説明

磁性部品

【課題】 巻線の引出線の絶縁性の確保が容易であり、かつ、引出線が位置ずれしにくい構造を有する磁性部品を提供すること。
【解決手段】 巻線11の引出線である配設部13とこれに連続する端部及び近傍部分15、並びに端部及び近傍部分16、巻線12の引出線である配設部14とこれに連続する端部及び近傍部分17、並びに端部及び近傍部分18とがボビン30の各部によって保持又は挟持されているので、磁性部品10の実装作業時や実装後にこれらが本来の位置からずれて、短絡する或いは必要な沿面距離又は空間距離を保てなくなることを防止でき、これらにゴム等の絶縁被覆を設ける必要がない。また、これらが位置ずれしにくくなり、磁性部品10を基板に実装する際の位置決めが容易になる。さらに、磁性部品10を基板に実装する際にこれらが接続する相手方の配線等に押されて位置ずれすることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性部品に関し、特に巻線の引出線をボビンで保持する構造を有する磁性部品に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルやインダクタなどの磁性部品は、巻線を有する受動素子の1つであって、リアクタンスやインダクタンスを提供するものであり、平滑回路などによく利用されている。一般的な磁性部品は、巻線を巻回するボビンと、通電により磁束を発生する巻線と、巻線によって生成した磁束の磁路となるコアとから構成されている。磁性部品などの巻線を有する受動素子では、巻線の引出線の絶縁性の確保を容易にするために様々な改良が行われている。
【0003】
以下に、特開平10−149921公報に開示されているチョークコイルについて説明する。図9は、巻線の引出線の絶縁性確保に関する従来技術の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図9において、70はチョークコイル、71はトロイダルコイル、72、73、74及び75はリード線、76はホルダ、77はトロイダルコア、78、79、80及び81は開口、82、83、84及び85は巻線固定部である。
【0004】
チョークコイル70は、図9に示すように、ホルダ76にトロイダルコア77を設け、トロイダルコア77に巻線を巻回してトロイダルコイル71としている。また、ホルダ76の四隅には巻線固定部82、83、84及び85をそれぞれ設けている。巻線固定部82、83、84及び85には開口78、79、80及び81をそれぞれ形成してあり、巻線の端部及びその近傍部分であるリード線72、73、74及び75は巻線固定部82、83、84及び85にそれぞれ固定されている。
【0005】
以上の構造によれば、チョークコイル70は、ホルダ76の鍔がリード線72、73、74及び75の位置ずれを防ぐ役目を果たしているので、リード線72、73、74及び75に絶縁性のゴムカバーを被せる必要がない。また、トロイダルコイル71の巻き始めと巻き終わりとホルダ76へ固定することによってそのままリード線72、73、74及び75として利用できる。さらに、リード線72、73、74及び75の固定は、巻線固定部82、83、84及び85の開口78、79、80及び81から嵌め込んで固定するだけなので、容易に行うことができる。
【0006】
しかし、上述の構造の場合、開口78、79、80及び81とリード線72、73、74及び75との間にわずかに間隙があると、リード線72、73、74及び75が作業中に離脱して位置ずれしやすくなるので、巻線固定部82、83、84及び85には十分な寸法精度が要求されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−149921公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、巻線の引出線の絶縁性の確保が容易であり、かつ、引出線が位置ずれしにくい構造を有する磁性部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、筒状部を備えたボビンと、前記筒状部に巻回されると共に端部及びその近傍部分が前記筒状部から延出した巻線と、前記筒状部に一部又は全部が挿入されたコアとを有する磁性部品において、前記ボビンは、係止爪が形成された分離片と、該分離片と対向した状態で前記巻線の端部又はその近傍部分を挟持すると共に前記分離片を係止可能な挟持部とが設けられていることを特徴とする磁性部品である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ボビンは、前記筒状部の両端部に第1の鍔部と第2の鍔部とが設けられており、前記挟持部は前記第1の鍔部と前記第2の鍔部とのいずれかに設けられていることを特徴とする磁性部品である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ボビンは、