説明

磁気カードの製造方法、転写シート、転写シートの製造方法

【課題】 磁気カードの絵柄転写を、電子写真プリンターで絵柄を形成した転写シートを用いて行う製造方法と、当該転写シートとその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の磁気カードの製造方法は、コアシート11,12と磁気テープ転写済みのオーバシート13と、絵柄24および磁気テープ隠蔽層26を有する絵付け転写用転写シート2の積層体を熱圧プレスして、カード基体を一体化すると共にカード表面に絵付けする磁気カードの製造方法において、当該絵付け転写用転写シート2として、電子写真プリンターのカラートナーによる絵柄を、剥離層を有するフィルム基材面に形成し、さらに当該絵柄面に磁気テープ隠蔽層を印刷したものを使用することを特徴とする。
転写シート2の絵柄の形成は、電子写真プリンターにカラー原稿を供給してもよく、カラーデジタルデータを送信してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気カードの製造方法と転写シート等に関する。特には、表面の絵柄を転写シートから転写して絵付けする方法と当該転写シートに関するが、当該転写シートに対し電子写真方式にて絵柄を形成し、その後、カード表面に転写する製造方法に関する。
したがって、本発明の属する技術分野は、磁気カードの製造や利用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯可能な札入れサイズの磁気カードは、キャッシュカード、クレジットカード、銀行カード、社員証用カード、交通機関用カード、等として広範に使用されている。これらのカードは個人に携帯されて長期間使用されることから、耐久性があり、かつ美麗に表面絵付けされていることが求められる。
【0003】
カード表面の絵付け方法としては、各種の方法が従来から行われている。
直刷り方式としては、カード基材の内側のシートとなるコアシート(表裏2枚)とその両面のオーバーシートを熱圧プレスして一体化した後、オーバーシートに転写してある磁気テープを隠蔽するための隠蔽印刷と絵柄印刷、艶出しオーバープリントを行った後、再度、熱圧プレスする方法が採用されている。
印刷にはオフセット印刷やシルクスクリーン印刷が用いられ、製版工程が必要なことと、2回プレスが必要なことから、主として数量の多いカードの製造に用いられている。
【0004】
転写方式としては、前記コアシート(表裏2枚)と磁気テープ転写済みの表裏のオーバーシート、および絵柄を印刷した転写シートを仮接着し、その後、熱圧プレスして基材間を熱融着して接着すると共に、転写シートの絵柄をオーバーシートに転写する方式が行われていた。この転写方式は1回の熱圧プレスで済む工程上の利点がある。
しかし、転写方式による場合であっても、転写シートに対する絵柄の印刷が必要であり、製版・刷版工程、本機印刷工程が必要となる問題がある。
【0005】
ここで、上記の直刷り方式と転写方式について図面を参照し、さらに詳細に説明することとする。図4は、従来の直刷り方式を説明する図、図5は、転写方式を説明する図、である。
【0006】
直刷り方式の場合は、図4のように、まず、表面側コアシート11、裏面側コアシート12、表面側オーバーシート13、裏面側オーバーシート14の4層を一体にするための熱圧プレスを行う。表裏のオーバーシート13,14には予め、磁気テープ8,9が転写されているものである。また、裏面側コアシート12には裏面の地色印刷12cや使用上の説明等の印刷がされており、図示してないが表面側コアシート11にも位置合わせマーク等の印刷がされているものである。これらの印刷は、オフセットまたはシルクスクリーン印刷により行われる。
【0007】
カード基材の材料としては、一般的には硬質塩化ビニルシートやポリエチレンテレフタレート(PET)シート、PET−Gシートが使用されている。なお、カード基体10の全体厚みを、規定の0.76±0.08mmに仕上げるため、表裏コアシート11,12は、0.28mm厚程度の白色シート、表裏オーバーシート13,14は、0.10mm厚程度の透明シートを使用するのが、通常である。
【0008】
