説明

磁性粒子分離装置および分離方法

【課題】 規定量の磁性粒子を共雑物を排除しながら流体中から分離することができる磁性粒子の分離装置を提供する。
【解決手段】 流体中の磁性粒子を規定量分離する装置であって、前記磁性粒子を含有する流体を供給するための第一の流路101と、分離された磁性粒子を搬出するための第二の流路103と、前記第一の流路と第二の流路とが交差した交差部とを少なくとも有する流体搬送部と、前記流体搬送部の交差部に磁界を印加した時に、前記第一の流路から前記交差部に供給される規定量の前記流体中の磁性粒子を捕捉する捕捉手段105と、前記捕捉手段により捕捉された磁性粒子を、前記交差部の磁界の印加を解除して第二の流路に導入した媒体により搬出する搬出手段とを有する磁性粒子分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子の分離装置およびそれを用いた分離方法、さらに磁性粒子を用いた流体中の特定物質の捕集および分離装置に関連する。特に、特定物質でも、生体由来の検体に含まれる、タンパク、糖、脂質、核酸等の生体分子または細胞等の捕捉および分離に関連する。さらには、前述した捕捉分離機能を用いて、特定物質量を定量する検出装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
粒子を用いて、検体中の特定物質を分離する手法は既知であり数多くの手法がある。本発明が対象とする、磁性粒子を用いた分離手法においても、ダイナルバイオテック社により市販されている、ダイナビーズに代表されるような表面修飾した磁性粒子が細胞分離用等のアプリケーション向けに用意されている。また、前記粒子を用いた細胞分離を自動化する装置としては、特許文献1に記載されているような微小流路チャネルを用いたフローサイトメトリーの手法によるものが提案されている。
【0003】
粒子を用いない、流体の定量的な分離方法としては、特許文献2に記載されているような流路交差を用いて、交差する流路それぞれの流れをON/OFFさせることにより交差部の体積の流体を切り出す手法が開示されている。
【特許文献1】特表2002−503334
【特許文献2】特表2001−523341
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の背景技術で述べたように磁性粒子を用いた分離手法はすでに提案されており、それを用いた、粒子毎の分離装置も自動化されている。ただし、検体中に含まれる特定物質を、検体中の別の共雑物質の混入を排除して分離抽出するためには、洗浄工程を追加する必要がある。また、流体中に分散した粒子から規定量の粒子を分離する効率的な方法は提案されていない。
【0005】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、前述の洗浄を行うことなく共雑物を極力排除し、規定量の磁性粒子を流体中から分離することができる磁性粒子の分離装置およびそれを用いた分離方法を提供するものである。
また、本発明は、前記磁性粒子に特異的に結合した標的物質を検出する標的物質検出装置およびそれを用いた検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに交差した、磁性粒子を含有した流体を供給する第一の流路と、分離した磁性粒子を搬出するための第二の流路を構成する。この2つの交差した流路の交差部に、磁界を印加し、第一の流路に磁性粒子を含有した流体を規定量供給する。続いて、交点の磁界を解除した状態で、磁性粒子を搬出するための流体を第二の流路に流すことによって、磁性粒子を搬出する構成からなる。
【0007】
即ち、本発明の第1の発明は、流体中の磁性粒子を規定量分離する装置であって、前記磁性粒子を含有する流体を供給するための第一の流路と、分離された磁性粒子を搬出するための第二の流路と、前記第一の流路と第二の流路とが交差した交差部とを少なくとも有する流体搬送部と、前記流体搬送部の交差部に磁界を印加した時に、前記第一の流路から前記交差部に供給される規定量の前記流体中の磁性粒子を捕捉する捕捉手段と、前記捕捉手段により捕捉された磁性粒子を、前記交差部の磁界の印加を解除して第二の流路に導入した媒体により搬出する搬出手段とを有することを特徴とする磁性粒子分離装置である。
【0008】
本発明の第2の発明は、流体中の標的物質を検出する装置であって、標的物質と特異的に結合する機能を有する磁性粒子に流体中の標的物質を結合させる手段と、前記標的物質と結合した磁性粒子を含有する流体を供給するための第一の流路と、分離された前記標的物質と結合した磁性粒子を搬出するための第二の流路と、前記第一の流路と第二の流路とが交差した交差部とを少なくとも有する流体搬送部と、前記流路の交差部に磁界を印加した時に、前記第一の流路から前記交差部に供給される規定量の前記流体中の標的物質と結合した磁性粒子を捕捉するための捕捉手段と、前記捕捉手段により捕捉された標的物質と結合した磁性粒子を、前記交差部の磁界の印加を解除して第二の流路に導入した媒体により搬出する搬出手段と、前記搬出手段により搬出された磁性粒子に結合した標的物質量を検出する検出手段とを有することを特徴とする標的物質検出装置である。
【0009】
前記規定量は前記検出領域の感度領域にあわせて制御されることを特徴とする。
