説明

磁性粉体の移載方法及び装置

【課題】 磁性粉体を任意の移載パターンで移載することができる磁性粉体の移載装置の提供。
【解決手段】 本発明の磁性粉体の移載装置1は、中空管2の束4、磁性粉体の移載のパターンに対応する位置に配された中空管2の中空部分に収容された磁石3、中空管2の先端側に配設された保持体5及び保持体5と磁石3を移動させる移動手段6とを具備し、磁石3の磁力で保持体5の表面に磁性粉体が保持された状態で保持体5と中空管の束4を移動手段6で被載体表面の前記磁性粉体の移載位置に移動させ、磁石移動手段30で磁石3を保持体5から離間させることで保持体5の表面に保持されている磁性粉体を保持体5から離脱させて、被載体表面に磁性粉体を載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄粉等の磁性粉体を不織布等の被載体の表面に移載する磁性粉体の移載及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通気性の収容体内に鉄粉を充填し、空気中の酸素による鉄粉の酸化に伴う発熱を利用した発熱体が知られている。上述のような発熱体は、近年種々の使用形態が提案されており、その形態に応じた鉄粉の充填方法が望まれている。
【0003】
斯かる発熱体の製造技術に関し、下記特許文献1の技術が提案されている。この技術は、ドラムの外周に磁石を所定間隔をおいて配しておき、該ドラムを回転させながらその周面部に鉄粉の収容部を構成するシートを供給し、該シートの裏側から作用する磁石の磁力で鉄粉を該シートの表面に引きつけた後、他方のシートを合流させて該鉄粉を両シート間に封止するものである。
【0004】
ところで、この技術は、鉄粉の移載パターンがあらかじめ決められた特定のパターンの場合には対応できるが、種々のパターンに鉄粉を移載することはできない。
【0005】
【特許文献1】特開平6−191505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、任意な移載パターンに対応することができる磁性粉体の移載方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被載体の表面に磁性粉体を移載する磁性粉体の移載方法であって、中空管の中空部に収納された磁石と前記磁性粉体との間に介在する磁性粉体の保持体表面に該磁石の磁力によって該磁性粉体を保持した状態で該磁性粉体を前記被載体の所望の位置に移動させ、該磁石の磁力が該磁性粉体に及ばないようにすることにより該磁性粉体を該磁性粉体保持体表面から離脱させ、該磁性粉体を該被載体の表面に載置する磁性粉体の移載方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0008】
また本発は、被載体の表面に磁性粉体を移載する磁性粉体の移載装置であって、複数本の中空管、該中空管の中空部分に収容された磁石、前記中空管の先端側に配設された磁性粉体保持体及び前記保持体と前記磁石を移動させる移動手段、とを具備する磁性粉体の移載装置を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の磁性粉体の移載装置によれば、磁性粉体を任意の移載パターンで移載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明をその好ましい実施形態に基づいて、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明の磁性粉体の移載装置(以下、単に移載装置ともいう。)の第1実施形態を模式的に示すものである。これらの図において、符号1は移載装置、10は被載体、11は磁性粉体を示している。
【0011】
図1に示したように、本実施形態の移載装置1は、複数本の中空管2が束状に配設されている。そして、これら中空管2のうち、磁性粉体の移載のパターンに対応する位置に配された中空管の中空部2内にのみ、磁石3が収容されている。これらの磁石3は磁石3を中空管2の上下方向に移動させる磁石移動手段30により、該中空部を上下動する。複数本の中空管2(これは中空管2の束であり4で示される)の先端には磁性粉体11を保持する磁性粉体の保持体5(以下、保持体5と略称する)が設けられている。磁性粉体11は中空管2の中空部に収容された磁石3によって引きつけられて、保持体5の表面に保持された状態となる。保持体5の移動は移動手段6によってなされる。
【0012】