熱圧プレス後、表面側オーバーシート13面に磁気テープ8を隠蔽するための隠蔽層13c、絵柄13p、艶出しオーバープリント13gの印刷が順次なされる。隠蔽層13cはシルクスクリーン印刷によりされることが多く、絵柄13pや艶出しオーバープリント13gは、オフセットまたはシルクスクリーン印刷により行われる。この場合、艶出しオーバープリント13gの表面状態では、カードの平滑性や艶が不十分であるため、印刷後、再度熱圧プレスを行うのが通常である。
【0009】
転写方式の場合も、図5のように、カード基材材料は、直刷り方式と同様に同質の同一厚みのものが使用される。
まず、表面側コアシート11、裏面側コアシート12、表面側オーバーシート13、裏面側オーバーシート14の4層と、隠蔽層26、絵柄層24、アンカー層23、剥離層22が印刷された転写シート(PET基材)2を仮貼りし、その後、熱圧プレスして一体にする工程を行う。
熱圧プレス後は、隠蔽層26、絵柄層24、アンカー層23、剥離層22が表面側オーバーシート13に転写され、磁気テープ8を隠蔽すると共に美麗な絵柄を表現し、剥離層22は保護層の役割をも果たす。
【0010】
表裏のオーバーシート13,14には予め、磁気テープ8,9が転写され、裏面側コアシートに地色印刷12cや使用上の説明等の印刷がされ、表面側コアシート11にも位置合わせマーク等の印刷がされているのは、直刷りの場合と同様である。
転写方式の場合は、1回の熱圧プレス工程で済む利点があるが、転写シートの基材フィルム21は最後に剥離除去され、再使用できない問題がある。
【0011】
なお、カードに対する絵付け方法に関しては、各種の先行技術があるが、本願に密接に関連する先行技術は見出せない。以下、本願に多少とも関連する特許文献を記載する。
特許文献1は、カード基材の面に、昇華性染料で画像形成することを記載しているが、染料画像の場合は、絵柄の耐光性が弱い問題がある。特許文献2は、小ロットの磁気カードに直刷りで絵柄を設けることを記載しているが、直刷りの場合は、印刷版の製造が不可欠であるという問題がある。特許文献3は、カードの表裏に転写方式で絵柄を設ける「磁気カード及びその製造方法」について記載している。特許文献4は、「カード及びその絵付け方法」に関するが、カード表面の受容層皮膜の特性について提案している。
【0012】
【特許文献1】特開平6−8649号公報
【特許文献2】特開2003−346104号公報
【特許文献3】特開平5−92684号公報
【特許文献4】特願2002−334557号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、従来の磁気カードの転写方式による製造方法では、転写シートへのオフセット印刷の際、見当合わせ、色替え、洗浄など、準備や版替えに多くの時間を要していた。しかも校了後に、改めて製版、刷版が必要であり、可変情報を印刷することも不可能であった。また、昇華転写による絵柄形成法も特許文献1のように一部実施されていたが、昇華転写は染料画像によるもので、絵柄の耐光性が問題となる場合があった。
そこで、本発明は、転写方式による磁気カード表面へ絵柄を転写する製造方法において、染料画像によらず顔料画像を転写すること、および製版、刷版、本機印刷工程を伴わない転写シートの製造と、磁気カード転写方法を研究して、本発明の磁気カードの製造方法、転写シート、転写シートの製造方法の完成に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第1は、コアシートと磁気テープ転写済みのオーバシートと、絵柄および磁気テープ隠蔽層を有する絵付け転写用転写シートの積層体を熱圧プレスして、カード基体を一体化すると共にカード表面に絵付けする磁気カードの製造方法において、当該絵付け転写用転写シートとして、電子写真プリンターのカラートナーによる絵柄を、剥離層を有するフィルム基材面に形成し、さらに当該絵柄面に磁気テープ隠蔽層を印刷したものを使用することを特徴とする磁気カードの製造方法、にある。 上記において、カラートナーが有機または無機を含むものである、ようにすれば絵柄の耐久性を高いものにすることができる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第2は、磁気カードの製造に使用する絵付け転写用転写シートであって、基材フィルム面に剥離層を有し、当該剥離層面に電子写真プリンターの有機または無機顔料を含有するカラートナー絵柄層が形成されており、さらに当該絵柄面に、磁気テープ隠蔽層が形成されていることを特徴とする転写シート、にある。