前記検出手段から前記第一の流路に流体を再循環させる手段を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の発明は、流体中の磁性粒子を規定量分離する方法であって、前記磁性粒子を含有する流体を供給するための第一の流路と、分離された磁性粒子を搬出するための第二の流路とが交差した流路の交差部に磁界を印加し、前記交差部に第一の流路から磁性粒子を含有する流体を供給し、規定量の前記流体中の磁性粒子を捕捉する工程と、前記捕捉された磁性粒子を、前記交差部の磁界の印加を解除して第二の流路から導入された媒体により搬出する工程とを有することを特徴とする磁性粒子分離方法である。
【0011】
本発明の第4の発明は、流体中の標的物質を検出する方法であって、標的物質と特異的に結合する機能を有する磁性粒子に流体中の標的物質を結合させる工程と、前記標的物質と結合した磁性粒子を含有する流体を供給するための第一の流路と、分離された前記標的物質と結合した磁性粒子を搬出するための第二の流路とが交差した交差部に磁界を印加し、前記交差部に第一の流路から標的物質と結合した磁性粒子を含有する流体を供給し、規定量の前記流体中の標的物質と結合した磁性粒子を捕捉する工程と、前記捕捉された標的物質と結合した磁性粒子を、前記交差部の磁界の印加を解除して第二の流路から導入された媒体により搬出する工程と、前記搬出された磁性粒子に結合した標的物質量を検出する工程とを有することを特徴とする標的物質検出方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の効果としては、流路の交差部に第一の流路から供給される磁性粒子を捕捉し、第二の流路に磁性粒子を搬出するため、第一の流路から第二の流路にキャリーオーバーする媒質量が流路交差部の体積分にとどめることができる。さらに交差部に磁性粒子を捕捉した後に第二の流路に搬出するため、捕捉する対象磁性粒子に対して、第一の流路からキャリーオーバーする媒質の比は、粒子量に対して小さくすることができる。すなわち、捕捉対象粒子量に対して、キャリーオーバーする共雑物量を大幅に少なくすることができる。
【0013】
本発明の第2の効果としては、第一の流路に流す流体量を変えることによって、交点部に捕捉される磁性粒子量を制御することができるため、任意の磁性粒子量を第二の流路に搬出することができる。この利点は、流体中の未知の物質量を測るようなセンサと組み合わせた場合、センサの持っている検出範囲内に入るように任意濃度の粒子をセンサ部位に供給することができることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明を実施するにあたり最良の構成を以下に示す。
互いに交差した、磁性粒子を含有した流体を供給する第一の流路と、分離した磁性粒子を搬出するための第二の流路による流体搬送部を持ち。前記、流路の交差部に磁性粒子を捕捉するための磁界を印加する部位を持つ。さらに流路の交差部に磁界を印加時に決まった量の磁性粒子を含んだ流体を交差部に供給されるように第一の流路での流体の供給を制御する機能を持つ。さらに、前記機能によって、規定量の磁性粒子が交差部に捕捉された後に交差部に印加した磁界を解除し、磁性粒子を排出するための流体を第二の流路の流路に供給し、交点部に捕捉した磁性粒子を排出する機能を持つ。以上が本発明の基本構成要素である。
【0015】
以下に本発明の最良の形態の各々の構成要素について示す。
<流体搬送部>
図1を用いて流体搬送部について説明する。図1は、本発明の磁性粒子分離装置または標的物質検出装置を構成する流体搬送部を示す概念図である。101は磁性粒子を含有した流体を供給する第一の流路である。102は磁性粒子を含有した流体の流れである。103は分離後の磁性粒子を搬出するための第二の流路である。104は分離後の磁性粒子を搬出するための流体の流れである。105は磁性粒子を102の流れから、磁性粒子を分離する磁場を印加する捕捉部である。
【0016】
ただし、本液体搬送部に磁場発生のための機能を含む必要は必ずしもない。また、この液体搬送部の構成であるが、平板上に溝を形成したチップ状の構成でも良いし、管状の部材を接合して形成しても構わない。流路の壁面を構成する材料には特に制約はなく、流路に掛かる圧力や、ハンドリング時にかかる応力等に対応した力学的な強度を有していれば構わない。流路の幅、流速については、流路中での磁性粒子含有流体のレイノルズ数が50以下で、層流を形成するような流路幅、流速を用いることが望ましい。レイノルズ数の他のパラメータとしては、流体の密度と粘性が関連するため、用いる磁性粒子含有流体の粘性に合わせたものにすることが望ましい。レイノルズ数のより望ましい値は、流路抵抗等も考慮し、0.05〜25の範囲である。ここで、流速を決定するための送液手段は図示していないが、一定の流速での送液および、定量の送液に適したシリンジポンプが望ましいが、一定の流速制御が容易で定量送液の制御が容易であれば、どのようなポンプを用いても構わない。
【0017】
<磁界印加手段>
図2を用いて磁界印加手段について説明する。図2は、図1の第一の流路101に沿って断面を取り外部からの磁界印加の方法を示した断面図である。101は磁性粒子を含有する流体を供給する第一の流路である。105が磁界を印加することによって、流体中の磁性粒子を捕捉する捕捉部である。201は流体搬送部の力学的な骨格をなし、流路を保持する基板である。この基板の素材は、前述した流路壁面素材と同様の性質を持てば構わない。202は105の磁気的に磁性粒子を捕捉する捕捉部に磁場を集中させるための高透磁率部材である。材料の性質としては、外部磁場を掛けた際の透磁率および飽和磁束密度が高く、かつ、外部磁場を解除した際に残留磁化がほぼ0となるような、保持力の小さいフェライトのような軟磁性材料を用いることが望ましい。
【0018】