前記挟持部に前記巻線の端部又はその近傍部分を挿入する溝が形成されていることを特徴とする磁性部品である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記ボビンは、前記第1の鍔部と前記第2の鍔部とに2つの脚部がそれぞれ設けられ、前記第1の鍔部と前記第2の鍔部との前記挟持部を設けた方は、下端部が前記巻線の一方の端部の近傍部分を保持するようになされていることを特徴とする磁性部品である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記ボビンは、前記第1の鍔部と前記第2の鍔部との前記挟持部を設けた方の下端部に凹陥部が形成され、該凹陥部に前記巻線の一方の端部の近傍部分を挿入した状態で2つの前記脚部の間に嵌合片を嵌合することによって前記凹陥部を閉止していることを特徴とする磁性部品である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記ボビンは、前記凹陥部の幅が挿入される前記巻線の直径又は延在する方向と直交する断面における長辺の長さよりも長くなるように形成されていることを特徴とする磁性部品である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記ボビンは、前記筒状部の少なくとも一方の端部に前記巻線の端部又はその近傍部分を前記コアから所定の空間距離離隔するスペーサ部が設けられていることを特徴とする磁性部品である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記巻線は、平角線であることを特徴とする磁性部品である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、ボビンの分離片と挟持部とによって巻線の端部又はその近傍部分を挟持するので、巻線の端部又はその近傍部分、つまり引出線を所定位置に確実に保持することができる。また、分離片の係止爪で挟持部に確実に係止でき、巻線の端部又はその近傍部分をしっかりと挟持される。したがって、巻線の引出線の絶縁性の確保できるので、引出線の絶縁被覆が不要となる。また、引出線が位置ずれしにくくなるので、磁性部品の実装時の位置決めが容易になる。さらに、磁性部品の実装時に、引出線を接続する配線等に押されて引出線が位置ずれすることを防止できる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、挟持部を第1の鍔部と第2の鍔部といずれかに付設するので、巻線のボビンに巻回された部分及びコアと、巻線の端部又はその近傍部分との沿面距離又は空間距離を確保することが容易になる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、分離片を挟持部に係止する前に巻線の端部又はその近傍部分を挟持部に保持させておくことができ、磁性部品の組み立てが容易になる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、磁性部品を実装する基板と巻線の一方の端部の近傍部分との空間距離を確保することが容易になる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、凹陥部に巻線の一方の端部の近傍部分を挿入してから嵌合片を嵌合することによって巻線を保持でき、手作業で行える上に巻線を曲げ加工する必要がなく、磁性部品の組み立てが容易になる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、巻線を挿入する凹陥部の横幅に多少の遊びがあると、磁性部品の組立が容易になって作業効率が向上する。さらに、巻線に加わるストレスを低減することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、コアの端部と巻線の端部又はその近傍部分との空間距離を確実に確保することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、巻線が平角線であると、巻線をボビンの分離片と挟持部とによって挟持するときに、巻線の一方の端部の近傍部分の位置決めをしやすくなる。また、巻線と分離片及び挟持部の接触面積が多くなり、巻線を安定的に挟持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態に係る磁性部品を示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る磁性部品を示す図(2)であり、(c)は左側面図、(d)は底面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る磁性部品のボビンを示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る磁性部品のボビンを示す図(2)であり、(c)は左側面図、(d)は底面図である。
