説明

磁性粉含有樹脂組成物

【課題】耐溶剤性、耐熱水性、難燃性に優れ、かつ、流動性・成形加工性や、成形体としたときの柔軟性を損なうことなく、高濃度で磁性粉を配合させた樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】磁性粉(A)5重量部と、全モノマーユニット数に占めるプロピレンユニット数の割合が20〜60%であるテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)とを含む樹脂組成物において、(A)と(B)の合計100重量部に対して、(A)を5〜95重量部含む樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粉を含む樹脂組成物に関する。
本発明は、特に、高い電磁波吸収特性、柔軟性、耐溶剤性、耐熱水性、難燃性を有する成形体を形成することのできる磁性粉含有樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁性粉とバインダー樹脂とを含む様々な磁性粉含有樹脂組成物が開発されている。これらの樹脂組成物の用途は、電磁波吸収体、モーター、発電機など日常生活や工業用等の多岐にわたるが、用途によっては耐薬品性や耐熱水性、難燃性等が要求されることがある。また、シートやフィルムとしたときに自在に丸める、折り曲げる等の柔軟性が要求されることもある。
また、最近では、より高い磁気特性、電磁波吸収特性が求められる。
【0003】
より高い磁気特性、電磁波吸収特性を得るためには、樹脂組成物中に多量の磁性粉を含有させる必要がある。従来、磁性粉を高濃度で配合させた樹脂組成物においては、バインダーとしてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(特許文献1)やアクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(特許文献2)、アクリルゴム(特許文献3)等のガラス転移温度(Tg)の低い熱可塑性樹脂が用いられてきた。
しかし、これらの樹脂では耐溶剤性、耐熱水性、耐水性が不十分なため、磁性粉が腐食されやすい。また、難燃性を付与するためには多量の難燃剤を添加する必要があり、その分磁性粉の配合量が制約されるといった問題もあった。
また、樹脂組成物においては、一般に、多量の磁性粉を含有させるとその流動性が低下し成型加工が困難となり、さらに、成形体の柔軟性が低下して割れやすくなるという問題がある。成型加工性を補うために加工助剤を添加すると、今度は、成形体の強度が低下したり、外観不良が現れるという問題が生じる。
そのため、耐溶剤性、耐熱水性、難燃性に優れ、かつ、流動性・成形加工性や、成形体としたときの柔軟性を損なうことなく、高濃度で磁性粉を配合させることが可能な樹脂組成物が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−127707号公報
【特許文献2】特開2006−32929号公報
【特許文献3】特開2006−186371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐溶剤性、耐熱水性、難燃性に優れ、かつ、流動性・成形加工性や、成形体としたときの柔軟性を損なうことなく、高濃度で磁性粉を配合させた樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決するために磁性粉含有樹脂組成物について鋭意検討した結果、バインダー樹脂として全モノマーユニット数に占めるプロピレンユニット数の割合が20〜60%であるテトラフルオロエチレンプロピレン共重合体(B)を用いると、加工助剤等を使用しなくても流動性・成形加工性が低下することなく磁性粉を高濃度で含有することができ、しかも、このような樹脂組成物から得られた成形体は高い柔軟性、耐溶剤性、耐熱水性、難燃性を有することを見出し本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
磁性粉(A)5重量部と、全モノマーユニット数に占めるプロピレンユニット数の割合が20〜60%であるテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)とを含む樹脂組成物において、(A)と(B)の合計100重量部に対して、(A)を5〜95重量部含む樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂組成物の流動性・成形加工性や、これを成形体としたときの柔軟性を損なうことなく、磁性粉を高濃度で配合させることができるので、磁気特性・電磁波吸収性の高い材料を提供することができる。
さらに、本発明によれば、耐溶剤性、耐熱水性、難燃性、及び柔軟性を兼ね備えた磁気材料・電磁波吸収性材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明について、以下、具体的に説明する。
本発明は、磁性粉(A)と全モノマーユニット数に占めるプロピレンユニット数の割合が20〜60%であるテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)を含有する樹脂組成物である。
【0010】
本発明に用いられる磁性粉(A)とは、磁性を帯びることが可能な物質を粉末状に加工したものをいい、公知のものを用いることができる。
磁性粉は、一般に金属元素を含有し、その具体的としては、Be、B、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn,Ga、Ge、Sr、Nb、Mo、Pd、Ag,Cd、Sn、Sb、Ba、W、Ir、Pt、Au、Pb、Ce、Nd、Sm等が挙げられる。
本発明においては、磁性粉(A)としてこれらの金属の単体、これらの金属からなる合金、これらの金属の酸化物、窒化物等が好ましく用いられる。
これらの中でも、磁気エネルギーの強さの観点からSmまたはNdを含有することが好ましい。
【0011】