203は高透磁率部材202の材料に対して透磁率の小さな材料からなる非高透磁率部材を用いることが望ましい。204は、第一の流路101に流れる流体から、高透磁率部材202、非高透磁率部材203を腐食から守るための保護膜である。この保護膜の素材についても使用流体での耐腐食性があれば、特に制約はない。205は、105の捕捉部に202の高透磁率の部材を介して磁場を印加するための電磁石である。ここで、磁界印加のON/OFFをコイルへの電流の入力をON/OFFすることによって実現可能な電磁石を示したが、永久磁石を本流体搬送部の流路交点に近接させる又は離すことによって、磁界印加をON/OFFする構成でも構わない。さらには、永久磁石による磁気回路を高透磁率材料でバイパスさせることによって105部への磁界印加を弱めるような構成でも構わない。図2に示したように、201、202、203、204、205の部材が101の第一の流路を挟んで相対している形態をとっているが、これは、上部下部双方の電磁石205のコイルによる磁界が、上部下部双方の202の高透磁率材料を介して磁気回路を形成することにより、105の捕捉部に高密度な磁場を形成する。
【0019】
<磁性粒子>
本発明に用いる磁性粒子について図3を用いて説明する。図3(a)〜(d)は本発明で使用可能な磁性粒子の例を示している。共通して必要となる性質としては、粒子として、超常磁性の性質を持つことが望ましい。図3(a)〜(d)に共通して、それぞれの部位は、301は磁性体材料、302は非磁性体材料、303は標的物質捕捉体である。
【0020】
まず、図3(a)は、非磁性材料中に磁性体材料による微粒子が分散していることによって磁性体を形成している。301の磁性材料は、1つ1つが超常磁性を示すことが望ましい。302の非磁性材料は、特に制約はない。303の標的物質捕捉体については、後述する。
【0021】
図3(b)では、302の非磁性材料によって、粒子の芯を構成している。この非磁性材料についてもとくに制約はない。この芯の周囲に301の磁性体材料による粒子が配置されている。図3(a)と同様に301は超常磁性を示すことが望ましい。
【0022】
図3(c)は301の磁性材料による粒子に直接、捕捉体303が固定されている。301の磁性材料は同様に超常磁性を示すことが望ましい。図3(d)は301の磁性体による粒子表面を302の非磁性体によって被覆し、この被覆部上に303の捕捉体を固定した形態をとっている。同様に、301の磁性体による粒子は超常磁性を示すことが望ましい。磁性粒子の粒径については、特に制約はないが、流体中での分散性から、40μm以下であることが望ましい。
【0023】
<標的物質捕捉体>
図3(a)〜(d)のそれぞれに示した303の標的物質捕捉体について説明する。
まず、標的物質捕捉体は、標的物質と特異的な結合対を形成するものであれば、特に制約はない。具体的には、検体中に含まれる標的物質は、非生体物質と生体物質に大別される。非生体物質として産業上利用価値の大きいものとしては、環境汚染物質としての塩素置換数/位置の異なるPCB類、同じく塩素置換数/位置の異なるダイオキシン類、いわゆる環境ホルモンと呼ばれる内分泌撹乱物質(例:ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、アミトロール、アトラジン、アラクロール、ヘキサクロロシクロヘキサン、エチルパラチオン、クロルデン、オキシクロルデン、ノナクロル、1,2−ジブロモ−3−クロロプロパン、DDT、ケルセン、アルドリン、エンドリン、ディルドリン、エンドスルファン(ベンゾエピン)、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキサイド、マラチオン、メソミル、メトキシクロル、マイレックス、ニトロフェン、トキサフェン、トリフルラリン、アルキルフェノール(炭素数5〜9)、ノニルフェノール、オクチノニルフェノール、4−オクチルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチル、ベンゾ(a)ピレン、2,4ージクロロフェノール、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ベンゾフェノン、4−ニトロトルエン、オクタクロロスチレン、アルディカーブ、ベノミル、キーポン(クロルデコン)、マンゼブ(マンコゼブ)、マンネブ、メチラム、メトリブジン、シペルメトリン、エスフェンバレレート、フェンバレレート、ペルメトリン、ビンクロゾリン、ジネブ、ジラム、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジプロピル)等が挙げられる。
【0024】
生体物質としては、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質及びそれらの複合体から選択される生体物質が含まれ、更に詳しくは、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質から選択される生体分子を含んでなるものであり、具体的には、DNA、RNA、アプタマー、遺伝子、染色体、細胞膜、ウイルス、抗原、抗体、レクチン、ハプテン、ホルモン、レセプタ、酵素、ペプチド、スフィンゴ糖、スフィンゴ脂質の何れかから選択された物質を含むものであれば、如何なる物質にも本発明を適用することができる。更には、前記の「生体物質」を産生する細菌や細胞そのものも、本発明が対象とする「生体物質」として標的物質となり得る。
【0025】
具体的なタンパク質としては、いわゆる疾病マーカーが挙げられる。