中空管2の配設形態は、磁性粉体の移載パターン及びその面積に応じて設定される。本実施形態では、中空管2は、縦横同数(13×13)で合計169本配列されており、これらの中空管2のうち、磁性粉体の移載のパターンに対応する位置に配された中空管2の中空部に後述する磁石3が収容されている。移載のパターンは、製造する製品に応じて選択される。本実施形態では、一例として、図2のように、正方形の外周及びその中央部分に磁性粉体を載置するパターンが示されており、外縁部の2列88本と中央部の9本の中空管2の中空部に合計97本の磁石3が収容されている。中空管2の内径は、磁石3の外径に応じて設定される。中空管2の厚みは、パターンのきめの細かさ、磁気遮蔽能力、機械的強度、耐久性等に応じて設定されるが、汎用性、コスト面等を考慮すると、0.1〜5mmが好ましい。中空管2は、銅合金、非磁性ステンレス等の非磁性材料で構成するのが好ましい。全ての中空管2は、それらの先端部が揃えられた状態でフレーム20に支持されている。
【0013】
本実施形態では、磁石3は、棒状の形態を有している。磁石3の外径は移載する磁性粉体の量、粒径、比重等に応じて設定され、自由な磁性体のパターンの作成容易性を考慮すると、0.5〜15mmが好ましく、1.0〜5mmがより好ましい。本実施形態では、磁石3として永久磁石が採用されているが、該永久磁石としては、フェライト系、ネオジウム系、コバルト系希土類等の永久磁石が挙げられる。
【0014】
前述のように、磁石3は磁石移動手段30によって移動するが、本実施形態では、磁石移動手段30は、磁石3に取り付けられた支持棒31と、この支持棒31と連結するフレーム32と、フレーム32を上下動させる上下動機構33とを備えている。上下動機構33は、中空管2を支持するフレーム20に固定されている。上下動機構33には、エアシリンダーユニットや電動シリンダーユニット等の公知の上下動機構が採用される。
【0015】
保持体5は、板状の形態を有しており、全ての中空管2の先端を塞ぐように、中空管2の先端に固定されている。保持体5の厚みは、磁石3の磁力等に応じて設定され、銅合金、非磁性ステンレス等の非磁性材料で構成されるのが好ましい。
【0016】
移動手段6は、前記フレーム20を支持する上下動機構60と、上下動機構60を水平移動させる水平動機構61を備えている。上下動機構60にはシリンダーユニット610が採用されており、そのロッドの先端部にフレーム20が取り付けられている。水平動機構61には水平に架設されたガイドレール600に沿って移動するキャリッジ601が採用されており、このキャリッジ601にシリンダーユニット610のシリンダーが固定されている。
【0017】
本実施形態では、保持体5の表面から離脱した磁性粉体11を被載体側により確実に引き寄せるための磁性粉体引き寄せ手段7(図1参照)が設置されている。磁性粉体引き寄せ手段7は、磁石70と磁石70を上下に移動させる上下動機構71を備え、被載体10の裏面に設けられている。磁石70は永久磁石でもよく、電磁石でもよい。電磁石の場合には上下動機構71は省略することもできる。
【0018】
移載装置1は、制御部(図示せず)を備えており、該制御部は、以下に説明するように移載装置1を制御する。
【0019】
次に、本発明の磁性粉体の移載方法の一実施形態を、前記移載装置1を用いた磁性粉体の移載方法に基づいて説明する。
先ず、図3(a)に示すように、キャリッジ601によって中空管2の束4と保持体5とを磁性粉体のストックエリアに移動させ、上下動機構60によってフレーム20を降下させて保持体5を磁性粉体11の表面に近接させる。そして、上下動機構33によってフレーム32を降下させ、磁石3の先端部を保持体5に近接させて磁性粉体を保持体5の下面に保持させる。予め磁石3を保持体5に近接させた状態で中空管2の束4と保持体5を移動させてもよい。
【0020】
次に、図3(b)に示すように、上下動機構60によってフレーム20を引き上げ、図3(c)に示すように、キャリッジ601によって中空管2の束4と保持体5を被載体10表面の磁性粉体の移載位置まで移動させる。そして、上下動機構60によってフレーム20を降下させて保持体5を被載体10の表面に近接させた後、図3(d)に示すように、上下動機構33によってフレーム32を上昇させ、中空管2の中空部に収容された磁石3の先端部を保持体5から離隔させて磁石3の磁力が磁性粉体11に及ばないようにすると、磁性粉体11は保持体5の表面から離脱して被載体10上に載置される。
【0021】