上記において、剥離層とカラートナー絵柄層との間にアンカー層を有する、ようにすれば、剥離層と絵柄層との間の接着を強固にてき、カラートナー絵柄層と磁気テープ隠蔽層との間に接着層を有する、ようにすれば、絵柄層と磁気テープ隠蔽層との間の接着を強固にできる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第3は、磁気カード製造時における絵付け転写用転写シートの製造方法であって、電子写真プリンターにカラー原稿を供給し、当該カラー原稿に基づく絵柄を剥離層を有する基材フィルム面に形成し、当該絵柄面上に磁気テープ隠蔽層をシルクスクリーン印刷により印刷することを特徴とする転写シートの製造方法、にある。
【0017】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第4は、磁気カード製造時における絵付け転写用転写シートの製造方法であって、電子写真プリンターにカラーデジタルデータを送信し、当該カラーデジタルデータに基づく絵柄を剥離層を有する基材フィルム面に形成し、当該絵柄面上に磁気テープ隠蔽層をシルクスクリーン印刷により印刷することを特徴とする転写シートの製造方法、にある。
【発明の効果】
【0018】
(1)磁気カードの製造工程が短縮化され、短納期化できる。また、1面毎に可変データを有するカードの製造も可能となる。小ロットの受注に対応できる。
(2)本発明の転写シートは、剥離層面に電子写真プリンターの顔料を含有するカラートナー絵柄層が形成され、さらに磁気テープ隠蔽層が形成されているので、カードの磁気テープを隠蔽し、かつ耐久性の高い絵柄を形成できる。
(3)本発明の転写シートの製造方法は、カラー原稿またはデジタルデータを用いて絵柄を形成でき、従来のように製版、刷版工程により印刷版を製造し印刷するような工程を経ずに、刷版レスで転写シートを製造できるので、製造時間の大幅な短縮が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、磁気カードの製造方法、転写シート、転写シートの製造方法、に関するが、以下、図面を参照して、まず、転写シートから順次説明することとする。
図1は、本発明の転写シートの断面を示す図、図2は、転写シートの製造工程を示すフローチャート、図3は、磁気カードに絵柄を転写する状態を示す断面図、である。
【0020】
図1のように、転写シート2は、基材フィルム21面に剥離層22が設けられ、当該剥離層上にアンカー層23が形成されている。アンカー層23は、剥離層22とトナー絵柄層24間の密着力を高める作用をするもので、絵柄転写後に剥離層22をカード側にとどめるためには当該層を設けるのが好ましい。ここまでの層が転写シート2の基材20に相当する部分であって、当該基材20を電子写真プリンターに供給してトナー絵柄層24を設ける。剥離層22は基材フィルム21自体が易剥離性である場合は設けなくてもよいが、転写後は剥離層22をカード表面側に転移させて、保護層として機能させれば、磁気カードの耐久性を高めることができて好ましい。剥離層22は、2〜3μm以下の厚みに形成される。
【0021】
剥離層22の材料としては、剥離の際に基材フィルム21側に付着して剥離するものと、トナー絵柄層24側に付着するものとで材質の選定が異なるが、後者の場合は、基材フィルム21に強固には接着しないが、自然剥離しない程度の接着力を維持する材料の選定が必要になる。通常、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、硝化綿系樹脂、環化ゴム系、アクリル系樹脂等各種の材料から選ばれる。これらに必要に応じて、可塑剤、安定剤などを添加し、溶剤あるいは希釈剤を加えて十分に混練して用いる。
アンカー層23には、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ゴム変成物等を使用することができる。この層は、オフセット印刷されるので、厚みは1〜2μm以下の僅かな厚みとなる。
【0022】
カラートナー絵柄層24は、電子写真プリンターにより形成されたものであり、着色顔料を含有するカラートナーによる絵柄層がプリントされる。電子写真用カラートナーについては市販の各種製品を使用することができる。カラートナーには染料を含有するものもあるが、磁気カードの絵柄として耐光性が要求されるので、着色料は顔料を主体とするトナーが好ましい。トナーはブラック(墨)にはカーボンが含まれるが、その他のトナーは有機顔料を使用しているものと見られる。