【図5】第2の実施の形態に係る磁性部品を示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図6】第2の実施の形態に係る磁性部品を示す図(2)であり、(c)は左側面図、(d)は底面図である。
【図7】第3の実施の形態に係る磁性部品を示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図8】第3の実施の形態に係る磁性部品を示す図(2)であり、(c)は左側面図、(d)は底面図である。
【図9】巻線の引出線の絶縁性確保に関する従来技術の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の各実施の形態に係る磁性部品を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、リアクトル若しくはインダクタ、又はこれらと同様に、導電性の線状材を巻回した巻線を有する受動素子に適用することができ、リアクタンスの提供などの用途に限定されるものではない。図1は、第1の実施の形態に係る磁性部品を示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図1において、10は磁性部品、11は巻線、12は巻線、13は配設部、15、16、17及び18は端部及び近傍部分、19は粘着テープ、20は実装面、34及び35は鍔上部、36は鍔下部、39は挟持部、43はスペーサ部、44は凹陥部、45及び46は鍔上部、47は鍔下部、50及び51は凸部、53は脚部、53aはねじ穴、54は脚部、54aはねじ穴、55は脚部、55aはねじ穴、56は脚部、56aはねじ穴、60は分離片である。また、図2は、第1の実施の形態に係る磁性部品を示す図(2)であり、(c)は左側面図、(d)は底面図である。図2において、14は配設部、57は嵌合片、58a、58b及び58cは凹陥部であり、その他の符号は図1と同じものを示す。
【0027】
この実施の形態における磁性部品10は、平角線からなる巻線11と巻線12との2つの巻線を備えている。なお、これらの巻線は、平角線であると巻線をボビンの分離片と挟持部とによって挟持したときに、巻線の一方の端部の近傍部分の位置決めをしやすくなること、巻線と分離片及び挟持部の接触面積が多くなり、巻線を安定的に挟持することができることから、平角線にすることが望ましい。また、巻線11と巻線12とは、図1(b)及び図2に示すように、引出線であって基板又は他の配線への接続点となる端部及び近傍部分15及び16と、同じく接続点となる端部及び近傍部分17及び18とが挟持部39と分離片60とによって上向きに挟持されている。したがって、この実施の形態は、接続対象となる相手方の配線が磁性部品10の上方に位置する場合に好適な構成となっている。また、分離片60は、図1に2点鎖線で示したように、磁性部品10に対して着脱自在なものである。後述するように、分離片60を挟持部39に係止して装着することによって、巻線11の端部及び近傍部分15及び16と、巻線12の端部及び近傍部分17及び18とに圧接して挟持するように構成されている。また、巻線11と巻線12との中空部には、図面上現れないコアをそれぞれ配置している。なお、この実施の形態を含む各実施の形態では、巻線を2個設けた構成について説明するが、巻線は1個又は3個以上であってもよい。また、コアの形状、大きさ、材質は、磁性部品に利用できるものであればどのようなであってもよい。
【0028】
さらに、この実施の形態におけるボビンについて詳しく説明する。図3は、第1の実施の形態に係る磁性部品のボビンを示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図3において、30はボビン、31及び32は筒状部、33は間隙、37は凹部、40a、40b、40c及び40dは溝、41及び42は係止凹部、44及び52は凹陥部、61は本体部、62及び63は係止爪であり、その他の符号は図1と同じものを示す。また、図4は、第1の実施の形態に係る磁性部品のボビンを示す図(2)であり、(c)は左側面図、(d)は底面図である。図4において、38は凹部であり、その他の符号は図1及び図3と同じものを示す。なお、図3及び図4においては、分離片60を離脱している状態を示す。
【0029】
図3に示すように、ボビン30は、巻線11を巻回する筒状部31と、巻線12を巻回する筒状部32とを備えており、これらの間には巻線11及び12の太さを考慮した間隙33を設けてある。筒状部31と筒状部32とは、内部にコアを配置するために、それぞれ中空部31aと中空部32aとを形成している。また、筒状部31の両端部には、鍔上部34及び鍔下部36と鍔上部45及び鍔下部47とを設けており、筒状部32の両端部には、鍔上部35及び鍔下部36と鍔上部46及び鍔下部47とを設けている。したがって、鍔下部36と鍔下部47とは両者に共通しており、これらの筒状部を一体にするものとなっている。鍔上部34、鍔上部35及び鍔下部36を設けている側には、巻線11の端部及び近傍部分15及び16と、巻線12の端部及び近傍部分17及び18とを上向きの状態で挟持するために分離片60と挟持部39とを設けている。