次に、図3(e)に示すように、上下動機構60によってフレーム20を引き上げるとともに、上下動機構71によって磁石70を降下させ、被載体10表面への磁性粉体11の移載(移動と載置)を完了する。移載装置1は、このような動作を繰り返し行う。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の移載装置1によれば、磁性粉体11を移載パターンに合わせて被載体10の表面に移載することができる。また、移載装置1は、磁石3を収容する中空管2を選択することにより、磁性粉体の移載パターンを自由に変更することができる。
【0023】
図4(a)及び(b)並びに図5は、本発明の移載装置の第2実施形態を示すものである。これらの図において、第1実施形態の移載装置1と共通する部分については同一符号を付している。よって、特に説明のない部分については、第1実施形態の移載装置における説明が適宜適用される。
【0024】
本実施形態の移載装置1’は、ロータリー方式が採用されており、水平軸周りに回転する回転ドラム50の周面部51が保持体5になっている。中空管2の束4が保持体5の内側に所定間隔で4箇所に配設されている。本実施形態では、中空管2は保持体5に固定されており、その先端部は、保持体5の曲面に沿って揃えられている。
【0025】
本実施形態の移載装置1’は磁石3の移動手段30’として、磁石3を保持体5側に付勢する弾性体34と、該弾性体34の弾性力に反して磁石3を保持体5から離隔させるリリース磁石35とを備えている。弾性体34にはコイルばねが採用されている。なお、弾性体34が配された中空管2は、弾性体34の反力を得るために上端が閉じている。リリース磁石35は電磁石で構成され、被載体10表面における磁性粉体の移載位置に対応して回転ドラム50内の下方部に固定されている。
【0026】
図4(b)に示すように、本実施形態の移載装置1’は、中空管2の束4及び保持体5の移動手段6として、回転ドラム50を回転させるモーター62を備えている。
【0027】
移載装置1’は、制御部(図示せず)を備えており、該制御部は、以下に説明するように移載装置1’を制御する。
【0028】
本実施形態の移載装置1’は、付設された磁性粉体の供給手段8と協働して磁性粉体11の移載を行う。この供給手段8は、磁性粉体11を収容した収容箱80と、この収容箱80の上方に配されて水平軸周りに回転する回転ドラム81とを備えている。回転ドラム81は、回転する外筒810と、その内側に固定された内筒811とを備えており、内筒811の周壁部の約6時から2時までの位置には磁石812が配設されており、この区間では、磁石812の磁力によって外側の周りを回る外筒811の外周面に磁性粉体11が保持される。そして、磁石812が配されていない区間(約2時〜6時の間)では、磁性粉体が磁石812の磁力から解放されて、後述のように保持体5側に保持される。収容箱80の下方には、保持体5に保持されずに落下した磁性粉体があった場合に、それを受ける受け皿82が配されている。
【0029】
次に、本発明の磁性粉体の移載方法の他の実施形態を、前記移載装置1’を用いた磁性粉体の移載方法に基づいて説明する。
【0030】
先ず、図4(b)に示すモーター62で回転ドラム50を回転させ、図4(a)に示すように、中空管2の束4と保持体5を供給手段8からの磁性粉体11の受け渡し位置に移動させる。そして、回転ドラム81の外筒811の外周面から離れる磁性粉体11を磁石3の磁力によって保持体5側に引きつけて保持体5の表面に受け渡して保持する。この磁性粉体11の受け渡しは、回転ドラム50を回転させながら行ってもよいし、停止させて行ってもよい。
【0031】
次に、図6(a)に示すように、中空管2の束4と保持体5を被載体10表面の磁性粉体の移載位置まで移動させる。そして、保持体5を被載体10の表面に近接させた後、図6(b)に示すように、リリース磁石35を作動させて(通電させて)磁石3をリリース磁石35の磁力で引き上げて磁石3の磁力が保持体5の表面に保持された磁性粉体11には及ばない状態にすると、磁性粉体11は保持体5の表面から離脱して被載体10の表面に載置される。この際、第1実施形態と同様に、磁性粉体引き寄せ手段7を作動させる
【0032】
次に、図6(c)に示すように、さらに回転ドラム50を回転させるとともに、上下動機構71によって磁石70を降下させ、被載体10表面への磁性粉体11の移載を完了する。移載装置1’は、このような動作を繰り返し行う。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の移載装置1’によれば、前記第1実施形態の載置装置1と同様に、磁性粉体11を移載パターンに合わせて被載体10の表面に移載することができる。磁性粉体の移載パターンは第1実施形態と同様の方法で自由に変更できる。本実施形態の移載装置1’は、連続する帯状のシート等の被載体の表面に磁性粉体を移載するのに好適に使用できる。
