)などの反応性非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0025】
コーティングポリマー層の形成におけるモノマーの重合系への添加方法は、とくに制限されず、一括方式、分割方式あるいは連続添加方式のいずれであっても良い。重合温度は重合開始剤によって異なるが、通常10〜90℃好ましくは30〜85℃であり、重合に要する時間は通常1〜30時間程度である。
【0026】
本発明の方法により得られる磁性体複合粒子の主たる用途の一つは、診断薬用担体粒子である。当該用途では、粒子からの不純物の溶出、あるいは磁性体微粒子そのものの溶出あるいは磁性体微粒子からの不純物の溶出は望ましくないが、本発明で得られる磁性体複合粒子ではこのような不都合がないので診断薬用担体粒子に好適である。このような診断薬用担体粒子の用途においては、コーティングポリマー層の表面の特性を目的に応じて選択することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
1.母粒子の作製(ソープフリー乳化重合により界面活性剤を用いずに重合して粒子を得る方法)
1Lセパラブルフラスコに蒸留水780gを投入し、イカリ型撹拌羽200rpm撹拌、Nガス気流下80℃まで温度を上げた。次いで反応開始剤として過硫酸カリウム水溶液の5%水溶液20g、モノマーとしてスチレン20g投入し、80℃を保ったまま2時間反応させた。次いでスチレンモノマー180gを80℃を保ったまま3時間で連続滴下した。その後80℃を保ったまま2時間反応させた後冷却した。
得られた粒子は平均粒子径0.80μm CV値1.5%であった。これを500メッシュステンレス金網でろ過し、遠心分離操作により粒子のみ回収し60℃オーブンで24時間乾燥させた。
2.母粒子への磁性体微粒子の被覆(被覆層の形成)
油性磁性流体「FV55」[松本油脂(株)製]にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、疎水化処理された表面を有するフェライト系の超常磁性体(平均粒子径:0.01μm)を得た。得られた磁性体微粒子をトルエン/水(重量比1:1)に添加し、十分に攪拌した後静置したところ、磁性体微粒子はトルエンのみに分散されており、表面が疎水性であることを確認した。
【0028】
ついで、母粒子10gに、磁性体微粒子を20g混合し、この混合物をこの混合物をハイブリダイゼーションシステムNHS−0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽根(撹拌翼)の周速度100m/秒(16200rpm)で5分間処理した。
3.磁性体被覆粒子の表面コーティング重合(コーティングポリマー層の形成)
母粒子への磁性体微粒子の被覆で得られた磁性体被覆粒子30gと、分散剤としてノニオン性乳化剤「エマルゲン150」(花王製)の0.5%水溶液900gを1Lセパラブルフラスコに投入し充分に分散させる。これにモノマーとしてスチレン3g、メタクリル酸0.9g、重合開始剤としてターシャリーブチルペルオキシ2−エチルヘキサネート(日本油脂社製;パーブチルO)0.6gを添加し、イカリ型撹拌羽200rpm撹拌、Nガス気流下80℃で8時間反応させた。
比較例
【0029】
1.母粒子の作製(一般の乳化重合により界面活性剤を用いて重合して粒子を得る方法)
1Lセパラブルフラスコに蒸留水585gを投入した。別の容器(例えば500mlビーカー)に蒸留水147g、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダの5%水溶液3g、モノマーとしてスチレン135gを入れ、直接超音波処理して乳化した。蒸留水入り1Lセパラブルフラスコをイカリ型撹拌羽200rpm撹拌、Nガス気流下80℃まで温度を上げた。次いで反応開始剤として過硫酸カリウムの5%水溶液15g、モノマーとしてスチレン15g投入し、80℃を保ったまま2時間反応させた。次いで界面活性剤により乳化したスチレンを1Lセパラブルフラスコ内に80℃を保ったまま3時間で連続滴下した。その後80℃を保ったまま2時間反応させた後冷却した。
得られた粒子は平均粒子径0.79μm CV値1.9%であった。これを500メッシュステンレス金網でろ過し、遠心分離操作により粒子のみ回収し60℃オーブンで24時間乾燥させた。
2.母粒子への磁性体微粒子の被覆(被覆層の形成)
実施例と同じ方法で行なった。
3.磁性体被覆粒子の表面コーティング重合(コーティングポリマー層の形成)
実施例と同じ方法で行なった。
【0030】
得られた磁性体複合粒子を分散媒としての水に1重量%含む試験液を調整した。この試験液の1mlをエッペンドルフチューブに入れ、撹拌後に横方向から4000ガウスの磁気を1分間かけた場合の磁気捕捉率を測定した。また、分散媒として200mM NaOH水溶液についても同様の操作、測定を行った。
【0031】
実施例の磁性体複合粒子は水、および200mMのNaOH水溶液のいずれの分散媒中でも磁気捕捉率が99重量%以上であった。これは、磁性体微粒子が母粒子に強く結合しており、磁性体被覆粒子の表面コーティング重合時にも磁性体の剥がれが起こらず、200mMのNaOH水溶液のような高pH条件下でも、磁性体微粒子の母粒子からの脱離がなく安定的であることから、磁気応答性が速いことが挙げられる。
【0032】
一方、比較例は、水、200mMのNaOH水溶液いずれの分散媒中でも実施例全てにおいて得られた磁気捕捉率99重量%以上が得られなかった。これは、母粒子表面を界面活性剤が覆っていることから、磁性体微粒子との結合が弱く、磁性体被覆粒子の表面コーティング重合時にも磁性体の剥がれており、水中での磁気応答性の遅そくなり、さらに200mMのNaOH水溶液中では磁性体の剥がれが促進されることから、磁気応答性がさらに遅くなった。なお、比較例においても母粒子作製後、透析や遠心精製を繰り返し行ない界面活性剤を取り除くことにより、実施例の性能を発現することができるが、この工程がない本発明の方法に優位性がある。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー100重量部に対して界面活性剤の使用量が0.01重量部以下の割合で前記モノマーを重合して母粒子を製造し、得られた前記母粒子の表面上に、磁性体微粒子を物理的に吸着させる工程を含むことを特徴とする磁性体複合粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記磁性体微粒子は、γFeおよびFeの少なくとも一方である、磁性体複合粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれかにおいて、
前記磁性体微粒子の平均粒子径は、前記母粒子の平均粒子径の1/5以下である、磁性体複合粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記母粒子と前記磁性体微粒子との割合は、重量比(母粒子:磁性体粒子)で95:5〜20:80である、磁性体複合粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記母粒子と前記磁性体微粒子とを攪拌翼付き容器中で攪拌翼の周速度が15m/秒以上の条件下の気流中で高速攪拌することにより、前記母粒子上に前記磁性体粒子を吸着させる、磁性体複合粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5に記載の製造方法により得られた磁性体複合粒子の存在下、モノマーを重合する工程を含む、磁性体複合粒子の製造方法。

【公開番号】特開2006−265290(P2006−265290A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81583(P2005−81583)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】