【0030】
分離片60は、前述のようにボビン30から分離可能であり、挟持部39に係止することによって装着するものである。分離片60の本体部61の両端部には、係止爪62と係止爪63とを設けており、これらの係止爪の先端に設けた鉤状部分が挟持部39の係止凹部41と係止凹部42に係ることによって係止される。すなわち、分離片60を図3の矢印に方向に押し込むと、係止爪62と係止爪63とが挟持部39の係止凹部41と係止凹部42との手前の部分を越え、係止凹部41と係止凹部42とにそれぞれ落ち込んで、図1及び図2に示した状態になる。落ち込んだ係止爪62と係止爪63とは、先端に設けた鉤状部分が係止凹部41と係止凹部42とにそれぞれ係った状態になるので、分離片60は容易には離脱せず、装着状態が保持される。また、分離片60を手作業によって簡単に着脱することができる。なお、分離片60は、係止爪62と係止爪63との鉤状部分が挟持部39の係止凹部41と係止凹部42との手前の部分を越えて係止凹部41と係止凹部42とにそれぞれ落ち込ませることができる程度に可撓性を有する必要がある。
【0031】
挟持部39は、鍔上部34及び35に対して水平方向に突出するように設けられると共に、分離片60の本体部61と対向するように設けられている。さらに、手前側の面に、垂直方向に延在する溝40a、40b、40c及び40dを形成し、端部及び近傍部分15、16、17及び18をこれらの溝に挿入した状態において分離片60とで挟持するようにしている。すなわち、端部及び近傍部分15、端部及び近傍部分16、端部及び近傍部分17と端部及び近傍部分18を適宜曲げ加工して溝40a、溝40b、溝40cと溝40dとにそれぞれ挿入しておき、次に分離片60を挟持部39に係止すると、図1及び図2に示すように、端部及び近傍部分15、16、17及び18は分離片60と挟持部39とに挟まれた状態で保持される。したがって、溝40a、40b、40c及び40dを設けることによって、端部及び近傍部分15、16、17及び18を他の配線や基板などに接続する前に、これらの端部及び近傍部分が位置ずれして接触又は接近することを防止できる。なお、巻線11及び12が細い線状材である場合には、分離片60を挟持部39に係止するだけで端部及び近傍部分15、16、17及び18を挟持できるので、溝40a、40b、40c及び40dを省略してもよい。また、溝を分離片60にも設けてもよい。
【0032】
また、挟持部39は、鍔上部34及び35に対して設けられる位置と、挟持部39が水平方向に突出する長さとは、図示していない2個のコアと端部及び近傍部分15、16、17及び18とに絶縁のために必要となる沿面距離及び空間距離を考慮したものとしている。すなわち、鍔上部34及び35に対する挟持部39の付設位置と、挟持部39の水平方向の長さを適宜変更することによって、この沿面距離及び空間距離を自在に設定することができる。なお、挟持部39は一部又は全部を垂直方向や斜め方向に突出するようにすることも可能であり、挟持部39を例えばL字状や、Z字状、クランク状などに形成することなどによって、沿面距離及び空間距離をさらに延ばすこともできる、
【0033】
スペーサ部43は、に対して水平方向に突出するように設けられると共に、挟持部39と所定の間隙をおいて対向している。スペーサ部43の先端部は、図1に示すように、端部及び近傍部分15、16、17及び18に極めて近接する、又は接するように形成してあり、端部及び近傍部分15、16、17及び18が図示していない2個のコアと所定の空間距離を超えて接近することを防止する。スペーサ部43と挟持部39との間隙は、図3(b)に示すように、側方から見ると凹陥部44をなしており、後述するように図1に示した粘着テープ19の巻回を容易にしている。
【0034】
また、鍔上部45及び46には、挟持部39に対して背向するように凸部50を設けており、鍔下部47には、スペーサ部43に対して背向するように凸部51を設けている。凸部50と凸部51との間隙は、図3(b)に示すように、凹陥部44と同じ幅の凹陥部52をなしている。凹陥部44と凹陥部52とは、図示していない2個のコアを保持する粘着テープ19の巻回作業を行うときに、粘着テープ19を案内して所定位置に容易に巻回できるようにするものである。くわえて、図4(c)に示すように、鍔上部34及び35と鍔下部36との側面側に凹部37及び38を形成し、鍔上部45及び46と鍔下部47との側面側にも凹部48及び49を形成して、粘着テープ19がさらに確実に案内されるようにしている。
【0035】