例としては、胎児期に肝細胞で産生され胎児血中に存在する酸性糖蛋白であり、肝細胞癌(原発性肝癌)、肝芽腫、転移性肝癌、ヨークサック腫瘍のマーカーとなるα−フェトプロテイン(AFP)、肝実質障害時に出現する異常プロトロンビンであり、肝細胞癌で特異的に出現することが確認されるPIVKA−II、免疫組織化学的に乳癌特異抗原である糖蛋白で、原発性進行乳癌、再発・転移乳癌のマーカーとなるBCA225、ヒト胎児の血清、腸および脳組織抽出液に発見された塩基性胎児蛋白であり、卵巣癌、睾丸腫瘍、前立腺癌、膵癌、胆道癌、肝細胞癌、腎臓癌、肺癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌のマーカーである塩基性フェトプロテイン(BFP)、進行乳癌、再発乳癌、原発性乳癌、卵巣癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA15−3、膵癌、胆道癌、胃癌、肝癌、大腸癌、卵巣癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA19−9、卵巣癌、乳癌、結腸・直腸癌、胃癌、膵癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA72−4、卵巣癌(特に漿液性嚢胞腺癌)、子宮体部腺癌、卵管癌、子宮頸部腺癌、膵癌、肺癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA125、上皮性卵巣癌、卵管癌、肺癌、肝細胞癌、膵癌マーカーとなる糖蛋白であるCA130、卵巣癌(特に漿液性嚢胞腺癌)、子宮体部腺癌、子宮頸部腺癌のマーカーとなるコア蛋白抗原であるCA602、卵巣癌(特に粘液性嚢胞腺癌)、子宮頸部腺癌、子宮体部腺癌のマーカーとなる母核糖鎖関連抗原であるCA54/61(CA546)、大腸癌、胃癌、直腸癌、胆道癌、膵癌、肺癌、乳癌、子宮癌、尿路系癌等の腫瘍関連のマーカー抗原として現在、癌診断の補助に最も広く利用されている癌胎児性抗原(CEA)、膵癌、胆道癌、肝細胞癌、胃癌、卵巣癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるDUPAN−2、膵臓に存在し、結合組織の弾性線維エラスチン(動脈壁や腱などを構成する)を特異的に加水分解する膵外分泌蛋白分解酵素であり、膵癌、膵嚢癌、胆道癌のマーカーとなるエラスターゼ1、ヒト癌患者の腹水や血清中に高濃度に存在する糖蛋白であり、肺癌、白血病、食道癌、膵癌、卵巣癌、腎癌、胆管癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌、甲状腺癌、悪性リンパ腫のマーカーとなる免疫抑制酸性蛋白(IAP)、膵癌、胆道癌、乳癌、大腸癌、肝細胞癌、肺腺癌、胃癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるNCC−ST−439、前立腺癌のマーカーとなる糖蛋白質であるγ−セミノプロテイン(γ−Sm)、ヒト前立腺組織から抽出された糖蛋白であり、前立腺組織のみに存在し、それゆえ前立腺癌のマーカーとなる前立腺特異抗原(PSA)、前立腺から分泌される酸性pH下でリン酸エステルを水解する酵素であり、前立腺癌の腫瘍マーカーとして用いられる前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)、神経組織及び神経内分泌細胞に特異的に存在する解糖系酵素であり、肺癌(特に肺小細胞癌)、神経芽細胞腫、神経系腫瘍、膵小島癌、食道小細胞癌、胃癌、腎臓癌、乳癌のマーカーとなる神経特異エノラーゼ(NSE)、子宮頸部扁平上皮癌の肝転移巣から抽出・精製された蛋白質であり、子宮癌(頸部扁平上皮癌)、肺癌、食道癌、頭頸部癌、皮膚癌のマーカーとなる扁平上皮癌関連抗原(SCC抗原)、肺腺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、膵癌、卵巣癌、子宮癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるシアリルLeX−i抗原(SLX)、膵癌、胆道癌、肝癌、胃癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるSPan−1、食道癌、胃癌、直腸・結腸癌、乳癌、肝細胞癌、胆道癌、膵癌、肺癌、子宮癌のマーカーであり、特に他の腫瘍マーカーと組み合わせて進行癌を推測し、再発予知・治療経過観察として有用である単鎖ポリペプチドである組織ポリペプタイド抗原(TPA)、卵巣癌、転移性卵巣癌、胃癌、大腸癌、胆道系癌、膵癌、肺癌のマーカーとなる母核糖鎖抗原であるシアリルTn抗原(STN)、肺の非小細胞癌、特に肺の扁平上皮癌の検出に有効な腫瘍マーカーであるシフラ(cytokeratin;CYFRA)、胃液中に分泌される蛋白消化酵素であるペプシンの2種(PG I・PG