金属単体としては、例えば、Fe、Ni、Co等が好ましく用いられる。また、合金としては、例えば、Fe−Ni,Fe−Co、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Cr−Si、Fe−Cr−Al、Fe−Al−Si、Fe−Pt等を用いることができる。
これらは1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0012】
酸化物としてはフェライトが好ましい。具体的には、例えば、MnFe24、CoFe24、NiFe24、CuFe24、ZnFe24、MgFe24、Fe34、MnFe24、Cu−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Zn−フェライト、BaMxFe(12-X)19、Ba32Fe2441、Ba22Fe1222、等を用いることができる。ここでMは、Be、B、Mg、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn,Ga、Ge、Sr、Nb、Mo、Pd、Ag,Cd、Sn、Sb、Ba、W、Ir、Pt、Au、Pb、Ce、Nd、Smから選択される金属元素である。
【0013】
窒化物としては、例えば、Fe2N、Fe3N、Fe4N、Fe162、Sm2Fe173、Sm17Co17、Nd2Fe14B等が好ましく用いられる。
本発明で用いる磁性粉(A)は、単独でも、複数種を混合して用いてもよい。
【0014】
本発明で用いられる磁性粉(A)の形態は、粉末であれば特に限定されないが、球状、楕円体、円盤、針状、棒状、扁平状、テトラポット、多孔質、ポーラス状の粒子等が挙げられ、これらの群から単独あるいは複数種選択することができる。また、これらの形態を持つ粒子が複数個凝集して二次粒子を形成していてもよい。
【0015】
磁性粉(A)の形態が針状、棒状の場合、そのアスペクト比は2〜100であることが好ましく、より好ましくは5〜70、さらに好ましくは10〜50である。
磁性粉(A)の形態が円盤、扁平状の場合、その厚みと長さ方向の比で定義されるアスペクト比は2〜100であることが好ましく、より好ましくは5〜70、さらに好ましくは10〜50である。
磁性粉(A)の形態に異方性を付与することにより、磁性粉(A)を含有する樹脂組成物の電波吸収特性や熱伝導性、導電性などの特性が向上する場合があり、このような観点からアスペクト比は2以上であることが好ましい。また、共重合体(B)との混合のしやすさの観点から、磁性粉(A)のアスペクト比は100以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の磁性粉(A)の平均粒径は、0.1μm〜1mmであることが好ましく、より好ましくは1μm〜500μm、さらに好ましくは1〜100μm、特に好ましくは1〜10μmである。粒径が0.1μm以上であると、バインダー樹脂中に均一に分散させることが容易であるため好ましい。また、粒径が1mm以下であると、樹脂組成物をフィルムやシート等の成形体とした場合にその表面平滑性が向上するため好ましい。
【0017】
本発明の磁性粉(A)は、平均粒径が大きな群と平均粒径が小さな群とを混合して使うこともできる。このようにすることにより、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)中の磁性粉(A)の配合率をより一層高くすることができる。その場合の粒径比は、大粒子の平均粒径をRa、小粒子の平均粒径をRbとすると、Ra/Rbの範囲が2〜100であることが好ましく、より好ましくは5〜80、さらに好ましくは8〜60である。Ra/Rbの比が2以上であると(A)の配合率を高める効果は高く、100以下であると組成物がより均一になる。
【0018】
本発明の磁性粉(A)は、共重合体(B)と混合する前に不燃性、磁気特性、樹脂との密着性等の諸特性を付与するためにその表面に、シラン化合物によるカップリング処理、有機化合物や無機化合物によるコーティング処理、フェライトメッキ処理等の前処理を施すこともできる。
【0019】
本発明に用いられるテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)とは、テトラフルオロエチレンとプロピレンを共重合させたものをいい、難燃性を有する共重合体である。
【0020】
本発明に用いられるテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)中のプロピレンユニット数は、全モノマーユニット数、すなわち、テトラフルオロエチレンユニット数とプロピレンユニット数の合計、に対して20〜60%であり、好ましくは30〜50%、特に好ましくは35〜45%である。プロピレンユニット数の割合が20%以上であると磁性粉(A)とテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)の親和性が向上し、(A)は均一に微分散しやすくなるので成形体の柔軟性が向上する。一方、プロピレンユニット数の割合が60%以下だとテトラフルオロエチレンユニット数の割合が40%以上となるため、耐溶剤性、難燃性を付与する役割を持つフッ素原子のモル数が高くなり、複合材の耐溶剤性、難燃性も向上する。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、磁性粉(A)とテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)を含むことが必要である。
本発明の樹脂組成物における磁性粉(A)の配合量は、(A)と(B)の合計100重量部に対して、5〜95重量部であり、より好ましくは10〜95重量部、さらに好ましくは、50〜95重量部、とりわけ好ましくは70〜95重量部である。
磁性粉(A)の配合量が5重量部以上であると、樹脂組成物において磁性粉(A)が本来有する磁気特性が発揮される。
また、磁性粉(A)の配合量が95重量%以下であると、樹脂組成物の耐熱性、耐溶剤性、成形体としたときの柔軟性が向上する。