さらに、ボビン30には、支持手段として、脚部53、54、55及び56を設けている。すなわち、鍔下部36の下端部から挟持部39と同方向に、かつ、平行に延びる脚部53及び54と、鍔下部47の下端部から凸部51と同方向に、かつ、平行に延びる脚部53及び54とを設けている。脚部53、脚部54、脚部55と脚部56とには、それぞれねじ穴53a、ねじ穴54a、ねじ穴55aとねじ穴56aとを形成して基板等への取り付けを容易にしている。
【0036】
くわえて、図4(c)に示すように、鍔下部36の下端部の脚部53と脚部54との間には、凹陥部58a、58b及び58cを形成してあり、これらを閉止するように嵌合片57を脚部53と脚部54との間に嵌合している。凹陥部58a、58b及び58cは、図2に示すように、鍔下部36の下を交差するように横切る巻線11の配設部13と巻線12の配設部14とを挿入するために形成している。なお、凹陥部58a、58b及び58cは、巻線11及び12の延在する方向と直交する断面における長辺の長さよりも幅が広くなるように形成している。これは、配設部13又は配設部14の長辺の長さに対して凹陥部の横幅に多少の遊びがあると、磁性部品の組立が容易になって作業効率が向上することと、巻線に加わるストレスを低減することができることによる。なお、挿入する巻線が複数本である場合には、その本数分の長辺の長さよりも長くする。また、巻線11及び12が丸線である場合には、凹陥部58a、58b及び58cの幅を直径よりも長くしてやればよい。
【0037】
また、凹陥部58a、58b及び58cを嵌合片57で閉止することによって、導電路である配設部13及び14が基板に接触しないように保持することができる。なお、巻線11及び12が細い線状材である場合には、脚部53と脚部54との間に嵌合片57を嵌合するだけで配設部13及び14を保持できるので、凹陥部58a、58b及び58cを省略してもよい。なお、嵌合片57は、脱落を防止するために、脚部53と脚部54との間に嵌合した後、接着剤で鍔下部36に接着してもよい。
【0038】
結局のところ、図2に示すように、巻線11の鍔下部36側に位置する端部及び近傍部分16と、巻線12の鍔下部36側に位置する端部及び近傍部分18とは、巻回された部分に近い部分が鍔下部36の下方において凹陥部58b及び58cと嵌合片57とによって保持されている。また、これより先端側の部分はスペーサ部43によって図示していない2個のコアとの空間距離が確保されている。さらに、図1に示すように、これらの最先端部とそのごく近傍の部分は、分離片60と挟持部39とによって挟持されている。また、巻線11の配設部13と巻線12の配設部14とは、先端側が鍔下部36の下方において凹陥部58b及び58cと嵌合片57とによって保持されている。また、配設部13に連続する端部及び近傍部分15と、配設部14とに連続する端部及び近傍部分17とは、基端側の部分が鍔下部36の下方において凹陥部58b及び58cと嵌合片57とによって保持されると共に、これらの先端側はスペーサ部43によって図示していない2個のコアとの空間距離が確保されている。さらに、これらの最先端部とそのごく近傍の部分は、分離片60と挟持部39とによって挟持されている。
【0039】
以上のように、第1の実施の形態に係る磁性部品10は、巻線11の引出線であり基板又は他の配線との接続点となる端部及び近傍部分15及び16、巻線12の引出線であり基板又は他の配線との接続点となる端部及び近傍部分17及び18がボビン30によって挟持されているので、磁性部品10の実装作業時や実装後にこれらの部分が本来の位置からずれて、短絡する、あるいは、必要な沿面距離又は空間距離を保てなくなることを防止できる。したがって、これらの部分にゴム等の絶縁被覆を設ける必要がない。また、これらの部分が位置ずれしにくくなるので、磁性部品10を基板に実装する際の位置決めが容易になる。さらに、磁性部品10を基板に実装する際に、これらの部分が接続する相手方の配線等に押されて位置ずれすることを防止できる。また、基板又は他の配線との接続点への導電路となる配設部13及び14についても、ボビン30によって保持されているので、基板の実装面20に接触する、あるいは、必要な空間距離を保てなくなることを防止できる。くわえて、嵌合片57及び分離片60は、手作業で着脱できるので、磁性部品10の組立作業や修理作業が容易である。
【0040】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る磁性部品について説明する。図5は、第2の実施の形態に係る磁性部品を示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図5において、15aは基板貫通部分、21は近接面、22は基板、64及び65は 鍔上部であり、その他の符号は図1と同じものを示す。図6は、第2の実施の形態に係る磁性部品を示す図(2)であり、(c)は左側面図、(d)は底面図である。図6において、59a、59b及び59cは凹陥部であり、その他の符号は図2と同じものを示す。