【0023】
ここで、電子写真の画像形成について簡単に説明する。
電子写真現像方式には湿式現像方式と乾式現像方式がある。有機色素、添加剤、バインダー樹脂をイソパラフィン系石油溶剤に分散させたものを用いる方式が湿式現像方式であり、有機色素、添加剤をバインダー樹脂に分散させ粉砕して粉体として用いる方式が乾式現像方式でこの粉体をトナーという。今日では乾式現像方式が主流となっている。乾式現像方式に用いられるトナーは、有機色素、添加剤、バインダー樹脂の他にキャリアーとよばれるフェライトなどの磁性体を混合して用いる場合がある。このような2成分系ではキャリアーとの接触でトナーが帯電する。
【0024】
カラートナー用有機色素は着色剤としての特性のほかに帯電性が要求される。有機色素は種々の官能基を色素骨格に有するが、一般的に分子構造中に電子供与性の置換基をもつと正帯電し、電子求引性の置換基をもつと負に帯電しやすい。また、これらの官能基の数によっても帯電性を制御することが可能であり、この性質が積極的に使用されている。
そのほか、(1)多色重ねをするためにトナーの透明性が高いこと、(2)バインダー樹脂との親和性が高く、溶融混和性が良好であること、(3)熱、光に対して安定で耐ブリード性が優れること、(4)分光反射率特性が良好であること、(5)耐環境特性が良好であること、などの特性が要求される。これらの特性が考慮されていることから、昇華性染料画像等よりは耐久性の高い絵柄を形成できる。
【0025】
有機色素としては、染料と顔料があるが、透明性、着色力は染料の方が優れている。顔料の場合、粒径が大きいと透明性や着色力が劣るので、微粒子化、均一分散性が必要となる。透明性を高くするためにはカラートナーの粒子径は最短の可視光波長(400nm)より短くする必要がある。
【0026】
カラートナー用有機色素として、イエローはベンジジン系、モノアゾ系、ジスアゾ系、ジフェニルアミン系、アゾメチン系、ロダニン系、ピリドン系色素が知られている。マゼンタはキサンテン系、イミダゾール系、ローダミン系、キナクリドン系、ペリレン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、モノアゾ系が知られている。シアンは銅フタロシアニンが主に用いられているが、他のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタンレーキ顔料、アニリンブルー、アントラキノン系色素も知られている。
【0027】
トナーの帯電は、バインダー樹脂とキャリアーのみでも基本的には可能であるが、トナーが迅速に均一に帯電し、湿度などの環境変化にも依存しない状態にするには電荷調整剤の添加が不可欠である。黒印字用トナーにおける電荷調整剤として正帯電にはニグロシン系のアニリンブラック、負帯電にはアゾ系クロム金属錯体が使用される。これらはいずれも着色しているので、カラートナー用には無色の電荷調整剤が使用される。この正帯電用にはイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、負帯電にはボロン誘導体、亜鉛錯体、サリチル酸誘導体などが知られている。
【0028】
トナー絵柄層24の面には、磁気テープを隠蔽する通常銀色の隠蔽層26が設けられるが、絵柄層24と隠蔽層26の間に、トナー絵柄層24と隠蔽層26の接着力を高める接着層25を設けるのが好ましい。
【0029】
接着層25は、隠蔽層26が、トナー絵柄層24に対して密着力が弱い場合に設ける層であって、アンカー層23と同様の機能を果たす。使用材料もアンカー層23と同様のものを使用するが、この場合は、隠蔽層と同一の工程でシルクスクリーン印刷をするので、厚みは、1〜8μm程度となる。
隠蔽層26は、オーバーシートに予め転写されている磁気テープの茶褐色の色を隠蔽するもので、白色のチタン顔料(TiO2 )や隠蔽力の高いアルミニウム粉末を混練したインキが使用される。
【0030】
最終的な転写シートは、札入れサイズカード(ID−1型)の24面付けや16面付けの多面付けシートの転写に用いられるので、枚葉シート状である。従って、アンカー層23以降の印刷や塗工は枚葉シートの状態で行われる。