本発明においては、磁性粉(A)を、(A)と(B)の合計100重量部に対して70重量部以上という高濃度で配合しても成形体の柔軟性を全く損ねることがない。そのため、本発明の樹脂組成物を用いれば、高周波領域でも良好な電波吸収特性有するシート状電波吸収体等を製造することもできる。
【0022】
本発明の樹脂複合体には、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)の他に、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を配合することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニルの群から選択される1種または2種以上のモノマーの重合体または共重合体あるいはポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート等を挙げることができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネートエステル、ポリイミド、ポリウレタン、ビスマレイミド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ベンゾシクロブテン等を挙げることができる。
上記熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、官能基を有する化合物で変成されたものでもよい。官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水基、エステル基、水酸基、アミノ基、アミド基、イミド基、エポキシ基等が挙げられ、これらから選ばれる1つ、または2つ以上を含むこともできる。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、目的に応じて樹脂や磁性粉(A)以外の添加剤を加えることもできる。具体的には、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、加工助剤等を挙げられる。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、磁性粉(A)とテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)を溶融状態、溶液状態または固形状態で混合して製造することができるが、中でも溶融状態での混合により製造することが好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、トランスファー成形、インフレーション成形、Tダイ成形、カレンダー成形、プレス成形、ラバープレス成形、圧延等の加工法により所望の製品形態に成形することができる。これらの成形加工は必要に応じ、磁場や電場存在下で行うことや超音波や電磁波、紫外線を照射しながら行うこともできる。
【0026】
本発明の樹脂組成物においては、機械的特性や耐溶剤性を向上させることを目的として、これに含まれる樹脂成分を架橋させることもできる。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、成形体、フィルム、シート等の形態として用いることができるが、特に、樹脂成分の柔軟性の特徴を生かしたフィルム、シートとして用いることが好ましい。
【0028】
本発明において、フィルムとは厚さが300μm以下のものをいい、シートとは厚さが300μm以上のものをいう。
本発明の樹脂組成物をフィルム、シートとする場合、その厚みは10μm〜1cmであることが好ましく、より好ましくは100μm〜500μmである。10μm以上であるとフィルム強度が高く取扱性が良く、1cm以下では加工性がよい。
【実施例】
【0029】
(1)複合体シートの評価方法
1)柔軟性試験:10cm四方の樹脂組成物成形体シートを図1のように手で折り曲げ、10秒後に手を離して放置した後のシートの状態を観察する。折り目などもつかず折り曲げる前の元の状態に復元されれば合格(○)、元の状態に復元しなければ不合格(×)である。
2)耐溶剤試験:1cm四方の樹脂組成物成形体シートをトルエン、クロロホルム、および10%アンモニア水に室温で24時間浸漬する。シートから溶剤中に磁性粉が分離した場合は×、分離しない場合は○とする。
3)耐熱水性試験(PCT試験):1cm四方の樹脂組成物成形体シートを1.2気圧の飽和水蒸気下に2時間置いた後のシートを折り曲げる。その結果、元のシート状態に復元した場合は合格(○)、シートが破ける、崩れるなどの破損を起こした場合は不合格(×)である。
4)難燃性試験:樹脂組成物成形体シートの一部を切り出し、ガスバーナーの炎に直接、10秒間接触させ、炎から離して、5秒以上燃焼した場合は×、5秒以上燃えなかった(すぐ消えた)場合は○とする。
(2)用いた材料
実施例1〜4、比較例1〜5で磁性粉(A−1)〜(A−2)を表1に示す。
【0030】
[実施例1]
テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B−1、プロピレンユニット数の割合38%)30gを東洋精機社製のラボプラストミル/ミキサータイプ R30に投入し、樹脂温度150℃、ミキサー回転数50rpmで加熱しながら1分間練った。
その後、同条件で練りつづけながらMn−Znフェライトである磁性粉(A−1)85gを少しずつ、10分間かけて添加し続けた。(A−1)添加終了時における、(A−1)の配合量は(A−1)と(B−1)の合計100重量部に対し74重量部であった。
(A−1)添加終了後、そのまま10分間加熱混練を続けることにより、樹脂組成物115gを得た。
得られた樹脂組成物を厚み0.15mmの鋼板に10cm角の正方形の孔をくり貫いた成形用金型に入れ、熱板温度220℃、プレス圧10MPaの条件で5分間圧縮成形を実施し、厚み0.15mmのシートを得た。
このシートは柔軟性があり、折り曲げても折り目がつくことなく、元のシート形状に復元した。シートの評価結果を表2に示す。