【0041】
この実施の形態における磁性部品10は、図5(b)及び図6(c)に示すように、端部及び近傍部分15、16、17及び18を基板22に接続する場合に好適な構成となっている。すなわち、図5(b)の基板貫通部分15aに示すように、基板22の磁性部品10に極めて近い部位に端部及び近傍部分15、16、17及び18を接続するために、脚部53、54、55及び56を除いて第1の実施の形態を上下逆となる構成にしている。したがって、挟持部39は鍔下部36に設けられ、スペーサ部43は鍔上部64に設けられており、挟持部39とスペーサ部43の上下方向の位置が逆転している。また、配設部13と及び配設部14は、巻線11及び12の上方において鍔上部65から鍔上部64に向かって配設されている。さらに、端部及び近傍部分15、16、17及び18は、凹陥部59a、59b及び59cから下方に向かって延びており、最先端部の近傍部分が分離片60と挟持部39とによって挟持されている。また、スペーサ部43は、第1の実施の形態と同様に、端部及び近傍部分15、16、17及び18と、図示していない2個のコアとの空間距離を所定距離以内にならないように維持している。なお、挟持部39の細部の構成などは、第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0042】
以上のように、第2の実施の形態に係る磁性部品10は、端部及び近傍部分15、16、17及び18を分離片60と挟持部39とによって挟持しているので、端部及び近傍部分15、16、17及び18の最先端部分を基板22に貫通させる作業が非常に容易になる。また、電子機器の筐体や、周辺に実装される他の素子の近接面21に対して端部及び近傍部分15、16、17及び18が接触する、あるいは、必要な空間距離を保てなくなることを防止できる。ひいては、引き出し線である端部及び近傍部分15、16、17及び18の位置決め作業が非常に容易になる。また、第1の実施の形態と同様に、端部及び近傍部分15、16、17及び18にゴム等の絶縁被覆を設ける必要がない。くわえて、嵌合片57及び分離片60は、手作業で着脱できるので、磁性部品10の組立作業や修理作業が容易である。
【0043】
さらに、本発明の第3の実施の形態に係る磁性部品について説明する。図7は、第3の実施の形態に係る磁性部品を示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図7において用いた符号は、すべて図1と同じものを示す。また、図8は、第3の実施の形態に係る磁性部品を示す図(2)であり、(c)は左側面図、(d)は底面図である。図8において用いた符号は、すべて図2と同じものを示す。
【0044】
この実施の形態における磁性部品10は、端部及び近傍部分15、16、17及び18を接続する配線が基板等の実装面20に近い位置にある場合に好適な構成となっている。すなわち、図7及び図8に示すように、挟持部39は鍔下部36に設けられ、スペーサ部43は鍔上部64に設けられており、挟持部39とスペーサ部43の上下方向の位置が逆転している。挟持部39は実装面20に対向するように設けられている。分離片60は、挟持部39の構成に応じて挟持部39の下側に配置されている。配設部13と及び配設部14は、第1の実施の形態と同様に、巻線11及び12の下方において鍔下部47から鍔下部36に向かって配設されている。端部及び近傍部分15、16、17及び18は、最先端の近傍部分が分離片60と挟持部39とによって挟持されているので、最先端部分が水平方向に延びている。その他の構成は、第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0045】
以上のように、第3の実施の形態に係る磁性部品10は、端部及び近傍部分15、16、17及び18を分離片60と挟持部39とによって水平方向に延びた状態で挟持しているので、端部及び近傍部分15、16、17及び18の最先端部分が実装面20に接触する、あるいは、必要な空間距離を保てなくなることを防止できる。ひいては、引き出し線である端部及び近傍部分15、16、17及び18の位置決め作業が非常に容易になる。また、第1の実施の形態と同様に、端部及び近傍部分15、16、17及び18にゴム等の絶縁被覆を設ける必要がない。さらに、嵌合片57及び分離片60は、手作業で着脱できるので、磁性部品10の組立作業や修理作業が容易である。
【0046】