II)の不活性型前駆体であり、胃潰瘍(特に低位胃潰瘍)、十二指腸潰瘍(特に再発、難治例)、ブルンネル腺腫、ゾーリンガーエリソン症候群、急性胃炎のマーカーとなるペプシノゲン(PG)、組織障害や感染により、血漿中で変化する急性相反応蛋白であり、急性心筋梗塞等により心筋に壊死が起こると、高値を示すC−反応性蛋白(CRP)、組織障害や感染により、血漿中で変化する急性相反応蛋白である血清アミロイドA蛋白(SAA)、主に心筋や骨格筋に存在する分子量約17500のヘム蛋白であり、急性心筋梗塞、筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎のマーカーとなるミオグロビン、心不全の病態把握に有用である、32のアミノ酸からなる心室由来の脳性利尿性ペプチドであるBNP、同様に、心房由来の利尿性ペプチドであるANP、骨格筋,心筋の可溶性分画を中心に存在し、細胞の損傷によって血液中に遊出する酵素であって、急性心筋梗塞、甲状腺機能低下症、進行性筋ジストロフィー症、多発性筋炎のマーカーとなるクレアチンキナーゼ(CK)(骨格筋由来のCK−MM型,脳,平滑筋由来のCK−BB型,心筋由来のCK−MB型の3種のアイソザイム及びミトコンドリア・アイソザイムや免疫グロブリンとの結合型CK(マクロCK))、横紋筋の薄いフィラメント上でトロポニンI,Cとともにトロポニン複合体を形成し,筋収縮の調節に関与している分子量39,000の蛋白であり、横紋筋融解症、心筋炎、心筋梗塞、腎不全のマーカーとなるトロポニンT、骨格筋・心筋いずれの細胞にも含まれる蛋白であり,測定結果の上昇は骨格筋,心筋の障害や壊死を意味するため、急性心筋梗塞症、筋ジストロフィー、腎不全のマーカーとなる心室筋ミオシン軽鎖I、また、近年ストレスマーカーとして注目されてきているクロモグラニンA、チオレドキシン、8−OHdG、コルチゾール等も含まれる。
【0026】
本発明における捕捉体の一種である「抗体」とは、自然界の生物体内で産生される、あるいは遺伝子組み替え技術やタンパク工学技術、更には有機反応等により全体的または部分的に合成された免疫グロブリンを意味する。特異的結合能を保持するその全ての誘導体もまた、本発明における「抗体」に含まれる。この用語はまた、免疫グロブリンの結合ドメインに相同か、または高度に相同な結合ドメインを有する任意のタンパク質を含む(キメラ抗体およびヒト化抗体を含む)。これらの「抗体」、或いは「免疫グロブリン」は、自然界の生物体内で産生せしめる、あるいは全体的または部分的に合成、修飾される。
【0027】
「抗体」、或いは「免疫グロブリン」は、標的物質に対して特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であり得る。
「抗体」、或いは「免疫グロブリン」は、任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであり得、任意のヒトのクラス(IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE)を含み、本発明においては、IgGクラスの誘導体がより好ましい。
【0028】
本発明における「抗体フラグメント」或いは「抗体断片」とは、前記抗体或いは免疫グロブリンの全長に満たない抗体の任意の分子或いは複合体をいう。好ましくは、抗体フラグメントは、少なくとも、全長抗体の特異的結合能力の重要な部分を保持する。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、ディアボディー、およびFdフラグメントが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0029】
抗体フラグメントは、任意の手段によって産生され得る。例えば、抗体フラグメントは、酵素的または化学的に、インタクトな抗体のフラグメント化によって産生され得るか、あるいは部分抗体配列をコードする遺伝子より組換え的に産生され得る。あるいは、抗体フラグメントは、全体的にまたは部分的に合成的に産生され得る。抗体フラグメントは、必要に応じて、一本鎖抗体フラグメントとすることもできる。あるいは、フラグメントは、例えば、ジスルフィド(−S−S−)結合によって連結される複数の鎖を含み得る。フラグメントはまた、必要に応じて、複数の分子の複合体でも良い。機能的な抗体フラグメントは、代表的には、少なくとも約50のアミノ酸を含み、より代表的には少なくとも、約200のアミノ酸を含む。
【0030】
本発明における「可変ドメイン」とは、標的物質(抗原)の種類により特異的な結合/捕捉機能を発揮するために抗原毎に異なるアミノ酸配列部分を有する、免疫グロブリンの先端のドメインであり、通常Fvと記される。
【0031】
前記Fvはまた、「重鎖の可変ドメイン(以下VHと記す場合もある)」、及び「軽鎖の可変ドメイン(以下VLと記す場合もある)」から成り、免疫グロブリンGではVH、VLドメインを通常それぞれ2ずつ含む。
【0032】
本発明における「免疫グロブリン重鎖或いは軽鎖の可変ドメインの機能部分(以下単に「機能部分」と記す場合もある)」とは、前記可変ドメインのなかで標的物質(抗原)との間の特異性を実際に担っている部分であり、学術的にCDR(complementarity determining region:超可変領域)と呼ばれる部分、及びその中でも特に標的物質(抗原)との間の特異性を実際に担っている部分という意味においても用いている。
【0033】
これら標的物質と捕捉体との相互作用は、本発明の素子により結合前後の物理的/化学的変化量が検出可能であればいかなる相互作用でもよいが、より好ましくは、「抗原−抗体反応」、「抗原−アプタマー(特定構造を有するRNA断片)」「リガンド−レセプター相互作用」、「DNAハイブリダイゼーション」「DNA−タンパク質(転写因子等)相互作用」、「レクチン−糖鎖相互作用」等が挙げられる。
【0034】
<分離装置>
分離装置について、図4を用いて説明する。401〜404は、外部のポンプユニットに接続するためのポンプ接続ポートである。401は磁性粒子供給用ポンプ接続部(供給)、402は磁性粒子供給用ポンプ接続部(吸引)、403は磁性粒子搬出用ポンプ接続部(供給)、404は磁性粒子搬出用ポンプ接続部(吸引)である。