基材フィル21としては、厚み、100μm〜200μm程度の耐熱性基材が用いられる。通常、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく用いられる。
【0031】
次に、転写シートの製造方法について、図2のフローチャートを参照して説明する。
剥離層22は基材フィルム21の全面に設けるもので、ロール状に巻かれた連続した基材フィルム面にコーティングされる(S1)。当該剥離層22のコーティングは、前記のようにグラビア印刷やロールコートにより行われる。
剥離層22の塗工後、基材フィルム21は枚葉のシートに裁断される(S2)。その後、オフセット印刷によりアンカー層の印刷を行う(S3)。
【0032】
電子写真プリンターによる顔料含有カラートナーによる絵柄層の形成は、2種の方法をとり得る。第1の方法は、通常のように、多面付け(または1面分)のカラー原稿を用意し、当該カラー原稿をアンカー層塗工済みの基材20に複写(コピー)する通常のプリント方法である。この場合、多面付け原稿に替えて1面分だけの原稿を使用することもできる。1面分の原稿であっても、電子写真プリンターは繰り返しコピー機能を通常備えるので、多面付け絵柄の転写シートとして出力することができる(S4)。
近年の電子写真プリンターには、CCDイメージセンサを備えているので、電子写真プリンターに与えられた原稿は、当該CCDイメージセンサにより読み取られて、3色または4色(シアン、マゼンタ、イエロー、墨)に色分解される。解像度は、600dots/25.4mm程度まで可能である。色分解された各色の電気信号がレーザービーム光信号として感光板(またはドラム)を露光し静電画像を形成する。
【0033】
第2の方法は、写真または被写体を撮影したカラーデジタルデータを、パーソナルコンピュータ(PC)とネットワークを介して、直接電子写真プリンターに送信する方法である。送信されたカラーデジタルデータは、メモリーに一時的に蓄積された後、予め定めたフォーマットに従い剥離層22とアンカー層23を有する基材20面に、画像を出力することができる(S5)。カード1枚毎の個人情報を添付して出力することもできる。
画像データの送信は、TCP/IP(LPD)を使ってサーバを介し、または介さずに、Windowsマシンに接続する送信方法を採用できる。また、インターネットを介する接続も可能である。これらの方法の場合は、遠隔地からのデータの送信が可能であり、被写体を撮影したカラーデジタルデータによる場合は、写真をプリントする手間も不要となる。
【0034】
電子写真プリンターの画像形成は良く知られているように、(1)帯電ロールによる感光体(感光ドラム)の帯電、(2)レーザ光による感光体の露光、(3)トナーによる現像、(4)被印刷体への転写、(5)定着、のプロセスで行われる。
感光ドラムが1本であっても交互に各色の露光をしてカラーコピーが可能であるが、高速の場合、4本の感光ドラムが用いられる。感光ドラムが水平に設置されている場合、垂直に設置されている場合、等各社各様の機種があるが、いずれの機種であっても構わない。感光ドラムへの露光はレーザーユニットと多面体ミラー等により行われる。
【0035】
定着は、熱(150〜180°C程度)と圧をかけてカラートナーを被印刷体に固定する工程であるが、被印刷体がPETシートであれば、そのような熱に対して十分な耐熱性を備える。ただし、ポリ塩化ビニルやポリエチレンシートでは不十分である。
電子写真プリンターには、明度/彩度/コントラスト等の画質調整機能と、ブラック/シアン/マゼンタ/イエローのトナー濃度を微調整する機能、等を備えているので、原稿の忠実な再現や逆に演出した再現方法も可能となる。
近年、オンデマンド印刷用として高機能を備えた電子写真プリンターも開発されているが、そのような機種であっても構わない。
【0036】
電子写真によるトナー絵柄層24面上には、磁気テープ8を隠蔽する隠蔽層26を印刷する(S7)が、トナー絵柄層24と隠蔽層との接着力が弱い場合は、両者の間に接着層25をコートするのが好ましい(S6)。隠蔽層26には、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体からなるバインダーインキが通常用いられるので、接着層25にも当該樹脂のみからなる薄膜の層を形成することが好ましい。
【0037】