【0034】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、保持体を介して磁性粉体を保持する磁石には、永久磁石に替えて電磁石を用いることができる。この場合には、全ての中空管の中空部に電磁石を配しておき、載置パターンに対応した位置に配された電磁石にのみ通電することで、載置パターンに対応した形態で磁性粉体を保持体表面に保持することができる。なお、電磁石を用いた場合には、電磁石の移動手段は省略することができる。
【0035】
また、磁性粉体引き寄せ手段は、磁石に替えて、吸引手段を採用することもできる。
【0036】
本発明の移載する磁性粉体は、磁石により磁化されて保持体に保持できるものであれば、その材質に特に制限はない。磁性粉体としては、鉄粉、表面を樹脂でコートした鉄粉等が挙げられる。また、該磁性粉体と、パルプ、合成繊維等の繊維又は非磁性粉体等との混合物等の移載にも本発明の移載方法及び移載装置を適用することができる。
また、被載体は、磁性粉体を載置できるものであればその材質に、特に制限はない。被載体には、不織布、織布、紙、樹脂シート又はこれらを積層した複合シート等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の磁性粉体の移載装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【図2】中空管の束と磁石の配置関係を示す要部平面図である。
【図3】第1実施形態の移載装置による磁性粉体の移載工程を模式的に示す図であり、(a)は磁性粉体を保持させている状態を示す図、(b)及び(c)は移動状態を示す図、(d)は移載している状態を示す図、(e)は移載が完了した状態を示す図である。
【図4】本発明の磁性粉体の移載装置の第2実施形態を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】第2実施形態の移載装置における磁石移動手段を説明するための要部拡大断面図である。
【図6】第2実施形態の移載装置による磁性粉体の移載工程を模式的に示す図であり、(a)は磁性粉体を保持させている状態を示す図、(b)は移載している状態を示す図、(c)は移載が完了した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1、1’ 磁性粉体の移載装置
2 中空管
3 磁石
30、30’ 磁石移動手段
4 中空管の束
5 磁性粉体の保持体
6 移動手段
7 磁性粉体引き寄せ手段
10 被載体
11 磁性粉体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被載体の表面に磁性粉体を移載する磁性粉体の移載方法であって、
中空管の中空部に収容された磁石と前記磁性粉体との間に介在する磁性粉体の保持体表面に該磁石の磁力によって該磁性粉体を保持した状態で該磁性粉体を前記被載体の所定の位置に移動させ、該磁石の磁力が該磁性粉体に及ばないようにすることにより該磁性粉体を該保持体表面から離脱させ、該磁性粉体を該被載体の表面に載置する磁性粉体の移載方法。
【請求項2】
被載体の表面に磁性粉体を移載する磁性粉体の移載装置であって、
複数本の中空管、該中空管の中空部分に収容された磁石、前記中空管の先端側に配設された磁性粉体の保持体及び前記保持体を前記磁石と共に移動させる移動手段を具備する磁性粉体の移載装置。
【請求項3】
前記磁石を移動させて該磁石を前記保持体へ近接又は該保持体から離隔させるための磁石移動手段を備えている請求項2記載の磁性粉体の移載装置。
【請求項4】
水平軸周りに回転する回転ドラムの周面部が前記保持体を構成し、複数本の前記中空管が前記保持体の内側に配設されている請求項2又は3記載の磁性粉体の移載装置。
【請求項5】
前記被載体の裏面側から前記磁性粉体を引き寄せる磁性粉体引き寄せ手段を備えている請求項2〜4の何れかに記載の磁性粉体の移載装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−69550(P2006−69550A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251511(P2004−251511)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】