【0035】
接続部(供給)401および403は、送液を行うポンプユニットに接続し、接続部(吸引)402および404は、吸引を行うポンプユニットに接続される。101の第一の流路に磁性粒子を含有する流体を供給する際には、401に接続されたポンプユニットから磁性粒子を含有する流体を送り込み、同時に、402に接続された吸引ポンプより同一の流速にて吸引を行う。103の第二の流路に磁性粒子を搬出するための流体を流す際は、403、404の接続ポートを同様に用いることにより実施可能である。また、磁性粒子を流路交点で捕捉する捕捉部105については、図2を用いて説明した通りである。
【実施例】
【0036】
以下では、図を用いて本発明を説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
実施例1
まず第1の実施例として、検体中の標的物質を磁性粒子によって、捕捉し、磁性粒子ごと回収する装置について図5を用いて説明する。
【0037】
<分離装置製造方法>
まず、流体搬送部は、図5の標的物質捕捉分離装置を用いた。図5の501は標的物質を含んだ検体を供給するポート(ポンプ接続部)である。502は、磁性粒子を含んだ、捕捉試薬の供給用のポートである。503は、検体と捕捉試薬を反応するための反応流路である。504は、反応流路中で捕捉試薬と検体の反応を促進するための微弱な磁界印加手段である。第一の流路101は、反応後の検体と捕捉試薬の混合液の搬送流路となる。105は、磁界により、磁性粒子を捕捉する捕捉領域である。第二の流路103は、捕捉分離後、磁性粒子を搬出するための流路である。505は、磁性粒子を搬出するための流体を供給するための供給ポートである。506は、磁性粒子を搬出するための吸引ポートである。507は、反応との検体と捕捉試薬の混合液の廃液を排出するための吸引ポートである。
【0038】
本実施例の流体搬送用の流路構成の製造方法であるが、所謂μフルイディクスによる素子の製造方法を用いることができる。ここでは、PDMS(polydimethylsiloxane)を用いたチップ状の流路を形成する。あらかじめ図5の流路構成の形状の厚膜レジストによる凸型を形成しておく。凸型の105の部位にチップ上のフェライトを置き、さらに外部との接合ポート部材を置き、PDMSを流して流路を形成する。上記、工程で作成したチップを親水処理したガラス板に接合し、チップが形成できる。チップ外部の構成要素としては、図2の205に相当する外部磁界印加用の電磁石をチップの105部の上下に配置する。図5の504にあたる、反応促進用の磁界印加用の磁石を、503の反応流路部周囲に配置する。この磁石による磁界は、磁性粒子を捕捉しない程度でありかつ、磁性粒子が流路を横切る程度移動する強度に設定する。ここでは、永久磁石を用いるように記載したが、当然、電磁石を用いても構わない。さらに送液のためのシリンジポンプを501、502、505、507、506にそれぞれ接続する。
【0039】
<捕捉試薬製造方法>
本実施例に用いる標的物質捕捉試薬の製造方法について説明する。本実施例では、標的物質として、ヒトミオグロビンを対象とする。磁性体微粒子には、ダイナルバイオテック社のダイナビーズM−270 Epoxyを用いる。本ビーズ溶液と、ヒトミオグロビンと特異的に結合する、抗ヒトミオグロビンマウスモノクローナル抗体溶液とを混合し、一晩インキュベートする。インキュベート後に磁石にて、磁性体微粒子を捕捉した状態で、0.1%のTween20(商品名、キシダ化学より購入、界面活性剤)を含んだ、リン酸バッファ溶液にて洗浄する。洗浄後、磁石を外し、0.1%Tween20を含んだ、リン酸バッファ溶液に攪拌分散させることにより捕捉試薬が得られる。
【0040】
<分離方法>
上記の手段で製造した、捕捉試薬を図5の捕捉試薬供給ポート502に接続されたシリンジポンプに導入する。検体供給ポート501に接続されたシリンジポンプにヒトミオグロビンを含んだ検体、例えばヒト血清を導入する。接続部(供給)505に接続されたシリンジポンプにリン酸バッファ溶液を導入する。それ以外のシリンジポンプは、空の状態としておく。分離手順としては、105の磁性粒子捕捉部に磁界を印加し、その状態で、501、502のシリンジポンプを駆動し、捕捉試薬および検体液を導入する。同時に507に接続したシリンジポンプを検体供給ポート501および捕捉試薬供給ポート502により導入する流量の合計に対応する流量で吸引を行う。
【0041】
501、502から導入された捕捉試薬と検体液は、層流を形成し503の反応流路を流れる。この際に504の反応促進用の磁界印加手段で、層流中の磁性粒子が流路方向の断面方向に交互に移動し、検体との反応が促進される。よって、反応流路中で、磁性粒子上の抗ヒトインスリン抗体に検体中のヒトインスリンが捕捉される。捕捉された状態の溶液を105に供給されるように501、502の送液と507の吸引を続ける。規定量の混合溶液が105を通過するだけ送液を実施した際に501、502の送液および507の吸引を停止する。このとき、105部には、捕捉試薬と検体の混合液のうち、105部を通過した量に含まれる磁性粒子およびそれに捕捉されたヒトミオグロビンが捕捉されている。
【0042】
ここで、105部に印加されている磁界を解除し、505からリン酸バッファ溶液を103の搬出流路を介して、105部に導入する。同時に、506に接続されたシリンジポンプを505からのリン酸バッファ供給と同量の流量で吸引する。以上の操作によって、規定量の磁性粒子とその粒子に捕捉されたヒトミオグロビンを分離回収することができる。