隠蔽層26は、オーバーシートに予め転写されている磁気テープ8の茶褐色の色を隠蔽するもので、上記のバインダー樹脂に白色のチタン顔料(TiO2 )や隠蔽力の高いアルミニウム粉末を混練したインキが使用される。実体はアルミニウム粉末からなるが、通称は「シルク銀」印刷等とも呼ばれている。接着層25や隠蔽層26はシルクスクリーン印刷によるのが高い隠蔽力を得る上で好ましい。隠蔽層26の乾燥後の印刷厚みは、1〜4μm程度となる。以上の工程で、本発明の転写シートが完成する。
【0038】
次に、本発明の磁気カードの製造方法について説明する。
磁気カードに絵柄を転写する場合は、図3の断面図のように、まず、2層のコアシート11,12と、その両面に予め磁気テープ8,9を転写済みのオーバーシート13,14を、磁気テープ8,9が外面になるように仮積みした積層体10kを準備する。オーバーシート14には、裏面絵柄5がシルクスクリーンまたはオフセット印刷により印刷されているものである。この工程は、従来方式の転写絵付け方式の場合と同様であり、カード基材の材料としては、一般的には硬質塩化ビニルシートやポリエチレンテレフタレート(PET)シート、PET−Gシートが使用されている。カード基体10の全体厚みを、規定の0.76±0.08mmに仕上げるため、表裏コアシート11,12は、0.28mm厚程度の白色シート、表裏オーバーシート13,14は、0.10mm厚程度の透明シートを使用するのも同様である。
【0039】
この仮積み積層体10kに絵柄を転写するには、前記のようにして製造した転写シート2を、オーバーシート13の磁気テープ8の転写面に接するように載置し、2枚の金属プレス鏡面板Pの間に、仮積み積層体10kを挿入し熱圧プレス加工を行う。図示してないが、オーバーシート14側の磁気テープ9を隠蔽するために、転写シートを両面に用いる場合であっても構わない。
熱プレス条件は、例えば温度100〜200°C、圧力15〜30kg/cm2 、時間5〜25分、好ましい特定例は、温度150°C、圧力25kg/cm2 、時間15分である。その後、圧力を保持したまま、例えば20分以上の時間をかけて、できる限りゆっくり常温まで冷却する。
【0040】
冷却後、転写シート2の基材フィルム21を剥離することにより、剥離層22は、トナー絵柄層24側に残り、表面光沢の優れた、磁気カードを得ることができる。再プレスの必要はない。
【実施例1】
【0041】
<転写シートの製造>
厚み150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A4判サイズ)に、剥離インキをグラビアコートして剥離層22を形成し、その上にアンカー層23をオフセット印刷し、転写シート基材20を作製した(図1参照)。
【0042】
この転写シート基材20に、4面付けのカード絵柄を原稿として、電子写真プリンター[ドキュセンターカラー400(フジゼロックス株式会社製)]により、カラー絵柄をコピーして絵柄層24を形成した。顔料系トナーには、富士ゼロックス株式会社製の専用トナーカートリッジ[K][C][M][Y](商品コードCT200168〜CT200171)を使用した。また、感光体には、富士ゼロックス株式会社社製の専用ドラムカートリッジ[A1][A2][A3][A4](商品コードCT350107)を使用した。
【0043】
この絵柄層24の面上に、接着層25と隠蔽層26をシルクスクリーン印刷により印刷して転写シート2を完成した。接着層25には、塩酢ビ系のメジウム[昭和インク株式会社製「VAHSメジウム」]を用い、隠蔽層26には同一のメジウムに銀ペースト(アルミ粉)を質量比で約10%添加したものを用いた。隠蔽層26の厚みは、5〜6μmとなった。
【0044】
<転写シートによる絵柄転写>
カードのコアシート11,12として、厚み0.28mmの白色硬質塩化ビニルシートを使用し、オーバーシート13,14として、磁気テープ8,9を転写済みであって、厚み0.10mmの透明塩化ビニルシートを使用した。コアシート12は裏面絵柄印刷済みのものであり、コアシート11にも位置合わせ用マーク等を印刷済みのものである。
この磁気カード基材の仮積み積層体10kに、先に準備した転写シート2を隠蔽層26が磁気テープ8面に接するように載置してから、金属プレス鏡面板P間に、材料一式を挿入して熱圧プレスした。プレス条件は、温度150°C、圧力25kg/cm2 、時間15分とした(図3参照)。これにより、美麗に絵柄が転写された磁気カード1が得られた。