【0031】
[実施例2]
(B−1)を18g用い、磁性粉として(A−1)を96gを用い、厚み0.5mmの成形用金型を用いた他は、実施例1と同じ操作を行い、厚み0.5mmのシートを得た。(A−1)の配合量は(A−1)と(B−1)の合計100重量部に対し84重量部であった。。シートの評価結果を表2に示す。
【0032】
[実施例3]
(B−1)を9g用い、磁性粉としてNi−Znフェライト(A−2)を用い、厚み2.0mmの成形用金型を用いた他は、実施例1と同じ操作を行い、厚み2.0mmのシートを得た。(A−2)の配合量は、(A−2)と(B−1)の合計100重量部に対し90重量部であった。シートの評価結果を表2に示す。
【0033】
[実施例4]
テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体として(B−1)の替わりにプロピレンユニット数の割合が53%のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B−2)を用いた他は、実施例1と同じ操作を行い、厚み0.15mmのシートを得た。評価結果を表2に示す。
【0034】
[比較例1]
バインダー樹脂として(B−1)の替わりにプロピレンユニット数の割合が64%のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B−4)を用いた他は、実施例1と同様の操作を行い、厚み0.15mmのシートを得た。シートの評価結果を表1に示す。
[比較例2]
バインダー樹脂として(B−1)の替わりにプロピレンユニット数の割合が15%のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B−3)を用い、厚み0.5mmの成形用金型を用いた他は、実施例1と同じ操作を試み、シートを得た。圧縮成形時の複合体の流動性が極めて悪く、シート厚みは1.0mm以上となった。シートの評価結果を表1に示す。
[比較例3]
バインダー樹脂として(B−1)の替わりに市販のポリエチレンを用いた他は、実施例1と同様の操作を行い、厚み0.15mmのシートを得た。シートの評価結果を表1に示す。
【0035】
[比較例4]
バインダー樹脂として(B−1)の替わりに市販のアクリルゴムを用いた他は、実施例1と同様の操作を行い、厚み0.15mmのシートを得た。シートの評価結果を表1に示す。
[比較例5]
バインダー樹脂として(B−1)の替わりにフッ化ビニリデン樹脂を用いた他は、実施例1と同様に行い、シートを得た。このシートは脆く、柔軟性に乏しかった。シートの評価結果を表1に示す。
【0036】
実施例1〜4で得られた本発明の樹脂組成物から得られたシートは、いずれも、高い柔軟性を有し、かつ、耐溶剤性、耐熱水性、難燃性を兼ね備えていた。
これに対し、バインダー樹脂として、ポリエチレン、アクリルゴムを用いた比較例3、4のシートは、柔軟性は有するものの、耐溶剤性、耐熱水性、難燃性に劣り、実用には向いていなかった。また、バインダー樹脂として、他のフッ素ゴムであるフッ化ビニリデン樹脂を用いた比較例5のシートは、柔軟性に欠け、耐溶剤性についても満足できるものではなかった。
さらに、バインダー樹脂として、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体であってもプロピレンユニット数の割合が本発明の範囲外である比較例1、2のシートは、耐溶剤性、耐熱水性、難燃性に劣るか(比較例1)、あるいは、柔軟性が十分ではなかった(比較例2)。
これらの結果より、磁性粉含有樹脂組成物において、バインダー樹脂としてプロピレンユニット数が全モノマーユニット数に対して20〜60%のテトラフルオロ−プロピレン共重合体を用いることにより、磁性粉の高濃度の配合と成形体の耐溶剤性、耐熱水性、難燃性及び柔軟性が両立できることが確認できた。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の樹脂組成物からなるフイルム等の成形体は、例えば、電子機器配線板等の不要電磁波吸収体、情報通信機器等の誤作動防止のための電磁波吸収体、ETCやITS等の道路交通システム等の電波吸収体、スピーカー、ヘッドホーン、マイクロホーン、リニアモーター、工業用各種モーター、発電機、健康器具等に用いることができる。
特に、高い電波吸収特性が求められるETCやITS等の道路交通システム用の電波吸収体等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明で評価した柔軟性試験の方法を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉(A)と、全モノマーユニット数に占めるプロピレンユニット数の割合が20〜60%であるテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(B)とを含む樹脂組成物において、(A)と(B)の合計100重量部に対して、(A)を5〜95重量部含む樹脂組成物。
【請求項2】
(A)と(B)の合計100重量部に対して、(A)を50〜95重量部含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)の全モノマーユニット数に占めるプロピレンユニット数の割合が30〜50%である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)が、フェライトを含有する化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなるシートまたはフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−133381(P2008−133381A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321145(P2006−321145)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】