【0043】
実施例2
第2の実施例として、検体中の未知の物質を捕捉・分離し、検出部位で検出する例を示す。
【0044】
<検出装置構成>
図6の標的物質検出装置を用いて、本実施例の検出装置について説明する。
601は検体供給ポート、602は捕捉試薬供給ポート、603は標識試薬供給ポート、604は外気に対して開放非開放を切り替えられる外気弁接続部である。605は、磁性粒子搬出用ポンプ接続部(供給)、606は磁性粒子供給用ポンプ接続部(吸引)、607はバッファ供給用ポンプ接続部(供給)、608は廃液ポンプ接続部(吸引)である。609は反応領域である。この反応領域は、磁性粒子を保持できるように、磁界の印加の有無を切り替え可能な、磁界印加手段を持っている。610は検出領域であり光学的な検出が可能になっている。この検出領域についても磁性粒子を保持できるように、磁界の印加の有無を切り替え可能な、磁界印加手段を持っている。611は再循環流路となっており、検出領域から反応領域に流体を戻すことが可能になっている。本流路の製造方法は、実施例と同一の方法で作成することが可能であるためここでは説明を省略する。
【0045】
<捕捉試薬>
本実施例に用いる標的物質捕捉試薬の製造方法について説明する。本実施例では、標的物質として、ヒトインスリンを対象とする。磁性体微粒子には、ダイナルバイオテック社のダイナビーズM−270 Epoxyを用いる。本ビーズ溶液と、ヒトインスリンのα鎖と特異的に結合する、抗ヒトインスリンαサブユニットマウスモノクローナル抗体溶液とを混合し、一晩インキュベートする。インキュベート後に磁石にて、磁性体微粒子を捕捉した状態で、0.1%のTween20(界面活性剤)を含んだ、リン酸バッファ溶液にて洗浄する。洗浄後、磁石を外し、0.1%Tween20を含んだ、リン酸バッファ溶液に攪拌分散させることにより捕捉試薬が得られる。
【0046】
<標識試薬>
本実施例に用いる標的物質標識試薬の製造方法について説明する。前述したように本実施例では、標的物質として、ヒトインスリンを対象としている。標識試薬は、捕捉試薬が認識しないヒトインスリンのβ鎖と特異的に結合する、抗ヒトインスリンβサブユニットマウスモノクローナル抗体溶液を用いる。この抗体をFITCにより蛍光標識する。FITC標識には、Prove社のFluoreporter FITC Protein Labeling Kitを用いて行う。反応チューブに200uLの抗体溶液を入れ、1Mの重炭酸ソーダpH9.0を20uL加える。これにDMSOで溶解した10mg/mLのFITC色素を40uL加えて、室温遮光下で1時間攪拌する。さらに、未反応のFITCを分離するために、スピンカラムを用いて、混合液を遠心分離し、FITC標識化した抗体をチューブに集める。以上により、標識試薬が得られる。
【0047】
<検出工程>
まず、604の外気開放バルブを開放にした状態で、検体供給ポート601よりヒトインスリンを含んだ検体液、例えばヒト血漿と、捕捉試薬供給ポート602より捕捉試薬と、標識試薬供給ポート603より標識試薬を609の反応領域に注入し、捕捉試薬、検体中のインスリン、標識試薬の複合体を形成させる。609の反応領域の前記複合体を含んだ混合液を、反応領域609を開放状態で606の吸引ポンプにより105の捕捉領域に導入する。この際、捕捉部105には磁界を印加し、通過する混合液中の捕捉試薬、インスリン、標識試薬の複合体を捕捉する。規定量の混合液が捕捉部105を通過後に606の吸引ポンプを停止し、604の外気弁を閉鎖させる。
【0048】
続いて、磁性粒子搬出用ポンプ接続部(供給)605からリン酸バッファ溶液を供給しつつ、廃液ポンプ接続部(吸引)608から同一流量で吸引する。この際に610の検出領域に磁界を印加しておき、捕捉試薬、インスリン、標識試薬の複合体を検出領域に捕捉する。610の検出領域に前記複合体がすべて導入された後に605、608の双方のポンプを停止し、610の検出領域に捕捉されている蛍光色素量を光学的な手法により検出する。この際に蛍光検出にあたって、検出部のダイナミックレンジに蛍光量が収まっていた場合には、この蛍光量に基いて、検体中のインスリン量を判定し、検出を終了する。
【0049】
ただし、検出部のダイナミックレンジを上回る量の蛍光が検出された場合には、再度、同様の手順にて、105の捕捉部を用いて、前記複合体の分離を実施するが、その際には、反応領域609から供給される、複合体を含んだ溶液の105の捕捉部への通過量を減らし、捕捉部105の捕捉される複合体量を減らす様にし、結果として、610の検出部で検出される蛍光量が減るように制御する。
【0050】
また、検出される蛍光量が610の検出部のダイナミックレンジに対して少なかった場合には、検出領域610に捕捉されている複合体も含め、一旦609部に再循環させる。その際には、607よりリン酸バッファ溶液を供給し、604の外気弁を開放し、609部の磁界を印加した状態にし、610の磁界は解除した状態にし、611の再循環流路を用いて、609の反応領域に複合体を再循環させる。その後に再度105の捕捉部部を用いて、複合体の分離を行うが、609から供給される、複合体を含んだ溶液の105の捕捉部への通過量を増やし、105の捕捉される複合体量を増える様にし、結果として、610の検出部で検出される蛍光量が増えるように制御する。
【0051】