以上、本発明の3つの実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、巻線11及び12は、平角線ではなく、丸線や角線であってもよい。また、鍔の一部を省略してもよい。さらに、磁性部品10が比較的に小型で計量である場合には、4つの脚部を省略し、鍔下部36及び47の一部が下方に向かって棒状に延びた構成とし、この棒状の部分を基板22に差し込むようにしてもよい。また、図示していないコアが実装面20に対して直立するような構成にしてもよい。この場合、4つの脚部は凸部50及び51側に配置され、端部及び近傍部分15、16、17及び18の最先端部分は実装面20のかなり上方に位置するので、接続対象となる相手方の配線が実装面20のかなり上方にある場合に好適である。また、3つの実施の形態の細部の構成を機能的に矛盾しない範囲において適宜組み合わせても良い。一例として、第1の実施の形態の磁性部品10の構成に対して、第3の実施の形態における分離片60と挟持部39との構成を組み合わせてもよい。この場合、第1の実施の形態の磁性部品10の端部及び近傍部分15、16、17及び18の最先端部分が水平方向に延びた構成になるので、接続対象となる相手方の配線が水平方向に延びているときに好適である。
【符号の説明】
【0047】
10 磁性部品
11 巻線
12 巻線
13 配設部
14 配設部
15 端部及び近傍部分
15a 基板貫通部分
16 端部及び近傍部分
17 端部及び近傍部分
18 端部及び近傍部分
19 粘着テープ
20 実装面
21 近接面
22 基板
30 ボビン
31 筒状部
31a 中空部
32 筒状部
32a 中空部
33 間隙
34 鍔上部
35 鍔上部
36 鍔下部
37 凹部
38 凹部
39 挟持部
40a 溝
40b 溝
40c 溝
40d 溝
41 係止凹部
42 係止凹部
43 スペーサ部
44 凹陥部
45 鍔上部
46 鍔上部
47 鍔下部
48 凹部
49 凹部
50 凸部
51 凸部
52 凹陥部
53 脚部
53a ねじ穴
54 脚部
54a ねじ穴
55 脚部
55a ねじ穴
56 脚部
56a ねじ穴
57 嵌合片
58a 凹陥部
58b 凹陥部
58c 凹陥部
59a 凹陥部
59b 凹陥部
59c 凹陥部
60 分離片
61 本体部
62 係止爪
63 係止爪
64 鍔上部
65 鍔上部
70 チョークコイル
71 トロイダルコイル
72 リード線
73 リード線
74 リード線
75 リード線
76 ホルダ
77 トロイダルコア
78 トロイダルコア
79 トロイダルコア
80 トロイダルコア
81 開口
82 巻線固定部
83 巻線固定部
84 巻線固定部
85 巻線固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部を備えたボビンと、前記筒状部に巻回されると共に端部及びその近傍部分が前記筒状部から延出した巻線と、前記筒状部に一部又は全部が挿入されたコアとを有する磁性部品において、
前記ボビンは、係止爪が形成された分離片と、該分離片と対向した状態で前記巻線の端部又はその近傍部分を挟持すると共に前記分離片を係止可能な挟持部とが設けられていることを特徴とする磁性部品。
【請求項2】
前記ボビンは、前記筒状部の両端部に第1の鍔部と第2の鍔部とが設けられており、前記挟持部は前記第1の鍔部と前記第2の鍔部とのいずれかに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の磁性部品。
【請求項3】
前記ボビンは、前記挟持部に前記巻線の端部又はその近傍部分を挿入する溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の磁性部品。
【請求項4】
前記ボビンは、前記第1の鍔部と前記第2の鍔部とに2つの脚部がそれぞれ設けられ、前記第1の鍔部と前記第2の鍔部との前記挟持部を設けた方は、下端部が前記巻線の一方の端部の近傍部分を保持するようになされていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の磁性部品。
【請求項5】
前記ボビンは、前記第1の鍔部と前記第2の鍔部との前記挟持部を設けた方の下端部に凹陥部が形成され、該凹陥部に前記巻線の一方の端部の近傍部分を挿入した状態で2つの前記脚部の間に嵌合片を嵌合することによって前記凹陥部を閉止していることを特徴とする請求項4に記載の磁性部品。
【請求項6】
前記ボビンは、前記凹陥部の幅が挿入される前記巻線の直径又は延在する方向と直交する断面における長辺の長さよりも長くなるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の磁性部品。
【請求項7】
前記ボビンは、前記筒状部の少なくとも一方の端部に前記巻線の端部又はその近傍部分を前記コアから所定の空間距離離隔するスペーサ部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の磁性部品。
【請求項8】
前記巻線は、平角線であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の磁性部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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