【実施例2】
【0045】
<転写シートの製造>
厚み150μmのPETフィルム(A4判サイズ)に、剥離インキをグラビアコートして剥離層22を形成し、その上にアンカー層23をオフセット印刷し、転写シート基材20を作製した(図1参照)。
この転写シート基材20に電子写真プリンター[ドキュセンターカラー400(フジゼロックス株式会社製)]により、カラー絵柄をコピーして絵柄層24を形成したが、絵柄は、PC(WindowsXP)から、カード1面分のカラーデジタルデータを4件の個人情報と共に送信する方法により形成した。A4判サイズの転写シート基材20に、4面付けの同一カード絵柄とそれぞれの個人情報が出力された転写シート2が完成した。
【0046】
<転写シートによる絵柄転写>
磁気カードに対する絵柄転写は、実施例1と同一のカード基材を使用し、同一のプレス条件で行った。これにより、美麗に絵柄が転写された磁気カード1が得られた。
【0047】
実施例1、実施例2で得られた磁気カードは、エンボス適性を備え、JISX6305の5.8で規定する耐化学薬品性、5.10で規定する寸法安定性等、5.11で規定する接着性及び粘着性、の試験条件に耐えるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の転写シートの断面を示す図である。
【図2】転写シートの製造工程を示すフローチャートである。
【図3】磁気カードに絵柄を転写する状態を示す断面図である。
【図4】従来の直刷り方式を説明する図である。
【図5】従来の転写方式を説明する図である。
【符号の説明】
【0049】
1 磁気カード
2 転写シート
5 裏面絵柄
8,9 磁気テープ
10 カード基体
11,12 コアシート
13,14 オーバーシート
20 基材
21 基材フィルム
22 剥離層
23 アンカー層
24 絵柄層
25 接着層
26 隠蔽層
P プレス鏡面板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシートと磁気テープ転写済みのオーバシートと、絵柄および磁気テープ隠蔽層を有する絵付け転写用転写シートの積層体を熱圧プレスして、カード基体を一体化すると共にカード表面に絵付けする磁気カードの製造方法において、当該絵付け転写用転写シートとして、電子写真プリンターのカラートナーによる絵柄を、剥離層を有するフィルム基材面に形成し、さらに当該絵柄面に磁気テープ隠蔽層を印刷したものを使用することを特徴とする磁気カードの製造方法。
【請求項2】
カラートナーが有機または無機顔料を含むものであることを特徴とする請求項1記載の磁気カードの製造方法。
【請求項3】
磁気カードの製造に使用する絵付け転写用転写シートであって、基材フィルム面に剥離層を有し、当該剥離層面に電子写真プリンターの有機または無機顔料を含有するカラートナー絵柄層が形成されており、さらに当該絵柄面に、磁気テープ隠蔽層が形成されていることを特徴とする転写シート。
【請求項4】
剥離層とカラートナー絵柄層との間にアンカー層を有することを特徴とする請求項3記載の転写シート。
【請求項5】
カラートナー絵柄層と磁気テープ隠蔽層との間に接着層を有することを特徴とする請求項3または請求項4記載の転写シート。
【請求項6】
磁気カード製造時における絵付け転写用転写シートの製造方法であって、電子写真プリンターにカラー原稿を供給し、当該カラー原稿に基づく絵柄を剥離層を有する基材フィルム面に形成し、当該絵柄面上に磁気テープ隠蔽層をシルクスクリーン印刷により印刷することを特徴とする転写シートの製造方法。
【請求項7】
磁気カード製造時における絵付け転写用転写シートの製造方法であって、電子写真プリンターにカラーデジタルデータを送信し、当該カラーデジタルデータに基づく絵柄を剥離層を有する基材フィルム面に形成し、当該絵柄面上に磁気テープ隠蔽層をシルクスクリーン印刷により印刷することを特徴とする転写シートの製造方法。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−7578(P2006−7578A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187811(P2004−187811)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】