以上の作業を検出部位のダイナミックレンジに入るまで繰り返すことによって、実質的なダイナミックレンジの広い標的物質の検出が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の磁性粒子分離装置は、共雑物を極力排除し、規定量の磁性粒子を流体中から分離することができるので、磁性粒子を用いて流体中の特定物質、特に生体由来の検体に含まれる、タンパク、糖、脂質、核酸等の生体分子または細胞等の特定物質の検出装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明における流体搬送部を示す概念図である。
【図2】本発明における磁界印加部を示す断面図である。
【図3】本発明における磁性粒子を示す概要図である。
【図4】本発明における磁性粒子分離装置を示す概要図である。
【図5】本発明における標的物質捕捉分離装置を示す概要図である。
【図6】本発明における標的物質検出装置を示す概要図である。
【符号の説明】
【0054】
101 第一の流路
102 流体の流れ
103 第二の流路
104 流体の流れ
105 捕捉部
201 流路を保持する基板
202 高透磁率部材
203 非高透磁率部材
204 保護膜
205 磁界印加用電磁石
301 磁性材料
302 非磁性体材料
303 標的物質捕捉体
401 磁性粒子供給用ポンプ接続部(供給)
402 磁性粒子供給用ポンプ接続部(吸引)
403 磁性粒子搬出用ポンプ接続部(供給)
404 磁性粒子搬出用ポンプ接続部(吸引)
501 検体供給ポート
502 捕捉試薬供給ポート
503 反応流路部
504 反応促進用磁界印加手段
505 磁性粒子搬出用ポンプ接続部(供給)
506 磁性粒子搬出用ポンプ接続部(吸引)
507 磁性粒子供給用ポンプ接続部(吸引)
601 検体供給ポート
602 捕捉試薬供給ポート
603 標識試薬供給ポート
604 外気弁接続部
605 磁性粒子搬出用ポンプ接続部(供給)
606 磁性粒子供給用ポンプ接続部(吸引)
607 バッファ供給用ポンプ接続部(供給)
608 廃液ポンプ接続部(吸引)
609 反応領域
610 検出領域
611 再循環流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の磁性粒子を規定量分離する装置であって、前記磁性粒子を含有する流体を供給するための第一の流路と、分離された磁性粒子を搬出するための第二の流路と、前記第一の流路と第二の流路とが交差した交差部とを少なくとも有する流体搬送部と、前記流体搬送部の交差部に磁界を印加した時に、前記第一の流路から前記交差部に供給される規定量の前記流体中の磁性粒子を捕捉する捕捉手段と、前記捕捉手段により捕捉された磁性粒子を、前記交差部の磁界の印加を解除して第二の流路に導入した媒体により搬出する搬出手段とを有することを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項2】
流体中の標的物質を検出する装置であって、標的物質と特異的に結合する機能を有する磁性粒子に流体中の標的物質を結合させる手段と、前記標的物質と結合した磁性粒子を含有する流体を供給するための第一の流路と、分離された前記標的物質と結合した磁性粒子を搬出するための第二の流路と、前記第一の流路と第二の流路とが交差した交差部とを少なくとも有する流体搬送部と、前記流路の交差部に磁界を印加した時に、前記第一の流路から前記交差部に供給される規定量の前記流体中の標的物質と結合した磁性粒子を捕捉するための捕捉手段と、前記捕捉手段により捕捉された標的物質と結合した磁性粒子を、前記交差部の磁界の印加を解除して第二の流路に導入した媒体により搬出する搬出手段と、前記搬出手段により搬出された磁性粒子に結合した標的物質量を検出する検出手段とを有することを特徴とする標的物質検出装置。
【請求項3】
前記規定量は前記検出領域の感度領域にあわせて制御されることを特徴とする請求項2記載の標的物質検出装置。
【請求項4】
前記検出手段から前記第一の流路に流体を再循環させる手段を有することを特徴とする請求項2または3記載の標的物質検出装置。
【請求項5】
流体中の磁性粒子を規定量分離する方法であって、前記磁性粒子を含有する流体を供給するための第一の流路と、分離された磁性粒子を搬出するための第二の流路とが交差した流路の交差部に磁界を印加し、前記交差部に第一の流路から磁性粒子を含有する流体を供給し、規定量の前記流体中の磁性粒子を捕捉する工程と、前記捕捉された磁性粒子を、前記交差部の磁界の印加を解除して第二の流路から導入された媒体により搬出する工程とを有することを特徴とする磁性粒子分離方法。
【請求項6】
流体中の標的物質を検出する方法であって、標的物質と特異的に結合する機能を有する磁性粒子に流体中の標的物質を結合させる工程と、前記標的物質と結合した磁性粒子を含有する流体を供給するための第一の流路と、分離された前記標的物質と結合した磁性粒子を搬出するための第二の流路とが交差した交差部に磁界を印加し、前記交差部に第一の流路から標的物質と結合した磁性粒子を含有する流体を供給し、規定量の前記流体中の標的物質と結合した磁性粒子を捕捉する工程と、前記捕捉された標的物質と結合した磁性粒子を、前記交差部の磁界の印加を解除して第二の流路から導入された媒体により搬出する工程と、前記搬出された磁性粒子に結合した標的物質量を検出する工程とを有することを特徴とする標的物質検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−10529(P2006−10529A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188626(P2004−188626)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】